JP3997713B2 - 成形加工原紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、工業製品等各種包装容器の素材として好適に使用される成形加工原紙に関し、更に詳しくは、廃棄時の環境負荷が低く、特にプレス成形における優れた加工適性、生産性を有し、かつ強度の優れたプレス成形容器を得ることができる成形加工原紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から弁当箱、食品トレーなどの食品包装容器、あるいはCDケース、電気部品ケースなど各種工業製品の包装材料として、成形が容易であること、大量生産できること、安価に製造できることなどから、プラスチック製成形容器が使用されてきた。
これらのプラスチック製容器としては、例えば、発泡ポリスチレンシートをプレス成形または発泡ポリスチレンビーズをモウルド成形して得た発泡スチロール容器や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等各種樹脂を成形加工して得られた容器が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、上記プラスチック製容器は、廃棄処分時の環境負荷が高いという問題があった。即ち、埋め立て処理をすると、半永久的に分解されず地中に残存し、また、焼却処理をすると、燃焼カロリーが高く焼却炉を傷めやすいこと、完全燃焼しにくく、特にポリ塩化ビニルを使用したものは、腐食性が強い塩化水素ガスを発生する恐れがあることなどの問題があった。
【0004】
そこで、近年、環境問題、リサイクル問題、省資源などを考慮し、前述のプラスチック製容器に代わる素材として、リサイクルが可能で、廃棄焼却時の燃焼カロリーも低く、生分解性機能を有し、環境に対する負荷の低いパルプを素材とする容器が求められている。
【0005】
このようなパルプもしくはパルプを主体とする素材による三次元形状を有する成形体としては、従来からパルプモウルド容器が存在する。
パルプモウルド製容器は、以前から包装容器として広く使用されている。パルプモウルド容器の成形方法は、その目的とする容器形状に対応する凹凸形状を有する網型を作成し、その網型にパルプスラリーを吸引抄紙し、乾燥することで、パルプ原料を所望の形状に成形する方法である。パルプスラリーを調製する設備も付設しなくてはならない。また、抄紙後の乾燥には、多大な熱エネルギーを要し、時間もかかり、生産性が低いといった問題があった。
更に、パルプモウルド容器には食品トレー容器等でしばしば要求される、耐水性、耐油性を付加することは困難であり、コスト増加を伴うものであった。
【0006】
パルプモウルド法以外に、パルプを原料にして成形品得る方法として、板紙等のパルプを主体とした基材シートを加熱下でプレス成形する方法が知られている。この方法は、雌雄型の間に予め罫線を入れた基材シートを装填し、熱圧でプレス成形したものである。このようなプレス成形法は、1回のプレスで成形品が得られるため、生産性が非常に高い。しかし、樹脂や金属と異なり、板紙等の紙パルプを主体とする基材シートは、一般に、延伸性、伸縮性に乏しい。従って、ある程度の深さを持つトレーを成形しようとして、深いプレス成形を行うと、基材シートがその延伸に耐えられず破断したり、紙層表面に亀裂が生じる等の問題が発生する。従って、通常の板紙等を基材シートとして使用した場合、いわゆる紙皿と呼ばれ得るような、深さのほとんどない成形容器しか製造することができず、得られる成形体の形状が非常に限定されていた。
【0007】
このような問題を解決する方法として、例えば特開平5−286023号公報では、紙材に波形の屈曲部を多数設けて延伸性を付与した波形紙を金型内で加熱圧搾する方法が、特開平6−134898号公報では、全面に亘って凹凸を形成して延伸性を付与した紙材を加湿後に加熱しながらプレス成形する方法が、特開平7−214705号公報では、加湿処理の施された原紙を接着剤を介して複数重ねあわせ、次いでコルゲート加工して延伸性を付与した後、プレス成形する方法が開示されている。
しかし、これらの方法は、いずれも基材シートを予め波形状等にシワ付けすることで延伸性を持たせ、プレス加工適性を付与したのちプレス成形するものである。従って、プレス加工前にシワ付け工程を必要とするばかりでなく、プレス加工後の容器全体にシワが存在し、美観を損なうばかりか、強度的にも十分ではなかった。
