JP3722586B2 - 車両用盗難防止装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用盗難防止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特に自動二輪車にあっては、キーシリンダ錠が外部に露出していることから、キースイッチを介さずにバッテリ端子と点火装置の電源端子とを故意に短絡することにより、キーを差し込むことなくエンジンを回転させて、盗難されるおそれがあった。
【0003】
そのような盗難を防止するべく、例えば点火装置にCDIを用いている場合、そのCDIユニットに高低の電源端子を設けると共に、キーに、両端子間に接続される定電圧ダイオードを内蔵したものがある。この定電圧ダイオード内蔵キーをキーシリンダ錠に差し込んだ場合には、高低の電源端子間に所定の電圧差が生じるため、その電圧差が生じることをCDI回路を有する制御ユニット側で検出するようにしておく。これにより、バッテリ端子と電源端子とを短絡した場合には、それだけでは高低の電源端子間に所定の電圧差が発生しないため、盗難時のエンジン始動を防止することができる。
【0004】
上記盗難防止構造を施したCDI点火制御回路の一例を図3に示す。本回路では、図示されないエンジンに連結された発電機により発生する電圧によりバッテリBTが充電され、そのバッテリ電圧が、図示されないシリンダ錠に差し込まれるエンジン始動用のキースイッチ1を介して、エンジン点火制御用の制御ユニット2の回路駆動用電圧として供給されるようになっている。
【0005】
キースイッチ1内には常時開の第1及び第2スイッチSW1・SW2が設けられており、キースイッチ1をシリンダ錠に差し込んで所定位置まで回すことにより、両スイッチSW1・SW2が閉じ、その閉じた第1スイッチSW1を介して上記バッテリ電圧VBが制御ユニット2の電源端子(高電圧端子)Bに印加されるようになっている。
【0006】
また、上記第1スイッチSW1の電源端子B側に、第2スイッチSW2と定電圧ダイオードZD1とがこの順に直列に接続されている。その定電圧ダイオードZD1を介して所定電圧を下げられた電圧VSが、制御ユニット2に上記電源端子Bと並列に設けられた判定端子Sに印加されるようになっている。
【0007】
制御ユニット2内の電源端子Bからの電源ラインにはCDI回路3が設けられており、そのCDI回路3の出力が、点火端子Iを介して、外部に接続されたイグニッションコイル4に供給され、それにより点火プラグ5に火花が飛ぶ。
【0008】
また、制御ユニット2内には第1・第2・第3の各トランジスタQ4・Q5・Q6が図に示されるように配設されている。キースイッチ1をオンした場合には、上記したように両端子B・S間に電圧差が生じ、それにより第1トランジスタQ4がオンし、第2トランジスタQ5がそのベース・エミッタ間電位差によりオンして、第3トランジスタQ6がオンするようになっている。
【0009】
その第3トランジスタQ6がオンすることにより、低(L)レベル信号が判定用CPU6に入力するようになっており、判定用CPU6では、その低レベル信号の入力時に、CDI回路3に対して点火制御の許可信号を出力する。
【0010】
このようにして構成されたCDI点火制御回路を有する車両に対して盗もうとする場合には、電源端子BをバッテリBTに直結し、判定端子Sをオープン・接地・バッテリ接続の各状態にすることが考えられる。図3の回路では、上記オープンまたは接地状態にした場合には、全トランジスタQ4・Q5・Q6がオフであり、したがってCPU6の信号入力端子INが高(H)レベル状態になることから、CPU6からCDI回路に点火許可信号が出力されず、点火することができない。また、判定端子Sをバッテリ接続状態にした場合には、トランジスタQ4がオンするが、他のトランジスタQ5・Q6がオフであり、上記と同様に点火することができない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、種々の自然環境の元で始動操作を行うことが考えられ、その場合には素子の温度特性の影響が重要になってくる。すなわち、キースイッチ内の定電圧ダイオードZD1と制御ユニット内の回路との両者間に温度特性の違いがあり、環境の違いにより、定電圧ダイオードZD1により生じる電圧差と、制御ユニット内の回路における判定電圧差とが異なると、盗難を防止できる範囲が変化してしまうという問題が生じる。また、判定端子Sをバッテリ接続した場合に用いた短絡用導体に抵抗がある場合には、電源端子Bに対して電圧差が生じた低電圧が判定端子Sに印加されることになる。
【0012】
