JP3711875B2 - 変速比無限大無段変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両などに採用される変速比無限大無段変速機の制御装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から車両の変速機として、変速比を無限大まで制御可能とする変速比無限大無段変速機が知られており、例えば、特開2000−179674号公報などがあり、変速比無限大となるギアードニュートラルポイント(GNP位置)からのクリープ発進/停止において、ステップモータ位置の制御により無段変速機構の変速比を変更して、目標車両速度を実現している。
【0003】
この場合では、前進走行レンジでブレーキSWがOFFかつアクセル解放状態のとき、所定の車速(勾配とハンドル舵角に応じて補正される)となるように制御が行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の自動変速機付車両では、一般的に発進、停止において適度なクリープトルク(駆動力)を発生させ、円滑な運転フィーリングを実現している。
【0005】
しかしながら、ここで、車速そのものは、発生させるクリープトルク(駆動力)、車重等によって決定されるものであるが、前記従来例では、単純に車速を目標値として与えているだけであるため、例えば、目標車速を一定値にしてしまうと、フィードバック補正によって急激な変速補正が行われたときに、車両の挙動が不安定となる場合がある。
【0006】
また、前記従来例では、ブレーキがON(制動状態)であっても、ブレーキがOFFであっても目標車速を実現しようとするため、発生するクリープトルクが運転者の期待するものとは相違してしまい、違和感を与えるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、フィードバック補正によって車両挙動が不安定になるのを防止しながら、クリープトルクを運転者の期待するように発生させることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構と一定変速機構とをユニット入力軸にそれぞれ連結するとともに、前記無段変速機構と一定変速機構の出力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、運転状態に応じて総変速比または無段変速機構の変速比を制御する変速比制御手段とを備えた変速比無限大無段変速機の制御装置において、
アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、運転操作に基づいて運転レンジを検出するレンジ検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、少なくとも前記運転レンジと車速とアクセル操作量を含む運転状態に基づいてクリープ制御の実行を判定するクリープ制御判定手段と、少なくともアクセル操作量を含む運転状態から前記クリープ制御中の目標出力トルクを設定し、この目標出力トルクに基づいて目標車速を算出する目標車速算出手段と、この目標車速を、実車速から予め設定した相対車速以内となるように補正する目標車速補正手段と、車両の運転状態に基づいて目標とする総変速比を算出する目標IVT比算出手段と、この目標総変速比に基づいて無段変速機構の目標変速比を算出する目標CVT比算出手段とを備え、前記変速比制御手段は、前記クリープ制御の実行が判定されたときには、前記補正された目標車速を実現するように目標変速比を補正してクリープを発生させる。
【0009】
なお、目標車速は、前記アクセル操作量またはブレーキ操作状態に基づいて目標駆動力を算出する目標駆動力算出手段と、この目標駆動力に基づいて仮想加速度を算出する仮想加速度算出手段と、この仮想加速度を時間積分した値を目標車速として算出する目標車速算出手段と、から構成してもよい。
【0010】
また、目標変速比の補正は、実際の車速と前記補正された目標車速との偏差に基づいてフィードバック制御によって補正してもよい。
【0011】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記目標CVT比算出手段は、少なくともアクセル操作量を含む運転状態から目標駆動力を算出し、この目標駆動力に応じたトルクシフトの補償量に基づいて無段変速機構の目標変速比を補正する。
【0012】
また、第3の発明は、前記第1または第2の発明において、前記目標車速補正手段は、ブレーキの操作状態を検出するブレーキ状態検出手段を備え、このブレーキの操作状態に応じて実車速から予め設定した相対車速以内となるように目標車速を補正する。
【0013】
【発明の効果】
したがって、第1の発明は、アクセル操作量とブレーキ操作状態とを含む運転状態から目標車速を算出し、運転レンジと車速とアクセル操作量を含む運転状態に基づいてクリープ制御の実行を判定して、運転状態が予め設定したクリープ制御の状態になると、目標車速を、実車速から予め設定した相対車速以内となるように補正して、補正された目標車速を実現するように目標変速比を補正してクリープを発生させるようにしたため、目標車速は相対車速を超えて変動することがないため、急激な変速比の補正を抑制しながら、運転者の期待するクリープトルクを発生させることが可能となって、変速比無限大無段変速機を備えた車両の運転性を向上させることができる。
