JP3713644B2 - ポリキノン誘導体及びその合成法と利用法 - Google Patents

ポリキノン誘導体及びその合成法と利用法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、15族元素又は16族元素を通して結合する置換基を有するキノン類のジハロゲン化化合物から、2ケ所のハロゲン原子を除いた2価の残基を反復構成単位としてなり、導電性を有し、空気中において高い安定性を示し、多くは有機溶剤に溶解剤を有する新規な導電性高分子である、15族元素又は16族元素を通して結合する置換基を有するポリキノン誘導体、及びその製造法に関する。更に本発明は、前記新規な導電性高分子であるポリキノン誘導体を利用して、電圧印加により色変化を示すエレクトロクロミック素子材料、n型半導体デバイス用材料及びレドックスアクティブな修飾電極用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、主鎖が酸化・還元機能を有する単位よりなる高分子化合物は、電気的、光学的機能材料として注目されている。これらの高分子化合物は、主鎖に沿ったπ電子の拡がりを有するため、導電性を有するとともに速い光感応性を呈するなどの特性を示す。また、通常、かかる高分子化合物は酸化により主鎖中に正電荷を有するキャリアー種を発生し、還元により主鎖中に負電荷を有するキャリアー種を発生し、このため、導電性を示すものが多い。前記酸化・還元反応はこれらの高分子化合物の色の変化を伴うため、この性質を利用して、これらの高分子化合物をエレクトロクロミック材料として用いることが期できる。更に、この酸化・還元機能を応用して修飾電極を得ることが期待できる。このような高分子化合物として、主に芳香族化合物(アリール化合物)に基づく単位からなるπ共役ポリアリーレン類、例えば特願平6−42428の化1に含まれている下記のものが種々知られている。また、代表的な酸化・還元能を示す分子としてキノンがある。
【0003】
代表的な導電性高分子を例記すると、ポリ−p−フェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリピリジンがあり、これらの高分子は酸化・還元能を示し、また、酸化又は還元により導電化される。
【0004】
キノン骨格を繰り返し単位とする導電性高分子はキノンの特長ある酸化・還元能のため、他の導電性高分子にはない優れた性質を有する。例えば、上記ポリ−p−フェニレン、ポリチオフェン、ポリピリジンについては電気化学的還元反応による色変化(エレクトロクロミズム)はいずれもAg/Agに対して約−2.0 Vよりもより負側に大きな電位を要するのに対し、通常のポリキノンはAg/Agに対し約−1.3 Vと負側により小さな電位で電気化学的還元による色変化を示す(たとえば、特願平6−42428)。
【0005】
一方、最近、芳香族性複素環化合物のN−オキシド等の特異な共鳴構造を与える化合物に基づく単位を持つ高分子化合物(たとえば、ポリ(キノリン−1−オキシド−2,6−ジイル)(特願平7−172812に記載))が酸化・還元をすることがなくても導電性を示すことが示され、これが上記特異な共鳴構造の寄与のために酸化・還元することがなくても高分子化合物主鎖中にキャリアー種を発生するためであると考えられている。また、パイ共役系ポリ(2,2′−ビピリジン)の金属錯体の場合においても、酸化・還元しなくても導電性を有することが示され(雑誌「J.Am.Chem.Soc.」第116巻、4832頁(1994年))、この場合には金属からポリ(2,2′−ビピリシン)への電荷移動(MLCT)により、当該高分子化合物中に酸化・還元することが無くても自発的にキャリアー種が発生したことによるものであると考えられる。しかし、このような、酸化・還元を行なうことのない状態で導電性を示す高分子化合物の例は多くない。酸化・還元を行なうことのない状態で導電性を示す高分子化合物は、電気材料等として用いた場合、酸化・還元によって取込まれる不純物(ドーパント)の影響を受けることがなく又導電化前処理が必要なく利点を有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記したように、ポリキノンは電気化学的還元反応を起こし、その際に色変化を伴う導電性高分子ではあるが、その導電化には通常還元を必要とする。たとえば、ポリ(2−メチルアントラキノン−1,4−ジイル)は8×10−8 S cm−1の低い導電性を示し、これをナトリウムで還元した物質は2×10−5 S cm−1の導電性を示す(雑誌「Macromolecules」第28巻、3371頁(1995))。ポリ(2−メチルアントラキノン−1,4−ジイル)が酸化・還元することがなくても低いながら導電性を示すのは、カルボニル化合物に関する共鳴構造(たとえば、野平博之ほか訳の成書「有機化学」(東京化学同人刊;1977年刊)(以下単に成書「有機化学」と言う)中の387頁、413頁に記載)のために、主鎖中にキャリアー種が生成することが要因として挙げられる。しかし、この酸化・還元を行なうことのない状態で示される導電性はあまり高くない。また、ポリキノンは還元によりn型導電体になり易い物質であるが、その還元電位はまだ十分に低くないという問題がある。また、ポリキノンには溶解性に乏しいため(前述の雑誌「Macromolecules」第28巻、3371頁(1995年))、フィルム等が得られず、その利用範囲が狭くなっているという問題がある。
