JP3912066B2 - 成形加工原紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は食品包装容器や工業製品包装容器などに使用される成形加工原紙に関し、さらに詳しくは、廃棄時の環境負荷が低く、優れた成形性、生産性を有する成形加工原紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から弁当箱、食品用トレーといった食品包装容器や、CDケース、電気部品用ケースといった工業製品包装容器としてプラスチック製容器が使用されてきた。これらのプラスチック製容器としては、発泡ポリスチレンシートをプレス成形したもの、発泡ポリスチレンビーズをモウルド成形したもの、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルのシートをプレス成形したものが挙げられ、成形が容易であること、大量生産できること、安価に製造できることなどから、これまで大量に使用されてきた。
しかしながら、上記プラスチック製容器は、埋め立て処理をすると、半永久的に分解されず地中に残存するといった問題や、焼却処理をすると、燃焼カロリーが高く焼却炉を傷めやすい、また完全燃焼しにくく、特にポリ塩化ビニルを使用したものは焼却時に腐食性が強い塩化水素ガスを発生しやすいといった問題があった。
【0003】
一方、焼却時の燃焼カロリーが低く、焼却時に腐食性ガスの発生しない原料として、天然パルプが挙げられる。こうしたパルプを原料にした成形体の製造方法として、従来からパルプモウルド法が知られているが、これはパルプを原料として水中に分散した後、所定のワイヤー上で真空吸引により脱水し、パルプ成分を抄き取った後、該パルプ成分から吸引脱水して所定の形状の湿潤成形品を形成した後、熱により乾燥して成形体を製造するものである。パルプモウルド法は、パルプ成分を所定の形状に抄き上げるため良好な成形性を有するが、湿潤成形品の乾燥にエネルギーと時間がかかり、生産性が低いといった問題があった。
【0004】
上記パルプモウルド法以外に天然パルプを原料にして成形体を得る方法として、板紙を加熱下でプレス成形する方法が知られている。このプレス成形法は1回のプレスで成形体が得られるため、生産性が非常に高いが、通常の板紙を使用した場合、延伸性が低くプレス時に亀裂が生じやすいため、絞り深さのほとんどない成形体、例えば浅い皿といった成形体しか製造することができなかった。このため、絞り深さのある成形体を製造(深絞り成形)することができず、得られる成形体の形状が非常に限られていた。
【0005】
このような問題を解決する方法として、特開平5−286023号公報では、紙材に波形の屈曲部を多数設けて延伸性を付与した波形紙を金型内で加熱圧搾する方法が、特開平6−134898号公報では、全面に亘って凹凸を形成して延伸性を付与した紙材を加湿後に加熱しながらプレス成形する方法が、特開平7−214705号公報では、加湿処理の施された原紙を接着剤を介して複数重ねあわせ、次いでコルゲート加工して延伸性を付与した後、プレス成形する方法が開示されている。また、特開平7−315358号公報では、段高が2mm以下のダンボールシート(マイクロフルート)を金属型で加熱しながらプレス成形する方法が開示されているが、これはシートを嵩高くして成形性を向上させたものである。また、特開平6−239334号公報では、パルプ繊維にポリエチレン、ポリプロピレンといったオレフィン系樹脂を含ませて延伸性を付与したシートをプレス成形する方法が、特開平10−8393公報では、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリプロピレン繊維といった熱可塑性樹脂繊維とパルプ繊維と混抄して延伸性を向上させたシートを、金属型で加熱しながらプレス成形する方法が開示されている。
しかしながら、成形体が歪みの大きな曲面部を有する場合、プレス成形時に曲面部分に折り皺を形成させて曲面部の歪みを吸収させる必要があり、上記いずれのシートについても、このときに発生する折り皺部分の凹凸が大きく成形性が良好とは言えなかった。
【0006】
