JP3714124B2 - 嵩高板紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は嵩高な板紙に関するものであり、嵩高つまり低密度で剛度が高く、古紙を主体として製造される一般の板紙に比較して腰があり、さらには同じ剛度を得るには大幅な坪量の低減が可能である、従来品に比較して紙器、包装において素材の軽量化ができる嵩高板紙に関するものである。これは、印刷用板紙、紙器包装用板紙、あるいは、段ボール用ライナー、絞り成形用シート、食品用紙器、カップ麺容器、紙カップ、あるいは各種素材と積層した積層体等に使用される板紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
板紙を紙器などの包装材料として用いる場合において、近年その環境負荷を最小限にすることが求められている。特に、二酸化炭素の放出にともなう地球温暖化の問題では、パルプの出発物質となる木材が二酸化炭素を固定するとはいえ、その使用は最小限にすべきである。そのため、省資源包装を目的として二重包装を廃止したり、包装そのものを省略する方法も取られているが、内容物の保護が、包装の目的であり、その信頼性を格段に向上させるという意味で、環境負荷の少ない軽量な板紙を使用することが望まれている。
【0003】
また、用紙の軽量化や印刷の高速化に対応して嵩高な紙が提案されている。印刷の高精細化にともない嵩高な用紙はクッション性が高く網点の再現性が良い。例えば、特開平7−189168号公報にはマーセル化されたパルプを用いた嵩高紙が提案されており、これは嵩高で、剛度高く表面平滑性がよく表面強度の強い印刷用紙や塗工原紙として使用される嵩高紙である。
【0004】
しかし、これは単層で構成された嵩高紙であり、多層で構成されたものではない。嵩高紙をこのように単層で構成すると紙の強度低下が激しく、剛度も得られず本発明のような板紙に適用することができない。
【0005】
一方、特許公報第2845285号には機械パルプを内層に含む複数の層からなる嵩高紙があり、表面強度に優れたオフセット印刷用新聞用紙を提示している。しかし坪量が低く、一層ずつ抄紙形成した後に抄き合わせるのではないため、上下層に中層のパルプが混入するなど、坪量の多い板紙抄造に適用されるものではない。また、実施例から推定されるその密度も0.55g/m3以下であり、本発明のような板紙に適用すると後述するバルーンの発生やヤング率の低下は避けられず、本発明のような嵩高板紙を製造することはできない。嵩高紙は紙の厚みが厚く低密度であるため、紙の腰としての剛度が、同一米坪で比較すると極端に高く、さらには同一剛度で比較すると大幅な坪量の低減を達成することができるものある。
【0006】
このような嵩高な紙を得るためには使用するパルプの種類や叩解調成条件や抄紙条件あるいは仕上げ条件をいろいろ工夫する。例えば、抄紙工程で装置と操業面から嵩高紙を製造する方法としては、プレスパートのサクションロールの真空度の調整や、プレス部分をシュープレスのような低圧の面接触タイプにしたり、ドライヤーパートの温度分布の管理、カレンダーのニップ圧の調整、カレンダーロールの硬度の調整などである。しかし、これら薄葉紙で得られる各種条件を最適化しただけでは90g/m2〜600g/m2程度の板紙では坪量が高いため、上記の対応は生産性を下げるとともに効率的な効果が得られないなど問題があり、本発明のような低密度の嵩高板紙を抄紙製造することは困難であった。
【0007】
そこで、嵩高な板紙を得るためにはパルプの種類を限定する必要があった。アルカリでパルプを膨潤し、パルプ中のヘミセルロース分を除去し、そののち中和してパルプ繊維を剛直にしたマーセル化パルプやグリオキザールなど架橋剤でパルプ繊維の水素結合能力を低減させたカールドフアイバーなど、パルプ繊維に変形を加えて剛直にし、短繊維同士の重なりを密にしないもの、脱リグニン処理の程度が低い、パルプ繊維が太く、剛直な、機械パルプを使用する方法等が取られる。
【0008】
しかし、これらのパルプを用いると、単層で、あるいは複層であっても単一密度の層の重ね合わせで板紙を作製した場合、パルプ相互の水素結合力の低下からヤング率が低下してしまい、剛直な剛度の高い嵩高板紙を得ることができない。そこで、このようなパルプを用いて板紙を抄紙する場合、剛度の高いものを得ようとする場合、複層で抄造し、かつ外層は剛度のあるヤング率あるいは密度の高いパルプ層とする必要がある。
【0009】
しかし、洋紙のように単層で、または多層であっても少なくとも表層の米坪が15g/m2を越えない条件で抄紙する場合に比べ、板紙抄紙ではワイヤーパート上のウエットシートの段階で米坪が15g/m2を越える条件でシートを抄合わせていく方法をとるため、各ワイヤーパートでパルプが窄水される際、パルプシートに水が抜けた後の空隙が発生し、多層で抄きあわせた後のプレス工程で、特に、中層に存在する空気が脱気できず、そのままプレスをすると、空気が逃げ場を失い、部分的に大きな層間剥離がおこり、紙面上にあたかも火傷の水膨れのようなバルーンが発生する問題がある。このように、本発明の目的とする嵩高で低密度であり剛度のある板紙はいまだ完成されていなかったのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、嵩が高く低密度であり、剛度が高く紙器などの用途に適した軽量板紙に仕上げることが可能な嵩高板紙を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の構成を取る。
