JPH07309696A - ダイヤモンド結晶およびその製造方法 - Google Patents

ダイヤモンド結晶およびその製造方法

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JPH07309696A
JPH07309696A JP8469695A JP8469695A JPH07309696A JP H07309696 A JPH07309696 A JP H07309696A JP 8469695 A JP8469695 A JP 8469695A JP 8469695 A JP8469695 A JP 8469695A JP H07309696 A JPH07309696 A JP H07309696A
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diamond
crystal
diamond crystal
plane
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JP8469695A
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English (en)
Inventor
Takefumi Ishikura
威文 石倉
Satoshi Yamashita
敏 山下
Shinichi Oga
伸一 男鹿
Hiroshi Kawarada
洋 川原田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokyo Gas Chemicals Co Ltd
Tokyo Gas Co Ltd
Original Assignee
Tokyo Gas Chemicals Co Ltd
Tokyo Gas Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】基板と平行な配向面が極めて小さくて尖ったダ
イヤモンド結晶およびそのようなダイヤモンド結晶の製
造方法を提供する。 【構成】化学的気相成長法により基板上に合成されるダ
イヤモンド結晶の(111)配向面が基板面と平行でか
つ該基板面と平行な(111)配向面の面積が結晶の該
基板上の面積の1/24以下である。また炭素と結合し
ない材質からなる基板上で、少なくとも炭素と水素とを
含みかつ原料ガスの全分子数に対する炭素原子数の割合
が0.5%以下である原料ガスを活性化し、基板上に、
(111)配向面が基板面と平行でかつ基板面と平行な
(111)配向面の面積が結晶の基板上の面積の1/2
4以下であるダイヤモンド結晶を析出させる。基板に銅
板を用い、原料ガスは少なくともメタンガスと水素ガス
とを含み、メタンガスの濃度を0.5%以下とするのが
好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子材料や工具あるい
は硬度測定などに優れた特性を有するダイヤモンド結晶
およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドは、極めて大きな熱伝導
性、高い硬度、大きな耐摩耗性、極めて大きな屈折率と
反射率、電気伝導性など特異な物性を有していることか
ら、装飾品としてはもちろんのこと、硬度計、工具、研
磨材、電子材料などに利用されており、最近は半導体素
材への応用も検討されている。
【0003】ダイヤモンドの数々の優れた電気的特性の
1つに、表面から電子を放出しやすいという負の電子親
和力を安定して示すことが知られており、その特性を応
用した電子部品の1つとして冷陰極が注目されている
(日経サイエンス1992年12月号第129頁および
第130頁)。またこの特性の別の応用例として、物質
の表面の原子構造を解析するAFM(Atomic F
orce Microscope)やSTM(Scan
ning Tunnel Microscope)のよ
うな装置の探針としてダイヤモンド結晶を利用すること
が考えられている。
【0004】ダイヤモンドは結晶面によって原子の密度
や原子の配列が異なるためにその物性も異なり、(11
1)面が負の電子親和力を持ち、上記の応用面で有利で
あることが知られている。また電子の放出は平面部より
も尖鋭な部分ほど電界が集中し易いことから大きくなる
ことが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年、気相
