JP3713314B2 - ポリピロール含有ラテックス及びその製造方法、ラテックス組成物並びに導電性フォーム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリピロールを導電性材料として含むポリピロール含有ラテックス(以下、PPy含有ラテックスという。)及びその製造方法、並びにこの方法により製造されるラテックスに更に特定のラテックスを添加して得られるラテックス組成物に関する。また、上記PPy含有ラテックス又はラテックス組成物中の固形分粒子が、その気泡壁等に付着した導電性フォームに関する。本発明のPPy含有ラテックス、ラテックス組成物及び導電性フォームは、導電性ロールなど複写機等の部材を製造するための原材料等として利用される。
【0002】
【従来の技術】
ポリピロールは、ポリアセチレン、ポリフェニレン及びポリチオフェン等と同様に、π電子共役系を有する導電性高分子化合物である。これらの中で特にポリピロールは、その導電性が高く、且つ空気中で安定しており、導電性材料としての実用化のための研究が進められている。このポリマーはモノマーを電気化学的に酸化重合(電解重合)又は化学的に酸化重合(化学重合)することによって得られる。しかし、上記の酸化重合によって得られるポリピロールは、不溶不融であるため成形性に劣っており、用途が限定されている。
【0003】
従来より、上記の問題を解決するために、媒質として最も使用し易い水にポリピロール等を分散させ、安定した水分散液を得る方法が広く検討されている。例えば、特開昭63−193926号公報、特開平1−304117号公報及び特開平3−730号公報には、ピロール等をポリビニルアルコールなどの保護コロイドとして作用する分散剤と、乳化剤として作用するアニオン性、カチオン性等の界面活性剤の存在下に重合することを特徴とするポリピロール等含有水分散液の調製方法が開示されている。
【0004】
また、特開平6−93190号公報には、天然ゴム或いは合成ゴム等、実質的に導電性を有さない高分子材料を固形分粒子とするラテックス中で、ピロールやアニリン等のモノマーを触媒存在下に酸化重合することにより、その中に導電性高分子複合材料からなる固形分粒子が分散されたラテックスを得る方法が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開昭63−193926号公報等に開示されたポリピロール等含有水分散液では、分散剤として吸水性の大きいポリビニルアルコールなどを使用しているため、この水分散液を使用してフィルム等を成形した場合、成形品が膨潤することがある。この膨潤の程度が高まるにつれ、成形品の導電性等の物性は一般に大きく低下する。また、特開昭63−193926号公報に記載された水分散液では、各種の高分子化合物、特に合成樹脂エマルジョンを混合して分散液の安定化が図られている。しかし、それでも上記の膨潤による物性の低下を十分に抑制することはできない。
【0006】
更に、上記各公報に開示された技術では、触媒を、ピロール1モルに対して1〜5モルと多量に使用しなければ、良好な導電性を有するフィルム等を成形できる水分散液を得ることができない場合が多い。しかし、このように多量の触媒を使用して得られる分散液では、その安定性が低下し、成形したフィルム等の導電性が不安定となり、同時に他の物性の低下も見られる。
【0007】
また、特に触媒として塩化鉄を使用した場合は、フィルム等が金属と接触したときに、金属が腐食され易いという問題もある。尚、特開平6−93190号公報に開示されている導電性高分子材料ラテックスでは、吸水性の高い分散剤や過剰の触媒は使用されていない。しかし、ゲル化防止等、ラテックスの安定化を図るために、非常に固形分の少ないラテックスとなっており、これでは実用的な導電性等を有するフィルムなどを得ることはできない。
【0008】