1.中層の両側に外層を有する3層以上の構成で坪量が90〜600g/m2の板紙において、
(1)板紙全体の密度が0.50〜0.75g/cm3であり、
(2)少なくとも片側の外層は、坪量が15〜100g/m2、密度が0.60〜0.90g/cm3である最外層を有し、
(3)中層が機械パルプ、カールドファイバー及びマーセル化パルプからなる群から選択される一種以上のパルプを主体として構成され、中層の密度が0.20〜0.60g/cm3である嵩高板紙。
2.J Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じて測定した透気度が3000秒以下である上記1記載の嵩高板紙。
3.該嵩高板紙の少なくとも片面に表面塗工層を設けた上記1又は2記載の嵩高板紙。
4.J Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じて測定した透気度が10000秒以下である上記3記載の嵩高板紙。
5.J Tappi 紙パルプ試験方法No.54で測定した層間強度が0.6〜1.5g・cmである上記1〜4のいずれか1項記載の嵩高板紙。
6.JIS P 8121のカナダ標準形に準じて測定した該板紙の中層に用いるパルプのフリーネスが再離解状態で200〜650mlである上記1〜5のいずれか1項記載の嵩高板紙。
7.JIS P 8121のカナダ標準形に準じて測定した該板紙の最外層に用いるパルプのフリーネスが再離解状態で350〜650mlである上記1〜6のいずれか1項記載の嵩高板紙。
8.少なくともいずれかの最外層の再離解パルプにおけるウェット通気負荷値が0.030〜0.10barである上記1〜7のいずれか1項記載の嵩高板紙。
9.機械パルプが、ラジアータパイン、サザンパイン及びダグラスファーからなる群から選択される一種以上の木材を主原料として製造されたパルプである上記1〜8のいずれか1項記載の嵩高板紙。
10.機械パルプがTMP及び/又はRGPである上記1〜9のいずれか1項記載の嵩高板紙。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で得られる嵩高板紙は板紙としての剛度を発現するために、抄紙機の複数のワイヤーパートから抄きあげた多層のシートを乾燥して得られるものであり、中層の両側に外層を有する3層以上の構成で、坪量が90〜600g/m2、仕上げた板紙全体の密度が0.5〜0.75g/cm3の嵩高板紙である。この密度で嵩高であり剛度の高い板紙を得るためには、中層は密度が0.2〜0.6g/cm3と低くして嵩を得るための層として形成し、少なくとも片側の外層、又は外層のうちの最外層の密度を0.6〜0.9g/cm3と高くして形成することにより中層に形成された低密度層のヤング率の低下を外層の高密度層を加えることにより補完するとともに、サンドイッチ構造を作り剛度の高い板紙を得ることができるものである。
【0013】
これらのサンドイッチ構造で示す、外層とは中層よりも外側に位置する層であり中層と実質的に接している層である。外層が一層の場合、それが最外層であり、外層が複数層の場合、その外層のうち、最も外層に存在する層を最外層と称する。これらのサンドイッチ構造は低い密度の中層を、それより高い密度の外層で補完するように構成されていればよく、つまり、低密度な中層以外の層はすべて外層である構成である。
【0014】
シートの剛度Sはシートを片持ち梁と考えたとき、S=E・I/B・W=E・T3/12・W、(E:ヤング率MPa、I:断面二次モーメントN・cm2、B:試料巾mm、W:試料重量kg、T:試料厚さmm)で示され、剛度Sはヤング率とシート厚さの3乗に比例すると考えることができる。
【0015】
さらに板紙のような積層構造のシートの剛度は、Tappi Nov、1963、Vol.46、No.11のA.T.Lueyによると、同様に前述の式を用いて、それぞれの層のヤング率と断面二次モーメントから、各層の剛度値を求め、それら各層の剛度値の和で全層の剛度値が求められるとしている。この考え方に基づけば、紙の厚さ中心からの距離が遠いほど、すなわち紙厚さが厚いほど剛度がでるので、中層は嵩高にすれば良い。また、剛度は厚さの3乗とヤング率の積で示されるのでヤング率は外層ほど高い方が剛度向上に効果的である。
【0016】
このことから、中層の密度は0.2〜0.6g/cm3である。0.2g/cm3未満にしようとすると後で述べる層間強度の低下が激しく、0.6g/cm3を越えると目的とする最終的な嵩高板紙の密度を得ることができない。さらに好ましい中層の密度は0.3〜0.55g/cm3、最も好ましくは0.35〜0.5g/cm3である。少なくとも片側の最外層の密度は、0.6〜0.9g/cm3である。0.6g/cm3未満であるとヤング率の低下を招き、剛度の向上が期待できない。一方、最外層の密度は高い方がヤング率向上という意味では良いが、抄紙段階で0.9g/cm3を越える密度を得ることは実質的に困難であるのが現状である。
