JP3726862B2 - 半導電性ゴムロールおよび画像形成装置 - Google Patents

半導電性ゴムロールおよび画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真複写機などに用いられる半導電性ゴムロールおよびそれを有する画像形成装置に関し、さらに詳しくはロール硬度が低く安定であり、耐圧縮永久歪み性や耐久性などに優れる半導電性ゴムロールおよびそれを有する画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真複写機または電子写真印刷機は感光体ドラム外周面を一様に帯電させ、次いで感光体の外周面に印刷パターンまたは複写パターンを露光することにより静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成して、このトナー像を印刷用紙または複写用紙に転写することにより印刷または複写する機構を有するものである。
【0003】
従来、感光体の帯電工程では一般にコロナ放電によって帯電が行われていた。しかし、コスト高やオゾンなどの有害物質が発生するという問題がある。そこで、帯電ロールを用いた帯電方式が提案されている。この帯電方式では、感光体と互いに接触させて配置される帯電ロールに電圧を印加し、感光体に直接電荷を与えて感光体表面上を帯電させている。転写工程においてもコロナ放電を利用せずに、転写ロールを用い電圧を印加して電界を発生させトナーを感光体から印刷用紙などに移動させて転写を行う方式が提案されている。一方、非磁性一成分トナーを使用する方式においては感光体と現像ロールが互いに接触するように配置されており、現像ロールによって搬送されてきたトナーが現像ロールと現像ブレードとの間で摩擦により帯電させられる。帯電したトナーが現像ロールと感光体との間に生じた電界に従って現像ロール上から感光体上に移動して、潜像が現像される。
【0004】
このような感光体とロールが互いに接触した構造を用いる画像形成装置ではロールとして軸体の表面にゴム層が形成された構造のゴムロールが使用されている。これらのゴムロールと感光体との間には電圧を印加させ、電界を発生させなければならない。そこでゴムロールの電気抵抗が半導電性であることが要求される。
【0005】
このような半導電性ゴムロールとしては一般に樹脂またはゴムにカーボンブラック、カーボン繊維、金属粉などの導電性付与剤を分散させて半導電性に調整したものが挙げられる。しかし、このようなロールでは、導電性付与剤の分散が均一性に欠け、部位により電気抵抗の大きさにばらつきが発生し、体積固有抵抗値を106〜1012Ω・cmの半導電性領域に調整することが非常に困難である。そこで、それ自体の体積固有抵抗値が107〜1011Ω・cmであって、導電性付与剤を配合する必要のないエピクロルヒドリンゴムを用いることが提案されている。しかし、エピクロルヒドリンゴムは表面の離型性が悪いため、トナーが付着し、汚れやすいという問題がある。
【0006】
導電化したフッ素樹脂などからなる非粘着性被覆層をエピクロルヒドリンゴム層の外に形成してトナー付着を防止したものも提案されている(特開平6−266206号公報など)。しかし、硬度が十分に低くなく、感光体削れやトナー劣化など連続印字における耐久性が十分でないという問題があった。
【0007】
また、半導電性ゴムロールの硬度を低下させるために、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状ポリブタジエン、液状クロロプレンなどの液状不飽和ゴムを添加する方法が提案されている(特開平9−160354号公報など)。しかし、エピクロルヒドリンゴムと液状不飽和ゴムとの相溶性は十分ではなく、耐圧縮永久歪み性が悪い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、感光体汚染がなく、環境依存性が小さく、耐久性および耐圧縮永久歪み性に優れた低硬度の半導電性ゴムロールを提供することにある。より具体的に、本発明の目的は、感光体上の静電潜像をトナーにより可視像に現像する画像形成装置において、感光体と互いに接触して配置される現像ロール、帯電ロール、転写ロールなどとして好適に使用できる半導電性ゴムロールを提供することにある。
【0009】
本発明者らは、鋭意研究した結果、軸体、中間弾性層、表面層の少なくとも三層構造を有しており、中間弾性層の材質として、エピクロルヒドリン系ゴムと低分子量エピクロルヒドリン系重合体とを含有する組成物の架橋物を用いた半導電性ゴムロールは、導電性付与剤を配合しなくても適度なロール電気抵抗を示し、表面層に実用に耐えうる厚さの樹脂層などを設けても低硬度で耐圧縮歪み性に優れていることを見出した。この半導電性ゴムロールは感光体を摩耗させることなく、汚染することもない。さらに、トナーを劣化させることも少なく耐久性に優れる。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、中心軸から順に(A)軸体、(B)(a)エピクロルヒドリン系ゴムを必須成分とするゴム成分、(b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体および(c)架橋剤を含有するエピクロルヒドリン系ゴム組成物を架橋して成る中間弾性層、ならびに(C)表面層の少なくとも三層を有する多層半導電性ゴムロールが提供され、さらに、該半導電性ゴムロールを有する画像形成装置が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
(軸体)
本発明の半導電性ゴムロールは、中心部が軸体である。本発明に用いられる軸体は、半導電性ゴムロールの軸体として用いられるものであれば、特に限定されないが、通常、導電性剛性体からなる。導電性剛性体としては、ステンレス鋼、銅などの金属が挙げられる。
【0012】
軸体は中実体からなるものであってもよいし、中空体からなるものであってもよい。大きさや形状も使用目的に応じて決めればよい。軸体は、図1、図2に示す軸体のように真円柱状であることが好ましい。軸体に積層される層、一般には中間弾性層と接触する軸体外周面と積層される層との接着性やロールを感光体と接触させた場合のニップ圧力が均一になるからである。しかし、接着性やニップ圧力が許容範囲内であれば、軸体形状は特に限定されない。例えば、軸方向中央部の外径が最も大きく、両端部の外径が小さい円柱状の軸体を用いることにより、軸体の撓みを小さくし、軸方向中央部の押圧力が両端部に比べて小さくしたものなども用いることができる。軸体の外周面は、外周面上に積層される層との接着を良好にするために研磨などにより表面粗さを大きくしておくことが好ましい。
