JP3728572B2 - 配線基板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、IC実装用の配線基板及びその製造方法に係り、特にICと基板の回路を接続するために基板上に設けた電極を、無電解めっきで処理し形成した配線基板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ICを配線基板上に実装するためICチップの電極と配線基板上に形成された電極とを接続する方法としては、ワイヤボンディング法、バンプ法等がある。これらの方法を用いてICを実装する配線基板においては、電極の基体は銅からなるので、ワイヤと電極との接合性を高めるためにこの銅基体表面に金めっきが施される。金めっきは一般には電解めっき法により行われている。金めっきは直接に銅上に行うことができないので、先ず絶縁基板上に形成された銅表面にニッケルめっきが施され、ついでニッケルめっき上に金めっきが施される。ところが、電解めっき法では、めっきすべき銅電極に電流を供給するために、電流供給電極を設けなければならない。すなわち、図4に示すように、電解めっき用電流供給電極10が絶縁基板1縁部に形成され、これが基板1上の各電極7と細い導体を介して接続している。電流供給電極10は、電解めっき処理後には不要となるので、絶縁基板1の縁部を図中1点鎖線で示す位置から削除することにより、取り除く。
【0003】
しかし、近年、電子機器、コンピューター部品等の小型化、高密度化に伴い、ICをワイヤボンディング法あるいはバンプ法により実装する基板においても、ファインパターン化が進み、電流供給電極としてのめっきリードパターンを設けるスペースを確保することが非常に困難となってきた。そこで、めっきリードが不要な無電解めっきによるニッケルおよび金のめっき法が注目されている。
【0004】
無電解ニッケルめっきは、大別すると、次亜リン酸化合物を還元剤とするニッケル(Ni)−りん(P)めっきと、ほう素系化合物(特にジメチルアミンボランを用いる場合が多い)を還元剤とするニッケル(Ni)−ほう素(B)めっきがある。このニッケルめっき層は、下地層の銅導体と表面側の金めっき層に挟まれており、下地層の銅成分が金めっき層へ拡散するのを防止するという機能が必要である。これは、金めっき層に銅が拡散すると、金めっきされた電極と、ICの電極と接続するリードとの接合性が悪くなるからである。この場合に用いられるニッケル合金としては、Ni−Bより耐食性に優れたNi−Pの方が有利である。そこで、無電解ニッケルめっきとしてはNi−Pめっきを用いる場合がほとんどである。例えば、特開平7−7243号公報では、リン含有率を調整して耐食性の向上を図った技術が示されている。
【0005】
一方、Ni−Pめっきの還元剤として使用される次亜リン酸化合物は、銅上では反応しない。銅は次亜リン酸化合物の酸化反応に対し触媒作用を示さないためである。通常、銅表面にNi−Pの無電解めっきを行う場合には、パラジウムを含有する触媒液であらかじめ銅表面を処理する。特にパラジウムがイオンの形で存在する触媒溶液が用いられる場合が多い。この場合、触媒溶液に接触した銅表面とパラジウムイオンの置換反応が起こり、銅表面がパラジウムで修飾され、次亜リン酸化合物の酸化反応に対し触媒作用を示すようになる。
【0006】
ところで、このパラジウム溶液を用いた場合には、めっきを行う銅導体以外の部分すなわち絶縁基板面にもパラジウムが付着し、絶縁基板上の回路間で短絡を起こす場合があり、製品の歩留まりの低下をもたらしていた。特開平6−65749号公報では、回路間の短絡を防止するため充分な水洗を行い、その時に酸化された銅表面を除去しながら無電解ニッケルめっきを行う機能を有した無電解ニッケルめっき液が開示されている。しかし、この場合、無電解ニッケルめっき液中に銅が溶解するため、不純物として銅イオンが蓄積する。銅イオンの蓄積はめっき膜物性の低下や、耐食性の低下をもたらし、無電解ニッケルめっき液の液寿命を著しく縮めることになる。
【0007】
また、一般的に置換反応で形成された層は脆弱であることが多く、銅表面上のパラジウム層が厚い場合には剥がれが発生し、これも歩留まりを低下させる。
【0008】