【0008】
また、特開平7−315358号公報では、段高が2mm以下の段ボールシートを金属型で加熱しながらプレス成形する方法が開示されているが、これは基材に段ボールシートを用いて、そのフルート構造によってプレス加工による歪みをある程度吸収させるものである。しかし、この方法は段ボールシートにのみ適用されるものであり、しかも、プレス加工によるシワの凹凸を十分に吸収できるものではなかった。
【0009】
また、特開平6−239334号公報では、パルプ繊維にポリオレフィン系樹脂を含ませ延伸性を付与したシートをプレス成形する方法が、特開平10−8393公報では熱可塑性樹脂繊維とパルプ繊維を混抄して延伸性を向上させたシートを、加熱プレス成形する方法が開示されている。
しかし、これらの方法は、紙を主体とする基材シートに熱可塑性樹脂を加えることによって紙基材シートにプレス成形加工適性を付与するものであって、紙基材の有するリサイクル性や、廃棄時の環境負荷の少なさなどの特性を損なうものである。
【0010】
一般に、成形体が歪みの大きな曲面部を有する場合、プレス成形時に曲面部分に折りシワを形成させて曲面部の歪みを吸収させる必要があり、このとき折りシワ部分は平面方向にアコーディオンのように折りたたまれて凹凸を形成し、その後プレスによりこの凹凸が厚さ方向に圧縮される。
しかし、上記いずれのシートについても、このときに発生する折りシワ部分の凹凸が大きく成形性が良好とは言えなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、プレス成形時に、基材シートの亀裂や折りシワ部分の凹凸の発生を抑制した良好な成形性と高い生産性を有し、かつ、プレス成形加工後に優れた強度を有する成形体が得られる成形加工原紙を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成をとる。即ち、本発明の第1は、「 坪量が100〜500g/m2、密度が0.50〜0.70g/cm3 である3層以上の多層抄き板紙で、中層に機械パルプを主体とする層を、両外層に化学パルプを主体とする層を有し、該板紙の全パルプ量のうち30重量%以上が機械パルプであって、下記の(1)、(2)の条件を満足することを特徴とする成形加工原紙。
(1)温度23℃、紙中水分量14重量%においてJIS−P8113に準じて測定した紙の縦方向の破断伸びが2.0%以上。
(2)温度23℃、紙中水分量14重量%においてJIS−P8113に準じて測定した紙の縦方向の引張弾性率が1000〜2000MPa。」である。
【0013】
本発明の第2は、前記第1発明において、紙中水分が10〜20重量%に調整されていることを特徴とする成形加工原紙である。
【0014】
本発明の第3は、中層の坪量を全坪量の40%以上とする本発明第1〜2のいずれかに記載の成形加工原紙である。
【0015】
【発明の実施の形態】
<パルプ素材について>
本発明の成形加工原紙は、天然パルプ繊維を主成分とするものであって、その天然パルプとしては、木材繊維(化学パルプ、機械パルプ)、非木材繊維、古紙パルプなどが必要に応じて任意に使用される。
木材繊維のうち化学パルプとしては、木材チップ蒸解時に苛性ソーダと硫化ナトリウムを使用するクラフトパルプや、亜硫酸と亜硫酸水素塩を使用する亜硫酸パルプなどが挙げられる。これらのパルプは未晒品でも、漂白処理を施したものでも良い。
また、機械パルプとしては、丸太をグラインダーで磨砕して得られるグラウンドウッドパルプ(GP)、製材工場の廃材をリファイナーで磨砕(リファイニング)して得られるリファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、木材チップを加熱、リファイニング処理して得られるサーモメカニカルパルプ(TMP)などが挙げられる。
【0016】
また、こうした木材繊維パルプのうち、マツ、カラマツ、スギ、モミ、ヒノキ等の針葉樹から得られる繊維長の長いパルプは紙シートの延伸性、強度を向上させるために好適に使用される。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、カバ、ブナ、カエデ、ニレ、クリ等の広葉樹から得られる繊維長の短いパルプを併用することもできる。