【0013】
(内層の材料)
半導電性ゴムロールは、一般には軸体の外周面と中間弾性層の内周面とが接する構造になるが、両者の間に導電性材料から成る内層を設けてもよい。内層を設けた場合、内層の厚さを変えることによって、ロール電気抵抗の調整が可能である。
【0014】
内層の材料となる導電性材料は特に限定されず、導電性の樹脂またはゴム、あるいは、樹脂またはゴムにカーボンブラック、カーボン繊維、金属粉などの導電性付与剤を分散させて半導電性に調製した組成物などであってもよい。
【0015】
(中間弾性層の材料)
本発明の半導電性ゴムロールは、軸体より外側に中間弾性層が形成されており、この中間弾性層は(a)エピクロルヒドリン系ゴムを必須成分とするゴム成分、(b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体および(c)架橋剤を含有するエピクロルヒドリン系ゴム組成物の架橋物によって構成されている。
【0016】
(ゴム成分)
本発明において用いられる(a)ゴム成分は、エピクロルヒドリン系ゴムを必須成分とし、他のゴムと併用することも可能である。
【0017】
エピクロルヒドリン系ゴムは、エピクロルヒドリンの単独重合体ゴム、またはエピクロルヒドリンとアルキレンオキサイドおよび/または不飽和エポキシドを共重合して得られる共重合体ゴムである。
【0018】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイドなどの飽和アルキレンオキサイド類; エピフロロヒドリン、エピブロモヒドリン、トリフロロメチルエチレンオキサイドなどの置換飽和アルキレンオキサイド類; が挙げられ、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、入手の容易さなどからみて、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドが好ましい。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを併用する場合、両者の比(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)はモル比で、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは15/85〜85/15、特に好ましくは20/80〜80/20である。
【0019】
不飽和エポキシドとしては、例えば、ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−7−オクテンなどの不飽和アルキレンオキサイド類; アリルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類; グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどのグリシジルエステル類; などが挙げられる。これらのうちアリルグリシジルエーテルが好適である。不飽和エポキシドを共重合することにより、硫黄系架橋剤(硫黄または硫黄供与体)または過酸化物による架橋が可能になり、耐汚染性や耐金属腐食性が良好となる。
【0020】
エピクロルヒドリン系ゴム中のアルキレンオキサイド単位の量は、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは10〜65モル%、特に好ましくは20〜60モル%である。エピクロルヒドリン系ゴム中のアルキレンオキサイド単位の量が多すぎると吸湿性が高くなったり、あるいは体積固有抵抗値の環境依存性が大きくなるため、環境によっては使用できない場合がある。
【0021】
エピクロルヒドリン系ゴム中のエピクロルヒドリン単位の量は、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは35〜90モル%、さらに好ましくは40〜80モル%である。エピクロルヒドリン系ゴム中のエピクロルヒドリン単位の量が多すぎると体積固有抵抗値が高くなり、少なすぎると吸湿性が高くなる。
【0022】
エピクロルヒドリン系ゴム中の不飽和エポキシド単位の量は好ましくは0〜15モル%、より好ましくは1〜12モル%、特に好ましくは2〜10モル%である。エピクロルヒドリン系ゴム中の不飽和エポキシド単位の量が多すぎると、低硬度の架橋物を得ることが困難である。不飽和エポキシド単位の量が少なすぎると硫黄系架橋剤または過酸化物による架橋が不十分になることがある。
【0023】
エピクロルヒドリン系ゴムとしては、加工における混練が容易であることから100℃におけるムーニー粘度が好ましくは20〜200、より好ましくは40〜150、特に好ましくは50〜100のものが用いられる。
【0024】
エピクロルヒドリン系ゴムの製造方法は、特に限定されず、例えば特公昭56−51171号公報に記載される有機アルミニウム化合物系触媒を用いて公知の溶液重合法により製造できる。
【0025】
中間弾性層の製造に用いられる(a)ゴム成分の任意成分として、使用できるゴムとしては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−イソプレン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムおよびこれらの水素添加物、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。
【0026】
エピクロルヒドリン系ゴムと他のゴムとのブレンド比率は、一般に、エピクロルヒドリン系ゴム50〜100重量%、好ましくは60〜90重量%、特に好ましくは70〜85重量%、任意成分のゴム0〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜30重量%の範囲である。任意成分のゴムが多すぎると低分子量エピクロルヒドリン系重合体との相溶性が悪くなり、少なすぎると任意成分のゴムを加えた効果が出にくい。
【0027】
エピクロルヒドリン系ゴムと任意成分であるゴムとのブレンドは、ロールやバンバリーミキサーなどのような通常の混練機を用いて混合すればよい。
【0028】
(低分子量エピクロルヒドリン系重合体)
