JP3716805B2 - 光ピックアップ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクに光を照射して情報信号の記録又は再生を行う光ピックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学記録媒体である光ディスクは、動画、音声、コンピューター用データなどの情報信号(データ)保存のために用いられている。また、この光ディスクは、良好な量産性と低コスト性のため、広く普及している。この光ディスクに対しては、記録される情報信号の高密度化、大容量化の要望が強く、近年においてもこの要望はますます強くなっている。
光ディスクにおいて記録される情報信号の記録密度を上げるには、この情報信号の読み出しに用いる光束の短波長化と、該光束を光ディスク上に集光させる対物レンズとして高い開口数(NA)のレンズを使うことの2つが有効である。
このため、CD(Compact Disc)からDVD(Digital Versatile Disc,Digital Video Disc)への発展の過程では、波長が780nmから650nmに短縮され、対物レンズのNAが0.45から0.60に高められたので、記録密度は650MBから4.7GB(片面)へ約7倍の向上が達成されている。
また、記録型の光ディスクシステムは、光磁気方式、相変化方式共に各種あるが、波長とNAは、ほぼ前記の値に近いものが使われている。
これらのシステムにおいては、現在は、ガラスあるいは樹脂を成形した、単玉型の対物レンズが使われている。これは、レンズの両面を非球面形状として収差の補正を行ったレンズであり、成形で作れることから、コストと量産性に優れているため、もっとも普及している。
ここで、光ディスクの記録密度を更に高めて、更に大容量の記憶システムを実現するためには、更に波長の短い、いわゆる青色レーザーと、よりNAの高い対物レンズとの組み合わせのシステムが期待されている。
【0003】
例えば光源の波長が450nm以下で、開口数が0.7以上の対物レンズを用いた光ピックアップにおいては、軸上色収差と、球面収差の色収差を同時に補正することが不可欠である。ここで、軸上色収差とは波長変化による焦点位置の変化であり、球面収差の色収差とは波長変化による球面収差である。なお、本明細書中においては、球面収差の色収差について、波長誤差による球面収差と呼ぶ。このように光源の波長が450nm以下で、開口数が0.7以上の対物レンズの場合に、軸上色収差と球面収差の色収差の補正が必要になる理由は次のとおりである。
【0004】
第1に、波長が450nm以下では、対物レンズを構成するガラスなどの光学材料の分散が大きくなる。このため、大きな軸上収差が発生すると同時に、球面収差の発生が大きくなる。
【0005】
第2に、対物レンズの開口数が大きくなると、レンズの周辺での屈折角が大きくなるため、僅かな波長変化に対しても、大きな屈折角の変化が生じる。このため球面収差の発生が大きくなる。
【0006】
軸上色収差と波長誤差による球面収差は、色収差という点では共通しているが、次のように異なった理由により生じ、それぞれ特徴を有する。
【0007】
軸上色収差は、ピックアップ装置においては、レーザダイオードにおける高周波重畳による波長に広がりと、光ディスクへの記録時のレーザダイオードにおける急激なパワー変化に伴う急激な波長変化、さらにはレーザダイオードの個体差による波長誤差に由来している。
【0008】
パワー変化による軸上色収差は、パワー変化と同時に発生し、変化が急激であるので、対物レンズを焦点方向に駆動するフォーカスサーボによっては追随することはできない。対応すべき波長の範囲ないし変化幅は、±1〜±2nm程度と狭い。また、レーザダイオードが高周波重畳されている場合には、波長に幅のある光束が同時にレンズに入射されることになるので、特定の波長以外の成分に対して、常に焦点誤差が発生することになる。
【0009】
光ピックアップ装置においては、波長に拡がりがある場合や波長が急激に変化した場合は、軸上色収差によるフォーカス誤差が生じて、特性の劣化を来す。このデフォーカス(焦点誤差)による収差の劣化は、かなり大きいので、補正が不可欠である。
