JP3722563B2 - 車両側部のエネルギ吸収構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両側部のエネルギ吸収構造に関し、特に表皮材が被装されてなるシート内にエアバッグユニットが配設されているものの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エアバッグユニットを操舵ハンドルに配設して車体の正面衝突時に乗員の安全を図ることはよく知られている。一方、近年、例えば特開平6−64491号公報に示されているように、シート内の側部にエアバッグユニットを配設し、車体側部への衝突時に乗員の側方でエアバッグを展開させ、その展開したエアバッグで側突のエネルギを吸収して乗員を保護するようにすることが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記提案例のように、シート内にエアバッグユニットを配設する場合、シートの最外側には、通常、表皮材が被装されているので、エアバッグユニットに対応する表皮材に、エアバッグ展開圧を受けたときに容易に開口する脆弱部を設け、その開口した脆弱部からエアバッグをシート外方に展開させるようにしている。
【0004】
しかし、表皮材には、通常、表面に皺が生じないように伸張率の高いものが使用されているので、表皮材は、エアバッグ展開圧を受けると、最初にシート外側に伸張され、その後、脆弱部が開口することになる。しかも、表皮材は、シートバックの略全体或いはシートクッションの略全体の領域に亘って伸張されるので、表皮材の伸張量は極めて大きくなる。そのため、表皮材の脆弱部が開口するのが遅くなり、エアバッグをシート外方へより早く展開させるために改良の余地がある。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表皮材の構成を改良することによって、エアバッグ展開圧により脆弱部が開口するまでの表皮材の伸張量を小さくして、その開口までの時間を出来る限り短くし、エアバッグのシート外方への展開をより短時間で行わせるようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、サイドサポート部における脆弱部を挟む該脆弱部両側の表皮材にそれぞれ取り付けられ、該脆弱部両側の表皮材をワイヤにそれぞれ固定するための、該表皮材よりも伸長率が低い複数の固定布を設け、この固定布を、サイドサポート部の座面側及び反座面側のシート幅方向中央側の部分にそれぞれ設けて、該部分において表皮材及びワイヤにそれぞれ取り付けるようにした。
【0007】
具体的には、請求項1の発明では、表皮材が被装されてなるシート内の側部のサイドサポート部に、所定方向に向けて配設されたエアバッグユニットを備え、上記エアバッグユニットに対応する上記サイドサポート部の表皮材に、エアバッグ展開圧を受けて開口する脆弱部が設けられ、該開口した脆弱部からエアバッグがシート外方に展開するように構成された車両側部のエネルギ吸収構造を前提とする。
【0008】
そして、上記サイドサポート部における上記脆弱部を挟む該脆弱部両側の表皮材にそれぞれ取り付けられ、該脆弱部両側の表皮材をワイヤにそれぞれ固定するための、該表皮材よりも伸長率が低い複数の固定布が設けられ、上記脆弱部は、上記エアバッグユニットに対しシート幅方向外側に位置し、上記ワイヤは、上記エアバッグユニットに対しシート幅方向中央側に位置し、上記固定布は、上記サイドサポート部の座面側及び反座面側のシート幅方向中央側の部分にそれぞれ設けられていて、該部分において上記表皮材及びワイヤにそれぞれ取り付けられているものとする。
【0009】
このことにより、固定布により表皮材が伸張する部分がエアバッグユニットに対応する狭い範囲に制限されるので、表皮材の伸張率が高くても、その伸張量は小さくなり、エアバッグ展開圧による脆弱部の開口作用が促進される。この結果、その脆弱部が開口するまでの時間が短くなり、その開口した脆弱部からエアバッグはスムーズにシート外方に展開する。よって、エアバッグのシート外方への展開をより短時間で行わせることができる。また、エアバッグユニットをサイドサポート部内の比較的大きな空間に配設することができる。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、サイドサポート部の座面側の固定布は、該サイドサポート部基部のパッド窪み部の表皮材に取り付けられているものとする。
