JP3722514B2 - 有機塩素化合物の分解方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は有機塩素化合物の分解方法に関するものであり、更に詳しく述べるならば有機塩素化合物の脱塩素分解法に関するものである。本発明は生物および環境に有害な有機塩素化合物含有廃液を効率よく無害化処理し、かつ必要に応じて有用な有機化合物を回収するために有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン等の有機塩素化合物は、洗浄剤、或いは反応溶剤等として、種々の産業で広く使用されている。しかし、これらの有機塩素化合物を含んだ廃液は、環境面、或いは健康衛生面から有害であるため、法規制の対象とされている。
【0003】
有機塩素化合物を含む廃液の処理方法としては、活性炭による吸着処理法、或いは曝気による揮散処理法等が一般的に行われており、活性炭吸着された有機塩素化合物は、更に焼却処分、或いは埋立処分されている。
上記の方法の他に、有機塩素化合物を完全に酸化分解してしまう方法も種々検討されている。それらの方法としては、(1)オゾンで分解する方法(特開平3−38297号公報)、(2)過酸化水素の存在下、紫外線を照射して分解する方法(特開昭63−218293号公報)、(3)高温高圧下、湿式酸化分解する方法、及び(4)過酸化水素と鉄塩で酸化分解する方法(特開昭60−261590号公報)等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法のうち、揮散処理法、或いは吸着活性炭を埋立処分する方法は、有機塩素化合物を未分解のまま処分する方法であるために、その有害性に対しては、根本的な解決策になっていない。更に、吸着活性炭を焼却処分する方法は、その燃焼過程において、有機塩素化合物の分解生成物である塩化水素、塩素等が他の有機物と反応し、より有害なポリ塩化ビフェニル、ダイオキシン等を排出すると言われている。
【0005】
一方、オゾン、或いは過酸化水素等の酸化剤によって、有機塩素化合物を酸化分解する方法は、その分解過程で、毒性の強いモノクロル酢酸、或いはジクロル酢酸等を生成し、これら有毒な化合物をそのまま排水するという問題を抱えている。
上記の他に、オゾンによる酸化処理では、有機塩素化合物の分解率が低く満足した結果が得られない。さらに過酸化水素と紫外線とを併用する方法では、処理コストが高く不経済である。さらに、湿式酸化分解法では、高温、高圧下での処理が必要であるため、装置が極めて大がかりになる等の問題がある。
【0006】
本発明は、従来技術の上記問題点を解消し、有機塩素化合物を、有害な中間生成物を生成することなく、高効率をもって、かつ安価に分解する方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、有機塩素化合物を完全に分解する方法において、上記欠点のない方法を見出すべく鋭意検討した結果、有機塩素化合物をまず苛性ソーダ等のアルカリ処理剤で脱塩素化する方法、さらに必要により脱塩素化された有機塩素化合物を過酸化水素と鉄塩で処理することにより、例えばジクロル酢酸等の有毒な中間生成物を生成することなく、効率よく有機塩素化合物を分解できることを見出して本発明を完成した。
【0008】
本発明の有機塩素化合物の分解方法は、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化水素、ジクロロエタン、およびトリクロルエタンから選ばれ、かつ活性炭に吸着されている有機塩素化合物を、アルカリ処理剤の水溶液に、90〜250℃の温度において接触させて前記有機塩素化合物を脱塩素分解し、この脱塩素分解により生成した脱塩素分解生成物と前記活性炭とを含む混合液から、前記活性炭及び前記脱塩素分解生成物含有混合液のそれぞれを分離回収し、前記分離回収された脱塩素分解生成物含有混合液を過酸化水素および鉄塩を含む酸化剤水溶液に、 pH 2〜5及び温度10〜150℃において接触させてこれを酸化分解することを特徴とするものである。
本発明方法において、前記分離回収工程と、前記酸化分解工程との間において、前記分離回収された前記脱塩素分解生成物含有混合液から、溶剤抽出法により塩素非含有有機化合物を回収し、残余の脱塩素分解生成物含有混合液を、前記酸化分解工程に供してもよい。
