JP3727563B2 - ダイズタンパク質のチーズへの組込み - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は一般に、著しいレベルのダイズタンパク質を含有するチーズ、好ましくはナチュラルチーズを調製する方法に関する。この方法は、酵素(好ましくはプロテイナーゼ)を用いてダイズ成分を処理し、ダイズタンパク質加水分解物を形成する。この酵素処理ダイズ成分は、カゼインミセルと複合可能である。酵素を不活性化するための熱処理段階の後、ダイズタンパク質加水分解物を乳基質に加え、次にそれを、好ましくは直接酸性化または乳酸生成培養菌と組み合わせた通常のレンネットを用い、凝固させてカード、およびホエーを形成する。カードとホエーとを分離した後、通常のチーズ製造手順を用いて、カードをチーズに変える。最初の酵素処理がなければ、未処理ダイズ成分は乳凝固を妨げ、それによって通常のチーズカードの形成を妨げることになる。さらに、最初の酵素処理がなければ、未処理ダイズ成分のかなりの部分がホエーと共に失われることになる。本発明に用いられる部分加水分解ダイズタンパク質は、乳凝固機構を著しく妨げることがない。本発明に用いられる部分加水分解ダイズタンパク質はさらに、カゼインと複合し、それによってカード中のダイズタンパク質の保持を向上させる傾向がある。ダイズ成分を約30%まで含有するチーズを得ることができる。
【0002】
【従来の技術】
ナチュラルチーズは一般に、乳中に酸度を発現させ、レンネットなどの凝固剤を用いて乳を凝固させる、またはそのタンパク質の等電点まで酸度を発現させることによって製造する。この凝固乳を切断、または攪拌、好ましくは加熱しながら攪拌し、生じたカードからホエーを分離する。このカードを加圧してチーズブロックを提供することができる。典型的に、熟成は制御条件下で非常に長い期間かけて行われる。
【0003】
ダイズの健康上の利点は、ここしばらくの間知られている。コレステロールレベルを下げる傾向に加えて、ダイズは最近、癌性または腫瘍細胞を阻害する役割を果たす可能性と関連付けられ、あるいはその役割を果たす可能性があると示唆されている。それゆえ、多岐にわたる食品にダイズを組み込むための努力がなされてきた。乳製品成分を用いて、または用いずに調製されたダイズ含有チーズを製造するために、多くの努力が払われてきた。乳製品をベースとしたチーズ製品に著しいレベルのダイズタンパク質を組み込むことは一般に困難であった。たとえば、米国特許Re.28810(1976年5月11日)は、アルドン酸ラクトン、またはウロン酸ラクトン凝析剤を用いて、乳固形分を用いずに調製したダイズチーズを提供している。風味生成タンパク質分解酵素(すなわち、プロテアーゼ)を、エマルジョンの形成前に生成物に、発酵の前にエマルジョンに、またはクッキングしたカードに組み込むことができた。結果として生じるダイズチーズは、ナチュラルチーズに類似の質感、および量感を有すると報告されている。
【0004】
米国特許第3,982,025号(1976年9月12日)は、ダイズチーズに、食用油または脂肪、チーズ乳化溶解塩、および水を高温で混合して、成分を液化し、均質に乳化することによって調製されるダイズチーズスプレッドを提供している。このダイズチーズは、ダイズ乳を乳酸形成チーズスターターカルチャーと共に発酵することによって調製される。このダイズチーズはまた、タンパク質分解酵素で処理して、ダイズグロブリンの酵素的分解を促進することができ、このタンパク質分解酵素は、発酵前、またはダイズチーズカードのクッキング後に添加することができる。米国特許第4,080,477号(1978年3月21日)は、(1)動物乳由来のカゼイン含有物質、(2)チーズ乳化塩、および(3)ダイズチーズを高剪断下で混合することによる、ダイズチーズ含有プロセスチーズ様生成物を提供している。このカゼイン含有物質には、カゼイン塩、乳製品チーズ、乳製品チーズカード、全乳固形分、脱脂乳固形分、およびそれらの混合物が含まれる。
【0005】