【0011】
この発明により、サイドサポート部基部には、通常、パッド窪み部が設けられて表皮材表面には見切りラインが形成されているが、座面側の固定布がこの既存のパッド窪み部に設けられているので、外観性が問題となる座面側に固定布やワイヤ等を設けたとしても、新たな見切りライン等が生じることはない。よって、外観上の見映えを良好に維持することができる。
【0012】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、エアバッグユニットは、シートにおいて該シートに近いサイドドア側の側部のサイドサポート部に配設されているものとする。
【0013】
このことにより、側突により乗員とその乗員に近い側のサイドドアとの間にエアバッグを容易に展開させることができ、乗員がサイドドアに衝突するのを防ぐことができる。よって、側突時に乗員のより一層の安全性を確保することができる。
【0014】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、エアバッグユニットはシートバックのサイドサポート部内に、エアバッグが該シートバックの略前方側に展開するように配設されているものとする。
【0015】
このようにすることで、乗員の座り心地性を阻害することなくエアバッグユニットをシート内に収容することができる。
【0016】
請求項5の発明では、請求項3の発明において、エアバッグユニットはシートクッションのサイドサポート部内に、エアバッグが該シートクッションの略上方側に展開するように配設されているものとする。
【0017】
このことにより、請求項4の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は、本発明の実施形態に係る車両側部のエネルギ吸収構造における自動車の前席左側のシート1を示し(尚、以下の説明では、自動車の前後左右を単に前後左右という)、このシート1は、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4を有する。上記シートクッション2の左右両端部の下部には、前後方向に延びるスライダ7,7がそれぞれ設けられ、この各スライダ7は、前後部でレール取付部材10,10を介してフロアに固定した左右の各スライドレール8に係合されてシート1の前後位置を調節することができるようになっている。また、シートクッション2の後部には、ナックル部材9が左右方向に延びる回転軸11を中心として回転可能に設けられ、このナックル部材9を介してシートバック3がシートクッション2に対して上記回転軸11回りに回転可能に連結されて、シートバック3の角度調整を行うことができるようになっている。
【0019】
上記ヘッドレスト4は、その下端面から突出したフレーム5,5が上記シートバック3の上端面に形成した2つの穴にそれぞれ差し込まれてそのシートバック3に取り付けられている。
【0020】
上記シートバック3内の後部外周部には、鋼製パイプ材からなる上下部及び左右両側部を有する枠状のシートバックフレーム13(シートフレーム)が設けられ、このシートバックフレーム13の上部には、上記ヘッドレスト4の下端面から突出した各フレーム5とそれぞれ嵌合してヘッドレスト4の上下方向の位置を調節することができる2つのヘッドレスト調節部材14,14が取付固定されている。
【0021】
上記シートバックフレーム13の左右両側部間には、シートバックフレーム13よりも細い径の線材からなる左右方向に延びる複数本のワイヤフレーム18,18,…が設けられている。この各ワイヤフレーム18は、その両端部がシートバックフレーム13の左右両側部前側にそれぞれ溶接により取付固定されている。
【0022】
上記各ワイヤフレーム18よりも前側にはパッド15が設けられ、このパッド15は、乗員がシートバック3に凭れたときに後方に逃げないように各ワイヤフレーム18によって支持されている。また、このパッド15は、その端部がシートバックフレーム13の外側から後方に回り込むようにされてそのシートバックフレーム13に支持されている。このパッド15のシート外側表面は、布地からなる表皮材19で覆われている。つまり、シート1の最外側には表皮材19が被装されている。
【0023】