更に、従来のポリピロール等含有水分散液又はラテックスに、連泡性の軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体を浸漬し、脱水、乾燥して導電性フォームを得ようとしても、十分な導電性を有するフォームは得られないことが多い。その理由は、吸水性の分散剤を使用した場合は、前記のような膨潤による導電性の低下又は不安定といった問題があり、一方、分散剤を使用しない場合は、接着強度の不足によりポリピロール粒子がフォームのセル壁等に十分に付着せず、脱水時にセル壁等から脱落してしまうためである。
【0009】
また、分散剤の使用により十分な接着強度が得られたとしても、ポリビニルアルコールを使用したときなどは、前記のフィルムの場合と同様の膨潤の問題に加えて、フォームが硬くなるという問題もある。そのため、軟質フォームが本来有する柔軟性が失われ、実用的な導電性フォームは得られない。
【0010】
更に、従来のラテックス等では、その固形分含有量は通常相当に低いため、たとえポリピロールがフォームのセル壁に付着したとしても、十分な導電性を有するフォームは得られなかった。また、上記のように固形分含有量が少ないラテックス等では、フォームを浸漬した場合、フォームは十分に吸水して、ポリピロールも一旦フォームの内部に取り込まれるが、脱水時にポリピロール等の固形分も水とともに流出してしまう。そのため、フォームの内部においてはポリピロールがセル壁に付着、残留せず、表面だけに少量付着したフォームしか得られない。このようなフォームでは、フォームを切断して切り口の抵抗値を測定してみると、表層近傍以外での抵抗値の低下はほとんどみられない。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するものであり、吸水性の高い分散剤等は使用せず、また、過剰の触媒を使用することもなく、ポリピロールを含有するラテックスを製造する方法を提供することを目的とする。本発明の方法により製造されるラテックスは、固形分含有量が多く、且つポリピロールがラテックス中に安定に存在するため、このラテックスを使用して良好な導電性を有するフィルム等を成形することができる。
【0012】
また、本発明は、このPPy含有ラテックスに少量のノニオン性ポリウレタンラテックス(以下、ノニオン性PUラテックスという。)を添加したラテックス組成物、及び上記PPyラテックス又はラテックス組成物中に連泡性フォームを浸漬し、脱水、乾燥して得られ、そのセル壁にポリピロール等からなる導電性粒子が付着した、導電性に優れたフォームを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のPPy含有ラテックスの製造方法は、水、ノニオン性クロロプレンゴムラテックス、過酸化水素、無機酸及びピロールからなる水分散性混合物に、触媒として遷移金属又は遷移金属化合物を加え、上記ピロールを重合することを特徴とする。また、本発明のPPy含有ラテックスの製造方法は、上記ピロール1モルに対して、上記過酸化水素は0.09〜0.5モルであり、上記遷移金属又は遷移金属化合物は0.004〜0.05モルである。更に、本発明のPPy含有ラテックスの製造方法は、上記ノニオン性クロロプレンゴムラテックスを、固形分換算にて100重量部とした場合に、上記ピロールは60〜110重量部であるものとすることができる。また、本発明のポリピロール含有ラテックスは、水、ノニオン性クロロプレンゴムラテックス、過酸化水素、無機酸及びピロールからなる水分散性混合物に、触媒として遷移金属又は遷移金属化合物を加え、上記ピロールを重合して得られ、ラテックス100重量部中、固形分濃度が少なくとも13重量%であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のラテックス組成物は、本発明のPPy含有ラテックス100重量部に対して、10〜30重量部のノニオン性PUラテックスを添加したことを特徴とする。更に、本発明の導電性フォームは、本発明のPPy含有ラテックス或いは本発明のラテックス組成物に、連泡性フォームを浸漬し、その後、該PPy含有ラテックス又は該ラテックス組成物中より、該連泡性フォームを取り出し、脱水し、その後、乾燥して得られることを特徴とする。
【0015】
