JP3723607B2 - 中空成形体の製造装置及びこれを使用する中空成形体の製造方法 - Google Patents

中空成形体の製造装置及びこれを使用する中空成形体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、脱水プレス法により予め中空の部材を同時成形することにより、軽量且つ寸法精度の良好な中空成形体を製造することができる装置及びこれを使用する製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
建材に使用される窯業系板材の中で軽量化と効率良い強度発現の為、板材中空部を中空にしたいわゆる中空パネル等が製造されている。
この中空パネルは、図10(A),(B)に示すような「押出し成形法」が一般に用いられている。
同図に示すように、中空体01を製造するに際しては、先ず押出成形機02の先端に所望の形状の口金03を装着し、材料を押出し出して中空体01を成形すると同時に中空部04を付与するようにしている。
このようにして得られた中空体01は、外壁部材、間仕切り部材等の建材に用いられている。
【0003】
その他の中空パネルの製造方法は、図11に示すような金型05を用いて原料を流込むことにより、中空部06を有する中空体07を成形する流し込み方法や、中央部に中空を付与できる形状の金型を使用したプレスモールドにより製造している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の中空パネルの製造方法は、以下のような問題がある。
(1) 押出し成形法の問題点
▲1▼ 製造設備が大がかりとなり、その結果設備投資が大となり、製造コストを低廉化することができない。
▲2▼ また、押出された中空体の中空部04の上部が薄く柔らかいので、タレによる変形が生じ易いと共に、板材長手方向の直線性が出しにくい。この結果、原材料の選択・配合に制限があり、不良率が高くなる。
▲3▼ 製造時に中空パネルの表面に自在な表面模様が付与しにくい。
【0005】
(2) 流し込み法及びプレスモールド法の問題点
▲1▼ 一品づつ製造するので、製造効率が悪い。
▲2▼ 長さの長い板材の製造ができない。
▲3▼ 薄手の板材が製造できない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、脱水プレス法により予め中空の部材を同時成形することにより、軽量且つ寸法精度の良好な中空成形体を製造することができる装置及びこれを使用する製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明に係る中空成形体の製造装置は、上型と下型とから構成され、該下型内に硬化性無機質材料を投入してなる金型からなり、該下型は、中型と、該中型の周囲を鉛直方向に移動可能な外型とを有し、且つ、下型の内部に中空部材の配設と硬化性無機質材料スラリーの投入とをした後、加圧・脱水処理して、成形体の内部に中空部材を配して一体化してなる中空成形体を製造する装置において、上記下型を構成する外型が、鉛直方向に移動自在の第1の外型と、該第1の外型の上面に設けられると共に上記上型との間で鉛直方向と直交する方向に相対向して移動自在且つ鉛直方向に上記第1の外型と共に移動自在の第2の外型とを設け、且つ中空部の両端部が上記第1の外型の上面に載置されると共に、該中空部材の両端開口部を上記第2の外型の対向面により閉塞してなることを特徴とする。
【0008】
上記中空成形体の製造装置において、前記上型が搾水用の細孔を複数有していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る中空成形体の製造方法上記中空成形体の製造装置を使用する中空成形体の製造方法であって、前記下型の前記外型を上昇させて当該下型の前記中型と前記第1の外型とで形成される空間内に硬化性無機質材料スラリーを投入した後、当該硬化性無機質材料スラリー上に前記中空部材を配設し、当該下型の前記第2の外型で前記中空部材の開口端部を閉塞するように当該第2の外型を移動した後、当該第2の外型内に硬化性無機質材料スラリーをさらに投入し、続いて、前記上型を下降させて脱水プレスすることを特徴とする。
【0013】
上記中空成形体の製造方法において、脱水プレス後、前記第2の外型を離反させるように移動した後、前記外型を下降させることにより、脱型することを特徴とする。
【0014】
上記中空成形体の製造方法において、前記上型と硬化性無機質材料スラリーとの間に水抜き鉄板及び脱水布を介して脱水プレスすることを特徴とする。
【0020】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の中空成形体の製造方法の概略図を示す。