からダイヤモンドを低圧で合成する化学的気相成長法
(CVD法)が研究、開発され、種々の方式のCVD法
が試みられているが、上述したような応用面を考える
と、CVD法により合成されるダイヤモンドの結晶配向
や形状が任意に制御できることが必要である。
【0006】従来、CVD法により合成されるダイヤモ
ンドの結晶方向を制御する技術がわずかではあるが知ら
れている。その1つは、エピタキシャル成長法と呼ばれ
ている方法で、この方法によれば、ダイヤモンドを析出
させる基板として同じダイヤモンドあるいはごく限られ
た材料(たとえば炭化ケイ素、シリコン、立方晶窒化ホ
ウ素、ニッケルなど)を用いることによりダイヤモンド
をその基板の結晶方向と同じ方向に配向させることがで
きる(雑誌「表面科学」第15巻第2号、第91頁〜第
95頁、平成6年3月10発行)。また別の方法とし
て、特開平2−160695号には、銅の単結晶基板に
有機化合物を含有する原料ガスを活性化して(111)
面が基板と平行に成長した六−八面体の単結晶的なダイ
ヤモンドを析出させる方法が提案されている。
【0007】これらの方法を用いれば、(111)面に
配向したダイヤモンドを合成することはできるが、応用
面としての冷陰極や物質表面の原子構造の解析装置に用
いるのに好適な形状とするためにはその後ダイヤモンド
結晶の一部を電界を集中させるために尖鋭にする加工が
必要になる。
【0008】ところでダイヤモンドを対象としたもので
はないが、単結晶シリコンで作製した冷陰極の1種であ
る電界放射形冷陰極の一部に尖鋭なエミッタを作製する
方法として、(1)真空蒸着を利用する方法、(2)異
方性エッチングを利用する方法、(3)膜の堆積形状を
利用する方法、(4)イオンミリング法などが知られて
いる(「電子工業月報」第32巻第12号、1990年
12月発行 第23頁ないし第25頁)。これらの方法
のうち(1)および(3)の方法はシリコン基板に蒸着
によりエミッタを形成する方法なのでダイヤモンドの尖
鋭加工には適用することはできないし、(2)の方法
は、ダイヤモンドの異方性エッチングが難しい上に、単
結晶にしか適用できないので現状大面積のダイヤモンド
単結晶が合成不可能である以上、この方法も利用できな
い。(4)の方法は結晶にイオンビームを当て結晶の方
向によらず等方的に加工する方法であるが、ダイヤモン
ドはイオンにより削りにくく時間が掛る上イオンビーム
のエネルギー制御が微妙で実用化が困難である。
【0009】本発明は上記の点にかんがみてなされたも
ので、第1の目的は、基板と平行な(111)配向面が
極めて小さくて尖鋭加工が不要なダイヤモンド結晶を提
供することにある。
【0010】本発明の第2の目的は、上記第1の目的と
して提供するダイヤモンド結晶を製造する方法を提供す
ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は上記第1の目的
を達成するために、化学的気相成長法により基板上に合
成されるダイヤモンド結晶の(111)配向面が基板面
と平行でかつ該基板面と平行な(111)配向面の面積
を結晶の該基板上の面積の1/24以下とした。
【0012】また本発明の第2の目的を達成するため
に、炭素と結合しない材質からなる基板上で、原料ガス
は少なくとも炭素を含む化合物と水素ガスとを含み、原
料ガスの全分子数に対する炭素原子数の割合が0.5%
以下である原料ガスを活性化し、基板上に、(111)
配向面が基板面と平行でかつその(111)配向面の面
積が結晶の基板上の面積の1/24以下のダイヤモンド
を析出させるダイヤモンド結晶の製造方法を提供する。
【0013】本発明による製造方法においては、原料ガ
スに含まれる炭素化合物の種類は1種類でも複数種類の
組み合わせでもよい。また基板には銅板を用い、原料ガ
ス中に含まれる炭素原子に対して酸素原子の割合が1:
1以下の酸素を含むことが好ましい。
【0014】
【作用】本発明は以上の構成によって、少なくとも炭素
を含む化合物とメタンガスと水素とを含有する原料ガス
と、銅のような炭素と結合しない材質の基板を用い、原
料ガスの全分子数に対する炭素原子数の割合を約0.5
%以下とすることによって、結晶成長の初期の段階では
平板状であるが、その後成長が進むにつれて基板面と平
行な(111)面が結晶の基板上の面積の1/24以下
にまで尖鋭化したダイヤモンド結晶が合成される。この
ようにダイヤモンド結晶の(111)面が基板面と平行
でその(111)面の面積が結晶の基板面上の面積の1