米国特許第4,284,656号(1981年8月18日)は、脱脂ダイズからタンパク質を水抽出し、続いてそのタンパク質を凝析してカード、およびホエイを形成し、そのカード生成物を分離、洗浄することによる、高タンパク質、低脂肪食品の製造方法を提供している。このカード生成物は、チーズと混合する、またはチーズに組み込むことができる。米国特許第4,303,691号(1981年12月1日)は、(1)ダイズ分離物、低温不溶性ダイズ画分、またはそれらの混合物からなるグループから選択されたダイズタンパク質、(2)ゼラチン、(3)親水コロイドガム、(4)脂肪、および(5)水を配合することによる、タンパク性食品生成物(模造チーズ)を提供している。
【0006】
米国特許第4,349,576号(1982年9月14日)、および第4,345,438号(1984年3月6日)は、模造チーズ製品に組み込むことのできる、ダイズタンパク質分離物を含む植物タンパク質分離物を提供している。この植物分離物は、カゼイン塩の親水コロイド特性を模倣するタンパク質凝集体に熱処理で変換することのできるようにタンパク質をあらかじめ処理する条件下で調製されることが報告されている。より詳細には、溶融特性に不利な影響を及ぼすことなく、模造チーズ製品中の約20から60%のカゼイン塩を代替するために、ダイズ分離物を用いることが報告されている。このダイズ分離物は、ダイズタンパク質加水分解物を含まないことが報告されている。
【0007】
米国特許第4,556,569号(1985年12月3日)は、植物タンパク質(たとえばダイズタンパク質)を用いるチーズ類似製品を提供している。この製品は、ダイズ乳、植物油、乳製品ホエー、カゼイン塩、および水から作られる。米国特許第5,858,449号(1999年1月12日)は、チーズ製品(ならびに他の食品)の成分として用いることのできる、イソフラボン強化タンパク質生成物を提供している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法は一般にチーズタイプ製品を提供するが、乳製品から調製されたチーズにさらに近似している、ダイズタンパク質を含有するチーズ、特にナチュラルチーズを提供することが依然として望まれている。本発明は、著しいレベルのダイズタンパク質を有する、ナチュラルチーズを含む、官能的に満足できるチーズ製品を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は一般に、著しいレベルのダイズタンパク質を含有するチーズ、好ましくはナチュラルチーズを調製する方法に関する。この方法は酵素(好ましくはプロテイナーゼ)を用いてダイズ成分を処理し、ダイズタンパク質加水分解物を形成する。この酵素処理ダイズ成分は、カゼインミセルと複合可能である。酵素を不活性化するための熱処理段階の後、ダイズタンパク質加水分解物を乳基質に加え、次にそれを、好ましくは直接酸性化または乳酸生成培養菌と組み合わせた通常のレンネットを用い、凝固させてカード、およびホエーを形成する。カードとホエーとを分離した後、通常のチーズ製造手順を用いて、カードをチーズに変える。最初の酵素処理がなければ、未処理ダイズ成分は乳凝固を妨げ、それによって通常のチーズカードの形成を妨げることになる。さらに、最初の酵素処理がなければ、未処理ダイズ成分のかなりの部分がホエーと共に失われることになる。本発明に用いられる部分加水分解ダイズタンパク質は、乳凝固機構を著しく妨げることがない。本発明に用いられる部分加水分解ダイズタンパク質はさらに、カゼインと複合し、それによってカード中のダイズタンパク質の保持を向上させる傾向がある。ダイズ成分を約30%まで含有するチーズを得ることができる。
【0010】
本発明は、ダイズタンパク質を含有するチーズを調製する方法を提供し、前記方法は、(1)ダイズ粉を水と混合してダイズペーストを製造する段階、(2)ダイズペーストをタンパク質分解酵素で処理して加水分解ダイズ成分を形成する段階、(3)タンパク質分解酵素を不活性化するのに十分な温度に、加水分解ダイズ成分を加熱する段階、(4)乳と不活性化加水分解ダイズ成分とを含む乳基質を形成する段階、(5)乳基質を処理してカード、およびホエーを形成する段階、(6)カードをホエーから分離する段階、および(7)カードを処理してダイズタンパク質を含有するチーズを生成する段階を含む。好ましくは、この乳基質は約4.0から約6.8のpHを有し、カード、およびホエーを形成するために凝析剤で処理される。適切な凝析剤には、これに限定されるものではないが、レンネット、非動物源由来のキモシン、および他の乳凝固プロテアーゼが含まれる。