また、本発明で使用できる非木材繊維としては、コウゾ、ミツマタ、ガンピ、アマ、タイマ、ケナフ、チョマ、ジュート、サンヘンプなどの靭皮繊維類や、木綿、コットンリンターなどの種毛繊維類や、マニラ麻、サイザル麻、エスパルトなどの葉繊維類や、竹、イネワラ、ムギワラ、サトウキビバガスなどの茎繊維類などが挙げられる。
特にコウゾ、ミツマタ、ケナフ、マニラ麻、サイザル麻、木綿、コットンリンターなどは、繊維長も長く、本発明原紙の延伸性、強度を向上させることができるため好適に用いられる。
こうした非木材繊維は、常法により蒸解しパルプ化して使用する。蒸解法としては苛性ソーダを使用するソーダ蒸解法、苛性ソーダと硫化ナトリウムを使用するクラフト蒸解法、苛性ソーダと亜硫酸ソーダを使用する亜硫酸ソーダ蒸解法などがある。上記蒸解法で得られた非木材繊維パルプは未晒品でも、漂白処理を施したものでも良い。また、非木材繊維は木材繊維と同様に、リファイナーを使って加圧、加熱下で磨砕(リファイニング)してパルプ化することができる。
【0017】
本発明で使用できる古紙パルプとしては、段ボール古紙、雑誌古紙などが挙げられるが、特に段ボール古紙は紙シートの延伸性、強度を向上させることができ、好適に用いられる。
これらのパルプ繊維は単独で、あるいは2種類以上を併用して使用することができる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて合成樹脂繊維を混合することができる。使用できる合成樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維などが挙げられる。
【0018】
<米坪、密度について>
本発明の成形加工原紙の坪量は、100〜500g/m2であり、更に好ましくは200〜400g/m2の範囲である。坪量100g/m2未満の場合には、プレス成形によって得られる成形体に十分な強度が発現しない。また、坪量500g/m2を越えると、折りシワ部分の凹凸が残存する。
【0019】
また、本発明の成形加工原紙の密度は、0.50〜0.70g/cm3である。密度が0.7g/cm3を越えた場合、プレス成形により発生する折りシワ部分の凹凸が残存する。また、密度が0.5g/cm3未満の場合、プレス成形によって得られる成形体に、実用上十分な強度が発現しない。
一般に、歪みの大きい曲面部を有する絞り成形体を製造する場合には、成形時に曲面部分に折り皺を形成させて、歪みを吸収させる必要がある。このとき折り皺部分は平面方向にアコーディオンのように折り込まれて凹凸を形成し、その後この凹凸が厚さ方向に圧縮される。このため、良好な成形性を得るためには、成形加工原紙密度を低くする必要があるが、そのためには剛直なパルプ繊維を用いることが好適である。
【0020】
一般に、均一な地合の紙シートを得るのにパルプ繊維を叩解して(パルプ繊維に機械的外力を加えて繊維の細胞壁の一部をフィブリル化する)使用するが、繊維の剛直性を保持するためには、叩解を軽度に留める必要がある。叩解の程度としては、例えば化学パルプの場合フリーネス(Tappi T−227カナダ標準型)が500mlcsf以上、機械パルプの場合180mlcsf以上、麻パルプ、ケナフパルプの場合500mlcsf以上、段ボール古紙パルプの場合500mlcsf以上のものが好ましい。
パルプ繊維の叩解には、ビーター、コニカル型リファイナー、ドラム型リファイナー、ディスク型リファイナーなどが用いられる。
【0021】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、シート内に発泡剤を混入してシート密度を下げることもできる。発泡剤としては、マイクロカプセル内に低沸点溶剤を封入した熱膨張性マイクロカプセルが使用できる。このカプセルは、80〜200℃の比較的低温度で短時間の加熱により、直径が約4〜5倍、体積が50〜100倍に膨張する平均粒径10〜30μmの粒子である。イソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサン、低沸点ハロゲン化炭化水素、メチルシラン等の揮発性有機溶媒(膨張剤)を、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル等の共重合体からなる熱可塑性樹脂で包み込んだものであり、カプセルがポリマーの軟化点以上に加熱されると膜ポリマーが軟化しはじめ、内包される膨張剤の蒸気圧が上昇して膜が広がり、カプセルが膨張する。こうした発泡剤は、パルプスラリーに添加され、紙シート抄造時の加熱乾燥により発泡、あるいは発泡剤を含有するシートを高温水に通すことにより発泡する。また、紙シート抄造時シラスバルーンといった中空カプセルをパルプスラリー中に添加してシート密度を下げることもできる。