【0014】
また、第2の発明は、目標駆動力に応じたトルクシフトの補償量に基づいて無段変速機構の目標変速比を補正するようにしたため、トロイダル型の無段変速機構を用いた変速比無限大無段変速機の目標車速の制御精度をさらに向上させることができる。
【0015】
また、第3の発明は、このブレーキの操作状態に応じて実車速から予め設定した相対車速以内となるように目標車速を補正するため、ブレーキの操作状態、換言すれば、ブレーキのONまたはOFFに応じて目標とする相対車速(実車速からの相対速度)を決定するので、ブレーキのONまたはOFFによって、クリープトルクが不適切になって加速しすぎたり、駆動力が不足するのを防ぎ、あるいは、アイドル中のエンジン回転変動を抑制することができ、変速比無限大無段変速機の運転性を向上させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1、図2に示すように、変速比無限大無段変速機は、エンジンへ連結されるユニット入力軸1に、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構2と、ギア3a、ギア3bから構成された一定変速機構3(減速機)を並列的に連結し、これらの出力軸4、3cをユニット出力軸6で同軸的に配設するとともに遊星歯車機構5で連結したもので、無段変速機構2の出力軸4は遊星歯車機構5のサンギア5a及び直結モードクラッチ10に連結されるとともに、一定変速機構3の出力軸3cは動力循環モードクラッチ9を介して遊星歯車機構5のキャリア5bに連結される。
【0018】
サンギア5aと連結した無段変速機出力軸4は、スプロケット4a及びチェーン4bから無段変速機構2との間で駆動力の伝達を行い、直結モードクラッチ10を介して変速比無限大無段変速機の出力軸であるユニット出力軸6と選択的に結合される。
【0019】
一方、動力循環モードクラッチ9を介して一定変速機構3の出力軸3cと選択的に結合するキャリア5bは、リングギア5cを介してユニット出力軸6に連結される。
【0020】
ユニット出力軸6には変速機出力ギア7が設けられ、この変速機出力ギア7はディファレンシャルギア8のファイナルギア12と歯合し、ディファレンシャルギア8に結合する駆動軸11は、所定の総減速比(IVT比ii=ユニット入力軸回転数/ユニット出力軸回転数)で駆動力が伝達される。
【0021】
無段変速機構2は、図1に示すように、2組の入力ディスク21、出力ディスク22で、パワーローラ20、20をそれぞれ挟持、押圧するダブルキャビティのハーフトロイダル型で構成され、一対の出力ディスク22の間に介装された出力スプロケット2aは、チェーン4bを介してユニット入力軸1と平行して配置されたユニット出力軸6の無段変速機出力軸4に形成したスプロケット4aと連結する。
【0022】
また、ユニット入力軸1とCVTシャフト1bは、図示しないローディングカム装置を介して回転方向で結合しており、ユニット入力軸1はエンジンと結合されるとともに、一定変速機構3のギア3aを形成し、CVTシャフト1bは2組の入力ディスク21、21に連結されて、ユニット入力軸1からの入力トルクに応じて、ローディングカム装置が発生した軸方向の押圧力によって、パワーローラ20、20を入出力ディスクの間で挟持、押圧する。
【0023】
この変速比無限大無段変速機では、図3に示すように、動力循環モードクラッチ9を解放する一方、直結モードクラッチ10を締結して無段変速機構2の変速比ic(以下、CVT比icとする)に応じて駆動力を伝達する直結モードと、動力循環モードクラッチ9を締結する一方、直結モードクラッチ10を解放することにより、無段変速機構2と、一定変速機構3の変速比の差に応じて、変速比無限大無段変速機全体の総変速比(ユニット入力軸1とユニット出力軸6の変速比、以下、IVT比iiとする)を負の値から正の値まで無限大を含んでほぼ連続的に制御を行う動力循環モードとを選択的に使用することができる。
【0024】
そして、IVT比iiが無限大(図3では、IVT比iiの逆数1/ii=0)となる動力循環モードのギアードニュートラルポイントGNPでは、エンジンから駆動軸までを連結した状態で停車することができ、この停車状態からIVT比iiを変更することで、車両の発進を行うことができる。
【0025】
また、上記動力循環モードと直結モードの切り換えは、例えば、図3に示すように、無段変速機構2の出力軸4と、一定変速機構3の出力軸3cの回転数が一致する回転同期点RSPの近傍で後述するように行えば、切り換えショックを発生することなく円滑に運転モードの切り換えを行うことができる。
【0026】
なお、回転同期点RSPは、動力循環モードと直結モードで、同一CVT比においてIVT比が一致する点である。
【0027】
ここで、トロイダル型の無段変速機構2のCVT比icは、図2に示すステップモータ36のステップ数を制御することで、図4に示すような特性で変速が行われる。
【0028】
ここで、図4はトロイダル型の無段変速機構2のCVT比と、ステップ数の関係を、入力トルクをパラメータとしたマップであり、トロイダル型の特性として知られているように、入力トルクに応じてCVT比が変化するトルクシフトの影響を示すものである。
【0029】
すなわち、無段変速機構2への入力トルクが正方向に大きくなれば、CVT比がロー側へ動き、入力トルクが負方向に大きくなれば、CVT比はハイ側へ動くものである。
【0030】