本発明に用いられる低分子量エピクロルヒドリン系重合体は、エピクロルヒドリン単位を必須とする重合体である。低分子量エピクロルヒドリン系重合体は、エピクロルヒドリンと共重合可能な単量体単位を含有していてもよく、そのような単位となる単量体としては、アルキレンオキサイドおよび不飽和エポキシドが例示される。アルキレンオキサイドおよび不飽和エポキシドとしてはエピクロルヒドリン系ゴムの単量体として説明したものが用いられる。
【0029】
(b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体中のエピクロルヒドリン単位の量は好ましくは30〜100モル%、より好ましくは35〜100モル%、特に好ましくは40〜100モル%である。エピクロルヒドリン単位量が多くなるほど中間弾性層の体積固有抵抗値は大きくなり、少なくなるほど低分子量エピクロルヒドリン系重合体の製造が困難になる。アルキレンオキサイド単位量は好ましくは0〜70モル%、より好ましくは0〜65モル%、特に好ましくは0〜60モル%である。アルキレンオキサイド単位量は少ないほど体積固有抵抗値は大きくなり、多いほど製造が困難になる。不飽和エポキシド単位の量は好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜15モル%、特に好ましくは0〜10モル%である。不飽和エポキシド単位量が少なすぎると、架橋剤として硫黄系架橋剤または過酸化物を用いた場合には、低分子量エピクロルヒドリン系重合体がエピクロルヒドリン系ゴムから溶出しやすくなる。一方、不飽和エポキシド単位が多すぎると低分子量エピクロルヒドリン系重合体の製造が困難である。
【0030】
低分子量エピクロルヒドリン系重合体は常温(20〜30℃)において液体状態のものであり、その分子量が好ましくは1000〜10000、より好ましくは1500〜8000、特に好ましくは2000〜6000のものである。また、低分子量エピクロルヒドリン系重合体のムーニー粘度は通常1以下であり、小さすぎるために測定不可の場合も多い。低分子量エピクロルヒドリン系重合体のトルエン溶液での還元粘度(ηsp/C)は好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.02〜0.4、特に好ましくは0.03〜0.3である。ηsp/Cが大きすぎるとゴムの硬度を低下させる効果が小さく、ηsp/Cが小さすぎるとブリードを生じることがある。
【0031】
低分子量エピクロルヒドリン系重合体の製造方法は特に限定されず、例えば、塩化第二錫、有機アルミニウム/水錯体、フッ化ホウ素・エーテル錯体などの触媒を用いて公知の溶液重合法により製造できる。
【0032】
(架橋剤)
(c)架橋剤としては硫黄または硫黄供与体、有機過酸化物、メルカプトトリアジン類、チオウレア類などを挙げることができる。硫黄供与体としては、例えば、モルホリンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム類を挙げることができる。有機過酸化物としてはケトンパーオキシド類、パーオキシエステル類、ジアシルパーオキシド類、アルキルパーオキシド類が挙げられ、これらの有機過酸化物を使用したときは耐圧縮永久歪みが良好な架橋物が得られる。チオウレア類としては、チオウレア、ジブチルチオウレア、トリエチルチオウレアなどを挙げることができる。
【0033】
(エピクロルヒドリン系ゴム組成物)
本発明で用いるエピクロルヒドリン系ゴム組成物は、(a)エピクロルヒドリン系ゴムを必須成分とするゴム成分、(b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体および(c)架橋剤を含有する。
【0034】
(b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体の量は、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対し、好ましくは10〜150重量部、より好ましくは20〜120重量部、特に好ましくは30〜100重量部である。(b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体が少なすぎると、エピクロリン系ゴム組成物の架橋後の硬度が高くなりすぎる。多すぎると(b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体がブリードしたり、粘度が高くなり、混練などのゴム組成物の調製作業が困難になる。
【0035】
(c)架橋剤の量は、(a)ゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜7重量部、特に好ましくは0.3〜5重量部である。
【0036】
エピクロルヒドリン系ゴム組成物には、必要に応じて架橋促進剤、補強剤、充填剤、老化防止剤などの通常のゴム配合剤を適宜混合することができる。
【0037】
エピクロルヒドリン系ゴム組成物は、前記各成分をロールやバンバリーミキサーなどのような通常の混練機を用い混合することにより得ることができる。
【0038】
エピクロルヒドリン系ゴム組成物の架橋は、プレス、蒸気釜、射出成型機などのような通常のゴム加工成形機を用いて100〜250℃に加熱することによって行なうことができる。
【0039】
このエピクロルヒドリン系ゴム組成物を架橋すると、低分子量エピクロルヒドリン系重合体がブリードアウトしなくなり、硬度(Duro−A)が好ましくは40以下、より好ましくは35以下、特に好ましくは30以下の中間弾性層に用いる架橋物が容易に得られる。
【0040】
本発明で使用されるエピクロルヒドリン系ゴム組成物は粘度が低く、寸法安定性があるので押出成形や射出成形にも適している。
【0041】
中間弾性層の層厚は特に限定されず、層厚を変えることでロール電気抵抗を変えることができる。層厚は、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上、特に好ましくは200μm以上である。層厚が薄すぎるとロール電気抵抗が小さくなりすぎるほか、中間弾性層の耐久性が問題となる。また、層厚は好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、特に好ましくは15mm以下である。層厚が厚すぎると、ロール電気抵抗が高くなりすぎる。
【0042】