一方、ジメチルアミンボランに代表されるほう素系化合物を還元剤としたニッケルめっきは、パラジウム等の触媒処理を必要とせず、直接銅上にニッケルをめっきできる。銅はほう素系化合物の酸化反応に対し触媒作用を示すためである。しかし、ほう素系化合物を還元剤としたニッケルめっきは銅の表面状態により析出性が大きく変化する。従って、めっきを行う銅の表面状態を、各基板毎および同一基板の面内において常に一定に保つ必要がある。各基板毎のばらつきが大きい場合には、めっきの析出性が基板毎に異なってしまい、厚みばらつきや、極端な場合には全くめっきが析出しないこともある。また、面内で銅の表面状態が異なる場合には、面内でのめっき厚みばらつきや、一部でめっきの析出しないつきむらが生じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
電子部品に用いる無電解ニッケルめっきは、通常、銅の回路導体の表面に施される。次亜リン酸化合物を還元剤とした無電解Ni−Pめっきの場合、銅が触媒作用を示さないため、あらかじめパラジウム等の触媒を含有する溶液で処理する必要がある。この時、めっきを行う銅導体以外に絶縁基板面にもパラジウムが付着し、このパラジウムを核に無電解Ni−Pめっき反応が進行し、絶縁基板上に形成された配線ないし回路間の短絡を起こす場合がある。また、一般的に置換反応で形成された層は脆弱であることが多く、銅導体表面上のパラジウム層が厚い場合には剥がれが発生し、歩留まりを低下させる。
【0010】
パラジウム含有溶液を用いた触媒処理により引き起こされる回路間の短絡や剥がれを回避するため、ジメチルアミンボランに代表されるほう素系化合物を還元剤としたニッケルめっきが考えられる。しかし、従来行われているめっき前の被めっき面の処理法では、銅の表面状態を再現性良く一定に保つことは不可能であり、めっきの不析出やつきむらの原因となっていた。また、電子部品へのめっきとしては耐食性に優れ、ピンホールの少ない非結晶質のNi−Pめっきが適している。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、基板上にIC実装用電極を有する配線基板であって、このIC実装用電極の表面の金めっき層やその下地層を無電解めっきで形成し、基板上に形成された電極や配線間で短絡が生じることのない配線基板を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、基板上にIC実装用電極を有する配線基板の製造方法であって、このIC実装用電極の表面の金めっき層やその下地層の形成のために、パラジウムを含む処理液による必要とせず、無電解めっきにより各層を形成して、めっきの不析出やつきむらのない均一なめっきができる製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
記目的を達成するために、本発明の配線基板は、金めっき層を最表面に有する銅導体からなる電極が絶縁基板上に並んでいる配線基板であって、当該電極は、絶縁基板上に形成された銅導体と、この銅導体上に順次に形成された、Niを主成分としBを含むニッケル(Ni)−ほう素(B)めっき層及びNiを主成分としPを含むニッケル(Ni)−りん(P)めっき層と、金(Au)めっき層から構成されたことを特徴とする。
【0014】
この電極において銅導体上に順次形成されたNi−Bめっき層、Ni−Pめっき層及びAuめっき層の3層は、実用上では無電解めっきによる特有の構造ということができる。電解めっきの場合は、銅導体上に純Niを形成することができるので、銅導体上にこのNiめっき層とその上にAuめっき層が形成される構造になる。ただし、電解めっきでは、図4を用いて述べたように、めっきリードパターンを設けなければならないという問題がある。
【0015】
また無電解めっきにより形成されたNi−Bめっき層及びNi−Pめっき層はそれぞれニッケル含有量が80〜99%であることが好ましい。ニッケル含有量が80%未満では各めっき層の電気抵抗が増加して好ましくなく、また99%を超えると、Bの触媒機能やPによる耐食性が損なわれる。
【0016】
また、本発明の配線基板の製造方法は、金めっき層を最表面に有する銅導体からなる電極を絶縁基板上に並べ設けてなる配線基板を製造する方法であって、(1)絶縁基板上に形成された銅導体表面を酸化して厚みが5〜1000nmの酸化層を形成した後、(2)この酸化層が形成された銅導体上に、ほう素系化合物を還元剤として含むNiめっき液を用いて無電解めっきを施し、次いで(3)りん系化合物を還元剤として含むNiめっき液を用いて無電解めっきを施し、さらに(4)金の無電解めっきを施すことを特徴とする。
【0017】