【0007】
本発明は、これらの状況のもと、酸化・還元することなくより高い導電性を示し、望しくは負側により小さな還元電位を示し溶解性に優れた新しい導電性高分子を探索し、上記問題を解決すべく鋭意研究の結果完成したものである。
【0008】
本発明の課題は、酸化・還元することなくより高い導電性を示し、望しくは小さな電位で色変化を伴なう電気化学的酸化還元反応を示し、望しくは有機溶媒に可溶なキノン骨格を重合体鎖として含む新規な、15族元素又は16族元素を通して結合する置換基を有するポリキノン誘導体を提供するにある。
【0009】
本発明の他の課題はこの新規なポリキノンの優れた導電性及び電気化学的特性、溶解性に着目して、前記ポリキノンを粉末又は繊維、フィルムなどの成型体、導電材料、バッテリー用材料、エレクトロクロミック素子、トランジスタ又はダイオードなどの電子用材料等として利用するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本願第1発明に係るポリキノン誘導体は、15族元素又は16族元素を通して結合する置換基、特にニトロ基、アミノ基、置換基を有するアミノ基、ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有する多環式キノンのジハロゲン化化合物から2ヶ所のハロゲン原子を除いて誘導される2価の基を重合体鎖中に含み、分子量が1000以上であることを特徴とするものである。
【0011】
15族元素又は16族元素を通して結合する置換基としては、アミノ基、置換基(アルキル基、アリール基、アルコキシル、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アミド基、ヒドロキシル基等)を有するアミノ基−NHR又は−NR(R,R,Rは該置換基)、アミノ基−NH及び前記置換基を有するアミノ基中の窒素原子をリン等の他に15族元素に置き換えた置換基(たとえば、−P(CH)、ニトロ基−NO、ヒドロキシル基−OH、ヒドロキシル基のHを他の基で置換した−OR基(Rはアルキル基、アリール基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基などの基)、及び前記−OH基及び−OR基中の酸素原子をイオウ等の他の16族元素に置き換えた置換基(たとえば、−SH基、−SCH基がある。
【0012】
これらの上記の置換基は、エチレン、ベンゼン、キノン等のパイ結合を有する有機化合物中に置換基として導入された場合に、共鳴により当該有機化合物中に正又は負の電荷を持つ中心を与えると考えられ、このことにより該置換基を有する有機化合物の反応性が合理的に説明される。たとえば、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基の結合した化合物の共鳴構造は各々、前記の成書「有機化学」中353頁、成書「有機化学」中502頁、成書「有機化学」中291頁及び315頁、成書「有機化学」中336頁及び796頁などに記載されている。そして、このように生成した正又は負の電荷はキャリアー種となり、前述のポリキノン中のカルボニル基に基づくキャリアー種の生成とあいまって、本発明の新規ポリキノン中に当該置換基のないポリキノンにくらべて多くのキャリアー種を発生させ、本発明の新規ポリキノンに酸化・還元しなくても導電性を与える要因となっている。前記のように、芳香族性複素環化合物のN−オキシドに基づく高分子化合物及びポリ(2,2′−ビピリジン)の金属錯体においても酸化・還元しなくても導電性が認められ、高分子主鎖中への中性状態でのキャリアー種の発生がその要因となっている。アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基以外の15族元素又は16族元素を通して結合する置換基の結合したパイ結合を有する有機化合物についても同様の共鳴構造を取ることが可能であり、該置換基の結合したポリキノン類には同様のキャリアー種が生成することが可能である。該置換基の数には制限はないが、キャリアー種のより有効な発生のためには、キノン骨格1個に2個以上の15族元素又は16族元素を通して結合する置換基を有する方がよい。2個以上の置換基は同一のものでも異なっていてもよい。また、キノン骨格にはアルキル基、アリール基等の他の基が結合していてもよい。
【0013】