本発明で中間弾性層を形成するエピクロルヒドリン系ゴム組成物の架橋物は半導電性を持つ。通常、架橋物の体積固有抵抗値が105〜1012Ω・cm、好ましくは106〜1011Ω・cm、より好ましくは107〜1010Ω・cmである。
【0043】
(表面層の材料)
中間弾性層の表面に、樹脂層またはゴム層を形成する。樹脂層またはゴム層としては、半導電性を有する樹脂層またはゴム層が好ましい。また、必要に応じて架橋樹脂層または架橋ゴム層としてもよい。
【0044】
表面層を構成する樹脂としては、特に限定されず、一般の半導電性ゴムロールにおいて表面層として用いられる樹脂、例えば、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0045】
表面層を構成する樹脂として用いられるポリウレタン樹脂は、多官能イソシアネート化合物とポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールとの反応物である。このポリウレタン樹脂は、分子鎖中に親水性官能基を有していてもよい。ポリウレタン樹脂の被覆は、環境汚染が小さく、ゴム層を膨潤させることなく、ゴム層から配合剤が溶出しないことから、自己乳化型または強制乳化型のポリウレタン樹脂水分散液を用いて行うことが好ましい。
【0046】
樹脂層を構成する樹脂として用いることのできるシリコーン樹脂としては、メチル基、フェニル基を側鎖に有するもの、アクリル基、エポキシ基、エステル基などで変性したものなどが例示できる。
【0047】
樹脂層を構成する樹脂として用いることのできるナイロン樹脂の中ではN−メトキシメチル化ナイロンが好ましい。N−メトキシメチル化ナイロンは、6−ナイロンのアミド基をメトキシメチル化することによって得られるものであり、そのメトキシ化率を高くすることによりアルコールに対する溶解性が向上する。
【0048】
樹脂層を用いた場合の表面層の層厚は、好ましくは5〜300μm、より好ましくは7〜200μm、さらに好ましくは10〜150μmの範囲である。層厚が小さすぎると摩耗に対する耐久性が低下し、大きすぎると被膜にクラックが入りやすくなる。
【0049】
表面層をゴム層とする場合、ゴム層を形成するゴムは特に限定されるものではく、一般の半導電性ゴムロールにおいて表面層を構成するのに用いられるゴムが用いられ、例えば、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム、エチレンプロピレンジエン共重合体ゴム、エピクロルヒドリン系ゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどの合成ゴムが単独で、またはブレンドして用いられる。
【0050】
表面層としてゴム層を用いた場合、表面層の層厚は樹脂の場合と比べクラックが入る問題がないため特に限定されない。
【0051】
表面層の体積固有抵抗値は電気抵抗のバラツキを小さくするために好ましくは105〜1012Ω・cm、より好ましくは105.5〜1011Ω・cm、さらに好ましくは106〜1010Ω・cmである。表面層を構成する樹脂やゴムの種類によっては、アセチレンブラックなどのカーボンブラック; 酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性酸化物; 界面活性剤などの導電性付与剤; などを添加して、体積固有抵抗値を調整する。
【0052】
なお、感光体汚染、ブリード性の点から表面層を構成する樹脂やゴムには、可塑剤や軟化剤は使用しないことが好ましい。
【0053】
(半導電性ゴムロール)
本発明の半導電性ゴムロールは、中心軸から順に(A)軸体、(B)(a)エピクロルヒドリン系ゴムを必須成分とするゴム成分、(b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体、および(c)架橋剤を含有するエピクロルヒドリン系ゴム組成物を架橋して成る中間弾性層、および(C)表面層の少なくとも三層を有する多層のものである。
【0054】
具体例として、図1、図2に示す半導電性ゴムロールについて説明する。図1は本発明の半導電性ゴムロールの一例を示す軸に垂直な断面図、図2は同じく一例を示す軸方向の断面図である。この一例においては、半導電性ゴムロールの中心部分に存在する軸体14は、真円柱状であり、その外周と接して半導電性の中間弾性層15が形成されている。さらにその中間弾性層の外周に表面層16が形成されている。
【0055】
また前述のように、軸体と中間弾性体の間に内層を形成してもよい。
【0056】
本発明の半導電性ゴムロールを製造する方法も特に限定されない。例として、図1、図2に示す半導電性ゴムロールのように3層構造の場合について説明する。
【0057】
軸体をロール金型内に固定し、軸体の外周を覆うようにエピクロルヒドリン系ゴム組成物を入れてロール状に賦形し、次いで加熱して架橋させ、中間弾性層を形成する。形成後、寸法精度や密着性の向上などの必要に応じてこの中間弾性層の表面を研磨した後、その上に表面層を形成する。
【0058】
表面層の成型方法も特に限定されない。通常、表面層を構成する樹脂またはゴムを有機溶剤や水などに溶解または分散させ、この溶液または分散液を前記中間弾性層の表面に塗布し、乾燥して形成される。必要に応じて、架橋剤などを配合した架橋性樹脂、または架橋性ゴムを調製し、その溶液または分散液を前記中間弾性層の表面に塗布し、乾燥し、架橋して形成してもよい。塗布方法は、刷毛塗り、スプレー塗り、浸漬(ディップ)などの方法が挙げられるが、生産効率の点からディップ方式が好ましい。乾燥方法は、自然乾燥、加熱乾燥などの方法が挙げられるが、中でも表面層の膜厚の均一性を高めるために加熱乾燥が好ましい。架橋方法は、特に限定されず、用いる樹脂またはゴム、架橋剤などの特性に応じた架橋方法を取ればよい。
【0059】
あるいは、表面層がゴム層の場合、中間弾性層の原料であるエピクロルヒドリン系ゴム組成物と表面層の原料である架橋性ゴム組成物との積層体を軸体の周囲に押出機から押出成形し、積層体のまま加熱架橋することにより、中間弾性層と表面層を同時に成型、架橋し、必要に応じて表面を研磨するなどの処理を行う。中間弾性層と表面層の同時成型、同時架橋は、中間弾性層と表面層の接着が容易であることから好ましい方法である。
【0060】
表面層をゴム層とした場合、表面層の摩擦係数を低減するために表面処理を行なうことが好ましい。表面処理を行なうには、先ず研磨材を用いて表面を適度に研磨することが好ましい。表面処理方法としては紫外線照射、オゾン暴露、反応性シリコーン化合物の塗布、または反応性フッ素化合物の塗布などが挙げられる。このような表面処理を行なうことによりゴムロール表面の粘着による弊害を防止できる。
