JP3723616B2 - 環状オレフィン系樹脂組成物およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、透明性、耐熱性、耐防湿性、耐薬品性、耐溶剤性、成形加工性、電気的性質、機械的強度、低複屈折性などに優れ、特に環境変化によっても優れた透明性を保持しうる環状オレフィン系樹脂組成物およびその用途に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来より透明性に優れた樹脂として、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチルあるいはポリエチレンテレフタレートなどが知られている。このポリカーボネートは剛性、耐熱性、耐熱老化性、耐衝撃性には優れているが、耐薬品性に劣り、また光学基板などに成形して用いる際には複屈折が大きく、さらに吸水率(耐水性)も充分に小さいとはいえないという問題点がある。またポリメタクリル酸メチルは機械的性質には優れているが、耐薬品性、耐熱性、耐候性には劣るという問題点があり、ポリエチレンテレフタレートは耐熱性および機械的性質には優れているが、強酸あるいはアルカリに弱く、加水分解を受けやすいという問題点がある。
また従来よりポリオレフィンも透明性に優れた樹脂として知られており、特に剛性および透明性のバランスのよいポリオレフィンとして、嵩高い環状オレフィンから導かれる環状オレフィン系樹脂が提案されている。たとえばこの嵩高い環状オレフィンとエチレンとのランダム共重合体として、エチレンと2,3-ジヒドロキシジシクロペンタジエンとの共重合体(米国特許公報第2,883,372号)、あるいはエチレンと5‐エチリデンノルボルネンとの共重合体などが提案されている。
【0003】
本出願人も、このような環状オレフィン系樹脂について研究したところ、特にエチレンと環状オレフィンとの共重合体などの非晶性環状オレフィン系樹脂は、α−オレフィン(共)重合体に比べて種々の特性に優れており、たとえば透明性、低複屈折性、耐防湿性(低吸水性)、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、精密成形加工性、誘電特性などの電気的性質、機械的性質、剛性に優れていることを見出している。
このため環状オレフィン系樹脂は種々の広範な用途への利用が考えられるが、特にその優れた透明性を有効に利用してたとえば光学用途、医療・医薬容器、食品容器などの用途への利用が考えられている。
【0004】
しかしながらこのような環状オレフィン系樹脂の用途について研究する過程において、環状オレフィン系樹脂は、環境変化によってたとえば高温高湿雰囲気下から常温常湿雰囲気下へと環境変化した場合などには白濁を生じることがあって、透明性あるいは光線透過率が低下することがあるという問題点があることがわかった。
このため環境変化によっても透明性が低下することがなく、優れた透明性を安定して保持することができ、上記各用途に好適に使用することができる環状オレフィン系樹脂の出現が望まれていた。
【0005】
本発明者は上記のような従来技術に鑑みて特に温度、湿度の環境変化によっても透明性の低下しない環状オレフィン系樹脂組成物について研究したところ、環状オレフィン系樹脂と、該環状オレフィン系樹脂との屈折率の差が特定範囲となるように選択された芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体または水素添加物とを、特定割合の量で含有する環状オレフィン系樹脂組成物は上記のような特性を満たし、透明性の要求される光学用途および容器用途などに好適に利用することができることを見出して本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、透明性、低複屈折性、耐熱性、耐熱老化性、耐薬品性、耐溶剤性、誘電特性、種々の機械的特性、精密成形性、防湿性(低吸水性)などに優れ、特に環境変化によっても優れた透明性を安定して保持することができる環状オレフィン系樹脂組成物およびこの環状オレフィン系樹脂組成物の用途を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、
[A](1)エチレンとテトラシクロ[ 4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ] -3- ドデセンとのランダム共重合体であり、
(2)軟化点温度(TMA)が70℃以上であり、かつ
(3)極限粘度[η](135℃デカリン中)が0.05〜10dl/gである
環状オレフィン系樹脂と、
[B]JISAで規定されるゴム硬度が98以下であり、かつ
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物である
ゴムとからなり、
前記環状オレフィン系樹脂[A]の屈折率をnD[A]とし、前記ゴム[B]の屈折率をnD[B]としたとき、屈折率の差|nD[B]−nD[A]|が0.010以下であり、
上記環状オレフィン系樹脂[A]100重量部に対して、ゴム[B]を1〜10重量部の量で含有し、
前記環状オレフィン系樹脂[A]と前記ゴム「B」とを溶融混練して得られることを特徴としている。
【0008】
【化3】
【0009】
(式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R1 〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子またはハロゲンで置換されていてもよい炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。)、
【0010】
【化4】
【0011】
(式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R1 〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、R9 またはR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)、
[A-2]上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体、
[A-3]上記開環重合体または共重合体[A-2]の水素化物 、および
[A-4]上記[A-1]、[A-2]または[A-3]のグラフト変性物。
【0012】
上記のような本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物の用途としては、プラスチックレンズ、容器、透明シートまたは透明ボードなどが特に好適である。