上記シートクッション2の左右両端部には上方に膨らんだサイドサポート部2a,2aが、またシートバック3の左右両端部には前方に膨らんだサイドサポート部3a,3aがそれぞれ設けられ、乗員が左右方向に動かないようにサポートする役目をしている。
【0024】
上記シートバック3内においてそのシート1に近いサイドドア側の側部近傍部つまり左側のサイドサポート部3a内にエアバッグユニット21が配設されている。このエアバッグユニット21は、断面略U字状のモジュールカン22を有し、このモジュールカン22内には、奥側に点火部と爆薬とを内蔵した円筒缶状のインフレータ23が、また開口側に折り畳まれたエアバッグ24がそれぞれ収容されている。上記インフレータ23の点火部には、図示しないが、自動車の左側部への側突を検知する加速度センサから点火信号が供給されるようになっており、その点火信号により点火部が点火して爆薬が高速燃焼し、そのとき発生する多量のガスによりエアバッグ24が膨脹展開する。
【0025】
上記エアバッグユニット21は、その長手方向がシートバック3の上下方向と略一致するように配置され、そのモジュールカン22の側面にて上下2組のボルト27,27及びナット28,28で取付部材26の一端部に締結されている。この取付部材26の他端部はシートバックフレーム13に溶接により取付固定されている。このことで、エアバッグユニット21は取付部材26を介してシートバックフレーム13に固定されている。また、このエアバッグユニット21は、そのモジュールカン22の開口方向つまりエアバッグ24が展開する方向が前方に対して左側に傾くように配置されている。
【0026】
上記パッド15のシート内側表面部におけるエアバッグユニット21に対応した部位つまりエアバッグユニット21におけるモジュールカン22開口の略前方部位には、エアバッグ24の展開圧を受けて上記パッド15が破断し始める起点部となる切込溝部33が設けられ、この切込溝部33が他の部分よりも脆弱となるようにされている。この切込溝部33は、エアバッグユニット21のモジュールカン22とシートバック3の上下方向において略同じ高さの位置でかつ略同じ長さに亘って設けられている。そして、エアバッグ24が展開するとき、その展開圧によってパッド15がその切込溝部33から破断し始め、その切込溝部33の延長線上の箇所が破断するようになっている。
【0027】
上記エアバッグユニット21に対応する表皮材19つまり上記切込溝部33の略延長線上の表皮材19には、エアバッグ24の展開圧を受けて開口するように脆弱部19aが設けられている。すなわち、この脆弱部19aは、図1及び図4に示すように、上記切込溝部33とシートバック3の上下方向において略同じ高さの位置でかつ略同じ長さに亘ってその表皮材19の開口部を縫製により閉塞してなり、エアバッグ24の展開圧を受けたときにその閉塞された脆弱部19aが破断開口し、その開口した脆弱部19a及び上記パッド15の破断部から、エアバッグ24がシートバック3の外方でかつこのシート1の乗員と左側サイドドアとの間に展開するようになっている。
【0028】
上記シートバック3の座面側(前側)の左右両サイドサポート部3a,3aの基部におけるパッド15には、それぞれパッド窪み部15a,15aがシートバック3の上端部から下端部に亘って形成され、その各パッド窪み部15aに対応する表皮材19のシート表面側には、各パッド窪み部15aに沿って見切りライン19bが形成されている。この左側サイドサポート部3aのパッド窪み部15aにおけるパッド15内には、上下方向に延びる縦引張ワイヤ45が設けられている。そして、表皮材19におけるこのパッド窪み部15aに対応するシート内面側には、第1表皮固定布46の一端部が取付固定され、この第1表皮固定布46はパッド15においてパッド窪み部15a底部と縦引張ワイヤ45の箇所との間に設けたスリット15bを通り、その他端部が上記縦引張ワイヤ45に取付固定されている。この第1表皮固定布46は、例えば織物構造とすることにより表皮材19よりも伸張率が極めて低くなるようにされている。この第1表皮固定布46によってパッド窪み部15aの表皮材19が縦引張ワイヤ45方向に引っ張られている。尚、この縦引張ワイヤ45は、その長手方向と垂直な方向に力を加えられても、その方向には殆ど動かないようにされている。
【0029】