本発明方法において、前記脱塩素分解において、1分子当りn個の塩素を有する有機塩素化合物1当量に対して(1〜10)n当量のアルカリ処理剤を用いることが好ましい。
本発明方法において、前記回収された活性炭が、前記有機塩素化合物吸着のために再利用されることが好ましい。
本発明方法において、前記酸化剤水溶液が、COD1,000mg/リットルに対し、1,000〜20,000ml/リットルの過酸化水素および、鉄(Fe)金属量に換算して10〜20,000mg/リットルの第一鉄塩を含有することが好ましい。
本発明方法において、前記脱塩素分解生成物含有混合液から分離回収される塩素非含有有機化合物がグリコール酸塩、シュウ酸塩、ギ酸塩、およびエチレングリコールから選ばれることが好ましい。
【0019】
【作用】
本発明において、予じめ有機塩素化合物が活性炭に吸着されているものを脱塩素分解に供してもよいし、或は、活性炭に、有機塩素化合物を接触させて、それに吸着させ、その後、この有機塩素化合物吸着活性炭を、脱塩素分解に供してもよい。このように、活性炭に有機塩素化合物を吸着させることによって、脱塩素分解に供される有機塩素化合物を高濃化し、脱塩素分解効率を向上させるためにきわめて有効である。
【0020】
本発明に供される有機塩素化合物、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンおよびトリクロルエタンから選ばれる
【0021】
本発明方法において、有機塩素化合物を、アルカリ処理剤の水溶液に接触させて前記有機塩素化合物を脱塩素分解する。本発明方法に用いられるアルカリ処理剤は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリ、水酸化カルシウムなど、およびアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水溶性弱酸塩、例えば炭酸ナトリウム、および炭酸カリウムなどから選ぶことができる。好ましいアルカリ処理剤は、水酸化ナトリウムである。
【0022】
本発明方法の脱塩素分解は、90〜250℃の温度で行われ、120〜180℃の温度で行われることが好ましい。活性炭に吸着されている有機塩素化合物は、アルカリ処理剤水溶液と接触すると、容易に脱塩素分解し、塩素は、アルカリ処理剤と反応して、塩化アルカリ金属、又は塩化アルカリ土類金属となってアルカリ処理剤水溶液中に溶解してしまい、有害な有機塩素化合物、例えばクロロ酢酸などを生ずることがない。
【0023】
本発明方法の脱塩素分解において、アルカリ処理剤の使用量は、1分子当りn個の塩素原子を含む有機塩素化合物1当量(塩素に関しn当量)に対し、(1〜10)n当量であることが好ましく(1〜7)n当量であることがより好ましい。すなわち、上記有機塩素化合物1当量(塩素n当量)に対しアルカリ金属(1〜10)当量、(より好ましくは(1〜7)当量)、又はアルカリ土類金属(1〜10)/2当量(より好ましくは(1〜7)/2当量)になるように使用することが好ましい。例えば1分子当りn個の塩素原子を有する有機塩素化合物1当量(塩素原子n当量)に対し、ナトリウム(原子価=1)の水酸化物を(1〜10)n当量用いることが好ましく、(1〜7)n当量用いることがより好ましく、また、炭酸カルシウム(カルシウム原子価=2)を(1〜10)n/2当量用いることが好ましく、(1〜7)n/2当量用いることがより好ましい。
【0024】
本発明方法の脱塩素分解により得られる反応生成物混合物は、活性炭、脱塩素分解により生成した塩素非含有有機化合物、塩素化合物、およびアルカリ処理剤などを含む混合液である。本発明方法において、この脱塩素分解混合液を、活性炭と、脱塩素分解生成物含有混合液とに分離し、それぞれを回収する。分離回収された活性炭は、そのまゝ、或は必要により所要の処理、例えば、洗浄および再活性化などを施された後、再び有機塩素化合物の吸着に供され、本願発明方法に再利用することができる。活性炭の分離回収には、濾過、遠心分離などの通常の分離法を用いることができる。
【0025】
本発明方法において、活性炭を分離回収された残余の脱塩素分解生成物含有混合液が、有用な塩素非含有有機化合物を含有している場合、この混合液を、塩素非含有有機化合物と、残余の脱塩素分解生成物含有混合液とに分離し、前記塩素非含有有機化合物を回収することが好ましい。
【0026】