【0013】
【発明の具体的説明】
以下本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物について具体的に説明する。
本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、下記に示すような嵩高い環状オレフィンから導かれる環状オレフィン系樹脂[A]と、この環状オレフィン系樹脂[A]との屈折率の差が特定範囲となるように選択された芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物[B]とから形成されることを特徴としている。
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂について示す。
【0014】
本発明では、環状オレフィン系樹脂として、
[A-1]エチレンと下記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体、
[A-2]下記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体、
[A-3]上記開環重合体または共重合体[A-2]の水素化物、または
[A-4]上記[A-1]、[A-2]または[A-3]のグラフト変性物
が用いられる。
以下このような環状オレフィン系樹脂[A-1]〜[A-4]を形成する式[I]または[II]で示される環状オレフィンについて説明する。
環状オレフィン
【0015】
【化5】
【0016】
上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1である。なおqが1の場合には、Ra およびRb は、それぞれ独立に、下記の原子または炭化水素基であり、qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。
【0017】
R1 〜R18ならびにRa およびRb は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。
ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
【0018】
また炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基が挙げられ、
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
これらの炭化水素基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0019】
さらに上記式[I]において、R15〜R18がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環または多環を形成していてもよく、しかもこのようにして形成された単環または多環は二重結合を有していてもよい。ここで形成される単環または多環の具体例を下記に示す。
【0020】
【化6】
【0021】
なお上記例示において、1または2の番号が賦された炭素原子は、式[I]においてそれぞれR15(R16)またはR17(R18)が結合している炭素原子を示している。
またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、通常は炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基を挙げることができる。
【0022】
【化7】
【0023】
上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2である。
またR1 〜R19は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基である。
【0024】
ハロゲン原子は、上記式[I]におけるハロゲン原子と同じ意味である。
また炭化水素基としては、それぞれ独立に炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基が挙げられ、
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、
芳香族炭化水素基としては、アリール基およびアラルキル基、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基などを挙げることができる。
これらの炭化水素基およびアルコキシ基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されていてもよい。
【0025】
ここで、R9 およびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよい。すなわち上記二個の炭素原子がアルキレン基を介して結合している場合には、R9 およびR13で示される基が、またはR10およびR11で示される基が互いに共同して、メチレン基(-CH2-) 、エチレン基(-CH2CH2-) またはプロピレン基(-CH2CH2CH2-) のうちのいずれかのアルキレン基を形成している。
さらに、n=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。この場合の単環または多環の芳香族環として、たとえば下記のようなn=m=0のときR15とR12がさらに芳香族環を形成している基が挙げられる。
【0026】
【化8】
【0027】
ここでqは式[II]におけるqと同じ意味である。
上記のような式[I]または[II]で示される環状オレフィンを、より具体的に下記に例示する。
【0028】
【化9】
【0029】
(上記式中、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)
およびこのビシクロ[2.2.1 ]-2-ヘプテンに、炭化水素基が置換した誘導体。この炭化水素基としては、たとえば、5-メチル、5,6-ジメチル、1-メチル、5-エチル、5-n-ブチル、5-イソブチル、7-メチル、5-フェニル、5-メチル-5-フェニル、5-ベンジル、5-トリル、5-(エチルフェニル) 、5-(イソプロピルフェニル) 、5-(ビフェニル)、5-(β-ナフチル)、5-(α-ナフチル) 、5-(アントラセニル) 、5,6-ジフェニルなどが挙げられる。
【0030】
さらに他の誘導体として、
シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物、
1,4-メタノ-1,4,4a,9a- テトラヒドロフルオレン、
1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセンなどのビシクロ[2.2.1 ]-2-ヘプテン誘導体などが挙げられる。
【0031】
トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン、
2-メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン、
5-メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセンなどのトリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン誘導体、
トリシクロ[4.4.0.12,5]-3-ウンデセン、
10-メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]-3-ウンデセンなどのトリシクロ[4.4.0.12,5]-3-ウンデセン誘導体。
【0032】
【化10】
【0033】
(上記式中、1〜12の数字は炭素の位置番号を示す。)
およびこれに、炭化水素基が置換した誘導体。
この炭化水素基としては、たとえば、
8-メチル、8-エチル、8-プロピル、8-ブチル、 8- イソブチル、8-ヘキシル、8-シクロヘキシル、8-ステアリル、5,10-ジメチル、2,10-ジメチル、8,9-ジメチル、8-エチル-9-メチル、11,12-ジメチル、2,7,9-トリメチル、2,7-ジメチル-9-エチル、9-イソブチル-2,7-ジメチル、9,11,12-トリメチル、9-エチル-11,12-ジメチル、9-イソブチル-11,12-ジメチル、5,8,9,10-テトラメチル、8-エチリデン、8-エチリデン-9-メチル、8-エチリデン-9-エチル、8-エチリデン-9-イソプロピル、8-エチリデン-9-ブチル、8-n-プロピリデン、8-n-プロピリデン-9-メチル、8-n-プロピリデン-9-エチル、8-n-プロピリデン-9-イソプロピル、8-n-プロピリデン-9-ブチル、8-イソプロピリデン、8-イソプロピリデン-9-メチル、8-イソプロピリデン-9-エチル、8-イソプロピリデン-9-イソプロピル、8-イソプロピリデン-9-ブチル、8-クロロ、8-ブロモ、8-フルオロ、8,9-ジクロロ、8-フェニル、8-メチル-8-フェニル、8-ベンジル、8-トリル、8-(エチルフェニル)、8-(イソプロピルフェニル)、8,9-ジフェニル、8-(ビフェニル)、8-(β-ナフチル)、8-(α-ナフチル) 、8-(アントラセニル) 、5,6-ジフェニルなどが挙げられる。
【0034】
さらに他の誘導体として、(シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物などが挙げられる。
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン、およびその誘導体。
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ペンタデセン、およびその誘導体。
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13 ]-4,10-ペンタデカジエンなどのペンタシクロペンタデカジエン化合物。
ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ヘキサデセン、およびその誘導体。
ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14 ]-4-ヘキサデセン、およびその誘導体。
ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン、およびその誘導体。
ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5- エイコセン、およびその誘導体。
ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]-5-ヘンエイコセン、およびその誘導体。
オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17 ]-5-ドコセン、およびその誘導体。
ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]-5-ペンタコセン、およびその誘導体。
ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]-6-ヘキサコセン、およびその誘導体などが挙げられる。
【0035】
なお一般式[I]または[II]で示される環状オレフィンの具体例を上記に示したが、これら化合物のより具体的な構造例としては、特願平5−196475号当初明細書の段落番号[0032]〜[0054]に示された環状オレフィンの構造例を挙げることができる。
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂は、上記環状オレフィンから導かれる単位を2種以上含有していてもよい。
【0036】
上記のような一般式[I]または[II]で示される環状オレフィンは、シクロペンタジエンと対応する構造を有するオレフィン類とを、ディールス・アルダー反応させることによって製造することができる。
【0037】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂は、上記のような式[I]または[II]で示される環状オレフィンを用いて、たとえば特開昭60-168708号、同61-120816号、同61-115912号、同61-115916号、同61-271308号、同61-272216号、同62-252406号および同62-252407号などの公報において本出願人が提案した方法に従い、それぞれ適宜条件を選択することにより製造することができる。
【0038】
[A-1] エチレン・環状オレフィンランダム共重合体
[A-1]エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体は、エチレンから導かれる単位を通常5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で、環状オレフィンから導かれる単位を通常5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で含有している。なおエチレン組成および環状オレフィン組成は、13C−NMRによって測定することができる。