上記表皮材19には、左側サイドサポート部3aの反座面側(後側)にてシートバック3の上下方向に延びるファスナー49が設けられ、このファスナー49を外すことにより表皮材19を部分的にシート前側部分と後側部分とに分離することができるようになっている。この表皮材19のファスナー49よりも前側部分におけるそのファスナー49が取り付けられている端部のシート内面側には、上記第1表皮固定布46と同様の第2表皮固定布47の一端部が取付固定されている。この第2表皮固定布47は、表皮材19のシート後側部分とパッド15との間をシート中央側に延びた後、パッド15がなくなる箇所で略前方に曲げられ、第2表皮固定布47の他端部がエアバッグユニット21後方位置で上下方向に延びる表皮固定ワイヤ51に取付固定されている。この表皮固定ワイヤ51は、上記複数のワイヤフレーム18,18,…に取付固定され、このことで、表皮材19のシート前側部分におけるファスナー49が取り付けられている端部は、シートバックフレーム13に固定されていることになる。
【0030】
上記第1及び第2表皮固定布46,47は、エアバッグユニット21のエアバッグ24の展開圧により上記脆弱部19aが開口する前に表皮材19が伸張する部分をエアバッグユニット21に対応する範囲に制限する伸張制限手段における表皮材19固定のための固定部材とされている。すなわち、この伸張制限手段は、脆弱部19a近傍の表皮材19を縦引張ワイヤ45及びシートバックフレーム13に固定するための固定部材として上記第1及び第2表皮固定布46,47を有している。そして、この第1及び第2表皮固定布46,47は、表皮材19の脆弱部19aを挟んで該脆弱部19a両側の表皮材19に取り付けられ、エアバッグ24展開圧により脆弱部19aが開口する前に表皮材19が伸張する部分をシートバック3の略全体から左側サイドサポート部3aの範囲となるように制限している。
【0031】
以上の構成からなる車両側部のエネルギ吸収構造において、側突によりエアバッグ24が展開するときの動作について説明する。先ず、自動車の左側部への側突を加速度センサが検知すると、展開信号がインフレータ23の点火部に供給されて点火部が点火する。このことで、インフレータ23内の爆薬が高速燃焼してエアバッグ24に多量のガスが供給され、エアバッグ24が膨脹展開しようとする。そして、このエアバッグ24は、モジュールカン22の開口方向である略前方に展開しようとし、パッド15のシート内側表面に当接してその展開圧によりパッド15をシート内側から外側に押す。このため、パッド15はその脆弱な部分すなわち切込溝部33から破断し始め、切込溝部33の延長線上に略沿ってパッド15が破断される。
【0032】
次に、表皮材19の脆弱部19aが破断開口されるが、その前に脆弱部19a近傍の表皮材19がエアバッグ24の展開圧を受けてシート外側に伸張され、その伸張される時間だけその開口が遅くなる。しかし、この実施形態では、低伸張率の第1及び第2表皮固定布46,47によって脆弱部19a近傍の表皮材19がその脆弱部19a両側で縦引張ワイヤ45とシートバックフレーム13とに固定されて、表皮材19の伸張する部分が左側サイドサポート部3aの範囲に制限されているので、伸張率が高い表皮材19であっても表皮材19の伸張量は小さくなり、開口までの時間は短い。そして、その開口した脆弱部19a及び上記パッド15の破断部からエアバッグ24がシートバック3の外側前方に展開し、このシート1に座っている乗員が左側サイドドアに衝突するのを防止することができる。
【0033】
尚、表皮材19の第2表皮固定布47が取付固定されている箇所にはファスナー49が設けられているので、表皮材19をシートバック3に被装する際に、そのファスナー49を外した状態で、第2表皮固定布47を表皮固定ワイヤ51に容易に取付固定することができ、その後、ファスナー49を締めることで表皮材19の被装が完了する。また、そのファスナー49はシートバック3後面に設けられているので、外観上殆ど問題とはならない。
【0034】
したがって、上記実施形態では、エアバッグユニット21のエアバッグ24の展開圧により脆弱部19aが開口する前に表皮材19が伸張する部分をエアバッグユニット21に対応する左側サイドサポート部3aの範囲に制限する伸張制限手段が設けられているので、エアバッグ24の展開圧による脆弱部19aの開口作用が促進され、その脆弱部19aが開口するまでの時間が短くなり、その開口した脆弱部19aからエアバッグ24はスムーズにシートバック3外方に展開する。よって、エアバッグ24のシートバック3外方への展開をより短時間で行わせることができる。
【0035】