上記(2)におけるNi−Bめっき量は非常にわずかでよく、1nm以上あればよい。また、原子レベルで島状に分布していてもよく、部分的に下地の銅が露出していてもよい。これは、(3)におけるNi−Pめっき時に、あらかじめ形成したNi−Bめっき層を核にして、Ni−P合金が析出し、拡大してNi−Pめっき層を形成するからである。
【0018】
このようにNi−Bの無電解めっきを直接、酸化した銅上に形成することで、パラジウムによる触媒処理を行わず、耐食性に優れたNi−P層を無電解めっきで形成することができる。また、こうすることにより銅導体とNi−B層の界面に脆弱なパラジウム層が無く、界面の剥がれを防止できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。図1は本発明の製造方法により製作される配線基板の一例を示す平面図、図2は本発明の配線基板上に形成された電極部分の構成を示す図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施例となる配線基板は、絶縁基板1上の中央部にICチップを搭載する位置8が設けられており、IC搭載位置8の周囲にはICチップとワイヤを介して接続する複数の電極7が形成されている。図中で符号9はスルーホールであって、スルーホール9は絶縁基板1上で電極7より外側に設けられ、電極7から導体がスルーホール9まで延びている。ここで、本実施例の配線基板と従来の配線基板(図4参照)を比較してみると、本実施例の配線基板では電極7から延びる導体がスルーホール9で止まっているのに対して、図4に示す従来の配線基板は電極7から延びる導体がスルーホール9を通過して絶縁基板1の縁に達している。従来の配線基板において、スルーホール9から絶縁基板1縁まで延びる導体部分は、電解めっきを行うためにのみ必要であったもので、配線基板の機能上不要であり、むしろない方が好ましい。
【0021】
本実施例において、電極7は、図2に示すように、絶縁基板1上に形成された銅(Cu)導体2と、この導体2上に順次に形成されたNi−Bめっき層3、Ni−Pめっき層4、金(Au)めっき層5とから構成されている。
【0022】
なお、図2ではNi−Bめっき層3は銅導体2の側面までを覆うように、Ni−Pめっき層4はNi−Bめっき層3の側面まで覆うように、さらに金めっき層5はNi−Pめっき層4の側面まで覆うように形成されているが、絶縁基板1上に形成された銅導体2の周囲にあらかじめレジストを充填して銅導体2の側面にレジスト壁を設けた後に各めっき層を形成すれば、各めっき層をその下の層の上面にのみ形成することができる。
【0023】
次に本発明の回路導体の製造方法について説明する。
従来の技術の項で述べたように、電子部品に適した、優れた耐食性を示す次亜リン酸化合物を還元剤としたNi−Pめっきを直接銅上に施すことはできない。また、直接銅上に形成可能なほう素系化合物を還元剤としたNi−Bめっきは、銅の表面状態に大きく左右され、つきむらや不析出が発生する。しかし、予め銅表面を酸化することで、つきむらや不析出が発生しないことを見いだした。
【0024】
本発明にかかる製造方法は、図3に示すように、絶縁基板上に銅導体パターンが形成されてなる基板(パターン基板という)を処理する各工程、すなわち、
(1)パターン基板を硫酸1 mol/l、過酸化水素0.9 mol/lよりなる銅のソフトエッチング液中に浸漬して銅の表面を清浄化する工程、
(2)流水により洗浄してソフトエッチング液を除去する工程、
(3)酸化処理液に浸漬して銅導体表面に酸化層を形成する工程、
(4)流水にて洗浄して酸化処理液を除去する工程、
(5)無電解Ni-Bめっき液に浸漬して銅導体表面にNi−B層を形成する工程、
(6)流水にて洗浄してNi-Bめっき液を除去する工程、
(7)無電解Ni−Pめっき液に浸漬してNi-B層上にNi−P層を形成する工程、
(8)流水にて洗浄してNi−Pめっき液を除去する工程、
(9)無電解置換型薄付け金めっきによりNi−P層上に金層を形成する工程、
(10)流水にて洗浄して金めっき液を除去する工程
から構成されている。
【0025】
上記工程からなる製造方法により、図1、2で示す配線基板を作製した。パターン基板は、絶縁性板とその両面を覆う銅箔とからなる銅張り基板上にエッチングレジストを成膜し、エッチングにより導体パターンを形成した後、エッチングレジストを剥離して、作製した。
【0026】
工程(3)で用いた酸化処理液は次のようなものである。
亜塩素酸ナトリウム 1.0 mol/l