【0039】
この[A-1]エチレン・環状オレフィンランダム共重合体では、上記のようなエチレンから導かれる単位と環状オレフィンから導かれる単位とが、ランダムに配列して結合し、実質的に線状構造を有している。この共重合体が実質的に線状であって、実質的にゲル状架橋構造を有していないことは、この共重合体が有機溶媒に溶解した際に、この溶液に不溶分が含まれていないことにより確認することができる。たとえば極限粘度[η]を測定する際に、この共重合体が135℃のデカリンに完全に溶解することにより確認することができる。
【0040】
本発明で用いられる[A-1]エチレン・環状オレフィンランダム共重合体において、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの少なくとも一部は、下記式[III]または[IV]で示される繰り返し単位を構成していると考えられる。
【0041】
【化11】
【0042】
式[III]において、n、m、q、R1 〜R18ならびにRa 、Rb は式[I]と同じ意味である。
【0043】
【化12】
【0044】
式[IV]において、n、m、p、qおよびR1 〜R19は式[II]と同じ意味である。
また上記のような[A-1]エチレン・環状オレフィンランダム共重合体は、本発明の目的を損なわない範囲であれば必要に応じて他の共重合可能なモノマーから導かれる単位を有していてもよく、具体的には他のモノマーから導かれる単位を、通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下の量で含有していてもよい。
【0045】
このような他のモノマーとしては、上記のようなエチレンまたは環状オレフィン以外のオレフィンを挙げることができ、具体的には、
プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンおよび1-エイコセンなどの炭素数3〜20のα-オレフィン、
シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4-ジメチルシクロペンテン、3-メチルシクロヘキセン、2-(2-メチルブチル)-1-シクロヘキセンおよびシクロオクテン、3a,5,6,7a-テトラヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデンなどのシクロオレフィン、
1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエンおよび5-ビニル-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン類を挙げることができる。
エチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]は、上記他のモノマーから導かれる単位を2種以上含有していてもよい。
【0046】
エチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]は、エチレンと式[I]または[II]で示される環状オレフィンとを用いて上記公報に開示された製造方法により製造することができる。これらのうちでも、共重合反応を炭化水素溶媒中で行ない、触媒として該炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物および有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いてエチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]を製造することが好ましい。
【0047】
また固体状IVA族メタロセン系触媒を用いてエチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]を製造することもできる。
この固体状IVA族メタロセン系触媒は、少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物(メタロセン化合物)と、有機アルミニウムオキシ化合物と、必要に応じて有機アルミニウム化合物とから形成される。ここでIV族の遷移金属は、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムである。シクロペンタジエニル骨格を含む配位子としてはアルキル基が置換していてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フロオレニル基などが挙げられる。これらの基はアルキレン基など他の基を介して結合していてもよい。またシクロペンタジエニル骨格を含む配位子以外の配位子は、通常アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などである。
【0048】
また有機アルミニウムオキシ化合物、有機アルミニウム化合物は、通常オレフィン系重合体の製造に使用されるものを用いることができる。このような固体状IVB族メタロセン系触媒については、たとえば特開昭61-221206号、同64-106号および特開平2-173112号公報などに詳細に記載されている。
【0049】
[A-2] 環状オレフィンの開環(共)重合体
環状オレフィンの開環重合体または開環共重合体[A-2]では、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンから導かれる単位の少なくとも一部は、下記式[V]または[VI]で示されると考えられる。
【0050】
【化13】
【0051】
式[V]において、n、m、qおよびR1 〜R18ならびにRa およびRb は式[I]と同じ意味である。
【0052】
【化14】
【0053】
式[VI]において、n、m、p、qおよびR1 〜R19は式[II]と同じ意味である。
このような開環(共)重合体は、前記公報に開示された製造方法により製造することができ、たとえば上記式[I]で示される環状オレフィンを開環重合触媒の存在下に、重合または共重合させることにより製造することができる。
【0054】
このような開環重合触媒としては、
ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、インジウムまたは白金などから選ばれる金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒、あるいは、