【0011】
本発明はさらに、ダイズタンパク質を含有するチーズを調製する方法を提供し、前記方法は、(1)加水分解ダイズタンパク質を乳と混合して乳基質を形成する段階、および(2)ダイズタンパク質を含有するチーズを生成するのに十分な時間、十分な温度で乳基質を処理する段階を含む。好ましくは、この乳基質はさらに、酸性化剤および/または凝固剤を含有する。
【0012】
本発明はさらに、約30%までのダイズタンパク質を含有する、ナチュラルチーズを含むチーズを提供し、このチーズは、(1)ダイズ粉を水と混合してダイズペーストを製造する段階、(2)ダイズペーストをタンパク質分解酵素で処理して加水分解ダイズ成分を形成する段階、(3)タンパク質分解酵素を不活性化するのに十分な温度に、加水分解ダイズ成分を加熱する段階、(4)乳と不活性化加水分解ダイズ成分とを含む乳基質を形成する段階、(5)乳基質を処理してカード、およびホエーを形成する段階、(6)カードをホエーから分離する段階、および(7)カードを処理してダイズタンパク質を含有するチーズを生成する段階を含む方法によって調製される。好ましくは、この乳基質は約4.0から約6.8のpHを有し、カード、およびホエーを形成するために凝析剤で処理される。適切な凝析剤には、これに限定されるものではないが、レンネット、非動物源由来のキモシン、および他の乳凝固プロテアーゼが含まれる。
【0013】
本発明はさらに、約30%までのダイズタンパク質を含有する、ナチュラルチーズを含むチーズを提供し、このチーズは、(1)加水分解ダイズタンパク質を乳と混合して乳基質を形成する段階、および(2)ダイズタンパク質を含有するチーズを生成するのに十分な時間、十分な温度で乳基質を処理する段階を含む方法によって調製される。好ましくは、この乳基質はさらに、酸性化剤および/または凝固剤を含有する。好ましくは、本発明のダイズタンパク質含有チーズは、約3から約30%のダイズタンパク質を含有するナチュラルチーズである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、著しいレベルのダイズタンパク質を含有するチーズ、好ましくはナチュラルチーズを調製する方法に関する。本発明はさらに、30%までのダイズタンパク質を含有する、ナチュラルチーズを含むチーズに関する。本発明の成功にとって重要なのは、ダイズタンパク質加水分解物を形成するためにタンパク質分解酵素で処理されたダイズタンパク質を用いることである。このダイズタンパク質加水分解物はカゼインミセルと複合して、ダイズが組み込まれたナチュラルチーズを生成する。未処理のまま(すなわち、加水分解なし)の場合、未処理ダイズタンパク質は乳凝固を妨げ、それによってチーズカードの形成を妨げることになる。
【0015】
本発明の目的において、「通常のチーズ製造手順」は、ナチュラルチーズを製造するために用いられる1つまたは複数の工程を指す。一般に、そのような工程は、乳中に酸度を発現させ、レンネットなどの凝固剤を用いて乳をセッティングする段階、またはタンパク質の等電点まで酸度を発現させる段階を含む。この凝固した乳を切断し、得られたカードからホエーを分離する。このカードを加圧してチーズブロックを提供することができる。典型的に、熟成は制御条件下で非常に長い期間かけて行われる。たとえば、チェダーチーズは、少なくとも4ヵ月の期間熟成し、チェダーチーズに所望の熟成した風味を得るために1年を超える期間熟成することができる。
【0016】
本明細書では、「ダイズ粉」は一般に、ダイズ粉および粒子などの脱脂ダイズフレーク、ダイズタンパク質濃縮物、ダイズタンパク質分離物、および/またはダイズ乳濃縮物から製造された任意のダイズタンパク質源を指す。
【0017】
本明細書では、「タンパク質分解酵素」は、より単純で可溶性の生成物を形成するために、タンパク質またはペプチドの加水分解に用いられる酵素を指す。そのようなタンパク質分解酵素の例には、たとえば、SP 446(Novo Nordisk、デンマーク)、Promod 24L(Biocatalysts Ltd.、英国ミッドグラモーガン)、Flavozyme(Novo Nordisk、デンマーク)などが含まれる。
【0018】
