JP3728087B2 - 電子写真感光体、レーザービームプリンターおよび電子写真プロセス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体、レーザービームプリンターおよび電子写真プロセスに関し、詳しくは特定の構造よりなる樹脂を含有する感光層を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を備えたレーザービームプリンターおよび該電子写真感光体を用いた電子写真プロセスに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方法は米国特許第2297691号公報に示されるように画像露光の間に受けた照射量に応じて電気抵抗が変化しかつ暗所では絶縁性の物質をコーティングした支持体よりなる光導電性材料を用いる。この光導電性材料を用いた電子写真感光体に要求される基本的な特性としては(1)暗所で適当な電位に帯電できること(2)暗所において電位の逸散が少ないこと(3)光照射によって速やかに電荷を逸散せしめることなどが挙げられる。
【0003】
従来より電子写真感光体としてはセレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム等の無機光導電性化合物を主成分とする感光層を有する無機感光体が広く使用されてきた。しかしこれらは、前記(1)〜(3)の条件は満足するが熱安定性、耐湿性、耐久性、生産性において必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
無機感光体の欠点を克服する目的で様々な有機光導電性化合物を主成分とする電子写真感光体の開発が近年盛んに行われている。さらに有機光導電性化合物はその化合物によって電子写真感光体の感光波長域を自由に選択することが可能であり、例えばアゾ顔料では特開昭61−272754号公報、特開昭56−167759号公報に示された物質は可視領域で高感度を示すものが開示されておりまた、特開昭57−19576号公報、特開昭61−228453号公報で示された化合物は赤外領域まで感度を有していることが示されている。
【0005】
これらの材料のうち、赤外領域に感度を示すものは近年進歩の著しいレーザービームプリンター(以下LBPと略す)やLEDプリンターに使用されその需要頻度は高くなってきている。
【0006】
これら有機光導電性化合物を用いた電子写真感光体は電気的、機械的双方の特性を満足させるために電荷輸送層と電荷発生層を積層させた機能分離型の感光体として利用される場合が多い。一方当然のことながら電子写真感光体には適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、さらには光学的特性を備えていることが要求される。
【0007】
特に繰り返し使用される電子写真感光体においてはその電子写真感光体表面にコロナまたは直接帯電、画像露光、トナー現像、転写工程、表面クリーニングなどの電気的、機械的外力が直接加えられるためそれらに対する耐久性も要求される。
【0008】
具体的には帯電時のオゾン、および窒素酸化物による電気的劣化や、帯電時の放電、クリーニング部材の摺擦によって表面が摩耗したり傷が発生したりする機械的劣化、電気的劣化に対する耐久性が求められている。
【0009】
電気的劣化は光が照射した部分にキャリアーが滞留し光が照射していない部分と電気差が生じる現象が特に問題でありこれはフォトメモリーとして生じる。
【0010】
機械的劣化は特に無機感光体と異なり物質的に柔らかいものが多い有機感光体には機械的劣化に対する耐久性が劣り耐久性向上は特に切望されているものである。
【0011】
積層感光体における表面層は、低分子の電荷輸送性物質をバインダー樹脂中に分散した構成をとっているものが一般的であるが、電荷輸送物質の添加はバインダー樹脂本来の機械的強度を低下させるため、電荷輸送層は脆弱な膜になってしまう。さらに、機械的強度の低下は感光体の摩耗、傷、剥離、クラックなどの原因となる。
【0012】
これらの問題点を解決する目的で、特開昭64−9964をはじめとして、電荷輸送能を有するアリールアミン系低分子をカーボネート結合等で縮合させた、いわゆる電荷輸送性ポリマーがいくつか提案されているが、十分な機械的強度が得られていないのが現状であり、また、感度、残留電位などの点でも十分でなく、改良が望まれている。
【0013】
さらに近年、特開昭57−17826公報、特開昭58−40566公報に開示してあるような帯電部材に直接電圧をかけ電子写真感光体に電荷を印加する直接帯電方式が主流となりつつある。これは、導電ゴムなどで構成されたローラー状の帯電部材を直接電子写真感光体に当接させ電荷を印加する方法であり、スコロトロンなどに比べ、オゾン発生量が格段に少ない、またスコロトロンは帯電器に流す電流の80%前後はシールドに流れるため浪費されるのに対して、直接帯電はこの浪費分がなく非常に経済的である、などのメリットをもつ。
【0014】
しかし、直接帯電はパッシェン則による放電による帯電のため帯電安定性が非常に悪いという欠点をもつ。この対策として直流電圧に交流電圧を重畳させた、いわゆるAC/DC帯電方式が考案されている(特開昭63−149668公報)。
【0015】
この帯電方式により帯電時の安定性は改良されたが、ACを重畳するために電子写真感光体表面の放電量は大幅に増大してしまい、電子写真感光体の削れ量が増加してしまうという欠点を新たに生じる結果となり、機械的強度のみならず電気的強度も要求されるようになってきた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決し、機械的強度に優れるとともに高感度、かつ繰り返し使用特性の優れた電子写真感光体、該電子写真感光体を備えたレーザービームプリンターおよび該電子写真感光体を用いた電子写真プロセスを提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、導電性支持体および感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、下記式(1)で示される繰り返し単位および/または下記式(2)で示される繰り返し単位を有する直鎖型樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体が提供される。
