JP3719857B2 - 半導体用樹脂ペースト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はIC、LSI等の半導体素子を金属フレーム等に接着する樹脂ペーストに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子を金属フレームに接着させる工程、いわゆるダイボンディングエ程において、樹脂ぺ一ストを用いる方法では半導体素子を金属フレームにマウント後硬化する必要がある。従来はオーブンによるバッチ方式での硬化が主流であった。ところが近年半導体素子を金属フレームにマウントするダイボンダーの横に硬化炉を接続させ、ダイボンディング、硬化、ワイヤーボンディングの工程を同一ライン上で一括して行え、生産性の向上が図れるインライン方式が採用され、今後さらに増加する傾向にある。
【0003】
一方、このインライン方式は硬化装置が従来のオーブンに比べ非常に高価であリ、同一工場内でインライン方式とオーブンによるバッチ方式が混在する場合が多い。このような場合インライン方式用、バッチ方式用と硬化方式毎に半導体素子接着用樹脂ぺ一ストを使い分けるのは在庫管理や作業者にとって非常に困難とのことからどちらの方式でも硬化が可能な半導体素子接着用樹脂ペーストを求められている。
【0004】
インライン方式では従来のバッチ方式に比べ硬化時間の制約があり、例えば硬化時間が従来のバッチ方式では150〜200℃で60〜120分であったが、インライン方式では150〜200℃で15〜120秒でなければならない。これらの硬化条件の相違はエポキシ樹脂を用いた半導体素子接着用樹脂ぺ一ストに用いる硬化剤の反応性に起因する。主に短時間で硬化するインライン硬化用の半導体素子接着用樹脂ぺ一ストの場合、オーブン硬化時の接着強度等の性能がインライン硬化時に比べ非常に劣る。逆にオーブン硬化用の半導体素子接着用樹脂ペーストでは、インライン方式の制約される硬化時間内では硬化が終了しない。
【0005】
そのためオーブン硬化とインライン硬化の併用は非常に困難な間題であった。更に、インライン硬化の場合、温度が急激に上昇するため、樹脂ぺ一スト内に気抱が発生し、半導体素子の傾きや接着強度の低下といった間題が発生した。
又、硬化性を速くするための弊害として、常温でも反応が進行し易く、可使時間(ポットライフ)が短くなるといった間題もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はIC製造において一般的なインライン硬化方式(ホットプレート硬化、HP硬化)、バッチ方式(オーブン硬化)両方で硬化が可能で、充分な接着力、低応力性を有し、ポットライフの長い樹脂ペーストを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は(A)一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a1)とエポキシ基を有する反応性希釈剤(a2)とからなり、その重量比(a1):(a2)が70:30〜100:0である液状エポキシ樹脂、(B)フェノール硬化剤、(C)潜在性硬化剤、(D)一般式(2)で示されるシラン化合物、(E)有機ボレート塩及び(F)無機フィラーを必須成分とし、成分(A)100重量部に対し、成分(B)が20〜60重量部、成分(C)が0.5〜5重量部であり、かつ成分(A)(B)(C)の合計100重量部に対し、成分(D)が10〜60重量部、成分(E)が0.5〜10重量部である半導体用樹脂ペーストである。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
(式中、R1:エポキシ基を有する脂肪族又は芳香族官能基、
R2:アルコキシ基、
R3:アルキル基又はアルコキシ基)
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる液状エポキシ樹脂(A)は一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a1)とエポキシ基を有する反応性希釈剤(a2)との重量比が70:30〜100:0である液状エポキシ樹脂であり、一般式(1)で示されるエポキシ樹脂は分子量により各種のものがあるが、分子量が小さく常温で液状のものが、配合するときの作業性及び配合後の粘度の点から好ましい。
【0011】
一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a1)と混合するエポキシ基を有する反応性希釈剤(a2)にはn−ブチルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエステル、スチレンオサイド、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル等があり、これらの内の1種類あるいは複数種と併用可能である。
式(1)で示されるエポキシ樹脂(a1)とエポキシ基を有する反応性希釈剤(a2)との重量比は70:30〜100:0が接着性の点から好ましい。
【0012】
本発明は他のエポキシ樹脂を混合しても良い。上記液状エポキシ樹脂と混合する場合の他のエポキシ樹脂としては,例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック類とエピクロルヒドリンとの反応により得られるポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ、ジグリシジルヒダントイン等の複素環式エポキシ、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、アリサイクリックジエポキシーアジペイトのような脂環式エポキシがあり、これらの内の1種類あるいは複数種と併用可能である。
【0013】
