JP3712549B2 - 澱粉糊 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば洗濯糊、事務用糊、紙袋、紙箱などの紙工用接着剤、壁紙施工用接着剤等に使用される澱粉糊に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、澱粉糊は次の2つの製造方法が取られている。第1の方法は、古くから行われて来た加熱による糊化方法である。澱粉を水に懸濁し、攪拌しながら熱を加えるもので煮糊とも言われている。
【0003】
第2の方法は、近年製造されるようになったアルカリ糊化の方法である。熱を加える代わりにアルカリを加えることで糊化するため、冷糊法と言われている。
【0004】
原料としての澱粉は何れの方法でも、米澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ポテトスターチ、タピオカスターチ、甘藷澱粉などの天然澱粉とそれらを化学的、物理的に処理した加工澱粉が単独であるいは混合して使用される。
【0005】
前記2つの製造方法を比較検討すると、加熱による製造方法については、比較的、小資本で製造でき、製造コストが安価であり、特殊な薬剤及び技術を要しない。また、特殊な製造設備がいらない等の長所を有しているが、一定の品質の製品を製造しようとすると高度の熟練が必要となり、1バッチあたりの製造量が少なく、多くすると昇温及び冷却に時間がかかる問題があり、現在では、工業的に有利なアルカリ糊化による澱粉糊が主流となっている。
【0006】
ここで一般的なアルカリ糊化による澱粉糊の製造方法を述べると、先ず、澱粉を水に懸濁し、次に10〜50%のアルカリ水溶液を攪拌しながら加え、糊化し、糊化後中和剤として無機酸を加え、pH5〜8に調整し、次に防腐剤、防黴剤その他公知の添加剤を加えて製造する。
【0007】
アルカリとしては、一般的にはカセイソーダが使用される。中和に使用する無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸などが使用されているが、安定性の点から硝酸が一般的に使用される。このため製品中には、硝酸ソーダが1〜数%含まれているのが一般的である。
【0008】
アルカリ糊化(冷糊法)により、製造された澱粉糊は、酸に硝酸を使用した場合、接着剤がハミ出た皮膜の表面が経年し、紫外線により劣化着色する欠点を有している。特に近年壁紙施工用として澱粉糊が使用されているが、この欠点から施工後1〜2年して問題が発生している。
【0009】
これに対して加熱糊は薬品を使用しないため、施工後のハミ出し部分が劣化して着色するということはないが、施工中及び施工後の接着性能が低いためと一定の品質のものを大規模に製造できないため、使用されることが少ない。
【0010】
また、硝酸に換えて、塩酸、硫酸等を中和剤として使用した場合には前記の施工後、ハミ出した部分が劣化着色することはないが、糊の安定性が著しく悪くなり、実際の製品にはなり難い。
【0011】
そこで、本出願人は、硝酸による中和を行わず、中和剤として有機酸の酸無水物又は塩化アシル化合物を用いた澱粉糊を提案した(特願平10−215267号)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、中和剤としての硝酸の使用は、その価格、作業操作の簡便さの点で澱粉糊の製造から排除し難い。従って、本発明者らは硝酸を使用しつつ、紫外線により劣化着色しない澱粉糊を得るべく鋭意努力を行った結果、有機酸のマレイン酸及びフマル酸及びそれらの塩を加えることで中和剤に硝酸を用いても皮膜が紫外線照射された場合において変色性が特別に優れた澱粉糊を作るのに効果があることを突き止め、本発明に至った。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点を解決するものであり、次に示す性能を有する澱粉糊を提供することにある。即ち、アルカリ糊化による製造で得られる澱粉糊であり、特別な設備を必要とせず、澱粉糊の製造に当たり、硝酸を使用しつつ、一定した品質のものを容易に安定的に供給でき、1バッチ当たりの製造量が多く、製造時間に多くを必要とせず、凍結安定性、貯蔵安定性が良好であり、接着性能が良く、製品の被膜が紫外線に当っても劣化着色しない澱粉糊を得ることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本請求項1に記載された発明に係る澱粉糊は、澱粉を水に懸濁させ、アルカリを加えて糊化させた後、硝酸で中和させてなる澱粉糊において、
無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸又はそれらの塩の1種以上から選ばれた変色防止剤が添加されているものである。
【0015】