【0017】
このように、剛度を向上させるため、両側最外層のヤング率を上げることが好ましいが、片側の最外層のみ、密度、ヤング率を高くし、その最外層のみの高密度化で全体の密度が上昇することを抑止する方法も可能である。この方法により、もう一方の面では密度、ヤング率は上げずに、全体の厚さを薄くすることなく、剛性とヤング率をバランスさせてなお、操業性を改善することもできる。ただし、両最外層とも密度、ヤング率を高くした場合に比べ、剛度向上の程度は小さくなる。
【0018】
最外層に用いる密度を高くするパルプとしては、特段の制約はなく、どの種類のパルプを選択しても構わないが、NUKP、NBKP、などのN材(針葉樹)パルプの叩解度を高くして剛度を失わないようにし、後に述べるウェット通気負荷値を特定の数値範囲にすれば本特許で示す考え方で抄紙が可能である。また、これらサンドイッチ構造を効果的なものとするためには、最外層の坪量は15〜100g/m2であることが必要である。すなわち15g/m2未満であると抄紙できないか、できたとしても高ヤング率発現の効果は小さい。一方100g/m2を越えると相対的に中層の坪量が減り、嵩高な構造ができにくいからである。また、最外層も含めた外層の坪量は、15〜120g/m2程度が好ましい。
【0019】
板紙の製造方法として、一般には約10ステーション程度の複数のワイヤーパート上に数十g/m2の乾燥米坪に対応するパルプスラリーを展開してウエットシートを形成する。例えばまず最外層を形成するワイヤーパートに40g/m2程度のパルプ層を形成して脱水したのち毛布に転移させる。次に中層も同様に別のワイヤーパートで紙層を形成し毛布に乗った最外層を重ね合わせて2層を形成する。この2層をさらに別のワイヤーパートで形成した紙層に重ね合わせる手法を繰り返し、最後にもう一方の最外層を形成し、全体で10層程度の多層抄き板紙を得る。
【0020】
ワイヤーパート上ではパルプスラリーの濃度は、当初0.5重量%程度であるが、ワイヤー上で脱水されて10重量%程度の濃度にまで上昇しウエットシートとなる。このウエットシートを毛布で取り次のワイヤーパートで形成されたウエットシートを重ねあわせる。このような工程を複数回繰り返して、一体となったウエットシートをプレスパートに導入し複数のプレスロールで粗脱水する。
【0021】
本発明の嵩高板紙における最大の技術課題がこの部分で発生する。多層の抄き合わせ紙では、その層間強度を効率的に強くするために、湿紙状態で抄き合わせていく。本発明のような密度構成の板紙では、重ね合わせた複層のウエットシートをプレスロールで脱水する際、多数のバルーン状の膨れが抄紙幅方向のあちこちに発生する。
【0022】
この現象の解析と対策について本発明者らは鋭意検討したところ、このバルーン状の膨れは、本発明のような低密度の中層として抄紙する場合、ワイヤーパート上ですでに空隙が形成されていることが分かった。通常の嵩高な構造ができにくい一般古紙では、湿紙状態シートの空隙率は5%以下であるのに比べ、ある種の機械パルプを用いた場合、その空隙率は25%にも達する。このように低密度な構造になる中層は大量の空隙をウエットシートの段階で持っており、これらの中層が数枚ウエットシートで重なった状態でプレスパートに進入すると、外層のウエットシートの通気性が低いと中層にある空隙に存在する空気がプレスにより脱気できず、集合して突然層間剥離を起こしバルーンが発生するものと推定される。対策としては外層のパルプの叩解度を低くし、坪量を15〜20g/m2程度とし、抄速を遅くするか、外層を抄造後中層と積層するまでの間にウオータージェットなどの手段でランダムに多数の微細な空気抜きの開口部を設けるなどの方法がある。
【0023】
しかしながら、上記の方法では生産に対する制約条件となるため、安定的にバルーンの発生を押さえる条件を検討した結果、外層に用いるパルプのウエット通気度負荷値を0.030〜0.10barの範囲とすることが有効であることを見いだした。ウエット通気負荷値が0.03bar未満であるとあまりに脱水が良すぎるためウエットシートの強度が不足してを毛布に転移させることが困難であり、ウェット通気負荷値が0.10barを越えると該バルーン状の膨れが発生する。ここでいう、ウエット通気負荷値とは、AKRIBI社製(Papermakers Conference/P.239、1990参照)のダイナミツクドレネージテスターで測定したウエットシート形成時の吸引負荷値であり、測定方法はパルプ濃度0.05重量%のスラリーを直径95mmの50メッシュプレートの上に展開し、乾燥後50g/m2の米坪となるよう含水ウェットシートを形成する。その際、メッシュプレート下のチャンバーを0.2barで吸引した場合に発生する吸引負荷圧を濾水抵抗として測定するものである。このウェット通気負荷値は、メッシュ上に形成された含水シートに水分が充分保持され、ごく少数の部分にのみ吸引のための貫通孔が形成される。
【0024】
古紙のような微細繊維を多数含む場合には、濾水抵抗すなわちウェット通気負荷値は大きく0.18bar程度を示す。一方機械パルプや、マーセル化パルプ、カールドフアイバーなどパルプスラリーがメッシュ状に形成されたウエットシートには多数の貫通孔が空き、その濾水抵抗は急激に下がりウェットシート通気負荷値は0.05bar程度であった。