/24以下であるので、尖鋭加工が不要である。
【0015】
【実施例】以下に本発明を実施例について詳細に説明す
る。
【0016】以下に説明する実施例はマイクロ波プラズ
マCVD法によるダイヤモンド合成に係る例であり、図
1にダイヤモンド合成装置であるマイクロ波プラズマC
VD装置を示す。
【0017】この装置は従来知られているものと同じ構
造で、1はダイヤモンドを合成する石英製の反応容器、
2は反応容器1内に設けられた基板支持台、3はマイク
ロ波を反射する反射板、4は励起源としてのマイクロ波
発振器、5はマイクロ波発振器4により発生されるマイ
クロ波を反応容器1の反応場F(破線の丸で示す)に導
く導波管であり、導波管5にはマイクロ波発振器4に供
給される電力を監視する電力モニタ6が設けられてい
る。
【0018】上記装置によりダイヤモンドを合成するに
は、まず反応容器1を高真空にし、ガス導入口1aか
ら、原料ガスとして、メタン、エタン、プロパン、ブタ
ン、エチレン、ベンゼンなどの炭化水素ガスと、酸素
と、水素のあらかじめ定めた割合の混合ガスを反応容器
1内に導入し、マイクロ波発振器4を起動させ導波管5
を介してマイクロ波を反応容器1の反応場Fに導きプラ
ズマを生成する。混合ガスの導入により反応容器1内の
圧力を40Torrに維持する。その後基板支持台2に
ダイヤモンド析出用の基板10としての銅板を乗せたも
のを反応容器1内の反応場Fに形成されているプラズマ
内に入れる。このとき基板である銅板の温度は約650
℃ないし840℃になっており、反応容器1の反応場F
の周辺部は冷却水で冷却されている。約50分後には基
板10上に(111)面に配向ししかもその配向面が基
板10上のダイヤモンド面の1/24以下のダイヤモン
ド結晶が成長する。
【0019】次に本発明者らが行ったダイヤモンドの合
成実験を説明する。
【0020】実験には図1に示すマイクロ波プラズマC
VD装置を用いた。マイクロ波発振器4の発振周波数は
2450MHZ 、出力は500W〜600Wである。ダ
イヤモンド合成のための原料ガスは、メタンガスと、酸
素と、水素との混合ガスまたは酸素を含まないメタンガ
スと水素だけの混合ガスであり、全原料ガスの供給量は
100ccm(cm3 /分)一定とし、メタンと酸素の
供給量またはメタンの供給量を変えた。ダイヤモンドを
析出させる基板10には単結晶および多結晶の銅板を用
い、銅板との比較をするために単結晶シリコンの(10
0)面も用いた。基板10の温度は650℃〜840℃
であった。
【0021】実験の結果を表1に示す。
【0022】実験No.1〜4および13は基板10と
して多結晶の銅板を用いたものであり、実験No.6〜
12は単結晶の銅板を用いたものである。多結晶の銅板
については、「銅(多)」として示し、単結晶の銅板に
ついてはダイヤモンドを析出させる面の結晶面も示して
ある(たとえば、「銅(100) 」)。メタンおよび酸素に
ついては供給量(ccm)を示し、さらに原料ガスにお
ける炭素原子数の割合(メタン濃度)CNRと、炭素と
酸素との原子数比(C:O)を示してある。なお、本発
明において、「炭素原子数の割合CNR」は次の数1で
表わされる。
【0023】
【数1】 炭素原子数の割合CNR(%)=(炭素化合物の供給量)×(炭素化合物1 分子中の炭素原子数)/原料ガスの供給量 =(炭素化合物の分子数)×(炭素化合物1 分子中の炭素原子数)/原料ガスの全分子数 =炭素原子数/原料ガスの全分子数 また結晶の尖鋭度を示すa/bのうち、aは基板10上
に析出したダイヤモンド結晶の(111)配向面の面
積、bは同ダイヤモンド結晶の基板10上の面積である
(図2(b)参照)。
【0024】
【表1】 実験結果の考察に先立ち、ダイヤモンド結晶の先鋭化に
ついて説明する。
【0025】図2(a)にはダイヤモンド結晶の(11
1)配向面を斜線で示してあり、I、II、III・・・の
順に先鋭化が進んでいる。図2(a)IIIの結晶につ
いて図2(b)に示したように、(111)配向面の面
積をa、基板上における底面積をbとして、a/bの値
で先鋭化の程度すなわち先鋭度を表すものとする。たと
えば図2(a)IIの形状の結晶の先鋭度a/bは1/6
である。いまこの図2(a)IIの結晶の(111)配向
面(斜線の三角形)を4等分してできた部分(網掛けで
示す)cが(111)配向面であるダイヤモンド結晶の
先鋭度a/bは1/24となるが、この程度の先鋭度が
あれば広い応用面が考えられるので、本発明では先鋭度
a/bが1/24以下の場合を「先鋭化」有りと定義す
