JP3725574B2 - 静電情報記録方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電圧印加時露光方法等により情報を静電的に記録し、任意時点で情 報再生を行うことができる静電情報記録方法に関し、特に電荷保持性に優れ、か つ耐外乱性に優れた静電情報記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平1−290366号公報に記載されている記録システムによると、静電情報記録媒体に記録された静電潜像は半永久的に保持されるものであるが、電荷保持層表面に記録された表面電荷は、見掛け上、空気中の湿気等により除々に減衰する傾向があり、また外部からの損傷や接触により静電潜像が破壊されるという問題がある。
【0003】
そのため、電荷保持層に静電潜像を形成した後、その表面に保護層を積層して静電潜像を保護した静電情報記録媒体が特開平2−203353号公報に開示され、また、別の静電情報記録媒体として、その電荷保持層を、絶縁層上に光導電性層又は導電性層を画素単位状にパターニングして積層した後、該パターン層上に薄膜状の絶縁性樹脂層を積層した構造とし、電荷保持層表面に形成された静電潜像をトンネリング現象により薄膜状の絶縁性樹脂層を通過させて光導電性層または導電性層に蓄積させることにより、静電潜像を静電情報記録媒体内部に保持させる静電情報記録媒体が特開平1−65473号公報に開示されている。
【0004】
この他に、静電情報記録媒体における電荷保持層をガラス転移温度の低い樹脂および耐熱性絶縁層の積層物とし、電荷保持層表面に静電潜像を記録後、ガラス転移温度の低い樹脂層のガラス転移温度以上に電荷保持層を加熱することにより、静電情報を内部保持型としうることを見出し、先に出願(特開平3−7943号公報)した。
【0005】
また、これより確実に内部保持させることが可能な情報媒体及び静電情報記録方法として、電荷保持層を熱刺激電流測定により得られる保持(トラップ)電荷のトラップ開放温度の低い樹脂層及び高い絶縁層の積層物とし、静電情報記録後、該静電情報記録媒体をトラップ開放温度の低い樹脂層のトラップ開放温度以上であって、トラップ開放温度の高い絶縁層のトラップ開放温度以下の温度に加熱することにより、静電情報を内部保持型とし得ることを出願(特願平4−259734)した。
【0006】
これらの媒体にあってはいずれも空気中の湿気や情報記録面への物理的な接触による静電潜像の減衰を防止できるという利点を有する。しかしながら、これらの方法は、静電情報記録媒体の作製工程及び情報記録後に静電潜像の保存操作が複雑であり、しかも、記録情報は層間に保持されるために情報電荷の強度が記録直後における強度に比して弱まるという課題があることが判明した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、静電潜像を内部保持し得る静電情報記録方法の改良に係り、特に、静電情報記録媒体の作製がより簡易であり、かつ静電情報を記録直後と変わらないオーダーで内部保持し得る静電情報記録方法の提供を課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の静電情報記録方法は、電極層上に樹脂からなる電荷保持層を有し、かつ、該電荷保持層をその熱刺激電流測定により得られる保持(トラップ)電荷のトラップ開放温度が該樹脂のガラス転移温度より高い樹脂層の単層体とした静電情報記録媒体に、まずその電荷保持層表面に静電情報を記録した後、該樹脂のガラス転移温度以上であって、該電荷保持層の熱刺激電流測定により得られる保持(トラップ)電荷のトラップ開放温度以下の温度に加熱することを特徴とする。
【0009】
また、上記の電荷保持層の熱刺激電流測定により得られる保持(トラップ)電荷のトラップ開放温度が、樹脂のガラス転移温度より20℃以上高いものであることを特徴とする。
【0011】
