JP3724600B2 - 木綿繊維含有繊維製品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
シャツ、スラックス、ブラウス等の衣料用及び帽子、ハンカチ等繊維雑貨品として、好適なセルロース系繊維含有繊維製品に関するものであり、さらに詳しくは、製品の強力低下をおさえ、しかも防縮性、W&W(ウォッシュアンドウェア)性、プリーツ性及びパッカリング性、保型性を向上させた木綿繊維含有繊維製品及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セルロース系繊維のしわになり易い、収縮し易い等の欠点の改善は、永久的課題であり、縫製品においては、特に従来よりセルロース系繊維含有繊維製品のくり返し洗濯による生地と縫い糸又は生地部位間の伸縮性の差により生ずるパッカリング現象(ひきつれ現象)や製品形状での保型性の改善が強く望まれている。
この問題点を改善しようとして、製品状態でのホルマリンによる気相反応を利用する試みがあるが、セルロース繊維が著しい強力低下をきたすという、新たな問題がクローズアップされ、解決が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は良好な風合いを有し、防しわ性に優れ、かつ繰り返し洗濯後のパッカリング性、W&W性、防縮性、保型性に優れ、同時に気相ホルマリン処理やポストキュア法樹脂加工による強力低下を極力おさえた木綿繊維含有繊維製品を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意研究を重ね、木綿含有繊維製品が水中解撚等で天然撚りを除くと強力が高くなることに着目し、集合体としての木綿織物中の単繊維をいかにして解撚するかについて検討を重ねた結果、木綿単繊維中の微細構造を変化させることによって木綿単繊維のコンボリューション(天然撚り)を特定数以下に減らすことで木綿織物の歪を緩和し、ひいては架橋改質した木綿繊維製品の強力低下を抑えることに有効であることを見出し本発明に到達したのである。
【0005】
すなわち、本発明は、木綿を含む繊維構造物を液体アンモニアに3〜20秒浸漬後、15〜90秒間のタイミングを置き、熱又は蒸気によって脱アンモニア処理された後、気相ホルマリン加工法により架橋改質した木綿繊維中の結合ホルマリン量が0.95重量%以上の繊維製品であり、前記繊維構造物中の木綿単繊維のセルロースI型の結晶構造が全結晶中50重量%未満であり、かつ、木綿単繊維のコンボリューションの平均が60回/cm以下である木綿を含む架橋改質された繊維製品である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における木綿繊維含有繊維構造物とは木綿100%はもちろんのこと、他の繊維、例えば麻、亜麻、パルプ、バクテリアセルロース繊維等の天然セルロース繊維、ビスコース法レーヨン(ポリノジックを含む)、銅アンモニア法レーヨン、溶剤紡糸法レーヨン等の再生セルロース繊維、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維との混繊、混紡、交織、交撚等で混用して得られる紡績糸、織物、編物、不織布等のことである。これら上述の構造物が晒し、先染め、反染、プリント品であってもさしつかえない。他の繊維と混用する場合、本発明の効果をよく発揮させるために、木綿繊維の含有率は20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、さらに好ましくは50重量%以上である。
【0009】
また、本発明で言う繊維製品とは、前記の木綿繊維や混用繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたシャツ、スラックス、ブラウス、帽子、ハンカチ等の縫製品を意味する。
【0010】
本発明で言う結晶構造のセルロースI型とは、X線回析法により求められるものであり、P.H.Hermans & A.Weidinger:J.Appl.phys.,19 ,491−506(1948)および林ら、北海道大学研究報告、p.83(1974)に記載された方法によって求められるものである。
【0011】
本発明における木綿単繊維中のセルロースI型は全結晶中50重量%未満である。好ましくは40重量%未満であり、更に好ましくは30重量%未満である。50重量%以上であると、ホルムアルデヒドとセルロースとの架橋が不均一となり、強度低下が著しく好ましくない。
