JP3728555B2 - 単結晶ダイヤモンド膜合成用基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トランジスタ、ダイオード、各種センサ等の電子装置、ヒートシンク、表面弾性波素子、X線窓、光学関連材料、耐摩耗材料、装飾材料及びそのコーティング等に使用されるダイヤモンド膜に関し、特に、単結晶ダイヤモンド膜を気相合成するために使用する単結晶ダイヤモンド合成用基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンドは、耐熱性に優れると共に、バンドギャップが5.5eVと大きく、通常は絶縁体であるが不純物ドーピングにより半導体化できる。また、絶縁破壊電圧及び飽和ドリフト速度が大きい。誘電率が小さいという優れた電気的特性を有する。このような特徴によりダイヤモンドは高温、高周波及び高電界用の電子デバイス・センサ材料として期待されている。
【0003】
また、ダイヤモンドのバンドギャップが大きいことを利用した紫外線等の短波長域に対応する光センサ又は発光素子への応用、熱伝導率が大きく、比熱が小さいことを利用した放熱基板材料への応用、物質中で最も硬いという特性を生かした表面弾性波素子への応用又は高い光透過性又は屈折率を利用したX線窓及び光学材料への応用等が進められている。
【0004】
これら種々の応用において、ダイヤモンドの特性を最大限に発揮させるには、結晶の構造欠陥を低減した高品質の単結晶を合成することが必要である。
【0005】
そこで本発明者等は以前に単結晶ダイヤモンド膜を大面積に低コストで気相合成する方法を提案した(特開平8−151296号公報)。この従来の技術においては、白金の(111)結晶面を基板とした気相合成で単結晶ダイヤモンド膜を得る方法を提案した。この方法により、合成されるダイヤモンドは表面で結晶間の融合が自発的に進行し、平滑な表面が得られる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ダイヤモンド膜の基板となる白金単結晶は一般にチョコラルスキー法(Czochralski法)で製造されるが、高価であり、得られる単結晶の面積も精々25mm径に止まる。
【0007】
そこで、本発明者等は、白金単結晶膜がチタン酸ストロンチウム単結晶上にも形成できることを見出したが(特開平8−151295号公報)、この場合も得られる単結晶膜の面積は最大で50mm角である。電子デバイス分野でダイヤモンドを実用するためには、単結晶ダイヤモンド膜を低コストで大面積に合成する技術を確立することが必要である。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、高品質で大面積の単結晶ダイヤモンドを低コストで合成することができる基板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る単結晶ダイヤモンド膜合成用基板は、表面が(0001)又は(111)面である単結晶炭化珪素基体と、前記単結晶炭化珪素基体上に形成され表面が(111)面である単結晶白金層とを有し、前記単結晶白金層の表面が単結晶ダイヤモンドの合成面となることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る他の単結晶ダイヤモンド膜合成用基板は、表面が(111)面である単結晶シリコン基体と、前記単結晶シリコン基体上に形成され表面が(0001)又は(111)面である単結晶炭化珪素膜と、前記単結晶炭化珪素膜の上に形成され表面が(111)面である単結晶白金層と、を有し、前記単結晶白金層の表面が単結晶ダイヤモンドの合成面となることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明においては、前記白金層の厚さが0.1μm以上10μm未満であることが好ましい。
【0014】
