JP3728852B2 - 情報記録媒体収納ケース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスク、磁気ディスク、光カード、磁気カード、ICカード等の情報記録媒体の収納ケース、及び、これらの情報記録媒体原盤の運搬ケース等に使用可能な情報記録媒体収納ケースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光学的、磁気的、電気的に読み取り可能な情報が記録され、更に記録された情報を読み出す情報記録媒体があり、近年は、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、MO、ZIPをはじめとする高密度記録ディスクの普及がめざましいものとなっている。また光カード、磁気カード、ICカードの高密度化も進んでいる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
さて、前記した高密度情報記録媒体の普及と最近のパーソナルコンピュータの高性能化に伴い、重要情報もこれら高密度情報記録媒体に記録する機会が多くなっている。しかし、セキュリティの問題は解決されていないと言ってもよい。
つまり、これらの高密度情報記録媒体は1枚に大容量の情報が記録できるという大きな利点が有る反面、小型のため、運搬過程で容易に盗まれる心配がある。特に、銀行口座の暗証番号一覧、国家機密、軍事情報等の重要情報が高密度情報記録媒体に記録されていた場合、この媒体の盗難に伴う損害は非常に大きなものとなる。軍事機密の特殊なものの場合には人類の存続さえ危ぶまれる。
【0004】
そこで、こうした重要情報が記録されている高密度情報記録媒体が盗難にあっても、正規の使用者以外の他者が使用することができないような記録媒体が必要とされていた。その解決手段として、従来いわゆる暗号を利用したコピープロテクトは数々提案されているが、それも信号を時間をかけて丁寧に解析してゆけば解読できることが多く、根本的な解決には至っていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、こうした課題に着目してこれを解決するためになされたものであり、情報記録媒体を収納してあるケースの蓋を通常の使用以外の方法で開る(正規の使用者以外の他者が開ける)と、損傷機構が働いて情報記録媒体を確実に損傷してその使用を不可能することにより、情報記録媒体に記録されている情報のセキュリティを維持する情報記録媒体収納ケースを提案するものである。勿論、正規の使用者が情報記録媒体を取り出す場合には、解除機構を用いて事前に損傷機構置を解除しておくことにより情報記録媒体を損傷することなく取り出せることは言うまでもない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明は下記(1)〜(9)の構成になる情報記録媒体収納ケースを提供する。
【0007】
(1)通常の使用以外の方法で開蓋した際、収納してある情報記録媒体に損傷を与えてその使用を不可能とする情報記録媒体収納ケースであって、
情報記録媒体収納部を備えるケース本体と、
このケース本体を開閉する開閉蓋と、
前記情報記録媒体収納部に隣接して設けられる損傷部材と、
前記開閉蓋の開蓋動作に連動して前記損傷部材を作動させる損傷機構とを備え、
前記損傷部材は、前記情報記録媒体に化学的な損傷を与える薬剤と、前記薬剤を収納しかつ口を有するタンクと、前記口に嵌合するキャップを有しており、
前記情報記録媒体が、前記情報記録媒体収納部に収納された際には、前記口と前記情報記録媒体の信号面とが対向するように配置されており、
前記キャップは、前記損傷機構に接続されていることを特徴とする情報記録媒体収納ケース。
(2)請求項1記載の情報記録媒体収納ケースであって、
前記損傷機構の動きを解除させる解除機構を備え、