本明細書では、「酸性化剤」は、通常のチーズ製造に用いられる任意の食用酸、または酸生成剤を指す。好ましくは、この酸生成剤は、乳酸生成細菌性培養物である。
【0019】
本明細書では、「凝析剤」は、通常のチーズ製造に用いられる任意の動物由来、または合成の乳凝析剤を指す。好ましい凝析剤はレンネットである。キモシンを含有する伝統的なチーズレンネットは、子牛の胃の内壁から取られた抽出物に由来する。チーズレンネットの代用品も広く入手可能であり、典型的に他の形態の酵素キモシン、またはペプシンなど他の乳凝固プロテアーゼを含有する。
【0020】
本発明のダイズ含有ナチュラルチーズを調製するために、ダイズペースト、またはダイズタンパク質懸濁液を調製し、タンパク質分解酵素で処理して、カゼインミセルと複合体を形成することのできるダイズタンパク質を生成する。次にこの酵素処理タンパク質を加熱して酵素を変性し、乳に添加し、次にこれを処理してカード、およびホエーを形成する。次いでホエーを分離し、通常のチーズ製造手順によってカードを加圧してチーズとする。このホエーもまた、所望であれば、チーズ製品を調製するために用いる、またはチーズ製品に組み込むことができる。
【0021】
ダイズペースト、またはダイズタンパク質懸濁液は、単純にダイズ粉を水に混合することによって調製できる。好ましくは、このダイズペーストは、約50から約95%のダイズ粉、より好ましくは、約65から約75%のダイズ粉を含有する。このダイズタンパク質は任意の源から抽出することができるが、好ましくは低脂肪ダイズ粉である。適したダイズタンパク質成分は、たとえばIowa Soyなどの製造業者から容易に入手可能である。
【0022】
約0.02から約2%、より好ましくは約0.1から約1%のタンパク質分解酵素を、ダイズペースト混合物に添加する。本発明と共に用いることのできるタンパク質分解酵素の例は、SP446(Bacillus licheniformisから得られたグルタミルエンドペプチダーゼ、Novo Nordisk、デンマーク)、CorolasePN−L(ROHM GmbH、ダルムシュタット)、Promod24L(Biocatalysts Ltd.、英国ミッドグラモーガン)、Papain6000(Valley Research Inc.、インディアナ州ハモンド)、およびFlavozyme(Novo Nordisk、デンマーク)である。Flavozymeを用いて調製された部分加水分解ダイズタンパク質を使用して調製したチーズは、優れた質感、および優れたカード中のダイズタンパク質保持性を示すことが見出されたため、一般に、好ましいタンパク質分解酵素はFlavozymeである。酵素とダイズペーストとの混合物を、約20℃と約70℃の間の温度、好ましくは約50℃で、ダイズタンパク質の約5から約20%の加水分解をもたらすのに十分な時間インキュベートする。この加水分解度は、参照により本明細書の一部とするAdler−Nissen、「Enzymatic Hydrolysis of Proteins for Increased Solubility」、J.Agric.Food Chem.、24、1090〜96、1976年に記載の技法を用いて測定できる。このインキュベーション期間が、ダイズタンパク質加水分解物の形成を可能にする。一般に、十分なインキュベーション期間は、約0.5から約6時間、好ましくは約2.5時間である。タンパク質分解を停止するために、この混合物を約65℃から約95℃、好ましくは約80℃の温度に、約5から約30分間、好ましくは約10分間、酵素を変性、または不活性化するために加熱する。
【0023】
約3から約30%(好ましくは、約5から約15%)の不活性化加水分解ダイズ成分を、約0.1から約0.3%の乳酸生成培養菌を含有する乳基質混合物に添加する。好ましくは、この乳基質は、約98から約99.8%の乳、約0.02から約0.1%の塩化カルシウム、および約0.1から約0.3%の乳酸生成培養菌を含有する。次にこの混合物を、約10から60分の間、好ましくは約30分、約30℃から37℃の間の温度、好ましくは約31℃から約32℃の温度でインキュベートする。次に、レンネット(一般に約0.02から約0.1%)を添加し、この試料をさらに、約10から60分の間、好ましくは約30分、約30℃と37℃の間、好ましくは約31℃から約32℃の温度でインキュベートする。凝析剤、好ましくはレンネットの添加によって、乳はカードに凝析する。カードが形成されたら、カードを切断し、その混合物を、温度を上昇させ(すなわち、約30℃から約42℃に、好ましくは約31℃から約39℃に)、約10から約60分の間、好ましくは約30分間インキュベートする。次にホエーを分離する。約1から約4%の塩(好ましくは、約1.5から約2.5)を添加した後、通常のチーズ製造手順を用いてカードを加圧してチーズとする。
