JP3725938B2 - 熱転写記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐熱性、耐溶剤性、耐擦過性などの優れた印像を形成するための熱転写記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の熱転写記録材料は一般に、基材上にワックスをビヒクルの主成分とする熱溶融性インクを塗布したものや、表面平滑性に劣る紙にも良好な品質の印像を形成するため、あるいは耐擦過性の良好な印像を形成するために、樹脂をビヒクルの主成分とする熱溶融性インクを塗布したものである。
【0003】
近年、製造工場における製造工程での部品、製品の管理、流通分野における商品管理、使用現場における物品管理などに使用されているバーコードなどを印字するのに、熱転写記録材料を使用するバーコードプリンターやラベルプリンターが用いられるようになってきている。
【0004】
このようなバーコードを付する物品などの中には、バーコードを付した後に高温に曝されるものがある。たとえば、プリント配線板の製造工程では180℃程度、半導体の検査工程では250℃程度の加熱処理が施されるので、このような高温度に耐える耐熱性が必要になる。また製造工場などにおける製品管理に使用するバーコードなどの場合、溶剤、油などに接触する機会が多いから、良好な耐溶剤性が要求される。また流通分野などで使用するバーコードなどの場合、擦られる機会が多いから、良好な耐擦過性が要求される。
【0005】
さらに、バーコードに限らず商業印刷分野では野外広告、選挙ポスター、一般ポスター、立看板、ステッカー、カタログ、パンフレット、カレンダー等、パッケージ分野では軽包装袋、食品、飲料、薬品、塗料等の容器ラベル、結束テープ等、衣料分野では品質表示ラベル、工程管理用ラベル、製品管理用ラベル等の多品種少量生産のものには熱転写プリンターが用いられるようになってきており、これらにも同じく耐熱性、耐溶剤性、耐擦過性などが求められる場合がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の熱転写記録材料には、転写性が優れ、かつ耐熱性、耐溶剤性、耐擦過性などを共に満足する印像を形成し得るものはなかった。
【0007】
すなわち、従来の、ワックスをビヒクルの主体とする熱溶融性インクを用いる熱転写記録材料の場合、転写性は良好であるが、得られた印像は250℃程度の高温に曝されると分解され崩れて読めなくなる場合があり、さらに耐溶剤性や耐擦過性も不充分である。またエチレン−酢酸ビニル共重合体などの樹脂をビヒクルの主体とするものは、耐熱性、耐溶剤性、耐擦過性は比較的優れているが、溶融粘度が高く転写性はワックス主体のものより劣る。
【0008】
本発明の課題は、前記の点に鑑みて、転写性が良好で、かつ耐熱性、耐溶剤性、耐擦過性などが良好な印像を形成しうる熱転写記録材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)基材上に、少なくとも、熱溶融性ビヒクルと着色剤とからなる熱溶融性インク層が設けられてなり、前記熱溶融性ビヒクル中に、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂が50重量%以上含有されてなることを特徴とする熱転写記録材料に関する。
【0010】
本発明はさらに、(2)前記熱溶融性インク層に、さらにポリテトラフルオロエチレン粒子が1〜50重量%含有されてなることを特徴とする前記(1)項記載の熱転写記録材料に関する。
【0011】
本発明はさらに、(3)前記熱溶融性インク層に、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子に加えてさらにワックス粒子が含有されてなることを特徴とする前記(2)項記載の熱転写記録材料に関する。
【0012】
本発明はさらに、(4)前記熱溶融性ビヒクルの前記熱溶融性インク層中における含有量が40〜95重量%であることを特徴とする前記(1)、(2)または(3)項記載の熱転写記録材料に関する。
【0013】
本発明はさらに、(5)前記基材と前記熱溶融性インク層との間に、バインダー樹脂、ポリテトラフルオロエチレン粒子およびワックス粒子からなるインク強化層が設けられてなり、バインダー樹脂がインク強化層中に5〜95重量%含有されてなることを特徴とする前記(1)、(2)、(3)または(4)項記載の熱転写記録材料に関する。
【0014】