また、CDI回路3が動作可能な電圧範囲(図4のVLからVMに至る範囲)があると共に、バッテリ端子電圧VBと判定端子電圧VSとの偏差ΔVを回路定数により定めると、図4に示されるように、バッテリ端子電圧がVLからVMに至る範囲であって、バッテリ端子電圧VBに対する判定端子電圧VSの偏差ΔVを除いた図の想像線に挟まれた範囲からなる領域CがCDI回路3に対する動作許可範囲となる。したがって、比較的広範囲の点火可能領域が存在するため、判定端子Sに何らかの条件によりバッテリ電圧よりも低い電圧が印加した場合に、正規な状態であると誤判定してしまうことがあり得る。
【0013】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決して、正規のキースイッチによる所定の電圧差を認識することにより始動可能にして盗難防止を行なう車両における誤判定を極力防止することを実現するために、本発明に於いては、エンジンの点火制御を行うためのCDI回路を有する制御ユニットに電源電圧入力用の電源端子と低電圧入力用の判定端子とを設け、エンジン始動用のキースイッチに、電源電圧を前記電源端子に供給する手段と当該電源電圧よりも低い判定電圧を前記判定端子に入力するための基準定電圧素子とを設けて、前記両端子間に生じる電圧差を検出することにより点火制御を可能にするようにした車両用盗難防止装置であって、前記制御ユニットが、周囲環境に応じて前記基準定電圧素子と同等に変化する同一特性を有する判定用定電圧素子と、前記両端子間の電圧差と前記判定用定電圧素子による電圧差とを比較する比較手段と、前記両電圧差が一定の幅(ΔV2)内にある場合にのみ前記点火制御を許可する点火制御許可手段とを有するものとした。
【0014】
このようにすることにより、キースイッチにより定められる電圧差と制御ユニットにより定められる電圧差とが略一致しなければ不正な手段により始動しようとしたと判断でき、正規なキースイッチの使用の判断を高精度に行うことができる。そのように判定幅を狭めても、両者に同一特性の定電圧素子を設けたことから、天候の変化など周囲環境が異なっても両者共に同じ特性を発揮でき、正規のキースイッチの判断を何ら問題を生じることなく行い得る。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面に示された具体例に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明が適用された車両用盗難防止装置の要部回路図であり、従来例で示した図3の回路と同様の部分には同一の符号を付して、その詳しい説明を省略する。キースイッチ1には、従来例と同一に構成された連動スイッチSW1・SW2と、基準定電圧素子としてのキー側定電圧ダイオードZD1とが設けられている。本回路における制御ユニット2内にあっては、キー側定電圧ダイオードZD1と同一特性(特に温度特性)の判定用定電圧素子としてのユニット側定電圧ダイオードZD2が、電源端子としてのバッテリ端子BとCDI回路3とのノードに接続されて設けられている。
【0017】
制御ユニット2の判定端子Sには第1トランジスタQ1のエミッタが接続されており、その第1トランジスタQ1のベースにユニット側定電圧ダイオードZD2のアノード側が接続されている。また、そのユニット側定電圧ダイオードZD2のアノード側には第2トランジスタQ2のエミッタが接続されており、その第2トランジスタQ2のベースと判定端子Sとが接続されている。このようにして比較手段が構成されている。
【0018】
上記両トランジスタQ1・Q2のコレクタ同士が第3トランジスタQ3のベースに接続されている。その第3トランジスタQ3のエミッタは接地され、そのコレクタは判定用CPUの入力端子INに接続されている。その第3トランジスタQ3のコレクタと点火制御許可手段としての判定用CPUの入力端子INとのノードが、図示されない定電圧回路の定電圧Vccラインと接続されている。
【0019】
このようにして構成された本回路においても、キースイッチ1をオンにした際の判定を、キースイッチ1内に設けた定電圧ダイオードZDにより生じる両端子間B・Sの電圧差を監視して行うことは従来例で示した回路のものと同様である。
【0020】
さらに本回路にあっては、上記したように制御ユニット2側にも定電圧ダイオードZD2を設けているが、その定電圧ダイオードZD2にはキースイッチ1内に設けた定電圧ダイオードZD2と同一特性のものを用いている。したがって、両定電圧ダイオードZD1・ZD2同士のツェナー電圧に対する周囲環境による影響が同等に作用することになる。
【0021】
次に、盗もうとして従来例と同様に判定端子Sのオープン・接地・バッテリ接続のいずれかの状態にして点火させようとした場合について以下に示す。オープン状態の場合には、第1トランジスタQ1がオフであるが、第2トランジスタQ2がオンするため第3トランジスタQ3がオンする。したがって、判定用CPU6の入力端子INには低レベル信号が入力される。