上記「ノニオン性クロロプレンゴムラテックス」(以下、ノニオン性CRラテックスという。)としては、市販のもの等を特に制限されることなく使用することができる。本発明では、特に固形分含有量50重量%程度のノニオン性CRラテックスを、上記「水」100重量部に対して、20〜40重量部程度使用することが好ましい。
【0016】
上記の配合量とすれば、得られる上記「PPy含有ラテックス」中の全固形分は、過酸化水素他、各成分中の水の量を考慮しても、重合して固形分の一部となるピロールも含め、このラテックス100重量部中、約10〜15重量部となり、固形分濃度の高いPPy含有ラテックスが得られる。また、必要に応じてクロロプレンゴムの加硫を行うことにより、上記ラテックスをフィルム状とした場合などに、その機械的強度などを高めることもできる。
【0017】
上記「過酸化水素」は、通常10〜20重量%程度の濃度の水溶液として用いられる。ピロールモノマー1モルに対して、過酸化水素そのものに換算した使用量が0.09モル未満では、ピロールモノマーを十分に酸化重合することができず好ましくない。また、その使用量が0.5モルを越える場合は、触媒を添加した時の発熱が過大となり、得られるPPy含有ラテックスが不安定になり易い。この過酸化水素の使用量は、特に0.2〜0.4モルの範囲が好ましく、この範囲であればピロールの重合は十分に進み、触媒添加時の発熱も小さい。
【0018】
上記「無機酸」としては、塩酸、硝酸、硫酸等を適宜使用することができる。これら無機酸は、通常0.5〜1.0N程度の希薄水溶液として使用される。その無機酸そのものに換算した使用量は、ピロールモノマー1モルに対して、0.08〜0.15モル程度が好ましい。この使用量が0.08モル未満では、フォームに導電性を付与することができず、0.15モルを越える場合は、ラテックスが不安定となるため好ましくない。尚、この無機酸を、予め水分散性混合物に添加しておかなくても、ピロールの重合は可能である。しかし、その場合は、ピロールの重合度が低く、良好な特性を有するラテックスは得られない。
【0019】
上記「ピロール」としては、ピロール、N−メチルピロール、3−メチルピロール等のピロール化合物、及びそれらの混合物を使用することができる。これらの中で、置換基を有さないピロールが導電性の面では好ましく、例えばN−メチルピロールを使用すれば、ピロールを使用した場合に比べて、成形されるフィルム等の抵抗は相対的に高くなる。このように、本発明では、ピロールの種類によって抵抗値を適宜調整することもできる。
【0020】
また、上記ピロールモノマーは、ノニオン性CRラテックス中の固形分100重量部に対して、60〜110重量部程度使用することが好ましい。この使用量が60重量部未満では、ノニオン性CRラテックスのクロロプレンゴム粒子に担持されるポリピロールの量が少なくなり、得られるフィルム等成形品の導電性が不十分となることがある。一方、110重量部を越えると、ラテックス中に単独で存在するポリピロールの量が多くなり、ラテックスが不安定となり易い。このピロールモノマーの量は75〜95重量部程度が特に好ましく、この範囲であれば、供給したピロールモノマーの多くがノニオン性CRラテックスに付着し、効率よく、優れた特性のPPy含有ラテックスを得ることができる。
【0021】
上記「遷移金属」としては、元素周期律表の IIIA〜 VIIA、VIII及びI Bの各族の元素が該当し、例えばFe、Cu、Mo、Pt、Mn、Vなどが挙げられる。また、上記「遷移金属化合物」としては、上記各遷移金属の硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩など各種酸の塩、及びキレート化合物等を使用することができる。本発明では、この遷移金属又は遷移金属化合物は、ピロールモノマー1モルに対して0.004〜0.05モル程度使用する。この使用量が0.004モル未満では、ピロールモノマーを十分重合させることができず、0.05モルを越える場合は、形成されるラテックスが不安定になり易い。
【0022】