そこで、本発明者らはこうした問題を解決する方法として低密度層と高密度層からなる多層構造の成形加工原紙(特願2001−163109)を出願したが、これはトレー等の比較的絞り深さの浅いものを成形加工するには十分であるが、カップ等の絞り深さの深いものについては、成形速度、すなわちプレス速度を速くすると、外側の紙層表面にひび割れや破れが発生しやすく不十分であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、カップ等の絞り深さの深い成形体をプレス成形するときに、ひび割れ、破れや折り皺部分の凹凸が発生しない良好な成形性と、高い生産性とを有した、成形加工原紙を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために以下の構成をとる。
すなわち、本発明の第1は、少なくとも紙支持体の片面に破断伸び(JIS−P8113)が5%以上である紙シートを外層となるよう積層させた多層紙であり、前記紙シートが坪量40〜300g/m 3 であり、前記紙支持体が機械パルプを主体として構成されており、多層紙全体の坪量が100〜500g/m2、密度が0.5〜0.7g/cm3の範囲にある成形加工原紙である。
【0009】
また、本発明の第2は、少なくとも低密度層およびそれより密度の高い外層を有する多層紙であって、前記低密度層が機械パルプを主体として構成されており、多層紙全体の坪量が100〜500g/m2、密度が0.5〜0.7g/cm3であり、外層の破断伸び(JIS−P8113)が5%以上である成形加工原紙である。
【0011】
【発明の実施の形態】
[外層用紙シートについて]
一般に、カップ等の絞り深さの深い成形体は、絞り深さの浅いものに比べて成形時により多く延伸され、さらに、成形体の外側となる側の紙層は、絞り成形時に内側よりも多く延伸されるため、切れやすくなる。切れを防止するため、本発明で外層に使用する紙シートの破断伸びは5%以上であり、より好ましくは7%以上である。
こうした外層用の紙シートを構成する天然パルプ繊維としては木材繊維(化学パルプ、機械パルプ)、非木材繊維などが挙げられる。木材繊維のうち、化学パルプとしては、木材チップ蒸解時に苛性ソーダと硫化ナトリウムを使用するクラフトパルプや、亜硫酸と亜硫酸水素塩を使用する亜硫酸パルプなどが挙げられ、これらのパルプは未晒品でも、漂白処理を施したものでも良い。機械パルプとしては、丸太をグラインダーで磨砕して得られるグラウンドウッドパルプ(GP)、製材工場の廃材をリファイナーで磨砕(リファイニング)して得られるリファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、木材チップを加熱、リファイニング処理して得られるサーモメカニカルパルプ(TMP)などが挙げられる。TMPには上記以外に木材チップを化学処理した後に加圧下でリファイニングするC−TMP、さらに漂白処理を施したBC−TMPなどもある。
こうした木材繊維パルプのうち、マツ、カラマツ、スギ、モミ、ヒノキ等の針葉樹から得られる繊維長の長いパルプは紙シートの延伸性、強度を向上させるために好適に使用される。また、本発明の効果を損なわない範囲でカバ、ブナ、カエデ、ニレ、クリ等の広葉樹から得られる繊維長の短いパルプを併用することもできる。
本発明の外層用紙シートに使用できる非木材繊維としてはコウゾ、ミツマタ、ガンピ、アマ、タイマ、ケナフ、チョマ、ジュート、サンヘンプなどの靭皮繊維類や、木綿、コットンリンターなどの種毛繊維類や、マニラ麻、サイザル麻、エスパルトなどの葉繊維類や、竹、イネワラ、ムギワラ、サトウキビバガスなどの茎繊維類などが挙げられる。特にコウゾ、ミツマタ、ケナフ、マニラ麻、サイザル麻、木綿、コットンリンターなどは繊維長も長く紙シートの延伸性、強度を向上させることができ、好適に用いられる。こうした非木材繊維は、常法により蒸解しパルプ化して使用する。蒸解法としては苛性ソーダを使用するソーダ蒸解法、苛性ソーダと硫化ナトリウムを使用するクラフト蒸解法、苛性ソーダと亜硫酸ソーダを使用する亜硫酸ソーダ蒸解法などがある。上記蒸解法で得られた非木材繊維パルプは未晒品でも、漂白処理を施したものでも良い。また、非木材繊維は木材繊維と同様に、リファイナーを使って加圧、加熱下で磨砕(リファイニング)してパルプ化することができる。
これらのパルプ繊維は単独で、あるいは2種類以上を併用して使用することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲でダンボール古紙、雑誌古紙等の古紙パルプを混合することができる。
