JP3721041B2 - 環境ブロック及びその施工方法 - Google Patents
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【発明が属する技術分野】
本発明はコンクリートの強度を低下させることなく、法面に極力均等な荷重を加え、耐久性に優れ、且つ、植生用、魚巣用及び野鳥保護用等の各種目的に合わせて使用できる環境ブロック、その製造方法及びその施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、河川の護岸は環境保全を配慮した環境ブロック及びその施工法が求められている。その要請に応えるため、
(1)金属製の網の中に自然石を詰め込むカゴマット工法、
(2)前面に植生のための土砂を充填できる空間を設けた大型ブロック工法、
(3)自然石を積み上げる工法などが採用されている。
【0003】
これらの工法は(1)のカゴマットに関しては、マット素材が金属表面にメッキ加工したものであるため、数年後には腐蝕し再工事を必要とする。カゴ製品と使用鉄線に安全策が講じられていないため、近づくと怪我をするおそれがあって危険である。数量に限りがある自然石を大量に使用するため、山を削る必要があり、他方で自然破壊を行っている矛盾した方法である。
(2)の前面に土砂を充填できる大型ブロックは、前面強度が必然的に低下するため、これを補強する必要上控長が長くなり、一層大型化し、コンクリートの使用量も増加し、製品によっては雑草が繁殖しがちであり、しかも大型なため河川の弯曲部に対応しきれない欠点があった。
(3)の方法は自然石の量に限りがあり自然石の切り出しは自然破壊である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、現地発生の天然素材を使用し、コンクリートの局部的使用量の低減を極力排除して、全体としてのコンクリート使用量の増加を抑制し、耐久性を高め、その用途に従い、植生用、魚巣用或いは野鳥保護用等と多くの目的に対応できる環境ブロックの技術が求められていた。しかも植物用の場合はブロック内に充填できる土の量の多寡が最終的に植物の生育を支配するため、少量の土で大量の土と同等の効果が得られる環境ブロックが求められていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決することを目的とし、その構成は、形状が六角柱又は四角柱の面部と、面部より径の小さい脚部と、面部と脚部の間に介在する胴部とからなる積ブロックにおいて、面部の表面の中央部に穿孔を有し、該穿孔がブロック内部においてその径を広げて空洞を形成し、該空洞が脚部外周面の胴部に近い部位、胴部外周面の脚部に近い部位及び胴部は脚部の連結部おいずれかに開口していることを特徴とし、一体成形する型枠に、面部表面にハンマーで叩いて容易に開口する程度の厚みの穿孔用表面を残して、空洞形成用内部型枠を挿入してコンクリートを打設し、面部表面のコンクリートを叩いて所定の大きさの穿孔を設けて製造し、施工するにあたっては、環境ブロックを配置して、その空洞に土を充填し、空洞内の土と地山との間に、太さ1〜10mmの植物の木質部を挿入して、積ブロックの胴部及び脚部間の間隙に胴込コンクリートを打設することを特徴とする。
【0006】
すなわち、本発明は積ブロックにおいて排水用の孔として地山と連通するプラスチックパイプを挿入していた孔を、ブロック内部において拡大して空洞を形成するものである。
植生用に使用する場合には表面の開口部である穿孔を植物に合わせた大きさにすることにより雑草の繁殖を防止する。胴込コンクリートを貫通して、篠竹やソダなどの近辺で充分に供給できる素材を埋設し、一端を空洞中の土に他端を地山に挿入する。篠竹やソダがコンクリート中に埋設されることにより、篠竹やソダの周囲に空隙が生じ、空洞中の土と地山との間で水分の流通が自由に行われ、空洞の面積が小さいにも関わらず安定した植生を維持することができる。篠竹やソダ等の天然素材は自然に腐蝕し、次第に太い通路を形成するため、水の供給が充分であるばかりでなく、養分も地山から供給することができる。また、製造方法に起因して表面の穿孔の大きさは調節可能である。空洞に土を充填しない場合には水中であれば魚巣を提供し、水面上であればかわせみ等の野鳥の巣を提供できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は面部が短い正六角柱形状の環境ブロックの斜視図、図2はその断面図である。本発明環境ブロック18は、面部1の形状が短い六角柱、四角柱等、隣接するブロックの周辺同士を相互に密着させて法面を隙間なく積み上げることができる積ブロック19の1種である。六角形の場合は図4に示すように積み上げ、四角形の場合はレンガ積み、真っ直ぐに積み上げる方法、網代状に積み上げる方法等により隙間なく積み上げることができる。