本発明はさらに、(6)前記基材と前記インク強化層との間に、ワックスからなる層が設けられ、該層の針入度が1以下であることを特徴とする前記(5)項記載の熱転写記録材料に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明における熱溶融性インク層は、熱溶融性ビヒクルと着色剤とからなり、前記熱溶融性ビヒクル中に、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂が50%(重量%、以下同様)以上含有されてなるものである。
【0016】
本発明においては、熱溶融性インクのビヒクルの主成分として、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂を用いることによって、ビヒクルの主成分として樹脂を用いているにもかかわらずインクの転写性を損なわずに、得られる印像の耐熱性、耐溶剤性および耐擦過性を大巾に向上せしめることができる。ビヒクル中におけるフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂の割合が50%未満になると、このエポキシ樹脂の使用効果が充分に発揮されない。
【0017】
本発明で用いるフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂は、式(I):
【0018】
【化1】
【0019】
で表わされるエポキシ樹脂である。市販品は70〜90℃程度の軟化点を有する。
【0020】
本発明においては、熱溶融性インクのビヒクルの全量を前記フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂で構成することによって、とくに耐熱性および耐溶剤性の優れた印像が得られるが、必らずしもその必要はなく、ビヒクルの50%以上、なかんずく70%以上がフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂であればよい。
【0021】
本発明で使用できる他のビヒクル成分としては、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を含む熱溶融性樹脂などが挙げられる。
【0022】
本発明で前記特定のエポキシ樹脂と併用できるその他のエポキシ樹脂としては、たとえばビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラフェノールエタンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、ナフトール変性クレゾールノボラックポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらその他のエポキシ樹脂を使用する場合は、単独でまたは2種以上混合して使用できる。
【0023】
エポキシ樹脂以外の熱溶融性樹脂としては、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合樹脂、フェノール樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0024】
前記他のビヒクル成分はビヒクル全量の50%以下で使用するのが好ましい。
【0025】
前記ビヒクル全体は熱転写記録材料の保存安定性および転写性の点から軟化温度が60〜120℃の範囲が好ましい。
【0026】
前記ビヒクルの熱溶融性インク層中における含有量は、転写性などの点から、40〜95%、なかんづく60〜90%の範囲が適当である。
【0027】
本発明においては、熱溶融性インク層にポリテトラフルオロエチレン粒子(以下、PTFE粒子という)を含有させるのが好ましい。ビヒクルとしてのエポキシ樹脂にPTFE粒子を分散させることにより、転写時のインク層のキレが向上される。また転写により得られた印像の表面にPTFE粒子が存在するため、耐擦過性がより向上される。ここで、PTFEはテトラフルオロエチレンのホモポリマーであっても良く、テトラフルオロエチレンと他の少量の変性用モノマーとの共重合体であっても良い。
【0028】
前記PTFE粒子としては、平均粒径が0.01〜15μm、なかんづく0.01〜5μmの範囲にあるものが好ましい。平均粒径が前記範囲未満では、充分な耐擦過性が得られない傾向があり、一方前記範囲を超えると、転写性が悪くなる傾向がある。
【0029】
前記PTFE粒子の熱溶融性インク層中における含有量は、1〜50%、なかんづく5〜30%の範囲が好ましい。PTFE粒子の含有量が前記範囲より少ないと、印像の耐擦過性向上効果が充分に発揮されない場合がある。一方、前記範囲より多いと、転写性が悪くなる傾向がある。
【0030】
PTFE粒子はバルクの形態で、あるいは有機溶剤または水に分散した分散液ないしエマルジョンの形態で使用できる。