本発明においては、大面積に形成することができる炭化珪素層上に白金層を形成し、その白金層上に単結晶ダイヤモンドを形成するので、単結晶ダイヤモンド膜を低コストで大面積に合成することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例に係る単結晶ダイヤモンド合成用基板について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の第1実施例に係る単結晶ダイヤモンド合成用基板を示す断面図である。本実施例の単結晶ダイヤモンド合成用基板1は、炭化珪素層2を基板として、その上に白金層3を形成してなる構成である。
【0016】
本実施例においては、炭化珪素層2の上に白金層3を形成することにより、低コストで基板を大面積化することができるために、電子デバイス作製プロセスに有用である。
【0017】
本願出願人は、白金単結晶膜が形成できると共に、最大直径150mmまでの基板が入手できる単結晶アルミナ(サファイア)に注目し、単結晶ダイヤモンドを低コストで大面積に合成することができる技術を提案した(特願平10−060222)。この発明は、その初期の目的は達成したが、白金単結晶膜に単結晶アルミナを形成した基板にダイヤモンドを800乃至900℃で気相合成した後に、室温まで冷却すると熱膨張率の差に起因する応力のために、合成されたダイヤモンド膜が剥離又は破損しやすいということが判明した。
【0018】
電子デバイス分野でダイヤモンドを実用するためには、基板との密着性に優れた単結晶ダイヤモンド膜を低コストで大面積に合成する技術を確立することが必要である。本発明においては、炭化珪素層2上に白金層3を形成するので、合成されたダイヤモンド膜が剥離又は破損しやすいというような問題はない。
【0019】
次いで、本発明の第2実施例について説明する。図2及び図3は、本発明の第2実施例に係る単結晶ダイヤモンド合成用基板を示す断面図である。本実施例における単結晶ダイヤモンド合成用基板1は、単結晶炭化珪素層4、6を基板として、その上に単結晶白金層5が形成される構成である。図2に示すように、単結晶ダイヤモンド合成用基板1は、表面が(0001)面である六方晶の単結晶炭化珪素層4を基板として、その上に表面が(111)の単結晶白金層5を形成してなる構成である。また、図3に示すように、単結晶ダイヤモンド合成用基板1は、表面が(111)面である正方晶の単結晶炭化珪素層6を基板として、その上に表面が(111)面である単結晶白金層5を形成してなる構成である。
【0020】
本発明においては、白金、特に単結晶白金層5の(111)面上に単結晶ダイヤモンドが気相合成できることは周知の事実である。そこで、大面積の白金膜を形成するための基材の選択がキーとなるが、これには低コストであるのみならず、(1)ダイヤモンド合成条件下において白金の結晶構造を阻害しない。(2)ダイヤモンドを気相合成した後も、剥離又は破損しない。という条件が求められる。
【0021】
上述の白金とチタン酸ストロンチウム構造は、(1)及び(2)の条件を満たすことができない。また、上述の白金とサファイア構造は、(1)の条件を満たすが、(2)の条件を満たすことができない。これに、対して本発明の白金層と炭化珪素層構造は、(1)及び(2)の両方を満足する。
【0022】
また、本実施例においては、単結晶炭化珪素層4、6基板上に単結晶白金層5を形成すると、界面では、白金と炭化珪素とが化学反応を起こし、白金シリサイドを生成する。これにより、化学的に結合した強固な界面が形成されるため、ダイヤモンドを気相合成しても、剥離又は破損の問題は発生しない。更に、白金と珪素との化学反応は界面近傍の0.01μmにとどまるために、単結晶白金層5全体がシリサイド化されるわけではなく、ダイヤモンドのエピタキシャル成長に適した単結晶白金層5は残されたままである。よって、ダイヤモンドと白金の界面は強固な密着性を有し、剥離又は破損の心配はない。
【0023】
このように、単結晶白金層5と単結晶炭化珪素層4、6とからなる単結晶ダイヤモンド合成用基板1は、ダイヤモンド合成条件下において、白金の結晶構造を阻害せず、ダイヤモンドを気相合成した後も、剥離又は破損は生じない。なお、炭化珪素には、珪素面及び炭素面の2種類が存在するが、白金との化学反応性及び界面密着性に関しての差異はない。
【0024】