前記解除機構を作動させずに前記開閉蓋を開蓋する場合は、前記損傷部材を作動させて前記情報記録媒体に損傷を与え、前記解除機構を作動させてから前記開閉蓋を開蓋する場合には、前記損傷部材を不作動として前記情報記録媒体に損傷を与えずに取り出すことを特徴とする情報記録媒体収納ケース。
(3)前記薬剤は、強酸、強アルカリ、有機溶剤のいずれかの薬剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の情報記録媒体収納ケース。
(4)前記情報記録媒体は、情報記録媒体原盤であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の情報記録媒体収納ケース。
(5)前記情報記録媒体はDVDであり、前記薬剤は有機溶剤であることを特徴とする請求項3記載の情報記録媒体収納ケース。
(6)前記開閉蓋は、シャッタであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の情報記録媒体収納ケース。
(7)少なくとも前記損傷部材と前記損傷機構とを外部より隠蔽したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の情報記録媒体収納ケース。
(8)前記情報記録媒体収納部に対応した前記開閉蓋部分を透明とし、それ以外の部分を不透明としたことを特徴とする請求項7記載の情報記録媒体収納ケース。
(9)前記情報記録媒体収納部に対応して、前記開閉蓋を直径130ミリ以下の範囲だけ透明とし、それ以外の部分を不透明としたことを特徴とする請求項8記載の情報記録媒体収納ケース。
【0018】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の情報記録媒体収納ケースについて、図1〜図7を用いて説明する。図1,図2はそれぞれ本発明の情報記録媒体収納ケースの基本構造を説明するための図、図3〜図7はそれぞれ本発明の情報記録媒体収納ケースの第1実施例〜第5実施例を説明するための図である。
【0019】
以下、説明の都合上、情報記録媒体の一例として、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、MO型ディスク等の光ディスクを用いるが、これ以外に、磁気ディスク、光カード、磁気カード、ICカード等、及び、これらの元となる、CD−ROM原盤、CD−R原盤、DVD−ROM原盤、MO型ディスク原盤等の光ディスク原盤にも用いることができるのは言うまでもない。
【0020】
[情報記録媒体収納ケースの基本構造]
本発明の情報記録媒体収納ケースAの基本構造は、図1に示すように、ケース本体A1と開閉蓋A2とから構成されており、また、ケース本体A1はディスク収納部A1aと本体部A1bとから構成される。後述する開閉機構1は開閉蓋A2がケース本体A1の一端部に軸支した状態(ヒンジ状態)を指す。これに加えて、ディスク収納部A1a内に設けられた損傷部材2、この損傷部材2を作動する損傷機構3が備えられている。4はディスク収納部A1aに収納された状態のディスクである。
【0021】
この情報記録媒体収納ケースAは、ディスク収納部A1aに収納されたディスク4をそこから取り出すことなく、ディスク収納部A1aにディスク4を収納したままで図示せぬプレーヤに装填が可能であるという用途に用いられるものである。
【0022】
前記した情報記録媒体収納収納ケースAは、例えばCDケースのような構造をしている。そして、ケース本体A1の一端部に軸支された開閉蓋A2はケース本体A1上において開閉自在とされる。閉蓋状態である開閉蓋A2を開蓋するには開閉蓋A2の他端部を外方へ引っ張れば良く、一方、開蓋状態である開閉蓋A2を閉蓋するには開閉蓋A2の他端部をケース本体A1側(内方)へ押し込めば良い。
【0023】
前記した損傷部材2は、ディスク収納部A1aに収納してあるディスク4の信号面を確実かつ効果的に傷つけ、ここからの情報の再生が不可能なようにすることの出来るようにディスク収納部A1a内に設けられている。この損傷部材2は、刃物(例えばカッターナイフ、薄物のダイヤモンドコーティングナイフ)、ヤスリ、サンドペーパーなど物理的な手段である。