【0031】
本発明においては、前記PTFE粒子に加えてワックス粒子を併用することにより、得られる印像の耐擦過性がより向上される。なお、本発明においては、ワックス粒子は熱溶融性ビヒクルに含まれないものとする。
【0032】
前記ワックス粒子としては、平均粒径が0.01〜15μm、なかんづく0.01〜5μmの範囲にあるものが好ましい。平均粒径が前記範囲未満では、充分な耐擦過性が得られない傾向があり、一方前記範囲を超えると、転写性が悪くなる傾向がある。
【0033】
PTFE粒子とワックス粒子を併用する場合、両粒子の合計の熱溶融性インク層中における含有量は、1〜50%、なかんづく5〜30%の範囲が好ましい。両粒子の合計の含有量が前記範囲より少ないと、印像の耐擦過性向上効果が充分に発揮されない場合がある。一方、前記範囲より多いと、転写性が悪くなる傾向がある。
【0034】
またPTFE粒子とワックス粒子を併用する場合、両者の合計量対して、PTFE粒子の割合が50〜90%、なかんづく50〜70%の範囲が好ましい。PTFE粒子の割合が前記範囲より少ないと印像の耐熱性および耐溶剤性が若干低下する場合があり、一方前記範囲より多いと耐擦過性向上効果が充分に発揮されない場合がある。
【0035】
前記ワックス粒子としては、たとえばカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックスなどの植物系ワックス、ミツロウ、ラノリンなどの動物系ワックス、モンタンワックス、セレシンワックスなどの鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックスなどの合成炭化水素系ワックスなどの1種または2種以上からなるワックス粒子の1種または2種以上からなるものが使用できる。とくにワックス粒子表面の滑り性が良好である点から、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプッシュワックスおよびカルナバワックスが好ましい。
【0036】
ワックス粒子はバルクの形態で、あるいは有機溶剤または水に分散した分散液ないしエマルジョンの形態で使用できる。
【0037】
本発明に用いる着色剤としては、カーボンブラックをはじめ、アゾ系顔料(不溶性アゾ、アゾレーキ、縮合アゾ顔料)、フタロシアニン系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、アントラキノン系顔料、ニグロシン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チタンホワイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなど各種有機、無機の顔料が使用できる。色調の調整のために、染料を併用しても良い。着色剤のインク層中における含有量は5〜50%、なかんづく10〜40%の範囲が適当である。
【0038】
減法混色を利用して多色またはフルカラーの印像を形成する場合には、イエロー、マゼンタ、シアンの着色剤、および要すればブラックの着色剤が使用される。
【0039】
イエロー、マゼンタ、シアンの着色剤としては透明性顔料が好ましく用いられる。ブラックの着色剤は通常不透明性顔料が使用される。
【0040】
イエローの透明性顔料としては、たとえばナフトールエローS、ハンザエロー5G、ハンザエロー3G、ハンザエローG、ハンザエローGR、ハンザエローA、ハンザエローRN、ハンザエローR、ベンジジンエロー、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、パーマネントエローNCG、キノリンエローレーキなどの有機顔料の1種または2種以上が使用できる。
【0041】
マゼンタの透明性顔料としては、たとえばパーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーミンBS、パーマネントカーミンFB、リソールレッド、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、キナクリドンレッドなどの有機顔料の1種または2種以上が使用できる。
【0042】
シアンの透明性顔料としては、たとえばビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシニアニンブルー、フタロシニアニンブルー、フアストスカイブルーなどの有機顔料の1種または2種以上が使用できる。
【0043】
ここで、前記透明性顔料とは、透明なビヒクル中に分散させたとき、透明に着色されたインクを与える顔料を言う。