以下、本発明の静電情報記録媒体について説明する。図1は本発明の静電情報記録媒体の断面図であり、(a)、(b)は異なるタイプの静電情報記録媒体であって、図中、11は電荷保持層、13は電極、15は支持体である。
【0012】
本発明における電荷保持層は、電極上に積層された状態で測定されるトラップ開放温度と、電荷保持層を構成する樹脂におけるガラス転移温度とにより規定される。
【0013】
トラップ開放温度は、樹脂に補足された静電情報が加熱により開放され、電荷保持機能を有しなくなる温度を意味し、熱刺激電流値がピーク値を示す温度である。熱刺激電流測定は、図2に示すオープンサーキット熱刺激電流測定装置を使用して測定される。熱刺激電流測定装置は、電極13上に帯電試料(電荷保持層)11を配置し、この帯電試料上に一定距離をおいて上部電極13′を配置し、更に、両電極間を電流計Aを介して接続して構成されるものであり、試料を一定の昇温速度(5℃/min.)で加熱しつつ、温度変化に対する電流値を計測するものである。測定は、帯電試料の表面電位により誘起されて生じる上部電極における電位変化を外部回路における電流変化の形で取り出すものであり、通常、試料に帯電した表面電位の極性と取り出される電流の符号とは逆となる。
【0014】
また、ガラス転移温度は、一般に、樹脂を昇温するにあたり凍結されていたミクロブラウン運動が始まる温度とされているが、通常、示差走査熱量測定(DSC法)等により測定される樹脂固有の物性値である。
【0015】
本発明は、電荷保持層として、上述の如く規定される電荷保持層におけるトラップ開放温度が、電荷保持層を形成する樹脂におけるガラス転移温度より高いものとするものであるが、その温度差は好ましくは20℃以上、更に、好ましくは50℃以上とするとよい。好ましくは、ガラス転移温度が100〜110℃の範囲にある樹脂を使用して電荷保持層を形成し、その電荷保持層表面に記録される情報電荷が正電荷の場合には、電荷保持層におけるトラップ開放温度が160〜180℃、負電荷の場合には130〜165℃の範囲にあり、熱刺激電流値が単一のピーク値を示すものが例示される。
【0016】
本発明は、電荷保持層における電荷の保持機構を考察する過程において、電荷保持層を形成する樹脂におけるガラス転移温度以上に加熱しても、樹脂層にトラップされた電荷は開放されず、トラップ開放温度に至り始めて電荷が開放されることを見出したものであり、また、ガラス転移温度とトラップ開放温度とが近接するものやトラップ開放温度がガラス転移温度より低いものにおいては情報電荷が電荷保持層内部にトラップされず、記録直後と変わらないオーダーで内部保持するに至らないものと推察している。
【0017】
また、電荷保持層を形成する樹脂としては、ガラス転移温度以下での比抵抗が1014Ω・cm以上の電気絶縁性を有する樹脂であることが要求され、また電荷保持層におけるトラップ開放温度が通常の生活温度以上であることが静電情報情報媒体として当然に要求される。
【0018】
このような電荷保持層を形成する樹脂としては、例えば、下記一般式(1)
【0019】
【化1】
【0020】
(但し、nは1又は2)
で示される環構造の繰り返し単位からなり、50℃での固有粘度が少なくても0.1であるような分子量を有する含弗素熱可塑性樹脂、または、
下記一般式(1)
【0021】
【化2】
【0022】
(但し、nは1又は2)
で示される環構造の繰り返し単位(a)と、一般式(3) -(CF2-CFX)- (但し、XはF、Cl、-O-CF2CF2CF3、-O-CF2CF(CF3)OCF2CF2SO3F、-O-CF2CF2CF2COOCH3) で示される繰り返し単位(b)からなり、少なくても80重量%の繰り返し単位(a)を含み、50℃での固有粘度が少なくとも0.1であるような分子量を有する含弗素熱可塑性樹脂を好適に使用できる。
【0023】