本発明に用いるフェノール硬化剤(B)はエポキシ樹脂の硬化剤として用いられる。本発明に用いるフェノール硬化剤はエポキシ基と反応して架橋にあずかる活性水素基を分子当り2個以上有するフェノール化合物であることが望ましい。このようなフェノール化合物の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、o-ヒドロキシフェノール、m-ヒドロキシフェノール、p-ヒドロキシフェノール、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シク口へキシリデンビスフェノール、またフェノール、クレゾール、キシレノール等の1価フェノール類とホルムアルデヒドとを稀薄水溶液中強酸性下で反応させることによって得られるフェノールノボラック樹脂、1価フェノール類とアクロレイン、グリオキザール等の多官能アルデヒド類との酸性下の初期縮合物や、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン等の多価フェノール類とホルムアルデヒドとの酸性下の初期縮合物などであり、これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0014】
フェノール硬化剤(B)の配合量は液状エポキシ樹脂(A)に対し20〜60重量%使用するのが接着性及び低応力性の点から好ましい。
【0015】
本発明に用いる潜在性硬化剤(C)はエポキシ樹脂の硬化剤として用いられ、例えばアジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、P-オキシ安息香酸ジヒドラジド等のカルボン酸ジヒドラジドやジシアンジアミドである。潜在性硬化剤を用いるとフェノール硬化剤単独で硬化した場合に比べ著しく熱時接着強度が高くなる。又潜在性硬化剤はフェノール硬化剤よりも当量が小さいため、併用することにより粘度がそれ程高くなく、又潜在性であるため保存性にも優れたペーストを得ることができる。潜在性硬化剤(C)の配合量は液状エポキシ樹脂(A)に対し、0.5〜5重量%使用するのが好ましい。0.5重量%未満では熱時接着強度が弱く、5重量%を越えると低応力性が低下する。
【0016】
本発明で用いられるシラン化合物(D)は一般式(2)で示されるもので、希釈剤としての作用及び接着性を付与するために用いられる。
【0017】
一般式(2)におけるR1はエポキシ基を有する脂肪族又は芳香族官能基であるが、これはペーストの樹脂成分にエポキシ樹脂を使用しているために、エポキシ基以外の例えばビニル基、アミノ基、メルカプト基等であると相溶性や保存性に悪影響を与えるが、エポキシ基であれば、これらに悪影響を与えない。R2はアルコキシ基であることによりペースト硬化後に充分な接着力が得られ、アルコキシ基以外では充分な接着力が得られない。R3はアルキル基又はアルコキシ基であればよく、アルコキシ基であればより強い接着力が得られる。このようなシラン化合物としては、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、8-(3,4-エポキシシク口へキシル)エチルメトキシシラン等がある。シラン化合物(D)の配合量は液状エポキシ樹脂(A)、フェノール硬化剤(B)、潜在性硬化剤(C)の総量に対し10〜60重量%とするのが好ましい。10重量%未満では充分な接着強度が得られず、60重量%を越えると低応力性が低下する。
【0018】
本発明に用いる有機ボレート塩(E)は硬化促進剤として用いられ、イミダゾール類、第3級アミン類、ホスホニウム類とテトラフェニルボレートとの塩として得られるものである。テトラフェニルボレートとの塩にしないものを硬化促進剤に用いると保存性が極めて悪く実用性がない。有機ボレート塩を用いた場合は硬化性を損なわずに保存性にも極めて優れた樹脂ペーストが得られる。有機ボレート塩としては、例えば1,8-ジアザビシク口(5,4,0)ウンデセン-7・テトラフエニルボレート塩、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート塩等が挙げられる。有機ボレート塩(E)の配合量は液状エポキシ樹脂(A)、フェノール硬化剤(B)、潜在性硬化剤(C)の総量に対し、0.5〜10重量%使用するのが好ましい。0.5重量%未満では充分な硬化性が得られず、10重量%を越えると保存性が低下する。
【0019】
本発明に用いる無機フィラー(F)としては銀粉、シリカフィラー等がある。銀粉は導電性を付与するために用いられ、ハロゲンイオン、アルカリ金属イオン等のイオン性不純物の含有量は10ppm以下であることが好ましい。又銀粉の形状としてはフレーク状、樹脂状や球状等が用いられる。必要とするペーストの粘度により、使用する銀粉の粒径は異なるが、通常平均粒径は2〜10μm、最大粒径は50μm程度のものが好ましい。又比較的粗い銀粉と細かい銀粉とを混合して用いることもでき、形状についても各種のものを適宜混合してもよい。
【0020】
本発明に用いるシリカフィラーは平均粒径1〜20μmで最大粒径50μm以下のものである。平均粒径が1μm以下だと粘度が高くなり、20μm以上だと塗布又は硬化時に樹脂分が流出するのでブリードが発生するため好ましくない。最大粒径が50μm以上だとディスペンサーでペーストを塗布するときに、ニードルの出口を塞ぎ長時間の連続使用ができない。又比較的粗いシリカフィラーと細かいシリカフィラーとを混合して用いることもでき、形状についても各種のものを適宜混合してもよい。
【0021】
又、必要とされる特性を付与するために銀粉、シリカフィラー以外の無機フィラーを使用してもよい。
【0022】
本発明における樹脂ペーストには、必要により用途に応じた特性を損なわない範囲内で、顔料、染料、消泡剤、界面活性剤、溶剤等の添加剤を用いることができる。本発明の製造法としては、例えば各成分を予備混合して三本ロール等を用いて、ペーストを得て、真空下脱抱すること等がある。
【0023】
【実施例】
本発明を実施例で具体的に説明する.各成分の配合割合は重量部とする.