【0010】
一方、波長誤差による色収差は、個別のレーザダイオードの特性のばらつきによる波長のばらつきと、レーザダイオードの温度変化による波長変化とによるものである。
【0011】
この波長誤差による色収差には、一定であるか、変化しても比較的ゆったりとしているという特徴がある。また、対応すべき波長の範囲は、±5〜±10nmくらいと前述した軸上色収差の場合に比べて狭い。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来、色収差の補正には、屈折レンズとは逆極性の色収差特性を有する回折レンズが有用であることが知られている。最も簡単には、凸レンズとされた回折レンズと、その回折レンズと焦点距離の絶対値が等しい屈折型の凹レンズを組み合わせて、レンズパワーをゼロとしたレンズ系を対物レンズの前に置けば色収差の補正が出来ると言い得る。
【0013】
ここで回折レンズは、平板上にブレーズ構造が形成されたものであって、設計波長において設計基準焦点距離において軸上光線が無収差で集光されるように設計されていて、かつ設計波長で高い回折効率を持ったレンズのことである。
【0014】
しかしながら、例えば開口数0.7以上で波長450nm以下のように、開口数が高く波長が短い光源に単レンズの対物レンズを適用する場合には、波長が設計基準波長からずれた場合に発生する波長誤差による球面収差が大きくなり、単純な回折レンズでは、充分な補正が行えないと言う問題点があった。
【0015】
一方、特開平6−82725号公報によれば、対物レンズの発生する色収差を完全に補正する、回折レンズの設計方法が示唆されている。この内容は、前記公報の発明者による「回折光学素子入門(オプトロニクス社)」94ページに詳細が述べられている。
【0016】
しかし、この方法によれば、波長誤差による球面収差を補正することが出来るものの、補正レンズを光学系の固定部においた場合、対物レンズのトラッキング動作で生じるレンズシフトで大きな収差が出るという問題がある。すなわち、トラッキング動作によって駆動される対物レンズと固定部の他の光学系との光軸がずれることにより、コマ収差を主成分とする収差が生じ、光ディスクの記録再生に著しい悪影響を与える。
【0017】
この問題は、補正レンズを対物レンズと一体で動かせば回避できるが、これら対物レンズ及び補正レンズを駆動するアクチュエーターの可動部が重くなり、アクチュエーターの周波数特性が低下し、必要な帯域が確保できないという問題が生じる。
【0018】
本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、対物レンズと他の光学系の光軸がずれても収差を抑制するような光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明に係る光ピックアップ装置は、回転する光ディスクのトラックに沿って光を照射して情報信号の記録又は再生を行うものであって、光源と、前記光源から射出された光の平行度を変化させるビームエキスパンダーと、前記ビームエキスパンダーから射出された光を前記光ディスクのトラックに沿って集光して照射する対物レンズと、を有し、前記ビームエキスパンダーは、凹レンズと回折レンズからなり、前記回折レンズの焦点距離fnは、
f1=((λ2/λ1)−1)f0ν0
f2=(1−(λ2/λ1))b
として、式
f1<fn<f2
を満たす範囲にある。
【0020】
ただし、設計規準波長、設計下限波長及び設計上限波長をそれぞれλ0,λ1,λ2(ここで、λ0−λ1=λ2−λ0とする。)、これらの波長に相当する前記対物レンズの屈折率をそれぞれn0,n1,n2、波長λ1及びλ2に相当する焦点距離の差をΔとして、
ν0=(n0−1)/(n1−n2)
b=−f0(f0+Δ)/Δ
とする。
【0021】
好ましくは、前記対物レンズは、集光する光が前記光ディスクのトラックに沿って照射されるように前記光ディスクの径方向に移動制御され、前記ビームエキスパンダーは、光ピックアップ装置に固定されている。したがって、対物レンズの移動に応じて、対物レンズと、ビームエキスパンダーを含む他の光学系の光軸がずれることがある。
