JP3717454B2 - 浮上式水防装置の排水構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の開口間口や地下室への入口等に設置して、洪水時等に水の浸入を防止する浮上式水防装置に関し、詳しくは、浮上式水防装置の集水ピットに流入した水を排水する排水構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の浮上式水防装置は、地中に埋設した集水ピットの内部に水防板を格納し、この水防板が集水ピット内への水の流入時に水の浮力により浮上し、水を堰止めるようになっている。
そして、この浮上式水防装置の排水構造は集水ピットに排水管が存在せず、集水ピット内を溜まった水は自然排水又は排水ポンプによって外部へ排水されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の浮上式水防装置は、雨水等の水が集水ピット内に流入し、集水ピット内に溜まった水が水防板を浮上させる喫水線まで達した時、水防板が水の浮力で自動的に浮上する仕組みになっている。
しかし、集水ピット内に流入された水が喫水線まで達せずに降雨等が止んだ時には、そのまま集水ピットに水が残り、これが繰り返されると洪水ではない通常の降雨時でも水防板が浮上することになる問題点を有している。
【0004】
上記点より本発明は、通常の降雨時に雨水等の水が集水ピット内に流入しても排水が可能で、水防板が浮上することがなく、又洪水時で冠水した時に水防板が浮上し、浮上した後、水が引いた時に集水ピット内の溜まった水の排水を行い、水防板を集水ピット内に格納できるようにした浮上式水防装置の排水構造を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1の本発明浮上式水防装置の排水構造は、通路の床面に埋設した集水ピットの内部に水防板が格納され、この水防板が集水ピット内への水の流入時に水の浮力により地上に浮上する浮上式水防装置において、集水ピットに常時開口して排水機能を有する排水口を設け、この排水口と排水路を排水管で連結し、排水路からの逆流水と集水ピット内への流入水により水防板が浮上することを特徴とするものである。
【0006】
このような構成を有する本発明は、通常の降雨時は集水ピット内に流入した水は排水管を通って常時排水路に排水され、集水ピット内に水は溜まらないので水防板は浮上しない。
【0007】
そして、洪水等で冠水した時は、排水路内も水が溢れるので排水管から排水されることはなく、集水ピット内に水が溜まり、水防板は浮上する。
又、排水路が溢れると、排水路から逆流して集水ピット内に入った水により水防板は浮上する。
【0008】
そして、水が引けば排水路の水も引いてくるので、集水ピット内に溜まった水は排水管から排水路に排水され、水防板は集水ピット内に降下し格納される。
【0009】
次に、請求項2の本発明浮上式水防装置の排水構造は、通路の床面に埋設した集水ピットの内部に水防板が格納され、この水防板が集水ピット内への水の流入時に水の浮力により地上に浮上する浮上式水防装置において、前記の排水管に流量調節バルブ及び排水ポンプが設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
このような構成を有する本発明は、通常の降雨時は集水ピット内に流入した水は、排水管の流量調節バルブを操作し僅かに開いておくことにより、普段は集水ピット内に入った水は常時排水されて水防板は浮上しない。
又、洪水等で冠水した時は、僅かに開いた流量調節バルブにより排水管の排水能力を越えて集水ピット内に水が流入され溜まるので水防板は浮上する。
そして、水が引けば集水ピット内の水は排水管から徐々に外部へ排水され、水防板は集水ピット内に降下し格納される。
【0011】
又、人為的に早く水防板を格納したい時には、排水ポンプで強制的に排水しても良く、又流量調節バルブを全開して排水し、排水後は流量調節バルブを元の位置に戻しておく。
尚、排水管は排水ポンプが設けられているので、低所に設置された排水管から排水される水を高所へ排水可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は請求項1の本発明浮上式水防装置の排水構造の一実施の形態を示す縦断側面図、図2は同上の横断平面図、図3は請求項2の本発明浮上式水防装置の排水構造の一実施の形態を示す縦断側面図である。
【0013】
而して、図1及び図2において、図中1は通路の床面Fの下方に形成された金属製の集水ピットであり、この集水ピット1は前部壁2A、後部壁2B及び底壁3、及び両側に地上に延長して開口部を対向させて立設した断面が略コ字形のガイド支柱4から構成され、上面は開口されて地中部が箱形状に形成されている。