【0024】
また、損傷部材2は化学的な手段でもよく、その場合には強酸、強アルカリ、有機溶剤などの薬剤を納めたカプセルである。これらはディスク4の硬度、溶解性にあわせて選択され、例えばCD−ROM、ハードディスクの場合には薄物のダイヤモンドコーティングナイフである。DVDの場合には貼り合わせ構造で、記録面が表面から0.6mm中に埋没しているため刃物は不適切で、有機溶剤 (例えば塩化メチレン)が効果的である。
【0025】
勿論、ディスク4をディスク収納部A1aに収納しただけではディスク5の表面に損傷部材2が当接あるいは近接するだけであり、この当接押圧力あるいは近接状態ではディスク4の信号面にダメージを与えることはない。
【0026】
前記した損傷機構3は、上記の損傷部材2を開閉機構1の作動に連動して損傷部材2を作動する機構である。この損傷機構3は開閉蓋A2と損傷部材2とを繋ぐワイヤのようなもので構成され、また、このワイヤの途中にスプリング等の緩衝部材を挟んでも良い。
【0027】
一方、上述した情報記録媒体収納ケースAは、開閉蓋A2の開蓋動作と連動して収納したディスク4の信号面に確実かつ効果的に損傷を与えることができ、これによって、正規の使用者以外の他人がこのディスク4を盗用してもそこに記録してある情報の利用を確実に防止できるものである。
【0028】
次に説明する本発明の情報記録媒体収納ケースBの基本構造は、図2に示すように、前述した図1に図示の収納ケースAに、上記した損傷部材2の作動を解除する解除機構5を付加したものである。前述した構成と同一部分には同一番号を付しその説明を省略する。
【0029】
前記した解除機構5は、正規の使用者が収納ケースBに収納したディスク4を取り出す際に、開閉蓋A2の開蓋動作と連動して損傷機構3が作動し損傷部材2により収納してあるディスク4の信号面に損傷を与えることを解除するための機構である。詳しくは解除機構5は、開閉機構1と損傷機構3の連動関係を解除するものであり、解除機構5が作動している間は損傷機構3が動作しない状態で開閉蓋A2の開閉が自由に行える。解除機構5はこの連動関係を切り放すものであればよく、プッシュボタンや鍵、番号錠などと繋いでもよい。
【0030】
ところで、前記した収納ケースA,Bに収納されるディスク4が例えば高密度光ディスクの場合、製造の困難さの理由から、原盤を作成するデザインセンタとプレス・完成させるレプリケータとが別の場所で行われることもある。この場合には原盤輸送中の盗難が心配であり、ディスク4としての原盤の物性にあわせて損傷部材2を選ぶことになる。
【0031】
光ディスク原盤は、ガラスマスタ、マスタ、マザー、スタンパ等であり、損傷部材2は原盤がガラスマスタの場合、このガラスを効果的に溶かすフッ酸、またはガラスマスタに塗布されてあるレジストに損傷を与える濃厚な水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液あるいはアセトンなどの有機溶剤である。また原盤がマスタ、マザー、スタンパの場合には、損傷部材2は硝酸や王水や塩化鉄水溶液などである。
【0032】
[情報記録媒体収納ケースAの実施例]
さて、上述した図1に示した収納ケースAを具体化したものは、図3に示す情報記録媒体収納ケース10Aであり、収納ケース10Aに収納される光ディスクとしては例えばCD−ROMである。前述した構成と同一部分には同一番号を付しその説明を省略する。
【0033】
この収納ケース10Aは、図3に示すように、ケース本体A1と開閉蓋A2とから構成されており、また、ケース本体A1はディスク収納部A1aと本体部A1bとから構成される。開閉蓋A2はケース本体A1の左端部に軸支している。
【0034】