本発明では、水、ノニオン性CRラテックス、過酸化水素他の各成分を予め混合し、十分攪拌して「水分散性混合物」を調製し、その後、重合触媒である遷移金属等を徐々に添加する。反応温度は−5〜30℃の範囲が好ましく、特に1〜15℃程度が好適である。この温度が−5℃未満では、ラテックスがゲル化を生ずることがあり、また、30℃を越える場合は、副生物が生成し、良好な導電性を有するフィルム等を成形できるPPy含有ラテックスを得ることができない。尚、この反応温度は3〜10℃程度が更に好ましく、この温度範囲であれば優れた性質のラテックスを安定して得ることができる。
【0023】
また、上記「ノニオン性PUラテックス」としては、乳化剤を使用し、ジアミンによって鎖延長して得られるものを使用することができる。この他、ビス(2−シアノエチルアミノ)エタンのような特殊な鎖延長剤を用いて得られるものであってもよい。また、長鎖アルコールのアルキレンオキサイド縮合物と、ヒドロキシ基のような親水基を有するアミンとを、ウレタンプレポリマーと反応させて得られるものもあり、本発明では、これらを特に制限されることなく使用することができる。
【0024】
このノニオン性PUラテックスは、導電性粒子は含有しないが、塩素イオン、鉄イオンなどの存在下で安定である。そのため、得られる上記「ラテックス組成物」は、PPy含有ラテックスに比べ、導電性の面ではやや劣るものの、ラテックスの安定性の面ではより優れている。このノニオン性PUラテックスの使用量が、PPy含有ラテックス100重量部に対して、10重量部未満では、ラテックス安定化の効果が十分ではない。また、30重量部を越える場合は、ラテックス組成物中で、導電性を有さないこのノニオン性PUラテックスの相対量が多くなり、上記ラテックス組成物を使用して成形したフィルム等の導電性が低下する。ノニオン性PUラテックスの使用量は、15〜25重量部の範囲が特に好ましく、この範囲であれば、安定性が高く、且つ十分な導電性を有するフィルム等を得ることができる。
【0025】
更に、ノニオン性PUラテックスとして自己架橋型のものを使用すれば、ラテックス組成物を使用してフィルムなどを成形した場合に、その機械的強度、基材となる樹脂フィルム等との密着性などが向上するため好ましい。尚、このノニオン性PUラテックスに代えて、ノニオン性CRラテックスを使用した場合、PPy含有ラテックス中のノニオン性CRラテックスとの親和性がよいため、凝集を生じて、ラテックス組成物が固化してしまい、フィルム成形などに使用可能なラテックス組成物を得ることができない。
【0026】
上記「連泡性フォーム」としては、ポリウレタンフォーム、ラテックスラバーフォームなどを使用することができ、特に連泡性の軟質ポリウレタンフォームが好ましい。本発明では、基本的なラテックスとして、クロロプレンゴムラテックス、ポリウレタンラテックスといった柔軟性に優れる固形分を含むものを使用している。そのため、これら固形分からなる粒子が、その気泡壁に付着した上記の連泡性フォームも、本来の優れた柔軟性を失うことはない。また、得られる「導電性フォーム」は、環境変化による導電性の変動も小さく、優れた導電性が安定して維持される。
【0027】
フォームを「浸漬」する際の、PPy含有ラテックス或いはラテックス組成物の温度は特に問わないが、通常、室温でよく、また、浸漬する時間は1〜5分程度がよい。この浸漬時間が1分未満では、固形分粒子が気泡壁に十分付着せず、フォームの導電性が不十分となる。また、5分を越えて浸漬しても、それ以上多くの粒子を付着させることはできない。
【0028】
PPy含有ラテックス或いはラテックス組成物中に浸漬したフォームは、例えば二軸のロールを通過させるなどの方法により「脱水」する。「乾燥」はどのような手段で行ってもよいが、40〜70℃程度の比較的低温で実施することが好ましい。乾燥温度が低すぎる場合は、十分な乾燥には長時間を要し、高すぎる場合はフォームそのもの、或いは付着した固形分粒子の熱劣化を生ずることがある。この乾燥は、減圧乾燥であることが好ましく、減圧にすれば比較的低温、短時間で、十分な乾燥が可能である。
【0029】
