JP2004068219A - アルンドドナックスパルプを用いた嵩高板紙 - Google Patents
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Abstract
【目的】本発明は古紙を主体として製造される一般の板紙に比較して低密度で腰がある嵩高板紙であり、さらに層間強度が高く、抄紙の際にバルーン状膨れが発生しないアルンドドナックスパルプを含有する嵩高板紙を提供する。
【構成】3層以上の多層構造からなる板紙にアルンドドナックスパルプを含有し、該アルンドドナックスは最外層以外の層、特に好ましくは中層に含有し、配合量として30質量%以下、板紙全体の密度が0.75g/m3以下であり、好ましくは透気度が2000秒以下、層間強度は0.69mJ以上である嵩高板紙。
【選択図】なし
【構成】3層以上の多層構造からなる板紙にアルンドドナックスパルプを含有し、該アルンドドナックスは最外層以外の層、特に好ましくは中層に含有し、配合量として30質量%以下、板紙全体の密度が0.75g/m3以下であり、好ましくは透気度が2000秒以下、層間強度は0.69mJ以上である嵩高板紙。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は板紙に関するものであり、更に詳しくは、古紙を主体として製造される一般の板紙に比較して低密度で腰がある嵩高板紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
板紙を包装材料として用いる場合において、近年その環境負荷を最小限にすることが求められている。そのため、省資源包装を目的として二重包装を廃止したり、包装そのものを省略する方法も取られているが、内容物の保護が、包装の目的であり、その信頼性を格段に向上させるという意味で、環境負荷の少ない軽量な板紙を使用することが望まれている。
【0003】
また、用紙の軽量化や印刷の高速化に対応して嵩高な紙が提案されている。嵩高紙は紙の厚みが厚く低密度であるため、紙の腰としての剛度が、同一米坪で比較すると極端に高く、さらには同一剛度で比較すると大幅な坪量の低減を達成することができるものである。嵩高紙の利点は、クッション性が高く網点の再現性が良いことである。例えば、特開平7−189168号公報にはマーセル化されたパルプを用いた嵩高紙が提案されており、表面平滑性がよく表面強度の強い印刷用紙や塗工原紙として使用される得る嵩高紙である。
【0004】
しかし、これは単層で構成された嵩高紙であり、多層で構成されたものではない。嵩高紙をこのように単層で構成すると紙の強度、特に剛度が得られないため本目的の板紙に適用することはできない。
また、多層であっても単一密度の層の重ね合わせで板紙を作製した場合、パルプ相互の水素結合力の低下からヤング率が低下してしまい、剛度の高い嵩高板紙を得ることができない。そこで、このようなパルプを用いる場合は、多層で抄造し、かつ外層にはヤング率、あるいは密度の高いパルプ層とする必要がある。
【0005】
板紙の製造方法は、複数のワイヤーパート上に数10g/m2の乾燥米坪に対応するパルプスラリーを展開してウエットシートを形成する。例えば、まず最外層を形成するワイヤーパートに40g/m2程度のパルプ層を形成して脱水した後、毛布に転移させる。次に、同様に別のワイヤーパートで別の紙層を形成し、毛布に乗った最外層を重ね合わせて2層を形成する。この2層をさらに別のワイヤーパートで形成した紙層に重ね合わせる手法を繰り返し、最後にもう一方の最外層を形成する。
【0006】
ワイヤーパート上ではパルプスラリーの濃度は、当初0.5重量%程度であるが、ワイヤー上で脱水されて10重量%程度の濃度にまで上昇したウエットシートとなる。このウエットシートを毛布で取り、次のワイヤーパートで形成されたウエットシートを重ね合わせる。このような工程を複数回繰り返して、一体となったウエットシートをプレスパートに導入し複数のプレスロールで粗脱水する。
【0007】
板紙は、層間強度を効率的に強くするために、湿紙状態で抄き合わせていく。重ね合わせた複層のウエットシートをプレスロールで脱水する際、多数のバルーン状の膨れが抄紙幅方向のあちこちに発生する場合がある。
密度が低くなるように構成される中層には、大量の空隙をウエットシートの段階で持っており、これらの中層がウエットシートで重なった状態でプレスパートに進入すると、外層のウエットシートとの通気性の違いで、中層にある空隙に存在する空気がプレスにより脱気できず、集合して突然層間剥離を起こしバルーン状の膨れが発生するものと推定される。
【0008】
対策としては最外層のパルプの叩解を低くし、坪量を15〜20g/m2程度とし、抄速を遅くするか、最外層を抄造後中層と積層するまでの間にウオータージェットなどの手段でランダムに多数の微細な空気抜きの開口部を設けるなどの方法があるが、実際の製造には不向きである。
【0009】
さらに、叩解調成条件や抄紙条件あるいは仕上げ条件をいろいろ工夫する方法もある。例えば、抄紙工程で装置と操業面から嵩高紙を製造する方法としては、プレスパートのサクションロールの真空度調整やプレス部分を低圧の面接触タイプのすることなどが考えられるが、これらは薄葉紙を対象にしたものであり、板紙には適応できない。
【0010】