【0012】
本発明は段落番号0031に記載した方法によって測定した木綿単繊維のコンボリューションの平均が60回/cm以下であり、好ましくは30回/cm以下であり、更に好ましくは20回/以下である木綿繊維を含む繊維製品である。
【0013】
木綿繊維のホルムアルデヒドによる架橋は、通常、ホルムアルデヒド蒸気(ガス)と二酸化硫黄ガスとを使用するいわゆる気相ホルマリン加工法により実施される。木綿繊維は、セルロースI型の結晶構造が全結晶中50重量%未満の場合ホルムアルデヒド蒸気が均一に木綿繊維内部に浸透し、均一な架橋を実現できる。更に、コンボリューションの平均が60回/cm以下であれば架橋改質後の応力集中の緩和に有利となり結果として強力保持率を改善できる。
【0014】
本発明においては気相ホルマリン加工でセルロースと架橋剤が架橋反応している程度を示す結合ホルマリン量が0.6重量%以上であり、好ましくは0.8重量%以上である。結合ホルマリン量が0.6重量%未満の場合、十分な改質効果が得られない。即ちパッカリング性、W&W性、保型性、プリーツ性が不充分である。
【0015】
上記気相ホルマリン加工により、防しわ性に優れ、かつ繰り返し洗濯後のパッカリング性、W&W性、防縮性、保型性に優れ、同時に加工よる強力低下を極力抑えたセルロース系繊維含有繊維製品が製造可能となる。
【0016】
本発明の木綿繊維含有繊維製品は、織物の場合、JIS L−1059B法(モンサント法)における乾防しわ度が270度以上であり、湿防しわ度との合計値は550度以上が好ましく、570度以上がより好ましい。特に乾防しわ度と湿防しわ度との合計値が高い程、W&W性が高くなり、パッカリング性及び保型性にも優れる。
これらの防しわ性を達成できるように改質された木綿繊維が含まれる縫製品は、AATCC124−1984法におけるW&W性が3級以上かJIS L−0217の103法による洗濯 5回後のAATCC法におけるパッカリング性が 4級以上の保型性を示す。
【0017】
本発明の製造方法における木綿単繊維の結晶構造を変化させることができる薬剤には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エチルアミン、液体アンモニア、ヒドラジン等のアルカリ、硫酸、リン酸、硝酸等の酸、塩化亜鉛、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、各種ロダン塩、ヨウ化カリウム等の塩類、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中で、水酸化ナトリウム、液体アンモニアが好ましく、染色性の向上と洗濯後の風合いの保持性の点で水酸化ナトリウム/液体アンモニアの併用系がより好ましい。
【0018】
しかしながら、水酸化ナトリウムによるアルカリ処理は、セルロースの結晶構造をセルロースI型からセルロースII型へ変態させるが、この結晶変態の効率は水酸化ナトリウム濃度、アルカリ処理中のセルロース繊維のテンションの受け方及びアルカリ除去温度に大きく影響される。
【0019】
一方、液体アンモニア処理は結晶構造をセルロースI型からセルロース III型へ変態させる。この際の結晶変態効率は、セルロース中の水分率を少なくすることを考慮し、アンモニア除去を乾熱で行う場合は木綿繊維のテンションの影響は比較的少なく良好である。
【0020】
従って、セルロースI型の結晶構造を全結晶中50重量%未満にするには、水酸化ナトリウム処理では比較的高濃度で、テンションを低く、アルカリ除去温度を下げる配慮が必要である。水酸化ナトリウムの濃度は20゜Be’〜40°Be’であり、より好ましくは23°Be’〜35°Be’である。アルカリ除去時の温度は0〜100℃であるが、80℃以下が好ましい。
又、テンションをゆるやかにするため、予め、液流染色機、ワッシャー、タンブラー、サンフォライズなど液体や機械的揉み効果を与えて歪を除いたのちシルケット処理することも結晶変態効率向上に有用である。
【0021】
一方、テンションがやむを得ず掛かる場合は、液体アンモニア処理を併用することで達成できる。
液体アンモニアにより処理する場合、木綿繊維含有織物は液体アンモニアに2〜20秒間浸漬後、5〜90秒、望ましくは5〜20秒のタイミングを置いて熱又は蒸気によって脱アンモニア処理される。
【0022】