【0022】
なお、本回路における判定用CPU6にあっては、その入力端子INに対する入力信号レベルが高(H)レベルになった時に出力端子OUTからCDI回路3に対して点火制御許可信号が出力されるようになっている。
【0023】
したがって、上記オープン状態では判定用CPU6からCDI回路3に対して点火許可信号が出力されず、点火が行われないため、エンジンを始動して盗むことができない。また、判定端子Sを接地状態にした場合も、各トランジスタQ1・Q2・Q3の駆動状態は上記オープン状態の場合と同じであり、点火することができない。
【0024】
次に、判定端子Sを電源端子Bに接続した場合には、第1トランジスタQ1がオンするが、第2トランジスタQ2のベース電位がバッテリ電圧まで上がって、第2トランジスタQ2がオンしないため第3トランジスタQ3がオンする。したがって、上記オープンや接地状態と同じく点火することができない。
【0025】
なお、キースイッチ1をオンにした場合には、同一特性の定電圧ダイオードZD1・ZD2の作用により、周囲環境が異なる場面になっても、周囲環境に応じて両ツェナー電圧が同等に変化する。したがって、第1及び第2トランジスタQ1・Q2の各ベース・エミッタ間の電位差が生じないため、両トランジスタQ1・Q2がオンせず、第3トランジスタQ3がオフ状態である。この場合には、判定用CPU6の入力端子INに定電圧Vccが印加されるため、高レベル信号入力状態になり、判定用CPU6からCDI回路3に点火制御許可信号が出力されて、CDI回路3による点火制御が行われる。
【0026】
そして、この正規の場合における点火可能な電圧範囲は、CDI回路3の制御可能な電源電圧の範囲である従来例と同じく電源電圧VBのVL(下限電圧)からVM(上限電圧)に至る範囲であって、図2に示されるように、VB=VSのラインから回路定数から規定される許容電圧幅ΔV1分だけ離れた線と、さらに許容電圧幅ΔV2分だけ離れた線とにより挟まれた図2にハッチングで示した領域Aになる。
【0027】
したがって、電源電圧の変動に対して、どの電圧に対しても一定の幅(ΔV)のみ点火可能領域があり、判定端子Sに印加する盗難可能な電圧幅が限定されるため、不正な点火が極めて困難になる。例えば、電源電圧VBが14Vの場合には、従来例の回路では2〜12Vの範囲で点火可能になるのに対して、本回路によれば9.5〜11.5Vで点火可能であり、盗難可能な電圧幅が10Vから2Vに減少する。
【0028】
【発明の効果】
このように本発明によれば、周囲環境に影響されずに、点火可能な判定範囲を常に一定にすることができるため、異なる周囲環境下において電源電圧が変化しても点火可能な判定範囲が変わることがなく、また、両定電圧ダイオードの特性を同一にしておくことにより、両者のツェナー電圧を比較する際の判定幅が狭まるため、任意の電圧印加による盗難が極めて困難になるため、盗難防止に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明が適用された車両用盗難防止装置の要部回路図。
【図2】本発明回路における判定領域を示す図。
【図3】従来の車両用盗難防止装置の要部回路図。
【図4】従来回路における判定領域を示す図。
【符号の説明】
1 キースイッチ
2 制御ユニット
3 CDI回路
4 イグニッションコイル
5 点火プラグ
6 判定用CPU
ZD 定電圧ダイオード
ZD2 判定用定電圧ダイオード

Claims (2)

  1. エンジンの点火制御を行うためのCDI回路を有する制御ユニットに電源電圧入力用の電源端子と低電圧入力用の判定端子とを設け、エンジン始動用のキースイッチに、電源電圧を前記電源端子に供給する手段と当該電源電圧よりも低い判定電圧を前記判定端子に入力するための基準定電圧素子とを設けて、前記両端子間に生じる電圧差を検出することにより点火制御を可能にするようにした車両用盗難防止装置であって、
    前記制御ユニットが、周囲環境に応じて前記基準定電圧素子と同等に変化する同一特性を有する判定用定電圧素子と、前記両端子間の電圧差と前記判定用定電圧素子による電圧差とを比較する比較手段と、前記両電圧差が一定の幅(ΔV2)内にある場合に前記点火制御を許可する点火制御許可手段とを有することを特徴とする車両用盗難防止装置。
  2. 前記制御ユニットが、前記電源端子の電圧が前記CDI回路の制御可能な電源電圧範囲である場合に前記点火制御を許可することを特徴とする請求項1に記載の車両用盗難防止装置。
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