一方、使用するパルプの種類からの対策も考えられる。アルカリでパルプを膨潤し、パルプ中のヘミセルロース分を除去し、その後中和してパルプ繊維を剛直にしたマーセル化パルプやグリオキザールなど架橋剤でパルプ繊維の水素結合能力を低減させたカールドフアイバーなど、パルプ繊維に変形を加えて剛直にし、短繊維同士の重なりを密にしないもの、脱リグニン処理の程度が低い、パルプ繊維が太く、剛直な、機械パルプを使用する方法等が考られているが密度と強度、剛度ともに満足のいくものはできていないのが現状である。特開平3−227500号公報には機械パルプを中層に含む複数の層からなる表面強度に優れたオフセット印刷用新聞用紙を開示しているが、坪量の高い板紙に適用されたものではない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は古紙を主体として製造される一般の板紙に比較して低密度で腰がある、嵩高板紙であり、さらに層間強度が高く、抄紙の際にバルーン状膨れが発生しない嵩高板紙を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために非木材パルプの一種であるアルンドドナックスパルプを含有させること、さらに、アルンドドナックスパルプは最外層以外、特に中層に配し、該アルンドドナックスパルプは蒸解後に酸素晒を経て、キシラナーゼ処理して使用することによって、層間強度は保ったまま、より一層低密度化することができることを見出した。
【0013】
本発明は以下発明を包含する。
(1)3層以上の多層構造からなる板紙にアルンドドナックスパルプを含有することを特徴とする嵩高板紙。
(2)前記アルンドドナックスパルプを最外層以外の層に含有する(1)記載の嵩高板紙。
(3)前記アルンドドナックスパルプは最外層以外の層に30質量%以下含有され、板紙全体の密度が0.75cm3である(1)記載の嵩高板紙。
(4)前記アルンドドナックスパルプは中層に含まれ、該中層の密度が0.20〜0.60g/cm3である(1)記載の嵩高板紙。
(5)J Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じて測定した透気度が2000秒以下である(1)記載の嵩高板紙。
(6)前記アルンドドナックスパルプは蒸解後、酸素晒を経て、キシラナーゼ処理された後、塩素を含まない漂白法で漂白されてなる(1)記載の嵩高板紙。
(7)J Tappi 紙パルプ試験方法No.54で測定した層間強度が0.69mJ以上である(1)記載の嵩高板紙。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明で得られる板紙は、嵩と剛度を発現するために、抄紙機の複数のワイヤーパートから抄きあげた多層のシートを乾燥して得られるものであり、中層の両側に外層を有する3層以上の構成である。外層は中層よりも外側に位置する層であり、外層が1層の場合はそれが最外層になる。嵩高であり剛度の高い板紙を得るためには、低い密度の中層を、それより高い密度の外層で補完するように構成されるサンドイッチ構造を取る。
【0015】
板紙のような積層構造のシートの剛度は、Tappi.J 1963年 、46巻、11月号のA.T.Lueyによると、それぞれの層のヤング率と断面二次モーメントから各層の剛度値を求め、それら各層の剛度値の和で全層の剛度値が求められるとしている。この考え方に基づけば、紙の厚さ中心からの距離が遠いほど、すなわち紙厚さが厚いほど剛度がでるので、最外層以外の層を嵩高にすれば良い。また、剛度は厚さの3乗とヤング率の積で示されるのでヤング率はより外層になるほど高い方が剛度向上に効果的である。
【0016】
中層の密度は0.20〜0.60g/cm3が好ましい。0.20g/cm3未満では層間強度の低下が激しく、0.60g/cm3を越えると剛度を高めるために外層の密度はそれよりも高いものを配置することになり、最終的に板紙の密度が高いものとなるため好ましくない。
【0017】
剛度を上げるためには、両側最外層のヤング率を上げることが好ましいが、片側の最外層のみ、密度、ヤング率を高くしても良く、その最外層のみの高密度化で全体の密度が上昇することを抑止しても良い。最外層に用いる密度を高くするパルプとしては、特段の制約はないが、強度を考慮してNUKP,NBKPが使用される。
【0018】
最外層以外、特に中層に用いるパルプは、密度を低くするために機械パルプが好ましく、GP、TMP、RGP等があるが、経済面からTMP、RGPが好ましい。中でもラジアータパインやサザンパイン、ダグラスフアーなどの木材から得られたものが、繊維が剛直で変形しにくく、紙層を形成した際、低密度になる傾向が顕著で、プレス時の密度低下が少ないため特に好ましい。しかしながら、機械ハ゜ルフ゜は低密度性では優位であるものの、強度が弱い。特に層間剥離により引き起こされるバルーン状の膨れ防止には層間強度が重要であり、その点ではKPや化学処理パルプに劣るためTMP単独ではなく他の相関強度を高めるパルプを混合して使用することが好ましい。例えばケナフや葦、竹、サトウキビの絞り粕であるバガスなどの非木材を化学的に脱リグニンして使用することが好ましい。
【0019】
本発明では非木材の中のアルンドドナックスから製造されるパルプを最外層以外の層に含有させる。アルンドドナックスはジャイアントリード、ダンチクとも呼ばれ、葦の仲間であり、地下茎で年間30〜40t/haの成長量があり、Tappi J、2001年1月号の96ページ(Anatoly Aらの論文)にも紹介されたように、将来の非木材繊維原料として脚光を浴び始めた繊維である。特徴は繊維細胞のルーメンに対する壁の割合(ルンケル比)が通常の木材パルプの0.5〜1.5前後に比べて高い。そのため繊維が圧縮し難く、低密度の構造体になる。一方、この繊維には非木材特有な柔細胞が多く、そのため繊維同士の結合性が良いために、パルプ化した場合層間強度が木材パルプ以上に高くなる。本発明ではアルンドドナックスから製造されたパルプをアルンドドナックスパルプという。
【0020】
本発明では前記アルンドドナックスパルプを板紙に含有する。アルンドドナックスパルプは層間強度の向上に効果が高いため最外層以外に含有させることが好ましい。含有量としては、最外層以外の層に30質量%以下含有させることが好ましい。含有量が30質量%を超えると、層間強度の上昇のわりにはコストが上昇する。