【0022】
<紙の引張特性について>
プレス機により紙を絞り成形する場合、成形のしやすさ、成形後の容器寸法安定性、成形後の剛性向上のため、100℃〜200℃で成形される。
本発明者らの研究によれば、紙シートに前記温度範囲で深い絞り成形を行う場合には、紙の密度、水分、成形温度の関係が重要であることが判明した。前記したように、折りしわの関係から紙の密度は0.5〜0.7が良いが、この密度範囲の紙を前記温度範囲で成形する際には、紙の水分が10〜20重量%とすることが好ましいことが判明した。
【0023】
上記のような高温・高湿下での成形においては、紙の破断強度(引張強度)は弱くなり、即ち、小さな力で破断するようになる。また、本発明者らの研究によれば、高湿条件においては温度が高い程破断伸びも小さくなり、即ち、破断しやすくなる傾向がある。
そのため、密度のみならず、高温・高湿下における紙の引張特性が重要な要件となるが、実際の成形時における紙の温度、水分を測定することは困難である。また、高温・高湿下における紙の引張特性を測定することも容易ではない。
【0024】
本発明者らは、前記した各事項を勘案の上研究した結果、温度23℃、紙中水分量14重量%の条件下において下記の▲1▼及び▲2▼の条件を満たす紙は、前記した高温・高湿下での成形に適していることを見出した。
▲1▼破断伸び(JIS−P8113に準じて測定)が2.0%以上、更に好ましくは3%以上。
▲2▼MD方向(縦方向=抄紙機における走行方向)の引張弾性率(JIS−P8113に準じて測定)が1000〜2000MPa、更に好ましくは、1200〜1800MPa。
なお、本発明において紙中水分量とは、伸びや弾性率測定時点において、紙中の水分重量を紙の全重量(パルプ+添加剤+水分)で除した値を指す。紙中水分を14重量%にするには、例えば23℃において相対湿度90%近傍(条件により湿度を変更させる)で紙を調湿することにより調節できる。
紙層の上に合成樹脂層を形成する場合、上記測定は合成樹脂層が存在しない状態の測定である。
【0025】
上記の温度23℃、紙中水分量14重量%での破断伸びが2.0%未満の場合、プレス成形加工時、延伸性が低いため破断してしまうという問題が発生する。
【0026】
また、温度23℃、紙中水分量14重量%での引張弾性率を2500MPa以下の範囲にすると、成形加工原紙のパルプ繊維の流動性が高まり、成形時の折りシワ部分の紙層破壊を低減することができ、この結果、強度の高い成形体を得ることができる。
前記引張弾性率が1000MPa未満の場合、成形容器の剛性が不足するという問題が発生する。
【0027】
温度23℃、紙中水分量14重量%での破断伸び及び引張弾性率を上記範囲に制御する方法としては、パルプとして機械パルプを使用する手段が適用できるが、得られるシートの嵩高さ、及び強度の点から、機械パルプの中でも、TMPが最適である。なおTMPとしては、木材チップを化学処理した後に加圧下でリファイニングするC−TMP、更に漂白処理を施したBC−TMP等も含むものとする。
また、NBKPなどの化学パルプを主体とする層とTMPなどの機械パルプを主体とする層を含む多層抄きにする
具体的には、3層以上の多層抄き板紙で、中層機械パルプを主体とする層とし、両外層NBKPなどの化学パルプを主体とする層とした成形加工原紙とする。なお、前記機械パルプのフリーネスは180ml以上が好ましく、前記化学パルプのフリーネスは350〜650mlであることが好ましい。
上記の成形加工原紙は、中層の坪量を全坪量の40%以上とすることが好ましい。
また、各紙層、特にNBKPを主体とする層には、紙力増強剤を使用しても良い。
【0028】
いずれの層構成にしても、本発明の前記した条件を満たすためには、全パルプ量のうち、30重量%以上は機械パルプであり、50重量%以上がより好ましい。
【0029】
<加工原紙水分について>
成形加工原紙は、成形加工機に入る前の水分量が10〜20重量%であることが好ましい。更に好ましくは11〜18重量%である。なお、最も好ましい範囲としては12〜15%であり、その中でも12.5〜14.5重量%が最適である。