リン酸ナトリウム 0.1 mol/l
水酸化ナトリウム 0.4 mol/l
液温 70℃。
【0027】
また、工程(5)で用いた無電解Ni−Bめっき液は次のようなものである。
硫酸ニッケル 0.04 mol/l
クエン酸ナトリウム 0.25 mol/l
ジメチルアミンボラン 0.7 mol/l
ほう酸 0.5 mol/l
pH 9.15
液温 50℃。
【0028】
工程(6)で用いた無電解Ni−Pめっき液は次のようなものである。
硫酸ニッケル 0.08 mol/l
乳酸 0.3 mol/l
プロピオン酸 0.03 mol/l
次亜リン酸ナトリウム 0.2 mol/l
pH 5.0
液温 90℃。
【0029】
工程(7)で用いた無電解Auめっき液は市販品で、置換型薄付け金めっき液としてオーリカルTSS液(上村工業社製)を、無電解厚付け金めっきとして液としてオーリカルTTT液(同)を用いた。
【0030】
ところで、工程(3)において銅導体表面に酸化層を形成する酸化方法としては、大気開放による酸化、加熱による熱酸化、亜塩素酸化合物等酸化剤による化学的酸化、酸素プラズマによるドライ酸化等が考えられる。これらの方法は何れでも良いが、処理の容易さ、酸化膜形成の再現性等考慮すると化学的酸化法が最も好ましい。
【0031】
この酸化層の厚さとしては、5〜1000nmの領域で効果が見られた。尚、銅表面に酸化層を形成した場合、表面に微小な凹凸が生じ、表面積が大きく変化する場合がある。従って、ここで述べた酸化層の厚みは、マクロに見た銅の見かけの表面積に対する酸化層の厚みである。これは、銅の見かけの表面積と、酸化層の密度から計算で求めることもできる。また、オージェ電子分光法や、二次イオン質量分析装置などによる深さ方向の元素比率分析の手法を用いても求めることができる。
【0032】
ほう素(B)系化合物を還元剤とした無電解Ni−Bめっきとしては、市販のめっき液をそのまま使用できる。還元剤としてはジメチルアミンボラン、水素化ほう素ナトリウムまたはカリウムが一般的である。無電解Ni−Bめっきの基本組成は、硫酸ニッケル:0.04 mol/l、ジメチルアミンボラン:0.7 mol/l、マロン酸ナトリウム:0.25 mol/l、pH=5〜10である。
【0033】
ニッケル源としては硫酸ニッケルが最も一般的であるが、このほかに酢酸ニッケル、塩化ニッケル等も使用可能である。錯化剤のマロン酸ナトリウムは他にクエン酸ナトリウムや乳酸などの有機酸またはその塩がもちいられる。また、めっき液の安定性などを考慮し、安定剤やpH緩衝剤など様々な添加物質が加えられる場合がある。これらは何れも本発明に適用可能である。
【0034】
また、Ni−Bめっきに次いでめっきする無電解Ni−Pめっきについても市販のめっき液が使用可能である。これは、すでに銅上に形成されているNi−BのNi原子が、次亜リン酸化合物の酸化反応に対し触媒作用を示すためである。
【0035】
実施の形態1に示す配線基板を作製するにあたり、各工程におけるめっき層の性状を確認するために各種試験を実施した。各種試験の結果について以下に説明する。
【0036】
〔性状試験1〕
絶縁性板とその両面を覆う銅箔とからなる銅張り基板上にエッチングレジストを成膜し、エッチングにより導体パターンを形成した後、エッチングレジストを剥離した。銅導体パターンは、大きさφ50〜500μmまで50μmごとに変えた円形であり、それぞれの大きさのパターンを100個づつ形成した。全ての銅パターンは電気的に独立している。
上記の導体パターンを形成した基板を、銅のソフトエッチング液中に1分間浸漬して銅の面を清浄化し、流水により3分間洗浄し、前述の酸化処理液(亜塩素酸ナトリウム:1.0 mol/l、リン酸ナトリウム:0.1 mol/l、水酸化ナトリウム:0.4 mol/l、液温:70℃)で酸化処理し、そして流水により3分間洗浄した。それから、前述の無電解Ni−Bめっき液(硫酸ニッケル:0.04 mol/l、クエン酸ナトリウム:0.25 mol/l、ジメチルアミンボラン:0.7 mol/l、ほう酸:0.5 mol/l、pH:9.15、液温:50℃)を用いてニッケルめっきを行った。
【0037】
無電解Ni−Bめっき液に浸漬した後すぐに銅パターン部より微細な気泡が発生し、無電解めっき反応が進行していることが確認できた。10分間のめっき後、基板を取り出したところ、銅表面はうすくニッケル色になっていた。
【0038】
この基板を顕微鏡により観察したところ、φ50〜500μmの全ての銅パターンで同様なうすいニッケル色を呈してした。