【0021】
本願発明ではアルンドドナックスのヘミセルロースを減少させることにより、強度を低下させずにさらに低密度化することが可能である。蒸解後のパルプを、まずは公知公用の方法で酸素晒を行い、アルカリによるヘミセルロースを減少させた後、キシラン分解酵素であるキシラナーゼを対パルプ0.01%〜0.1%、好ましくは0.02%〜0.07%添加し、弱酸性〜中性下で、30〜70℃の温度範囲で、30分〜4時間処理することにより更に低密度化することが可能になる。酵素処理後は洗浄してもしなくても良い。低密度で層間強度を向上させることが可能なキシラナーゼ処理したアルンドドナックスパルプは中層に用いることが最も効果的である。
また、キシラナーゼ処理されたパルプを、更に元素状の塩素を含まない薬品、すなわちClO2、オゾン、過酸化水素、アルカリなどを用いた公知公用な方法を単独もしくは組み合わせて漂白することは、特に厳しい安全性基準を求められる食品用の包装材には好適である。
【0022】
板紙は、層間強度を効率的に強くするために、湿紙状態で抄き合わせていく。その際、重ね合わせた複層のウエットシートをプレスロールで脱水する際、多数のバルーン状の膨れが抄紙幅方向のあちこちに発生する場合がある。
バルーン状膨れ防止対策として、中層の再離解したフリーネス値(JIS P 8121のカナダ標準形に準じた値)を200ml〜650ml以下にすることが好ましい。更に、最外層のパルプフリーネスについては特に規定はしないが、板紙として製造後、その最外層を剥離して不可をかけずに解繊離解したパルプスラリーのカナダ標準型フリーネスが350〜650mlであることが好ましい。
【0023】
本願発明の板紙を23℃50%RHで調湿し、 J TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5に準じて王研式透気度測定機で測定する方法がある。この測定法による透気度が2000秒を超えると印刷適性に影響を及ぼすため好ましくない。特に、キャストコート法により強光沢層を設ける場合などは密着乾燥時の膨れを防止するために、1500秒以下であることが好ましい。
【0024】
板紙は、特にタックの強い印刷インキでベタ印刷するときに中層で層間剥離を起こし、部分的に膨れを生じることがある。また紙器とするために製函機を高速で通過したり、集積される際に紙器のエッジ部を起点として剥離が起こる場合がある。そのため、中層の層間強度アップが重要となる。ここで層間強度とは、中層と外層の間の層間強度、中層が複数層である場合の層間強度、中層が単層で層内で破壊される場合の層間強度のいずれかを示す。層間強度は、J TAPPI紙パルプ試験法No.54で測定されるインターナルボンドストレングスである。一般に上記機械パルプ等を使用した場合、必要なインターナルボンドテスターによって測定される層間強度は0.69mJ以上であり、0.69mJ未満であると層間剥離を起こす場合があり好ましくない。また1.47mJを越えると強度は充分であるが、ヤング率が極端に高くなり、ロール状に巻き取るのが困難になる場合があるため好ましくない。
【0025】
多層で抄紙する板紙には、その層間強度を強くするために、デンプン粒子の分散水溶液を各層間にスプレーして粒子としてのせ、乾燥ゾーンで含有する水分とともに加熱して糊化して効果を発揮させる方法があるが、本発明ではアルンドドナックスを含有するため、デンプンの添加率を減添することも可能である。
【0026】
紙料中には必要に応じて、本発明の嵩高板紙の品質を損なわない範囲で、一般抄紙用の填料、サイズ剤、歩留向上剤、紙力増強剤などを添加することができる。そして抄紙時のpHも酸性抄紙の3.5付近から中性抄紙の6〜8程度の範囲とすることが可能である。また、各種のコーターを設置して塗工することもできる。紙の表面あるいは中間にスプレーするもの、あるいは内添で添加するものは、ポリビニルアルコールやラテックス、アルキルケテンダイマー系、無水マレイン酸系、スチレンアクリル酸系、スチレンアクリル系などの各種サイズ剤、顔料、染料などが挙げられる。これらは塗布あるいは含浸することも可能である。抄紙機も一般に使用される多層で抄きあげるものであればよく、円網多層、長網多層などの抄紙機を適宜使用できる。
【0027】
本発明の嵩高板紙は、基本的に低密度の中層と高密度の最外層、その他の外層から構成すれば良いが、使用用途によってはその最外層のいずれか一方あるいは両方に接着剤と顔料を含む表面塗工層を形成して良好な印刷性を得ることもできる。塗工層に用いられる顔料としては炭酸カルシウムやカオリン・クレー、タルク、酸化チタン、プラスチックピグメントなどがあり、接着剤としてはSBRラテックスや澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコールなど既知のものが使用できる。またその塗工量は全体で20〜30g/m2程度であり、これらを単層あるいは多層で形成することもできる。また、顔料を含まない、いわゆるクリヤーコート層を設けるても良い。この場合の塗工物質としては、前記した接着剤と同様のものが使用できる。また、これら塗工層直下の外層となる層には叩解度を高めて平滑化した紙層とする方が好ましいが、この場合はもう一方の外層のウェット通気度負荷値をさらに低減するよう設計する必要がある。
【0028】
本発明の板紙の米坪は90〜600g/m2であり、汎用としては150〜450g/m2程度の板紙に対応した嵩高板紙で、密度が0.75g/m3以下、好ましくは0.7g/m3以上であり、同じ目標剛度では100g/m2以上も米坪を低減することが可能な嵩高板紙である。この板紙は、例えば、一般的な板紙の用途である印刷用板紙、紙器包装用板紙、あるいは、段ボール用ライナー、などの他、嵩高な特性がもたらす加圧変形性を利用した絞り成形用シート、食品用紙器など、さらには、紙層内部の多孔性がもたらす断熱性を利用するカップ麺容器、紙カップ、あるいは各種素材と積層した積層体などに使用することができる。