【0024】
結果として生じるチーズは、Lowry検定、または当分野で知られる他のタンパク質検出法によって試験したとき、30%までのダイズタンパク質を含有する。(このLowry検定は、参照により本明細書の一部とする、Lowry等の「Protein Measurement with Folin Phenol Reagent」、J.Biol.Chem.193、265〜275、1951年に記載されている。)好ましくは、結果として生じるチーズは、約5から約15%のダイズを含有する。
【0025】
(実施例)
以下の実施例は、本発明を例示するために含まれ、本発明を限定するものではない。他に記述のない限り、すべてのパーセントは重量による。
【0026】
実施例1
この実施例は、本発明のナチュラルチーズにおけるダイズ成分組込みに対する異なる酵素の影響を例示する。低脂肪ダイズ粉(100g、Iowa Soyの20PDI)を、約50℃で水300gと混合してダイズペーストを製造した。次に種々のプロテアーゼ酵素(表1を参照)を、ダイズペーストの分取(90g)に添加し、この試料を約2.5時間、50℃でインキュベートした。インキュベーションの後、酵素を不活性化するために、試料を約10分間、80℃に加熱した。表1の全反応時間は、酵素の添加から不活性化期間の開始までを測定したが、しかしながら、タンパク質分解反応は、完全な不活性化が起こるまで継続したと思われる。このようにして生成された加水分解ダイズ成分試料は、ナチュラルチーズの製造に用いることができた。
【0027】
【表1】
Figure 0003727563
【0028】
全乳(4.0kg)、0.25mlのCal−Sol(45%CaCl、Chr.Hansen Inc.、ウィスコンシン州ミルウォーキー)、および0.52gの乳酸培養菌(CH−N22、Chr.Hansen Inc.、ウィスコンシン州ミルウォーキー)を31℃で混合して、乳基質を得た。次に加水分解ダイズ成分(45g)を400gの乳基質試料に混合し、30分間、31℃でインキュベートした。レンネット(50ml、100%非希釈キモシン溶液、Chr.Hansen Inc.)を混合しながら各試料に添加し、さらに30分間、31℃でインキュベートした。セッティング後、カードを切断し、30分かけて温度を31℃から39℃に上昇させ、インキュベーションを継続した。ホエーをデカントした後、カードを集め、チーズクロスを用いて排液した。ホエーのタンパク質含量を、Lowry検定を用いて測定した。
【0029】
結果を表2に示す。ダイズタンパク質加水分解物を調製するために用いた酵素は、カード形成工程、およびチーズカードへのダイズタンパク質の組込みに著しく影響を及ぼす。実際、ダイズペースト(何も処理をしないもの)の添加は、60分後であってもカードが形成されない程度にまでレンネットカード形成工程を妨げた(試料No.2)。したがって、ダイズペーストは、乳への添加前に処理されるべきである。
【0030】
【表2】
Figure 0003727563
【0031】
1.加圧せず
2.80%出力で動作させたマイクロ波乾燥機で求めたもの
【0032】
試験を行なった5種のプロテアーゼの中で、Flavozymeが最良のカードの質感をもたらし、カード湿分含量は最小であり、もっとも多くのタンパク質をカード中に保持した。ダイズ添加試料中に保持されたホエーのタンパク質が、対照試料とほぼ同じであると(2.54%)推定すると、flavozymeで処理した試料の場合、約2.40gのみのダイズタンパク質がホエーに失われたことになり、したがって、約59%のダイズタンパク質がチーズカードに保持されているはずである。ダイズタンパク質および/またはタンパク質加水分解物の組込みに加えて、他の非タンパク質成分もチーズカードに組み込まれた。したがって、カード固形分の増加は、ダイズタンパク質加水分解物、ならびにダイズペーストからの他の非タンパク質成分、その両方の組込みに起因するものであった。