これにより、本実施例においては、単結晶白金層5を大面積で形成することができ、剥離又は破損がない密着性に優れた単結晶ダイヤモンドを大面積で形成することが可能となる。
【0025】
更に、本発明の第3実施例について説明する。図4及び図5は、本発明の第3実施例に係る単結晶ダイヤモンド合成用基板を示す断面図である。本実施例における単結晶ダイヤモンド合成用基板1は、単結晶シリコン7を基板として、その上に単結晶炭化珪素層4、6を形成し、更にその上に単結晶白金層5を形成してなる構成である。図4に示すように、単結晶ダイヤモンド合成用基板1は、表面が(111)面である単結晶シリコン7を基板として、その上に表面が(0001)面である六方晶の単結晶炭化珪素層4を形成し、更にその上に表面が(111)の単結晶白金層5を形成してなる構成である。また、図5に示すように、単結晶ダイヤモンド合成用基板1は、表面が(111)面である単結晶シリコン7を基板として、その上に表面が(111)面である正方晶の単結晶炭化珪素層6を形成し、更にその上に表面が(111)面である単結晶白金層5を形成してなる構成である。
【0026】
本実施例においては、単結晶シリコン7を基板とすると、単結晶炭化珪素4、6が得られることは既知の事実である。これに白金を蒸着形成した単結晶白金層5と単結晶炭化珪素層4、6と単結晶シリコン7とからなる単結晶ダイヤモンド合成用基板1は、直径300mmまでの大面積単結晶が容易に低コストで入手できると共に、炭化珪素層4、6よりも熱膨張率が小さいことに起因して、ダイヤモンドを合成した場合に全体の膜応力が低減するメリットを有する。但し、白金層5を単結晶シリコン7上に直接形成した白金層5と単結晶シリコン層7とからなる構造では、白金層5の膜厚をいくら厚くしてもその全てがシリサイド形成に費やされてしまい、単結晶ダイヤモンド合成用基板1としては、不適当である。なお、白金層5と単結晶シリコン7の間に炭化珪素層4、6を形成した構造は、原子間距離の関係(白金:2.77Å、炭化珪素:3.08Å、シリコン:3.84Å)から考えても、高品質の白金単結晶膜形成に有利である。
【0027】
これにより、本発明においては、白金を蒸着形成した単結晶白金層5と単結晶炭化珪素層4、6と単結晶シリコン7とからなる単結晶ダイヤモンド合成用基板1は、直径300mmまでの大面積単結晶が容易に低コストで入手できると共に、炭化珪素層4、6よりも熱膨張率が小さいことに起因して、ダイヤモンドを合成した場合に全体の膜応力を低減させることができる。
【0028】
上述のいずれの実施例において、白金層3の膜厚は、ダイヤモンドの合成時に重大な作用を及ぼす。この白金層3の膜厚が0.1μm以上以下の場合には、炭化珪素層2との化学反応により白金がすべてシリサイド化し、単結晶ダイヤモンドの成長に適した基板とならない。一方、白金層3の膜厚が10μmを超える場合には、白金とダイヤモンドの熱膨張率の差に起因したダイヤモンド膜の剥離、変形又は破損が発生する。白金層3の膜厚を0.1μm以上10μm未満とすることによりダイヤモンドと炭化珪素との間の応力緩和層として作用し、ダイヤモンドの剥離又は破損の問題が回避できる。
【0029】
また、上述のいずれの実施例においても、単結晶ダイヤモンド合成基板1として、単結晶シリコン7からなる基体上に炭化珪素層2を形成する構成とすることができる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の効果を実証するために、実際の本発明の実施例に係る単結晶ダイヤモンド合成用基板製造してその特定を評価した結果について説明する。
【0031】
実施例1
昇華法により作製した六方晶炭化珪素(0001)を基板として、DCスパッタ法により白金ターゲットを原材料に白金(111)膜を作製した。蒸着時の基板温度は600℃、アルゴンガス圧は0.13Paを保持した。蒸着速度8Å/秒で膜厚4μmまで蒸着した。
【0032】
これを基板としてダイヤモンドを気相合成した。ダイヤモンドの核形成を促進するために、白金表面を予めダイヤモンドパウダー縣濁液中で超音波処理した上で、水素(H2)中で1%以下に希釈したメタン(CH4)を原料ガスとして、ガス圧は6.6kPa、基板温度は850℃で10時間のマイクロ波CVDを行い、単結晶ダイヤモンドが合成されることを確認した。
