JP3714487B2 - 金敷の補修方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、熱間鍛造機用などの金敷の補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱間鍛造機の1種である4面鍛造機の金敷は、図1に示すような構造をしており、汎用の析出硬化型のNi基合金であるC:0.03〜0.10%、Cr:18.0〜21.5%:Mo:5.0〜6.5%、Co:11.0〜15.0%、Al:1.8〜2.3%、Ti:2.90〜3.15%、Fe:5.0%以下、W:0.5〜1.25%、残部Niからなる合金で製造されていた。この金敷(1a、1b、1c、1d)の鍛造面が摩耗等により損傷した場合、該金敷の母材とほぼ同様な成分の合金を肉盛りして補修していた。
なお、4面鍛造機及びその金敷については、特開平1─254339号公報及び特開平4─118142号公報に詳細に記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、金敷の母材とほぼ同様な成分の合金を肉盛りして補修を繰り返していると、補修回数が増加するのに伴い母材の割れが段々深くなり、また補修するときにこの割れを削除しているので、母材の割れが深くなると削除する厚さが大きくなり、その分補修における肉盛り層の数が多くなっていく。この肉盛り層の数が4回以上になると、肉盛り層に割れが発生し、この割れが母材の割れを加速すると共に肉盛層の表面状態を悪化していた。
本発明は、肉盛り層に発生する割れを防止することによって、母材の割れを防止すると共に肉盛り層の表面状態を良くする方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のC:0.03〜0.10%、Cr:18.0〜21.5%、Mo:5.0〜6.5%、Co:11.0〜15.0%、Al:1.8〜2.3%、Ti:2.90〜3.15%、Fe:5.0%以下、W:0.5〜1.25%、残部Niからなる合金製の金敷の補修方法においては、下盛り層として金敷よりAl及びTiを少なくしたC:0.03〜0.10%、Cr:18.0〜21.5%、Mo:5.0〜6.5%、Co:11.0〜15.0%、Al:0.5〜1.7%、Ti:1.0〜2.7%、Fe:5.0%以下、W:0.5〜1.25%、残部Niからなる合金を肉盛りし、その上にC:0.03〜0.10%、Cr:18.0〜21.5%、Mo:5.0〜6.5%、Co:11.0〜15.0%、Al:1.8〜2.3%、Ti:2.90〜3.15%、Fe:5.0%以下、W:0.5〜1.25%、残部Niからなる合金を上盛り層として肉盛りすることである。
【0005】
【作用】
本発明は、下盛層として割れが発生しない合金、すなわち母材及び上盛り層よりAl及びTiの含有量を少なくした合金を肉盛りすることにより、下盛り層の数を増やすことができ、その結果上盛層の数を減らして上盛り層の割れを防止することができ、また割れない下盛り層を介在させることにより、上盛り層の割れが金敷の母材に影響するのを遮断することができる。したがって、上盛り層及び金敷の母材の割れが軽減し、上盛り層の欠け落ちが全くなく、上盛り層及び金敷の母材の寿命が向上する。
【0006】
次に、各成分を限定した理由を説明する。
金敷の母材及び上盛り層の合金は汎用の析出硬化型のNi基合金であるが、各成分を限定した理由を説明する。
C:0.03〜0.10%
Cは、溶湯の脱酸及び結晶粒の微細化に有効な元素であるが、その含有量が少な過ぎると所望の作用硬化が得られず、また多過ぎると炭化物の析出量が多くなりすぎて熱間加工性が劣化するので、その含有量を0.03〜0.10%とした。
Cr:18.5〜21.5%
Crは、酸化抵抗性を与えるために含有させる元素であるが、少な過ぎるとその効果が十分でなく、多過ぎると強度を低下し、脆性を増すので、その含有量を18.5〜21.5%とした。
【0007】
Mo:5.0〜6.5%
Moは、高温強度を向上するために含有させる元素であるが、少なすぎると、効果が不十分であり、多過ぎると脆化するので、その含有量を5.0〜6.5%とした。
Co:11.0〜15.0%
Coは、高温強度を向上するために含有させる元素であるが、少なすぎると、効果が不十分であり、多く含有させても効果が飽和するので、その含有量を11.0〜15.0%とした。
Al:1.8〜2.3%
Alは、金属間化合物を形成して高温硬さを向上させ、もって高温耐摩耗性を著しく改善する元素であるが、少な過ぎると所望の高温硬さを得ることができず、多過ぎると高靱性が損なわれるので、その含有量を1.8〜2.3%とした。
【0008】
Ti:2.9〜3.15%
Tiは、Alと同様に金属間化合物を形成して高温硬さを向上させ、もって高温耐摩耗性を著しく改善する元素であるが、少な過ぎると所望の高温硬さを得ることができず、多過ぎると高靱性が損なわれるので、その含有量を2.9〜3.15%とした。
Fe:5.0%以下、
Feは、フェロアロイとして導入され元素であるが、多くなると高温強度が低下するので、その含有量を5.0%以下とした。
W:0.5〜1.25%
Wは、Moと同様に高温強度を向上するために含有させる元素であるが、少なすぎると、効果が不十分であり、多過ぎると脆化するので、その含有量を0.5〜1.25%とした。