前記した収納ケース10Aは、例えばCDケースのような構造をしている。そして、ケース本体A1の一端部に軸支された開閉蓋A2はケース本体A1上に開閉自在に取り付け固定されている。閉蓋状態である開閉蓋A2を開蓋するには開閉蓋A2の他端を外方へ引っ張れば良く、一方、開蓋状態である開閉蓋A2を閉蓋するには開閉蓋A2の他端をケース本体A1側(内方)へ押し込めば良い。
【0035】
ディスク4が収納されるディスク収納部A1aの底面にはダイヤモンドコーティングを施した小さなカッターナイフ2aを設置した。このカッターナイフ2aはその底面に設けられた図示せぬレール上を左右に自在に移動可能である。ディスク収納部A1aに収納されるディスク4の収納方向は、ディスク4の信号面をその底面に向けて収納する方向とする。このようにして、ディスク収納部A1aに収納されたディスク4の信号面にはカッターナイフ2aが軽く当接するだけであり、この当接押圧力ではディスク4の信号面にダメージを与えることはない。
【0036】
また、ディスク収納部A1aに近接する本体部A1b上に、プーリ3aが設置されており、このプーリ3aにはワイヤ3bが張架されている。ワイヤ3bの一端は前記したカッターナイフ2aに結線され、その他端は開閉蓋A2の裏面にある固定位置A21に固定されている。この結果、開閉蓋A2が開蓋されるに従がい、矢印AA方向にワイヤ3bは引っ張られ、カッターナイフ2aは停止位置2aaから矢印AA方向へ直線移動しつつディスク4を押し上げる。カッターナイフ2aのこの直線移動によって、ディスク収納部A1aに収納されたディスク4の信号面は確実かつ効果的に損傷をうける(ディスク4の再生が不可能なようにディスク4の信号面は深く傷付く)。
【0037】
前記した収納ケース10Aの寸法は、例えば12.5cm(縦)×14.0cm(横)、ディスク4の直径が12.0cmであると、開閉蓋A2の裏面にある固定位置A21からプーリ3a中央までのワイヤ3bの長さはおよそ5cmであり、カッターナイフ2aがディスク収納部A1aの底面にあるレールの左端(ディスク収納部A1aに収納されてあるディスク4の内周部分に接触状態)にあるときに、開閉蓋A2を閉めてワイヤ3bがピンと張れる長さが選ばれている。
【0038】
次に、上述した構成の収納ケース10Aの開閉蓋A2が閉蓋する状態について、図3(B),(C)を用いて説明する。
【0039】
収納ケース10Aを使用して実際にディスク4を取り出す動作を行ってみると、閉蓋状態である開閉蓋A2(図3(B)に示す)を開け始めると(図3(C)に示す)、これに応じてワイヤ3bが引っ張られながら開閉蓋A2が上に持ち上がる。このときワイヤ3bの動きに連動してカッターナイフ2aがディスク収納部A1aの底面にあるレールの上を滑って左端から右側へ直線状に移動する。そしてこの時カッターナイフ2aがディスク収納部A1aに収納してあるディスク4をその内周から外周に向かってその信号面を傷つけるのである。
【0040】
開閉蓋A2が約25度(図3(C)中、角度α)開いたときには、開閉蓋A2の裏面にある固定位置A21からプーリ3a中央までのワイヤ3bの長さは4cm伸びて、ディスク4の内周から外周まで(半径2cm(信号面最内周)〜6cm(信号面最外周)まで)傷が入ることになる。このディスク4を取り出してディスクプレーヤにかけてもこの傷の部分でエラーが発生して、満足な再生ができない。
【0041】
上述した図3に示した情報記録媒体収納ケース10Aは、損傷部材2として物理的な手段としてダイヤモンドコーティングを施した小さなカッターナイフ2aを用いたものについて説明したが、次に説明する図4に示す情報記録媒体収納ケース10Bは、損傷部材2として化学的な手段を用いたものについて説明する。また、収納ケース10Bに収納されるディスク4としては例えばDVD−ROM原盤(スタンパ)である。前述した構成と同一部分には同一番号を付しその説明を省略する。
【0042】
この収納ケース10Bは、図4に示すように、ケース本体A1と開閉蓋A2とから構成されており、また、ケース本体A1はディスク収納部A1aと本体部A1bとから構成される。開閉蓋A2はケース本体A1の左端部に軸支している。