尚、ノニオン性ラテックスは、ラテックス粒子に電荷がないため、カチオン性、アニオン性、両性ラテックス等、他のラテックスよりも酸化剤、無機酸、触媒に対して安定である。また、ノニオン性のラテックスであっても、ポリウレタンラテックスなどでは、ピロールモノマーとゲル化を生じてしまうが、ノニオン性CRラテックスは、ピロールモノマーとの安定性も高く、良好な分散状態が長期間維持される。
【0030】
また、従来この種のラテックスでは、特に本発明のラテックスのように特別な分散剤等を使用しない場合は、分散状態安定化のためにその固形分濃度は低く抑えられていた。そのため、このラテックスを使用して得られるフィルム等の導電性は不十分なものであった。これに対して、本発明のPPy含有ラテックスでは、少なくとも13重量%程度の比較的高濃度の固形分を含有させることができ、導電性に優れたフィルム等を成形することができる。
【0031】
そのうえ、ポリピロールはクロロプレンゴムとの接着性も良好であって、連泡性フォームを浸漬後、脱水する工程においても、ポリピロールは水とともにフォーム外へ流出することなく、ゴム粒子表面に付着したままとなる。そのため、得られる導電性フォームも、PPy含有ラテックスからなるフィルム等と同等の優れた導電性を有するフォームとなる。
【0032】
尚、本発明のように、ノニオン性CRラテックス中でピロールを重合させる場合、ピロールは主にクロロプレンゴム粒子の表面で重合される可能性が高いと考えられる。従って、ポリピロールの多くはゴム粒子表面に付着しており、一部はポリピロール粒子が単独で分散しているものと思われる。また、使用されるピロールが比較的多量であれば、単独で分散しているポリピロールの割合が多くなるものと思われる。このように本発明のPPy含有ラテックスの性状は変化し得るが、いずれにしても、本発明のPPy含有ラテックス又はラテックス組成物では、優れた導電性を有するフィルム或いはフォーム等を得ることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明のPPy含有ラテックスは、固形分47.0%の市販のノニオン性CRラテックスと、置換基を有さないピロールモノマーとを使用し、ピロール等の重合において多用される塩化第二鉄の水溶液を触媒として製造することができる。また、ラテックス組成物は、上記PPy含有ラテックス100重量部に対して、固形分50.0%の市販のノニオン性PUラテックスを、室温において20重量部程度配合し、混合することにより容易に調製することができる。更に、導電性フォームは、上記のようにして得られたPPy含有ラテックスに、連泡性の軟質ポリウレタンフォームを、室温において数分間浸漬し、脱水、乾燥することにより得ることができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。
尚、実施例、比較例のPPy含有ラテックスからなるフィルムの抵抗値は、抵抗値測定装置(ヒューレットパッカード社製、商品名「34401A MULTIMETER」)により測定した。
【0035】
実施例1
室温において、水50gに、ノニオン性CRラテックス(昭和電工・デュポン株式会社製、商品名「Neoprene 115」)15g、15%過酸化水素水(和光純薬株式会社製)6g、0.5N塩酸(和光純薬株式会社製)20g及びピロール(純粋化学株式会社製)6gを添加して攪拌した。この水分散性混合物を攪拌しながら5℃に冷却し、重合触媒として3%塩化第二鉄水溶液5gを徐々に滴下した。
【0036】
触媒滴下後10〜30分でピロールの重合が進み、上記混合物は黒色に変化した。このようにして得られたポリピロールを含むラテックスは、室温で1ヶ月に渡り沈澱を生ずることなく安定に存在した。このPPy含有ラテックスをポリエチレンテレフタレート(以下、PETという。)からなるフィルムの表面に塗布し、60℃で1時間、加熱乾燥して、厚さ20μmのフィルムを得た。このフィルムの抵抗値を上記の方法によって測定した。
【0037】