【0061】
本発明の半導電性ゴムロールは感光体上の静電潜像をトナーにより可視像に現像する画像形成装置において、感光体と接触して配置される現像ロール、帯電ロールまたは転写ロールなどとしてとして好適である。
【0062】
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、帯電ロール、現像ロール、転写ロールなどのロールの内、少なくとも一つとして本発明の半導電性ゴムロールを有する。
【0063】
本発明の画像形成装置の構造、機能は、特に限定されず、例えば、(1)帯電ロールが感光体に当接して感光体表面を帯電させ、(2)露光手段により露光することにより帯電した感光体表面に静電潜像を形成させ、(3)トナーが塗布された現像ロールが感光体に当接して、静電潜像がトナーにより可視像に現像され、(4)転写ロールを用い電圧を印加してトナーを印刷用紙に転写するように構成され、機能するものである。
【0064】
このような画像形成装置としては、例えば、図3に示されるものが挙げられる。図3に示す画像形成装置では静電潜像を形成する感光体1と帯電ロール10とが接触するように配置され、電源から帯電ロールの軸体を通じて電圧が印加されるようになっており、これによって、感光体の表面を帯電させる。レーザー光源などを用いた露光装置9により露光し、帯電した感光体1の表面に静電潜像を形成させる。感光体1は、現像ロール2とも接触するように配置されている。現像工程では、トナー4が供給ロール6により隣接する現像ロール2の表面に塗布される。現像ブレード3により、現像ロール表面に塗布されたトナーの厚みを均一に制御する。現像ロールの表面に一様かつ均一に塗布されたトナーは、感光体ドラム表面に形成された静電潜像を可視化する。
【0065】
感光体上のトナー像は、電源により転写ロール11に軸体を介してトナーと逆極性の電圧を印加して電界を発生させ、該電界の静電気力によって感光体ドラム上のトナーを転写材13に転写する。
【0066】
転写工程の後、感光体表面に残留するトナーは、クリーニングブレードなどのクリーニング装置によって除去してもよいが、図3には、このようなクリーニング装置のない、いわゆるクリーナーレス方式の画像形成装置が示されている。したがって、感光体ドラム表面に残留するトナーは、帯電ロールと接触することになる。クリーナーレス方式では、帯電工程を通過した後、帯電された感光体の表面電位と現像バイアスの差異によって、トナーを静電気力で現像装置に吸引して回収する。すなわち、帯電工程終了後であって、転写工程が開始される前の、例えば、現像工程において発生した静電気力によって残留トナーを回収する。なお、現像ロール2の軸体は、通常、バイアス電圧が印加できるように構成されている。転写材は、例えば、紙やOHPシートなどである。
【0067】
【実施例】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。使用した溶媒、単量体などは、全て脱気脱水処理を行って用いた。なお、本実施例で採用した中間弾性層ゴム特性評価方法およびロール特性評価方法を下記に示す。
【0068】
[還元粘度(ηsp/C)]
還元粘度は、重合体1gをトルエン100mlに溶解したものを30℃の恒温水槽において、オストワルド粘度計タイプ0Aを用いて測定した。
【0069】
[硬度]
硬度はJIS K 6253に従って測定した。
【0070】
[体積固有抵抗値]
体積固有抵抗値(Ω・cm)は、それぞれの材料で厚さ2mmのシートを作製し、それをガイドリング付き電極に挟んで、直流500Vの電圧で23℃、50%RHにて測定した。
【0071】
[ロール電気抵抗]
ロール電気抵抗(Ω)は、ステンレス鋼製の軸体を用いてゴム面長200mm、ゴム厚さ3mm、ロール外径18mmの半導電性ゴムロールを作製し、ゴム面長と同じ長さで1000gの黄銅製の電極を乗せて、半導電性ゴムロールの軸体と電極間に500Vの直流電圧をかけて測定した。
【0072】
[感光体汚染]
感光体汚染は、市販の感光体(沖データ社製、OL600e用)を固定し、半導電性ゴムロールを荷重500gとなるように感光体と接触させ45℃、80%RHの環境下に4週間放置して評価した。なお、評価は3段階であり、表1、2中では、○は4週間経過時に汚染は認められないことを表し、△は2週間経過時に汚染は認められないが、その後感光体上にスジが認められることを表し、×は2週間経過前に汚染が認められることを表す。
【0073】
[耐久性、L/L印字濃度]
作製した半伝導性ゴムロールを現像ロールとして、電子写真プリンター(画像形成装置)に取り付けて23℃、50%RHの環境下にて5%印字のパターンで連続印字を行ない、印字濃度や印字のムラなどの印字品質について評価した。印字品質が悪化した場合には使用した感光体やトナーを正常品と交換して実験を行い、原因を確認した。印字品質の悪化の原因としては感光体の削れやトナー劣化などが挙げられる。さらに、感光体削れについては顕微鏡による表面観察によっても確認を行った。印字品質、感光体削れは共に3段階評価であり、表1中で印字品質は、○は3万字印字しても印字品質が安定であることを表し、△は3万枚印字では印字品質に悪化が認められたが、2万枚印字しても印字品質が安定であることを表し、×は2万枚印字して2万枚目には印字品質に悪化が認められることを表す。表1中で感光体削れは、○は3万枚印字しても感光体の削れによる影響がないことを表し、△は3万枚印字すると感光体の削れによる影響が認められるが、2万枚印字しても2万枚目に感光体の削れによる影響がないことを表し、×は2万枚印字して2万枚目に感光体削れが原因の印字品質の悪化が見られることを示す。
【0074】
また、低温低湿度のL/L環境下(10℃、20%RH)についての印字濃度についても評価した。L/L印字濃度の評価はマクベス反射濃度計を用い、「黒ベタ部」を測定することにより行った。○は印字濃度が1.3以上であることを、×は印字濃度が1.3未満であることを示す。
【0075】
参考例1
密栓した内容積800ミリリットルの耐圧ガラスボトルを窒素置換して、トルエン180g及びトリイソブチルアルミニウム60gを仕込んだ。ガラスボトルを氷水に浸漬して冷却後 、ジエチルエーテル224.2gを添加し撹拌した。次に氷水で冷却しながら正リン酸8.89gを添加し、さらに撹拌した。この時、有機アルミニウムと正リン酸の反応によりボトル内圧が上昇するので適時脱圧を実施した。次に1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のギ酸塩8.98gを添加した。得られた反応混合物を60℃の温水浴内で1時間熟成反応して、触媒溶液を得た。