【0044】
ブラックの顔料としては、たとえば絶縁性や導電性を有するカーボンブラックなどの無機顔料、アニリンブラックなどの有機顔料の1種または2種以上が使用できる。
【0045】
本発明における熱溶融性インク層には前記成分の他に、分散剤などを適宜配合することができる。
【0046】
本発明における熱溶融性インク層は、前記特定のエポキシ樹脂を溶解する溶剤に溶解するか、あるいは前記特定のエポキシ樹脂を溶解しない溶剤に分散し、さらに着色剤、必要に応じてPTFE粒子(またはPTFE粒子とワックス粒子)、その他の添加剤を溶解、分散させて塗工液を調製し、この塗工液を基材上に塗布し、乾燥することによって形成できる。
【0047】
本発明における熱溶融性インク層の塗布量(固形分換算、以下同様)は、通常0.02〜5g/m2、より好ましくは0.5〜3g/m2が適当である。
【0048】
前記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、変性ポリフェニレンエーテルフィルム、ポリアセタールフィルム、その他この種のインクリボンの基材用フィルムとして一般に使用されている各種のプラスチックフィルムが使用できる。またコンデンサーペーパーのような高密度の薄い紙も使用できる。基材の厚さは通常1〜10μm程度であり、熱拡散を小さくして解像度を高めうる点からは1〜6μmの範囲が好ましい。
【0049】
本発明の熱転写記録材料をサーマルヘッドを備えた熱転写プリンターで使用する場合は、基材の背面(サーマルヘッドに摺接する側の面)にシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ニトロセルロース樹脂、あるいはこれらによって変性された、たとえばシリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂など各種の耐熱性樹脂、あるいはこれら耐熱性樹脂に滑剤を混合したものなどからなる、従来から知られているスティック防止層を設けるのが好ましい。
【0050】
本発明の好ましい実施態様においては、基材と熱溶融性インク層との間にインク強化層が設けられる。インク強化層を設けることにより、転写後の印像表面にインク強化層が存在することになり、耐擦過性がより向上される。
【0051】
前記インク強化層は、バインダー樹脂、PTFE粒子およびワックス粒子で構成するのが好ましい。このPTFE粒子およびワックス粒子としては前記熱溶融性インク層に使用したものが好ましく使用できる。バインダー樹脂としては耐擦過性向上の点から、特にアクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましい。
【0052】
インク強化層における各成分の割合は、インク強化層全量に対して、PTFE粒子3〜50%、ワックス粒子2〜45%およびバインダー樹脂5〜95%の範囲が好ましい。
【0053】
前記アクリル樹脂としては、たとえばポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、またはこれらの共重合体などの1種または2種以上が使用できる。
【0054】
前記インク強化層に用いるPTFE粒子は分散液、なかんづく溶剤分散液の形態で使用するのが好ましい。このような分散液を調製する際には、良好な分散性を得るために分散剤としてフッ素系界面活性剤を使用するのが好ましい。このフッ素系界面活性剤としては、高分子フッ素系界面活性剤が好ましく使用される。高分子フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基(炭素数6〜10のものが好ましい)を含有するアクリル樹脂、アクリルモノマーとエチレンオキサイドとからなる共重合体でパーフルオロアルキル基(炭素数6〜10のものが好ましい)を含有するものなどが挙げられる。このような高分子フッ素系界面活性剤はバインダー樹脂としても機能するから、これを前記バインダー樹脂の全部または一部として使用することができる。
【0055】
インク強化層の塗布量は、0.3〜2g/m2、なかんづく0.5〜1.5g/m2が好ましい。塗布量が前記範囲未満ではインク強化効果が充分に奏されない傾向があり、一方前記範囲より多いと転写性が劣る傾向がある。
【0056】
インク強化層は、バインダー樹脂の分散液または溶液にPTFE粒子とワックス粒子を混合した塗工液を基材または後述のワックス層上に塗布し、乾燥することにより形成できる。
【0057】
本発明の他の好ましい実施態様においては、基材とインク強化層との間に針入度が1以下のワックス層が設けられる。該ワックス層を設けることにより、インク強化層の離型性が向上され、転写性が良好となる。