る。
【0026】そこでまず、基板10に多結晶の銅板を用
いた実験No.1〜4の結果について考察する。
【0027】実験で得られたダイヤモンド結晶につい
て、図2(a)には(111)配向面を模式的に斜線で
示し、図3(a)〜(e)には結晶構造の顕微鏡写真を
示す。図3の顕微鏡写真において黒っぽい三角形状部分
が基板10と平行な(111)配向面であり、この(1
11)配向面に注目すると、メタン濃度が1.0%(図
3(a)に示す)から0.8%(図3(b)に示す)位
までの間は(111)配向面の面積aと底面積bとの比
a/bは1/6で尖鋭化は認められないが、メタン濃度
が0.5%(図3(c)に示す)以下になると(11
1)配向面の大きさはa/b=1/24以下となり、か
なりの尖鋭化が認められるようになり、メタン濃度がさ
らに小さくなって0.4%(図3(d)に示す)になる
と(111)配向面の大きさはa/b=1/100以下
となり、極めて尖鋭化されることが認められる。ここで
注意しなければならないことは、本発明により合成され
るダイヤモンドは基板10と平行な(111)配向面だ
けが面積が減少していき、ダイヤモンド結晶の尖鋭化に
寄与することである。
【0028】実験No.5は基板10に単結晶シリコン
を用いた場合を示しており、メタン濃度も酸素濃度も小
さいものの、図3(e)からわかるように、合成される
ダイヤモンド結晶は(111)配向している結晶が少な
いだけでなく、尖鋭化が認められない。
【0029】次に単結晶の銅板を基板として用いた実験
No.6〜12の結果について考察する。
【0030】実験No.7、9、11では多結晶の銅板
を用いた場合と同様に、メタン濃度が0.4%以下なら
ばa/bは1/24以下となり十分な尖鋭化が認められ
た。また実験No.12のように酸素を全く用いない場
合でもa/b=1/24で尖鋭化が認められた。
【0031】図4(a)〜(g)は実験No.6〜12
に対応するダイヤモンド結晶の結晶構造を示す顕微鏡写
真である。
【0032】図4(a)、(c)、(e)はメタン濃度
が1.0%の場合であり、実験No.6、8、10に対
応し、(111)配向はしているが、先鋭化は認められ
ない。これに対して図4(b)、(d)、(f)は実験
No.7、9、11に対応し、(111)配向とともに
先鋭化が認められる。
【0033】次に銅板の基板温度を高くして合成した実
験No.13について説明する。他の条件はすべて同じ
で基板温度のみ低い実験No.4(a/bは1/100
以下)には尖鋭度は劣るものの、a/bは1/24であ
り、やはり尖鋭化が認められた。
【0034】図3および図4は1枚の写真に複数のダイ
ヤモンド粒子が比較的小さく写っているために問題の
(111)配向面が見にくいかもしれないので、図5に
(111)面の大きさが異なる3つのダイヤモンド粒子
について大写しで示す。図5(a)はa/b<約1/1
00、(b)はa/b=約1/6、(c)はa/b=約
1/3の各場合を示す。また図6はダイヤモンド結晶の
尖鋭度を示す顕微鏡写真で、(a)は尖鋭度がa/b<
約1/100のダイヤモンド結晶を真上すなわち(11
1)方向から見たもの、(b)は同結晶を50°傾けて
見たもの、(c)は同結晶を80°傾けて見たもの、
(d)は同結晶の複数個を75°傾けて見たものであ
る。図6からダイヤモンド結晶の尖鋭形状がよくわかる
ものと思われる。
【0035】本発明におけるダイヤモンド粒子は個々の
粒子の形状が容易に観察できる程度に孤立した状態にあ
る。一般に、ダイヤモンドの多結晶連続膜では2次核形
成と呼ばれる新たな核形成が起り易いために、粒子の配
向性や形状の制御が困難である。これに対して孤立粒子
には粒界がないことから、連続膜と比較して結晶性が優
れていることが知られており、良好な材料特性が期待で
きる。
【0036】したがって、孤立粒子の状態を保つために
核形成密度に対応した合成時間を制御する必要がある。
たとえば、ダイヤモンドの核形成密度を1×104 個/
mm2 に制御する場合には、孤立粒子の状態を保つため
に合成時間も制御して、少なくともダイヤモンド結晶粒
子の粒径を10μm以下に抑える必要がある。なぜなら
粒子の平均粒径が10μmを越えると粒子が基板をほと
んど覆ってしまい、連続膜になることが計算により容易
にわかるからである。
【0037】本発明者らの実験によれば、メタン供給量
が0.5ccmの場合はダイヤモンド粒子の成長速度は
0.5μm/時程度であるので、ダイヤモンド核形成密