【0029】
【実施例】
以下に、本発明の代表的な実施例を記載するが、本発明は下記の実施例の範囲に限定されるものではない。特に断りのない限り、濃度や配合量、塗布量などを示す数値は固型分又は有効成分の重量基準の数値である。
【0030】
<実施例1>
熊谷理機工業製の配向性抄紙機を用い、ワイヤースピード300m/minで熊谷理機工業製のパルプ叩解機を用いて各層パルプをそれぞれ叩解し、順次、抄紙し、抄き合わせていく。抄き合わせる際に、各層の表側(フェルトサイド)へ王子コーンスターチの澱粉ONL510を澱粉濃度2.0%として霧吹きスプレーで固型分付着量が1.0g/m2となるようにスプレーした後、抄き合わせる。表層には市販NBKP、450mlCSF、40g/m2、中層にラジアータパインTMP350mlCSFとキシラナーゼ処理した(自製キシラナーゼ、対パルプ0.05%添加、50℃、2時間、パルプ濃度10%)アルンドドナックスKP350mlCSFを70:30の配合比で250g/m2 、裏層に市販NUKP450mlCSF、40g/m2として、さらに由利ロール機械のキャレンダーのエア圧制御で、ニップ圧を10kg/cmとして、30m/minのスピードで抄き合わせた湿紙状のシートを敷島カンバス製のモノプラスチックカンバスシートに挟み加圧処理する。このとき紙層内で膨れが発生して層間剥離が発生したか否か判定する。その後、フエロタイプの円筒加熱ドライヤー型乾燥機を用いて乾燥する。さらにその後20℃・65%RHで調湿し、由利ロール機械のキャレンダーでニップ圧を20kg/cmとして、20m/minのスピードでキャレンダー処理した。作製した板紙の坪量、厚さ、密度、Z軸強度(層間強度)、透気度を測定する場合は、23℃・50%RHで調湿し行った。これらの結果は表1に示した。
【0031】
<実施例2>
実施例1の中層を、ラジアータパインTMP350mlCSF/キシラナーゼ処理したアルンドドナックスKP350mlCSFの割合を85/15の割合に変更し、抄き合わせる際に、各層の表側(フェルトサイド)への澱粉霧吹きスプレーは行わずに抄き合わせる。その他は実施例1と同様にして板紙を作製し、紙質測定した。
【0032】
<実施例3>
実施例1の中層はアルンドドナックスKPをキシラナーゼ未処理品とし、坪量を200g/m2とし、裏層に中層と同じパルプを用いた以外は実施例1と同様にして板紙を作製し、紙質測定した。
【0033】
<実施例4>
実施例1の表層の坪量を35g/m2、中層に酵素処理しアルンドドナックスパルプとの配合割合は変えないで、TMPをラジアータパインのRGPパルプ150mlCSF、坪量220g/m2、裏層の坪量を35g/m2に変えた以外は実施例1と同様にして板紙を作製し、紙質測定した。
【0034】
<実施例5>
実施例1の表層のフリーネスを550mlCSFとし、中層の坪量を220g/m2とし、裏層に一般新聞古紙パルプ200mlCSFを100%とした以外は実施例1と同様にして板紙を作製し、紙質測定した。
【0035】
<実施例6>
表層に市販NBKP450mlCSFとキシラナーゼ処理したアルンドドナックスKP350mlCSFを70:30の割合で配合し、中層アルンドドナックスKPを配合せずに、ラジアータパインTMP450mlCSF100%とした以外は実施例1と同様にして板紙を作成し、紙質測定した。
【0036】
<比較例1>
実施例1の中層に、アルンドドナックスKPを配合せず、一般新聞古紙200mlCSFを100%とした他は実施例1と同様にして板紙を作製し、紙質測定した。
【0037】
<比較例2>
実施例1の中層にアルンドドナックスKPを配合せず、ラジアータパインTMP350mlCSF100%とした以外は実施例1と同様にして板紙を作製しようとしたが加圧処理でバルーンが発生した。
【0038】
上のようにして得られた、板紙について紙質評価結果を表1に示す。なお、評価法は次の方法によった。
〔外層、中層等各層の密度〕
JIS P 8139の板紙の抄き合わせ層の剥離強さ試験法記載の層間剥離方法で各層、層間を剥離し、厚さ(mm)、坪量(g/m2)を求める。剥離した各層の厚さは剥離によって毛羽立っており、実際の厚さより厚くなってしまうので、以下の方法で補正ファクター値を算出して、剥離後の各層の厚さ値を補正して、各層の密度を算出する。
補正ファクター値=剥離前の全層厚さ/剥離後の各層厚さの合計値
各層の剥離が上記のJIS P 8139の板紙の抄き合わせ層の剥離強さ試験法記載の層間剥離方法で困難なときは、多層抄合わせ板紙シートを60℃の温水に1時間含漬した上で表層と中層、裏層にそれぞれ剥ぎ分ける。剥ぎ取ったそれぞれの層を乾燥して厚さ(mm)、坪量(g/m2)を求める。その後、上記の補正ファクター値を同様に算出して剥離した各層の厚さを補正して、各層の密度を算出する。
【0039】
〔剛度〕JIS P 8125に準じて測定する。(MD方向)
〔層間強度〕J TAPPI紙パルプ試験法No.54に準じて測定する。(Z軸強度で示す)
〔透気度〕J Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じて王研式透気度測定機で測定する。
〔バルーン状膨れ評価〕目視で評価
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
本発明により、操業上、問題を発生することなく、古紙を主体として製造される板紙に比較して、低密度で腰がある嵩高板紙の製造が可能になった。これにより大幅な坪量の低減が可能となり、紙器、包装材料、積層体及び成形体などにおいても大幅に軽量化ができるため、輸送費のコスト削減、資源保護の見地においても有効である。