【0043】
前記した収納ケース10Bは、例えばCDケースのような構造をしている。そして、ケース本体A1の一端部に軸支された開閉蓋A2はケース本体A1上に開閉自在に取り付け固定されている。閉蓋状態である開閉蓋A2を開蓋するには開閉蓋A2の他端を外方へ引っ張れば良く、一方、開蓋状態である開閉蓋A2を閉蓋するには開閉蓋A2の他端をケース本体A1側(内方)へ押し込めば良い。
【0044】
ディスク4が収納されるディスク収納部A1aの底面の下側に損傷部材2として薬液を充填した薬液タンク2bを設置した。薬液タンク2b内には硝酸が充填されており、また薬液タンク2bの出口には薬液が漏洩しないようにゴムキャップ2cが嵌められている。ディスク収納部A1aに収納されたディスク4の信号面には、流出した薬液2dがディスク4の信号面に容易にかつ十分に付着するように、薬液タンク2bの出口が対向している。
【0045】
また、ディスク収納部A1aに近接する本体部A1b上に、プーリ3aが設置されている。また、このプーリ3aにはワイヤ3bが張架されている。ワイヤ3bの一端は前記した薬液タンク2bの出口に嵌合するゴムキャップ2cが固定され、その他端は開閉蓋A2の裏面にある固定位置A21に固定されている。この結果、開閉蓋A2が開蓋されるに従がい、矢印AA方向にワイヤ3bは引っ張られ、薬液タンク2bの出口に嵌合するゴムキャップ2cも停止位置2abから矢印AA方向へ直線移動する。ゴムキャップ2cはこの直線移動によって、薬液タンク2bの出口から外れる。この結果、薬液タンク2bの出口から流出する薬液2dがディスク4の信号面に容易にかつ十分に付着することにより、ディスク収納部A1aに収納されたディスク4の信号面は確実かつ効果的に損傷をうける (ディスク4の再生が不可能なようにディスク4の信号面は溶解する)。
【0046】
また、開閉蓋A2の固定位置A21には、図4(D)に示すように、前記した解除機構5の凹み5aが作ってあり、この凹み5aの中にワイヤ3bが糸巻き5bに巻かれた状態で収納され、開閉蓋A2の表面からは目立たないようになっている。ワイヤ3bの全長は8cmで、この糸巻き5bにはそのうち4cm分が巻かれている。
【0047】
次に、上述した構成の収納ケース10Bの開閉蓋A2を開蓋する状態について、図4(B),(C)を用いて説明する。
【0048】
収納ケース10Bを使用して実際にディスク4を取り出す動作を行ってみると、閉蓋状態である開閉蓋A2(図4(B)に示す)を開け始めると(図4(C)に示す)、これに応じてワイヤ3bが引っ張られながら開閉蓋A2が上に持ち上がる。このときワイヤ3bの動きに連動して薬液タンク2bの出口に嵌合するゴムキャップ2c左端から右側へ直線状に移動する。
【0049】
そして、開閉蓋A2が約5度開いたときには、引っ張られていたゴムキャップ2cが薬液タンク2bの口から抜けて、硝酸が収納ケース10B内に瞬時に充満する。この結果、薬液タンク2bの出口から流出する薬液がディスク4の信号面に容易にかつ十分に付着することにより、ディスク収納部A1aに収納されたディスク4の信号面は確実かつ効果的に損傷をうける。このディスク4がスタンパの場合、高密度微細な信号が入ったスタンパ表面は硝酸に腐食され、信号は多大なダメージを受けることになる。このスタンパからディスク成形を行ってDVD−ROMプレーヤにかけてもエラーが発生して、再生ができない。
【0050】
一方、正規の利用者がこのディスク4を安全に取り出す場合には、以下のようにする。
【0051】
即ち、開閉蓋A2に設けられたの凹み5a内にある糸巻き5bを注意深くピンセットでつかみ、この糸巻き5bに巻かれているワイヤ3bをゆっくり解いてゆくのである。このとき無用の力がこのワイヤ3bに掛からぬようにし、ワイヤ3bを引っ張ることなく解くことが肝心である。そして、ある程度ワイヤ3bが開閉蓋A2の上方に出てきたら、このワイヤ3bを切断する。
そしてワイヤ3bに力が掛からぬよう、開閉蓋A2を開ければ、ディスク4が傷付くことなく安全に取り出せる。