度を1×104 個/mm2 とすると、合成時間は約20
時間より短くする必要がある。
【0038】図7(a)〜(d)は基板である銅板上の
同じ領域についてダイヤモンド結晶粒の動きを時間の経
過とともに観察した顕微鏡写真であり、(a)は合成開
始後15分経過、(b)は30分経過、(c)は40分
経過、(d)は50分経過後のダイヤモンド結晶粒の状
態を示す。
【0039】写真中に白矢印で示した結晶粒に注目する
と、15分経過した図7(a)から30分経過した図7
(b)までの間に位置を大きく変えており、40分経過
の図7(c)ではさらに大きく動いていることが他の結
晶粒との位置関係からわかる。この移動現象は特に結晶
粒が小さい初期の段階で顕著である。
【0040】図8(a)〜(d)はダイヤモンド結晶粒
の成長過程を示す写真である。
【0041】写真中に白矢印で示した結晶粒子に注目す
ると、図8(a)ではまだ平板状であるが(図8(e)
に示した模式図の段階1または2に相当する)、図8
(b)になるとa/b=1/6程度に成長し(図8
(e)の段階4に相当する)、図8(c)になると、a
/bが約1/10以下となって尖鋭化がある程度進行し
(図8(e)の段階5に相当する)、図8(d)になる
と、a/bが1/24以下に尖鋭化が進行する(図8
(e)の模式図の段階6に相当する)。このときの結晶
粒径は約200nmである。このことから、本実施例で
はa/bが1/24以下の尖鋭化した粒径が約200n
mのダイヤモンド結晶粒子が合成されていることがわか
る。
【0042】次に本発明者らは、図8(a)〜(d)の
顕微鏡写真からダイヤモンド結晶粒の動きを観察した結
果、本発明による合成条件のもとでダイヤモンド結晶が
合成の初期の段階で銅基板上で(111)配向する理由
を推定したので図9(a)〜(c)を参照して以下に説
明する。
【0043】まず図9(a)の段階においては、銅板上
にダイヤモンドの核が形成される。このときのダイヤモ
ンド結晶粒の形状は、観察結果によると、図8(e)に
示す模式図の段階1、2に示す板状のものが多い。微小
なダイヤモンドは(111)面が大きく現れた平板状形
状を有していることがわかる。
【0044】次に、図9(b)の段階においては、得ら
れた微小なダイヤモンド結晶は銅板上において移動、回
転を行なっている。このような移動現象が起きているこ
とから、平板状のダイヤモンドが移動中に大きい平板面
である(111)面を基板である銅板に対して平行に向
けるようになることが確認できた。この移動現象は特に
100nm以下の結晶において顕著である。
【0045】図9(c)の段階においては、ダイヤモン
ド結晶粒が成長し500nmを越えると、結晶粒の移動
はほとんど起こらなくなる。すでに方向が固定したダイ
ヤモンド結晶粒は成長を続け、その結果(111)配向
したダイヤモンド結晶が数多く得られる。(111)に
配向した結晶の割合は70〜80%である。
【0046】以上で本発明の実施例の説明を終わるが、
本発明で使用できるダイヤモンド合成用の原料ガスとし
ては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、
エチレン、ベンゼン、アセチレンなどの炭化水素と水素
ガスとの混合ガス、この混合ガスに酸素ガスまたは二酸
化炭素を加えたもの、あるいはメタノール、エタノー
ル、アセトンなどの含酸素有機化合物と水素ガスとの混
合ガス、一酸化炭素と水素ガスとの混合ガスなどが利用
できる。本発明によるダイヤモンドの合成に用いられる
原料ガスの構成成分である炭素成分は炭素化合物の種類
によらない。
【0047】本実施例では基板として銅板を用いたが、
ダイヤモンド結晶が配向する理由が上で説明したように
なるので、ダイヤモンド結晶の配向時の振舞いが同じで
あるような材質すなわち炭素と結合しない材質(たとえ
ば白金、金、銀)の基板であれば銅板に代えて使用する
ことができる。さらに、本発明の基板は、無垢の金属材
料だけでなく、たとえばシリコン、酸化ケイ素、窒化ケ
イ素、炭化ケイ素、サファイア、モリブデン、タングス
テンのようなダイヤモンドを合成する環境で安定な材料
に、真空蒸着、スパッタリング、イオンビーム成膜、イ
オンプレーティングなどのPVD法、CVD法、メッキ
などにより銅、金、銀、白金などの薄膜を成膜したもの
でもよい。
【0048】また本実施例ではマイクロ波プラズマを用
いたプラズマCVD法によりダイヤモンド結晶を合成し
たが、本発明は直流放電プラズマ、熱プラズマ、高周波