【発明の属する技術分野】
本発明は板紙に関するものであり、更に詳しくは、古紙を主体として製造される一般の板紙に比較して低密度で腰がある嵩高板紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
板紙を包装材料として用いる場合において、近年その環境負荷を最小限にすることが求められている。そのため、省資源包装を目的として二重包装を廃止したり、包装そのものを省略する方法も取られているが、内容物の保護が、包装の目的であり、その信頼性を格段に向上させるという意味で、環境負荷の少ない軽量な板紙を使用することが望まれている。
【0003】
また、用紙の軽量化や印刷の高速化に対応して嵩高な紙が提案されている。嵩高紙は紙の厚みが厚く低密度であるため、紙の腰としての剛度が、同一米坪で比較すると極端に高く、さらには同一剛度で比較すると大幅な坪量の低減を達成することができるものである。嵩高紙の利点は、クッション性が高く網点の再現性が良いことである。例えば、特開平7−189168号公報にはマーセル化されたパルプを用いた嵩高紙が提案されており、表面平滑性がよく表面強度の強い印刷用紙や塗工原紙として使用される得る嵩高紙である。
【0004】
しかし、これは単層で構成された嵩高紙であり、多層で構成されたものではない。嵩高紙をこのように単層で構成すると紙の強度、特に剛度が得られないため本目的の板紙に適用することはできない。
また、多層であっても単一密度の層の重ね合わせで板紙を作製した場合、パルプ相互の水素結合力の低下からヤング率が低下してしまい、剛度の高い嵩高板紙を得ることができない。そこで、このようなパルプを用いる場合は、多層で抄造し、かつ外層にはヤング率、あるいは密度の高いパルプ層とする必要がある。
【0005】
板紙の製造方法は、複数のワイヤーパート上に数10g/m2の乾燥米坪に対応するパルプスラリーを展開してウエットシートを形成する。例えば、まず最外層を形成するワイヤーパートに40g/m2程度のパルプ層を形成して脱水した後、毛布に転移させる。次に、同様に別のワイヤーパートで別の紙層を形成し、毛布に乗った最外層を重ね合わせて2層を形成する。この2層をさらに別のワイヤーパートで形成した紙層に重ね合わせる手法を繰り返し、最後にもう一方の最外層を形成する。
【0006】
ワイヤーパート上ではパルプスラリーの濃度は、当初0.5重量%程度であるが、ワイヤー上で脱水されて10重量%程度の濃度にまで上昇したウエットシートとなる。このウエットシートを毛布で取り、次のワイヤーパートで形成されたウエットシートを重ね合わせる。このような工程を複数回繰り返して、一体となったウエットシートをプレスパートに導入し複数のプレスロールで粗脱水する。
【0007】
板紙は、層間強度を効率的に強くするために、湿紙状態で抄き合わせていく。重ね合わせた複層のウエットシートをプレスロールで脱水する際、多数のバルーン状の膨れが抄紙幅方向のあちこちに発生する場合がある。
密度が低くなるように構成される中層には、大量の空隙をウエットシートの段階で持っており、これらの中層がウエットシートで重なった状態でプレスパートに進入すると、外層のウエットシートとの通気性の違いで、中層にある空隙に存在する空気がプレスにより脱気できず、集合して突然層間剥離を起こしバルーン状の膨れが発生するものと推定される。
【0008】
対策としては最外層のパルプの叩解を低くし、坪量を15〜20g/m2程度とし、抄速を遅くするか、最外層を抄造後中層と積層するまでの間にウオータージェットなどの手段でランダムに多数の微細な空気抜きの開口部を設けるなどの方法があるが、実際の製造には不向きである。
【0009】
さらに、叩解調成条件や抄紙条件あるいは仕上げ条件をいろいろ工夫する方法もある。例えば、抄紙工程で装置と操業面から嵩高紙を製造する方法としては、プレスパートのサクションロールの真空度調整やプレス部分を低圧の面接触タイプのすることなどが考えられるが、これらは薄葉紙を対象にしたものであり、板紙には適応できない。
【0010】
一方、使用するパルプの種類からの対策も考えられる。アルカリでパルプを膨潤し、パルプ中のヘミセルロース分を除去し、その後中和してパルプ繊維を剛直にしたマーセル化パルプやグリオキザールなど架橋剤でパルプ繊維の水素結合能力を低減させたカールドフアイバーなど、パルプ繊維に変形を加えて剛直にし、短繊維同士の重なりを密にしないもの、脱リグニン処理の程度が低い、パルプ繊維が太く、剛直な、機械パルプを使用する方法等が考られているが密度と強度、剛度ともに満足のいくものはできていないのが現状である。特開平3−227500号公報には機械パルプを中層に含む複数の層からなる表面強度に優れたオフセット印刷用新聞用紙を開示しているが、坪量の高い板紙に適用されたものではない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は古紙を主体として製造される一般の板紙に比較して低密度で腰がある、嵩高板紙であり、さらに層間強度が高く、抄紙の際にバルーン状膨れが発生しない嵩高板紙を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために非木材パルプの一種であるアルンドドナックスパルプを含有させること、さらに、アルンドドナックスパルプは最外層以外、特に中層に配し、該アルンドドナックスパルプは蒸解後に酸素晒を経て、キシラナーゼ処理して使用することによって、層間強度は保ったまま、より一層低密度化することができることを見出した。
【0013】
本発明は以下発明を包含する。
(1)3層以上の多層構造からなる板紙にアルンドドナックスパルプを含有することを特徴とする嵩高板紙。
(2)前記アルンドドナックスパルプを最外層以外の層に含有する(1)記載の嵩高板紙。