同図に示すように、中空成形体の製造用の金型は、上下動可能な上型11と下型12とから構成されている。
上記下型12は、さらに中型13と、該中型13の外周を鉛直方向に移動動可能な外型14とを有している。
そして、上記下型12内に、硬化性無機質材料スラリー(以下「原料スラリー」という。)15の一部を投入し、その後、図2に示すような中空パイプ16を上記材料の上面に配置し、その上に残りの原料スラリー15を投入する。
【0022】
次いで、脱水プレス機を用いて加圧・脱水処理し、型から取り出して養生・硬化させて、内部に三本の中空パイプ16を配設した中空成形体である中空パネルを製造している。
【0023】
上記中空パイプ16の配設には、該パイプの中空内に原料スラリー15が侵入しないように、両端開口部16aに蓋16b等を装着している。
【0024】
なお、脱水プレス後の養生の前において、中空パイプ16を引き抜いて、図3(B)に示すような中空部18を有する中空パネル17Bを得るようにしてもよい。
この際予め中空パイプ16の表面に離型剤を塗布しておけば、上記引抜きが容易となる。
【0025】
上記中空パイプ16の引抜きにおいては、脱水プレス後の養生の前及び硬化後のいずれにおいてもよい。
更に、引き抜く場合には材料も限定されず、上記中空部材に限らず、中実部材であってもよい。
【0026】
また、上記上型11の搾水側においては、効率よく水を抜くことができるよう、水抜き鉄板18及び脱水布20を介して搾水するようにしている。
【0027】
ここで、本発明で硬化性無機質材料とは、セメント、セッコウ、あるいはケイ酸カルシウム反応物を生成させるに必要なケイ酸質原料と石灰質原料との混合物等を主とし、その他各種混和材・補強材を適宜配合してなるものをいう。
該材料に適宜水を配合してスラリー状態にして用いる。
また、上記各種混和材としては、例えば、スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、砂、炭酸カルシウム粉末、ケイ石粉、パーライト、シリカバルーン等を挙げることができ、また成形助剤として増粘剤、減水剤、流動化剤等を適宜混合することができる。
さらに、上記各種補強材としては、有機合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、鉱物質繊維、及び天然有機繊維(セルロースパルプ繊維等)等を挙げることができ、これらを適宜添加し成形体のパネル材として必要な性能特性を付与することが出来る。
【0028】
本発明で中空部材としては、例えば紙パイプ、合成樹脂パイプ、金属パイプ等の上記成形体を形成する上記硬化性無機質材料と異種材質の各種パイプを挙げることができる。
また、上記硬化性無機質材料を用いてなる同材質の中空パイプを用いることもできる。
【0029】
上記中空部材16の形状は、図4(A)に示すように断面形状が丸型の中空パイプ16Aのものに限らず、図4(B)〜(E)に示すように、矩形型・三角型等の各種の形状のパイプ16B〜16Eを用いるようにしてもよい。
また、図4(F)に示すように、上記中空パイプ16Aの外周部に突起16c等を設けることにより、又は接着剤等を塗布することにより、成形体との密着性を向上させて、複合化効率を向上させ、強度の向上、剛性の向上及び割れた際においてもバラバラにならないようにしてもよい。
【0030】
上記中空パイプ16の形状を、図4(B)に示すような断面形状が角型のパイプ16Bを用いることにより、図5に示すように、従来の押出し成形法によって成形する際には得られなかった中空の角パイプ16Bと中空パネル板19の表面との厚さDを極力薄くすることができる。
この際、脱水プレス時にパイプにかかる圧力に抗するように、中空部材には、図6(A)〜(C)に示すように、上記中空部材の内周部に筋交い16d等の補強材等を設けることにより、パイプの強度を向上するようにしてもよい。
【0031】
本発明では、中空部材を成形体の内部に配設して容易に軽量且つ寸法精度の良好な中空成形体を得るようにしているが、本発明はこれに限定されず、上記中空部材の替わりに、軽量の発泡有機材料による軽量化材を内部に配して、軽量化を図るようにしてもよい。
但し、脱水プレス後の圧力解除時においてスプリングバックが強い材料等を用いる場合には、成形体にヒビ等が入るので、スプリングバックが強くない軽量化材料を選定する必要がある。
【0032】
次に、図7を参照して本発明の中空成形体の他の製造方法の概略を説明する。同図に示すように、中空成形体の製造用の金型は、上下動可能な上型11と下型12とから構成されている。