【0025】
このようなウェット通気負荷値を測定すると、外層のウェット通気負荷値が高い場合、中層の低密度層で形成される嵩高構造体の空隙に起因する空気がウェットプレス時に集合したものが、外層を通過する際に、通気抵抗が大きいため脱気できずに、中層と外層の間で層間剥離しバルーン状の膨れが発生するものと推測される。
【0026】
さらに、バルーン状膨れ発生現象の対策の第二点として、外層、内層それぞれの再離解フリーネス値で各層に使用するパルプの特性を把握する方法がある。JIS P 8121のカナダ標準形に準じて測定した該板紙の外層に用いるパルプのフリーネスが再離解状態で650mlを越えると脱水性は良好であるがパルプ繊維同士の絡み合いが少なく、ウエットシートの強度が不足する。350ml未満であるとパルプ繊維同士の絡み合いは多く、ウエットシートの強度は良好であるが、それゆえ、逆に脱水性が悪くなり、保水性が上がり、ウェット通気性が悪くなる。そのため、該バルーン状の膨れが発生する。また、中層に用いるパルプのフリーネスが再離解状態で650mlを越えると抄紙後の水切れが良いため、パルプ繊維は抄紙後、その構造を保ったまま離水状態となり、バルキーな構造を作り、嵩高、低密度化に効果があるものの、それゆえに、その構造体の中により多くの空気を同伴することになる。このためこのような構造のシートを中層に持つと抄紙、抄き合わせときに中層の同伴する空気が外層から脱気せず中層と外層の間で層間剥離しバルーン状の膨れが発生しやすくなる。
【0027】
一方、中層に用いるパルプのフリーネスが再離解状態で200ml未満であると抄紙後の水切れが悪い状態で、抄紙、窄水されるため、吸引堆積したパルプ繊維は抄紙後、嵩高、低密度化とは逆に、緻密な構造になりやすい。そのため、所望のバルキーな構造を作りにくくなるので得策ではない。650mlを越えると、低密度になりすぎてバルーン状のフクレが発生しやすくなることがある。さらに、これら、JIS P 8121のカナダ標準形に準じて、使用するパルプを再離解して測定することは、良好な操業性を示した製品を使用して必要なパルプ特性を単時間で把握するのに有効である。再離解状態で200〜650mlのフリーネスを示すような紙料は、そこに用いるパルプの種類に関わらず、混合紙料の状態でのカナダ標準型フリーネスで250〜700mlとすれば良い。
【0028】
さらに、ウェット通気負荷値は、パルプがワイヤー上に水力学的な力を受けながら堆積してウエットシートを形成た後のシートの吸引負荷値であるため、抄紙後のシートの紙層構造、嵩の出方と吸引負荷値は、密接な相関性を示す。すなわち、一般の新聞古紙のような微細繊維を多数含む場合は、濾水抵抗すなわちウェット通気負荷値は大きいため、水力学的作用を受け、結果的に、より強い吸引が行われ、吸引堆積して、形成された、積層状のパルプシートの厚さは薄くなり、乾燥したシートのJ Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じて測定した透気度で示される通気性は低くなる。この傾向と逆に、機械パルプや、マーセル化パルプ、カールドフアイバーなどパルプスラリーがメッシュ状に形成するものは、ウエットシートに多数の貫通孔が空き、その濾水抵抗は急激に下がり、吸引力が低下し、水力学的な作用は弱まり、吸引堆積して、形成される積層状のパルプシートの厚さは厚くなり、通気性は高くなる。このように通気性を測定することで使用するパルプの特性を把握することが可能である。
【0029】
ただし、正木栄一らによる1970年の印刷局研究所報告、No2、37頁にあるように、塗工層は、毛細管半径が原紙層より一桁小さく、空隙の確率密度値も塗工層は紙単独のシートの1/3程度であるため、紙シートより通気性がはるかに低い。このため塗工層の存在下では、それぞれの紙シートの特性値は把握できないため、塗工層を剥離した後、透気度を測定する必要がある。従って、多層抄合わせシート試料をJIS P 8139記載の板紙の抄き合わせ層の剥離強さ試験法による層間剥離方法で層間を剥離し測定する。各層の剥離が困難なときは、多層抄合わせシート試料を60℃の温水に1時間含漬した上で剥ぎ取る。塗工層を剥ぎ取った残りの原紙層を手抄きシート乾燥時に使用する乾燥フレームで挟み、100℃の乾燥機内で乾燥させ、さらに後20℃・65%RHで調湿しJ Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じて王研式透気度測定機で測定する。これらの測定法による透気度が3000秒を越えると通気性が悪い特徴として抄紙時の特性が抄紙後に把握できる。前述のような膨れ状態発生や、密度アップの現象が抄紙後の管理で把握できるのである。一方、これら膨れ抑止のため、例えば、これらの対応や、前述のようなパルプフリーネスを一定の範囲内にするような制御を行い、抄紙時の膨れを抑止するとその効果は、透気度が3000秒以下の値として、抄紙後の紙質データとして把握できる。