【0012】
製紙用薬品としては、通常の抄紙で用いられるサイズ剤、紙力剤、歩留まり向上剤等が挙げられる。サイズ剤としてアルキルケテンダイマー、スチレンアクリル樹脂、ロジン等の内添サイズ剤がある。紙力剤、歩留まり向上剤としてはポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミンおよびその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリアミン、ポリアミド、ポリアミドポリアミンおよびその誘導体、カチオン性および両性デンプン、酸化デンプン、カルボキシメチル化デンプン、植物ガム、ポリビニルアルコール等の有機系化合物、および硫酸バンド、アルミナゾル、コロイダルシリカ、ベントナイト等の無機系化合物等を適宜組み合わせて使用する。
また、填料としてはタルク、カオリン、焼成カオリン、クレー、ケイソウ土、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、硫酸マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸塩、ベントナイト等の鉱物質填料やポリスチレン粒子、尿素ホルマリン樹脂粒子等の有機合成填料等も適宜選択して併用が可能である。
さらに、染料、pH調製剤、スライムコントロール剤、消泡剤、粘剤等の抄紙用添加助剤も用途に応じて適宜使用できる。
【0013】
上記材料からなる原料、薬品のスラリーを用いて次のような抄紙工程により高い破断伸びを有する外層用紙シートを抄紙することができる。すなわち、湿式抄紙機において、ドライヤーロールの一部にニップロールを介して、エンドレスの厚いゴムのベルトを圧着回転させる装置を取り付け、ドライヤーとベルトの間に湿紙を通し、あらかじめ伸張させておいたベルトの収縮を利用して紙を収縮させるクルパック法や、抄紙機や加工機のプレスロールまたはシリンダードライヤーやヤンキードライヤーからドクターで紙を剥離してちりめん状のシワを付与するクレープ処理法などである。クレープ処理法についてはドクター装置やクレープを行う位置などに各種の装置や方法があり、例えば、デュオストレス法と呼ばれる抄紙機のプレスパートでドクターによりクレープを施し、さらにドライヤー中間部で溝付ロールを通して紙の縦横方向に伸びを与える方法などがある。
また、本発明において、上記抄紙工程から得られる外層用紙シートは単層のみならず、2層以上の抄き合せ紙でも良い。
外層用紙シートの坪量の範囲としては40〜300g/m2の範囲とし、より好ましくは50〜150g/m2の範囲である。外層用紙シートの坪量が40g/m2より低いとシートの引張強度が不十分で成形時に破断しやすく、300g/m2を越えると、該外層用紙シートを積層させた成形加工原紙の密度が高くなり、成形体の折り皺部分の成形性が低下して好ましくない。
【0014】
上記方法によって得られる外層用紙シートは、接着剤を介し紙支持体と貼り合わせて成形加工原紙を製造することができる。貼合方法としては、合成樹脂系エマルジョン、デンプン、PVA等の水性接着剤を紙に塗布後ニップロールで圧着し乾燥するウエットラミネーション法や、熱溶融させたホットメルト接着剤を紙に塗布後ニップロールで圧着させるホットメルトラミネーション法や、熱溶融させたポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂をフィルム状にして紙上に展開後ニップロールで圧着させる押出しラミネーション法等のいずれでも良く、特に限定されるものではない。
【0015】
[紙支持体について]