【0024】
実施例1〜8、比較例1〜11
表1に示した組成の各成分と無機フィラーを配合し、三本ロールで混練して樹脂ペーストを得た。この樹脂ペーストを真空チャンバーにて2mmHgで30分間脱泡した後、以下の方法により各種の性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0025】
用いる原料成分
・一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(エポキシ樹脂a1):式(1)において、R=メチル基
粘度1400mPa・s、エポキシ当量106
【0026】
【化1】
【0027】
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(BPA):粘度9000mPa・s、エポキシ当量185
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(BPF):粘度5000mPa・s、エポキシ当量170
・反応性希釈剤(a2) :フェニルグリシジルエーテル
・フェノール硬化剤(B):ビスフェノールF
フェノールノボラック樹脂(PN、数平均分子量600、水酸基当量104)
・潜在性硬化剤(C):ジシアンジアミド(DDA)
・シラン化合物(D):γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(γ−GPTMS)
・有機ボレート塩(E):テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート塩(TPPK)
・無機フィラー(F):
銀粉 :粒径が0.1〜50μmで平均粒径3μmのフレーク状銀粉
シリカフィラー:平均粒径5μmで最大粒径20μmのシリカフィラー
【0028】
評価方法
粘度 :E型粘度計(3°コーン)を用い25℃、2.5rpmでの値を測定し粘度とした。
弾性率 :テフロンシート上にペーストを幅10mm長さ約150mm
厚さ100μmに塗布し、200℃オーブン中60分間硬化した後、引っ張り試験機で試験長100mm引っ張り速度1mm/分にて測定し得られた応力ーひずみ曲線の初期勾配より弾性率を算出した。
接着強度 :2×2mmのシリコンチップをペーストを用いて銅フレームにマウントし、200℃中60秒間熱板上(HP硬化)及びオーブンを使用し200℃60分(OV硬化)で硬化した。硬化後マウント強度測定装置でを用い25℃,250℃での熱時ダイシェア強度を測定した。
反り量 :6×15×0.3mmシリコンチップを銅フレーム(200μm厚さ)に導電性樹脂ペーストでマウントし、200℃中60秒間熱板上(HP硬化)及びオーブンを使用し200℃60分(OV硬化)で硬化した後、チップの反りを表面粗さ計(測定長13mm)で測定した。
ポットライフ:25℃の恒温槽内に樹脂ペーストを放置した時の粘度が初期粘度の1.2倍以上増粘するまでの日数を測定した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
実施例1〜8では熱時接着強度、低応力性(低弾性率、低反り量)及びポットライフ長い優れたペーストが得られるが、比較例1はビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用したため低応力性が悪く、反り量が大きくなりチップクラックが発生した。比較例2はビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用したため低応力性が悪く、反り量が大きくなりチップクラックが発生した。比較例3は反応性希釈剤の配合量が多いため、接着強度が著しく低下した。比較例4はフェノール硬化剤の配合量が少ないため、接着強度が著しく低下した。比較例5はフェノール硬化剤の配合量が多いため、反り量が大きくなりチップクラックが発生した。比較例6は潜在性硬化剤の配合量が少ないため、接着強度が著しく低下した。比較例7は潜在性硬化剤の配合量が多いため、反り量が大きくなりチップクラックが発生した。比較例8はシラン化合物の配合量が少ないため、接着強度が著しく低下した。比較例9はシラン化合物の配合量が多いため、反り量が大きくなりチップクラックが発生した。比較例10は有機ボレート塩の配合量が少ないため、接着強度が著しく低下した。比較例11は有機ボレート塩の配合量が多いため、ポットライフが著しく短くなった。
【0032】
【発明の効果】
本発明はIC製造において一般的なインライン硬化方式(ホットプレート硬化、HP硬化)、バッチ方式(オーブン硬化)両方で硬化が可能で、充分な接着力、低応力性を有し、ポットライフの長い樹脂ペーストを提供するものである。
Claims (1)
- (A)一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a1)とエポキシ基を有する反応性希釈剤(a2)とからなり、その重量比(a1):(a2)が70:30〜100:0である液状エポキシ樹脂、(B)フェノール硬化剤、(C)潜在性硬化剤、(D)一般式(2)で示されるシラン化合物、(E)有機ボレート塩及び(F)無機フィラーを必須成分とし、成分(A)100重量部に対し、成分(B)が20〜60重量部、成分(C)が0.5〜5重量部であり、かつ成分(A)(B)(C)の合計100重量部に対し、成分(D)が10〜60重量部、成分(E)が0.5〜10重量部である半導体用樹脂ペースト。
R2:アルコキシ基、
R3:アルキル基又はアルコキシ基)
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