【0058】
前記ワックスとしては、カルナバワックス、ポリエチレンワックスなどの1種または2種以上からなる混合物が挙げられる。
【0059】
前記ワックス層はワックスの溶剤溶液、溶剤分散液または水性エマルジョンを基材上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。またホットメルトコーティング法により形成することができる。
【0060】
前記ワックス層の塗布量は、通常0.01〜2.0g/m2、より好ましくは0.1〜1.0g/m2が適当である。ワックス層の塗布量が前記範囲未満では所期の効果が奏され難い傾向があり、一方前記範囲より多いと転写性が悪くなる場合がある。
【0061】
本発明の熱転写記録材料には、単色の印像を形成するための熱転写記録材料と減法混色を利用して多色またはフルカラーの印像を形成するためのカラー用熱転写記録材料が含まれる。
【0062】
単色の印像を形成するための熱転写記録材料は、基材(またはインク強化層)上に単色の熱溶融性インク層を設けたものである。熱溶融性インク層の色としては、黒、赤、青、緑、イエロー、マゼンタ、シアンなどが挙げられる。
【0063】
多色またはフルカラーの印像を形成するためのカラー熱転写記録材料の一つの実施態様のものは、単一の基材(またはインク強化層)上に、イエローの熱溶融性インク層、マゼンタの熱溶融性インク層およびシアンの熱溶融性インク層、ならびに要すればブラックの熱溶融性インク層を並べて配置したものである。前記各色のインク層の配置方法としては種々の態様が挙げられ、プリンターの種類に応じて適宜選択される。
【0064】
図1は前記実施態様の熱転写記録材料の一実施例を示す部分平面図である。図1において、単一の基材1上にイエローの熱溶融性インク層2Y、マゼンタの熱溶融性インク層2Mおよびシアンの熱溶融性インク層2Cが並べて配置されている。インク層2Y、2Mおよび2Cはそれぞれ一定の大きさを有し、それらの一定順序の並びを1つの繰返し単位Uとして基材1の長手方向に繰返し並べて配置されている。繰返し単位Uにおける3色のインク層の並べ方の順序は各色の転写順序に従って適宜決められる。繰返し単位Uにはブラックのインク層を加えても良い。
【0065】
多色またはフルカラーの印像を形成するためのカラー熱転写記録材料の他の実施態様のものは、1つの基材(またはインク強化層)上にイエローの熱溶融性インク層を設けた第1の熱転写記録材料、他の基材(またはインク強化層)上にマゼンタの熱溶融性インク層を設けた第2の熱転写記録材料、およびさらに他の基材(またはインク強化層)上にシアンの熱溶融性インク層を設けた第3の熱転写記録材料、ならびに要すればさらに他の基材(またはインク強化層)上にブラックの熱溶融性インク層を設けた第4の熱転写記録材料のセットからなるものである。
【0066】
前記カラー画像形成用熱転写記録材料を用いると、耐擦過性の優れた多色またはフルカラー画像が得られる。さらに本発明における各色の熱溶融性インク層は重ね合せ性が良好であるため、色再現性の良好なカラー画像が得られる。
【0067】
本発明の熱転写記録材料を用いて印像を形成するには、熱転写記録材料のインク層を被転写体と重ね合せ、インク層に像状に熱エネルギーを与える。熱エネルギーを与える熱源としてはサーマルヘッドが一般的であるが、レーザー光、赤外線フラッシュ、熱ペンなど公知のものがいずれも使用できる。
【0068】
被転写体がシート状物でない立体形状の場合、その表面が曲面である場合などにおいては、熱エネルギーの適用が容易な点から、レーザー光による熱転写が有利である。
【0069】
本発明の前記カラー画像形成用熱転写記録材料を用いる多色またはフルカラーの画像の形成は、通常熱転写プリンタで多色のカラー画像の分解色信号、すなわちイエロー信号、マゼンタ信号、シアン信号に従って、イエローインクドット、マゼンタインクドット、シアンインクドットをそれぞれ所定の順序で順次重ね転写して受像体上にイエローの分解画像、マゼンタの分解画像、シアンの分解画像を形成することによって行なうことができる。イエローインクドット、マゼンタインクドット、シアンインクドットの転写順序は任意に選択できる。通常の多色またはフルカラー画像の場合は3色の色信号に従って3色の分解画像が形成されるが、2色の色信号しかない場合は対応する2色の分解画像が形成される。
【0070】