チタン、パラジウム、ジルコニウムまたはモリブテンなどから選ばれる金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
【0055】
[A-3] 開環(共)重合体の水素化物
開環(共)重合体の水素化物[A-3]は、上記のような開環重合体または開環共重合体[A-2]を、従来公知の水素添加触媒の存在下に水素化して得られる。
【0056】
この開環(共)重合体の水素化物[A-3]では、式[I]または[II]から導かれる単位の少なくとも一部は、下記式[VII]または[VIII]で示されると考えられる。
【0057】
【化15】
【0058】
式[VII]において、n、m、qおよびR1 〜R18ならびにRa およびRb は式[I]と同じ意味である。
【0059】
【化16】
【0060】
式[VIII]において、n、m、p、q、R1 〜R19は式[II]と同じ意味である。
[A-4] グラフト変性物
環状オレフィン系樹脂のグラフト変性物は、上記のエチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]、環状オレフィンの開環(共)重合体[A-2]、または開環(共)重合体の水素化物のグラフト変性物[A-3]である。
【0061】
この変性剤としては、通常不飽和カルボン酸類が用いられ、具体的に、
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1] ヘプト-5- エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)などの不飽和カルボン酸、
さらにこれら不飽和カルボン酸の誘導体たとえば不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミド、不飽和カルボン酸のエステル化合物などが挙げられる。
不飽和カルボン酸の誘導体としては、より具体的に、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、塩化マレニル、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどが挙げられる。
【0062】
これらの変性剤うちでも、α,β−不飽和ジカルボン酸およびα,β−不飽和ジカルボン酸無水物たとえばマレイン酸、ナジック酸およびこれら酸の無水物が好ましく用いられる。これらの変性剤は、2種以上組合わせて用いることもできる。
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂のグラフト変性物[A-4]における変性率は、通常10モル%以下であることが望ましい。
【0063】
環状オレフィン系樹脂[A-1]、[A-2]または[A-3]と変性剤とから環状オレフィン系樹脂のグラフト変性物を得るには、従来公知のポリマーの変性方法を広く適用することができる。たとえば溶融状態にある環状オレフィン系樹脂[A-1]、[A-2]または[A-3]に変性剤を添加してグラフト重合(反応)させる方法、あるいは環状オレフィン系樹脂[A-1]、[A-2]または[A-3]の溶媒溶液に変性剤を添加してグラフト反応させる方法などによりグラフト変性物を得ることができる。
このようなグラフト反応は、通常60〜350℃の温度で行われる。
またグラフト反応は、有機過酸化物およびアゾ化合物などのラジカル開始剤の共存下に行うことができる。
【0064】
また上記のような変性率の変性物は、未変性環状オレフィン系樹脂と変性剤とのグラフト反応によって直接得ることができ、また環状オレフィン系樹脂と変性剤とのグラフト反応によって予め高変性率の変性物を調製し、次いでこの変性物を未変性の環状オレフィン系樹脂で所望の変性率となるように希釈することによって得ることもできる。
【0065】
本発明では、環状オレフィン系樹脂[A]として、上記のような[A-1]、[A-2]、[A-3]および[A-4]のいずれかを単独で用いてもよく、同種を2種以上用いてもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。
これらのうちでも、環状オレフィン系樹脂[A]として、エチレン・環状オレフィンランダム共重合体[A-1]が好ましく用いられる。
環状オレフィン系樹脂のX線回折法によって測定される結晶化度は、0〜20%好ましくは0〜2%であることが望ましい。
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂[A]の軟化点温度(TMA)は、70℃以上であり、好ましくは90〜250℃、さらに好ましくは100〜200℃である。ガラス転移点温度(Tg)は、60〜230℃好ましくは70〜210℃であることが望ましい。
[A]環状オレフィン系樹脂の極限粘度[η](135℃デカリン中)は、0.05〜10dl/gであり、好ましくは0.08〜5dl/gである。
【0066】
[B]JISAで規定されるゴム硬度が98以下のゴム
本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、JISAで規定されるゴム硬度が98以下のゴム(以下成分[B]ともいう)を含有している。
このゴム[B]の屈折率をnD[B]とし、前記環状オレフィン系樹脂[A]の屈折率nD[A]としたとき、屈折率の差|nD[B]−nD[A]|が0.015以下、好ましくは0.012以下さらに好ましくは0.010以下であるような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物[B]が用いられる。
環状オレフィン系樹脂組成物は、このようなゴムを含有していることによって、高温高湿雰囲気下から常温常湿雰囲気下へと環境変化した場合などにおいても優れた透明性を保持することができる。
【0067】
本発明では、このようなゴムとしてたとえば芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物を例示できる。芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物を形成する芳香族ビニルとしては、具体的に、スチレン、α−メチルスチレン、p-メチルスチレンなどが挙げられる。
また共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエンなどが挙げられる。