さらに、表面にキャストコート法による強光沢印刷層を設ける場合などには、密着乾燥時のフクレを防止するため、塗工前の板紙の透気度は1500秒以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の嵩高板紙は、基本的に低密度の中層と高密度の外層から構成すれば良いが、使用用途によってはその外層のいずれか一方あるいは両方に接着剤と顔料を含む表面塗工層を形成して良好な印刷性を得ることができる。塗工層に用いられる顔料としては炭酸カルシウムやカオリン・クレー、タルク、酸化チタン、プラスチックピグメントなどがあり、接着剤としてはSBRラテックスや澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコールなど既知のものが使用できる。またその塗工量は全体で20〜30g/m2程度であり、これらを単層であるいは多層で形成することができる。また、顔料を含まない、いわゆるクリヤーコート層を設けることもできる。この場合の塗工物質としては、前記した接着剤と同様のものが使用できる。また、これら塗工層直下の中層に対して外層となる層には叩解度を高めて平滑化した紙層とする方が好ましいが、この場合はもう一方の外層のウェット通気度負荷値をさらに低減するよう設計する必要がある。塗工後の板紙のJ Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じる透気度は、以後の印刷加工適性やフィルム等との貼合わせ適性を考慮すると、10000秒以下であることが好ましい。さらに好ましくは5000秒以下、多層積層体を構成する場合などに最も好ましい条件は2500秒以下である。
【0031】
最外層のパルプフリーネスは、板紙として製造後その最外層を剥離して、負荷をかけずに解繊離解したパルプスラリーのカナダ標準型フリーネスが350〜650mlであることが好ましい。フリーネスとして350ml未満であると外層としての密度は容易に得られるが、ウエット通気負荷値が0.1bar以上となりバルーンの発生を避けるためには、極端に抄紙速度を落とすなどの対応が必要であり現実的でない。一方、650mlを越えるとウエット負荷値は小さくできるが、得られた剛性が低くなる。再離解状態で350〜650mlのフリーネスを示すような紙料は、そこに用いるパルプの種類に関わらず、混合紙料の状態でのカナダ標準型フリーネスで400〜700mlとすれば良い。中層の場合も同様であるが、再離解による測定でフリーネスが低下するのは、解繊離解時にパルプ繊維が若干のダメージを受けることの他に、抄紙後のキャレンダー処理などでのダメージも影響するためであり、経験的に50ml程度のフリーネス低下になることが分かっている。なお、外層が複数層である場合、最外層と中層の間に位置する外層(通常表下層と称される層)も、前記最外層に推奨されるパルプと同様のものを使用できるが、この層は、必ずしも高密度化する必要はなく、従って、脱墨古紙パルプ等も使用できる。
【0032】
中層に用いるパルプは、その低密度性を維持するためにマーセル化パルプや、カールドフアイバーなどの、出来上がったパルプを化学処理で低密度化特性を付与したパルプと、TMP、CTMPのような機械パルプ、一部化学処理した機械パルプがあるが、マーセル化パルプやカールドファイバーは高価であったりその供給量が制限されたりするため、単体で用いるのは特別なケースに限定した方が良い。機械パルプが最も好ましい。さらに、機械パルプには、一般にN材を単に機械力で破砕したのち離解したものであり、GP、TMP、RGP等があるが、TMP、RGPが好ましい。中でもラジアータパインやサザンパイン、ダグラスフアーなどの木材から得られたものが、繊維が剛直で変形しにくく、紙層を形成した際、低密度になる傾向が顕著で、プレス時の密度低下が少ないため特に好ましい。しかし、ケナフや葦、竹、サトウキビの砂糖絞り粕であるバガスなど各種非木材原料を使用することも可能である。また、機械破砕する際に化学薬品を添加する方法や、パルプ化したのち漂白する工程を経るパルプも本発明の範疇に入る。本発明においては、中層の原料として、低密度の紙層を得るのに適した前述のパルプを主体として使用するが、その他、通常用いられる木材を原料とした化学パルプ、又は、ケナフ、葦、竹、バガス等の各種非木材を原料とした化学パルプ等を適宜配合して使用することも可能である。要は中層の密度が0.2〜0.6g/cm3となるように機械パルプ、カールドファイバー、又はマーセル化パルプなどを中心に各種のパルプを選択し、必要であれば混合使用すれば良い。
【0033】
さらに、中層には、上記機械パルプ等を主体とする材料を使用するべきであるが、汎用の雑誌古紙や新聞古紙、段ボール古紙などを配合して密度を任意に調整することにより、機械パルプ等の使用量を低減してコストと得られる密度のバランスで任意に設定することができる。古紙を配合する際にも、剛直なパルプからできたものを使用するほど低密度のものを得ることができる。また、界面活性剤などの嵩高剤を使用しても良い。
【0034】