水分量を上記範囲とすることによって、成形加工原紙の可塑化が起こって成形性が向上し、また、プレス成形時の紙層の破壊を低減させることができる。
水分量が10重量%未満の場合、プレス成形時に紙層の破壊が起こりやすくなり、その結果得られた成形体に十分な剛性が得られない場合がある。また20重量%以上であると、加熱加圧成形加工時に、ブリスター、即ち成形加工原紙の紙層が剥離する現象が発生し、外観上好ましくないばかりか、強度低下の原因となる恐れがある。また、水分量が多くなることによって、成形体の乾燥に時間がかかり、生産性が落ちる等の問題が発生する恐れがある。
【0030】
成形加工原紙の調湿の方法は、原紙に対して水をスプレーや塗工する、あるいは水蒸気として噴霧する等、任意の方法を用いることができる。また、調湿の時期としては、プレス成形直前に原紙に上記方法で水分を供与したり、紙の抄造時、ドライヤーを出た後に加湿し、水分量が維持される状態で、輸送及び保管する方法などが挙げられる。
【0031】
<紙の抄造について>
なお、本発明成形加工原紙を抄造するために用いられる製紙用薬品としては、通常の抄紙で用いられるサイズ剤、紙力剤、歩留まり向上剤等が挙げられる。サイズ剤としてアルキルケテンダイマー、スチレンアクリル樹脂、ロジン等の内添サイズ剤がある。紙力剤、歩留まり向上剤としてはポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリアミン、ポリアミド、ポリアミドポリアミン及びその誘導体、カチオン性及び両性デンプン、酸化デンプン、カルボキシメチル化デンプン、植物ガム、ポリビニルアルコール等の有機系化合物、及び硫酸バンド、アルミナゾル、コロイダルシリカ、ベントナイト等の無機系化合物等を適宜組み合わせて使用する。
【0032】
また、填料としてはタルク、カオリン、焼成カオリン、クレー、ケイソウ土、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、硫酸マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸塩、ベントナイト等の鉱物質填料やポリスチレン粒子、尿素ホルマリン樹脂粒子等の有機合成填料等も適宜選択して併用が可能である。
更に、染料、pH調製剤、スライムコントロール剤、消泡剤、粘剤等の抄紙用添加助剤も用途に応じて適宜使用できる。
【0033】
上記材料からなる原料、薬品のスラリーを常法により抄紙する。抄紙は通常の長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、傾斜抄紙機、各種コンビネーション抄紙機等のいずれでも良く、特に限定されるものではない。乾燥は通常の多筒ドライヤー、ヤンキードライヤー、スルードライヤー等のいずれでも良く、特に限定されない。また、本発明において、上記抄紙工程から得られる紙支持体は単層のみならず、2層以上の抄き合せ紙でも良い。
【0034】
また、サイズプレス、ゲートロール等の塗工方法にてシートの表面にデンプン、ポリビニルアルコール、各種表面サイズ剤、顔料等を塗布することも可能である。
また、必要に応じて、成形加工原紙表面に耐水性を付与するため、塗料として、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等のワックス類のエマルジョン、SBRラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス等のラテックス類、アクリルエマルジョン類、自己乳化型ポリオレフィン類、ポリエチレン系共重合樹脂エマルジョン等の各合成樹脂エマルジョンを塗工することができる。これら耐水性塗料の塗工設備としては、通常用いられるバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ゲートロール、サイズプレス等のいずれでも良く、特に限定されるものではない。
【0035】
<合成樹脂被覆>