【0052】
以上、本発明について2つの実施例を示したが、これらは発明の基本骨格を示すための説明であり、本発明はこれに限定されるものではない。光カード、磁気ディスク、カードやICカードでも良い。また各々の機構は高度に複雑なものであってよい。
【0053】
例えば、上記実施例ではCDやDVDに使用されるケースをもとにして説明したが、いわゆるMOディスクのようにシャッターの付いたカートリッジ式ディスクケースであっても良い。この場合には、前述した開閉機構1はシャッター対応する。この場合には、手でシャッターを開閉させてディスクの存在を確認する場合や、ドライブに装填する時に前述した損傷機構3が作動する。また、DVD−RAMのようにシャッターの付いたカートリッジ式ディスクケースでありながらディスクが取り出せるものは、前述した開閉機構1が取り出し機構であっても良いし、シャッターでも良いし、さらに両方であっても良い。
【0054】
また、このケース10A,10Bを実際に使用する場合を考えると、少なくとも損傷部材2と損傷機構3が隠蔽されており、目で見えないことが望ましい。盗難にあった場合、このような仕掛けが認識されず、不用意にケース10A,10Bが開けられて、中のディスク4が破損されるのが理想的である。セキュリティの高いディスク4であればあるほどその必要があると言っても良い。
【0055】
図5は図4のケース10Bにおいて、損傷部材2と損傷機構3だけを、ケース10B外から視認出来ないように遮蔽するようにしたものの一例である。即ち、同図(A),(B)に示すように、ケース10Bの表(開閉蓋A2の外側)から見ても、裏(ケース本体A1の外側)から見ても、損傷部材2と損傷機構3とが位置している当該部分は、黒く塗られて遮蔽されているので、ケース内部を見ることができない。しかし、レイアウト的に自然な感じを出すために、ケース10Bの全体が黒塗りで遮蔽されていてももちろん良い。仕掛けを見えなくする方法は上記のような黒塗りに限らず、遮光できるものであれば如何なる色でも良い。
【0056】
図6は図4のケース10Bにおいて、ケースの表全面を遮光とし、その裏全面を遮蔽するようにしたものの一例である。即ち、同図(A),(B)に示すように、ケース10Bの表全面はスモークやすりガラス的なデザインで遮光されており、一方、ケースの裏全面は黒塗りされている。
【0057】
ところで、ディスク4が収納されていることを目で認識できる必要が、正規の使用者にとっても、またセキュリティ的な意味でも必要(中身を不用意に開けさせる意味で必要)である。従って収納するディスク4の大きさに対応した、ディスク収納部A1に対応した開閉蓋A2の一部分を透明とし,それ以外の部分を不透明にするのもよい。
【0058】
図7は図4のケース10Bにおいて、ディスク収納部A1に対応した表面の部分を透明としてこれ以外を遮光とし、一方、その裏面の全面を遮光としたものの一例である。即ち、同図(A),(B)に示すように、例えば、5.25インチ光ディスクの場合には開閉蓋A2を直径130ミリ以下の範囲だけ透明とし,それ以外の部分を不透明とすれば良い。また、5.25インチ光ディスクの成形用スタンパーの場合には、直径135ミリ以下の範囲だけ開閉蓋A2を透明とし,それ以外の部分を不透明とすれば良い。このようにすれば盗難者からディスクだけが透明に見え、損傷部材2と損傷機構3は不透明部分に当たるので気付かれることがない。その結果通常のディスクケースと同様の取り扱いを行って、ディスクを破損へと導くことができる。
【0059】
【発明の効果】
本発明の情報記録媒体収納ケースによれば、情報記録媒体を保管あるいは運搬する途中等に、正規の使用者以外の他人がこの情報記録媒体をケースから取り出して使用しようとしても、ケースから取り出した時点で情報記録媒体は損傷を受けて使用不可能な状態となるから、従って、この収納ケースに盗難防止のセキュリティー性を持たせることができ、収納してある情報記録媒体に記録されている重要情報の機密漏洩を防ぐことができる。