繰り返し単位(a)は、一般式 CF2=CF-O-(CF2)n CF=CF2(但し、nは1又2)で示されるパーフルオロアリルビニルエーテル、又はパーフルオロブテニルビニルエーテルをラジカル的に環化重合することにより得られるものである。また繰り返し単位(a)と上記繰り返し単位(b)を含有するものは、一般式 CF2=CF-O-(CF2)n CF=CF2(但し、nは1又2)で示されるパーフルオロビニルエーテルと一般式 CF2=CFX (但し、XはF、Cl、-O-CF2CF2CF3、-O-CF2CF(CF3)OCF2CF2SO3F、-O-CF2CF2CF2COOCH3) で示されるモノマーとラジカル重合させることにより得られるものである。これらの樹脂は例えば、特開平1−131215号公報に開示されている。
【0024】
このような含弗素熱可塑性樹脂としては、例えば旭硝子(株)製、商品名「サイトップCTX−807」ガラス転移温度108℃等が例示される。
【0025】
更に、
【0026】
【化3】
【0027】
(但し、繰り返し単位数mで示されるジオキソノール成分含量が20〜90モル%)である繰り返し単位からなり、ガラス転移温度より90〜110℃高い温度での溶融粘度が102 〜104 Pa・sec である含弗素熱可塑性樹脂も使用できる。
【0028】
この含弗素熱可塑性樹脂としては、例えばデュポン社製〔商品名「テフロン」AF1600、ジオキソノール単位を約65モル%含有、ガラス転移温度160℃、溶融粘度2657Pa・sec (250℃、100sec -1でASTM D3835による測定値)、吸水率0.01%以下〕、同社製〔商品名「テフロン」AF2400、ジオキソノール単位を約85モル%含有、ガラス転移温度240℃、溶融粘度540Pa・sec (350℃、100sec -1でASTM D3835による測定値)、吸水率0.01%以下〕が具体的に例示される。
【0029】
また、電荷保持層における樹脂は、結晶性高分子であると、情報電荷のトラップ性が悪いので、非晶質のものが好ましく、更に、例えばナトリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属イオンを不純物として含有していると同じく情報電荷のトラップ性が悪いので、これらの不純物を除去、精製したものが好ましい。
【0030】
電荷保持層の形成方法としては、樹脂フィルムを電極上に積層してもよいが、樹脂を適当な溶媒に溶解し、電極上にコーティング、ディッピング法等により塗布形成してもよい。電荷保持層の膜厚は、0.1μm以上、好ましくは1μm〜10μmとするとよい。0.1μm未満であると蓄積された情報電荷とは逆極性の電荷がトンネリング現象等により注入されるために、情報電荷のリークが生じる。
【0031】
静電情報記録媒体における電極は、比抵抗値が106 Ω・cm以下であれば限定されなく、無機金属導電膜、無機金属酸化物導電膜、或いは四級アンモニウム塩等の有機導電膜等である。このような電極は、蒸着、スパッタリング、CVD、コーティング、メッキ、ディッピング、電解重合等の方法により形成される。
【0032】
またその膜厚は、電極を構成する材料の電気特性、および情報記録の際の印加電圧により変化させる必要があるが、例えばアルミニウムであれば100〜3000Å程度であり、支持体と電荷保持層との間の全面、或いは電荷保持層の形成パターンに合わせて形成される。また電荷保持層としてそれ自体強度を有するフィルム状のものを使用する場合には、フィルム上に上記の電極材料を蒸着等の方法により成膜して形成してもよい。
【0033】