本発明の紙支持体を構成する天然パルプ繊維としては木材繊維(化学パルプ、機械パルプ)、非木材繊維、古紙パルプなどが挙げられる。木材繊維のうち、化学パルプとしては、木材チップ蒸解時に苛性ソーダと硫化ナトリウムを使用するクラフトパルプや、亜硫酸と亜硫酸水素塩を使用する亜硫酸パルプなどが挙げられ、これらのパルプは未晒品でも、漂白処理を施したものでも良い。機械パルプとしては、丸太をグラインダーで磨砕して得られるグラウンドウッドパルプ(GP)、製材工場の廃材をリファイナーで磨砕(リファイニング)して得られるリファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、木材チップを加熱、リファイニング処理して得られるサーモメカニカルパルプ(TMP)などが挙げられる。これらの機械パルプのうち、シートの嵩高さ、および強度の点からTMPが最適である。TMPには上記以外に木材チップを化学処理した後に加圧下でリファイニングするC−TMP、さらに漂白処理を施したBC−TMPなどもある。こうした木材繊維パルプのうち、マツ、カラマツ、スギ、モミ、ヒノキ等の針葉樹から得られる繊維長の長いパルプは紙シートの延伸性、強度を向上させるために好適に使用される。また、本発明の効果を損なわない範囲でカバ、ブナ、カエデ、ニレ、クリ等の広葉樹から得られる繊維長の短いパルプを併用することもできる。
【0016】
本発明の紙支持体に使用できる非木材繊維としてはコウゾ、ミツマタ、ガンピ、アマ、タイマ、ケナフ、チョマ、ジュート、サンヘンプなどの靭皮繊維類や、木綿、コットンリンターなどの種毛繊維類や、マニラ麻、サイザル麻、エスパルトなどの葉繊維類や、竹、イネワラ、ムギワラ、サトウキビバガスなどの茎繊維類などが挙げられる。特にコウゾ、ミツマタ、ケナフ、マニラ麻、サイザル麻、木綿、コットンリンターなどは繊維長も長く紙シートの延伸性、強度を向上させることができ、好適に用いられる。こうした非木材繊維は、常法により蒸解しパルプ化して使用する。蒸解法としては苛性ソーダを使用するソーダ蒸解法、苛性ソーダと硫化ナトリウムを使用するクラフト蒸解法、苛性ソーダと亜硫酸ソーダを使用する亜硫酸ソーダ蒸解法などがある。上記蒸解法で得られた非木材繊維パルプは未晒品でも、漂白処理を施したものでも良い。また、非木材繊維は木材繊維と同様に、リファイナーを使って加圧、加熱下で磨砕(リファイニング)してパルプ化することができる。
本発明の紙支持体使用できる古紙パルプとしては、ダンボール古紙、雑誌古紙などが挙げられるが、特にダンボール古紙は紙シートの延伸性、強度を向上させることができ、好適に用いられる。
これらのパルプ繊維は単独で、あるいは2種類以上を併用して使用することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で合成樹脂繊維を混合することができる。使用できる合成樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維などが挙げられる。
【0017】
一般に、絞り成形体が歪みの大きい曲面部を有する場合、成形時に曲面部分に折り皺を形成させて歪みを吸収させる必要がある。このとき折り皺部分は平面方向にアコーディオンのように折り込まれて凹凸を形成し、その後この凹凸が厚さ方向に圧縮される。このため、良好な成形性を得るためには紙支持体の密度を低くする必要があるが、そのためには剛直なパルプ繊維を用いると良い。一般に、均一な地合の紙シートを得るのにパルプ繊維を叩解して(パルプ繊維に機械的外力を加えて繊維の細胞壁の一部をフィブリル化する)使用するが、本発明では、繊維の剛直性を保持するために叩解を軽度にとどめる必要がある。叩解の程度としては、例えば化学パルプの場合フリーネス(Tappi T−227カナダ標準型)が500mlcsf以上、機械パルプの場合180mlcsf以上、麻パルプ、ケナフパルプの場合500mlcsf以上、ダンボール古紙パルプの場合500mlcsf以上のものが好ましい。パルプ繊維の叩解には、ビーター、コニカル型リファイナー、ドラム型リファイナー、ディスク型リファイナーなどが用いられる。
【0018】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、シート内に発泡剤を混入してシート密度を下げることもできる。発泡剤としては、マイクロカプセル内に低沸点溶剤を封入した熱膨張性マイクロカプセルが使用できる。このカプセルは、80〜200℃の比較的低温度で短時間の加熱により、直径が約4〜5倍、体積が50〜100倍に膨張する平均粒径10〜30μmの粒子である。イソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサン、低沸点ハロゲン化炭化水素、メチルシラン等の揮発性有機溶媒(膨張剤)を、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル等の共重合体からなる熱可塑性樹脂で包み込んだものであり、カプセルがポリマーの軟化点以上に加熱されると膜ポリマーが軟化しはじめ、内包される膨張剤の蒸気圧が上昇して膜が広がり、カプセルが膨張する。こうした発泡剤は、パルプスラリーに添加され、紙シート抄造時の加熱乾燥により発泡、あるいは発泡剤を含有するシートを高温水に通すことにより発泡する。また、紙シート抄造時シラスバルーンといった中空カプセルをパルプスラリー中に添加してシート密度を下げることもできる。