熱プラズマを利用することもできるし、熱フィラメント
CVD法、電子衝撃CVD法、アークジェット法なども
利用することができる。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
低圧下でのCVD法により結晶の(111)面が基板面
と平行でその(111)面の面積が結晶の基板面上の面
積の1/24以下の先端の尖ったダイヤモンド結晶が得
られるので、従来の技術では困難とされている尖鋭加工
が不要である。本発明により得られ得るダイヤモンド結
晶は電子親和力が負である(111)面に配向してお
り、しかも先端が尖鋭化しているので、現在真空マイク
ロエレクトロニクスの分野で注目されている微小冷陰極
電子源としてまた原子構造解析装置用の探針として利用
することができる。また硬度計の圧子としても利用でき
ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるダイヤモンド結晶を製造するた
めのマイクロ波プラズマCVD装置の概略構成を示す図
である。
【図2】 (a)〜(e)はダイヤモンド結晶の(11
1)配向面を模式的に示し、(f)は本発明での結晶の
尖鋭度の定義を説明する図である。
【図3】 (a)〜(e)は本発明により異なる合成条
件で製造されたダイヤモンド結晶の結晶構造を示す顕微
鏡写真である。
【図4】(a)〜(g)は本発明により異なる合成条件
で製造されたダイヤモンド結晶の結晶構造を示す顕微鏡
写真である。
【図5】本発明によるダイヤモンド結晶の尖鋭状態を示
すための結晶構造の平面的な顕微鏡写真である。
【図6】 本発明によるダイヤモンド結晶の尖鋭状態を
示すための結晶構造の斜め上方から見た顕微鏡写真であ
る。
【図7】 (a)〜(d)は本発明により製造されるダ
イヤモンド結晶粒の成長過程を示す結晶構造の顕微鏡写
真である。
【図8】 (a)〜(d)は本発明により製造されるダ
イヤモンド結晶粒の動きを時間の経過とともに示す結晶
構造の顕微鏡写真、(e)はダイヤモンド結晶粒の成長
過程を模式的に示す。
【図9】 (a)〜(c)はダイヤモンド結晶の(11
1)面の配向理由を模式的に示す。
【符号の説明】
1 反応容器 2 基板支持台 3 反射板 4 マイクロ波発振器 5 導波管 6 電力モニタ 10 基板
【手続補正書】
【提出日】平成7年4月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正内容】
【0014】
【作用】本発明は以上の構成によって、少なくとも炭素
を含む化合物と水素とを含有する原料ガスと、銅のよう
な炭素と結合しない材質の基板を用い、原料ガスの全分
子数に対する炭素原子数の割合を約0.5%以下とする
ことによって、結晶成長の初期の段階では平板状である
が、その後成長が進むにつれて基板面と平行な(11
1)面が結晶の基板上の面積の1/24以下にまで尖鋭
化したダイヤモンド結晶が合成される。このようにダイ
ヤモンド結晶の(111)面が基板面と平行でその(1
11)面の面積が結晶の基板面上の面積の1/24以下
であるので、尖鋭加工が不要である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正内容】
【0024】
【表1】実験結果の考察に先立ち、ダイヤモンド結晶の
鋭化について説明する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】図2(a)にはダイヤモンド結晶の(11
1)配向面を斜線で示してあり、I、II、III・・
・の順に鋭化が進んでいる。図2(a)IIIの結晶
について図2(b)に示したように、(111)配向面
の面積をa、基板上における底面積をbとして、a/b
の値で鋭化の程度すなわち鋭度を表すものとする。
たどえば図2(a)IIの形状の結晶の鋭度a/bは
1/6である。いまこの図2(a)IIの結晶の(11
1)配向面(斜線の三角形)を4等分してできた部分
(網掛けで示す)cが(111)配向面であるダイヤモ
ンド結晶の鋭度a/bは1/24となるが、この程度
鋭度があれば広い応用面が考えられるので、本発明
では鋭度a/bが1/24以下の場合を「鋭化」有
りと定義する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正内容】
【0032】図4(a)、(c)、(e)はメタン濃度
が1.0%の場合であり、実験No.6、8、10に対
応し、(111)配向はしているが、鋭化は認められ