積ブロックは面部1、径が面部1よりはるかに小さい脚部2及び面部1と脚部2との間に介在する胴部3よりなる。従来の積ブロックは地山の含水量の増大した場合の強大な土圧に逃がすための水抜き孔14として、面部1の表面から脚部又は胴部の外周面に開口する貫通孔を設け、この貫通孔にビニルパイプ等を挿入して地山と連通させていた。
【0008】
本発明環境ブロックは、面部を下にした型枠に薄い穿孔用表面6を残して、環境ブロック18の裏面に達する内部型枠を挿入してコンクリートを打設する。成形後内部型枠を引き抜くことにより内部型枠の外周と同型の空洞5がブロック内に形成される。内部型枠は、図1、図2に示されるように、脚部外周の胴部外周に近い部位と胴部外周の脚部外周に近い部位にまたがって挿入されることが多いが、脚部外周のみから挿入しても、胴部外周のみから挿入しても差支えない。
【0009】
コンクリートが硬化した後、穿孔用表面6の最も薄い部位を、ハンマーで叩くと、図1及び図2に示すような穿孔4が容易に形成される。更に叩くことにより最大で空洞5と同一径の穿孔を開口させることができる。したがって、穿孔用表面6はハンマーで叩くことにより容易に開口できる程度の厚さであることを要する。
環境ブロック18の製造法は特に限定しないが、水配合量の少ないスランプ0の超硬練りコンクリートを型枠内に充填し、強い圧力と激しい振動により締め固め、即時脱型して養生する即時脱型コンクリートは作業効率、製品の美観、強度の点で好ましい方法である。
【0010】
穿孔4の大きさは環境ブロック18の用途に応じて調節できる。茎部の細い植物を植える場合には穿孔4を小さくすることにより雑草の繁茂を防ぐことができる。同様に茎が太くなる植物の場合には広い穿孔にする。一部、好ましくは下部の一部を残して大きな穿孔4を設けると、水中に没する場合には、魚類の隠れ場所を提供し、ほとんど水没することのない場所に設ける場合にはかわせみやせきれい等の野鳥の巣を提供することができる。
【0011】
図3は図1に示す環境ブロックを用いて河川の法面を被覆した斜視図、図4は図3の法面を矢印IVの方向から見た説明図である。本発明環境ブロックを施工するにあたっては、環境ブロック18の空洞5に土のう7を充填する。土のう7は麻、木綿等の天然素材からなる織布或いは不織布の袋に現地で発生する土を詰めたものが好ましい。土のう7は空洞5内に挿入が容易で可及的に空洞に密着する大きさが好ましい。
【0012】
先ず川底に基礎コンクリート12を打設し、積ブロックの一部又は全部を環境ブロックに代えて法面を被覆する。地山の土を作業に差支えない程度に一時的に排除し、面部1を法面に揃えて相互に密着させて積み上げると、裏面にブロック間の空隙が形成される。この空隙を通過し、空洞5から地山8に達する長さの篠竹、ソダ等の植物の木質部10の一端を土のう7に挿入する。その上で、空隙に胴込コンクリート9を打設して法面を固定する。この際、植物の木質部10は打設したコンクリートから突出している。植物の木質部の太さは1〜10mm、好ましくは2〜8mm、より好ましくは3〜5mmである。胴込コンクリート9が硬化した後、作業のために撤去した土を戻して地山8を復元する。したがって、植物の木質部10は地山8と土のう7を繋ぐことになる。
【0013】
植物の木質部10は1本でもよく、数本をまとめて挿入してもよい。コンクリートは硬化すると収縮する特性を有するため、収縮後、植物の木質部のような異物の周辺には細い空隙ができる。この空隙が地山と空洞内の土との間で水分や養分の授受を行う通路を形成する。更に植物の木質部であるため、時の経過と共に腐敗して土に戻り、植物の養分になると同時に地山と空洞内の土との間の通路が拡大することになり、空洞に植えた植物は根を空洞より深く延ばすことが可能になる。すなわち、植物のための土を充填する空間を確保するために、必然的に発生するコンクリート使用量の低減を極力少なくしながら、植物のための環境を整えることができる。
【0014】
胴込コンクリート9を打設する際、コンクリートが空洞5内に流入しないように、空洞露出面を油紙、段ボール紙等の多少耐水性を有する天然素材からなるシートで保護する。天然素材からなるシートは後に腐敗して土に戻る。13は天端であり、14は水抜き孔、15は成長し始めた植物であり、つた類を植えた場合は法面に沿って広く繁茂していく。16は魚巣、17は野鳥の巣である。
【0015】
環境ブロックによっては、空洞5に土のうを詰めずに空洞のまま法面を形成することもある。すなわち、水面下にある環境ブロックの場合は、単に空洞を設けておけば魚の隠れ家を提供することになる。この場合も細い通路により空洞5が地山8と通じているいることが好ましい。また、法面の冠水するおそれのない部位にも空洞5に土を詰めない環境ブロックを配置することもできる。この場合は穿孔4を比較的大きくし、小枝などを予め挿入しておけは野鳥が一層巣作りし易い状態になる。