本請求項2に記載された発明に係る澱粉糊は、請求項1に記載された澱粉糊に添加されるアルカリは、NaOH、KOH、Ca(OH)2などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属に属する水酸化アルカリの水溶液、または水溶液がアルカリ性を呈する化合物が、単独又は混合して使用されているものである。
【0016】
本請求項3に記載された発明に係る澱粉糊は、請求項1に記載された変色防止剤が、澱粉糊に対して0.5wt%〜10wt%添加されているものである。
【0017】
本請求項4に記載された発明に係る澱粉糊は、請求項1に記載された澱粉糊に防腐剤、防黴剤又はその他公知の添加剤が添加されているものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明においては、澱粉を水に懸濁させ、アルカリを加えて糊化させた後、硝酸で中和させてなる澱粉糊において、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸又はそれらの塩の1種以上から選ばれた変色防止剤が添加されているものである。
【0019】
このため、アルカリ糊化による製造で得られる澱粉糊であり、特別な設備を必要とせず、澱粉糊の製造に当たり、硝酸を使用しつつ、一定した品質のものを容易に安定的に供給でき、1バッチ当たりの製造量が多く、製造時間に多くを必要とせず、凍結安定性、貯蔵安定性が良好であり、接着性能が良く、製品の被膜が紫外線に当っても劣化着色しない澱粉糊を得ることができる。
【0020】
本発明で変色防止剤として添加される無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸又はそれらの塩の1種以上から選ばれたものは、硝酸で中和される澱粉糊に結果として添加されているものであればよく、添加される時期は問わない。
【0021】
即ち、本発明に係る澱粉糊では、澱粉を水に懸濁させ、アルカリを加えて糊化させた後、中和剤で中和させてなる澱粉糊において、
(1) 無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸又はそれらの塩の1種以上から選ばれたものを添加した後、硝酸で中和すること
(2) 前記中和剤として硝酸と、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸又はそれらの塩の1種以上から選ばれたものとの混合物を使用すること
(3) 硝酸で中和後、無水マレイン酸、マレイン酸、又はフマル酸から選ばれた1種以上のもののアルカリ又はアルカリ土属の塩を加えること
等によって得られる。
【0022】
本発明は、中和剤として硝酸と無水マレイン酸、マレイン酸又はフマル酸を使用するのであって、常温で加えられた硝酸はアルカリの中和剤として働いており、系中では、硝酸塩、マレイン酸塩又はフマル酸塩となって存在する。このようにして得られた澱粉糊は、現在一般的に安定性が良い糊を供給する目的で使用されている硝酸と同等又はそれよりも更に安定性が優れたものであり、その皮膜が紫外線照射によっても変色しないことなど全く新規なことである。
【0023】
マレイン酸塩又はフマル酸塩等が澱粉糊の皮膜の紫外線照射における変色性を良くする理由としては、まだ明確ではないが、変色を派生させる物質を捕捉し変色を防止するのに効果があるためであると思われる。
【0024】
硝酸に加えて、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸又はそれらの塩の1種以上から選ばれた変色防止剤を加えた澱粉糊は次のような特徴がある。
(1) 凍結安定性及び貯蔵安定性に優れている。
(2) 接着剤の被膜が紫外線により劣化着色しない。
(3) 接着性能に優れている。
【0025】
以上のように、本発明の澱粉糊は、従来工業的に製造されていた澱粉糊の問題を一挙に解決した全く新しい澱粉糊といえる。
【0026】
尚、使用する澱粉は、米澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ポテトスターチ、タピオカスターチ、甘藷澱粉などの澱粉であれば何を用いても良い。更に、各種天然澱粉を化学的に処理した加工澱粉、例えばエーテル化澱粉、エステル化澱粉、酸処理澱粉、酸化澱粉、加水分解された澱粉等も、ここでいう澱粉の定義に包含される。
【0027】
本発明の澱粉糊に添加されるアルカリとしては、NaOH、KOH、Ca(OH)2などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属に属する水酸化アルカリの水溶液、または水溶液がアルカリ性を呈する化合物が、単独又は混合して使用される。実用的には、NaOH(カセイソーダ)の10〜50%濃度のものが用いられる。もちろんこの濃度は、一般的なものであって、この範囲を越えたとしても何等問題はなく単に工業的な取扱い上の点からいっているにすぎない。アルカリの添加量は、固形分として1〜5%であり、これも一般的な範囲であり、澱粉の濃度、種類によっては、この範囲を越えたとしても本発明に対して影響は無い。
