JP3714862B2 - 半導体装置用パッケージ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体レーザ素子等の半導体素子を搭載する半導体装置用パッケージに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体レーザ素子等の半導体素子を搭載する半導体装置用パッケージには、図4に示すような、キャップ状に形成したアイレット10にリード12を挿通してステム形状とした製品がある。リード12はアイレット10に形成した挿通孔14に挿通され、ガラス溶着によってアイレット10に封着されている。16がリード12を封着しているガラスである。半導体レーザ素子18を支持する素子付け部20は、アイレット10の上面を切り起こした切片状に形成され、素子付け部20の側面に半導体レーザ素子18が接合されている。
【0003】
図5は、上記半導体装置用パッケージの断面図を示す。キャップ状に形成されたアイレット10の凹部内にガラス16が満たされ、前記素子付け部20を切り起こしたことによって形成されたアイレット10の上面の開口部22、及びリード12を挿通した挿通孔14がガラス16によって封止されている。12aはアイレット10に抵抗溶接したアースリードである。
【0004】
上記の半導体装置用パッケージではリード12をガラスによって溶着するから、その製造にあたっては、アイレット10及びリード12を治具に支持し、ガラス溶着炉内で被加工品をガラス溶融温度まで加熱してリード12を封着する。このように、従来の半導体装置用パッケージの製造工程では、ガラス溶融温度といった高温に被加工品を加熱するから、アイレット10及びリード12の外面に施すめっきは、リード12をアイレット10に封着する工程の後に行っている。このめっきは、バレルめっきによって行うから、その際にリード12が曲がってしまったり、めっき不良が生じたりして、後工程でリード12を修整する作業や選別作業が発生するという問題がある。
【0005】
そこで、リード12をアイレット10にガラス封着するかわりに、樹脂を用いてリード12をアイレット10に電気的に絶縁して封着する方法が検討されている。熱硬化性の樹脂を用いてリード12をアイレット10に封着する方法であれば、加熱温度は200℃程度でリード12を封着できるから、アイレット10及びリード12にめっきを施した後に、リード12をアイレット10に封着する操作を行ってもなんら差し支えない。この方法によれば、アイレット10及びリード12に必要なめっきを施した後に組み立てできるから、後工程でリード12の曲がりを修整するといった作業が不要となり、効率的な作業工程とすることが可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際に樹脂を用いてリード12をアイレット10に封着する場合の問題として、アイレット10と樹脂との密着性が十分でないという問題がある。図6(a)は、アイレット10に樹脂30を用いてリード12を封着した状態を示す。樹脂30はアイレット10の内面に接着されてリード12を封着しているが、リード12を封着している樹脂30にアイレット10から樹脂30を引き抜くような力が作用した場合に、比較的簡単に樹脂30がアイレット10から剥離して抜けてしまう場合がある。
【0007】
従来のようにガラス封着によって半導体装置用パッケージを作製する場合は、アイレット10の内面に酸化被膜を形成する等によりアイレット10にガラスは強固に接着される。これに対して、樹脂30を用いてリード12をアイレット10に封着する場合は、金属と樹脂との接着力は一般に弱いために、アイレット10と樹脂30との所要の接着強度が確保できないという問題が生じる。樹脂30を用いてリード12を封着する場合は、アイレット10の表面に金めっき等のめっきをあらかじめ施した後に封着するから、樹脂30とアイレット10との密着性がさらに低下するという面もある。
【0008】
このように樹脂30を用いてアイレット10にリード12を封着する場合にアイレット10と樹脂30との密着性を改善する方法としては、樹脂30として接着力の強い材料を使用することが考えられる。熱硬化性樹脂ではガラス転移点温度が低い樹脂は金属との接着力が強く、ガラス転移点温度が高い樹脂は接着力が弱くなるという性質がある。したがって、接着力を強くするにはガラス転移点温度が低い樹脂を使用すればよい。しかし、このようなガラス転移点温度の低い樹脂を使用した場合は、200℃程度以下といった温度で樹脂が軟化してしまい、耐熱性の点で所要の規格を満足できないといった問題が生じる。また、一方、耐熱性を重視した場合は、ガラス転移点温度が高い樹脂を使用することになるから、所要の接着力が得られなくなる。