本発明の静電情報記録媒体は、支持体を有していてもよい。支持体を有する場合について図1(b)に示す。支持体15は、静電情報記録媒体を強度的に支持することができるある程度の強度を有していれば、その材質、厚みは特に制限がなく、例えば可撓性のあるプラスチックフィルム、金属箔、紙、或いは硝子、プラスチックシート、金属板(電極を兼ねることもできる)等の剛体を使用でき、また静電情報記録媒体がフレキシブルなフィルム、テープ、ディスク形状をとる場合には、フレキシブル性のあるプラスチックフィルムが使用され、強度が要求される場合には剛性のあるシート、ガラス等の無機材料等が使用される。尚、電荷保持層がそれ自体強度を有するフィルム状のものを使用する場合には不要である。また、本発明の静電情報記録媒体は、情報記録、情報再生の際に光透過性が要求される場合がある。光透過性が要求される場合には、反射防止膜を設けるか、また電極層或いは電荷保持層のそれぞれの膜厚を調整するか、その両者を組み合わせることにより、反射防止効果を持たせるとよい。
【0034】
静電情報記録媒体は、記録される情報、あるいは記録の方法により種々の形状をとることができる。例えば静電カメラ(同一出願人による特願昭63−121591号)に用いられる場合には、一般のフィルム(単コマ、連続コマ用)形状、あるいはディスク状となり、レーザー等によりデジタル情報、またはアナログ情報を記録する場合には、テープ形状、ディスク形状、あるいはカード形状となる。
【0035】
次に、静電情報記録方法について図3により説明する。図中1は感光体、5は支持体、7は電極、9は光導電層、10は静電情報記録媒体、11は電荷保持層、13は電極、15は支持体、17は電源、18は情報光である。
【0036】
本発明の静電情報記録媒体に情報を記録するには、例えばa−セレン層、有機光導電層等の光導電性層を電極上に積層した感光体を使用して行われる。
【0037】
まず、同図(a)に示すように、1mm厚のガラス支持体5上に1000Åの膜厚の酸化インジウム−酸化錫(ITO)透明電極7を積層し、更に10μm程度の光導電層9を積層して形成された感光体1と、10μm程度の空隙を介して本発明の静電情報記録媒体10とを対向させて配置する。
【0038】
次いで同図(b)に示すように、電源17により電極7、13間に電圧を印加する。暗所であれば光導電層9は高抵抗体であるため、空隙に加わる電圧がパッシェンの法則に従う放電開始電圧以下であれば、電極間には何の変化も生じない。感光体1側より情報光18が入射すると、情報光が入射した部分の光導電層9は導電性を示し、放電が生じ、電荷保持層に情報光に応じた情報電荷が蓄積される。そして同図(c)に示すように、電源17をOFFとし、静電情報記録媒体3を感光体1から引き離して(同図(d))、静電情報記録媒体表面に情報電荷が蓄積される。
【0039】
情報電荷を表面電荷として記録した後、静電情報記録媒体を、電荷保持層を形成する樹脂におけるガラス転移温度以上で、かつ電荷保持層におけるトラップ開放温度以下の温度に加熱することにより、表面電荷を電荷保持層中にトラップさせることができ、これにより情報電荷を安定化させることができる。
【0040】
次に、本発明の静電情報記録方法における情報光の入力方法としては、高解像度静電カメラによる方法、またレーザーによる記録方法がある。まず、高解像度静電カメラは通常のカメラに使用されている写真フィルムの代わりに、感光体と、静電情報記録媒体とにより記録部材を構成し、入射光量に応じて静電潜像を電荷保持層に形成するもので、機械的なシャッタも使用しうるし、また電気的なシャッタも使用しうるものである。またプリズムにより光情報を、R、G、B光成分に分離し、平行光として取り出すカラーフィルターを使用し、R、G、B分解した静電情報記録媒体3セットで1コマを形成するか、または1平面上にR、G、B像を並べて1セットで1コマとすることにより、カラー撮影することもできる。
【0041】
またレーザーによる記録方法としては、光源としてはアルゴンレーザー(514.488nm)、ヘリウム−ネオンレーザー(633nm)、半導体レーザー(780nm、810nm等)が使用でき、感光体と静電情報記録媒体を面状で表面同志を、密着させるか、一定の間隔をおいて対向させ、電圧印加する。この場合感光体のキャリアの極性と同じ極性に感光体電極をセットするとよい。この状態で画像信号、文字信号、コード信号、線画信号に対応したレーザー露光をスキャニングにより行うものである。画像のようなアナログ的な記録は、レーザーの光強度を変調して行い、文字、コード、線画のようなデジタル的な記録は、レーザー光のON−OFF制御により行う。また画像において網点形成されるものには、レーザー光にドットジェネレーターON−OFF制御をかけて形成するものである。尚、感光体における光導電層の分光特性は、パンクロマティックである必要はなく、レーザー光源の波長に感度を有していればよい。
