JP5565692B2 - 金敷の製造方法及び金敷 - Google Patents
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Description
また、従来の技術として、鍛造装置用金敷としては、例えば、特開2010−037564号公報(特許文献3)には、JIS SKT4等の合金工具鋼による基材に直接または固溶強化型耐熱合金等による肉盛り層を介して、打撃面部としてγ´による析出強化型耐熱合金が肉盛りされた金敷が開示されている。
しかし、実際には、使用時の金敷には熱だけでなくなく鍛造に伴う荷重も加わり、使用のごく初期の、析出強化が達成される以前に析出強化型合金層で構成される打撃面にへたりが生じたりヒートチェックが生成したりするため、十分な寿命が得られない。また、肉盛り後に金敷全体を加熱して時効処理しようとすると、その処理温度は打撃面部を強固に支持すべき基材のオーバーテンパーによる硬さ低下を防ぐため、約650℃以下程度に制限される。しかし、この温度では打撃面部の十分な析出強化のためには低すぎるため、十分な析出強化が得られずヒートチェックによる割れを生じて、十分な寿命が得られないという問題がある。
そのため、特許文献1や特許文献2では、従来のJIS SKT4等の合金工具鋼による基材を排して、より高い処理温度を許容でき、かつ広い温度範囲で高い強度を有するように、全体を析出強化合金で構成するか、または、基材部を析出強化型耐熱合金として、更に、優れた高温強度の面からその打撃面部も析出強化型合金で構成する金敷としている。
また、特許文献3に記載された製造方法は、処理温度を約650℃程度に制限してJIS SKT4等の合金工具鋼の硬さ低下を防止することにより、析出強化型耐熱合金の硬さの低下を許容して金敷全体の強度を高める構成としている。
また、特許文献3で記されるJIS SKT4等の合金工具鋼による基材に直接または固溶強化型耐熱合金等による肉盛り層を介して、打撃面部として析出強化型耐熱合金が肉盛りされた金敷では、前述したとおり、基材の軟化を防ぐため金敷全体を時効処理することができず、打撃面の析出強化型耐熱合金の強度が十分でない状態で熱間鍛造に使用せざるを得ない。
本発明の目的は、安価でありながら、高い寿命とすることができる金敷の製造方法と、それによって得られる金敷を提供する。
そして、打撃面には析出強化型耐熱合金を用いることにより、打撃面の高硬度化がはかれるため、材質の組合わせとしては、合金工具鋼と析出強化型耐熱合金の組合わせが最適と判断した。
しかしながら、従来のように、使用中の昇温により時効作用を受けて析出強化させる強化機構を用いては、上述の通り、析出強化が達成される以前に析出強化型合金層で構成される打撃面にへたりが生じたりヒートチェックが生成したりするため、何等、金敷の高寿命化につながらない。そのため、基材の剛性を損なうことなく、打撃面を高硬度化する新たな製造方法を鋭意検討した結果、本発明に到達した。
好ましくは、前記合金工具鋼でなる基材と、析出強化型耐熱合金でなる打撃面との間に、固溶強化型耐熱合金でなる中間層をさらに具備する金敷の製造方法である。
また本発明は、ブリネル硬さで330〜380HBWの硬さを有する合金工具鋼でなる基材と、析出強化型耐熱合金でなる打撃面とを具備する金敷であって、前記析出強化型耐熱合金層は、311HBW以上の硬さを有している金敷である。
好ましくは、前記合金工具鋼でなる基材と、析出強化型耐熱合金でなる打撃面との間に、固溶強化型耐熱合金でなる中間層を具備する金敷である。
先ず、本発明でいう金敷の一例について説明する。
図1は金敷(1)の断面模式図である。金敷(1)は、合金工具鋼鋼材でなる基材(2)と、析出強化型耐熱合金でなる打撃面(3)とを具備する。後述するが、基材(2)と、打撃面(3)の析出強化型耐熱合金の間に、固溶強化型耐熱合金でなる中間層(4)を具備しても良い。
本発明において、台金となる基材(2)を合金工具鋼としたのは、金型の剛性を確保するためである。本発明で言う合金工具鋼鋼材とは、例えば、JIS G4404に記されるものであれば良い。中でも熱間での使用に好適なものが望ましく、典型的な成分範囲を示すと、質量%で、C:0.25〜0.5%、Si:1.2%以下、Mn:0.9%以下、Cr:0.8〜5.5%、Ni:0〜4.3%、Mo:0〜3.0%、W:0〜9.5%、V:0〜2.1%、Co:0〜4.5%を含み、残部はFe及び不純物でなる合金であればよい。
典型的な成分範囲を示すと、質量%で、C:0.15%以下、Cr:15〜22%、Mo:3〜8%、W:0〜6%、Co:5〜15%、Al:1〜3%、Ti:1.5〜3%、Ta:0〜6%、B:0〜0.02%を含み、残部はNi及び不純物でなる合金である。
上述したように、本発明では基材と打撃面とを異種合金で構成する。これは、異種合金にすることで、それぞれの異種合金が有する異なる特性を別々に実現可能とするものである。具体的には、打撃面は被鍛造材を打撃する打撃面とするに必要な高硬度を付与しつつ、基材には高い剛性を実現し、金敷の応力を緩和することを可能とするものである。
異種合金を接合する方法としては、肉盛り溶接や粉末肉盛りなどの公知の技術を採用することができる。