かくして、(A)イエロー、マゼンタおよびシアンのうちの少なくとも2種の減法混色により色が発現される領域、または(B)前記(A)の領域と、イエロー、マゼンタおよびシアンのうちの少なくとも1種からなる単色の領域との組合せからなる領域を含む多色のカラー画像が得られる。ここで、イエローインクドットとマゼンタインクドットの重ね合せ部分でレッド色が、イエローインクドットとシアンインクドットの重ね合せ部分でグリーン色が、マゼンタインクドットとシアンインクドットの重ね合せ部分でブルー色が、イエローインクドットとマゼンタインクドットとシアンインクドットの重ね合せ部分でブラック色が呈せられる。
【0071】
前記においてはブラック色をイエローインクドットとマゼンタインクドットとシアンインクドットの重ね合せで得ているが、3色のインクドットを使用せずに、ブラックインクドットのみでブラック色を得るようにしても良い。
【0072】
なおブラックインクドットをイエローインクドット、マゼンタインクドット、シアンインクドットの少なくとも1種の上にまたは少なくとも2種が重ね合わされた上に重ね合せて、ブラック色を呈するようにしても良い。
【0073】
本発明の熱転写記録材料は、前記のごとく耐熱性の優れた印像を与えるので、150℃以上の温度で加熱処理を受ける被転写体に印像を形成するのに好適に使用される。被転写体の受ける加熱処理の温度が高すぎると、ビヒクル成分が分解し、印像としての形態が消失される傾向にあるので、被転写体の受ける加熱処理の温度は280℃程度以下であるのが好ましい。
【0074】
本発明の熱転写記録材料を用いて印像を形成する場合、目的とする被転写体に直接印像を形成してもよいが、予めシート状の被転写体(受像体)に印像を形成したのち、この受像体を目的とする被転写体に耐熱性接着剤などの適宜の手段で貼付してもよい。
【0075】
前記シート状の受像体としては、各種の耐熱性シート状物が使用できるが、特開平8−2131号公報に開示されているものが好ましく使用される。このものは、基材の片面に、白色顔料と有機バインダーを必須成分とする受像層が設けられ、他面に耐熱性粘着層が設けられた受像体であって、前記有機バインダーがフェノキシ樹脂、またはフェノキシ樹脂と飽和ポリエステル樹脂とからなるものである。その他、ポリイミドなどの耐熱性樹脂のシート状物、ガラス繊維やセラミック繊維の布状物、これに耐熱性樹脂を塗布あるいは含浸させたもの、ガラスやセラミックスのシート状物、金属のシート状物などが挙げられる。
【0076】
本発明の熱転写記録材料を用いて被転写体上に形成された印像は熱処理を施すことによって耐熱性、耐溶剤、耐スクラッチ性が大幅に向上される。
【0077】
熱処理は、印像を150〜250℃の雰囲気中で、15〜60分間加熱することによって行なうことができる。このような熱処理によって、エポキシ樹脂が架橋を起し、そのため堅牢度が向上するものと推定されている。
【0078】
プリント配線板や半導体など後工程で前記熱処理と同等な加熱処理を受ける物品に施される印像の場合は、前記熱処理を施す必要は特にない。
【0079】
本発明の熱転写記録材料は、耐熱性、耐溶剤性の優れた印像を与えるので、被転写体が、プリント配線板など製造工程において、半導体など検査工程において、150〜280℃程度の高温で加熱処理を受けるものに印像を形成するのにとくに好適に使用される。
【0080】
【実施例】
つぎに実施例を挙げて本発明を説明する。
【0081】
実施例1〜7および比較例1〜2
厚さ5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン樹脂からなる塗布量0.25g/m2のスティック防止層を形成し、その反対側に表1に示されるインク塗工液を塗布し、70℃で乾燥して、塗布量2g/m2の熱溶融性インク層を形成し、熱転写記録材料を得た。
【0082】
表1に示される粒子の平均粒径は(株)島津製作所製レーザー回析粒度分布測定装置SALD−1100で測定した。
【0083】
前記実施例5〜7においては、表2に示されるインク強化層用塗工液を基材上に塗布し、70℃で乾燥して、塗布量0.5g/m2のインク強化層を形成した。さらに、実施例7においては、表2に示されるワックス層用塗工液を基材上に塗布し、70℃で乾燥して、針入度1以下、塗布量0.3g/m2のワックス層を形成し、その上に前記インク強化層を形成した。なお、針入度はJIS K 2235に規定される針入度測定方法により25℃で測定した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
前記各熱溶融性インクについて耐熱性を、また前記各熱転写記録材料について転写性、耐溶剤性、耐擦過性(耐クロッキング性、耐スミアー性)を下記の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0087】
[耐熱性]