以下、同様の方法により、表1に示す配合で実施例2及び比較例1〜8のPPy含有ラテックスを調製した。また、ゲル化を生ずることなくラテックスを調製できた例については、同様にしてフィルムの抵抗値を測定した。尚、表1には、PPy含有ラテックスの固形分濃度を併せて示す。
【0038】
【表1】
【0039】
尚、表1のラテックス又はエマルジョン▲1▼〜▲8▼は、具体的には下記のものである。
▲1▼ノニオン性CRラテックス(昭和電工・デュポン株式会社製、商品名「Neoprene 115」、固形分;47.0%、pH;7.0)
▲2▼カチオン性CRラテックス(昭和電工・デュポン株式会社製、商品名「Neoprene 950」、固形分;50.0%、pH;9.0以下)
▲3▼ノニオン性ウレタンラテックス(大日本化学工業株式会社製、商品名「Vondic 1310NSC」、固形分;50.0%、pH;9.0)
【0040】
▲4▼アニオン性ウレタンラテックス(旭電化工業株式会社製、商品名「HUX−290H」、固形分;62.0%、pH;7.5)
▲5▼アニオン性アクリレートラテックス(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol LX852」、固形分;45.0%、pH;5.0)
【0041】
▲6▼アニオン性合成ゴムラテックス〔日本合成ゴム株式会社製、商品名「0640」、合成ゴム;スチレン・ブタジエン共重合体、固形分;48.0%、pH;8.8〕
▲7▼ポリビニルアルコールエマルジョン(株式会社マルバン製、商品名「バンスターPX25」、固形分;15.0%、pH;4.5)
▲8▼ポリ酢酸ビニルエマルジョン(株式会社マルバン製、商品名「バンスターPS100」、固形分;55.0%、pH;4.5)
【0042】
表1の結果によれば、実施例1及び2では、温度、相対湿度によらず、成形されたフィルムの抵抗値は、実施例1では約1×103 Ω、実施例2では約2×103 Ωとなっている。このように各実施例では、導電性材料として十分使用できるフィルム等を得ることができるPPy含有ラテックスが得られていることが分かる。尚、これらの例では触媒として使用した塩化第二鉄は、ピロールモノマー1モルに対して約0.005〜0.01モルと非常に少量である。それでも本発明の方法では、上記のように優れた導電性を有するフィルム等を得ることができる。
【0043】
これに対し、比較例1〜5では、ピロール重合後の混合物の安定性が崩れるためゲル化を生じ、ラテックスを得ることができなかった。また、比較例6〜8では、ゲル化は生じなかったものの、フィルムの抵抗値は全般に高く、しかも温度、湿度による抵抗値の変動が各実施例に比べて大きい。特に比較例7〜8では、湿度が低い場合には抵抗値が相当に高くなっていることが分かる。更に、比較例6では、温度、湿度による抵抗値の変動は小さいが、固形分が10重量%以下と少なく実用的ではない。
【0044】
実施例3
実施例1で得られたPPy含有ラテックス102gに対して、ノニオン性PUラテックス(前記ラテックス▲3▼と同じものを使用した。)20gを添加し、室温で攪拌し、混合した。得られたラテックス組成物をPETフィルム上に塗布し、1時間自然乾燥させて、厚さ30μmのフィルムを得た。このフィルムの抵抗値を実施例1と同様にして測定した。
【0045】
以下、同様の方法により、表2に示す配合で比較例9〜11のラテックス組成物を調製した。表2には、表1と同様、PPy含有ラテックスの固形分濃度を併せて示す。尚、この固形分濃度は下記の式により求めた。
PPy含有ラテックス中の固形分(重量%)=〔(▲1▼〜▲8▼のラテックス又はエマルジョン中の固形分+ラテックス中で生成したポリピロール)/PPyラテックスの全重量〕×100
【0046】
【表2】
【0047】
表2の結果によれば、実施例3のラテックス組成物では、実施例1のPPy含有ラテックスに比べて抵抗値は高くなるものの、それでも実用上使用可能な導電性フィルム等を成形することができるラテックス組成物が得られていることが分かる。一方、比較例9では、添加したノニオン性CRラテックスと、ベースとなるPPy含有ラテックスとの親和性が良いためにゲル化してしまった。また、比較例10及び11では、カチオン性又はアニオン性ラテックスが塩素イオン、鉄イオン等の存在下では不安定であり、比較例9同様ゲル化してしまった。