【0022】
好ましくは、前記光源の波長が450nm以下であり、前記対物レンズは、開口数(NA)が0.7以上の単レンズである。
【0023】
好ましくは、前記回折レンズは、平板の片側又は両側に回折面が形成されたものである。好ましくは、平板の両側に回折面が形成された回折レンズは、正弦条件を満たす。
【0024】
ここで、平板の片側に回折面が形成された回折レンズをフレネルレンズと称する。フレネルレンズには、1次回折光で補正したものと、高次回折光で補正したものがある。後者のフレネルレンズを、高次のフレネルレンズと称することがある。
【0025】
ビームエキスパンダーを構成する回折レンズは、特定の次数の回折光を用いる平板の片側又は両側に形成された回折レンズである。この回折レンズは、特定の次数の回折光に対して、無収差でかつ回折効率が高くなるように設計されていると同時に、回折レンズの焦点距離が対物レンズの色収差により発生する焦点誤差成分、すなわち軸上誤差を略補正するように設定されている。
【0026】
一方、光源の波長と対物レンズの設計基準波長の誤差、対物レンズの製造誤差あるいは、光ディスクの透過層の厚さ誤差により球面収差が生じるが、この球面収差は、ビームエキスパンダーによって光束の平行度を変化させることで補正する。なお、ビームエキスパンダーの凹レンズも、軸上色収差を補正する効果を僅かに担っている。
【0027】
ここで、回折レンズは、波長が基準波長より長くなった場合に、透過光の収束度を増やす。これにより、波長が長くなることで、対物レンズの焦点距離が長くなった分を相殺して、基準波長とほぼ同じ焦点面に焦点を結ぶように作用する。
【0028】
波長誤差がある場合、回折レンズを通過した光の波面は、収束光の近軸焦点位置へ収束する球面に近い形状となる。これは、対物レンズがレンズシフトした場合に収差の増大を押さえるためである。
【0029】
球面波が入射した場合のレンズシフトは、対物レンズに光が斜め入射した場合と等価であり、像高特性そのものに相当する。ここで、色収差を補正するための球面波の半径は非常に大きいため、レンズシフトによる像高は非常に小さく、収差の増加は少ない。
【0030】
ところで、前述のように基準波長以外では対物レンズに入る光束が平行光でなくなるために、倍率誤差による球面収差が発生する。この倍率誤差による球面収差は、対物レンズの単体の波長誤差による球面収差と同じ極性を持っているので、基準波長以外での収差は、対物レンズ単体でその基準波長以外の光束を集光した場合に比べて多少大きくなる。
【0031】
ここで、前記した球面収差は、ビームエキスパンダーを調整して対物レンズに入射される光束の平行度を変化させて、対物レンズに倍率誤差の球面収差を発生させて相殺させる。このとき、平行度を変化させられた光は、略球面波となる。したがって、前記した理由と同一の理由により、レンズシフトによる収差の発生が小さく抑えられる。
【0032】
このように球面収差の補正は、対物レンズにおいて完結しており、他の部分に関わることはない。したがって、本発明においては、対物レンズの光軸と他の光学系の光軸がずれても、収差は抑制されている。
【0033】
本発明においては、ビームエキスパンダーは、次のように設定される。まず、中心波長で収差が最小になるように、光束の収束度を設定する。ここで中心波長とは、光源の波長のばらつきがある場合は、そのばらついた波長の例えば平均値ことである。また、収束度は、色補正素子、対物レンズの両者を合わせた光学系の球面収差を最小にするように設定される。
【0034】
次に、中心波長から僅かにずれた波長に対しては、ビームエキスパンダーにより、光束の収束度が変化させ、フォーカス誤差が最小に抑えることで収差の発生が抑圧する。
【0035】
ここで、波長が基準波長から変化した場合、波面の曲率半径の変化は、軸上色収差の補正と球面収差の補正で逆方向である。たとえば、長波長側の波長では、軸上色収差を補正するためには収束光が必要であり、球面収差の補正をするためには拡散光が必要である。
【0036】