(3)前記アルンドドナックスパルプは最外層以外の層に30質量%以下含有され、板紙全体の密度が0.75cm3である(1)記載の嵩高板紙。
(4)前記アルンドドナックスパルプは中層に含まれ、該中層の密度が0.20〜0.60g/cm3である(1)記載の嵩高板紙。
(5)J Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じて測定した透気度が2000秒以下である(1)記載の嵩高板紙。
(6)前記アルンドドナックスパルプは蒸解後、酸素晒を経て、キシラナーゼ処理された後、塩素を含まない漂白法で漂白されてなる(1)記載の嵩高板紙。
(7)J Tappi 紙パルプ試験方法No.54で測定した層間強度が0.69mJ以上である(1)記載の嵩高板紙。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明で得られる板紙は、嵩と剛度を発現するために、抄紙機の複数のワイヤーパートから抄きあげた多層のシートを乾燥して得られるものであり、中層の両側に外層を有する3層以上の構成である。外層は中層よりも外側に位置する層であり、外層が1層の場合はそれが最外層になる。嵩高であり剛度の高い板紙を得るためには、低い密度の中層を、それより高い密度の外層で補完するように構成されるサンドイッチ構造を取る。
【0015】
板紙のような積層構造のシートの剛度は、Tappi.J 1963年 、46巻、11月号のA.T.Lueyによると、それぞれの層のヤング率と断面二次モーメントから各層の剛度値を求め、それら各層の剛度値の和で全層の剛度値が求められるとしている。この考え方に基づけば、紙の厚さ中心からの距離が遠いほど、すなわち紙厚さが厚いほど剛度がでるので、最外層以外の層を嵩高にすれば良い。また、剛度は厚さの3乗とヤング率の積で示されるのでヤング率はより外層になるほど高い方が剛度向上に効果的である。
【0016】
中層の密度は0.20〜0.60g/cm3が好ましい。0.20g/cm3未満では層間強度の低下が激しく、0.60g/cm3を越えると剛度を高めるために外層の密度はそれよりも高いものを配置することになり、最終的に板紙の密度が高いものとなるため好ましくない。
【0017】
剛度を上げるためには、両側最外層のヤング率を上げることが好ましいが、片側の最外層のみ、密度、ヤング率を高くしても良く、その最外層のみの高密度化で全体の密度が上昇することを抑止しても良い。最外層に用いる密度を高くするパルプとしては、特段の制約はないが、強度を考慮してNUKP,NBKPが使用される。
【0018】
最外層以外、特に中層に用いるパルプは、密度を低くするために機械パルプが好ましく、GP、TMP、RGP等があるが、経済面からTMP、RGPが好ましい。中でもラジアータパインやサザンパイン、ダグラスフアーなどの木材から得られたものが、繊維が剛直で変形しにくく、紙層を形成した際、低密度になる傾向が顕著で、プレス時の密度低下が少ないため特に好ましい。しかしながら、機械ハ゜ルフ゜は低密度性では優位であるものの、強度が弱い。特に層間剥離により引き起こされるバルーン状の膨れ防止には層間強度が重要であり、その点ではKPや化学処理パルプに劣るためTMP単独ではなく他の相関強度を高めるパルプを混合して使用することが好ましい。例えばケナフや葦、竹、サトウキビの絞り粕であるバガスなどの非木材を化学的に脱リグニンして使用することが好ましい。
【0019】
本発明では非木材の中のアルンドドナックスから製造されるパルプを最外層以外の層に含有させる。アルンドドナックスはジャイアントリード、ダンチクとも呼ばれ、葦の仲間であり、地下茎で年間30〜40t/haの成長量があり、Tappi J、2001年1月号の96ページ(Anatoly Aらの論文)にも紹介されたように、将来の非木材繊維原料として脚光を浴び始めた繊維である。特徴は繊維細胞のルーメンに対する壁の割合(ルンケル比)が通常の木材パルプの0.5〜1.5前後に比べて高い。そのため繊維が圧縮し難く、低密度の構造体になる。一方、この繊維には非木材特有な柔細胞が多く、そのため繊維同士の結合性が良いために、パルプ化した場合層間強度が木材パルプ以上に高くなる。本発明ではアルンドドナックスから製造されたパルプをアルンドドナックスパルプという。
【0020】
本発明では前記アルンドドナックスパルプを板紙に含有する。アルンドドナックスパルプは層間強度の向上に効果が高いため最外層以外に含有させることが好ましい。含有量としては、最外層以外の層に30質量%以下含有させることが好ましい。含有量が30質量%を超えると、層間強度の上昇のわりにはコストが上昇する。
【0021】
本願発明ではアルンドドナックスのヘミセルロースを減少させることにより、強度を低下させずにさらに低密度化することが可能である。蒸解後のパルプを、まずは公知公用の方法で酸素晒を行い、アルカリによるヘミセルロースを減少させた後、キシラン分解酵素であるキシラナーゼを対パルプ0.01%〜0.1%、好ましくは0.02%〜0.07%添加し、弱酸性〜中性下で、30〜70℃の温度範囲で、30分〜4時間処理することにより更に低密度化することが可能になる。酵素処理後は洗浄してもしなくても良い。低密度で層間強度を向上させることが可能なキシラナーゼ処理したアルンドドナックスパルプは中層に用いることが最も効果的である。
また、キシラナーゼ処理されたパルプを、更に元素状の塩素を含まない薬品、すなわちClO2、オゾン、過酸化水素、アルカリなどを用いた公知公用な方法を単独もしくは組み合わせて漂白することは、特に厳しい安全性基準を求められる食品用の包装材には好適である。
【0022】
板紙は、層間強度を効率的に強くするために、湿紙状態で抄き合わせていく。その際、重ね合わせた複層のウエットシートをプレスロールで脱水する際、多数のバルーン状の膨れが抄紙幅方向のあちこちに発生する場合がある。