5は底壁3に設けた排水口6に一端が接続する排水管であり、この排水管5の他端は集水ピット1の底より低位置にある排水路7に接続している。排水口6は前後の壁2A、2Bの下部に設けてもよい。
又、排水路7として雨水管、下水管、排水溝等が含まれる。そして、集水ピット1は地下室の入口等の通路の床面に進入方向と直角に埋設されたり、建築物の開口間口等に沿って路面に埋設される。
【0014】
8は集水ピット1の前面の道路側の近傍に集水ピット1の長手方向に平行して集水ピット1と同じ床面に開口して埋設された金属製の1次ピットであり、この1次ピット7の上部と集水ピット1の上部は連通孔9で接続されている。
10は雨水が流入する隙間を有する1次ピットの蓋であり、ブレーチング等が使用される。
【0015】
11は集水ピット1内に格納された水防板であり、この水防板11は外側がアルミニウム板で直方体状の箱体に形成され、内部にポリエスチレンフォーム等の比重の軽い水に対して浮力を有する材料が充填されている。
そして、水防板11の両側面の上部と下部に戸車等の滑り部材12が内蔵され、滑り部材12の一部が水防板11の側面より突出している。
この滑り部材12の突出部分とガイド支柱4との間には、水防板11がバランスよく上昇した時に支えないように、又異物等が挾まらないように間隔が設けられている。
【0016】
13は水防板11の上面の長手方向にわたって設けられたアルミニウム製のカバープレートであり、通常の降雨時に雨が集水ピット1内に流入しないように集水ピット1の上面開口部を覆っている。
このカバープレート13の両側端部にガイド支柱4の地上側の開口部を覆う断面略C形の支柱カバー14が、ガイド支柱4と開口部を対向させてガイド支柱4と間隔をおいて立設されている。
【0017】
この支柱カバー14は、ガイド支柱4の前面側及び後面側に上下方向に設けたガイドレール15との間に水防板11がバランスよく上昇した時に支えないように、又異物等が挾まらないように間隔を設けて係合可能となっている。
これにより、通常の降雨時に雨がガイド支柱4より集水ピット1内に流入しないようにしていると共に、ゴミ等が入り込むのを防止している。
又、カバープレート13が集水ピット1の上面開口部を閉鎖している状態で、水防板11の下面と集水ピット1の底壁3との間には間隙が設けられている。
【0018】
16は両側のガイド支柱4の地上側の内側で上下方向に前後に設けた断面が略コ字形の金属製のガイド壁であり、この前後のガイド壁16は下部が上部よりも広い間隙でテーパー状に対向してガイド支柱4にボルト及びナット等の止着部材や溶接等により取り付けられている。
【0019】
17は水防板11の両側端部の上下方向に設けた断面が略コ字形の側部縁枠であり、17Aは水防板11の前面側の側部縁枠、17Bは水防板11の後面側の側部縁枠である。
この側部縁枠17A、17Bは開口部を外側にしてビス等の止着部材で水防板11に固定され、開口部にパッキン18A、18Bが嵌着されている。
又、側部縁枠17A、17Bの側面の巾は、水防板11の最上位置の浮上時にパッキン18A、18Bがガイド壁16の内側に圧接するように下部が広く、上部が細いテーパー形状に形成されている。
【0020】
19は水防板11の下部の長手方向に設けた断面が略コ字形の下部縁枠であり、19Aは水防板11の前面側の下部縁枠、19Bは水防板11の後面側の下部縁枠である。
この下部縁枠19A、19Bは開口部を外側にしてビス等の止着部材で水防板11に固定され、開口部にパッキン20A、20Bが嵌着されている。
又、下部縁枠19A、19Bの側面の巾は、側部縁枠17A、17Bの側面の下端部の巾と同一巾となっている。
【0021】
そして、水防板11の最上位置の浮上時に水防板11の前面側の下部縁枠19Aのパッキン20Aは、集水ピット1の前部壁2Aの上部に長手方向に延設したガイド板21Aに、又水防板11の後面側の下部縁枠19Bのパッキン20Bは、集水ピット1の後部壁2Bの上部に長手方向に延設したガイド板21Bに夫々圧接する。
尚、図中22は側部縁枠17A、17Bの側面及び下部縁枠19A、19Bの上下面に夫々当着したシール部材である。
【0022】
ガイド板21A、21Bは金属製で、ガイド壁16の傾斜に連続して下方広がりのテーパー形状の壁面に形成され、上部は外側へ90°路面と平行に屈曲して水平部を形成し、下部は壁面側へ屈曲し、集水ピット1の壁面2A、2Bに当接している。
前部壁2A側のガイド板21Aは上部の水平部が1次ピット8と接続する連通孔9の天井部を構成し、路面より稍下方位置で前部壁2Aの上部を外側へ90°路面と平行に屈曲した水平部が連通孔9の床部を構成している。
【0023】
そして、連通孔9の集水ピット1の長手方向に所定の間隔で桟23が介在されている。