乾燥後の各インクを約10mg電子天秤で秤量し、熱オーブン中で250℃で1時間加熱処理したのち重量を測定し、次式で示されるインク残分率(%)を求め、耐熱性を評価した。残分率が80%以上であれば。実用上問題がない。
【0088】
インク残分率(%)=(加熱処理後の重量/加熱処理前の重量)×100
[転写性]
前記各熱転写記録材料を用い、熱転写方式バーコードプリンタ((株)テック製B−30)で受像体[リンテック(株)製銀ネーマ(ポリエステルフィルムの片面にアルミニウムを蒸着し、その上に粘着剤層を設けたものであって、ポリエステルフィルム表面に印像を形成するもの)]上にバーコードパターンの印像を下記条件下で形成した。
印加エネルギー:22.6mJ/mm2
印字速度:2インチ/秒
プラテン圧:強(使用したプリンタで規定されているもの)
得られた印像についてRJS ENTERPRISES,INC製のバーコード読取り機(コーダスキャンII)による読取り判定を行なった。バーコード読取り機の判定基準は次の通りである。
A 完全に読み取れる。
B ほぼ完全に読み取れる。
C 実用的に問題なく読み取れる。
D 一部読み取れる。
E 読み取り不可。
【0089】
[耐溶剤性]
前記転写性試験の場合と同様にして銀ネーマ上に形成したバーコードパターンの印像について下記に示す条件で摩擦試験を行ない、摩擦試験後の印像について前記転写性試験の場合と同様にしてバーコード読取り機による読取り判定を行なった。
試験機:アトラス エレクトリック デバイス社製
A.A.T.C.C.クロックメータモデルCM−1
摩擦材:綿布(エタノール、ガソリンまたはケロシンを含浸させたもの)
圧 力:500g/cm2
回 数:30回往復
[耐擦過性(耐クロッキング性)]
前記転写性試験の場合と同様にして銀ネーマ上に形成したバーコードパターンの印像について下記に示す条件で摩擦試験を行ない、摩擦試験後の印像について前記転写性試験の場合と同様にしてバーコード読取り機による読取り判定を行なった。
試験機:アトラス エレクトリック デバイス社製
A.A.T.C.C.クロックメータモデルCM−1
摩擦材:綿布
圧 力:500g/cm2
回 数:300回往復
[耐擦過性(耐スミアー性)]
前記転写性試験の場合と同様にして銀ネーマ上に形成したバーコードパターンの印像について下記に示す条件で摩擦試験を行ない、摩擦試験後の印像について前記転写性試験の場合と同様にしてバーコード読取り機による読取り判定を行なった。
試験機:(株)安田精機製作所製ラブテスター
摩擦材:ダンボール
圧 力:250g/cm2
回 数:300回往復
【0090】
【表3】
【0091】
【発明の効果】
本発明の熱転写記録材料は、転写性が優れ、かつ耐熱性、耐溶剤性、耐擦過性が優れた印像を与えるので、バーコードなどを印字するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱転写記録材料の1実施例における各色のインク層の配列の1例を示す部分平面図である。
【符号の説明】
1 基材
2Y イエローインク層
2M マゼンタインク層
2C シアンインク層
Claims (6)
- 基材上に、少なくとも、熱溶融性ビヒクルと着色剤とからなる熱溶融性インク層が設けられてなり、前記熱溶融性ビヒクル中に、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂が50重量%以上含有されてなることを特徴とする熱転写記録材料。
- 前記熱溶融性インク層に、さらにポリテトラフルオロエチレン粒子が1〜50重量%含有されてなることを特徴とする請求項1記載の熱転写記録材料。
- 前記熱溶融性インク層に、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子に加えてさらにワックス粒子が含有されてなることを特徴とする請求項2記載の熱転写記録材料。
- 前記熱溶融性ビヒクルの前記熱溶融性インク層中における含有量が40〜95重量%であることを特徴とする請求項1、2または3記載の熱転写記録材料。
- 前記基材と前記熱溶融性インク層との間に、バインダー樹脂、ポリテトラフルオロエチレン粒子およびワックス粒子からなるインク強化層が設けられてなり、バインダー樹脂がインク強化層中に5〜95重量%含有されてなることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の熱転写記録材料。
- 前記基材と前記インク強化層との間に、ワックスからなる層が設けられ、該層の針入度が1以下であることを特徴とする請求項5記載の熱転写記録材料。
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