このずれた波長では、波長がずれたことと、前記したように球面収差が補正される方向とは逆に収束度が変化するので、球面収差は増加する。しかし、この球面収差は、軸上色収差を補正しない場合に発生する、デフォーカスによる収差に比べて遙かに小さく実用上問題にならない。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る光ピックアップ装置の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
図1は、光ピックアップ装置の概略的な構成を示す図である。
【0039】
光ピックアップ装置10は、回転する光ディスク101のトラックに沿って光を照射して情報信号の記録又は再生を行うものであって、光源となるレーザダイオード11と、レーザダイオード11から射出された光の平行度を変化させるビームエキスパンダー18と、ビームエキスパンダー18から射出された光を前記光ディスク101のトラックに沿って集光して照射する対物レンズ19と、を有し、ビームエキスパンダー18は、凹レンズ16と平板の片面に回折面が形成されたフレネルレンズ17からなり、フレネルレンズ17の焦点距離fnは、
f1=((λ2/λ1)−1)f0ν0
f2=(1−(λ2/λ1))b
として、式
f1<fn<f2
を満たす範囲にある。
【0040】
ただし、この光学ピックアップ装置10の設計規準波長、設計下限波長及び設計上限波長をそれぞれλ0,λ1,λ2(ここで、λ0−λ1=λ2−λ0とする。)、これらの波長に相当する対物レンズ19の屈折率をそれぞれn0,n1,n2、波長λ1及びλ2に相当する焦点距離の差をΔとして、
ν0=(n0−1)/(n1−n2)
b=−f0(f0+Δ)/Δ
とする。
【0041】
ここで、f0は、対物レンズ19の焦点距離であり、ν0は、対物レンズ19の光学材料の部分分散である。また、設計基準波長とは、この光学ピックアップ装置10を設計する際に、規準とする波長である。光ピックアップ装置10は、設計基準波長を中心とした一定の波長範囲で所望の性能が得られるように設計する。この範囲の下限及び上限が、設計下限波長及び設計上限波長である。なお、設計下限波長及び設計上限波長は、設計基準波長について対称な位置にある。
【0042】
すなわち、光ピックアップ装置10は、光源となる規準波長405nmのレーザダイオード11と、グレーティング12と、コリメータレンズ13と、ビーム成型及び色消しプリズム14と、偏向ビームスプリッタ15と、凹レンズ16と、フレネルレンズ17と、開口数0.7以上の対物レンズ19とを有している。
【0043】
また、光ピックアップ装置10は、コンデンサレンズ20と、フロントモニタフォトダイオード21と、検出レンズチューブ22と、フォトダイオード23とを有している。
【0044】
対物レンズ19は、開口数(NA)0.7以上の非球面レンズによる単レンズであり、図示しないアクチュエーターの可動部に設けられる。対物レンズ19は、集光した光を光ディスク101のトラックに沿って照射するように、アクチュエーターによって光ディスク101の径方向にトラッキング制御される。トラッキング制御による対物レンズ19の移動をレンズシフトと称する。
【0045】
ビームエキスパンダー18は、凹レンズ16とフレネルレンズ17からなり、この2枚のレンズの間隔を調整することで光の平行度を変化させることが出来る。ビームエキスパンダー18は、光ピックアップ装置10に固定されている。したがって、レンズシフトにより、対物レンズ19と他の光学径の光軸は、ずれることになる。
【0046】
フレネルレンズ17は、ビームエキスパンダー18において、凹レンズ16に対して凸レンズとしての機能を有するものであって、その焦点距離は、対物レンズの色収差により発生する焦点誤差成分を補正するように設計されている。
【0047】
フレネルレンズ17は、設計に用いた次数の回折光に対して、無収差でかつ回折効率が高くなるように設計されたものであればよい。本実施の形態では、フレネルレンズは、平板の片側に回折面が形成されたものである。
【0048】