【0048】
実施例4
実施例1で得られたPPy含有ラテックスに連泡性フォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、商品名「EMM」、軟質連泡性ポリウレタンフォーム)を、室温において3分間浸漬し、取り出したフォームを2軸ロールを通過させて脱水した。その後、60℃で1時間加熱乾燥し、全固形分の15重量%がポリピロールである導電性フォームを得た。この導電性フォームの4端子法で測定した抵抗値は1.2×105 Ω/cmであった。
【0049】
同様の手順により、実施例2のPPy含有ラテックス及び実施例3のラテックス組成物を用いて導電性フォームを得た(実施例5、実施例6)。同様にして測定した抵抗値は、それぞれ2.8×105 Ω/cm及び2.3×106 Ω/cmであった。また、比較例7のPPy含有ラテックスを用いて導電性フォームを調製したが(比較例12)、フォーム本来の柔軟性が失われ硬いフォームとなっていた。このフォームは、40℃、90%RHの環境下で膨潤し、柔軟なフォームとすることができるが、室温状態に戻すと再び硬くなってしまった。
【0050】
【発明の効果】
本発明のPPy含有ラテックス及びその製造方法によれば、吸水性の高い分散剤を使用することなく、ポリピロールがラテックス中に安定して分散したPPy含有ラテックスを得ることができる。また、過剰量の触媒を使用する必要もなく、ラテックス中の固形分の多い製品が得られるため、良好な導電性を有するフィルム等を成形することができるPPy含有ラテックスが得られる。更に、特定された量の過酸化水素及び触媒を使用し、又は特定されたノニオン性CRラテックスとピロールとの量比とすれば、より優れた性質を有するPPy含有ラテックスが得られる。
【0051】
また、本発明のPPy含有ラテックスに、特定のノニオン性ラテックスを特定量添加すれば、得られるフィルム等の導電性を容易に調整することができ、且つ安定したラテックス組成物を得ることができる。更に、本発明の導電性フォームでは、フォームを浸漬するラテックスの固形分濃度が高いため、十分な量のポリピロールを含む固形分粒子が気泡壁に担持され、しかも使用するラテックスの固形分は柔軟性に優れるクロロプレンゴムが主体であるため、フォーム本来の柔軟性が失われることもない。
Claims (5)
- 水、ノニオン性クロロプレンゴムラテックス、過酸化水素、無機酸及びピロールからなる水分散性混合物に、触媒として遷移金属又は遷移金属化合物を加え、上記ピロールを重合するポリピロール含有ラテックスの製造方法であって、
上記ピロール1モルに対して、上記過酸化水素は0.09〜0.5モルであり、上記遷移金属又は遷移金属化合物は0.004〜0.05モルであり、
上記ポリピロール含有ラテックス100重量部中、固形分濃度が少なくとも13重量%であることを特徴とするポリピロール含有ラテックスの製造方法。 - 上記ノニオン性クロロプレンゴムラテックスを、固形分換算にて100重量部とした場合に、上記ピロールは60〜110重量部である請求項1に記載のポリピロール含有ラテックスの製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の製造方法により製造されたことを特徴とするポリピロール含有ラテックス。
- 請求項3に記載のポリピロール含有ラテックス100重量部に対して、10〜30重量部のノニオン性ポリウレタンラテックスを添加したことを特徴とするラテックス組成物。
- 請求項2又は3記載のポリピロール含有ラテックス或いは請求項4記載のラテックス組成物に、連泡性フォームを浸漬し、その後、該連泡性フォームを該ポリピロール含有ラテックス又は該ラテックス組成物中より取り出し、脱水し、その後、乾燥して得られることを特徴とする導電性フォーム。
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