本発明で用いられる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体およびその水素添加物[B]は、上記のような芳香族ビニルから導かれる単位を、5〜80重量%好ましくは15〜70重量%さらに好ましくは40〜70重量%の量で含有していることが望ましい。特に芳香族ビニルから導かれる単位を40〜70重量%の量で含有する芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物[B]からは、透明性に優れた環状オレフィン系樹脂組成物を形成することができる。
なお芳香族ビニルから導かれる単位の含有量は、赤外線分光法、NMR分光法などの常法によって測定される値である。
このような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物[B]としては、具体的には、
スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SB)およびその水素添加物(SEB)、
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)およびその水素添加物(SEBS;スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体)、
スチレン・イソプレンブロック共重合体(SI)およびその水素添加物(SEP)、
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)およびその水素添加物(SEPS;スチレン・エチレン/プロピレン・スチレンブロック共重合体)などが挙げられる。
上記の芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物[B]たとえばSEBSとして、さらに具体的には、クレイトン(Kraton)G1650、G1652、G1657、G1701(シェル化学(株)製、商品名)、タフテック(旭化成(株)製、商品名)、SEPSとしてはセプトン2104などが挙げられる。
本発明では、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物[B]として、SEBS(水添SBS)、SEPS(水添SIS)が特に好ましく用いられる。
本発明で用いられる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物[B]は、芳香族ビニルブロック単位と共役ジエンゴムブロック単位(あるいはその水素添加ゴムブロック単位)とからなる熱可塑性エラストマーである。このようなブロック共重合体では、ハードセグメントである芳香族ビニルブロック単位がソフトセグメントであるゴムブロック単位の橋かけ点として存在して物理架橋(ドメイン)を形成している。
上記のような本発明で用いられる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物の数平均分子量は、500〜2000000好ましくは10000〜1000000であることが望ましい。
なおこの数平均分子量(Mn)は、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体およびその水素添加物[B]のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC;o-ジクロルベンゼン、140℃)を測定することにより求めることができる。
本発明では、これら化合物を2種以上組合わせて用いてもよい。
【0068】
環状オレフィン系樹脂組成物
本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂[A]100重量部に対して、上記のような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物[B]を0.01〜10重量部、好ましくは0.5重量部以上5重量部未満、より好ましくは0.5〜2重量部の量で含有している。
【0069】
このような環状オレフィン系樹脂組成物は、透明性、低複屈折性、耐熱性、耐熱老化性、耐薬品性、耐溶剤性、誘電特性、種々の機械的特性、精密成形性、防湿性(低吸水性)に優れている。特に本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、嵩高い環状オレフィンから導かれる環状オレフィン系樹脂と、この環状オレフィン系樹脂との屈折率の差が小さい芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物を特定割合で含有しており、高温高湿雰囲気下から常温常湿雰囲気下へと環境変化した場合などにおいても優れた透明性を保持することができる。環状オレフィン系樹脂組成物がこのような組成で形成されることによって環境変化によっても優れた透明性を保持しうることは本発明者により見出された。
【0070】
上記のような本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、[A]および[B]とともに他の成分を任意に含有していてもよく、[B]以外の添加剤たとえば耐熱安定剤、耐候安定剤などの安定剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、鉱物油系軟化剤、石油樹脂、ワックスなどを含有していてもよい。
【0071】
具体的に、任意成分として含有される安定剤としては、たとえばテトラキス[メチレン−3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2'-オギザミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤、
ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2-ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩などが挙げられる。
これらは組合わせて用いることもでき、たとえばテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンとステアリン酸亜鉛またはステアリン酸カルシウムとを組合わせて用いることもできる。
【0072】