【0033】
実施例2
この実施例は、本発明の方法によって生成されたナチュラルチーズに対する酵素添加量の影響、したがってタンパク質加水分解度の影響を例示するものである。
【0034】
様々なレベルのFlavozyme(Novo Nordisk、デンマーク)を用いて、本質的に実施例1に記載のとおり、種々のダイズタンパク質加水分解物を調製した。レンネットを添加する前に、乳およびダイズタンパク質加水分解物試料を約2分間均質化したことを除いて、本質的に実施例1に記載したとおり、ダイズタンパク質加水分解物を用いてダイズ組込みチーズを調製した。結果を表3に示し、図1にプロットする。
【0035】
【表3】
Figure 0003727563
【0036】
1.ダイズペーストおよび酵素の全重量を基準
2.加圧せず
3.80%出力で動作させたマイクロ波乾燥機で求めたもの
4.Kjedahl検定
【0037】
これらの結果は、部分加水分解ダイズタンパク質をチーズカードに組み込むことができることを示している。回収されたホエー中のタンパク質を基準にして、45%までのダイズタンパク質がチーズカードに組み込まれた。しかしながら、大幅なタンパク質分解は、チーズカードに組み込まれるダイズタンパク質のレベルの低減をもたらす可能性がある。図1に示したように、カードへのダイズタンパク質の組込みが最大になるには、酵素とダイズタンパク質(ダイズ全粉末ではない)の比が、これらの反応条件下で約99未満であるべきである。
【0038】
ダイズタンパク質の組み込まれたカードは、通常のカードに類似の離液特性を有した。したがって、通常の方法によって容易にホエーを除去し、最終生成物の目標湿分に到達することができる。しかしながら、ダイズタンパク質の組み込まれたカードは、豆腐様の質感を有する(組み込まれたダイズタンパク質の量に応じて)。
【0039】
図2は、異なる処理から回収されたホエー試料のタンパク質プロファイルを示す。レーン1は、酵素処理ダイズタンパク質加水分解物を添加した試料から回収されたホエーであり(試料5)、レーン2は、非酵素処理ダイズタンパク質加水分解物を添加した対照試料から回収されたホエーであり(試料1)、レーン3は、ダイズタンパク質を添加しない通常のホエー試料である。非酵素処理ダイズタンパク質を含む試料から回収されたホエーは(レーン2)、プロテアーゼで処理したもの(レーン1)に比べて、より多くのタンパク質のバンドを含む。この試料負荷量において、レーン2はまた、レーン1に比べてより多くのタンパク質を含む。回収されたホエーに、検出可能な低分子量ダイズタンパク質加水分解物は存在しなかった。このSDS−PAGEはさらに、ダイズタンパク質の部分加水分解によって、ホエーへのタンパク質損失が減少することを確認する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本明細書の表3のデータに基づいて、ダイズタンパク質レベルの関数として、生成されたカード固形分、およびカードに組み込まれたダイズタンパク質加水分解物の量に対する酵素投与量または濃度の影響を示すグラフである。酵素のパーセントは、ダイズペーストのダイズタンパク質、および酵素の全重量を基準とする。
【図2】トリシン−SDS−PAGEゲルを用いて、回収されたホエーのタンパク質プロファイルを提供する図である。レーン1は表3の試料5(酵素処理ダイズタンパク質)であり、レーン2は表3の試料1(ダイズペーストを添加するが酵素を用いない対照)であり、レーン3は乳のみ(ダイズも酵素成分も添加しない)である。

Claims (20)

  1. ダイズタンパク質を含有するチーズを調製する方法であって、
    (1)ダイズ粉を水と混合してダイズペーストを製造する段階と、
    (2)ダイズペーストを0.02〜2%のタンパク質分解酵素で処理して加水分解ダイズ成分を形成する段階と、
    (3)タンパク質分解酵素を不活性化するのに十分な温度に、加水分解ダイズ成分を加熱する段階と、
    (4)乳と不活性化加水分解ダイズ成分とを含む乳基質を形成する段階と、