本発明の課題の第2は、中層の層間強度である。ここで層間強度とは、中層と外層の間の層間強度、中層が複数層である場合のその層間強度、中層が単層で層内で破壊される場合の層間強度のいずれかを示す。層間強度は、J TAPPI紙パルプ試験法No.54で測定されるインターナルボンドストレングスである。一般に上記機械パルプ等を使用した場合、必要なインターナルボンドテスターによって測定される層間強度は0.6〜1.5kg・cmであり、さらに好ましくは0.7〜0.9kg・cm程度である。0.6kg・cm未満であると紙器として用いた場合、印刷時、特にタックの強い印刷インキでベタ印刷する場合に中層で層間剥離を起こし、部分的に膨れを生じたり、製函機を高速で通過したり、集積される際に紙器のエッジ部を起点として剥離する場合があり好ましくない。一方1.5kg・cmを越えると強度は充分であるが、ヤング率が極端に高くなり、ロール状に巻き取るのが困難になる場合があるため好ましくない。
【0035】
多層で抄紙する板紙にはその層間強度を強くするために、一般にデンプン粒子の分散水溶液を各層間にスプレーして粒子としてのせ、乾燥ゾーンで含有する水分とともに加熱して糊化して効果を発揮させる方法がある。本発明では特に中層の低密度層の層間強度が低下する傾向にあるため使用するデンプンは糊化温度が45〜70℃であるものを使用することが好ましい。糊化温度が45℃未満であると夏場に分散液の温度が上がり、デンプン分散液自体が糊化するため好ましくなく。70℃を越えると、紙中に残るデンプン粒子の糊化が完全に起こらず、粒子のまま残存するため層間強度の向上に寄与することができなくなるため好ましくない。
【0036】
紙料中には必要に応じて、本発明の嵩高板紙の品質を損なわない範囲で、一般抄紙用の填料、サイズ剤、歩留向上剤、紙力増強剤などを添加することができる。そして抄紙時のpHも酸性抄紙の3.5付近から中性抄紙の6〜8程度の範囲とすることが可能である。また、各種のコーターを設置して塗工することもできる。紙の表面あるいは中間にスプレーするもの、あるいは内填で添加するものは、ポリビニルアルコールやラテックス、アルキルケテンダイマー系、無水マレイン酸系、スチレンアクリル酸系、スチレンアクリル系などの各種サイズ剤、顔料、染料などが挙げられる。これらは塗布あるいは含浸することも可能である。抄紙機も一般に使用される多層で抄きあげるものであればよく、円網多層、長網多層などの抄紙機を適宜使用できる。
【0037】
本発明の板紙の米坪は90〜600g/m2であり、汎用としては150〜450g/m2程度の板紙に対応した嵩高板紙であり、剛度を高めることにより100g/m2以上も米坪を低減することが可能な嵩高板紙である。この板紙は、例えば、一般的な板紙の用途である印刷用板紙、紙器包装用板紙、あるいは、段ボール用ライナー、などの他、嵩高な特性がもたらす加圧変形性を利用した絞り成形用シート、食品用紙器など、さらには、紙層内部の多孔性がもたらす断熱性を利用するカップ麺容器、紙カップ、あるいは各種素材と積層した積層体などに使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下に、本発明の代表的な実施例を記載するが、本発明は下記の実施例の範囲に限定されるものではない。特に断りのない限り、濃度や配合量、塗布量などを示す数値は固型分又は有効成分の重量基準の数値である。なお、実施例と比較例の主要な作成条件を表1及び表3に示した。
【0039】
<実施例1>
熊谷理機工業製の配向性抄紙機を用い、ワイヤースピード300m/minで熊谷理機工業製のパルプ叩解機を用いて以下の▲1▼〜▲3▼の三種類のパルプをそれぞれ叩解し、順次、抄紙し、抄き合わせていく。抄き合わせる際に、各層の表側(フェルトサイド)へ王子コーンスターチの澱粉ONL510を澱粉濃度2.0%として霧吹きスプレーで固型分付着量が1.0g/m2となるようにスプレーした後、抄き合わせる。▲1▼市販NBKP、450mlcsf、40g/m2、▲2▼ラジアータパインTMP350mlcsf、250g/m2、▲3▼市販NUKP450mlcsf、40g/m2
さらに由利ロール機械のキャレンダーのエア圧制御で、ニップ圧を10kg/cmとして、30m/minのスピードで抄き合わせた湿紙状のシートを敷島カンバス製のモノプラスチックカンバスシートに挟み加圧処理する。このとき紙層内で膨れが発生して層間剥離が発生したか否か判定する。その後、フエロタイプの円筒加熱ドライヤー型乾燥機を用いて乾燥する。さらにその後20℃・65%RHで調湿し、由利ロール機械のキャレンダーでニップ圧を20kg/cmとして、20m/minのスピードでキャレンダー処理し、さらに、手塗りで、板紙用の塗料を20g/m2塗工し、さらに由利ロール機械のキャレンダーでニップ圧を40kg/cmとして、20m/minのスピードで120℃の熱キャレンダー処理して試料を作製し、その後20℃・65%RHで調湿し、坪量、厚さ、密度とZ軸強度(層間強度)を測定する。さらに、これら試料を以下に示す方法でウェット通気度、再離解フリーネス、原紙透気度等を測定した。これらの結果は表1及び2に示した。(以下同じ。)
【0040】
<実施例2>
実施例1に使用したパルプ▲2▼の処理と配合において、ラジアータパインTMP350mlcsf/一般古紙パルプ(新聞古紙)150mlcsf品=70/30で配合後のフリーネスを280mlcsfとし、抄き合わせる際に、各層の表側(フェルトサイド)への澱粉霧吹きスプレーは行わずに抄き合わせる。その他は実施例1と同様にして試料作製し、紙質測定した。