請求項1中に記載の2価の基としては、縮合環を有し大きなパイ電子系を持つ1,2−ナフトキノン−5,8−ジイル、1,4−ナフトキノン−5,8−ジイル、1,4−ナフトキノン−2,5−ジイル、1,4−ナフトキノン−2,6−ジイル、アントラキノン−1,3−ジイル、アントラキノン−1,4−ジイル、アントラキノン−1,5−ジイル、アントラキノン−1,6−ジイル、アントラキノン−1,7−ジイル、アントラキノン−1,8−ジイル、アントラキノン−2,3−ジイル、アントラキノン−2,6−ジイル、アントラキノン−2,7−ジイル等の2価の基中の1個又は複数の水素が15族元素又は16族元素を通して結合する置換基に置き換えられた基がある。骨格となるキノンに制限はないが、ナフトキノンやアントラキノンのように、縮合環を有する多環式キノンについて本発明を完成することができた。一般的に、このようなキノンは単環性のp−ベンゾキノンなどにくらべて大きなパイ電子系を有し、大きなパイ電子系を有する化合物は一般に多様な共鳴構造を取りうるので、本発明の主旨によるキャリアー種の発生がより容易になると考えられる。また、骨格となる多環式キノンはキノリン−5,8−ジオンやベンゾフラン−4,7−ジオンのようにいずれかの環構造中に窒素、酸素、イオウ等の炭素以外の元素を含む広義のキノンでもよい。
【0014】
15族元素又は16族元素を通して結合する置換基がキノン骨格に結合する位置に制限はない。たとえば、ポリ(4,8−ジニトロアントラキノン−1,5−ジイル)では、繰り返し単位中の2つのニトロ基が共に負電荷を有し、1,5−位の炭素が共に正電荷を有する共鳴構造を繰り返し単位中に書くことができる。そして、このような、環構造中に生成する正電荷は結合を通した移動又は空間的の移動により他の繰返し単位中に移動することが可能であると考えられ、実際この高分子化合は後述するように酸化・環することなく導電性を示す。又、ポリ(4,8−ジアミノアントラキノン−1,5−ジイル)では、カルボニル基に基づく共鳴による環構造中の負電荷キャリアーの生成と電子供与性基であるアミノ基に基づく共鳴による環構造中の正電荷キャリアー種の生成が可能となると考えられる。
【0015】
本発明の高分子化合物は、請求項1中に記載の2価の基を反復構成単位とするホモポリマーでもよく、またこの2価の基が他の基と結合して生成する共重合体でもよい。ホモポリマーの場合には、当該2価の基に基づく酸化・還元能及び酸化・還元しなくてもキャリアー種を発生する機能は全面的に高分子化合物に受けつがれることになる。共重合体において、当該2価の基が芳香族化合物(ピリジン等の複素環化合物を含む広義の芳香族化合物を言う)に基づく基と結合して得られる共重合体の場合には、一般にキノンに基づくパイ電子系がさらに拡大し、また当該芳香族化合物の酸化・還元能等も共重合体の物性に反映される。しかし、この様な場合にも、共重合体の構成要素である各々の単位の酸化・還元能等の性質はそれぞれに共重合体の物性に反映される場合が多く(たとえば、雑誌「J.Am.Chem.Soc.」第118巻、10389頁(1996年))、また従って共重合体の重合体鎖である2価のキノンのキャリアー種発生能は該共重合体に受継がれると考えられる。また、共重合体中にはオリゴメチレン基やメタクリル酸メチル等のビニルモノマーからの重合体鎖等の非パイ共役系重合体鎖が主鎖中の重合体鎖として含まれてもよい。なぜなら、主鎖中にパイ共役系を有し酸化・還元能を有する重合体鎖と上記のような非パイ共役系重合体鎖を共に含む共重体においても、当該パイ共役系を有し酸化・還元能を有する重合体鎖の酸化・還元能や導電性等の電子物性は基本的には該共重合体に受継がれることが知られているからである(たとえば、雑誌「J.Chem.Soc.,Chem.Commun.」856頁(1987年)及び雑誌「Chem.Lett」495頁(1996年))。また、本発明の重合体は、相当するキノンに由来する請求項1に示されている2価の基について、2種類以上の2価の基を重合体鎖として含む共重合体でもよい。
【0016】
本願発明の好適な他の実施例は、分子量が5000以上であることを特徴とするものである。分子量が1000未満ではポリマーとしての充分な機能(例えばフィルムに加工した際の強度等)を発揮することができない場合がある。好適には分子量5000以上であり、これにより溶液の粘性がさらに上昇し、フィルムの強度がより高くなる。また、本発明者は、後述の製造法によって分子量が9000程度のもの、また固有粘度が0.7 dl g−1(デシリットル毎グラム)程度のものまでの本発明重合体とその優れた特性並びに有用性とを実験的に一応確認したが、これらの分子量、固有粘度を越えるものの調整及びその利用も技術的に当然期待される。また、キノン等の広義の芳香環重合鎖を持つ高分子化合物は、たとえばポリ(ピリジン−2,5−ジイル)のように、分子量が1000程度の場合にも(雑誌「J.Am.Chem.」第116巻、4832頁(1994年)フィルム形成能を示し、芳香環重合鎖の比較的硬い分子構造がこのような性質のもととなっていると考えられる。
【0017】