また、必要に応じて、成形加工原紙表面に合成樹脂層を設けることができる。使用される合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等が挙げられ、これらの合成樹脂を単体、または2種類以上混合あるいは積層したもので被覆して耐水性被膜を形成する。合成樹脂層を積層させる方法としては、通常用いられるウェットラミネーション、ホットメルトラミネーション、押出しラミネーション、ドライラミネーション、サーマルラミネーション等のいずれでも良く、特に限定されるものではない。
【0036】
<成形について>
絞り成形について、一般に、成形前に成形加工原紙を所定の形状に打ち抜いてブランクシートを形成する。絞り成形では、このブランクシートをプレスして成形体を得るが、特に成形体が歪みの大きな曲面部を有する場合、予め成形加工原紙に罫線を形成する必要がある。絞り成形時、この罫線を中心として折り皺を形成し曲面部の歪みを吸収させる。罫線の形成には、一般の紙器箱と同様に、厚さ1mm前後の金属刃を複数装着した木板あるいは金属板(罫線型)を使用し、この罫線型の金属刃を成形加工原紙に押し付けて罫線を形成する。こうした罫線の形成はブランクシートの打ち抜きと同時に行うことができる。このようにして得られたブランクシートは1枚あるいは2枚以上重ねてプレス成形することができる。
【0037】
絞り成形で使用するプレス成形装置は特に限定されないが、一般的なプレス成形に用いられる雄型と雌型からなる金属製の成形型を使用することができる。
絞り成形時の温度は成形性、パルプ繊維の劣化などの点から、100〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは110〜150℃の範囲である。成形温度が100℃よりも低いとパルプ繊維が十分に軟化しないため良好な成形性が得られず、200℃を越えるとパルプ繊維が劣化するため好ましくない。このときの加熱方法は作業性の点から、成形用金属型を加熱して行うのが良い。成形用金属型を加熱する手段としては、電気ヒーターによる加熱方式、蒸気加熱方式、熱風加熱方式、オイル循環方式などが挙げられるが、装置が簡便な電気加熱方式が好ましい。
【0038】
絞り成形時のプレス圧力については、成形性、紙層破壊の点から10〜100kgf/cm2の範囲が好ましい。プレス圧力が10kgf/cm2より低いと罫線部分の圧縮変形が不十分となり、100kgf/cm2を越えると折り皺部分の紙層が破壊されるため好ましくない。
絞り成形時のプレス時間については、成形性、作業性の点から2〜10秒の範囲が好ましい。
【0039】
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳しく説明する。なお、以下実施例は本発明を限定するものではない。また、特に断らない限り、重量部は固形分重量で示した。
【0040】
<実施例1>
ディスクリファイナーを用いて市販NBKPを550mlcsf(TappiT−227カナダ標準型)に、ラジアータパインTMPを270mlcsfに叩解した。
これらを紙料とし、多層抄き合せ抄紙機を用いて第1層NBKP40g/m2、第2層TMP250g/m2、第3層NBKP40g/m2の3層構成からなる板紙を抄造し、成形加工原紙とした。
この成形加工原紙を後述の測定方法により、坪量、密度、水分量、破断伸び、引張弾性率を測定した。
また、トレー形状に成形して成形性、及び成形体強度を評価した。
【0041】
<実施例2>
第2層をTMP180g/m2とした以外は、実施例1と全く同様にして成形加工原紙を抄造し、同様の方法で評価した。
【0042】
<実施例3>
第1層をNBKP80g/m2、第2層をTMP120g/m2、第3層をNBKP80g/m2とした以外は実施例1と同様にして成形加工原紙を抄造し、同様の方法で評価した。
【0043】
<比較例1>
成形加工原紙として、市販白板紙(王子製紙(株)製、坪量400g/m2)を使用、実施例1と同様の方法で評価した。
【0044】
<比較例2>
成形加工原紙として、市販NBKPを450mlcsfに叩解し、坪量290g/m2、密度0.75に製造した紙を使用し、それ以外は実施例1と同様の方法で評価した。
【0045】
<評価方法>
(1)坪量
成形加工原紙の坪量については、JIS−P8124に従って測定した。
(2)密度
成形加工原紙の密度については、JIS−P8118に従って測定した。
(3)水分量