【0019】
製紙用薬品としては、通常の抄紙で用いられるサイズ剤、紙力剤、歩留まり向上剤等が挙げられる。サイズ剤としてアルキルケテンダイマー、スチレンアクリル樹脂、ロジン等の内添サイズ剤がある。紙力剤、歩留まり向上剤としてはポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミンおよびその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリアミン、ポリアミド、ポリアミドポリアミンおよびその誘導体、カチオン性および両性デンプン、酸化デンプン、カルボキシメチル化デンプン、植物ガム、ポリビニルアルコール等の有機系化合物、および硫酸バンド、アルミナゾル、コロイダルシリカ、ベントナイト等の無機系化合物等を適宜組み合わせて使用する。
また、填料としてはタルク、カオリン、焼成カオリン、クレー、ケイソウ土、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、硫酸マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸塩、ベントナイト等の鉱物質填料やポリスチレン粒子、尿素ホルマリン樹脂粒子等の有機合成填料等も適宜選択して併用が可能である。
さらに、染料、pH調製剤、スライムコントロール剤、消泡剤、粘剤等の抄紙用添加助剤も用途に応じて適宜使用できる。
【0020】
上記材料からなる原料、薬品のスラリーを常法により抄紙する。抄紙は通常の長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、傾斜抄紙機、各種コンビネーション抄紙機等のいずれでも良く、特に限定されるものではない。乾燥は通常の多筒ドライヤー、ヤンキードライヤー、スルードライヤー等のいずれでも良く、特に限定されない。また、本発明において、上記抄紙工程から得られる紙支持体は単層のみならず、2層以上の抄き合せ紙でも良い。
また、サイズプレス、ゲートロール等の塗工方法にてシートの表面にデンプン、ポリビニルアルコール、各種表面サイズ剤、顔料等を塗布することも可能である。
【0021】
[多層抄き合わせ抄紙によって得た多層紙について]
本発明の多層紙は、前述のように外層となる紙シートと、紙支持体を積層したものであってもよいが、多層抄き合わせ抄紙によって得た低密度層及びそれより密度の高い外層を有する多層紙であってもよい。
この場合、低密度層の密度は0.7g/cm3未満、さらに好ましくは0.2〜0.6g/cm3、最も好ましくは0.3〜0.5g/cm3である。0.2g/cm3未満の場合は、得られた多層紙の層間強度が十分でなくなるおそれがある。また0.7g/cm3を越えた場合には、成形加工原紙全体の密度を0.4〜0.7g/cm3とすることが困難となる。
また、外層の密度は0.7〜0.9g/cm3の範囲にあることが好ましい。0.7g/cm3未満の場合には絞り成形時、剛度の高い成形容器を得ることが困難となる恐れがある。また、0.9g/cm3を越えた場合、外層が緊密になりすぎることによって、プレス成形適性が伴わなくなる。また、抄紙段階でこれ以上の高密度層を得ることも実質的に困難である。
【0022】
低密度層を構成するパルプ繊維の種類もしくはフリーネス等の各種条件、及び発泡剤、製紙用薬品、填料、その他抄紙時にパルプスラリーに添加される各種添加剤として好ましく用いられるものは、前述した紙支持体で好ましく用いられるものと全く同様である。