【0076】
参考例2
5リットルのオートクレーブにエピクロルヒドリン251.4g、アリルグリシジルエーテル31g、エチレンオキサイド22.11g、トルエン2907.12gを入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら内容液を70℃に昇温し、参考例1で得た触媒溶液を13ミリリットル添加して反応を開始した。
【0077】
次に、触媒添加から5時間かけて等速度で、エチレンオキサイド145.49gをトルエン339.48gに溶解した溶液を連続添加した。同時に、5時間に渡り、30分毎に触媒溶液を7ミリリットルづつ添加した。触媒添加から5時間で反応を完結させた。
【0078】
反応終了後、水を15g添加して撹拌し、さらに4,4’−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)5重量%トルエン溶液を45g添加し撹拌した。溶媒を除去する為に、スチームストリッピングを実施し上澄み水を除去後60℃にて真空乾燥し、ムーニー粘度85のエピクロルヒドリンゴムAを436.5gを得た。エピクロルヒドリンゴムAが、エピクロルヒドリン単位/アリルグリシジルエーテル単位/エチレンオキサイド単位がモル比で40/4/56である3元共重合体であることをNMR分析で確認した。
【0079】
参考例3
エピクロルヒドリン量を339.7gに、アリルグリシジルエーテル量を49.95gに、エチレンオキサイド量を8.53gに、トルエン量を3125.69gに、窒素雰囲気下での昇温を60℃に、参考例1で得た触媒溶液量を10ミリリットルに、エチレンオキサイドのトルエン溶液をエチレンオキサイド51.82gをトルエン120.91gに溶解した溶液に変える以外は参考例1と同様に処理して、ムーニー粘度80、エピクロルヒドリン単位/アリルグリシジルエーテル単位/エチレンオキサイド単位がモル比で67/8/25であるエピクロルヒドリンゴムBを434.2g得た。
【0080】
参考例4
5リットルのオートクレーブにエピクロルヒドリン2000gおよびトルエン857gを入れ、窒素雰囲気下にて撹拌しながら内溶液を50℃に昇温し、四塩化スズ30重量%トルエン溶液を3ミリリットル添加して重合を開始した。さらに30分毎に同じ四塩化スズ溶液を3ミリリットルづつ10時間にわたり添加し、重合反応を行った。ガスクロマトグラフ分析による未反応エピクロルヒドリンの定量分析によれば重合反応率は81%であった。得られた反応物混合液に水酸化ナトリウム20重量%水溶液61.5gを添加し、さらに4,4’−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)5重量%トルエン溶液を162g添加し撹拌した。溶媒および未反応単量体を除去するために、スチームストリッピングを実施し、上澄み水を除去後、60℃にて真空乾燥して、還元粘度が0.09を示す粘稠な低分子量エピクロルヒドリン重合体a1600gを得た。
【0081】
参考例5
エピクロルヒドリン量を1930gに変え、さらにエピクロルヒドリンとトルエンと同時にエチレンオキサイド70gをオートクレーブに入れる以外は、参考例4と同様に処理し、低分子量エピクロルヒドリン重合体b660gを得た。ガスクロマトグラフィーによる未反応エピクロルヒドリンと未反応エチレンオキサイドの定量分析によれば重合反応率は34%、還元粘度が0.06、NMR分析によれば、エピクロルヒドリン単位/エチレンオキサイド単位のモル比が80/20の共重合体であった。
【0082】
実施例1〜7、比較例1〜6
表1に示す配合で、ロールで混練し、中間弾性層材料であるゴム組成物を調製した。なお、配合材料で、上記で説明されていないものは以下のようなものである。
アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム: 日本ゼオン製、Nipol 1052J、日本ゼオン製
エチレン−プロピレン−ジエンゴム: 三井石油化学工業製、EPT3042E、
液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム: 日本ゼオン製、Nipol 1312、
パラフィン・オイル: 出光興産製、ダイアナプロセスPW−90、
カーボンブラック: ケッチェンブラック製、ケッチェンブラックEC
【0083】
この中間弾性層用材料のゴム組成物をシート状に成形して155℃で30分間架橋し、厚さ2mmの架橋ゴムシートを得た。得られた各架橋ゴムシートを用いて中間弾性層ゴム特性として、硬度、体積固有抵抗値を測定した結果を表1に示す。
【0084】
半導電性ロールは、以下のように軸体に中間弾性層を積層し、さらに表面層を積層して製造した。
【0085】
中間弾性層の形成は、ステンレス鋼製で全体の長さが263mm、中間弾性層被覆部の長さ227mm、外径10mmの円柱状中実体を軸体としてロール金型内に入れ、そこにゴム組成物を入れて、軸体の周囲にロール状に賦形し、次いで加熱して架橋する方法によって行った。架橋成形後、得られたゴムロールは、その表面を研磨材で研磨して、JIS B0601に記載されている10点平均粗さで10μm以下になるまで砥石の目を変えて研磨した。
【0086】
表面層の形成は、下記(1)〜(4)の方法で行った。
【0087】
(1)架橋性ポリウレタン樹脂組成物(スーパーフレックス126、第一工業製薬社製)水分散液(固形分20重量%)80重量部と酸化スズ20重量部をボールミルポットに入れ、良く分散させ、この分散液に中間弾性層を形成したロールを浸漬し、乾燥後150℃×10分間熱処理して、厚さ50μの架橋ポリウレタン樹脂の表面層を形成した。なお、表1、表2中で表面層材料の欄に「ウレタン」と書かれているのは、このウレタン樹脂の表面層を設けたことを示している。
【0088】
(2)架橋性ポリウレタン樹脂組成物水分散液の代わりにN−メトキシメチル化ナイロン(トレジンEF−30T、帝国化学産業製)メタノール溶液(固形分20重量%)を用いた以外は(1)と同様に処理して、厚さ50μmの表面層を形成した。なお、表1中で表面層材料の欄に「ナイロン」と書かれているのは、このナイロン樹脂の表面層を設けたことを示している。