【0009】
本発明は、このような樹脂を用いてリードをアイレットに封着して形成する半導体装置用パッケージについての問題点を解消すべくなされたものであり、アイレットと樹脂との密着性を向上させることによって、信頼性を向上させることができるとともに、製造も容易となる半導体装置用パッケージを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、金属板をプレス加工することによりキャップ状に形成されると共に、リードを挿通する挿通孔が形成されたアイレットに、前記挿通孔に挿通されたリードが、樹脂により前記アイレットと電気的に絶縁されて封着されてなる半導体装置用パッケージにおいて、前記アイレットの前記樹脂と密着する、前記アイレットの本体の内側面と内底面とに、前記アイレットからの樹脂の引き抜きを妨げる係止手段として係止溝が形成されていることを特徴とする。
また、前記係止溝が、前記アイレットの軸線方向に対して、傾斜する向きに形成されているものは樹脂の引き抜きを有効に妨げる作用をなす。なお、アイレットの軸線方向に対して係止溝を傾斜する向きにはアイレットの軸線方向に直交する向きも含むものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る半導体装置用パッケージに使用するアイレット10の構成を示す。図1(a)はアイレット10の側面断面図である。アイレット10自体の形状は図4、5に示す従来の半導体装置用パッケージに用いるアイレット10と同様である。すなわち、アイレット10はキャップ状に形成された本体24と、本体24の頂部から頂部面に略垂直に切り起こした素子付け部20とからなる。本体24の頂部には素子付け部20を切り起こしたことにより矩形の開口部22が形成されている。
【0012】
このアイレット10で特徴とする構成は、本体24の内側面26にアイレット10の軸線方向(リードを挿通する方向と平行な方向)に対し傾斜する向きに多数本の係止溝28を形成した点にある。この係止溝28は樹脂を用いてリードを封着した際に、樹脂が係止溝28にはいり込み、樹脂とアイレット10との密着性を向上させる作用を有する。係止溝28をアイレット10の軸線方向に対して傾斜する向きに形成しているのは、アイレット10に充填されている樹脂に対してアイレット10から樹脂を引き抜く力が作用した際に樹脂を抜けにくくするためである。アイレット10の内側面26に形成する係止溝28は、このようにアイレット10に充填された樹脂の引き抜きを妨げる向きに形成することが有効である。図では、説明上、係止溝28を平行に表示しているが、この係止溝28は本体24の内側面の全周にわたってアイレット10の軸線方向に対し傾斜する向きに設けられている。実施形態のアイレット10で実際に形成した係止溝28は、深さ0.1mm、幅0.2mm、ピッチ0.4mmのものである。
【0013】
図1(b)は、アイレット10の底面図である。本実施形態では、アイレット10の本体24の内側面に係止溝28を設けると同時に、本体24の内底面(天井面)29にも係止溝28を形成した。この係止溝28も樹脂によってリードを封着した際に樹脂が溝内にはいり込み、アンカー作用によって樹脂が本体24の内底面29から剥離することを防止する作用を有する。なお、本体24の内底面29に形成する係止溝28はアンカー作用によって樹脂の剥離を防止するものであるから、係止溝28の向きはとくに問題にならない。なお、場合によってはアイレット10の本体24の内底面29には係止溝28を設けず、アイレット10の本体24の内側面26のみに係止溝28を設けるのみでも有効である。また、アイレット10の本体24の内底面29に設ける係止溝28を逆止形状としてさらに樹脂との密着性を向上させる構成とすることも可能である。
【0014】
図2は、上述したアイレット10を使用して半導体装置用パッケージを形成する方法を示す。本実施形態の半導体装置用パッケージは樹脂を使用してリード12をアイレット10に封着することを特徴とする。
そのために、まず、図2(a)に示すように、治具32にアイレット10とリード12とをセットし、樹脂粉末によって形成した樹脂タブレット30aをアイレット10の本体内にセットする。
樹脂タブレット30aはリード12を封着する樹脂30となるものであり、あらかじめアイレット10の本体24の形状にしたがって形成されている。