また低密度層より密度の高い外層を構成するパルプ繊維の種類もしくはフリーネス等の各種条件、及び製紙用薬品、填料、その他抄紙時にパルプスラリーに添加される各種添加剤として好ましく用いられるものは、前述した外層用紙シートで好ましく用いられるものと全く同様であるが、密度の高い外層の破断伸びを5%以上とする。そのためには、外層となる原料に、特に繊維長の長いNBKPを配合して、さらに叩解の程度を400〜550mlcsfに調節する、また繊維配向の縦横比を小さくして1に近づける等の点に注意して抄紙することが好適である。
また、外層の坪量の範囲としては15〜100g/m2の範囲が好ましく、40〜80g/m2の範囲がさらに好ましい。15g/m2未満の場合には、高密度の紙層を得ることが困難であり、また抄紙すること自体困難である。一方100g/m2を越えると、総体的に低密度層の坪量が減少するため、成形加工原紙の全体の密度が高くなり、0.4〜0.7g/cm3の範囲とすることが困難である。
なお、上記のように抄き合わせ抄紙によって得た多層紙の外層の破断伸び、及び坪量は、抄造後、再度紙層を剥がして測定することが可能である。
【0023】
[成形加工原紙について]
このように、積層もしくは多層抄き合わせ抄紙によって得られる成形加工原紙の坪量は、100〜500g/m2の範囲が好ましく、さらに好ましくは200〜400g/m2の範囲である。坪量が100g/m2より低いと絞り成形後に得られる成形体に十分な強度が発現せず、また500g/m2を越えると折り皺部分の成形性が低下して好ましくない。
成形加工原紙の密度については0.5〜0.7g/cm3の範囲が好ましい。密度が0.5g/cm3より低いと絞り成形後に得られる成形体に実用上十分な強度が発現せず、また、0.7g/cm3を越えると折り皺部分の成形性が低下して好ましくない。
【0024】
また、必要に応じて、成形加工原紙表面に耐水性を付与するため、塗料として、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等のワックス類のエマルジョン、SBRラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス等のラテックス類、アクリルエマルジョン類、自己乳化型ポリオレフィン類、ポリエチレン系共重合樹脂エマルジョン等の各合成樹脂エマルジョンを塗工することができる。これら耐水性塗料の塗工設備としては、通常用いられるバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ゲートロール、サイズプレス等のいずれでも良く、特に限定されるものではない。
【0025】
また、必要に応じて、成形加工原紙表面に合成樹脂層を設けることができる。使用される合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等が挙げられ、これらの合成樹脂を単体、または2種類以上混合あるいは積層したもので被覆して耐水性被膜を形成する。合成樹脂層を積層させる方法としては、通常用いられるウエットラミネーション、ホットメルトラミネーション、押出しラミネーション、ドライラミネーション、サーマルラミネーション等のいずれでも良く、特に限定されるものではない。
【0026】
[絞り成形について]
絞り成形について、一般に、成形前に成形加工原紙を所定の形状に打ち抜いてブランクシートを形成する。絞り成形では、このブランクシートをプレスして成形体を得るが、特に成形体が歪みの大きな曲面部を有する場合、あらかじめ成形加工原紙に罫線を形成する必要がある。絞り成形時、この罫線を中心として折り皺を形成し曲面部の歪みを吸収させる。罫線の形成には、一般の紙器箱と同様に、厚さ1mm前後の金属刃を複数装着した木板あるいは金属板(罫線型)を使用し、この罫線型の金属刃を成形加工原紙に押し付けて罫線を形成する。こうした罫線の形成はブランクシートの打ち抜きと同時に行うことができる。このようにして得られたブランクシートは1枚あるいは2枚以上重ねてプレス成形することができる。このとき、成形加工原紙は、あらかじめ調湿し、原紙水分を調節することができる。
原紙水分は10〜20%の範囲が好適であり、特に好ましくは11〜17%である。ここで言う原紙水分とは、加工原紙中の全パルプ分の絶乾質量に対する、水分の質量%を言う。
原紙水分をこの好適範囲とすると、成形加工原紙の可塑化が起こって成形性が向上し、また、成形時の紙層の破壊を低減することがでる。この結果、より深さがあり、外観が滑らかで美しく、しかも高い剛性を有した絞り成形容器を得ることができる。