また、上記電子写真感光体を備えたレーザービームプリンターおよび該電子写真感光体を用いた電子写真プロセスが提供される。
【0018】
【化4】
【0019】
【化5】
(式(1),(2)中、R 1 〜R 4 は置換されてもよいアルキル基またはフェニル基を示し、Ar 1 ,Ar 2 は、置換基を有してもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基または2価の芳香族基を示し、Ar 3 ,Ar 4 は、置換基を有してもよいフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基または芳香族基を示し、mは2〜5の整数を示し、Xは下記構造より選ばれる2価の基である。
【0020】
【化6】
(上記構造中、R 5 〜R 9 は、水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を示し、R 10 〜R 12 は、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。))
【0021】
【発明の実施の形態】
前記一般式(1)および(2)中のアルキル基としては具体的には低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、およびt−ブチル基などが挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が挙げられる。さらに、芳香族基としては、ナフチル基などが挙げられる。
【0022】
また、これらが有していてもよい置換基としては、上述のようなアルキル基、ハロゲン原子およびフェニル基等が挙げられる。
【0023】
以下に、前記式(1)及び(2)で表わされる繰り返し単位の具体例を示すがこれらに限られるものではない。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】
【表7】
【0031】
【表8】
【0032】
【表9】
本発明による電子写真感光体は、特に優れた機械的強度とAC帯電における耐電気特性をあわせもち、良好な電子写真特性を持つものである。
【0033】
本発明によるアリールアミン構造単位とシロキサン結合単位とを有する重合体からなる樹脂は、電気的な劣化に強いトリフェニルアミン構造を、同様に電気的に強いシロキサン結合で重合させた構造を有するため特に優れた耐電気特性を有している。
【0034】
また、機械的強度に関しては、剛直な性質を有するトリフェニルアミン構造単位と柔軟性を有する構造単位(メチレン鎖および直鎖型のシロキサン構造)が交互に並んだ構造になっているため、硬いが脆い剛直な性質にしなやかさ(いわゆる靭性)が加わることで優れた機械的強度を有するにいたったものと考えられる。
【0035】
本発明の電子写真感光体においては、上記式(1)及び/又は(2)で表わされる繰り返し単位を有する重合体は主鎖の構成単位が単一のもので構成される重合体でも、2種類以上の別種の構成単位からなる共重合体でもよい。
【0036】
本発明において用いられる重合体は、下記構造の反応末端を有する式1及び/又は2で示される構造単位のアリールアミンモノマーを触媒の存在下で重合させることにより得られる。
【0037】
【化7】
(Rは、メチル、エチル、プロピルの如き低級アルキル基を示す;R1 ,R2 およびmは前述の通り)
本発明における電子写真感光体は、感光層が電荷輸送材料と電荷発生材料を同一の層に含有する単層型であっても、電荷輸送層と電荷発生層に分離した積層型でもよいが、電子写真特性からみて積層型が好ましい。
【0038】
使用する導電性基体は導電性を有するものであればよく、アルミニウム、ステンレスなどの金属、あるいは導電層を設けた金属、紙、プラスチックなどが挙げられ、形状はシート状、円筒状などが挙げられる。
【0039】
LBPなど画像入力がレーザー光の場合は散乱による干渉縞防止、または基盤の傷を被覆することを目的とした導電層を設けてもよい。これはカーボンブラック、金属粒子などの導電性粉体をバインダー樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μm、好ましくは10〜30μmが適当である。
【0040】
そのうえに接着機能を有する中間層をもうける。中間層の材料としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、などが挙げられる。これらは適当な溶剤に溶解して塗布される。中間層の膜厚は0.05〜5μm、好ましくは0.3〜1μmである。
【0041】
中間層の上には電荷発生層が形成される。本発明に用いられる電荷発生物質としてはセレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリアスアゾシアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン、非対称キノシアニン系の各顔料が挙げられる。機械分離型の場合、電荷発生層は前記電荷発生物質を0.3〜4倍量の結着剤樹脂および溶剤とともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルおよび液衝突型高速分散機などの方法でよく分散し、分散液を塗布、乾燥させて形成される。電荷発生層の膜厚は5μm以下、好ましくは0.1〜2μmが適当である。
【0042】
電荷輸送層は主として本発明のバインダー樹脂を溶剤中に溶解させた塗料を塗工乾燥して形成する。
【0043】
これらは0.5〜2倍量のバインダー樹脂と組み合わされ塗工、乾燥し電荷輸送層を形成する。電荷輸送層の膜厚は5〜40μm、好ましくは15〜30μmが適当である。
【0044】
以下実施例に従って説明する。
(合成例1)