【0015】
樹脂粉末を用いて所定形状の樹脂タブレットを形成する方法は、圧縮成形用の金型に樹脂粉末を投入し、加圧して樹脂粉末を所定形状に成形する方法によればよい。圧縮成形する際にリード12を挿通するための挿通孔31も同時に形成する。樹脂タブレット30aはアイレット10内に簡単にセットできるように、アイレット10の本体24の内側面と十分にクリアランスをもたせた外形寸法に形成し、リード12よりも十分大径な挿通孔31を形成する。挿通孔31はリード12の抜け止め用として中途に突起部を設けたリード12を挿通してセットできるように形成することもできる。本実施形態で使用した樹脂タブレット30aは、ガラス転移点温度が180℃程度のエポキシ系の熱硬化型の樹脂粉末を使用したものである。
【0016】
なお、治具32にアイレット10とリード12をセットする際には、金めっき等の所要のめっきをすべて施したアイレット10とリード12をセットする。樹脂タブレット30aを溶融する温度は200℃程度であり、樹脂による封着操作の際にめっき膜が損傷を受けるような温度に加熱されることはないから、アイレット10及びリード12に金めっき等の所要のめっきを施しておいてもまったく問題はない。
【0017】
アイレット10に樹脂タブレット30aをセットした後、180〜200℃程度の加熱雰囲気中で樹脂タブレット30a及び被加工品全体を加熱し、樹脂タブレット30aを溶融してリード12を封着する。図2(b)が樹脂30によってリード12が封着された半導体装置用パッケージである。リード12が挿通孔31に挿通され樹脂30によりアイレット10と電気的に絶縁して封着されている。樹脂30はメニスカス状にアイレット10の本体24内に充填されている。
【0018】
本実施形態の半導体装置用パッケージは、アイレット10に溶着された樹脂30が、アイレット10の本体24の内側面と係止溝28を介して密着されたことによって、従来の樹脂30を使用してリード12をアイレット10に封着した半導体装置用パッケージとくらべてはるかにアイレット10と樹脂30との密着性を向上させることができる。
実際に樹脂によってリードを封着した半導体装置用パッケージで、従来品と本実施形態品とを比較したところ、樹脂がアイレットから剥離されて引き抜かれるときの引っ張り力が、従来品では1kgf程度であったものが、本実施形態品の場合は7〜8kgf程度まで改善された。これによって、樹脂によってリードを封着した製品であっても十分に製品の規格を満足することができた。
【0019】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置用パッケージでは、アイレット10の本体24の内側面26と内底面29に形成した係止溝28が、樹脂30との間で機械的な剥離防止作用を生む係止手段として作用し、これによって樹脂30とアイレット10との密着性を効果的に向上し得たものである。
このような機械的作用により樹脂の剥離を防止する係止手段としては、上記実施形態で本体24の内側面26、内底面29に設けた係止溝28と同様に、樹脂30との間で機械的な剥離防止作用が生じる形態で種々の形態をとり得る。たとえば、係止溝28を交差する形態で設けたり、本体24の内側面に小突起を設けたりする方法等である。
【0020】
図3は、アイレット10の内側面26と内底面29を粗面として樹脂30とアイレット10の内面との密着性を向上させるようにした例である。アイレット10の本体24の内側面26と内底面29を粗面に形成して樹脂30とアイレット10との密着性を向上させる方法も、機械的作用によって樹脂の剥離を防止する例の一つである。このように、本体24の内側面26と内底面29を粗面に形成することによって樹脂30とアイレット10との密着性を向上させることができ、リード12を封着した後の樹脂30がアイレット10から簡単に剥離しないようにすることができる。アイレット10の本体24の内側面を粗面に形成する方法も係止手段のひとつである。
【0021】
図3に示すアイレット10のように、アイレット10の内側面26及び内底面29を粗面に形成するには、被加工材である平坦な金属板にしぼり加工等の所要のプレス加工を施して所定形状のアイレット10を形成した後、化学的エッチングによってアイレット10の内側面26と内底面29を粗面に形成すればよい。金属板をしぼり加工してキャップ状に形成した後、素子付け部20を成形することにより素子付け部20の表面が平滑面に形成され、その後、上記の粗面加工を施すことによってアイレット10で樹脂30が密着する部位のみを粗面に形成することができる。