原紙水分が10%未満であると、成形体に十分な剛性が得られず、また20%以上であると、成形加工原紙にブリスターが発生して原紙の紙層が剥離する、水分量が多くなるため乾燥に時間がかかり生産性が落ちる等の問題が発生し好ましくない。
なお、原紙水分の調製方法として、プレス成型直前に原紙に水分を供与する方法や、紙の抄造時において、ドライヤーを出た後に加湿し、水分が維持される状態で輸送・保存する方法などが挙げられる。
【0027】
絞り成形で使用するプレス成形装置は特に限定されないが、一般的なプレス成形に用いられるオス型とメス型からなる金属製の成形型を使用することができる。
絞り成形時の温度は成形性、パルプ繊維の劣化などの点から、100〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは110〜150℃の範囲である。成形温度が100℃よりも低いとパルプ繊維が十分に軟化しないため良好な成形性が得られず、200℃を越えるとパルプ繊維が劣化するため好ましくない。
このときの加熱方法は作業性の点から、成形用金属型を加熱して行うのが良い。成形用金属型を加熱する手段としては、電気ヒーターによる加熱方式、蒸気加熱方式、熱風加熱方式、オイル循環方式などが挙げられるが、装置が簡便な電気加熱方式が好ましい。
絞り成形時のプレス圧力については、成形性、紙層破壊の点から10〜100kgf/cm2の範囲が好ましい。プレス圧力が10kgf/cm2より低いと罫線部分の圧縮変形が不十分となり、100kgf/cm2を越えると折り皺部分の紙層が破壊されるため好ましくない。
絞り成形時のプレス時間については、成形性、作業性の点から2〜10秒の範囲が好ましい。
本発明による成形加工原紙は天然パルプを主成分とし、従来の成形加工原紙に比べて良好な成形性と格段の生産性を有する。さらには、従来のプラスチック成形体に比べて燃焼カロリーが低く、焼却時に腐食性ガスを発生することもない。
【0028】
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳しく説明する。なお、以下実施例は本発明を限定するものではない。また、特に断らない限り、質量部は固形分質量で示した。
【0029】
<実施例1>
ディスクリファイナーを用いて市販NBKPを550mlcsf(TappiT−227カナダ標準型)に、ラジアータパインTMPを300mlcsfに叩解した。これらを紙料とし、多層抄き合せ抄紙機を用いて第1層NBKP40g/m2、第2層TMP250g/m2、の2層構成からなる紙支持体を抄造した。この紙支持体に対し外層シートとして晒クラフト伸張紙(王子製紙製、坪量75g/m2)を貼合して成形加工原紙とした。
貼合は以下の手順で行った。板紙のTMP層表面にメイヤーバーでEVA系エマルジョン型接着剤(商品名ビニゾール1412改、大同化成製)を固形分換算で20g/m2塗工した直後に、この未乾燥の塗工層に晒クラフト伸張紙をハンドロールで圧着させ、熱風乾燥機で110℃、20秒乾燥させた。こうして得られた成形加工原紙について、後述する試験方法で破断伸び、および成形性を評価した。
【0030】
<実施例2>
紙支持体に貼合させる外層シートをセメント袋用未晒クラフト伸張紙(王子製紙製、坪量83g/m2)とした以外は実施例1と同様にして成形加工原紙を製造、評価した。
【0031】
<実施例3>
紙支持体の第2層をTMP180g/m2とし、紙支持体に貼合させる外層シートを粘着テープ用クラフト伸張紙とした以外は実施例1と同様にして成形加工原紙を製造、評価した。
【0032】
<実施例4>
ディスクリファイナーを用いて市販NBKPを550mlcsfに、ラジアータパインTMPを300mlcsfに叩解した。これらを紙料とし、多層抄き合わせ抄紙機を用いて第1層NBKP40g/m2、第2層TMP220g/m2、の2層からなる紙支持体を抄造した。この紙支持体に外層シートとして晒クラフト伸張紙(王子製紙製、坪量75g/m2)を貼合して成形加工原紙とした。
貼合は以下の手順で行った。押出しラミ機を用いて、前記紙支持体に厚さ15μmの低密度ポリエチレン層を積層しながら伸張紙を貼り合わせてサンドラミ紙を作成し、さらにその片面(NBKP層側)に押出ラミによって40μm厚のポリプロピレン層を設けたものを成形加工原紙とし、この原紙について実施例1と同様にし評価を行った。但し、ポリプロピレン層を容器の内側となるように絞り成形を行うものとした。