基材となる合金工具鋼は、例えば800〜1100℃の焼入と、500〜700℃の焼戻しを実施し、通常、330〜380HBW程度の硬さに調整した状態で使用する。しかし、400℃以上で長時間加熱すると焼鈍効果により硬さが著しく低下し金敷として使用すると鍛造中に変形してしまう。一方で、析出強化型耐熱合金ではγ´相等の金属化合物を析出させるため、加熱(時効処理)が必要となる。
よって、本発明のように合金工具鋼と析出強化型合金を組み合わせた金敷において、打撃面の硬化を目的に加熱(時効処理)を行う場合、金敷全体を加熱することは困難となる。
一方、本発明が要件とする打撃面の局所的な加熱を行うことで、高い剛性を持った基材上に高温強度が非常に優れた打撃面を有する金敷を得ることが出来る。
本発明のように、打撃面を予め高強度化することにより、使用中の金敷の打撃面の析出強化型耐熱合金の剥離を防止し、打撃面のへたりといった表面欠陥も併せて抑制することができる。また、基材と打撃面とが接合された状態で加熱を行うことにより、接合面における合金元素の相互拡散が起こって接合強度が向上するため、打撃面の剥離防止に効果がある。
加熱後の打撃面の硬さを測定したとき、仮に打撃面中に若干の硬さのばらつきが生じた場合、例えば、高周波加熱装置を用いて、更に局所的に加熱を行い、硬さの調整を行なっても良い。
以上、説明する打撃面に用いる材質と加熱処理の組合わせにより、打撃面の硬さを311HBW以上とすることができる。打撃面の硬さが311HBW以上である場合、鍛造温度時における打撃面の強度を十分することができる。好ましくは330HBW以上であり、基材の硬さが330〜380HBWの組合わせが好適である。
中間層として固溶強化型耐熱合金を具備することにより、基材となる合金工具鋼と打撃面となる析出強化型耐熱合金との溶接性を向上させ、基材と打撃面との間に発生する応力をより確実に緩和させることができ、金敷の寿命をより一層向上することができる。
本発明の場合、中間層で用いる固溶強化型耐熱合金は、その固溶強化型耐熱合金の有する強化機構を利用するものでなく、上記のように溶接性を改善したり、応力を緩和したりする層として用いるものである。中間層は、単層でも良いし、二以上の成分の異なる固溶強化型耐熱合金を積層して用いても良い。
なお、本発明で言う固溶強化型耐熱合金とは、例えば、JIS G4901やG4902に示される組成を有する合金のうち、合金元素を固溶させて基地(マトリクス)を強化することが可能な組成を有する合金や、ASTM A494に記される合金で有ればよい。
典型的な成分範囲を示すと、質量%で、C:0.15%以下、Cr:15〜30%、Co:0〜3%、Mo:0〜30%、W:0〜10%、Nb:0〜4%、Ta:0〜4%、Ti:0〜1%、Al:0〜2%、Fe:0〜20%、Mn:0〜4%を含み、残部はNi及び不純物でなる合金であればよい。
勿論、中間層を形成した金敷きであっても、打撃面の硬さを311HBW以上とすることが好ましい。
870℃×1時間での焼入れと640℃×4時間での焼戻しにより、ブリネル硬さで352HBWに調整したJIS SKT4で作製した基材に、中間層としてASTM A494相当合金を積層させ、打撃面にAlloy520相当合金をTIG溶接により肉盛を行い、図1に示す構造の金敷を2組作製した。
次に、2組のうち、1組を図2のように、加熱炉上面に設けられた開口部に金敷を下向きに設置して打撃面のみを720℃×9時間の条件で局所的に加熱する時効処理を行い、打撃面の析出強化型耐熱合金中にγ´相を析出させ、析出強化させた。実施例では、打撃面の表面から10mmの深さまでの部分が炉内に装入されるようにした。その後、炉を昇温し炉内に設置した熱電対が示す温度が720℃で一定になった時点より9時間の保持を行った。表1に中間層及び打撃面の合金組成を示す。
次に、上記の比較例及び本発明例の金敷を用いてAlloy718相当合金を14本鍛造したところ、本発明の予め金敷の打撃面を高強度化した金敷では、打撃面の剥離も全く見られず、また、打撃面のへたりも軽減することができたため、金敷を長寿命化することができる。
以上の結果から、本発明の金敷は合金工具鋼鋼材でなる基材と、析出強化型耐熱合金でなる打撃面を具備するという、安価な構造でありながら、長寿命が実現できる。また、金敷の補修による交換頻度を低減することができるため、生産性向上につながる技術である。
2 基材(合金工具鋼)
3 打撃面(析出強化型耐熱合金)
4 中間層(固溶強化型耐熱合金)
5 加熱炉
Claims (4)
- 合金工具鋼でなる基材と、析出強化型耐熱合金でなる打撃面とを具備する金敷の製造方法であって、基材と打撃面とが接合された状態で打撃面を局所的に加熱して、前記析出強化型耐熱合金を析出強化させることを特徴とする金敷の製造方法。
- 合金工具鋼でなる基材と、析出強化型耐熱合金でなる打撃面との間に、固溶強化型耐熱合金でなる中間層をさらに具備し、中間層を介して基材と打撃面とが接合された状態で打撃面を局所的に加熱することを特徴とする請求項1に記載の金敷の製造方法。
- ブリネル硬さで330〜380HBWの硬さを有する合金工具鋼でなる基材と、析出強化型耐熱合金でなる打撃面とを具備する金敷であって、前記析出強化型耐熱合金層は、311HBW以上の硬さを有していることを特徴とする金敷。
- 合金工具鋼でなる基材と、析出強化型耐熱合金でなる打撃面との間に、固溶強化型耐熱合金でなる中間層を具備することを特徴とする請求項3に記載の金敷。
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