また、伸張制限手段は、脆弱部19a近傍の表皮材19を縦引張ワイヤ45及びシートバックフレーム13に固定するための固定部材として第1及び第2表皮固定布46,47を有し、この第1及び第2表皮固定布46,47は、脆弱部19aを挟んで該脆弱部19a両側の表皮材19に取り付けられているので、表皮材19が伸張する部分を確実に脆弱部19a近傍範囲に制限することができると共に、エアバッグ24の展開圧による脆弱部19aの開口作用をより一層有効に促進させることができる。よって、簡単な構成でエアバッグ24をさらに早くシートバック3外方に展開させることができる。
【0036】
さらに、第1及び第2表皮固定布46,47は、それぞれシートバック3の左側サイドサポート部3aの座面側と反座面側とに設けられ、座面側の第1表皮固定布46は、左側サイドサポート部3a基部のパッド窪み部15aの表皮材19に取り付けられているので、外観性が問題となる座面側に第1表皮固定布46及び縦引張ワイヤ45を設けたとしても、新たな見切りラインを生じさせることはなく、既存の見切りライン19bの箇所を有効に利用することができる。よって、外観上の見映えを良好に維持することができる。
【0037】
また、エアバッグユニット21がシートバック3の左側サイドサポート部3a内に配設されているので、自動車の左側部への側突により乗員と左側サイドドアとの間にエアバッグ24を容易に展開させることができ、乗員の左側サイドドアへの衝突を確実に防ぐことができる。しかも、シートバック3のサイドサポート部3aには、比較的大きな空間を設けることができる。よって、乗員の座り心地性を阻害することなくエアバッグユニット21をシート1内に収容することができ、側突時の乗員のより一層の安全化を図ることができる。
【0038】
尚、上記実施形態では、第1表皮固定布46の一端部をパッド窪み部15aにおけるパッド15内の縦引張ワイヤ45に取付固定したが、その第1表皮固定布46の一端部を縦引張ワイヤ45に取付固定する代りに、第2表皮固定布47の一端部が取付固定されている表皮固定ワイヤ51に取付固定するようにしてもよい。すなわち、パッド窪み部15a底部から縦引張ワイヤ45の箇所まで延びているスリット15bをさらにシートバック3後方に延ばしてパッド15を貫通させ、そのスリット15bを通って第1表皮固定布46がシートバック3後部の表皮固定ワイヤ51まで延びるようにし、その表皮固定ワイヤ51に第1表皮固定布46の一端部を取付固定すればよい。このようにすることで、脆弱部19a近傍の表皮材19と第1及び第2表皮固定布46,47とが閉ループ化され、その表皮材19の固定をより効果的に行うことができる。しかも、パッド15が第1表皮固定布46によってシート中央部側と左側サイドサポート部3a側とに仕切られた状態となるので、エアバッグ24の展開時にシート中央部側のパッド15がサイドサポート部3a側のパッド15に引張られて左側に移動するのが抑制され、パッド15が伸張する部分をも左側サイドサポート部3aの範囲に制限することができる。よって、エアバッグ24の展開性をより一層安定化させることができる。
【0039】
また、上記実施形態では、エアバッグユニット21をシートバック3の左側サイドサポート部3a内に配設するようにしたが、シートバック3の右側サイドサポート部3a内に配設する場合も本発明を適用することができ、乗員同士の衝突を防止することができる。そして、シートクッション2のサイドサポート部2a内に、エアバッグユニット21をそのモジュールカン22の開口が略上方を向くようにして、エアバッグ24が該シートクッション2の略上方側に展開するように配設する場合も、シートバック3のサイドサポート部3a内に配設する場合と同様に、本発明を適用することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によると、表皮材が被装されてなるシート内の側部のサイドサポート部にエアバッグユニットを備え、このエアバッグユニットに対応する上記サイドサポート部の表皮材に、エアバッグ展開圧を受けて開口する脆弱部を設け、その開口した脆弱部からエアバッグがシート外方に展開するように構成した車両側部のエネルギ吸収構造に対して、サイドサポート部における脆弱部を挟む該脆弱部両側の表皮材にそれぞれ取り付けられ、該脆弱部両側の表皮材をワイヤにそれぞれ固定するための、該表皮材よりも伸長率が低い複数の固定布を設け、この固定布を、サイドサポート部の座面側及び反座面側のシート幅方向中央側の部分にそれぞれ設けて、該部分において表皮材及びワイヤにそれぞれ取り付けるようにしたことにより、エアバッグのシート外方への展開の早期化を図ることができる。