【0033】
<実施例5>
多層抄き合せ抄紙機を用いて第1層NBKP40g/m2、第2層TMP250g/m2、第3層NBKP60g/m2の3層構成からなる多層紙を抄造し、成形加工原紙とした。但し、第3層は外層とし、外層の紙料は、市販NBKPをディスクリファイナーで480mlcsfに叩解して得たものを用いた。
このとき、第2層の密度は0.48g/cm3、第3層の密度は0.7g/cm3、多層紙全体の密度は0.53g/cm3であった。また得られた第3層は、成形加工原紙を抄造後に、再度紙層を剥がして破断伸び(JIS−P8113)を測定したところ、MDで5.8%、CDで6.0%であった。
【0034】
<比較例1>
紙支持体に貼合させる外層シートを軽包装用未晒クラフト紙(王子製紙製、坪量70g/m2)とした以外は実施例1と同様にして成形加工原紙を製造、評価した。
【0035】
<比較例2>
市販NBKPをディスクリファイナーで640mlcsfに叩解した紙料から、実験用手抄きマシンで坪量70g/m2の紙を抄紙し、回転式ドライヤーで110℃で乾燥した。この手抄き紙を紙支持体に貼合させる外層シートとした以外は実施例1と同様にして成形加工原紙を製造、評価した。
【0036】
〈評価方法〉
(1)破断伸び
流れ方向、幅方向それぞれに幅15mm、長さ250mmに裁断した試験片を23℃、50%RHの条件で24時間以上調湿した後、ストログラフM2型試験機((株)東洋精機製作所製)を用いて、JIS−P8113にしたがって引張速度20mm/minで測定した。
【0037】
(2)成形性
成形加工原紙に対して水蒸気を付与し、調湿することにより、紙中水分12%とし、円型に打ち抜き、中心から放射状に罫線を刻印してブランクシートとした。該ブランクシートをテストプレス成型機(第一工機製)により、雄雌の凹凸形状のカップ容器成形金型で130℃、35kg/cm2で加熱加圧処理し、高さが7cmで、開口部分が直径12cmの円形で、底面部が直径6cmの円形で、幅0.8cmのフランジ部を有し、側壁および側壁から底面にかけて曲面を有するカップ状の絞り成形体を成形した(図1)。このとき、外層シート貼合側、または外層側が成形体の外側になるように成形した。
このときの成形性を次のように評価した。
○:カップ形状に成形可能であり、成形体の外層に破れもなく、成形体の表面が滑らかである。
△:カップ形状に成形可能であるが、成形体の外層に破れが発生している。
×:成形の際にブランクシートが破断してカップ形状に成形不可能。
以上の評価結果を表1及び表2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1及び表2により、本発明による成形加工原紙は、カップ等の絞り深さの深いものについても成形時に外側の紙層表面にひび割れや破れが発生せず、成形性に優れていることがわかる。
【0041】
【発明の効果】
本発明により、カップ等の絞り深さの深い成形体を絞り成形するときに、ひび割れ、破れや折り皺部分の凹凸が発生しない良好な成形性と、高い生産性とを有した成形加工原紙を得ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】絞り成形体の斜視図
【図2】絞り成形体の断面図
【符号の説明】
1:成形加工原紙の紙支持体
2:成形加工原紙の外層紙シート
Claims (2)
- 少なくとも紙支持体の片面に破断伸び(JIS−P8113)が5%以上である紙シートを外層となるよう積層させた多層紙であり、前記紙シートが坪量40〜300g/m 3 であり、前記紙支持体が機械パルプを主体として構成されており、多層紙全体の坪量が100〜500g/m2、密度が0.5〜0.7g/cm3の範囲にあることを特徴とする成形加工原紙。
- 少なくとも低密度層およびそれより密度の高い外層を有する多層紙であって、前記低密度層が機械パルプを主体として構成されており、多層紙全体の坪量が100〜500g/m2、密度が0.5〜0.7g/cm3であり、外層の破断伸び(JIS−P8113)が5%以上であることを特徴とする成形加工原紙。
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