【0089】
(3)架橋性ポリウレタン樹脂組成物水分散液の代わりにフッ素樹脂(ルミフロンLF−601C、旭硝子製)トルエン/キシレン(50/50重量%比)溶液(固形分20重量%)を用いた以外は(1)と同様に処理して、厚さ50μmの表面層を形成した。なお、表1中で表面層材料の欄に「フッ素」と書かれているのは、このフッ素樹脂の表面層を設けたことを示している。
【0090】
(4)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(Nipol 1052J)100重量部に対し酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸0.5重量部、酸化スズ50重量部、硫黄0.5重量部、テトラエチルチウラムジスルフィド1.5重量部を加えてロールで混練し、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム組成物を得た。このアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム組成物を押出機を用いて、中間弾性層を形成したロールの中間弾性層外周面にゴム組成物の層を設けた。160℃、30分の加熱により架橋させた後、研磨を行ない表面層を厚さ500μmとした。さらに、粘着を防止するために紫外線照射による表面処理を施した。紫外線照射はランプ出力80W/cm、定格電力4000Wの紫外線ランプの廻りに処理するロールを回転させ、3分間照射した。なお、表1中で表面層材料の欄に「NBR」と書かれているのは、この架橋アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムの表面層を設けたことを示している。
【0091】
なお、この表面層と同じ材料、同じ架橋条件で厚さ2mmのシートを作製し、表面層材料特性として体積固有抵抗値(Ω・cm)を、さらに製造した半導電性ロールについて、ロール特性として、中間弾性層厚、表面層厚、ロール硬度、ロール電気抵抗、L/L印字濃度、感光体汚染、耐久性(感光体削れ)、耐久性(印字品質)、ロール変化を測定または評価した結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
Figure 0003726862
【0093】
表1に示されるように、実施例1〜7ではいずれも中間弾性層は硬度で30以下であり表面層を設けたロール硬度でも40以下、ロール電気抵抗も適度な抵抗値を示す。現像ロールとしての耐久性試験においては感光体汚染はなく、連続印字試験における耐久性も優れる。また、低温低湿(L/L)下での印字試験においても良好な画像が得られた。
【0094】
比較例1では中間弾性層に可塑剤などを使用していないが紫外線照射の効果が少なく感光体汚染が生じる。さらに、ロール硬度が高いため感光体削れやトナー劣化が生じ、耐久性が劣る。
【0095】
比較例2では、中間弾性層に液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いることにより、ロール硬度が下がり、感光体削れは認められないが、表面層を設けていないため、感光体汚染やトナー付着により耐久性が劣る。また、ロール電気抵抗が高くなりL/L印字濃度が低下する。
【0096】
比較例3では表面層を設けているので感光体汚染はないが、ロール硬度が高いため感光体削れやトナー劣化が生じ耐久性が劣る。
【0097】
比較例4では中間弾性層に液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを使用しているためロール硬度は低く感光体削れはないが、エピクロルヒドリンゴムと液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムの相溶性が悪く、感光体汚染はないものの中間弾性層から液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムが遊離しロール電気抵抗が連続印字において上昇し、印字品質が悪くなる。また、圧縮永久歪みも悪く、画像にムラを生じる。
【0098】
比較例5では中間弾性層に用いているアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムと液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムの相溶性が良いので感光体削れやトナー劣化はない。しかし、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを用いているためロール電気抵抗が高く、印字濃度が低く耐久性評価での印字品質がやや劣る。また、L/L印字濃度も低くなってしまう。
【0099】
比較例6では硬度は低く感光体削れやトナー劣化はないが、中間弾性層に多量のパラフィンオイルを用いているためオイルが連続印字によって遊離し、ロール電気抵抗が上昇し、表面層の剥離によって印字品質が悪化する。また、感光体汚染も長期間放置によって生じてくる。
【0100】
実施例8、9
実施例8、9では軸体と中間弾性層の間に表2に示す導電性材料を内層として設けるほかは他の実施例と同様に半導電性ロールを製造し、実施例1〜7などと同様に各特性を測定、評価した。結果を表2に示す。
【0101】
実施例8、9の比較から、内層を変えることにより、この半導電性ロールは、ロール特性が調整できることがわかる。また、ロール硬度も低く、長時間の使用でも感光体汚染はなく、印字品質も低下せず、耐久性に優れる。なお、実施例9で用いたアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムは、日本ゼオン製、Nipol DN223である。
【0102】
【表2】
Figure 0003726862
【0103】
【発明の効果】
本発明の半導電性ゴムロールは、感光体汚染がなく、環境依存性が小さく、硬度が低く、耐圧縮歪みや耐久性に優れ、画像形成装置の現像ロール、帯電ロール、転写ロールなどとして有用である。
【0104】
また、この半導電性ゴムロールを部品として用いた画像形成装置は、半導電性ゴムロールが原因の故障、トラブルなどが少なく、安定した画像形成が可能である。
【0105】
(態様)
本発明の態様としては、