本実施の形態では、設計基準波長λ0、設計下限波長λ1及び設計上限波長λ2を、それぞれ405nm、400nm及び410nmに設定している。対物レンズ19の焦点距離は2.2mであり、波長λ0,λ1及びλ2にそれぞれ対応する対物レンズの19の屈折率n0,n1,n2は、それぞれ1.76898,1.77027及び1.76776である。
【0049】
このとき、b=0.0045mmであり、f1=16.9mm、f2=26.9mmになる。したがって、フレネルレンズ17の焦点距離fnは、式
16.9mm<fn<26.9mm
を満たす範囲に設定する必要がある。具体的に、本実施の形態では、この範囲において、焦点距離fn=22mmに設定している。
【0050】
図2は、フレネルレンズ17を示す図である。図中のAはフレネルレンズ17の正面図であり、図中のBはフレネルレンズ17の断面図である。図中のCは、他のフレネルレンズの拡大断面図である。
【0051】
図中のBの断面図に示すフレネルレンズ17には、平板の片側に、形状がアナログ的なブレーズが形成されている。このような形状は、回折効率の点で有利である。なお、収差性能の観点からは、図中のCに示す階段状のブレーズ、いわゆる多段ブレーズを有する他のフレネルレンズによっても、前記アナログ的なブレーズと同様な特性を得ることができる。
【0052】
ここで、通常フレネルレンズ言う場合は、1次回折光を用いることが多いと思われるが、2次以上の高次の回折光を用いた高次のレンズであっても良い。この場合は、輪帯のピッチを広くすることができるので、製造が容易になる。なお、高次の回折光を用いる場合であっても、フレネルレンズのその高次光に対する焦点距離は1次回折光を用いた場合と同じ焦点距離で、色収差を補正することが出来る。
【0053】
また、フレネルレンズ17の焦点距離は、対物レンズ19の色収差により発生する焦点誤差成分を略補正するように設定されているが、ビームエキスパンダー18の凹レンズ16の光学材料に分散の大きなものを選定すると、この凹レンズ16も幾ばくかの色収差補正作用を発生する。したがって、フレネルレンズ17の焦点距離は、この点を勘案して設定すればさらに良好な結果が得られる。ただし、実際には、凹レンズ16による色収差の補正効果は僅かであり、フレネルレンズ17が色収差補正の大半を担う。
【0054】
また、フレネルレンズ17において、光束径が一定の場合、焦点距離が短くなると、輪帯のピッチが狭くなる。ピッチが狭くなると、製造が難しくなることを勘案して、色収差の補正の効果は少し低く設定して、フレネルレンズ17の焦点距離を、色収差を最適に補正できる焦点距離よりも多少長く設定することも出来る。
【0055】
図3は、光ピックアップ装置10の光学系の光路図である。
【0056】
図中の凹レンズ31、フレネルレンズ32及び対物レンズ33は、図1の凹レンズ16、フレネルレンズ17及び対物レンズ19にそれぞれ対応している。以下ではこれら凹レンズ31、フレネルレンズ32及び対物レンズ33を光学系と呼ぶことにする。凹レンズ31及びフレネルレンズ32は、ビームエキスパンダー(図1の18に相当)を構成している。この光学系の設計基準波長は、405nmである。
【0057】
凹レンズ31は第1の面1及び第2の面2を有し、フレネルレンズ32は、第3の面3及び第4の面4を有し、対物レンズ33は第5の面5及び第6の面6を有する。フレネルレンズ32の第3面には、回折面が形成されている。
【0058】
光学系に入射された光Lは、凹レンズ31、フレネルレンズ32及び凸レンズ33を介して光ディスク101に入射する。
【0059】
表1は、対物レンズ33の仕様を示す。
【0060】
【表1】
表2は、フレネルレンズ32の仕様を示す。
【0061】
【表2】
表3は、ビームエキスパンダーを含む光学系全体の設計値を示す。
【0062】
【表3】
表4は、第5面5の非球面係数を示す。
【0063】
【表4】
表5は、第6面6の非球面係数を示す。
【0064】
【表5】
表6は、光学材料の屈折率及びアッベ数を示す。
【0065】
【表6】
本実施の形態の光学系の設計基準波長は405nmである。凹レンズ31とフレネルレンズ32はビームエキスパンダーを構成するが、この内で凹レンズ31は片側非球面レンズで、規準波長における焦点距離は−17.6mmである。なお、凹レンズ31は両側非球面レンズであってももちろん良いが、本実施の形態の片側非球面レンズで充分良好な特性が得られる。