【0039】
更に、ニッケルめっきの厚みをオージェ電子分光法の厚さ方向分析により測定したところ、全ての銅パターンで190〜200nmの範囲に入っていた。この時、銅パターン以外の基板上にはニッケルは認められなかった。
【0040】
また、酸化処理液に浸漬する時間を10秒〜10分まで変化させ同様な検討を行った。その結果全ての条件で同様な結果が得られた。この時の銅の酸化膜の厚みは5〜1000 nmであった。
【0041】
以上より、本発明のめっき方法により、パラジウム等の触媒溶液による処理無しで、不析出やつきむらがなく、かつ基板内で厚みばらつきの非常に小さなNi−Bめっきが形成可能であることが分かった。
【0042】
〔性状試験2〕
性状試験1と同様にNi−Bめっきまで行った基板に、前述の無電解Ni−Pめっき液(硫酸ニッケル:0.08 mol/l、乳酸:0.3 mol/l、プロピオン酸:0.03 mol/l、次亜リン酸ナトリウム:0.2 mol/l、pH:5.0、液温:90℃)を用いてNi−Pめっきを施した。
30分間めっきを行ったところ、全ての銅パターンはニッケル色になった。
【0043】
更に、ニッケルめっきの厚みをオージェ電子分光法の厚さ方向分析により測定したところ、全ての銅パターンで9.8〜10.3μmの範囲に入っていた。この時、銅パターン以外の基板上にはニッケルは認められなかった。
【0044】
以上より、本発明のめっき方法により、パラジウム等の触媒溶液による処理無しで、不析出やつきむらがなく、かつ基板内で厚みばらつきが非常に小さなNi−Pめっきが形成可能であることが分かった。
【0045】
〔性状試験3〕
性状試験1と同様にφ50〜500μmの銅パターンを形成した基板、酸化処理液及び無電解Ni−Bめっきを用いて、100枚の基板に無電解Ni−Bめっきを1分間施した。これら基板より任意に5個の銅パターンを選び、全部で500個の銅パターンでのNi−B層の厚みを、オージェ電子分光法の厚さ方向分析により測定した。その結果、全ての銅パターンでNi−B層の厚みは190〜200nmの範囲に入っていた。この時、銅パターン以外の絶縁基板上にはニッケルは認められなかった。
【0046】
以上より、本発明のめっき方法により、パラジウム等の触媒溶液による処理無しで、不析出やつきむらがなく、かつ基板毎の間で厚みばらつきが非常に小さなNi−Bめっきが形成可能であることが分かった。
【0047】
〔性状試験4〕
性状試験2と同様な処理によりNi−Pめっきまで施した銅/ニッケルパターン上に、置換型薄付け金めっきで厚さ0.05μm程度の金めっき膜を形成し、次いで無電解厚付け金めっきで厚さ0.5μmの金めっき膜を形成した。なお、置換型薄付け金めっき液としてオーリカルTSS液(上村工業社製)を、無電解厚付け金めっきとして液としてオーリカルTTT液(同)を用いた。
【0048】
その後、φ300μmのパターン100個に直径25μmの金ワイヤを用いてワイヤボンディングを行い、ボンディング後、そのワイヤを垂直方向に引っ張りボンディング強度の試験を行った。その結果、全てのパターン/ワイヤ間で6g以上の引っ張り強度があり、平均8.5gの強度を示した。以上より、本発明により接続強度に優れたIC接合用電極を形成可能であることが分かった。
【0049】
〔性状試験5〕
性状試験1〜4で用いた酸化処理液による銅パターン表面の酸化処理の代りに、空気雰囲気下300℃にて20分の加熱により酸化処理を行った。その結果、空気中の加熱による酸化によれば、その後のめっき処理で、酸化処理液による酸化処理と同様に、良好な結果が得られた。
【0050】
〔性状試験6〕
性状試験1〜4で用いた酸化処理液による銅パターン表面の酸化処理の代りに、銅表面の酸化処理を酸素プラズマによるドライ処理により行った。酸素プラズマ処理は通常のバレル型酸素アッシャーを用い、400Wで5分間行った。その結果、酸素プラズマによる酸化処理により、その後のめっき処理で、酸化処理液による酸化処理と同様に、良好な結果が得られた。
【0051】
〔比較例1〕
比較のため、本発明にかかる製造方法のうちで銅導体の酸化処理(図3中の工程(3))を実施しない場合の例を示す。