前記有用な塩素非含有有機化合物は、脱塩素分解に供された有機塩素化合物に対応して生成するものであるが、例えばトリクロルエチレンから生成するグリコール酸塩、テトラクロルエチレンから生成するシュウ酸塩、ジクロルメタン、クロロホルムおよび四塩化炭素などから生成するギ酸塩、およびジクロロエタンから生成するエチレングリコールなどを包含する。このような塩素非含有有機化合物の生成機構は、未だ十分に明らかではないが、例えば下記のように推測される。
【化1】
Figure 0003722514
【0027】
上記の塩素非含有有機化合物の分離回収のためには、活性炭を分離除去された脱塩素分解生成物含有混合液を中和し、これに適宜の抽出処理、例えばグリコール酸に対しては、エチルメチルケトンによる抽出処理を施し、抽出液から抽出溶剤を蒸発除去すればよい。
【0028】
本発明方法により得られた脱塩素分解生成物含有混合液、又は、塩素非含有有機化合物を分離回収した場合、残余の脱塩素分解生成物含有混合液を中和し、これを過酸化水素および鉄塩を含む酸化剤水溶液に接触させて、これを酸化分解することができる。
上記中和には、硫酸、塩酸、硝酸等を用いることが好ましい。
【0029】
本発明方法において、第1鉄塩は、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硝酸第一鉄、および硝酸第二鉄などから選ぶことができ、特に、硫酸第一鉄を用いることが好ましい。
【0030】
本発明方法において、酸化分解反応系のpHは2〜5に調整されることが好ましく、2.5〜4に調整されることがより好ましい。酸化分解において、COD(化学的酸化要求量)1,000mg/リットルに対して、過酸化水素を1,000〜20,000mg/リットル用いることが好ましく、2,000〜10,000mg/リットル用いることがより好ましく、また、鉄塩を、金属鉄量に換算して、10〜20,000mg/リットル用いることが好ましく、40〜10,000mg/リットル用いることがより好ましい。
【0031】
本発明方法における酸化分解は、10〜150℃の温度で行われることが好ましく、特に過酸化水素の分解無効化を少なくするために、20〜80℃の温度で行われることがより好ましい。また酸化分解時間には制限はないが、COD濃度、および反応温度を考慮して、10分〜300分に設定されることが好ましく、10〜60分であることがより好ましい。
【0032】
本発明方法は例えば、図1に示されている工程に従って行われることが好ましい。図1において、脱塩素分解装置1には、ヒーター2を有する反応室3が形成されている。反応室3には活性炭が収容され、この反応室に導管4を通して有機塩素化合物が導入され、活性炭に吸着される。この有機塩素化合物を送入するときは、バルブ5を開いて、反応室内の空気を除去し、バルブ6を閉じておく。吸着が終了したならば、バルブ5を閉じ、バルブ6を開いたままアルカリ処理剤水溶液を導管7より反応室3内に導入し、反応室3内がアルカリ処理剤水溶液で満たされたならば、バルブ6を閉じ、反応室3内温度を所望温度に調整して、脱塩素分解を行なう。反応室内温度が所望温度に達したとき、バルブ6を開き、予め用意した残部のアルカリ処理剤水溶液を道管7から反応室3に導入し、さらに脱塩素分解を行なう。
【0033】
脱塩素分解生成物混合液は、バルブ6を開くと同時に、活性炭から分離されて中和室8に導入される。
反応室3に残った活性炭に対して、洗浄、乾燥、および所望により再活性化処理を施し、次回脱塩素分解に供する。
【0034】
中和室8に導入された脱塩素分解生成物含有混合液を、中和剤(例えば硫酸水溶液で中和し、これを酸化分解室9に導入して、所望温度において導管10より鉄塩、導管11より過酸化水素を導入し、中和された脱塩素分解生成物含有混合液に酸化分解を施す。
【0035】
必要により中和された脱塩素分解生成物含有混合液を、抽出室12に導入して、混合液中の所望塩素非含有有機化合物を抽出回収し、残余液を導管13を経て酸化分解室11に導入してもよい。酸化分解された混合液は、排出管14より排出される。
上記の本発明方法により有機塩素化合物は、有害化合物を生成することなく効率よく分解される。
【0036】
【実施例】
本発明方法を下記実施例によりさらに説明する。
実施例1
容量500mlのハステロイ製オートクレーブに、トリクロルエチレン3.16g(全塩素量2.55g)を吸着させた活性炭10gと1規定NaOH400mlを入れ、これらの混合物を攪拌しながら150℃で1時間脱塩素処理を行った。処理後、反応処理液中の塩素イオン量を東亜電波工業(株)製塩分分析計により測定したところ、塩素イオン量は、2.54gであった。(脱塩素化率:99.6%)