また、本発明の情報記録媒体収納ケースを構成する損傷部材と損傷機構だけを外部より遮蔽することにより、こうした盗難防止部材をケースの外から視認することができないので、この結果、収納ケースにおける盗難防止のセキュリティー性を一段と高めることができ、収納してある情報記録媒体に記録されている重要情報の機密漏洩をさらに確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の情報記録媒体収納ケースの基本構造を説明するための図である。
【図2】本発明の情報記録媒体収納ケースの基本構造を説明するための図である。
【図3】本発明の情報記録媒体収納ケースの第1実施例を説明するための図である。
【図4】本発明の情報記録媒体収納ケースの第2実施例を説明するための図である。
【図5】本発明の情報記録媒体収納ケースの第3実施例を説明するための図である。
【図6】本発明の情報記録媒体収納ケースの第4実施例を説明するための図である。
【図7】本発明の情報記録媒体収納ケースの第5実施例を説明するための図である。
【符号の説明】
2 損傷部材
3 損傷機構
4 ディスク(情報記録媒体)
5 解除機構
10A,10B 情報記録媒体収納ケース
A1 ケース本体
A1a 情報記録媒体収納部
A2 開閉蓋
Claims (9)
- 通常の使用以外の方法で開蓋した際、収納してある情報記録媒体に損傷を与えてその使用を不可能とする情報記録媒体収納ケースであって、
情報記録媒体収納部を備えるケース本体と、
このケース本体を開閉する開閉蓋と、
前記情報記録媒体収納部に隣接して設けられる損傷部材と、
前記開閉蓋の開蓋動作に連動して前記損傷部材を作動させる損傷機構とを備え、
前記損傷部材は、前記情報記録媒体に化学的な損傷を与える薬剤と、前記薬剤を収納しかつ口を有するタンクと、前記口に嵌合するキャップを有しており、
前記情報記録媒体が、前記情報記録媒体収納部に収納された際には、前記口と前記情報記録媒体の信号面とが対向するように配置されており、
前記キャップは、前記損傷機構に接続されていることを特徴とする情報記録媒体収納ケース。 - 請求項1記載の情報記録媒体収納ケースであって、
前記損傷機構の動きを解除させる解除機構を備え、
前記解除機構を作動させずに前記開閉蓋を開蓋する場合は、前記損傷部材を作動させて前記情報記録媒体に損傷を与え、前記解除機構を作動させてから前記開閉蓋を開蓋する場合には、前記損傷部材を不作動として前記情報記録媒体に損傷を与えずに取り出すことを特徴とする情報記録媒体収納ケース。 - 前記薬剤は、強酸、強アルカリ、有機溶剤のいずれかの薬剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の情報記録媒体収納ケース。
- 前記情報記録媒体は、情報記録媒体原盤であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の情報記録媒体収納ケース。
- 前記情報記録媒体はDVDであり、前記薬剤は有機溶剤であることを特徴とする請求項3記載の情報記録媒体収納ケース。
- 前記開閉蓋は、シャッタであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の情報記録媒体収納ケース。
- 少なくとも前記損傷部材と前記損傷機構とを外部より隠蔽したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の情報記録媒体収納ケース。
- 前記情報記録媒体収納部に対応した前記開閉蓋部分を透明とし、それ以外の部分を不透明としたことを特徴とする請求項7記載の情報記録媒体収納ケース。
- 前記情報記録媒体収納部に対応して、前記開閉蓋を直径130ミリ以下の範囲だけ透明とし、それ以外の部分を不透明としたことを特徴とする請求項8記載の情報記録媒体収納ケース。
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