JP3717270B2 - 半導体素子の特性試験方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は半導体素子、特にダイオードの特性試験方法関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ダイオードの特性試験のうち、サージ順電流試験、熱抵抗試験があるが、従来これらの試験はそれぞれ別の装置を用いて別個の方法により行なわれていた。
図5はサージ順電流試験装置の概略を示す図であるが、その装置を用いた試験方法は次のようにして行なわれていた。
すなわち、被試験素子(ダイオード)1の両端にサージ順電流試験回路2から決められた定格の数倍のサージ電流(IFSM)、例えばIFSM=30〜250A程度の電流を通電して被試験素子1の両端電圧を測定するという試験を行なっている。
なお、上記サージ順電流を通電する際の電流波形は、例えば図7に示すように6ms程度の方形波あるいは図8に示す10ms程度の正弦波である。これらの波形の電流を通電することによって被試験素子1の定格最高接合温度を越えることになるが、素子の寿命期間中許容できる程度の順電流である。
【0003】
一方、熱抵抗試験(ΔVF)は、図6に示すような試験装置と方法で行なっている。
すなわち、被試験素子1に熱抵抗試験回路3と熱抵抗判定回路4を接続し、該熱抵抗試験回路3からケルビン法により被試験素子1に所定の電流を通電するとともに、熱抵抗判定回路4によりΔVF電圧を測定するようにしている。
例えば図9に示すようなタイミングで順電流Isを通電し、図10に示すように、その時の電圧降下VF1,VF2を測定し、その結果から熱抵抗特性の良否を判別するようにしている。この時の試験手順をさらに詳細に述べると次のようになる。
【0004】
(1)まず、図9に示すように微少電流Im1を2ms通電し、図10に示すようにその時の電圧降下値VF1を測定する。
(2)次に、微少電流Im1の通電開始から2ms経過した後に、順電流Isを10ms通電し、素子接合部の温度を上昇させる。
(3)次に、順電流Isの通電開始から10ms経過した後に、図9に示すように再び微少電流Im2を2ms通電し、図10に示すように、通電中に電圧降下値VF2を測定する。
(4)最後に、ΔVF=VF1−VF2)を求め、予め定めた上限値と下限値の間にΔVFが収まっているか否かにより熱抵抗の良否を判定している。
【0005】
例えば、具体例として定格電流(IF)=10A、逆電圧(VR)=35Vのダイオード素子について試験した結果を示す。上記ダイオード素子に対してサージ順電流(IFSM)=180A、微少電流(Im1,Im2)=80mA、順電流(Is)=20Aとした場合に、熱抵抗(ΔVF)=0〜100mVとなり、この値が下限値<ΔVF<上限値の範囲にあるか否かを判別し熱抵抗の良否を決めていた。
【発明が解決しようとする課題】
(1)従来は上記のような試験装置と方法によりサージ順電流試験、熱抵抗試験を行ない被試験素子に定格電流の数倍の電流をそれぞれの試験毎に通電するため、被試験素子に余分な負担を与え素子の寿命を低下させるおそれがあるとともに、特性試験自体を2度行なわなければならず、手数と時間を要していた。
(2)サージ電流試験用の装置及び熱抵抗試験用の装置というように、類似の試験装置を別個に製作しなければならず、経済性に乏しかった。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、サージ順電流試験と熱抵抗試験とを1つの装置を用いて同時行ない被試験素子に余分な負担与えず、かつ、試験装置としても経済性に優れた半導体素子の特性試験方法提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体素子の特性試験方法は、半導体素子に対して微小電流が通電せしめられる熱抵抗試験の第1の期間中に前記半導体素子の両端の電圧降下値を測定し、次いで、熱抵抗試験の第2の期間中に前記半導体素子に対して大電流を通電し、次いで、前記半導体素子に対して微小電流が再び通電せしめられる熱抵抗試験の第3の期間中に前記半導体素子の両端の電圧降下値を測定し、次いで、熱抵抗試験の第1の期間中に測定された電圧降下値と熱抵抗試験の第3の期間中に測定された電圧降下値とに基づいて前記半導体素子の熱抵抗特性の良否を判定するようにした半導体素子の特性試験方法において、熱抵抗試験の第2の期間中に測定された前記半導体素子の両端の電圧降下値に基づいて前記半導体素子のサージ順電流特性の良否を判定することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図を参照して詳細に説明する。
本発明の半導体素子の特性試験装置は、図1に示すようにサージ順電流試験回路12と、熱抵抗試験回路13とが共通の通電手段14に含まれている。また、この通電手段14から所定の電流が被試験素子、ここではダイオード素子DUTの両端に通電された時に、その時の電圧降下値を測定するための電圧測定判別回路15を備えており、これらと上記のダイオード素子DUTとはケルビン法により接続されている。
【0009】
次に、上記の特性試験装置を用いて試験電流Iが図2に示すタイミングで通電できるようにする。
なお、図2において、Im1=Im2は微少電流であり、Ioはサージ順電流(IFSM)兼順電流(IS)であり、ここでIoを便宜上、単一の試験順電流という。
次に、微少電流Im1,Im2及び単一の試験順電流Ioを図3に示したタイミングで通電した際に、その時の電圧降下値を図4に示したタイミングで測定し、サージ順電流試験の瞬時電圧降下値(MVF)及び熱抵抗(ΔVF)を判定する。