尚、この反応処理液を下記のGC−MS,CIAにより分析したところ、ジクロル酢酸等の含塩素有害物質は認められなかった。
【0037】
脱塩素処理後の反応処理液100ml(COD:980mg/l)に過酸化水素3,500mg/l、硫酸第一鉄10,000mg/lを加えて、混合液のpHを3.0に調整し、室温で1時間酸化分解した。該処理後のCODは、39mg/lであり、COD除去率は、96%であった。
脱塩素化率、COD、及び有害物質等の測定方法は、下記の通りである。(以下の実施例においても同じ)
(1)脱塩素化率(%)
=〔(反応処理液中の塩素イオン量)/(処理TCEの全塩素量)〕×100
(2)CODの測定
JIS K0102:過マンガン酸カリウムにより酸素消費量を測定した。
(3)有害物質の定性
ヒューレットパッカード社製GC−MS、ウォーターズ社製キャピラリー電気泳動分析装置(CIA)により定性した。
【0038】
実施例2
(脱塩素化工程)
内径1.5cm、長さ30cmの反応管に、6.04g(全塩素量4.88g)のトリクロルエチレンを吸着させた活性炭20gを充填し、これをドライオーブンに入れ、用意しておいた10規定NaOH溶液100mlの一部をポンプで送液し、反応管内をこのNaOH溶液で満たした後、150℃に加熱した。反応管が150℃に達したところで反応管の液抜出口のバルブを開き、液を抜出しながら残部のNaOH溶液を約30分間かけて反応管(反応管内の温度は、150℃に保持)に送液し、脱塩素化反応を行った。その後、温水100ml、及び水100mlで反応管を十分に洗浄した。
【0039】
抜出口から捕集された全ての抜出し液(洗浄水も含む)[反応処理液]中の塩素イオン量を東亜電波工業(株)製塩分分析計により測定したところ4.87gであり、脱塩素化率は、99.8%であった。
【0040】
(酸化分解工程)
上記で得た反応処理液のCODは、2,090mg/lであった。この液をpH3.0に調整した後、下記の条件で酸化分解して、それぞれ下記の結果を得た。
▲1▼ 反応処理液100mlに、過酸化水素17,500mg/l、硫酸第一鉄50,000mg/lを添加して、室温で1時間酸化分解処理した時のCOD除去率は95.3%であった。
▲2▼ 反応処理液200mlをオートクレーブに入れ、過酸化水素17,500mg/l、硫酸第一鉄200mg/lを添加して、120℃で30分間処理した時のCOD除去率は97.0%であった。
【0041】
実施例3
(再生回数と活性炭吸着能の変化)
トリクロルエチレン6.12gを吸着した該活性炭20gに対して、実施例2の方法と同様な方法で脱塩素化処理を施し、その後、この活性炭を水100mlで十分に水洗、乾燥して、活性炭を再生した。(第1回目の再生処理)
再生された活性炭に、トリクロルエチレン6.21g吸着させた後、脱塩素化処理、洗浄処理を行い、再度、活性炭を再生した。(第2回目の再生処理)
上記の操作を10回繰り返し、10回の再生処理を行い、再生回数が活性炭吸着能に与える影響を、下記の方法によって測定し、下記の結果を得た。
再生処理を繰り返すことにより、活性炭の吸着能力は徐々に低下するが、その低下の度合いは小さく、活性炭は、脱塩素化処理後、水で洗浄し、乾燥して再使用できることが確認された。
【0042】
[トリクロルエチレン吸着能の測定法]
JIS K1474に記載されている方法に準拠し、粒状活性炭に1,000ppm のトリクロルエチレンを含む空気を2リットル/min の割合で通し、質量が一定になった時の試料の増量からトリクロルエチレン吸着能を求めた。(吸着温度:25℃)
[再生回数と活性炭吸着能の変化]
再生活性炭のトリクロルエチレン吸着能を、活性炭100gに対するトリクロルエチレンの重量により下記に示す。
Figure 0003722514
【0043】
実施例4
内径1.5cm、長さ30cmの反応管に5.90g(全塩素量5.25g)のクロロホルムを吸着させた活性炭20gを充填し、ドライオーブンに入れ、用意しておいた10規定NaOH溶液100mlの一部をポンプで送液し反応管内をこの溶液で満たした後、120℃に加熱した。反応管が120℃に達したところで反応管の液抜出口のバルブを開き、液を抜出しながら残部のNaOH溶液を約30分間かけて反応管(反応管内の温度は、120℃に保持)に送液して脱塩素化反応を行った。その後、温水100mlと水100mlで反応管を十分に洗浄した。