【0022】
また、図1に示すような、本体24の内側面26と内底面29に係止溝28を形成したアイレット10を製造する場合は、被加工材である平坦状の金属板にしぼり加工等のプレス加工を施す際に、あらかじめアイレット10の内側面26となる金属板の部位にプレス加工を施して係止溝28を形成しておき、この係止溝28を形成した金属板に対してしぼり加工等のプレス加工を施してキャップ状のアイレット10を形成する。しぼり加工等のプレス加工によってキャップ状にアイレットを形成する前に金属板でアイレット10の内側面26となる部位についてのみ係止溝28を形成するのは、素子付け部20については素子付け面を平滑面に形成する必要があるから、アイレット10の本体24の内底面29となる部位については事前に係止溝28を形成しておくことができないからである。
アイレット10の本体24の内底面29については、金属板をキャップ状に成形して素子付け部20を切り起こした後、プレス加工によって内底面29を成形する際に係止溝28を形成することができる。
【0023】
このように被加工材の金属板をプレス加工する際に事前に必要個所に係止溝28を形成してアイレット10を成形する方法は、プレス加工によってアイレットを製造している従来の製造工程、製造装置がそのまま利用できる点で有効である。これによって、製造コストを抑えつつ信頼性の高い半導体装置用パッケージを量産することが可能になる。また、プレス加工の加工工程中で係止溝28を形成する方法は、係止溝28の溝の深さ、幅、ピッチ、溝の方向等を適宜設定することができるという利点がある。
なお、金属板に係止溝を形成し、しぼり加工等のプレス加工によってキャップ形状のアイレットを形成する工程は、順送金型を使用した順送加工によって効率的に行える。
【0024】
前述したように本発明に係る半導体装置用パッケージでは、樹脂とアイレットとが機械的作用によって密着するから、樹脂とアイレットとの密着性が低い樹脂材を使用して所要の密着強度を得ることができ、たとえば耐熱性が高く密着性が比較的低い樹脂材を使用して所要の密着強度を得るといったことが可能となり、これによって耐熱性が高く樹脂とアイレットとの密着性にもすぐれた半導体装置用パッケージを得ることが可能になる。
【0025】
【発明の効果】
本発明に係る半導体装置用パッケージによれば、リードを封着する樹脂とアイレットとの密着性を効果的に向上させることが可能になることから、耐熱性が高く接着性が比較的低い樹脂材を使用したといった場合でも、所要の密着強度を得ることができ、これによって耐熱性及び樹脂の剥離強度といった所要の規格を満足できる信頼性の高い半導体装置用パッケージとして提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体装置用パッケージにおいて使用するアイレットの断面図及び底面図である。
【図2】樹脂によってアイレットにリードを封着する方法を示す説明図である。
【図3】半導体装置用パッケージにおいて使用するアイレットの他の例を示す断面図である。
【図4】リードをガラス封着した半導体装置用パッケージの従来の構成を示す斜視図である。
【図5】リードをガラス封着した半導体装置用パッケージの従来の構成を示す断面図である。
【図6】樹脂によってリードを封着する半導体装置用パッケージの断面図である。
【符号の説明】
10 アイレット
12 リード
14 挿通孔
16 ガラス
18 半導体レーザ素子
20 素子付け部
22 開口部
24 本体
26 内側面
28 係止溝
29 内底面
30 樹脂
30a 樹脂タブレット
31 挿通孔
32 治具
Claims (2)
- 金属板をプレス加工することによりキャップ状に形成されると共に、リードを挿通する挿通孔が形成されたアイレットに、前記挿通孔に挿通されたリードが、樹脂により前記アイレットと電気的に絶縁されて封着されてなる半導体装置用パッケージにおいて、
前記アイレットの前記樹脂と密着する、前記アイレットの本体の内側面と内底面とに、前記アイレットからの樹脂の引き抜きを妨げる係止手段として係止溝が形成されていることを特徴とする半導体装置用パッケージ。 - 前記係止溝が、前記アイレットの軸線方向に対して、傾斜する向きに形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置用パッケージ。
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