【0016】
本発明は河川の法面に限定せず、一般道路に面した法面にも好ましく施工することができる。施工にあたり、強度の要求度が現場により異なる。特に高強度を要求される場合には環境ブロック18に対する積ブロック19の比率を増し、強度の要請が比較的ゆるやかな部位には環境ブロック18の比率を増加させ、現場に柔軟に対応することができる。
また、本発明においてはブロックとブロックとの接合面に目地モルタルを使用してもよいが、使用しなくとも差支えない。使用しない場合には目地から苔が生えて緑化に貢献する。
【0017】
積ブロック工法を改良した本発明は下記の諸効果を有する。
(1)元来が積ブロック工法であるため、長年の実績があり安心できる護岸工法である。
(2)法面前面の土を充填する部位が緑化面積に比して小さく、コンクリートの強度低下が少ない。土の量が少なくとも地山と連通した細い通路により植物は良く生育する。
(3)大型ブロックに比較し、ブロックが小さいため(m2 11個以内)カーブに対応できる。
(4)穿孔の大きさを自由に選べ、空洞内は工夫により野鳥の巣、魚巣、昆虫の棲息、植物の生育等、広範囲に利用できる。
(5)目地モルタルを使用しないため目地部分からの緑化も期待できる。
(6)土圧の安定度に合わせて胴込コンクリートの厚さを決定し、コンクリートの無駄を省く。
(7)植物のための水の通路として、篠やソダ等現地で調達できる材料を使用するため、野山の荒廃を防止できる。
(8)永久的護岸工であるため、一度施工すると、以後の管理を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は面部が短い正六角柱形状の環境ブロックの斜視図である。
【図2】図2は図1の縦断面図である。
【図3】図3は図1に示す環境ブロックを用いて法面を被覆した斜視図である。
【図4】図4は図3の矢印IVの方向から法面を見た説明図である。
【符号の説明】
1 面部
2 脚部
3 胴部
4 穿孔
5 空洞
6 環境ブロック
7 土のう
8 地山
9 胴込コンクリート
10 植物の木質部
11 天然素材からなるシート
12 基礎コンクリート
13 天端
14 水抜き孔
15 成長し始めた植物
16 魚巣
17 野鳥の巣穴
18 環境ブロック
19 積ブロック
Claims (7)
- 形状が六角柱又は四角柱の面部と、面部より径の小さい脚部と、面部と脚部の間に介在する胴部とからなる積ブロックにおいて、
面部の表面の中央部にハンマーで叩くことにより容易に開口できる穿孔用表面を有し、穿孔用表面の一部が開口して穿孔を形成し、該穿孔がブロック内部においてその径を広げて空洞を形成し、該空洞が脚部外周面の胴部に近い部位、胴部外周面の脚部に近い部位及び胴部は脚部の連結部おいずれかに開口していることを特徴とする環境ブロック。 - 空洞が植物を支持するに足る土を充填できる広さであることを特徴とする請求項1記載の環境ブロック。
- 形状が六角柱又は四角柱の面部と、面部より径の小さい脚部と、面部と脚部の間に介在する胴部とからなる積ブロックであって、面部の表面の中央部に穿孔を有し、該穿孔がブロック内部においてその径を広げて空洞を形成し、該空洞が脚部外周面の胴部に近い部位、胴部外周面の脚部に近い部位及び胴部は脚部の連結部おいずれかに開口している環境ブロックを、
一体成形する型枠に、面部表面にハンマーで叩いて容易に開口する程度の厚みの穿孔用表面を残して、空洞形成用内部型枠を挿入してコンクリートを打設し、面部表面のコンクリートを叩いて所定の大きさの穿孔を設けることを特徴とする環境ブロックの製法。 - コンクリートが0スランプの即時脱型コンクリートであることを特徴とする請求項3記載の環境ブロックの製法。
- 穿孔用表面の厚さが一端で最も薄く、上記一端から最も離れた他端がやや厚くなっていることを特徴とする請求項3又は4記載の環境ブロックの製法。
- 積ブロックの面部の辺と辺を密着させて法面を積み上げるに際し、形状が六角柱又は四角柱の面部と、面部より径の小さい脚部と、面部と脚部の間に介在する胴部とからなる積ブロックであって、面部の表面の中央部に穿孔を有し、該穿孔がブロック内部においてその径を広げて空洞を形成し、該空洞が脚部外周面の胴部に近い部位、胴部外周面の脚部に近い部位及び胴部は脚部の連結部おいずれかに開口している環境ブロックを配置し、
環境ブロックの空洞に土を充填し、空洞内の土と地山との間に、太さ1〜10mmの植物の木質部を挿入して、積ブロックの胴部及び脚部間の間隙に胴込コンクリートを打設することを特徴とする環境ブロックの施工方法。 - 環境ブロックの空洞内に土を充填せず、空洞のまま残すことを特徴とする請求項6記載の環境ブロックの施工方法。
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