上記下型12は、中型13と、該中型13の外周を鉛直方向に移動動可能な外型14とを有しており、さらに上記外型14は鉛直方向に移動自在の第1の外型14−1と、該第1の外型14−1の上面に設けられると共に上記上型11との間で鉛直方向と直交する方向に相対向して移動自在であり且つ鉛直方向に上記第1の外型14−1と共に移動自在の第2の外型14−2とから構成されている。
そして、上記第1の外型14−1の上面に中空パイプ16を配設し該中空部材の両端開口部を上記第2の外型14−2の相対向する面により閉塞することにより、原料の投入時にパイプ16内に当該原料の侵入を防止している。
【0033】
すなわち、図7(A)に示すように、上記下型12内に原料スラリー15を投入した後に、図7(B)に示すように中空パイプ16の両端部を上記第1の外型14−1の上面の角部のギリギリのところに載置し、次いで相対向する第2の外型14−2同士を移動させて相対向する面で上記中空パイプ16の両端開口部を閉塞するようにし、残りの原料スラリー15を投入し脱水プレスする。
その後、図8(A)及び(B)に示すように、上記相対向する第2の外型14−2同士を少し外側に移動させて次いで下方側に第1の外型14−1と共に移動させて、脱型するようにして、成形体17Cを得るようにしている。
【0034】
本発明では脱水プレス機を用いて脱水プレス処理するが、脱水処理方法は特に限定されるものではなく、例えば、図1中に示す上型11に搾水用の細孔11aを複数配してプレス時に搾水して、スラリー中の余分な水分を排除するようにしてもよい。
また、この搾水は必要に応じて上型以外に下型においても行うようにしてもよい。
なお、脱水プレス成形の圧力は材料組成及び内部に挿入するパイプの材質とも関係するが、紙パイプを用いる場合には約10kg/cm2 程度とし、その他の材質のパイプにおいては約40〜100kg/cm2 程度とするのが良いが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0035】
また、本発明において、中型13の表面に模様等を付しておけば、脱水プレス時に成形体の表面に所望の模様が転写できるので、従来に較べて製品のバリエーションが大幅に向上することができる。
【0036】
また、本発明方法は脱水プレスを用いているので、成形後、直ぐに脱型出来るため金型は一つですみ、短時間で大量に中空成形体を製造することができ、製造効率がよい。
即ち、従来の製造方法では成形後、脱型までに時間を要していたが、本発明によれば、材料を投入し、次いで中空パイプを配し、その後に残りの材料を投入し、脱水プレスによって成形、即脱型することにより、簡易に中空パネルを製造することができる。
【0037】
また、必要に応じて、例えば鉄筋やネット及び孔空き鉄板等の補強材をプレス成形時に同時に成形体裏面又はその内部に成形することができ、強度面の補強が可能となる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の好適な一実施例を詳細に説明する。
【0039】
〔実施例1〕
図1に示す装置を用い、下記配合の原料スラリーを用いて、中空パネルを成形した。
(配合) (wt%)
セメント 60
砂 40
有機合成繊維 1.0
水 33
メチルセルロース 0.1
上記配合による原料スラリーを下型12に約1/3程度投入した。次いで、中空部材として紙パイプ(直径20mm)21の両端開口部を閉塞したものを用意し、上記原料スラリー15の上に6本載置し、次いで残りの2/3の原料スラリーを投入した。
その後、脱水プレス成形(圧力:10kg/cm2 )し、直ちに脱型し、60℃で12時間のスチーム養生を行った。
【0040】
養生後、図9(A)に示すような、厚さT:40mm、幅W:500mmの中空パネル22を得ることができた。
得られたパネル22の比重と曲げ強度とを測定したところ、比重は1.77であり、曲げ強度は129kg/cm2 であった。
なお、上記曲げ強度の測定は、中央一線荷重によった。
【0041】
〔比較例1〕
比較としてパイプを有しないパネルを同様の操作によって得た後、その比重及び曲げ強度を測定したが、比重は1.96で、曲げ強度は125kg/cm2 であったが、本実施例と較べた場合、曲げ強度は同等であるが比重は大きかった。
【0042】
〔実施例2〕
実施例1と同様な成形をする際、中空部材として塩化ビニル製の中空パイプ(直径26mm及び肉厚2mm)23を10本用い、さらに金型の中型の表面に石模様を施したものを用いて、プレス圧:50kg/cm2 で脱水プレスすることにより、表面に石模様を形成した中空成形体24を成形することができた。
得られたパネル22の比重と曲げ強度とを測定したところ、比重は1.62であり、曲げ強度は120kg/cm2 であった。
【0043】
〔実施例3〕
実施例1と同様にプレス圧50kg/cm2 で脱水プレス成形をする際、上型に凹凸を付与し、図9(C)に示すような中空部材として塩化ビニル製の中空パイプ24−1〜24−3を用い、下記配合の原料スラリーによって凹凸形状のパネル25を得た。