上記本願発明の15族元素又は16族元素を通して結合する置換基を有するポリキノン誘導体は該置換基を有するキノン誘導体を原料としこれを重合させる方法とポリキノン類に化学反応によって該置換基を導入する2つの方法があるが、製造法については前者の方法により本発明を完成させている。この方法によりホモポリマーを合成する場合には、該置換基を有するキノンのジハロゲン化化合物を、脱ハロゲン化能を有する金属又は金属化合物と反応させ、2ヶ所のハロゲン原子を脱ハロゲン化して重合させる。また、他の芳香環(ピリジン環等の広義の芳香環を含む)を有する重合鎖を含有する共重合体を得る場合には、(a)芳香環を有する化合物で2個以上のハロゲンを有する化合物共存下に前記該置換基を有するキノンのジハロゲン化物の金属又は金属化合物による脱ハロゲン化共重合(類似の共重合が雑誌「J.Am.Chem.Soc.」第118巻、10392頁の式(4)に記載されている)又は(b)芳香環を有する化合物でジハロゲン化キノン中のハロゲンと反応しうる含金属基(たとえばトリアルキルスタニル基−SnR)などの反応基を2つ以上有する化合物共存下に前記該置換基を有するキノンのジハロゲン化化合物を触媒の存在下又は不存在下に反応させ共重合体を得る(類似の共重合が雑誌「J.Am.Chem.Soc.」第118巻、10391頁(1996年)の式(3)に記載されている)という(a)、(b)両方の方法がある。又、雑誌「Chem.Lett.」495頁(1996年)に記載されているように、分子内にオリゴメチレン等の他の基を含む該キノンの誘導体を出発原料とし(この場合、たとえば同雑誌中記載のチオフェン環の代りに15族又は16族元素を通して結合する置換基を有する多環式キノン基の入った化合物が出発原料となる)前記の単独重合や(a)、(b)で示された共重合を行なってもよい。さらに、本発明の製造法においては、該キノンのジハロゲン化物中のハロゲンを脱ハロゲン化する能力を有している。パラジウム化合物等の金属又は金属化合物を中間体とし、さらにこの中間体が他の分子と反応して全体として高分子を与える製造法も可能である。この場合、該パラジウム化合物は脱ハロゲン化能を有する触媒として機能する。この形式の重合法には、該キノンのジハロゲン化物とジエチニル化合物とを原料に用いる重合(類似の重合が雑誌「Macromolecules」第27巻、6620頁(1994年)に報告されている)や該キノンのジハロゲン化物とジビニル化合物を原料に用いる重合(類似の重合が雑誌「高分子」第46巻、69頁(1997年)中の式(4)に記載されている)及び該キノンのジハロゲン化化合物と2つのB(OR)基を持つ化合物を原料に用いる重合(類似の重合が雑誌「高分子」第46巻、70頁(1997年)中の式(5)に記載されている)などがある。
【0018】
本発明の製造法に用いる金属又は金属化合物としては、多様なものが挙げられる。まず、金属としては、還元性金属又は有機ハロゲン化物のC−Cカップリング反応を起こす金属が望しく、たとえば、Li,Na,K等の1族金属、Mg,Ca等の2族金属、Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu等の遷移金属、Zn等の12族金属、Al,Ga等の13族金属、Sn等の14族金属が挙げられる。この中でも、キノンのC=0基と反応性のあまり大きくないものが望まれる。特に銅Cuはウルマン反応を起こし、たとえば後述するようにニトロ基を有する該ポリキノン誘導体ホモポリマー等を製造するのに好適である。これらの金属は、必要に応じて、他の金属又は金属化合物から成る触媒を用いてもよい(Mgを用いる類似の重合において、ニッケル化合物を触媒とする例が雑誌「高分子」第46巻、68頁(1997年)中の式(1)に記載されている)。また、本発明の製造法に用いる金属化合物としては、特に制限はないが、還元性金属化合物又は有機ハロゲン化物のC−CカップリングやC−Oカップリング、C−Nカップリング反応を起こさせるものが望しく、たとえばゼロ価ニッケル化合物、ゼロ価パラジウム化合物などが挙げられる。これらのゼロ価金属化合物を用いる場合、当該ゼロ価金属化合物そのものを用いてもよいし、また2価ニッケル化合物、2価パラジウム化合物等を加え反応系中において亜鉛Znやヒドラジン等の還元剤を用いて発生させてもよい。ゼロ価ニッケル化合物を用いてC−C結合生成を伴なう単独重合の形式としては、特願平6−42428に記載の重合形式を挙げることができる。
【0019】
本願発明の15族元素又は16族元素を通して結合する置換基を有する多環式ポリキノン誘導体は、色の変化を伴う電気化学的還元反応を示すドレックス活性な高分子化合物であり、エレクトロクロミック素子材料、n型半導体のデバイス用材料が得られる。
【0020】
本願の好適な実施例ではキノンがアントラキノンである。
【0021】
本願の好適な実施例では分子量が5000以上である。
【0022】
本願の好適な実施例では、15族元素又は16族元素を通して結合する置換基はニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はOR基(Rは有機基)である。
【0023】