【0042】
以上、感光体を使用して静電情報を記録する場合について記載したが、本発明の静電情報記録媒体への静電情報記録方法は、他にも例えば電極針ヘッド或いはイオン流ヘッドを用いた静電記録、或いはレーザープリンター等の光プリンター等による記録方法としてもよい。
【0043】
次ぎに、記録された静電情報の再生方法について説明する。図4は静電情報再生方法における電位読み取り方法の例を示す図で、図3と同一番号は同一内容を示している。なお、図中、10は静電情報記録媒体、21は電位読み取り部、23は検出電極、25はガード電極、27はコンデンサ、29は電圧計である。
【0044】
情報電荷を蓄積した静電情報記録媒体から情報を再生するには、まず電位読み取り部21を電荷保持層表面に対向させると、検出電極23に電荷保持層内部に蓄積された電荷によって生じる電界が作用し、検出電極面上に静電情報記録媒体上の電荷と等量の誘導電荷が生ずる。この誘導電荷と逆極性の等量の電荷でコンデンサ27が充電されるので、コンデンサの電極間に蓄積電荷に応じた電位差が生じ、この値を電圧計29で読むことによって情報電荷の電位を求めることができる。そして、電位読み取り部21で電荷保持層面上を走査することにより、静電潜像を電気信号として出力することができる。なお、検出電極23だけでは静電情報記録媒体の検出電極対向部位よりも広い範囲の電荷による電界(電気力線)が作用して分解能が落ちるので、検出電極の周囲に接地したガード電極25を配置するようにしてもよい。これによって、電気力線は面に対して垂直方向を向くようになるので、検出電極23に対向した部位のみの電気力線が作用するようになり、検出電極面積に略等しい部位の電位を読み取ることができる。電位読み取りの精度、分解能は検出電極、ガード電極の形状、大きさ、及び静電情報記録媒体との間隔によって大きく変わるため、要求される性能に合わせて最適条件を求めて設計する必要がある。
【0045】
図5は静電情報再生方法の概略構成を示す図で、図中、31は電位読み取り装置、33は増幅器、35はCRT、37はプリンタである。
図において、電位読み取り装置31で電荷電位を検出し、検出出力を増幅器33で増幅してCRT35で表示し、またプリンタ37でプリントアウトすることができる。この場合、任意の時に、読み取りたい部位を任意に選択して出力させることができ、また反復再生することが可能である。また電界により光学的性質の変化する材料、例えば電気光学結晶等を用いて光学的に読み取ることもできる。更に静電潜像が電気信号として得られるので、必要に応じて他の記録媒体への記録等に利用することも可能である。
【0046】
【作用及び発明の効果】
本発明の静電情報記録媒体は、電極層及び電荷保持層からなり、該電荷保持層を熱刺激電流測定により得られる電荷のトラップ開放温度がガラス転移温度より高い樹脂層の単層体としたものであり、その電荷保持層表面に静電情報を記録した後、静電情報記録媒体をガラス転移温度以上であって、トラップ開放温度以下の温度に加熱することにより、情報電荷がトラップから開放されることなく、ガラス転移温度により電荷保持層である樹脂が軟らかくなることにより、静電情報記録媒体表面に存在している全情報記録電荷が、表面電位の減少として観測されない程度媒体表面から内部へ一様に潜り込み、冷却により静電情報記録媒体内部において情報電荷が安定して保持されることを見いだしたものである。
【0047】