【0044】
抜出口から捕集された全ての抜出し液(洗浄水も含む)[反応処理液]中の塩素イオン量を東亜電波工業(株)製塩分分析計により測定したところ5.23gであり、脱塩素化率は、99.6%であった。
上記で得られた反応処理液のCODは、290mg/lであった。この反応処理液100mlに、過酸化水素3,500mg/l、硫酸第一鉄20,000mg/lを添加し、そのpHを2.5に調製した後、室温で1時間酸化分解処理した。COD除去率は93.1%あった。
【0045】
実施例5(塩素非含有有機化合物の回収)
実施例1と同一の方法を行った。但し、脱塩素分解工程から得られた脱塩素分解生成物含有混合液硫酸水溶液により中和し、これにその500ml当り、50mlのエチルメチルケトンを加えて抽出操作を3回行った。この抽出により回収されたグリコール酸ナトリウムは1.96gであって、トリクロルエチレン3.16gに対する変換率は83.3%であった。グリコール酸ナトリウムの定量はCIAを用いて行った。
【0046】
実施例6(塩素非含有有機化合物の回収)
実施例2と同一方法を行った。但し、脱塩素分解工程から得られた脱塩素分解生成物含有混合液に、実施例5と同様の抽出操作を施したところ、3.04gのグリコール酸ナトリウムが、変換率67.4%で回収された。
【0047】
実施例7(塩素非含有有機化合物の回収)
実施例4と同一の方法を行った。但し、得られた脱塩素分解生成物含有混合液に、実施例5と同様の抽出操作を施したところ、1.89gのギ酸ナトリウムが変換率56.7%で回収された。
【0048】
【発明の効果】
本発明方法によれば、有機塩素化合物を2次汚染のおそれなくほぼ完全に分解することができ、かつ処理後の活性炭は、水洗浄、及び乾燥することにより、容易に再生することができ、再度有機塩素化合物吸着剤として使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の工程説明図。
【符号の説明】
1…脱塩素分解装置
2…ヒーター
3…反応室
4…有機塩素化合物供給導管
5,6…バルブ
7…アルカリ処理剤供給導管
8…中和室
9…酸化分解室
10…鉄塩供給導管
11…過酸化水素供給導管
12…抽出室
13…導管
14…排出管

Claims (6)

  1. トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化水素、ジクロロエタン、およびトリクロルエタンから選ばれ、かつ活性炭に吸着されている有機塩素化合物を、アルカリ処理剤の水溶液に、90〜250℃の温度において接触させて前記有機塩素化合物を脱塩素分解し、この脱塩素分解により生成した脱塩素分解生成物と前記活性炭とを含む混合液から、前記活性炭及び前記脱塩素分解生成物含有混合液のそれぞれを分離回収し、前記分離回収された脱塩素分解生成物含有混合液を過酸化水素および鉄塩を含む酸化剤水溶液に、 pH 2〜5及び温度10〜150℃において接触させてこれを酸化分解することを特徴とする有機塩素化合物の分解方法。
  2. 前記分離回収工程と、前記酸化分解工程との間において、前記分離回収された前記脱塩素分解生成物含有混合液から、溶剤抽出法により塩素非含有有機化合物を回収し、残余の脱塩素分解生成物含有混合液を、前記酸化分解工程に供する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記脱塩素分解において、1分子当りn個の塩素を有する有機塩素化合物1当量に対して(1〜10)n当量のアルカリ処理剤を用いる、請求項1に記載の方法。
  4. 前記回収された活性炭が、前記有機塩素化合物吸着のために再利用される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記酸化剤水溶液が、COD1,000mg/リットルに対し、1,000〜20,000ml/リットルの過酸化水素および、鉄(Fe)金属量に換算して10〜20,000mg/リットルの第一鉄塩を含有する、請求項に記載の方法。
  6. 前記脱塩素分解生成物含有混合液から分離回収される塩素非含有有機化合物がグリコール酸塩、シュウ酸塩、ギ酸塩、およびエチレングリコールから選ばれる、請求項2に記載の方法。
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