下記モノマー10gをトルエン200mlに溶解し、0.1N塩酸50mgを加えて、60℃で2時間加熱撹拌した。
【0045】
放冷後、反応液を十分に水洗した後、1500mlのメタノールに注ぎ白色の固体(前記例示の繰り返し単位(1)−2:後記表10の重合体No.1)8.6gを得た。
【0046】
【化8】
【0047】
【実施例】
以下実施例に従って説明するが、表10に示す実施例中の重合体No.1〜12は前記合成例と同様の方法で重合し、前記例示の繰り返し単位に対応した構造を有する重合体を合成した。なお、実施例において「部」は重量による。
(実施例1)
30φ254mmのアルミニウムシリンダーを支持体とし、それに、以下の材料より構成される塗料を支持体上に浸漬法で塗布し140℃、30分熱硬化して15μmの導電層を形成した:
導電性顔料:SnO2 コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール混合溶剤(重量比0.2/0.8)20部
次にこの上にN−メトキシメチル化ナイロン3部および共重合ナイロン3部をメタノール70部、nブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸漬法で塗布し0.6μmの中間層を形成した。
【0048】
次にCuKα特性のX線回折における回折角2θ±0.2°が9.0°、14.2°、23.9°、27.1°に強いピークを有するTiOPc4部とポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学製)2部およびシクロヘキサノン60部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散したあとエチルアセテート100部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。これを浸漬法で塗布し0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0049】
次に前記合成例にしたがって合成した表10の重合体No.1の重合体10部を、モノクロロベンゼン30部とジクロロメタン20部との混合溶媒に溶解した。この塗料を浸漬法で塗布し、120℃1時間乾燥し23μmの電荷輸送層を形成した。
【0050】
次に評価について説明する。
【0051】
作成した感光体をヒューレットパッカード製LBP「レーザージェット4plus」(プロセススピード71mm/sec)改造機に装着し、23℃、湿度50%RHの常温常湿下で、暗部電位Vd、感度Δ500および残留電位Vrを測定した。改造は、帯電時のピーク間電圧が20%増加するように設定を変更するとともに、感光体の電子写真特性を測定するための改造を施した。
【0052】
暗部電位Vdは絶対値が大きいほど帯電能が良いことを示し、感度Δ500は−700vから−200vに電位を減衰させるのに必要な光量で示した。
【0053】
さらに、常温常湿下で3000枚の通紙耐久を行い、摩耗量を測定するとともに、目視による画像評価も同時に行った。
【0054】
耐久試験は、1枚毎に1回停止する間欠モードとし、摩耗量の測定にはフィッシャー社製渦電流式膜厚測定機(パーマスコープタイプ111)を用いた。
【0055】
【表10】
分子量はゲルパーミネーションクロマトグラフィーで測定した。
(実施例2−12)
電荷輸送層のバインダーとして表10の重合体No.2から12の重合体10部をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作成し評価した。その結果を表12に示す。
(比較例1−2)
表11に示した比較重合体No.1およびNo.2をそれぞれ10部用いた以外は、実施例1と同様にして比較感光体No.1およびNo.2を作成し、同様の評価を行った。
(比較例3−4)
実施例1と同様に電荷発生層まで作成した感光体上に、以下の手順で電荷輸送層を形成し、比較感光体3〜4を作成した。評価は、実施例と同様の方法で行った。
(電荷輸送層作成手順)
下記構造式のアミン化合物9部
【0056】
【化9】
と表11の比較重合体No.3〜4の重合体10部をそれぞれモノクロロベンゼン30部ジクロロメタン70部の混合溶媒に溶解した。この塗料を浸漬法で塗布し120℃1時間乾燥し23μmの電荷輸送層を形成した。
【0057】
【表11】
【0058】
【表12】
以上の結果から、本発明の電子写真感光体は、優れた電子写真特性を有し、かつ良好な耐久特性を示すものであることが明らかとなった。
【0059】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体によれば、機械的強度に優れるとともに高感度かつ繰り返し特性の優れた電子写真感光体が可能となった。
また、上記電子写真感光体を備えたレーザービームプリンターおよび該電子写真感光体を用いた電子写真プロセスが可能となった。
Claims (6)
- 導電性支持体および感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、下記式(1)で示される繰り返し単位および/または下記式(2)で示される繰り返し単位を有する直鎖型樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 前記表面層が、前記直鎖型樹脂を溶剤中に溶解させた塗料を塗工乾燥して形成した層である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 請求項1または2に記載の電子写真感光体を有するレーザービームプリンター。
- 前記電子写真感光体に当接させた帯電部材を有する請求項3に記載のレーザービームプリンター。
- 請求項1または2に記載の電子写真感光体を用いる電子写真プロセス。
- 前記電子写真感光体に当接させた帯電部材に電圧をかけることにより 前記電子写真感光体を帯電する工程を有する請求項5に記載の電子写真プロセス。
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