情報電荷が静電情報記録媒体内部に入るため、静電情報は極めて安定であり、湿度による電荷の減衰がなく、また接触等の外乱性による電荷の減衰がない優れた静電情報記録媒体とすることができる。また、従来における電荷保持層を積層構造とするものとは異なり、記録電荷を媒体内部にいれた後の記録電位が記録直後と変わらないオーダーで情報電荷を蓄積することが可能となる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例より本発明を説明するが、「部」は重量部、「%」は「重量%」を表わす。
(実施例1)
1mm厚のガラス基板上に、真空蒸着(10-5Torr)法でAl電極を1000Åの膜厚で積層し、そのAl電極上に、フッ素樹脂〔商品名;サイトップCTX−807、旭硝子(株)製、ガラス転移温度108℃〕を弗素系溶剤〔商品名:CT−Solv、180、旭硝子(株)製〕に溶解した7%溶液をスピンコーター(700rpm、20sec)により塗布し、室温で2時間風乾後、180℃のオーブンで1時間乾燥させ、乾燥後膜厚2μmの樹脂層を積層し、本発明の静電情報記録媒体を得た。
【0049】
この静電情報記録媒体上に、コロナ帯電により−160Vの表面電位になるように帯電させた。この帯電した静電情報記録媒体を図2に示すオープンサーキット熱刺激電流測定装置((株)東洋精機製作所製)を使用し、一定の昇温速度(5℃/min.)で加熱し、加熱温度に対して得られる電流値を測定した。その結果を図6に示す。
【0050】
図からわかるように、本発明の静電情報記録媒体においては、165℃付近に電流ピークを生じ、電荷のトラップ開放温度がガラス転移温度(108℃)より高いことを確認した。
【0051】
次に、上記で得られた静電情報記録媒体を、上記同様にコロナ帯電により−153Vの表面電位となるように帯電した後、静電情報記録媒体がガラス転移温度以上に加熱されるように110℃のホットプレート上に5秒間放置した。表面電位の減少が生じる前に静電情報記録媒体をホットプレートから取り出し、急冷した。冷却後の静電情報記録媒体のについてその残留電位を測定すると−153Vを電位を維持していた。
【0052】
この静電情報記録媒体表面に、裏面にアルミニウムを蒸着させたポリエチレンテレフタレートフィルムを100Kgf/cm2 加圧下で密着させた後、剥離し、静電情報記録媒体に記録された静電潜像の耐接触性を調べた。10回の接触剥離操作をした後でも、−153Vの残留電位が維持されており、表面電荷は静電情報記録媒体内部に安定して保持されていることを確認した。
【0053】
なお、比較として、上記同様に−160Vの表面電位となるようにコロナ帯電により帯電させた静電情報記録媒体を、帯電直後、加熱しないで、上記同様に10回の接触剥離操作をしたところ、−135Vの電位となり表面電荷が減衰した。
【0054】
また、同様に−160Vの表面電位となるようにコロナ帯電荷より帯電させた静電情報記録媒体を、ガラス転移温度以下の95℃のホットプレート上に1分間放置して、静電情報記録媒体をガラス転移温度以下に加熱した後、冷却し、その残留電位を測定したところ−160Vであったが、上記同様に7回の接触剥離操作をしたところ、−150Vの電位となり、全表面電荷が静電情報記録媒体内部に保持されていないものであった。
【0055】
(実施例2)
実施例1で作製した静電情報記録媒体上に、コロナ帯電により+160Vの表面電位になるように帯電させた。この帯電した静電情報記録媒体を実施例1と同様にオープンサーキット熱刺激電流測定装置を使用し、加熱温度に対して得られる電流値を測定した。その結果を図7に示す。
【0056】
図7からわかるように、この静電情報記録媒体においては、電流ピークは40℃〜190℃と広温度域に生じ、電荷のトラップ開放温度はガラス転移温度より低いものを含むものであった。そこで、ガラス転移温度(108℃)以上に生じた電流曲線の面積に相当する表面電位を計算により求めると、+45V程度であることがわかった。
【0057】