本発明において水酸化ナトリウムによるアルカリ処理および/または液体アンモニア処理は木綿の原綿、スライバー、紡績糸、布帛のいずれの形態で施してもかまわない。一方、コンボリューションを低下させる方法としてはコンボリューションの少ない原綿を使用しても良い。又、スライバー状でシルケット又は液体アンモニア処理を施すことも良い結果を示す。更にはシルケット及び液安処理中に幅方向のテンションをかけることも有効である。
【0023】
本発明におけるセルロースを架橋させることができる薬剤とは、気体、液体、固体、水溶液のいずれでもよいが、加熱等で容易に蒸気となって、木綿繊維内部へ浸透できるものであり、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0024】
ホルムアルデヒド蒸気の場合、通常の樹脂加工剤(例えばDMDHEUなど)で使用できるMgCl2 ・ 6H2 O、NH4 Cl、脂肪族アミンの塩酸塩など潜在性酸性触媒を予め、前処理するか、二酸化硫黄ガス等の触媒を共存せしめることなどにより、ホルムアルデヒドがセルロース中に存在するOH基と反応し、セルロース分子鎖間の架橋が生成する。
ホルムアルデヒド蒸気の処理条件は、触媒の共存下、通常、80〜160℃で1〜60分間である。
【0025】
本発明において、木綿繊維は、ホルムアルデヒド等の蒸気に接触させる前に、セルロースの結晶構造を変化させる薬剤やセルロースの膨潤剤が少なくとも1度、木綿繊維内部に、しかもできるだけ均一に浸透させられると、ホルムアルデヒド等の蒸気は容易に木綿繊維内部にまで、しかも均一に浸透させることができる。
したがって、木綿繊維中に、局部的な架橋を形成せしめたり、歪をもたらすような架橋を避けることができ、木綿繊維の強力低下を防止することができる。
【0026】
気相ホルムアルデヒド処理は、特開昭50−24597号公報、特公昭49−18517号公報、特公平6−102865号公報、特開平7−91776号公報などによって開示されている公知のどんな方法でも実施可能であるが、布帛の状態及び縫製品の状態のいずれでも処理できるが、縫製品にした後に処理する方が、縫製上の問題発生がなく、縫製品の形状をも効果的に固定するので、パッカリング性、保型性が著しく高くなり、好ましい実施態様である。
【0027】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例で用いた評価法を以下に示す。
引裂強力;JIS L−1096 ペンジュラム法(ヨコ方向、2.5 cm幅)
抗張力保持率;加工前の強力に対する加工後の比を百分率で示した。
W&W性;AATCC 124−1984 5段階レプリカ法にもとづいて判定を行った。5級(良好)〜1級(不良)
【0028】
パッカリング性;JIS L−0217 103法による洗濯を5回くり返した後、AATCC 88−B−1984法の縫い目5段階レプリカにより評価した。
5級(良好)〜1級(不良)
【0029】
保型性;JIS L−1042 FII法による洗濯、タンブル乾燥(I−2条件)を5回くり返した後、視覚で5段階に判定した。
5(級):非常に良好
4 〃 :良好
3 〃 :普通
2 〃 :やや不良
1 〃 :非常に不良
【0030】
セルロースI型結晶の含有率(%):セルロース単繊維を織編物から取り出し、X線回析法により測定した。セルロースI、セルロースII、P.H.Hermans & A.Weidinger:J.Appl.phys.,19,491−506(1948)および林ら、北海道大学研究報告、p.83(1984)の方法によった。
【0031】
製品のよこ糸を分離し、更に夫々から木綿単繊維をサンプリングした。次いで繊維側面を光学顕微鏡により写真撮影(500倍)をし、その写真から1cm当たりのコンボリューション(天然撚り)をカウントした。各試料について測定n数は30以上とした。
【0032】
結合ホルマリン量:加工布約2gを沸水中で15分間処理し、水洗、絶乾精秤後、水蒸気蒸留法により20%硫酸中で分解し、亜硫酸水素ナトリウム水溶液中に生成ホルマリンを回収し、よう素滴定法で過剰亜硫酸水素ナトリウムを酸化した後、アルカリで付加物を分解し、ホルマリンと付加した亜硫酸水素ナトリウムの量を求め、加工布重量あたりのホルマリンを重量%で示した。
【0033】
実施例1
木綿(スライバー状)を−40℃の液体アンモニア中に10秒間浸漬し、次いで、脱液体アンモニア後風乾した。更に0.1重量%酢酸水溶液で中和、次いで水洗し乾燥した。