(1) 中心軸から順に(A)軸体、(B)(a)エピクロルヒドリン系ゴムを必須成分とするゴム成分、(b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体および(c)架橋剤を含有するエピクロルヒドリン系ゴム組成物を架橋して成る中間弾性層、ならびに(C)表面層の少なくとも三層を有する多層半導電性ゴムロール、
(2) エピクロルヒドリン系ゴムが、アルキレンオキサイド、エピクロルヒドリン、および不飽和エポキシドを共重合して得られる共重合ゴムである(1)記載のロール、
(3) アルキレンオキサイドが、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをモル比で10/90〜90/10、好ましくは15/85〜85/15、より好ましくは20/80〜80/20で併用したものである(2)記載のロール、
(4) エピクロルヒドリン系ゴム中のエピクロルヒドリン単位の量が、30〜100モル%、好ましくは35〜90モル%、より好ましくは40〜80モル%である(1)〜(3)のいずれかに記載のロール、
(5) エピクロルヒドリン系ゴム中の不飽和エポキシド単位の量が、1〜15モル%、好ましくは2〜12モル%、より好ましくは2.5〜10モル%である(1)〜(4)のいずれかに記載のロール、
(6) エピクロルヒドリン系ゴムが、100℃におけるムーニー粘度が20〜200、好ましくは40〜150、より好ましくは50〜100のものである(1)〜(5)のいずれかに記載のロール、
(7) (a)ゴム成分が、エピクロルヒドリン系ゴム50〜100重量%、好ましくは60〜90重量%、より好ましくは70〜85重量%、他のゴム0〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜30重量%からなるものである(1)〜(6)のいずれかに記載のロール、
(8) (b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体が、アルキレンオキサイド、エピクロルヒドリン、および不飽和エポキシドを共重合して得られる共重合体である(1)〜(7)のいずれかに記載のロール、
(9) (b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体が、アルキレンオキサイド単位量が0〜70モル%、好ましくは5〜65モル%、より好ましくは10〜60モル%、エピクロルヒドリン単位量が30〜100モル%、好ましくは35〜95モル%、より好ましくは40〜90モル%、不飽和エポキシド単位量が、0〜20モル%、好ましくは1〜15モル%、より好ましくは2.5〜10モル%である(8)記載のロール、
(10) (b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体が常温(20〜30℃)において液体状態のものである(8)または(9)記載のロール、
(11)(b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体が、分子量1000〜10000、好ましくは1500〜8000、より好ましくは2000〜6000のものである(8)〜(10)のいずれかに記載のロール、
(12) (b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体が、ムーニー粘度1以下のものである(8)〜(11)のいずれかに記載のロール、
(13) (b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体のトルエン溶液での還元粘度(ηsp/C)が0.01〜0.5、好ましくは0.02〜0.4、より好ましくは0.03〜0.3のものである(8)〜(12)のいずれかに記載のロール
(14) エピクロルヒドリン系ゴム組成物が、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対し、(b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体を10〜150重量部、好ましくは20〜120重量部、より好ましくは30〜100重量部、(a)ゴム成分100重量部に対して(c)架橋剤を0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜7重量部、より好ましくは0.3〜5重量部を配合したものである(1)〜(13)のいずれかに記載のロール、
(15) ロール硬度(Duro−A)が40以下、好ましくは35以下、より好ましくは30以下である(1)〜(14)のいずれかに記載のロール、
(16) 中間弾性層の厚さが50μm以上、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、30mm以下、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下である(1)〜(15)のいずれかに記載のロール、
(17) 中間弾性層の体積固有抵抗値が105〜1012Ω・cm、好ましくは106〜1011Ω・cm、より好ましくは107〜1011Ω・cmである(1)〜(16)のいずれかに記載のロール、
(18) (1)〜(17)のいずれかに記載のロールを部品として含有している画像形成装置、
などが例示される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導電性ゴムロールの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の半導電性ゴムロールの一例を示す軸方向の断面図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 感光体
2 現像ロール
3 現像ブレード
4 トナー
5 現像容器
6 供給ロール
7 定着ロール
8 加圧ロール
9 露光装置
10 帯電ロール
11 転写ロール
12 撹拌棒
13 転写材
14 軸体
15 中間弾性層
16 表面層

Claims (2)

  1. 中心軸から順に(A)軸体、(B)(a)エピクロルヒドリン系ゴムを必須成分とするゴム成分、(b)低分子量エピクロルヒドリン系重合体および(c)架橋剤を含有するエピクロルヒドリン系ゴム組成物を架橋して成る中間弾性層、ならびに(C)表面層の少なくとも三層を有する多層半導電性ゴムロール。
  2. 請求項1記載の半導電性ゴムロールを有する画像形成装置。
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