ない。これに対して図4(b)、(d)、(f)は実験
No.7、9、11に対応し、(111)配向とともに
鋭化が認められる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】 (a)I〜Vはダイヤモンド結晶の(11
1)配向面を模式的に示し、()は本発明での結晶の
尖鋭度の定義を説明する図である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正内容】
【図7】
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正内容】
【図8】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // G01N 37/00 C G (72)発明者 川原田 洋 神奈川県横浜市都筑区中川2−9−8− 405

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学的気相成長法により基板上に合成さ
    れるダイヤモンド結晶であって、(111)配向面が基
    板面と平行でかつ該基板面と平行な(111)配向面の
    面積が結晶の該基板上の面積の1/24以下であること
    を特徴とするダイヤモンド結晶。
  2. 【請求項2】 結晶粒子の直径が200nm以上である
    請求項1に記載のダイヤモンド結晶。
  3. 【請求項3】 炭素と結合しない材質からなる基板上
    で、少なくとも炭素と水素を含みかつ原料ガスの全分子
    数に対する炭素原子数の割合が0.5%以下である原料
    ガスを活性化し、前記基板上に請求項1に記載のダイヤ
    モンド結晶を析出させることを特徴とするダイヤモンド
    結晶の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記原料ガス中に含まれる炭素原子に対
    して酸素原子の割合が1:1以下の酸素を含む請求項3
    に記載のダイヤモンド結晶の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記原料ガス中の炭素がメタンガスによ
    るものである請求項3または4に記載のダイヤモンド結
    晶の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記基板が銅板である請求項3ないし請
    求項5のいずれか1項に記載のダイヤモンド結晶の製造
    方法。
  7. 【請求項7】 前記基板の温度が670℃〜725℃で
    ある請求項6に記載のダイヤモンド結晶の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記原料ガスが高周波、直流またはマイ
    クロ波を励起源とするプラズマにより活性化される請求
    項3ないし請求項7のいずれか1項に記載のダイヤモン
    ド結晶の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記原料ガスが熱フィラメントにより活
    性化される請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記
    載のダイヤモンド結晶の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記原料ガスがアークジェットにより
    活性化される請求項3ないし請求項7のいずれか1項に
    記載のダイヤモンド結晶の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1114524A (ja) * 1997-06-25 1999-01-22 Sumitomo Electric Ind Ltd ダイヤモンド圧子
JP2000086391A (ja) * 1998-09-17 2000-03-28 Kobe Steel Ltd 単結晶ダイヤモンド合成用基板

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1114524A (ja) * 1997-06-25 1999-01-22 Sumitomo Electric Ind Ltd ダイヤモンド圧子
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