成形加工原紙の水分量については、A4サイズに断裁したサンプルを恒温高湿器EX−111(タバイエスペック社製)を用いて23℃・90%RH近傍の条件で24時間以上調湿し、JIS−P8127に準じて測定した。なお、調湿雰囲気と紙中水分は紙により多少異なるので、予め、紙の平衡水分が14%となるような相対湿度を実験により決定しておくことが必要である。
【0046】
(4)縦方向の破断伸び
幅15mm、長さ250mm(縦方向)に裁断した試験片を恒温高湿器EX−111(タバイエスペック社製)を用いて23℃・90%RH近傍、の条件で24時間以上調湿し、紙中水分を14重量%に調整した後、直ちに恒温槽付き万能試験機RTC−1210A(株式会社エーアンドディ製)を用いて、調湿条件と同じ温度下でJIS−P8113に準じて引張速度20m/minで測定した。
【0047】
(5)縦方向の引張弾性率
幅15mm、長さ250mm(縦方向)に裁断した試験片を恒温高湿器EX−111(タバイエスペック社製)を用いて23℃・90%RH近傍の条件で24時間以上調湿し、紙中水分を14重量%に調整した後、直ちに恒温槽付き万能試験機RTC−1210A(株式会社エーアンドディ製)を用いて、調湿条件と同じ温度下でJIS−P8113に準じて引張速度20m/minで測定した。
なお、引張弾性率算出に必要な試験片の厚さは、前記の温度、湿度条件下で調湿したそれぞれの試験片をJIS−P8118に準じてマイクロメーターを用いて測定した。
【0048】
(6)成形性・成形体強度
成形加工原紙に図1に示したような24本の罫線を設けたブランクシートを作成した後、恒温恒湿器を用いて40℃、90%RHで調湿した。この調湿したブランクシートをテストプレス成形機(第一工機製)により、雄・雌の凹凸形状のトレー成形金型で130℃、35kgf/cm2で加熱加圧処理し、高さが4cmで、開口部分が長さ18.6cm、幅12.6cmの概略長方形状で、幅0.7cmのフランジ部を有し、側壁及び側壁から底面にかけて曲面を有するトレー状に成形した(図2)。
このときの成形性を目視で次のように評価した。
○:トレー形状に成形でき、かつ成形体の表面が滑らかである。
×:トレー形状に成形可能であるが、成形体の表面、特に折りシワ部分に大きな凹凸がある。
また、得られた成形体の強度は触感で次のように3段階で評価した。
◎:成形体を両手でひねった際に非常に強い抵抗感がある。
○:成形体を両手でひねった際に強い抵抗感がある。
×:成形体を両手でひねった際の抵抗感が全くない。
評価結果を表1、及び表2に示す。
【0049】
【表1】
Figure 0003997713
【0050】
【表2】
Figure 0003997713
【0051】
表1、及び表2より、本発明による成形加工原紙は、成形時に亀裂、及び折りシワ部分の凹凸が発生しない良好な成形性と、高い生産性を有し、かつ成形後の成形体強度にも優れていることがわかる。
【0052】
【発明の効果】
本発明によって、プレス成形時に、基材シートの亀裂や折りシワ部分の凹凸の発生、折りしわ部分の紙層破壊を抑制した、良好な成形性と高い生産性を有する、プレス加工成形に適し、更にプレス成形加工によって優れた強度を有する成形体を得られる成形加工原紙の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プレス成形用ブランクシートの平面図
【図2】 プレス成形体の斜視図
【符号の説明】
1:罫線

Claims (3)

  1. 坪量が100〜500g/m2、密度が0.50〜0.70g/cm3 である3層以上の多層抄き板紙で、中層に機械パルプを主体とする層を、両外層に化学パルプを主体とする層を有し、該板紙の全パルプ量のうち30重量%以上が機械パルプであって、下記の(1)、(2)の条件を満足することを特徴とする成形加工原紙。
    (1)温度23℃、紙中水分量14重量%においてJIS−P8113に準じて測定した紙の縦方向の破断伸びが2.0%以上。
    (2)温度23℃、紙中水分量14重量%においてJIS−P8113に準じて測定した紙の縦方向の引張弾性率が1000〜2000MPa。
  2. 紙中水分が10〜20重量%に調整されていることを特徴とする請求項1に記載の成形加工原紙。
  3. 中層の坪量を全坪量の40%以上とすることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の成形加工原紙。
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