【0033】
実施例2
シラン(SiH4)とエチレン(C2H4)を原料として熱CVD法でシリコン(111)表面に立方晶炭化珪素(111)膜を形成した。蒸着時の基板温度は1300℃に保持した。蒸着速度4Å/秒で膜厚3μmまで蒸着した。炭化珪素膜の単結晶性は、X線回折及び反射高速電子回折で確認した。この上に、実施例1と同様に白金単結晶膜を膜厚0.1μmスパッタ蒸着した。
【0034】
これを基板としてダイヤモンドを気相合成した。基板表面を予めダイヤモンドパウダー懸濁液中で超音波処理した上で、水素(H2)中で1%以下に希釈したメタン(CH4)を原料ガスとして、ガス圧6.6kPa、基板温度850℃で10時間のマイクロ波CVDを行い、単結晶ダイヤモンドが合成されることを確認した。
【0035】
実施例3
150mmのシリコン(111)ウエハを基板とし、分子線エピタキシャル成長法で膜厚1μmの六方晶炭化珪素膜を作製した。更に、スパッタ法で、白金を膜厚10μm蒸着した。なお、蒸着時の基板温度は600℃とした。
【0036】
これを基板としてダイヤモンドを気相合成した。基板表面を予めダイヤモンドパウダー懸濁液中で超音波処理した上で、水素(H2)中で1%以下に希釈したメタン(CH4)を原料ガスとして、ガス圧6.6kPa、基板温度850℃で10時間のマイクロ波CVDを行い、単結晶ダイヤモンドが合成されることを確認した。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、大面積に形成することができる炭化珪素層上に白金層を形成し、その白金層上に単結晶ダイヤモンドを形成することにより、単結晶ダイヤモンド膜を低コストで大面積に合成することができる。
【0038】
また、本発明によれば、単結晶ダイヤモンド膜を低コストで大面積に合成することができ、この合成された単結晶ダイヤモンド膜は基板との密着性に優れているため、産業上の利用分野に記載したようなこれまで単結晶ダイヤモンドの実用化が困難であった分野において実用化が実現でき、この種の技術分野に多大の貢献をなす。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る単結晶ダイヤモンド合成用基板を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施例に係る単結晶ダイヤモンド合成用基板を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施例に係る単結晶ダイヤモンド合成用基板を示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施例に係る単結晶ダイヤモンド合成用基板を示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る単結晶ダイヤモンド合成用基板を示す断面図である。
【符号の説明】
1;単結晶ダイヤモンド合成用基板
2;炭化珪素層
3;白金層
4、6;単結晶炭化珪素層
5;単結晶白金層
7;単結晶シリコン
Claims (3)
- 表面が(0001)又は(111)面である単結晶炭化珪素基体と、前記単結晶炭化珪素基体上に形成され表面が(111)面である単結晶白金層とを有し、前記単結晶白金層の表面が単結晶ダイヤモンドの合成面となることを特徴とする単結晶ダイヤモンド膜合成用基板。
- 表面が(111)面である単結晶シリコン基体と、前記単結晶シリコン基体上に形成され表面が(0001)又は(111)面である単結晶炭化珪素膜と、前記単結晶炭化珪素膜の上に形成され表面が(111)面である単結晶白金層と、を有し、前記単結晶白金層の表面が単結晶ダイヤモンドの合成面となることを特徴とする単結晶ダイヤモンド膜合成用基板。
- 前記白金層の厚さが0.1μm以上10μm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶ダイヤモンド膜合成用基板。
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