【0066】
第3の面3と第4の面4で構成され、第3面3に回折面が形成されたフレネルレンズ32は、規準波長における焦点距離が22mmで軸上の収差が無くなるように設計されている。
【0067】
なお、1次回折光に対して22mmに設計しても、2次回折光に対して22mmで設計しても良い。ちなみに1次回折光に対して設計した場合、2次回折光の焦点距離は11mmとなるが、この場合は収差が発生する。
【0068】
フレネルレンズ32を凹レンズ31と組み合わせたビームエキスパンダーによるビームの拡大率は1.25倍である。この光学系の場合、凹レンズ31により拡散光とされた光束を平行光に変換することフレネルレンズ32の第1の目的である。
【0069】
なお、凹レンズ31とフレネルレンズ32の間にカバーガラスがある場合、あるいはフレネルレンズ32の第4面4を回折面として、実質的にカバーガラスが光路中に存在するように成された場合は、カバーガラスにより発生する球面収差を補正するために、回折面の設計を変化させた構成にすることができる。
【0070】
図4は、この光学系の収差の波長依存性を示す図である。
【0071】
符号△を結ぶ曲線aは、基準波長である405nmにおける、凹レンズ31、フレネルレンズ32及び対物レンズ33からなる光学系における405nmの最良像面での各波長のRMS波面収差である。光学系への光束は平行光入射である。これによれば、±2nm程度の波長範囲では、十分低い収差に押さえられていることがわかる。
【0072】
また、レンズシフトに関しては、凹レンズ31及びフレネルレンズ32からなるビームエキスパンダーを出た光束が概ね平行光であるから、対物レンズ33への入射光の状態がレンズシフトで変化しないために、収差の増加はない。
【0073】
次に、光ピックアップ装置10の周辺温度が大きく変化して、光源のレーザー波長が前述の範囲を超えて変化した場合や、光源のレーザダイオード11の個体差により、規準波長の405nmから大きく変化した場合を考える。この場合は、収差が増大する。たとえば、波長409nmの場合は、0.074λとなってしまう。
【0074】
そこで、凹レンズ31とフレネルレンズ32の間隔を調整して、光束の平行度を変化させる。具体的には、凹レンズ31の第2面2とフレネルレンズ32の第3面3間の距離の初期値である3.12mmの間隔を2.76mmにして、光束を僅かに拡散光束として入射させれば、良い結果が得られる。
【0075】
符号×を結ぶ曲線bは、この場合のRMS波面収差の様子を示したものである。波長409nmにおいて、収差は0.01λであり、その前後±2nm程度の波長範囲では、十分低い収差に押さえられていることがわかる。
【0076】
この状態で、対物レンズ33を他の光学系(凹レンズ31及びフレネルレンズ32)の光軸から0.3mmシフトしても収差増加は非常に小さく、全く問題のない性能が得られる。
【0077】
ここで、参考のために、ビームエキスパンダーなしの対物レンズ33単体の特性を示す。
【0078】
符号◆を結ぶ曲線cは、対物レンズ33を各波長の最良像面で使用した場合のRMS波面収差である。これに対して、符号□を結ぶ曲線dは、405nmの波長の最良像面における各波長のRMS波面収差である。曲線dは、曲線cに比べて遙かに大きな収差であることが示されている。本実施の形態における各波長での収差量を示す曲線bをこの曲線dと比較すると、収差は小さく抑えられている。
【0079】
上述の実施の形態において、フレネルレンズ32は、平板の片側に回折面が形成されたものであった。次に、平板の両側に回折面が形成された回折レンズを用いる変形例を説明する。
【0080】
変形例では、平板の両側に回折面が形成された回折レンズを用いることを除いて、光学系の基本構成は前述の実施の形態と同様である。
【0081】
図5は、変形例の光学系の光路図である。
【0082】
なお、変形例においては、平板の両側に回折面が形成された回折レンズを除いて前述の実施の形態と同様であるので、対応する部材には同一の符号を附すことにする。この変形例の光学系の設計基準波長も、405nmである。