【0009】
次に、下盛り層の各成分を限定した理由を説明する。
Al:0.5〜1.7%
Alは、金属間化合物を形成して高温硬さを向上させ、もって高温耐摩耗性を著しく改善する元素であるが、少な過ぎると所望の高温硬さを得ることができず、多過ぎると中間層として肉盛りをした場合、硬度が高く、肉盛り時に割れが発生するので、その含有量を0.5〜1.7%とした。
Ti:1.0〜2.7%
Tiは、Alと同様に金属間化合物を形成して高温硬さを向上させ、もって高温耐摩耗性を著しく改善する元素であるが、少な過ぎると所望の高温硬さを得ることができず、多過ぎると中間層として肉盛りをした場合、硬度が高く、肉盛り時に割れが発生するので、その含有量を1.0〜2.7%とした。
なお、Al及びTi以外のC、Cr、Mo、Co、Fe及びWについては母材の限定理由と同じであるので、説明を省略する。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の1実施例について説明する。
C:0.08%、Cr:18.9%:Mo:5.8%、Co:11.9%、Al:1.9%、Ti:3.02%、Fe:1.8%、W:1.10%、残部Niからなる4面鍛造機の金敷2個を下記のように補修した。
下盛り層としてC:0.08%、Cr:18.7%:Mo:5.8%、Co:12%、Al:1.1%、Ti:1.38%、Fe:1.8%、W:1.10%、残部Niからなる合金を6層肉盛りした。
その後下肉盛り層の上に上盛り層として、C:0.08%、Cr:18.8%:Mo:5.9%、Co:11.5%、Al:2.0%、Ti:2.90%、Fe:1.8%、W:1.15%、残部Niからなる合金を3層肉盛りをした。
下盛り層には全く割れがなく、上盛り層の割れは軽微であった。
【0011】
比較例として、上記金敷2個に従来の補修方法、すなわち、上記上盛り層と同じ成分組成の肉盛りを9層肉盛りした。
肉盛層には、ビート方向と直角方向に細かい割れが一定間隔で発生した。
【0012】
本発明の実施例の方法で補修した金敷と比較例の従来法で補修した金敷を使用して直径400mmの特殊鋼を200mmに鍛造してその寿命を比較した。
その結果、実施例の方法で補修した金敷は350トン加工したところで上盛り層の損傷が激しくなり、使用することができなくなった。一方比較例の従来法で補修した金敷は250トン加工したところで上盛り層の損傷が激しくなり、使用することができなくなった。
【0013】
上記実施例では、下盛り層の各層を同一の成分組成で肉盛りをしたが、上記組成の範囲内で金敷及び上盛り層に近い層は、金敷及び上盛り層の組成に近い組成にし、下盛層の中間層をAl及びTiがより少ない組成にするなど下盛り層の各層の組成を変更することができる。
また、上記実施例では、4面鍛造機の金敷の補修について述べたが、4面鍛造機以外の熱間鍛造機などの金敷にも同様に補修をすることができる。
さらに、本発明は、上記以外の点においても、要旨を逸脱しない範囲において種々の変更をすることができることはもちろんである。
【0014】
【本発明の効果】
本発明は、上記構成にしたことにより、上盛り層の割れを軽減することができ、また割れない下盛り層を介在させているので、その結果上盛り層及び金敷の母材の割れが軽減し、上盛り層の欠け落ちが全くなく、上盛り層及び金敷の母材の寿命が向上するという優れた効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施する4面鍛造機の金敷を説明するための金敷の正面図である。
【符号の説明】
1a、1b、1c、1d 金敷
Claims (1)
- C:0.03〜0.10%、Cr:18.0〜21.5%、Mo:5.0〜6.5%、Co:11.0〜15.0%、Al:1.8〜2.3%、Ti:2.90〜3.15%、Fe:5.0%以下、W:0.5〜1.25%、残部Niからなる合金製の金敷の補修方法において、下盛り層としてC:0.03〜0.10%、Cr:18.0〜21.5%、Mo:5.0〜6.5%、Co:11.0〜15.0%、Al:0.5〜1.7%、Ti:1.0〜2.7%、Fe:5.0%以下、W:0.5〜1.25%、残部Niからなる合金を肉盛りし、その上にC:0.03〜0.10%、Cr:18.0〜21.5%、Mo:5.0〜6.5%、Co:11.0〜15.0%、Al:1.8〜2.3%、Ti:2.90〜3.15%、Fe:5.0%以下、W:0.5〜1.25%、残部Niからなる合金を肉盛りすることを特徴とする金敷の補修方法。
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JP11265395A JP3714487B2 (ja) | 1995-04-14 | 1995-04-14 | 金敷の補修方法 |
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1995
- 1995-04-14 JP JP11265395A patent/JP3714487B2/ja not_active Expired - Fee Related
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