    (5)乳基質を処理してカード、およびホエーを形成する段階と、
    (6)カードをホエーから分離する段階と、
    (7)カードを処理してダイズタンパク質を含有するチーズを生成する段階とを含むことを特徴とする方法。
  2. 前記乳基質は、98から99.8%の乳を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記乳は全乳であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 乳基質が4.0から6.8のpHを有し、その乳基質を凝析剤で処理することによってカード、およびホエーが形成されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
  5. チーズが3から30%のダイズタンパク質を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
  6. チーズがナチュラルチーズであることを特徴とする請求項4項に記載の方法。
  7. チーズがナチュラルチーズであることを特徴とする請求項5項に記載の方法。
  8. 凝析剤がレンネットであり、乳基質がその凝析剤で10から60分間、30℃と37℃の間の温度で処理されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
  9. 凝析剤がレンネットであり、乳基質がその凝析剤で10から60分間、30℃と37℃の間の温度で処理されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  10. 凝析剤がレンネットであり、乳基質がその凝析剤で10から60分間、30℃と37℃の間の温度で処理されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  11. (1)ダイズ粉を水と混合してダイズペーストを製造する段階と、
    (2)ダイズペーストを0.02〜2%のタンパク質分解酵素で処理して加水分解ダイズ成分を形成する段階と、
    (3)タンパク質分解酵素を不活性化するのに十分な温度に、加水分解ダイズ成分を加熱する段階と、
    (4)乳と不活性化加水分解ダイズ成分とを含む乳基質を形成する段階と、
    (5)乳基質を処理してカード、およびホエーを形成する段階と、
    (6)カードをホエーから分離する段階と、
    (7)カードを処理してダイズタンパク質含有チーズを生成する段階とを含む方法によって調製されることを特徴とするダイズタンパク質含有チーズ。
  12. 前記乳基質は、98から99.8%の乳を含むことを特徴とする請求項11のダイズタンパク質含有チーズ。
  13. 前記乳は全乳であることを特徴とする請求項11または12に記載のダイズタンパク質含有チーズ。
  14. 乳基質が4.0から6.8のpHを有し、その乳基質を凝析剤で処理することによってカード、およびホエーが形成されることを特徴とする請求項11〜13の何れか1項に記載のダイズタンパク質含有チーズ。
  15. チーズが3から30%のダイズタンパク質を含有することを特徴とする請求項14に記載のダイズタンパク質含有チーズ。
  16. チーズがナチュラルチーズであることを特徴とする請求項14に記載のダイズタンパク質含有チーズ。
  17. チーズがナチュラルチーズであることを特徴とする請求項15に記載のダイズタンパク質含有チーズ。
  18. 凝析剤がレンネットであり、乳基質がその凝析剤で10から60分間、30℃と37℃の間の温度で処理されることを特徴とする請求項14に記載のダイズタンパク質含有チーズ。
  19. 凝析剤がレンネットであり、乳基質がその凝析剤で10から60分間、30℃と37℃の間の温度で処理されることを特徴とする請求項15に記載のダイズタンパク質含有チーズ。
  20. 凝析剤がレンネットであり、乳基質がその凝析剤で10から60分間、30℃と37℃の間の温度で処理されることを特徴とする請求項16に記載のダイズタンパク質含有チーズ。
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