【0083】
凹レンズ31は第1の面1及び第2の面2を有し、回折レンズ42は、第3の面3及び第4の面4を有し、対物レンズ33は第5の面5及び第6の面6を有する。回折レンズ42の第3面3及び第4面4には、回折面が形成されている。
【0084】
光学系に入射された光Lは、凹レンズ31、回折レンズ42及び凸レンズ33を介して光ディスク101に入射する。
【0085】
変形例では、設計基準波長λ0、設計下限波長λ1及び設計上限波長λ2を、それぞれ405nm、400nm及び410nmに設定している。対物レンズ33の焦点距離は2.2mであり、波長λ0,λ1及びλ2にそれぞれ対応する対物レンズの19の屈折率n0,n1,n2は、それぞれ1.76898,1.77027及び1.76776である。
【0086】
このとき、b=0.0045mmであり、f1=16.9mm、f2=26.9mmになる。したがって、回折レンズ42の焦点距離fnは、式
16.9mm<fn<26.9mm
を満たす範囲に設定する必要がある。具体的に、変形例では、この範囲において、焦点距離fn=22mmに設定している。
【0087】
表7は、光学系全体の設計値を示す。
【0088】
【表7】
表8は、第5面の非球面係数を示す。
【0089】
【表8】
表9は、第6面の非球面係数を示す。
【0090】
【表9】
3面3と4面4で構成される回折レンズ42は、焦点距離が、基準波長で22mmである。この設計では、1次回折光に対して、焦点距離22mmで軸上の収差が無くなるように設計されている。
【0091】
さらに、正弦条件が満足できるように設計されている。正弦条件を満足できることは、平板の両側に回折面が形成された回折レンズ42の有利な点であり、この回折レンズ42が光軸から偏芯した場合の収差の増加を低く抑えることができる特徴がある。
【0092】
回折レンズ42の回折面の位相関数は、次の式で定義されている。
【0093】
Φ=A2i×r2i
ここで、Φは回折面による波面の位相変化量であり、単位はラジアンである。Aは、位相を表す係数である。たとえば、i=2なら4乗の係数である。rは半径であり、単位はmmである。
【0094】
表10は、第3面3の回折面の位相を表す係数を示す。
【0095】
【表10】
表11は、第4面4の回折面の位相を表す係数を示す。
【0096】
【表11】
凹レンズ31と回折レンズ42からなるビームエキスパンダーにおいて、光束の拡大率は1.25倍である。
【0097】
さて変形例の光学系の405nmの像面におけるRMS波面収差は、0.004λである。同じ像面で、404nmでは0.017λであり、406nmでは0.016λと充分に良好な色収差の補正特性を示している。レンズシフトに関しては、色収差補正素子を出た光束が概ね平行光であるから、対物レンズ33への入射光の状態がレンズシフトで変化しないために、収差の増加はない。
【0098】
次に、光ピックアップ装置の周辺温度が大きく変化して、光源のレーザー波長が前述の範囲を超えて変化した場合や、光源のレーザダイオードの個体差により、波長が405nmから大きく変化した場合を考える。この場合は、収差が増大する。たとえば、409nmの場合は、0.058λとなってしまう。
【0099】
そこで、凹レンズ31と回折レンズ42の間隔を調整して、光束の平行度を変化させる。具体的には、凹レンズ31の第2面2と回折レンズ42の第3面3間の距離の初期状態である2.43mmの間隔を2.08mmにして、光束を僅かに拡散光束として入射させれば、収差は0.009λと低い値に押さえられる。さらに、この状態で、対物レンズ33を光軸から0.3mmシフトしても収差は0.01λであり増加は非常に小さく、全く問題のない性能が得られる。
【0100】
この回折レンズ42としては、設計に用いた次数の回折光に対して、無収差でかつ回折効率が高くなるように設計されたものであればよい。また、平板の両側の回折面における回折光の次数は異なっていても作用は変わらない。
【0101】
この変形例の回折レンズ42も、レンズとしての焦点距離は、片面に回折面を形成した前述の実施の形態のフレネルレンズ32と同じ焦点距離で、色収差を補正することが出来る。