【0041】
<実施例3>
実施例1に使用したパルプ▲2▼において、ラジアータパインTMP350mlcsfで坪量を200g/m2とし、▲3▼パルプの処理と配合においては、ラジアータパインTMP450mlcsf/一般古紙パルプ(新聞古紙)300mlcsf品=50/50で配合後のフリーネスを380mlcsfとした他は実施例1と同様にして試料作製し、紙質測定した。
【0042】
<実施例4>
実施例1に使用したパルプ▲2▼の処理と配合において、ラジアータパインTMPのフリーネスを250mlcsfとした他は実施例1と同様にして試料作製し、紙質測定した。
【0043】
<実施例5>
実施例1に使用したパルプ▲2▼の処理と配合において、一般古紙パルプ(新聞古紙)150mlcsf/ウェアハウザー製カールドファイバー750mlcsf品=85/15で配合後のフリーネスを300mlcsfとし、坪量を160g/m2とした他は実施例1と同様にして試料作製し、紙質測定した。
【0044】
<実施例6>
実施例1に使用したパルプ▲2▼の処理と配合において、ラジアータパインTMPの坪量を220g/m2とし、抄紙後塗工しない他は実施例1と同様にして試料作製し、紙質測定した。
【0045】
<実施例7>
実施例1に使用したパルプ▲3▼のかわりに、裏層へも▲1▼のパルプを同様に抄紙、抄き合わせた他は実施例1と同様にして試料作製し、紙質測定した。
【0046】
<実施例8>
実施例6に使用したパルプ▲2▼の配合において、それらの配合をラジアータパインTMP/マーセル化パルプ(レオニア社製)=70/30とし、そのフリーネスを400mlcsfとした他は実施例1と同様にして試料作製し、紙質測定した。結果を表3及び4に示す。(以下同じ。)
【0047】
<比較例1>
実施例1に使用したパルプ▲2▼、▲3▼の処理と配合において、それらの配合を一般新聞古紙200mlcsf品=100とした他は実施例1と同様にして試料作製し、紙質測定した。結果を表3及び4に示す。(以下同じ。)
【0048】
<比較例2>
実施例1に使用した裏層のパルプ▲3▼の配合量を0として表層と中層だけの構成とし、裏層をつけずに抄紙した他は実施例1と同様にして試料作製し、紙質測定した。
【0049】
<比較例3>
実施例1に使用したパルプ▲1▼、▲2▼、▲3▼の配合はそれぞれ同様として、それぞれの坪量を28g/m2の3層構造とした他は実施例1と同様にして試料作製し、紙質測定した。
【0050】
<比較例4>
実施例1に使用したパルプ▲2▼の処理と配合において、ウェアハウザー製カールドファイバー750mlcsf品=100%とした他は実施例1と同様にして試料作製しようとしたが加圧処理でバルーンが発生し、一部項目のみ測定した。
【0051】
<比較例5>
実施例1に使用したパルプ▲3▼の処理と配合において、ウェアハウザー製カールドファイバー750mlcsf品=100%とした他は実施例1と同様にして試料作製し、紙質測定した。
【0052】
<比較例6>
実施例1に使用したパルプ▲1▼においてフリーネスを280mlcsf、坪量を110g/m2とし、パルプ▲2▼はパルプ種類、フリーネスは変更せず、坪量を200g/m2とし、パルプ▲3▼の処理と配合においては、一般古紙パルプ180mlcsf品=100%とし、さらに塗工は行わず、その他は実施例1と同様にして試料作製しようとしたが加圧処理でバルーンが発生し、一部項目のみ測定した。
【0053】
<比較例7>
実施例1に使用したパルプ▲3▼の処理と配合において、一般古紙パルプ180mlcsf品=100%、坪量を10g/m2とした他は実施例1と同様にして試料作製しようとしたが裏層の抄紙が均一にできずムラのある試料となった。一部項目のみ測定した。
【0054】
上のようにして得られた、白板紙の試料について紙質評価結果を表2、4に示す。なお、評価法は次の方法によった。
〔外層、中層、裏層、各層の密度〕
JIS P 8139の板紙の抄き合わせ層の剥離強さ試験法記載の層間剥離方法で各層、層間を剥離し、厚さ(mm)、坪量(g/m2)を求める。剥離した各層の厚さは剥離によって毛羽立っており、実際の厚さより厚くなってしまうので、以下の方法で補正ファクター値を算出して、剥離後の各層の厚さ値を補正して、各層の密度を算出する。
補正ファクター値=剥離前の全層厚さ/剥離後の各層厚さの合計値
各層の剥離が上記のJIS P 8139の板紙の抄き合わせ層の剥離強さ試験法記載の層間剥離方法で困難なときは、多層抄合わせシート試料を60℃の温水に1時間含漬した上で表層と中層、裏層にそれぞれ剥ぎ分ける。剥ぎ取ったそれぞれの層を乾燥して厚さ(mm)、坪量(g/m2)を求める。その後、上記の補正ファクター値を同様に算出して剥離した各層の厚さを補正して、各層の密度を算出する。
【0055】
〔ウェット通気負荷値〕
ウエット通気負荷値は、AKRIBI社製(Papermakers Conference/P.239、1990参照)のダイナミツクドレネージテスターでパルプ濃度0.05重量%のスラリーを直径95mmの50メッシュプレートの上に展開し、乾燥後50g/m2の米坪となるよう含水ウェットシートを形成する。その際、メッシュプレート下のチャンバーを0.2barで吸引した場合に発生する吸引負荷圧を濾水抵抗として測定するものである。