次に、情報電荷の消失した静電情報記録媒体上に、再度、コロナ帯電により+160Vの表面電位になるように帯電させた後、静電情報記録媒体がガラス転移温度以上に加熱されるように110℃のホットプレート上に5秒間放置した。表面電位の減少が生じる前に静電情報記録媒体をホットプレートから取り出し、急冷した。冷却後の静電情報記録媒体のについてその残留電位を測定すると+45Vであった。また、この情報記録媒体を上記と同様にオープンサーキット熱刺激電流測定装置を使用し、加熱温度に対して得られる電流値を測定した。その結果を図8に示す。
【0058】
図8からわかるように、この静電情報記録媒体においては、電流ピークは110℃以上であり、残留電荷のトラップ開放温度がガラス転移温度より高いことが確認された。この静電情報記録媒体に対して、実施例1と同様に10回の接触剥離操作をした後でも、+45Vの残留電位が維持されており、表面電荷が静電情報記録媒体内部に安定して保持されていることを確認した。
【0059】
なお、比較として、+44Vの表面電位となるようにコロナ帯電により帯電させた静電情報記録媒体を、帯電直後、加熱しないで、上記同様に10回の接触剥離操作をしたところ、+20Vの電位となり表面電荷が減衰した。
【0060】
また、同様に+44Vの表面電位となるようにコロナ帯電荷より帯電させた静電情報記録媒体を85℃のホットプレート上に10秒間放置して、静電情報記録媒体をガラス転移温度以下に加熱した後、冷却し、その残留電位を測定したところ+40Vであり、更に、上記同様に7回の接触剥離操作をしたところ、+36Vの電位と表面電位は減少し、全表面電荷が静電情報記録媒体内部に保持されていないものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の静電情報記録媒体の断面図であって、(a)、(b)は、本発明の静電情報記録媒体の実施態様を示すものである。
【図2】図2は、熱刺激電流測定装置の概略図である。
【図3】図3は、本発明の静電情報記録方法を説明するための図である。
【図4】図4は、直流増幅型の電位読み取り方法の例を示す図である。
【図5】図5は、静電情報記録再生方法の概略構成を示す図である。
【図6】図6は、実施例1で作製した静電情報記録媒体における熱刺激電流測定結果を示す図である。
【図7】図7は、実施例1で作製した静電情報記録媒体を+帯電させた場合における熱刺激電流測定結果を示す図である。
【図8】図8は、実施例1で作製した静電情報記録媒体を+帯電させ、次いでそのガラス転移温度以上に加熱した後における熱刺激電流測定結果を示す図である。
【符号の説明】
1は感光体、5は支持体、7は電極、9は光導電層、10は静電情報記録媒体、11は電荷保持層、13は電極、15は支持体、17は電源、18は情報光、21は電位読み取り部、23は検出電極、25はガード電極、27はコンデンサ、31は電位読み取り装置、33は増幅器、35はCRT、37はプリンタである。
Claims (2)
- 電極層上に樹脂からなる電荷保持層を有し、かつ、該電荷保持層をその熱刺激電流測定により得られる保持(トラップ)電荷のトラップ開放温度が該樹脂のガラス転移温度より高い樹脂層の単層体とした静電情報記録媒体に、まずその電荷保持層表面に静電情報を記録した後、該樹脂のガラス転移温度以上であって、該電荷保持層の熱刺激電流測定により得られる保持(トラップ)電荷のトラップ開放温度以下の温度に加熱することを特徴とする静電情報記録方法。
- 電荷保持層の熱刺激電流測定により得られる保持(トラップ)電荷のトラップ開放温度が、樹脂のガラス転移温度より20℃以上高いものであることを特徴とする請求項1記載の静電情報記録方法。
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JP05869895A JP3725574B2 (ja) | 1995-03-17 | 1995-03-17 | 静電情報記録方法 |
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