また安定剤として、たとえばジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニル-4,4'-イソプロピリデンジフェノール−ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノール−A−ペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジフォスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトなどのリン系安定剤を用いることもできる。
【0073】
また環状オレフィン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲であれば必要に応じて有機充填材または無機充填材を含有していてもよく、たとえばシリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデンなどを含有していてもよい。
【0074】
本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、上記のような環状オレフィン系樹脂組成物を公知の成形方法により所望形状に成形することにより得られる。たとえば環状オレフィン系樹脂組成物を射出成形法、インジェクションブロー成形法、ダイレクトブロー成形法、Tダイ押出法、インフレーション法、プレス法などの成形方法により、レンズ、容器状、トレー状、シート状またはフィルム状などに成形することができる。
【0075】
このような本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物の用途としては、具体的に、球面レンズ、非球面レンズ、フレネルレンズ、プリズム、導光板などの光学部品、CD、MD、DVD、MO、PDなどの光記録メディア、透明ボード、バイアルビン、プレフィルドシリンジ、分析セルなどの医薬・医療容器、広口容器、シャンプー用容器、コーヒー用容器、調味料用容器、飲料用容器などの日用雑貨・食品容器、透明シートなどが挙げられる。
これらの中でもプラスチックレンズ、光記録メディア、容器、透明シートおよびボードなどが特に好ましい。
【0076】
【発明の効果】
上記のように本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、透明性、低複屈折性、耐熱性、耐熱老化性、耐薬品性、耐溶剤性、誘電特性、種々の機械的特性、精密成形性、防湿性(低吸水性)などに優れ、特に環境変化によっても優れた透明性を安定して保持することができる。
このような本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、特に光学用成形品、容器、透明シートおよびボードなどとして有用性が高い。
【0077】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお本発明において、各種物性は下記の方法によって測定または評価した。
(1)軟化温度(TMA)
デュポン社製 Thermo Mechanical Analyzerを用いて、厚さ1mmのシートの熱変形挙動により測定した。
シート上に石英製針を乗せ、荷重49gをかけ、5℃/分の速度で昇温し、針がシート中に0.635mm侵入した温度をTMAとした。
(2)光線透過率
分光光度計を用いて、600nmにおける光線透過率を測定した。
(3)屈折率
ASTM D542に準拠して測定した。
【0078】
【実施例1〜3】
成分[A]として、軟化温度(TMA)が150℃であり、極限粘度[η]が0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデセン-3とのランダム共重合体(Et−TCDと略す) 100重量部に、
成分[B]として、上記Et−TCDとの屈折率の差|nD[B]−nD[A]|が0.008であるスチレン・エチレン/プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)(商品名セプトン2104)を表1に示す量(重量部)で添加して、シリンダ温度を250℃に設定した二軸押出機に供給して溶融混練して環状オレフィン系樹脂組成物を得た。
得られた環状オレフィン系樹脂組成物を射出成形機(東芝機械製IS−55EPN)を用いて厚さ3mmの角板に射出成形した。
この角板を80℃、90%RHの高温高湿下に48時間放置した後、常温常湿中に取り出した。試験前、後の透明性(光線透過率)を評価した。
【0079】
【比較例1】
成分[B]を添加せず、Et−TCDのみを用いた以外は、実施例1と同様にして角板を成形し、試験した。結果を表1に示す。
【0080】
【比較例2】
成分[B]を11重量部の量で用いた以外は、実施例1と同様にして角板を成形し、試験した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
Claims (5)
- [A](1)エチレンとテトラシクロ[ 4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ] -3- ドデセンとのランダム共重合体であり、
(2)軟化点温度(TMA)が70℃以上であり、かつ
(3)極限粘度[η](135℃デカリン中)が0.05〜10dl/gである
環状オレフィン系樹脂と、
[B]JISAで規定されるゴム硬度が98以下であり、かつ
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物である
ゴムとからなり、
前記環状オレフィン系樹脂[A]の屈折率をnD[A]とし、前記ゴム[B]の屈折率をnD[B]としたとき、屈折率の差|nD[B]−nD[A]|が0.010以下であり、
上記環状オレフィン系樹脂[A]100重量部に対して、ゴム[B]を1〜10重量部の量で含有し、
前記環状オレフィン系樹脂[A]と前記ゴム[B]とを溶融混練して得られることを特徴とする環状オレフィン系樹脂組成物。 - 請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂組成物からなるプラスチックレンズ。
- 請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂組成物からなる容器。
- 請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂組成物からなる透明シートまたは透明ボード。
- 請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂組成物からなる光記録メディア。
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