又、前部壁2A側のガイド板21Aの下部は、所定の間隔で切り欠かれて水導入部24が形成されている。
【0024】
次に、このような構成を有する本発明浮上式水防装置の排水構造の作用を説明すれば、通常の降雨で1次ピット8内から溢れた水は、連通孔9を経て集水ピット1内に流入すると、集水ピット1の底壁3に設けた排水口6から排水管5を通って常時排水路7に排水され、集水ピット1内に水は溜まらないので水防板11は浮上しない。
【0025】
又、洪水等で冠水すると排水路7内も水が溢れるので、排水管5から排水されることはなく、集水ピット1内に水が溜まり、水防板11は浮上する。
又、排水路7が溢れると、排水路7から逆流して集水ピット1内に入った水により水防板11は浮上する。
【0026】
そして、水防板11が浮上した後、水が引けば排水路7の水も引いてくるので、集水ピット1内に溜まった水は排水管5から排水路7に排水され、水防板11は集水ピット1内に降下し格納される。
【0027】
次に、図3の請求項2の本発明浮上式水防装置の排水構造は、請求項1の浮上式水防装置と同一の構成の水防装置であるため、浮上式水防装置の構成については説明を省略する。
尚、図3において、図1及び図2と相当する箇所にはそれと同一符号を付してある。
【0028】
本発明は、地下駐車場等地下施設の傾斜路の前方に、傾斜路と直交して横方向に浮上式水防装置を設置すると好適である。
即ち、排水管5の先方側が地上に露出しており、露出した排水管5に流量調節バルブ25、及び排水ポンプ26が設けられている。
【0029】
このような構成を有する本発明浮上式水防装置の排水構造の作用を説明すれば、排水管5の流量調節バルブ25を僅かに開けて、通常の降雨時に集水ピット1内に流入した水を常時外部へ排水できるようにしておけば、水防板11は浮上しない。排水管5は排水溝等に連絡される。
又、洪水等で冠水した時には、僅かに開いた流量調節バルブ25により、排水管5の排水能力を越えて集水ピット1内に水が流入され溜まるので、水防板11は浮上する。そして、水が引けば集水ピット1内の水は排水管5から徐々に排水され、水防板11は集水ピット1内に降下し格納される。
【0030】
又、人為的に早く水防板11を格納したい時は、排水ポンプ26を使用したり、流量調節パッキン25を全開にして排水する。そして、排水後は流量調節バルブ25を元の位置に戻しておく。
尚、排水ポンプ26で低所に設置された排水管5から高所へ排水可能となる。
【0031】
本発明は以上の通りであるが、浮上式水防装置はかかる構成に限定されるものではなく、集水ピットの近傍に1次ピットを設けずに集水ピットの上方に天井壁を形成し、天井壁に直接雨水等の流入口を設けた構成としてもよく、又集水ピットを鉄筋コンクリート製としてもよいことは勿論である。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、通常の降雨時に雨水等が集水ピット内に流入しても、排水が可能であるから水防板が浮上することがないので、突然の浮上による危険性がないと共に、洪水等で路面が冠水した時は電力や人力によることなく、自動的に水防板が浮上して水を堰止めることができる。
そして、水が引いた時は集水ピット内に溜まった水は排水管から排水されるので、効率のよい排水が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の本発明浮上式水防装置の排水構造の一実施の形態を示す縦断側面図である。
【図2】請求項1の本発明浮上式水防装置の排水構造の一実施の形態を示す横断平面図である。
【図3】請求項2の本発明浮上式水防装置の排水構造の一実施の形態を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
1 集水ピット
4 ガイド支柱
5 排水管
6 排水口
7 排水路
8 1次ピット
9 連通孔
11 水防板
12 滑り部材
13 カバープレート
14 支柱カバー
15 ガイドレール
16 ガイド壁
18A、18B、20A、20B パッキン
25 流量調節バルブ
26 排水ポンプ
Claims (2)
- 通路の床面に埋設した集水ピットの内部に水防板が格納され、この水防板が集水ピット内への水の流入時に水の浮力により地上に浮上する浮上式水防装置において、集水ピットに常時開口して排水機能を有する排水口を設け、この排水口と排水路を排水管で連結し、排水路からの逆流水と集水ピット内への流入水により水防板が浮上することを特徴とする浮上式水防装置の排水構造。
- 排水管に流量調節バルブ及び排水ポンプが設けられていることを特徴とする請求項1記載の浮上式水防装置の排水構造。
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