以下、本発明をさらに具体的かつ詳細に実施例について説明する。
実施例1
ポリ(4,8−ジニトロアントラキノン−1,5−ジイル)の合成
2.60g(7.1mmol)の1,5−ジクロロ−4,8−ジニトロアントラキノン及び1.80g(28.3mmol)の銅(硫酸銅を水中で亜鉛で還元して得られる粉末状銅)を40cmのN,N−ジメチルホルムアミド中に加え、100°Cにて撹拌し反応させた。4時間反応させた後、溶液部を希塩酸中に加えた。この際生成した沈澱を希塩酸にて2回、メタノールにて2回洗浄後真空乾燥して該ポリマーを得た。収率100%。このポリマーの元素分析値は、C:56.8;H:1.5;N:9.6;Cl:0.6%であり、計算値C:56.8;H:1.4;N:9.5%とほぼ一致する。
【0024】
この重合体の赤外吸収スペクトル(KBr)は3084,1687(C=0伸縮振動),1538(NO基よる吸収),1370,1323,1243,875〜600cm−1(C−H面外変角振動)にピークを認めることができる。
【0025】
また、ポリマーの重ジメチルスルホキド中のH−NMRスペクトルはδ(デルタ)=約8ppmに吸収を示した。一方、ポリマーのCP−MAS固体13C−NMRスペクトルはδ=180(C=0),149,143,137,129ppmに吸収を示した。180ppmの吸収に分裂は見られなかった。
【0026】
さらに、ポリマーの粉末X線回析チャートは2θ(CuKα)=12.3,16.9,21.0°に明確なピークを示した。
【0027】
元素分析、赤外吸収スペクトル、NMRスペクトル、粉末X線分析の結果はポリマーがポリ(4,8−ジニトルアントラキノン−1,5−ジイル)であることを支持するものである。
【0028】
このポリマーの分子量をGPC(溶離液=N,N−ジメチルホルムアミド)にて測定したところ、数平均分子量=8600,重量平均分子量=13000(いずれもポリスチレン基準)が得られた(但し、ニトロ基等の極性基を有するポリマーは吸着のため、実際の分子量より小さい値をGPC分析法において示すことがある)。また、このポリマーは30°C,N−メチル−2−ピロリドン中で0.7dlg−1(デシリットル毎グラム)の固有粘度を与えた。これらのGPC分析及び粘度測定の結果は、本重合体が大きな分子量を有することを示している。上記重合体は粉末状態では茶色ないしはレンガ色を呈し、クロロホルム中においては330nm及び485nmに吸収を示した。上記重合体は、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド等の溶媒に可溶であり、これらの溶媒を用いて得た溶液を各種基板の上にキャストして薄膜を得ることができた。また、前記重合体は475nmの光で励起した時、クロロホルム中で578nmに蛍光を示した。さらに、熱的性質は良好であった。N下における熱重量分析の結果、290°C付近から重量減少が見られ始めたが、それより低い温度では安定であった。
【0029】
実施例2
ゼロ価ニッケル錯体を用いるポリ(4,8−ジニトロアントラキノン−1,5−ジイル)の合成
不活性ガス下、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル錯体Ni(cod)(0.92g,3.35mmol)にN,N−ジメチルホルムアミドDMF25cm,1,5−シクロオタクジエンcod(0.42cm,3.42mmol)および2,2′−ビピリジルbpy(0.52g,3.33mmol)を加え5分間撹拌した後に、モノマーである1,5−ジクロロ−4,8−ジニトロアントラキノン(1.02g,2.79mmol)を加える。60°Cで48時間撹拌した後、反応系を希塩酸に注ぐと茶色の粉末が生成する。この粉末を希塩酸で3回、水で1回、希アンモニア水で3回、水で1回、温エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムEDTA水溶液で2回、水で1回、メタノールで1回この順に洗浄した後にN−メチル−2−ピロリドンNMPに溶解させた。このNMP溶液をメタノール中に注ぎ、再沈法により重合体を回収し、メタノールで洗浄した後真空乾燥して暗茶色のポリマーを得た。収率87%。
【0030】
この重合体の赤外吸収スペクトルは実施例1で得られた重合体の赤外吸収スペクトルとほゞ同じでありポリ(4,8−ジニトロアントラキノン−1,5−ジイルP(4,8−NO−1,5−AQ)が得られたことを示している。しかし、赤外吸収スペクトル中の各吸収はブロード化しており、本重合法においては一部副反応が起こっているものと考えられる。たとえば、ニトロ基が還元力を有するゼロ価ニッケル錯体によって還元されることは考えられるので、たとえば本重合法で得られたP(4,8−NO−1,5−AQ)中のニトロ基の一部が還元された構造を有し、そのために赤外吸収スペクトルの吸収がブロード化しているものと考えられる。本実施例で得られた重合体はGPC分析(溶離液=DMF)において数平均分子量=1530,重量平均分子量=2930(ポリスチレン基準)を示した。また、NMP中30°Cで0.10 dl g−1の固有粘度を示した。溶解性は実施例1で得られた重合体とほぼ同じであり、また例えばNMP溶液からキャスト法により薄膜を得ることができた。