バルーン状膨れ防止対策として、中層の再離解したフリーネス値(JIS P 8121のカナダ標準形に準じた値)を200ml〜650ml以下にすることが好ましい。更に、最外層のパルプフリーネスについては特に規定はしないが、板紙として製造後、その最外層を剥離して不可をかけずに解繊離解したパルプスラリーのカナダ標準型フリーネスが350〜650mlであることが好ましい。
【0023】
本願発明の板紙を23℃50%RHで調湿し、 J TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5に準じて王研式透気度測定機で測定する方法がある。この測定法による透気度が2000秒を超えると印刷適性に影響を及ぼすため好ましくない。特に、キャストコート法により強光沢層を設ける場合などは密着乾燥時の膨れを防止するために、1500秒以下であることが好ましい。
【0024】
板紙は、特にタックの強い印刷インキでベタ印刷するときに中層で層間剥離を起こし、部分的に膨れを生じることがある。また紙器とするために製函機を高速で通過したり、集積される際に紙器のエッジ部を起点として剥離が起こる場合がある。そのため、中層の層間強度アップが重要となる。ここで層間強度とは、中層と外層の間の層間強度、中層が複数層である場合の層間強度、中層が単層で層内で破壊される場合の層間強度のいずれかを示す。層間強度は、J TAPPI紙パルプ試験法No.54で測定されるインターナルボンドストレングスである。一般に上記機械パルプ等を使用した場合、必要なインターナルボンドテスターによって測定される層間強度は0.69mJ以上であり、0.69mJ未満であると層間剥離を起こす場合があり好ましくない。また1.47mJを越えると強度は充分であるが、ヤング率が極端に高くなり、ロール状に巻き取るのが困難になる場合があるため好ましくない。
【0025】
多層で抄紙する板紙には、その層間強度を強くするために、デンプン粒子の分散水溶液を各層間にスプレーして粒子としてのせ、乾燥ゾーンで含有する水分とともに加熱して糊化して効果を発揮させる方法があるが、本発明ではアルンドドナックスを含有するため、デンプンの添加率を減添することも可能である。
【0026】
紙料中には必要に応じて、本発明の嵩高板紙の品質を損なわない範囲で、一般抄紙用の填料、サイズ剤、歩留向上剤、紙力増強剤などを添加することができる。そして抄紙時のpHも酸性抄紙の3.5付近から中性抄紙の6〜8程度の範囲とすることが可能である。また、各種のコーターを設置して塗工することもできる。紙の表面あるいは中間にスプレーするもの、あるいは内添で添加するものは、ポリビニルアルコールやラテックス、アルキルケテンダイマー系、無水マレイン酸系、スチレンアクリル酸系、スチレンアクリル系などの各種サイズ剤、顔料、染料などが挙げられる。これらは塗布あるいは含浸することも可能である。抄紙機も一般に使用される多層で抄きあげるものであればよく、円網多層、長網多層などの抄紙機を適宜使用できる。
【0027】
本発明の嵩高板紙は、基本的に低密度の中層と高密度の最外層、その他の外層から構成すれば良いが、使用用途によってはその最外層のいずれか一方あるいは両方に接着剤と顔料を含む表面塗工層を形成して良好な印刷性を得ることもできる。塗工層に用いられる顔料としては炭酸カルシウムやカオリン・クレー、タルク、酸化チタン、プラスチックピグメントなどがあり、接着剤としてはSBRラテックスや澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコールなど既知のものが使用できる。またその塗工量は全体で20〜30g/m2程度であり、これらを単層あるいは多層で形成することもできる。また、顔料を含まない、いわゆるクリヤーコート層を設けるても良い。この場合の塗工物質としては、前記した接着剤と同様のものが使用できる。また、これら塗工層直下の外層となる層には叩解度を高めて平滑化した紙層とする方が好ましいが、この場合はもう一方の外層のウェット通気度負荷値をさらに低減するよう設計する必要がある。
【0028】
本発明の板紙の米坪は90〜600g/m2であり、汎用としては150〜450g/m2程度の板紙に対応した嵩高板紙で、密度が0.75g/m3以下、好ましくは0.7g/m3以上であり、同じ目標剛度では100g/m2以上も米坪を低減することが可能な嵩高板紙である。この板紙は、例えば、一般的な板紙の用途である印刷用板紙、紙器包装用板紙、あるいは、段ボール用ライナー、などの他、嵩高な特性がもたらす加圧変形性を利用した絞り成形用シート、食品用紙器など、さらには、紙層内部の多孔性がもたらす断熱性を利用するカップ麺容器、紙カップ、あるいは各種素材と積層した積層体などに使用することができる。
【0029】
【実施例】
以下に、本発明の代表的な実施例を記載するが、本発明は下記の実施例の範囲に限定されるものではない。特に断りのない限り、濃度や配合量、塗布量などを示す数値は固型分又は有効成分の重量基準の数値である。
【0030】
<実施例1>