【0056】
〔透気度〕
配向性抄紙機で3層に抄き合わせ、加圧処理後に乾燥した試料及びそれに手塗りで板紙用途料を塗布しキャレンダー処理した試料(未塗工例は除く)を、20℃・65%RHで調湿しJ Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じて王研式透気度測定機で測定する。
【0057】
〔再離解フリーネス〕
試料を60℃の温水に1時間含漬し表層と中層、裏層にそれぞれ剥ぎ分ける。その後、JIS P 8209のパルプ試験用手すき調整方法に定められた方法によって各層を、さらにJIS P 8121のカナダ標準ろ水度試験方法によってフリーネス測定した。
【0058】
〔塗料配合〕
上塗り:カオリン(エンゲルハード社製ウルトラホワイト90)/炭酸カルシウム(白石工業社製ブリリアント15)/酸化チタン(トーケムプロダクツ社製TCA333)=50/35/15、及びラテックス(旭化成社製L1410)/尿素リン酸エステル化澱粉(日本食品化工社製MS4600)=15/5。(固型分重量基準の配合部数、以下同じ。)
下塗り:カオリン(シール社製カオブライト)/炭酸カルシウム(備北粉化社製ソフトン2200)=50/50、及びラテックス(JSR社製0668)/尿素リン酸エステル化澱粉(日本食品化工社製MS4600)=15/5。
【0059】
【表1】
Figure 0003714124
【0060】
【表2】
Figure 0003714124
【0061】
【表3】
Figure 0003714124
【0062】
【表4】
Figure 0003714124
【0063】
【発明の効果】
本発明による手法によって板紙を製造すれば、表2に示したように、操業上、問題を発生することなく、古紙を主体として製造される板紙に比較して、嵩高、低密度で剛度が高く、腰がある紙の製造が可能である。このため従来の板紙に比べ、同じ剛度を得るには大幅な坪量の低減が可能で、板紙を利用した紙器、包装材料、積層体及び成形体などにおいて大幅に素材の軽量化ができるため、資源保護の見地においても有効である。

Claims (10)

  1. 中層の両側に外層を有する3層以上の構成で坪量が90〜600g/m2の板紙において、
    (1)板紙全体の密度が0.50〜0.75g/cm3であり、
    (2)少なくとも片側の外層は、坪量が15〜100g/m2、密度が0.60〜0.90g/cm3である最外層を有し、
    (3)中層が機械パルプ、カールドファイバー及びマーセル化パルプからなる群から選択される一種以上のパルプを主体として構成され、中層の密度が0.20〜0.60g/cm3である、
    ことを特徴とする嵩高板紙。
  2. J Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じて測定した透気度が3000秒以下であることを特徴とする請求項1記載の嵩高板紙。
  3. 該嵩高板紙の少なくとも片面に表面塗工層を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の嵩高板紙。
  4. J Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じて測定した透気度が10000秒以下であることを特徴とする請求項3記載の嵩高板紙。
  5. J Tappi 紙パルプ試験方法No.54で測定した層間強度が0.6〜1.5kg・cmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の嵩高板紙。
  6. JIS P 8121のカナダ標準形に準じて測定した該板紙の中層に用いるパルプのフリーネスが再離解状態で200〜650mlであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の嵩高板紙。
  7. JIS P 8121のカナダ標準形に準じて測定した該板紙の最外層に用いるパルプのフリーネスが再離解状態で350〜650mlであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の嵩高板紙。
  8. 少なくともいずれかの最外層の再離解パルプにおけるウェット通気負荷値が0.030〜0.10barであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の嵩高板紙。
  9. 機械パルプが、ラジアータパイン、サザンパイン及びダグラスファーからなる群から選択される一種以上の木材を主原料として製造されたパルプであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の嵩高板紙。
  10. 機械パルプがTMP及び/又はRGPであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の嵩高板紙。
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