【0031】
実施例3
ポリ(4,8−ジアミノオントラキノン−1,5−ジイル)P(4,8−NH−1,5−AQ)の合成
モノマーとして、1,5−ジアミノ−4,8−ジクロロアントラキノンを用いる他は実施例2と同様にしてNi(cod),cod,bpy,DMFを用いて重合し、後処理も同様に行ない黒紫色の重合体を得た。収率81%。この重合体の赤外吸収スペクトルは3430(N−H伸縮振動),3310(N−H伸縮振動),約1650(肩ピーク),1601,1536,1208,825〜600cm−1(C−H面外変角振動)にピークを示した。この重合体の元素分析データ(C:H:N=5.73:0.31:1)も計算値(C:H:N=6.00:0.31:1)とほぼ合っており、またこの重合体がNMP中30°Cにおいて0.15 dl g−1の固有粘度を示しGPC分析(溶離液=DMF)において数平均分子量=2640,重量平均分子量=3880(ポリスチレン基準)を与えることから、該重合体が得られていることが分る。なお、アントラキノン環、NH基の存在する化合物においてもゼロ価ニッケル化合物を用いて重合が進行することが、各々雑誌「Macromolecules」第28巻、3371頁(1995年)及び雑誌「Chem.Lett.」413頁(1996年)に記載されている。本実施例で得られた重合体はNMP,トリフルオロ酢酸TFA及び濃硫酸に可溶であり、例えばNMP溶液からキャスト法により薄膜を得ることができる。また、これらの溶媒にくらべると溶解性は低いもののDMF,ジメチルフルホキシドDMSO,CHCl,CHCl,CHCN等に可溶であった。又、TGA分析は約190°Cよりの熱分解開始を示した。
【0032】
実施例4
ポリ(4,8−ジアセトキシアントラキノン−1,5−ジイル)P(4,8−OAc−1,5−AQ)の合成
モノマーとして、1,5−ジクロロ−4,8−ジニトロアントラキノンの代りに1,5−ジクロロ−4,8−ジアセトキシアントラキノンを用いる他は実施例1と同様にして好収率で緑カッ色の重合体を得た。この重合体の赤外吸収スペクトルは3070−2910(C−H伸縮振動),1768(C=0伸縮振動),1675(C=0伸縮振動),1637,1593,1570,1453,1366,1323,1253,1176,1052,1004,898cm−1に吸収を示した。また、重クロロホルム中のH−NMRスペクトルはδ値が0.5〜2.5ppmにアセトキシ基のCH基の吸収を、また7.1〜8.4ppmに芳香族性Hの吸収を示す他12−13ppmに芳香族性OHの吸収を示した。各々の吸収の面積比からアセトキシ基の約1/3が重合中又は後処理中に加水分解等によりOH基に変換されたと考えられる。赤外吸収スペクトルにおいてもKBr中に微量に含まれる水の吸収との区別が困難であるが、3500cm−1付近にO−H伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0033】
実施例5
ポリ(4,8−ジヒドロキシアントラキノン−1,5−ジイル)P(4,8−OH−1,5−AQ)の合成
モノマーとして、1,5−ジクロロ−4,8−ジニトロアントラキノンの代りに1,5−ジクロロ−4,8−ジアセトキシアントラキノンを用いる他は実施例2と同様にしてゼロ価ニッケル錯体を用いて重合を行ない、また同様に後処理を行なってこげ茶色の重合体を得た。この重合体においては、アセトキシ基の大部分がOH基に変換されていると考えられ、収率は86%であった。元素分析のデータ(C:66.2;H:3.5;N:1.8;Cl:1.9%)はNMP,HOを一部含むCl−(C14・0.35NMP・0.2HO)16−Clの計算値(C:67.3;H:3.4;N:1.7;Cl:1.6%)とほぼ一一致した。又重合体の赤外吸収スペクトルは3400〜2700cm−1の領域にブロードなOH基による吸収を示し、この様なブロードな吸収は水素結合を行なっているOH基を有する化合物についてよく認められるものである。その他に、1762,1626,1578,1452,1420,1368,1257,789cm−1等にピークを示し、吸収パターンは真空乾燥度により微妙に変化した(特に3500〜1600cm−1)。該重合体はNMP中で399.5,437.5,570mmに吸収を示す。この重合体は、NMP,DMF,DMSO,濃硫酸に可溶であり、またこれらの溶媒に比べれば溶解性は小さいものの、TFA,CHCl,CHCl,アセトン、1,4−ジオキサンに可溶であり、GPC分析(溶離液=N,N−ジメチルホルムアミドDMF)により数平均分子量=3900,重量平均分子量=4300(ポリスチレン基準)を示した。本実施例の上記の重合体はCHCl中で377nmの光の照射時に437.4nmにピークを持つ蛍光を示した。該重合体について溶液からのキャスト法により薄膜を得ることができた。