【0028】
本発明の澱粉糊に添加される変色防止剤としては、澱粉糊に添加されるアルカリの量にも影響されるが、おおむね澱粉糊に対して0.5wt%〜10wt%、好ましくは1wt%〜5wt%、添加されていればよい。即ち、0.5wt%より少なければ、本発明の変色防止剤による変色防止効果が期待できず、10wt%を越えて添加されれば、澱粉糊の接着効果に影響が出るおそれがある。
【0029】
尚、本発明の澱粉糊に、防腐剤、防黴剤或いはその他公知の添加剤を添加してもよい。
【0030】
【実施例】
コンスターチ(三和澱粉工業株式会社性)200gに水750g入れ、充分攪拌し、懸濁させる。これにカセイソーダ50%水溶液を20gを攪拌しながら室温で添加し糊化させた。添加終了後、引続き攪拌して充分に糊化を促し、次に硝酸を添加して、中和し、pH6〜7に調整した。中和終了後、ホルマリン及び防黴剤を添加して澱粉糊を得た。
【0031】
中和する酸として、硝酸に無水マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸を加え他は前述と同様にして製造した澱粉糊を得た。また、硝酸で中和後、マレイン酸塩及びフマル酸塩を加え他は前述と同様に作製した澱粉糊を得た。中和する酸として、硝酸に変えて、塩酸、硫酸、しゅう酸、モノクロロ酢酸を使用し、他は前述と同様にして製造した澱粉糊を得た。
【0032】
得られた澱粉糊について、接着性能、貯蔵安定性、凍結安定性、紫外線変色の特性を検討した。結果を次の表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示した通り、硝酸に無水マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸を加えることによって中和された澱粉糊又は硝酸により中和後マレイン酸塩及びフマル酸塩を加えた澱粉糊は、従来のアルカリ糊化で硝酸だけで中和された澱粉糊よりも接着性能の優れた、貯蔵安定性の良い、被膜が紫外線の暴露により劣化変色しない澱粉糊が得られた。
【0035】
以上のように、硝酸と無水マレイン酸、マレイン酸又はフマル酸よって中和された澱粉糊、及び中和は硝酸で行いその後マレイン酸塩、フマル酸塩を加えた澱粉糊は、凍結安定性及び貯蔵安定性に優れ、、接着剤の被膜が紫外線により劣化着色せず、接着性能に優れた等の特徴を有し、しかも工業的に大規模に一定の品質を容易に供給でき、製造工程が簡便・容易であり、製造コストも大幅なアップにはならない澱粉糊を得ることが出来る。
【0036】
本発明は以上説明したとおり、中和剤として、硝酸と、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸又はそれらの塩の1種以上から選ばれた変色防止剤とを添加することで、澱粉糊の安定性が向上し、凍結安定性及び貯蔵安定性に優れ、接着剤の被膜が紫外線により劣化着色せず、接着性能に優れた澱粉糊を得ることができる。
【0037】
【発明の効果】
本発明は以上説明したとおり、アルカリ糊化による製造で得られる澱粉糊であり、特別な設備を必要とせず、澱粉糊の製造に当たり、硝酸を使用しつつ、一定した品質のものを容易に安定的に供給でき、1バッチ当たりの製造量が多く、製造時間に多くを必要とせず、凍結安定性、貯蔵安定性が良好であり、接着性能が良く、製品の被膜が紫外線に当っても劣化着色しない澱粉糊を得ることができるという効果がある。
Claims (4)
- 澱粉を水に懸濁させ、アルカリを加えて糊化させた後、硝酸で中和させてなる澱粉糊において、
無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸又はそれらの塩の1種以上から選ばれた変色防止剤が添加されていることを特徴とする澱粉糊。 - 前記澱粉糊に添加されるアルカリは、NaOH、KOH、Ca(OH)2などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属に属する水酸化アルカリの水溶液、または水溶液がアルカリ性を呈する化合物が、単独又は混合して使用されていることを特徴とする請求項1に記載の澱粉糊。
- 前記変色防止剤が、澱粉糊に対して0.5wt%〜10wt%添加されていることを特徴とする請求項1に記載の澱粉糊。
- 前記澱粉糊に防腐剤、防黴剤又はその他公知の添加剤が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の澱粉糊。
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