基板としては、性状試験1で用いたのと同様にφ50〜500μmの銅導体パターンが形成された基板を用いた。まず、この円形パターン基板を硫酸1mol/l、過酸化水素0.9mol/lよりなる銅のソフトエッチング液中に1分間浸漬し、銅の表面を清浄化した。その後、流水により3分間洗浄し、この基板を実施の形態1で使用した無電解Ni−Bめっき液に浸漬した。浸漬後、約30秒後に一部の銅パターンより微細な気泡が発生した。10分間のめっき後、基板を取り出したところ、気泡の発生していた銅表面のみうすくニッケル色になっていた。その割合は40%程度であった。
【0052】
更に、ニッケルめっきの厚みをオージェ電子分光法の厚さ方向分析により測定したところ、0〜190nmと、銅パターンにより大きくばらついていた。
【0053】
以上より、本発明を実施しない場合においては、均一なめっき厚みが得られず、不析出やつきむらが発生することが分かった。このことより本発明の有効性が実証された。
【0054】
〔比較例2〕
比較のため、基板をパラジウム溶液で表面処理した。
基板としては、性状試験1で用いたのと同様にφ50〜500μmの銅導体パターンが形成された基板を用いた。まず、この基板を硫酸1mol/l、過酸化水素0.9mol/lよりなる銅のソフトエッチング液中に1分間浸漬し、銅の表面を清浄化した。その後、塩化パラジウムの塩酸酸性溶液に浸漬し、実施の形態1で使用した無電解Ni−Bめっき液に浸漬した。浸漬後すぐに基板より微細な気泡が発生し、無電解めっき反応が進行していることが確認できたが、銅パターン以外の部分からも気泡の発生が認められた。10分間のめっき後、基板を取り出したところ、銅表面はうすくニッケル色になっていたが、銅パターン以外の基板の一部もうすいニッケル色になっていた。
【0055】
Ni−Bめっき後、電気的に独立しているはずのパターン間を電気抵抗測定器にて測定したところ短絡していることが分かった。従って塩化パラジウム溶液により触媒処理を施した場合にはめっきしたい銅パターン以外にもNi−Bが析出してしまうことが分かり、本発明の有効性が実証された。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、ICチップを実装するために、金めっき層を最表面に有する箔状銅導体からなる電極を、絶縁基板上形成された箔状銅導体と、この銅導体上に順次に形成されたニッケル−ほう素めっき層及びニッケル−りんめっき層と、金めっき層から構成したので、パラジウムによる触媒処理のない無電解めっきを用いることができ、絶縁基板上に形成された電極や配線間で短絡の生じることのない配線基板を得ることができ、それと共に電解めっきのように配線基板にめっき用リードパターンを設ける必要がなく、一層、配線のファインパターン化を図ることができる。
【0057】
また、本発明によれば、配線基板の製造方法は、ICチップを実装するために、金めっき層を最表面に有する箔状銅導体からなる電極を、(1)絶縁基板上に形成した銅導体表面を酸化し、(2)この銅導体上に、ほう素系化合物を還元剤としてニッケル−ほう素無電解めっきを施し、(3)りん系化合物を還元剤としてニッケル−りん無電解めっきを施し、(4)金の無電解めっきを施すことにより、形成するものとするので、パラジウム含有溶液による触媒処理を必要とせず、銅表面上に直接無電解ニッケルめっきを施すことができる。この時、ニッケルの不析出や、つきむらは発生せず、更に触媒処理起因の短絡不良も発生しないため、接合用電極の形成工程、特に無電解ニッケルめっき工程を著しく短縮すると共に製品の歩留まりの向上が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である配線基板の導体パターンを示す図である。
【図2】一実施の形態である配線基板における電極の構成を示す図である。
【図3】本発明の配線基板の製造におけるプロセスフローを示す図である。
【図4】従来の製造方法による配線基板の導体パターンを説明する図である。

Claims (2)

  1. 金めっき層を最表面に有する銅導体からなる電極を絶縁基板上に並べ設けてなる配線基板の製造方法において、絶縁基板上に形成された銅導体表面を酸化して厚みが5〜1000nmの酸化層を形成した後、該酸化層が形成された銅導体上に、ほう素系化合物を還元剤として含むニッケルめっき液を用いて無電解めっきを施し、次いでりん系化合物を還元剤として含むニッケルめっき液を用いて無電解めっきを施し、さらに金の無電解めっきを施すことを特徴とする配線基板の製造方法。
  2. 前記銅導体表面の酸化を、亜塩素酸化合物を含む酸化処理液により行う請求項1記載の配線基板の製造方法。
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