【0034】
実施例6
ポリ(2−メトキシアントラキノンジイル)の合成
4−ブロモフタル酸無水物とメチルフェニルエーテルをFeCl存在下に反応させ(フリーデル−クラフツアシル化)、4−メトキシフェニル(2−カルボキシ−4(又は5)−ブロモフェニル)ケトン(C(COOH)(Br))−CO−(COCH)を合成した。このケトンを酢酸中臭素、濃硫酸、発煙硝酸を用いてBr化し、4−メトキシフェニル基の3位(OCH基の付いた炭素の隣)にBrを導入した。そして、この化合物をさらに発煙硫酸中で反応させ、2,6(又は7)−ジブロモ−3−メトキシアントラキノンを合成した。単離された化合物はH−NMRスペクトル(クロロホルム中、400MHz;デルタ値=2.6ppm(s,3H,OCH),7.92ppm(dd,8と2Hz,1H),8.1ppm(s,1H),8.15ppm(d,8Hz,1H),8.41ppm(s,1H),8.42ppm(d,2Hz,1H))から、2,6−ジブロモ−3−メトキシアントラキノン又は2,7−ジブロモ−3−メトキシアントラキノンのいずれかが純粋に得られたと考れられるが、このどちあであるかは決定するに到っていない。
【0035】
このジブロモ化合物を1,5−ジクロロ−4,8−ジニトロアントラキノンの代りにモノマーとして用いる他は実施例1と同様にしてゼロ価ニッケル化合物を用い脱ハロゲン化重合により、重合体を得た。実施例1と同様の後処理を行なったが、溶解性が比較的低い重合体であり一部のみが再枕処理され残りは洗浄のみの後処理を行なった。一部灰分(3.9%)を含み、これを除いた分析値(C:64.3;H:4.4;Br:0%)は水和した(C15・2.3HO)n重合体の計算値(C:64.9;H:4.6%)とほぼ一致した。収率(炭素基準)は72%であった。この重合体の赤外吸収スペクトルは3566,1662(C=0伸縮振動),1587,1270,970〜600cm−1(C−H変角振動)にピークを示した。該重合体は、実施例1〜5記載の重合体にくらべれば低い溶解性を示したが、NMPに溶解性を示した。また、一部はDMF,濃硫酸に可溶であった。DMF可溶部については、GPC(溶離液=DMF)分析の結果、数平均分子量=2750,重量平均分子量=2770の値が得られた。DMF不溶分は、より大きな分子量を有すると考えられる。
【0036】
実施例7 導電率の測定
実施例1で得られたポリ(4,8−ジニトロアントラキノン−1,5−ジイル)P(4,8−NO−1,5−AQ),実施例3で得られたP(4,8−NH−1,5−AQ),実施例5で得られたP(4,8−OH−1,5−AQ)について各々の粉末状重合体を加圧下に成型して得られるサンプルを用いて、2端子直流法の導電率を測定した。その結果上記の3種の重合体について、各々、1.4×10−6 S cm−1,7.0×10−7 S cm−1,2.4×10−6 S cm−1の導電率が得られ、15族又は16族元素を通して結合する基を有する多環式キノンを有する重合体が酸化・還元することがなくても導電性を示すことが分る。また、P(4,8−NO−1,5−AQ)を不活性ガス下テトラヒドロフラン中ナトリウムナフタリドにより還元し真空乾燥して得られる粉末は、同様の測定により9×10−6 S cm−1の導電率を示すことが分った。
【0037】
実施例8 電気化学的応答
P(4,8−NO−1,5−AQ)の白金板上へのキャスト膜(DMFよりキャスト)を用いて、0.1OMの[NEt]BFを含む無水アセトニトリル中で不活性ガス下サイクリックボルタンメトリー(CV法)により酸化・還元挙動を解析した。その結果、P(4,8−NO−1,5−AQ)の還元はAg/Agに対して約−0.6Vから始まり、約−0.8V,−1.0Vに還元ピークを与えることが分った。これらの電位は他の報告されているポリアントラキノン類(雑誌「Macromolecules」第28巻、3371頁(1995年))よりも約0.5V負側に小さなものであり、NO基の導入により還元反応が著しく容易になっておりn型導電体となり易くなっていることを示している。この還元に際して、還元前にはレンガ色であったフィルム(膜)は暗紫色に変色し、エレクトロクロミズムが認められた。約−1.0Vの還元ピークが出現した後にAg/Agに対して−1.5Vまで掃引(これらの掃引速度は50 mV s−1)したところで折り返し、酸化側へ掃引すると約−1.0V,−0.6V(対Ag/Ag)に酸化ピークが認められ、フィルムは元のレンガ色に戻った。Ag/Agに対して0〜−1.5Vの範囲では、VCチャートは還元一酸化が可逆的であることを示していた。しかし、−1.5Vを越えて還元側にまで掃引すると不可逆な還元−酸化が起っていることが分った。この原因としては、NO基の電気化学的還元等が挙げられる。ここで用いられたP(4,8−NO−1,5−AQ)は実施例1の方法で合成されたものである。
【0038】