以下に、その測定手順を詳細に述べる。
【0010】
(1)まず、微少電流(Im1)を2ms通電し、微少電流(Im1)の通電開始から1ms経過後のタイミングで電圧降下値(VF1)を測定する。
(2)次に、単一の試験順電流(Io)を10ms通電し、単一の試験順電流(Io)の通電開始から5.5ms経過したところで、瞬時電圧降下値(MVF)を測定する。
(3)次いで、Ioの通電開始から10ms経した後に、Im2を2ms通電し、Im2の通電中に電圧降下値(VF2)を測定する。
(4)上記の結果から、瞬時電圧降下値MVFが、下限値<MVF<上限値の範囲内にあるか否かによりサージ順電流試験の結果を判定する。一方、熱抵抗(ΔVF)は、ΔVF=VF1−VF2により求め、予め設定した数値と比較し、良否の判定を行なう。
【0011】
次に、具体例として定格電流(IF)=10A、逆電圧(VR)=35Vのダイオード素子について試験した結果を示す。
なお、従来はサージ順電流(IFSM)=180A、微少電流(Im1,Im2)=80mA、順電流(Is)=20Aに設定したが、本発明装置を用いる場合は、単一の試験順電流Io=180Aとなり、他は従来と同様である。
すなわち、本発明装置を用いて試験する場合には、IFSMとIsとが単一の試験順電流Io=180Aとなる。この場合、ΔVF=15〜40mV(従来と同じ)、MVF=0〜4Vとなる。
【0012】
ところで、従来のサージ順電流試験におけるサージ順電流IFSMが本発明ではIoとなるが、その通電時間が6msであった。これに対して本発明装置を用いる場合には10ms通電時間が長くなる。しかしながら、サージ順電流試験としては問題がなく、むしろ定格の数倍の電流を断続的に通電する従来の方法の方が素子に多大な悪影響を与える可能性があるということができる。本発明は、単一の試験順電流により試験をし、この点を改善したものである。一方、本発明の場合、熱抵抗試験でIsがIoとなり、Is定格の数倍になるが、Isは素子接合部の温度上昇を目的として通電するもので、ここではそれほど問題となるものではない。
【0013】
本発明では瞬時電圧降下値(MVF)を測定することにより、素子の接合状態が容易に把握できる特徴を有する。
すなわち、予めMVFの上限値及び下限値を設定しておき、MVF>上限値及びMVF<下限値の場合には不良品とするような判定が可能となる。
【0014】
【発明の効果】
以上のように、本発明によればサージ順電流試験回路と、熱抵抗試験回路とが共通の通電手段に含まれ、断続的に試験電流を通電することなく、単一の試験順電流によりサージ順電流試験と熱抵抗試験とができるようにしたので概略次のような効果がある。
▲1▼サージ順電流試験、熱抵抗試験とも被試験素子に定格電流の数倍の電流をそれぞれの試験毎に通電することがないので、該素子に余分な負担を与え寿命を低下させるおそれがない。また、特性試験を2度行なう必要がなく、従ってその手数と時間を節約できる。
▲2▼類似の試験装置を別個に製作しなくても良く、経済性に富む。
▲3▼サージ順電流試験で単一の試験順電流Ioを通電中に瞬時電圧降下値MVFを測定することにより素子の接合部の状態が容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の特性試験装置のブロック図である。
【図2】本発明の特性試験装置を用いて単一の試験電流を通電する場合の概念的な説明のためのタイミングチャートである。
【図3】本発明の特性試験装置を用いて単一の試験電流を通電する場合の具体的な説明のためのタイミングチャートである。
【図4】上記図3の通電中に電圧降下値を測定するためのタイミングチャートである。
【図5】サージ順電流試験を行なう場合の従来の特性試験装置のブロック図である。
【図6】熱抵抗試験を行なう場合の従来の特性試験装置のブロック図である。
【図7】従来のサージ順電流試験を行なう場合に通電する方形波のタイミングチャートである。
【図8】従来のサージ順電流試験を行なう場合に通電する正弦波のタイミングチャートである。
【図9】従来の熱抵抗試験を行なう場合に順電流を通電する場合のタイミングチャートである。
【図10】上記図9の通電中に電圧降下値を測定するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
12 サージ順電流試験回路
13 熱抵抗試験回路
14 通電手段
15 電圧測定判別回路
Io 単一の試験順電流
MVF 瞬時電圧降下値
VF1 電圧降下値
VF2 電圧降下値
Im1 微少電流
Im2 微少電流
DUT ダイオード素子(被試験素子)

Claims (1)

  1. 半導体素子に対して微小電流が通電せしめられる熱抵抗試験の第1の期間中に前記半導体素子の両端の電圧降下値を測定し、次いで、熱抵抗試験の第2の期間中に前記半導体素子に対して大電流を通電し、次いで、前記半導体素子に対して微小電流が再び通電せしめられる熱抵抗試験の第3の期間中に前記半導体素子の両端の電圧降下値を測定し、次いで、熱抵抗試験の第1の期間中に測定された電圧降下値と熱抵抗試験の第3の期間中に測定された電圧降下値とに基づいて前記半導体素子の熱抵抗特性の良否を判定するようにした半導体素子の特性試験方法において、熱抵抗試験の第2の期間中に測定された前記半導体素子の両端の電圧降下値に基づいて前記半導体素子のサージ順電流特性の良否を判定することを特徴とする半導体素子の特性試験方法。
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