熊谷理機工業製の配向性抄紙機を用い、ワイヤースピード300m/minで熊谷理機工業製のパルプ叩解機を用いて各層パルプをそれぞれ叩解し、順次、抄紙し、抄き合わせていく。抄き合わせる際に、各層の表側(フェルトサイド)へ王子コーンスターチの澱粉ONL510を澱粉濃度2.0%として霧吹きスプレーで固型分付着量が1.0g/m2となるようにスプレーした後、抄き合わせる。表層には市販NBKP、450mlCSF、40g/m2、中層にラジアータパインTMP350mlCSFとキシラナーゼ処理した(自製キシラナーゼ、対パルプ0.05%添加、50℃、2時間、パルプ濃度10%)アルンドドナックスKP350mlCSFを70:30の配合比で250g/m2 、裏層に市販NUKP450mlCSF、40g/m2として、さらに由利ロール機械のキャレンダーのエア圧制御で、ニップ圧を10kg/cmとして、30m/minのスピードで抄き合わせた湿紙状のシートを敷島カンバス製のモノプラスチックカンバスシートに挟み加圧処理する。このとき紙層内で膨れが発生して層間剥離が発生したか否か判定する。その後、フエロタイプの円筒加熱ドライヤー型乾燥機を用いて乾燥する。さらにその後20℃・65%RHで調湿し、由利ロール機械のキャレンダーでニップ圧を20kg/cmとして、20m/minのスピードでキャレンダー処理した。作製した板紙の坪量、厚さ、密度、Z軸強度(層間強度)、透気度を測定する場合は、23℃・50%RHで調湿し行った。これらの結果は表1に示した。
【0031】
<実施例2>
実施例1の中層を、ラジアータパインTMP350mlCSF/キシラナーゼ処理したアルンドドナックスKP350mlCSFの割合を85/15の割合に変更し、抄き合わせる際に、各層の表側(フェルトサイド)への澱粉霧吹きスプレーは行わずに抄き合わせる。その他は実施例1と同様にして板紙を作製し、紙質測定した。
【0032】
<実施例3>
実施例1の中層はアルンドドナックスKPをキシラナーゼ未処理品とし、坪量を200g/m2とし、裏層に中層と同じパルプを用いた以外は実施例1と同様にして板紙を作製し、紙質測定した。
【0033】
<実施例4>
実施例1の表層の坪量を35g/m2、中層に酵素処理しアルンドドナックスパルプとの配合割合は変えないで、TMPをラジアータパインのRGPパルプ150mlCSF、坪量220g/m2、裏層の坪量を35g/m2に変えた以外は実施例1と同様にして板紙を作製し、紙質測定した。
【0034】
<実施例5>
実施例1の表層のフリーネスを550mlCSFとし、中層の坪量を220g/m2とし、裏層に一般新聞古紙パルプ200mlCSFを100%とした以外は実施例1と同様にして板紙を作製し、紙質測定した。
【0035】
<実施例6>
表層に市販NBKP450mlCSFとキシラナーゼ処理したアルンドドナックスKP350mlCSFを70:30の割合で配合し、中層アルンドドナックスKPを配合せずに、ラジアータパインTMP450mlCSF100%とした以外は実施例1と同様にして板紙を作成し、紙質測定した。
【0036】
<比較例1>
実施例1の中層に、アルンドドナックスKPを配合せず、一般新聞古紙200mlCSFを100%とした他は実施例1と同様にして板紙を作製し、紙質測定した。
【0037】
<比較例2>
実施例1の中層にアルンドドナックスKPを配合せず、ラジアータパインTMP350mlCSF100%とした以外は実施例1と同様にして板紙を作製しようとしたが加圧処理でバルーンが発生した。
【0038】
上のようにして得られた、板紙について紙質評価結果を表1に示す。なお、評価法は次の方法によった。
〔外層、中層等各層の密度〕
JIS P 8139の板紙の抄き合わせ層の剥離強さ試験法記載の層間剥離方法で各層、層間を剥離し、厚さ(mm)、坪量(g/m2)を求める。剥離した各層の厚さは剥離によって毛羽立っており、実際の厚さより厚くなってしまうので、以下の方法で補正ファクター値を算出して、剥離後の各層の厚さ値を補正して、各層の密度を算出する。
補正ファクター値=剥離前の全層厚さ/剥離後の各層厚さの合計値
各層の剥離が上記のJIS P 8139の板紙の抄き合わせ層の剥離強さ試験法記載の層間剥離方法で困難なときは、多層抄合わせ板紙シートを60℃の温水に1時間含漬した上で表層と中層、裏層にそれぞれ剥ぎ分ける。剥ぎ取ったそれぞれの層を乾燥して厚さ(mm)、坪量(g/m2)を求める。その後、上記の補正ファクター値を同様に算出して剥離した各層の厚さを補正して、各層の密度を算出する。
【0039】
〔剛度〕JIS P 8125に準じて測定する。(MD方向)
〔層間強度〕J TAPPI紙パルプ試験法No.54に準じて測定する。(Z軸強度で示す)
〔透気度〕J Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じて王研式透気度測定機で測定する。
〔バルーン状膨れ評価〕目視で評価
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
本発明により、操業上、問題を発生することなく、古紙を主体として製造される板紙に比較して、低密度で腰がある嵩高板紙の製造が可能になった。これにより大幅な坪量の低減が可能となり、紙器、包装材料、積層体及び成形体などにおいても大幅に軽量化ができるため、輸送費のコスト削減、資源保護の見地においても有効である。
Claims (7)
- 3層以上の多層構造からなる板紙にアルンドドナックスパルプを含有することを特徴とする嵩高板紙。
- 前記板紙の最外層以外の層にアルンドドナックスパルプを含有することを特徴とする請求項1記載の嵩高板紙。
- 前記アルンドドナックスパルプが最外層以外の層に30質量%以下含有され、板紙全体の密度が0.75g/m3以下であることを特徴とする請求項1記載の嵩高板紙。
- 前記アルンドドナックスパルプは中層に含まれ、該中層の密度が0.20〜0.60g/cm3であることを特徴とする請求項1記載の嵩高板紙。
- J Tappi 紙パルプ試験方法No.5に準じて測定した透気度が2000秒以下であることを特徴とする請求項1記載の嵩高板紙。
- 前記アルンドドナックスパルプは蒸解後、酸素晒を経て、キシラナーゼ処理された後、塩素を含まない漂白法で漂白されてなることを特徴とする請求項1記載の嵩高板紙。
- J Tappi 紙パルプ試験方法No.54で測定した層間強度が0.69mJ以上であることを特徴とする請求項1記載の嵩高板紙。
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