実施例3で合成されたP(4,8−NH−1,5−AQ)について不活性ガス下無水DMF中でCV法により電気化学的酸化・還元挙動を調べた。その結果、Ag/Agに対して約0〜−2.5Vの範囲の掃引(速度=100 mV S−1)において、約−1.7V,−2.1Vに還元ピークを、また約−2.0V,−1.4Vに酸化(還元された化合物が元の状態に戻る)ピークが観測され、可逆的なCVチャートを示した。又このP(4,8−NH−1,5−AQ)のフィルムのCVチャートは約−1.5V,−2.0V(特にことわらない限り対Ag/Ag)に還元ピークを、約−1.8V,−1.4V,−1.0Vに酸化ピークを示した。
【0039】
実施例5で得られたP(4,8−OH−1,5−AQ)について、白金板上へのキャストフィルム(同様にDMFよりキャスト)を用いて、段階0036記載の方法と同様にしてCV法により酸化・還元挙動を調べた。その結果−0.5Vから−1.7V(対Ag/Ag)の掃引範囲において、約−1.05V,−1.55Vに還元ピークが認められ、またこの還元に伴ないフィルムの色は黄土色っぽい黄色から赤茶色へと変色しエレクトロクロミズムが認められた。また、約−1.4V,−1.0Vに酸化ピークが認められ、この酸化に伴ないフィルムは元の黄土色っぽい黄色に戻った。
【0040】
実施例9 導電率
実施例2で合成されたP(4,8−NO−1,5−AQ)についても、実施例7と同様にして導電率=1.4×10−6 S cm−1が得られた。従って、この場合、実施例2で述べられた副反応は導電率に影響を与えていないことが分る。又、実施例6で得られたポリ(2−メトキシアントラキノンジイル)についても実施例7と同様にして導電率=1.1×10−6 S cm−1が得られた。これらの値は、報告されているポリアントラキノン類(雑誌「Macromoles」第28巻、3371(1995年))について、同様に酸化・還元することなく測定した10−8 S cm−1オーダーの導電率(同様に直流法導電率)より高いものである、
【0041】
【発明の効果】
本発明は15族元素又は16族元素を通して結合する置換基を有する多環式キノン骨格を主鎖中に含み(上記では「主鎖中に含み」を「重合体鎖として含み」と表現)分子量が1000以上の新規高分子化合物を与えるものである。これらの新規化合物の多くは耐熱性を有し、溶解性を示し、フィルム形成能があり、導電性を有し、電気化学的応答を示し、エレクトロクロミズム、酸化還元機能等を示し、これらの機能に応じた用途に用いることができる。また、対応するキノンのジハロゲン化物中のハロゲンの反応性を用いて該高分子を製造することができる。

Claims (14)

  1. ニトロ基、アミノ基、置換基を有するアミノ基、ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有する多環式キノンのジハロゲン化化合物から2ヶ所のハロゲン原子を除いて誘導される2価の基を重合体鎖として含み原子量が1000以上であるポリキノン誘導体。
  2. 室温にて1×10−7Scm−1(ジーメンス毎センチメートル)以上の誘電率を有する請求項1記載のポリキノン誘導体。
  3. 上記多環式キノンが三環式の縮合環を有する多環式キノンである請求項1又は2記載のポリキノン誘導体。
  4. 上記多環式キノンがアントラキノンである請求項1乃至3のいずれか1記載のポリキノン誘導体。
  5. ポリ(4,8−ジニトロアントラキノン−1,5−ジイル)である請求項1乃至4のいずれか1記載のポリキノン誘導体。
  6. 固有粘が0.07dlg−1(デシリットル毎グラム)以上である請求項1乃至5のいずれか1記載のポリキノン誘導体。
  7. 分子量が5000以上である請求項1乃至6のいずれか1記載のポリキノン誘導体。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1記載のポリキノン誘導体を製造するにあたり、ニトロ基、アミノ基、置換基を有するアミノ基、ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有する多環式キノンのジハロゲン化化合物を、脱ハロゲン化能を有する金属又は金属化合物と反応させることにより、2ヶ所のハロゲン原子を脱ハロゲン化して重合する、ポリキノン誘導体の製造方法。
  9. 上記脱ハロゲン化能を有する金属又は金属化合物が銅又はゼロ価ニッケル化合物である請求項8記載のポリキノン誘導体の製造方法。
  10. 上記多環式キノンがアントラキノンである請求項8又は9記載のポリキノン誘導体の製造方法。
  11. 分子量が5000以上である請求項8乃至10のいずれか1記載のポリキノン誘導体の製造方法。
  12. 請求項1乃至7のいずれか1記載のポリキノン誘導体よりなるエレクトロクロミック素子材料。
  13. 請求項1乃至7のいずれか1記載のポリキノン誘導体よりなるn型半導体デバイス用材料。
  14. 請求項1乃至7のいずれか1記載のポリキノン誘導体よりなるレドックスアクティブな修飾電極用材料。
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