【0041】
請求項2の発明によると、サイドサポート部の座面側の固定布を、該サイドサポート部基部のパッド窪み部の表皮材に取り付けたことにより、外観上の見映えの向上化を図ることができる。
【0042】
請求項3の発明によると、エアバッグユニットを、シートにおいて該シートに近いサイドドア側の側部のサイドサポート部に配設したことにより、側突時の乗員のより一層の安全化を図ることができる。
【0043】
請求項4の発明によると、エアバッグユニットをシートバックのサイドサポート部内に、エアバッグが該シートバックの略前方側に展開するように配設したことにより、乗員の座り心地性を良好に維持しつつ、エアバッグユニットをシート内に収容することができる。
【0044】
請求項5の発明によると、エアバッグユニットをシートクッションのサイドサポート部内に、エアバッグが該シートクッションの略上方側に展開するように配設したことにより、請求項4の発明と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図2のI−I線断面図である。
【図2】 本発明の実施形態に係る車両側部のエネルギ吸収構造におけるシートを示す斜視図である。
【図3】 シートの左側部を示す側面図である。
【図4】 シートバックにおける表皮材の脆弱部及び見切りラインを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 シート
2 シートクッション
3 シートバック
3a サイドサポート部
13 シートバックフレーム(シートフレーム)
15 パッド
15a パッド窪み部
19 表皮材
19a 脆弱部
21 エアバッグユニット
24 エアバッグ
45 縦引張ワイヤ
46 第1表皮固定布(伸張制限手段の固定部材)
47 第2表皮固定布(伸張制限手段の固定部材)
53 面ファスナー(伸張制限手段の固定部材)
Claims (5)
- 表皮材が被装されてなるシート内の側部のサイドサポート部に、所定方向に向けて配設されたエアバッグユニットを備え、
上記エアバッグユニットに対応する上記サイドサポート部の表皮材に、エアバッグ展開圧を受けて開口する脆弱部が設けられ、該開口した脆弱部からエアバッグがシート外方に展開するように構成された車両側部のエネルギ吸収構造において、
上記サイドサポート部における上記脆弱部を挟む該脆弱部両側の表皮材にそれぞれ取り付けられ、該脆弱部両側の表皮材をワイヤにそれぞれ固定するための、該表皮材よりも伸長率が低い複数の固定布が設けられ、
上記脆弱部は、上記エアバッグユニットに対しシート幅方向外側に位置し、
上記ワイヤは、上記エアバッグユニットに対しシート幅方向中央側に位置し、
上記固定布は、上記サイドサポート部の座面側及び反座面側のシート幅方向中央側の部分にそれぞれ設けられていて、該部分において上記表皮材及びワイヤにそれぞれ取り付けられていることを特徴とする車両側部のエネルギ吸収構造。 - 請求項1記載の車両側部のエネルギ吸収構造において、
サイドサポート部の座面側の固定布は、該サイドサポート部基部のパッド窪み部の表皮材に取り付けられていることを特徴とする車両側部のエネルギ吸収構造。 - 請求項1又は2記載の車両側部のエネルギ吸収構造において、
エアバッグユニットは、シートにおいて該シートに近いサイドドア側の側部のサイドサポート部に配設されていることを特徴とする車両側部のエネルギ吸収構造。 - 請求項3記載の車両側部のエネルギ吸収構造において、
エアバッグユニットはシートバックのサイドサポート部内に、エアバッグが該シートバックの略前方側に展開するように配設されていることを特徴とする車両側部のエネルギ吸収構造。 - 請求項3記載の車両側部のエネルギ吸収構造において、
エアバッグユニットはシートクッションのサイドサポート部内に、エアバッグが該シートクッションの略上方側に展開するように配設されていることを特徴とする車両側部のエネルギ吸収構造。
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1996
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