【0102】
さらに、回折レンズ42の焦点距離は、対物レンズ33の色収差により発生する焦点誤差成分を略補正するように設定されているが、ビームエキスパンダーを構成する凹レンズ31の光学材料に分散の大きなものを選定すると、この凹レンズ31も幾ばくかの色収差補正作用を発生する。したがって、回折レンズ42の焦点距離は、この点を勘案して設定すればさらに良好な結果が得られる。ただし、実際には、凹レンズ31による色収差の補正効果は僅かであり、回折レンズ42が色収差補正の大半を担う。
【0103】
また、フレネルンズ42の場合、光束径が一定の場合、焦点距離が短くなると、輪帯のピッチが狭くなる。ピッチが狭くなると、製造が難しくなることを勘案して、色収差の補正の効果は少し低く設定して、回折レンズ42の焦点距離を、色収差を最適に補正できる焦点距離よりも多少長く設定することも出来る。
【0104】
以上においては、色収差に着目して論述したが、ここで述べた光学系で補正する球面収差は、波長誤差による球面収差のみに限定されたものではなく、対物レンズ19自体の残留球面収差、ディスク101の厚さ誤差による球面収差を同時に補正できることは言うまでもない。
【0105】
すなわち、本実施の形態の光ピックアップ装置は、良好な収差補正特性を有する共に、光源のレーザダイオード11の波長と対物レンズ19の設計基準波長の誤差、対物レンズ19の製造誤差、又は光ディスク101の透過層の厚さ誤差等で発生する球面収差をも同時に補正する。
【0106】
【発明の効果】
前述したように、本発明によると、対物レンズと他の光学系の光軸がずれても収差を抑制するような光ピックアップ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光ピックアップ装置の概略的な構成を示す図である。
【図2】フレネルレンズを示す図である。
【図3】光ピックアップ装置の光学系の光路図である。
【図4】この光学系の収差の波長依存性を示す図である。
【図5】変形例の光学系の光路図である。
【符号の説明】
11 レーザダイオード
16 凹レンズ
17 フレネルレンズ
18 ビームエキスパンダー
19 対物レンズ
101 光ディスク
Claims (4)
- 回転する光ディスクのトラックに沿って光を照射して情報信号の記録又は再生を行う光ピックアップ装置において、
光源と、
前記光源から射出された光の平行度を変化させるビームエキスパンダーと、
前記ビームエキスパンダーから射出された光を前記光ディスクのトラックに沿って集光して照射する対物レンズと、
を有し、
前記ビームエキスパンダーは、凹レンズと回折レンズからなり、前記回折レンズの焦点距離fnは、
f1=((λ2/λ1)−1)f0ν0
f2=(1−(λ2/λ1))b
として、式
f1<fn<f2
を満たす範囲にあることを特徴とする光ピックアップ装置。
ただし、設計規準波長、設計下限波長及び設計上限波長をそれぞれλ0,λ1,λ2(ここで、λ0−λ1=λ2−λ0とする。)、これらの波長に相当する前記対物レンズの屈折率をそれぞれn0,n1,n2、波長λ1及びλ2に相当する焦点距離の差をΔとして、
ν0=(n0−1)/(n1−n2)
b=−f0(f0+Δ)/Δ
とする。 - 前記対物レンズは、集光する光が前記光ディスクのトラックに沿って照射されるように前記光ディスクの径方向に移動制御され、前記ビームエキスパンダーは、固定されていることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
- 前記光源の波長が450nm以下であり、前記対物レンズは、開口数(NA)が0.7以上の単レンズであることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記回折レンズは、平板の片側又は両側に回折面が形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
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