(配合) (wt%)
半水石膏 95
パーライト 5
ガラス繊維 1.0
凝結遅延剤 0.2
水 33
【0044】
〔比較例2〕
上記中空パイプ24−1〜24−3を用いないで同様にして、図9(D)に示す成形体パネル26を得たが、X部において、脱水が不良となり、成形できなかった。
【0045】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、予め中空部材を配設して脱水プレス法によりを同時成形することにより、容易に寸法精度が良好で強度の高く且つ比重が軽い中空成形体を提供することができる。
【0046】
また、本発明方法は脱水プレスを用いているので、金型によりパネル状のものを容易に成形することができ、従来の押出し法や、プレスモールド法等よりも任意の形状の成形体を製造することができ、製造効率がよい。
【0047】
さらに、本発明によれば、簡易な方法により寸法精度のよい以下のような中空成形体を得ることが出来る。
▲1▼軽量且つ長尺の薄板を効率良く成形ができる。
▲2▼表面模様の付与が可能な板材ができる。
▲3▼複合化による強度の向上及び耐衝撃力の向上を図ることができる。
▲4▼設備投資が少なくて済む。
▲5▼幅広い窯業系の材料に適用が可能である。
▲7▼長尺板材に限定されず、任意の形状の成形体の作成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる中空成形体の製造の一例を示す図である。
【図2】本発明にかかる中空部材の一例を示す図である。
【図3】本発明にかかる中空成形体の一例を示す図である。
【図4】本発明にかかる他の中空部材の一例を示す図である。
【図5】本発明にかかる他の中空成形体の一例を示す図である。
【図6】本発明にかかる他の中空部材の一例を示す図である。
【図7】本発明にかかる他の中空成形体の製造の一例を示す図である。
【図8】本発明にかかる他の中空成形体の製造の一例を示す図である。
【図9】本実施例にかかる中空成形体の正面図であり、(A)〜(C)は実施例品及び(D)は比較品である。
【図10】従来例にかかる押出し法による中空成形体の製造の一例を示す図である。
【図11】従来例にかかる流し込み法による中空成形体の製造の一例を示す図である。
【符号の説明】
10 金型
11 上型
12 下型
13 中型
14 外型
15 硬化性無機質材料スラリー(原料スラリー)
16,16A〜6F 中空パイプ
17A,17B,17C 中空パネル

Claims (5)

  1. 上型と下型とから構成され、該下型内に硬化性無機質材料を投入してなる金型からなり、
    該下型は中型と、該中型の周囲を鉛直方向に移可能な外型とを有し、
    且つ、下型の内部に中空部材の配設と硬化性無機質材料スラリーの投入とをした後、加圧・脱水処理して、
    成形体の内部に中空部材を配して一体化してなる中空成形体を製造する装置おいて、
    上記下型を構成する外型が、鉛直方向に移動自在の第1の外型と、該第1の外型の上面に設けられると共に上記上型との間で鉛直方向と直交する方向に相対向して移動自在且つ鉛直方向に上記第1の外型と共に移動自在の第2の外型とを設け、
    且つ中空部の両端部が上記第1の外型の上面に載置されると共に、該中空部材の両端開口部を上記第2の外型の対向面により閉塞してなることを特徴とする中空成形体の製造装置。
  2. 請求項1において、
    前記上型が搾水用の細孔を複数有している
    ことを特徴とする中空成形体の製造装置。
  3. 請求項1又は請求項2の中空成形体の製造装置を使用する中空成形体の製造方法であって、
    前記下型の前記外型を上昇させて当該下型の前記中型と前記第1の外型とで形成される空間内に硬化性無機質材料スラリーを投入した後、当該硬化性無機質材料スラリー上に前記中空部材を配設し、当該下型の前記第2の外型で前記中空部材の開口端部を閉塞するように当該第2の外型を移動した後、当該第2の外型内に硬化性無機質材料スラリーをさらに投入し、続いて、前記上型を下降させて脱水プレスする
    ことを特徴とする中空成形体の製造方法。
  4. 請求項3において、
    脱水プレス後、前記第2の外型を離反させるように移動した後、前記外型を下降させることにより、脱型する
    ことを特徴とする中空成形体の製造方法。
  5. 請求項3又は請求項4において、
    前記上型と硬化性無機質材料スラリーとの間に水抜き鉄板及び脱水布を介して脱水プレスする
    ことを特徴とする中空成形体の製造方法。
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