こうして得た液体アンモニア処理木綿を常法により紡績し次いで織物(40×40/134×75,目付112g/m2 )を作成し、通常の糊抜・精練・漂白した。次いで液体アンモニアに3秒浸漬後、70%の絞り率で搾液し、16秒間のタイミングをおいた後、160℃で15秒間乾燥した。
この加工布(A)を使ってシャツを縫製した。
このシャツを公知の気相反応処理槽にセットし、37%ホルマリン水溶液と水蒸気と二酸化硫黄ガスによって気相ホルマリン加工を施こし、表1に示した結合ホルマリン量のシャツを得た。
得られたシャツの評価結果を表1に示した。
【0034】
実施例2
木綿織物(80/2×80/2/134×76,目付113g/m2 )の精練・漂白布を25°Be’水酸化ナトリウムにて常法によるシルケット処理施し、次いで液体アンモニアに3秒浸漬後、70%の絞り率で搾液し、15秒間のタイミングをおいた後、90℃で1分間乾燥した。
この加工布(B)を使って、シャツを縫製し、実施例1と同様にホルマリンによる気相処理を実施した。得られたシャツの評価結果を表1に示した。
【0035】
実施例3
木綿織物(80/2×80/2/134×76,目付113g/m2 )の精練・漂白布を25°Be’水酸化ナトリウムにて常法によるシルケット処理を2回繰り返し、次いで実施例2と同様に液体アンモニア処理を行い加工布(C)を得た。
この加工布(C)を使って、シャツを縫製し、実施例1と同様にホルマリンによる気相処理を実施した。得られたシャツの評価結果を表1に示した。
【0036】
実施例4
シルケット処理工程を32°Be’水酸化ナトリウムを使いシルケット処理を行い、次いで実施例2と同様に液体アンモニア処理を行い加工布(D)を得た。
この加工布(D)を使い、常法によりシャツを縫製し、実施例1と同様のホルマリンによる気相処理を行った。得られたシャツの評価結果を表1に示した。
【0037】
比較例1
木綿織物(80/2×80/2/134×76,目付113g/m2 )の精練・漂白布(E)を使って、シャツを縫製し、実施例1と同様にホルマリンによる気相処理を実施した。得られた結果を表1に示した。
【0038】
比較例2
木綿織物(80/2×80/2/134×76,目付113g/m2 )の精練・漂白布を25°Be’水酸化ナトリウムにて常法によるシルケット処理施した。 この加工布(F)を使って、シャツを縫製し、実施例1と同様にホルマリンによる気相処理を実施した。得られたシャツの評価結果を表1に示した。
【0039】
比較例3
木綿織物(80/2×80/2/134×76,目付113g/m2 )の精練・漂白布を32°Be’水酸化ナトリウムにて常法によるシルケット処理施した。 この加工布(F)を使って、シャツを縫製し、実施例1と同様にホルマリンによる気相処理を実施した。得られたシャツの評価結果を表1に示した。
【0040】
比較例4
実施例2で用いた加工布(B)を用いてシャツを縫製した。
このシャツを実施例1と同様にして気相ホルマリン加工を施し、得られたシャツの評価結果を表1に示した。
【0041】
本発明のシャツは、風合いが粗硬化せず防しわ性が高く、抗張力の低下が小さく、W/W性に優れ、著しくパッカリング性、保型性に優れる。比較例に示した従来法によるシャツでは、本発明のシャツのように、上記の全ての特性を満足させることは困難である。
【0042】
【表1】
Figure 0003724600
【0043】
【発明の効果】
水酸化ナトリウム、液体アンモニア等のセルロース系繊維の結晶構造を変化させる薬剤によって、本来のセルロースI型の結晶構造を他の結晶構造(セルロースII型、セルロース III型など)へ大幅に結晶変態せしめ、晶変態せしめることで、コンボリューションの低減を計り、繊維軸方向の歪み緩和した後にホルムアルデヒド蒸気で均一に架橋させる。こうして得られた木綿繊維を含有する繊維製品は、風合いが良好で強力低下が少なく、防しわ性が高く、繰り返し洗濯後も優れたW/W性、防縮性、保型性を示す。

Claims (1)

  1. 木綿を含む繊維構造物を液体アンモニアに3〜20秒浸漬後、15〜90秒間のタイミングを置き、熱又は蒸気によって脱アンモニア処理された後、気相ホルマリン加工法により架橋改質した木綿繊維中の結合ホルマリン量が0.95重量%以上の繊維製品であり、前記繊維構造物中の木綿単繊維のセルロースI型の結晶構造が全結晶中50重量%未満であり、かつ、木綿単繊維のコンボリューションが60回/cm以下である木綿繊維含有繊維製品。
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