一方、変速比無限大無段変速機では、運転モードに応じて無段変速機構2を通過するトルクの方向が変化し、動力循環モードの前進時では、出力ディスク22から入力ディスク21へトルクが伝達される負方向となり、動力循環モードの後退時と直結モードでは、入力ディスク21から出力ディスク22へトルクが伝達される正方向となる。
【0031】
したがって、動力循環モードの前進時では入力トルクが増大すると、無段変速機構2の通過トルクは負方向へ増大するので、CVT比はハイ側へ動き、これにより、IVT比はロー側へ変化する。このトルクシフトを補償するには、CVT比及びIVT比が変化する方向とは反対方向に変速制御を行うことにより、所定の変速比を保持することができるのである。
【0032】
動力循環モードと直結モードを切り換えるクラッチは、直結モードクラッチ10を制御する直結ソレノイド91と、動力循環モードクラッチ9を制御する動力循環ソレノイド92により制御される。
【0033】
次に、図2は、変速比無限大無段変速機の制御系を含めたブロック図を示す。
【0034】
マイクロコンピュータを主体に構成された変速制御コントロールユニット80には、ユニット入力軸1の回転数INPREV、すなわちエンジン回転数Neを検出する入力軸回転数センサ81からの出力、無段変速機構2の出力軸回転数Noを検出する出力軸回転数センサ82からの出力、ユニット出力軸6の回転数OUTREVを車速VSPとして検出する車速センサ83からの出力、スロットル開度TVO(または、アクセルペダルの踏み込み量APS)を検出するアクセル操作量センサ84からの出力、セレクトスイッチなどの操作に応じてセレクト位置RNGを検出するインヒビタスイッチ85からの出力、ブレーキペダルに応動するブレーキスイッチ86からのON/OFF信号、アクセルペダルの解放状態を検出するアイドルスイッチ87が検出したON/OFF信号、変速比無限大無段変速機の油温TEMPを検出する油温センサ88の出力等がそれぞれ入力される。
【0035】
なお、車速VSPは、ユニット出力軸6の回転数OUTREVに所定の定数を乗じて演算する。
【0036】
また、セレクト位置RNGは、例えば、Dレンジ(前進レンジ)、Rレンジ(後退レンジ)、Nレンジ(ニュートラルレンジ)、Lレンジ(ローレンジ)から構成される。
【0037】
変速制御コントロールユニット80は、これら各種センサの検出値を運転状態として処理し、スロットル開度TVOと車速VSPに基づいて、予め設定した変速マップから到達入力軸回転数DSRREVを求め、これをユニット出力軸回転数OUTREVで除して到達IVT比DIVTRATIOを決定して、CVT比icを制御するとともに、運転モードの切り換えが必要な場合には、動力循環モードクラッチ9と直結モードクラッチ10を選択的に締結し、動力循環モードと直結モードを切り換える。
【0038】
ここで、変速制御コントロールユニット80で行われる制御の一例について、図5〜図26のフローチャートを参照しながら以下に詳述する。なお、この制御は、所定時間毎、例えば、10msec毎等に実行される。
【0039】
まず、図5のフローチャートは、変速制御のメインルーチンを示し、ステップ1では、上記各センサが検出したユニット入力軸回転数INPREV、無段変速機出力軸回転数No、ユニット出力軸回転数OUTREV(車速VSP)、セレクト位置RNG、ブレーキスイッチ86からの信号、無段変速機構2のトラニオンを支持する油圧シリンダ(図示せず)の油圧Plo、Phi、スロットル開度TVOなどの運転状態を示す各検出値を読み込む。
【0040】
ステップ3では、検出したセレクト位置RNGに基づいて、どの運転レンジにあるかを判定する。
【0041】
ステップ4では、検出したユニット入力軸回転数INPREVと無段変速機構出力軸回転数Noの比(INPREV/No)から、実際のCVT比であるRATIOを算出する。
【0042】
そして、ステップ5では、各検出値に基づいて、運転モードSFTMODEが、次のいずれであるかを判定して、Nレンジ(SFTMODE=0)であればステップ6のNレンジ制御へ進み、N−Dセレクト(SFTMODE=1)であればステップ7のN−D制御へ進み、D−Nセレクト(SFTMODE=2)であればステップ8のD−N制御へ進み、Dレンジの動力循環モードで、かつクリープ運転領域(SFTMODE=3)にあればステップ9のDレンジ制御へ進み、Dレンジの動力循環モードでクリープ運転領域以外(SFTMODE=4)であればステップ10の制御へ進み、Dレンジの直結モードやRレンジなどでは、ステップ11のその他の制御へ進む。
【0043】
そして、運転モードSFTMODEに応じた処理を行った後には、ステップ12に進んで、目標値に応じたステップモータ36のステップ数DSRSTPを算出する(後述)とともに、ステップ13では、ステップ6からステップ11により演算された動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチの目標油圧値DSRPRSLC、DSRPRSHCから動力循環モードクラッチ9または直結モードクラッチ10の各ソレノイド91、92へ供給する油圧指令値(例えば、デューティ比)を求める(図28参照)。
【0044】
これらステップ数DSRSTPと油圧指令値に基づいて、ステップ14では、ステップモータ36と直結ソレノイド91または動力循環ソレノイド92を駆動する。
【0045】
次に、上記ステップ6で行われるNレンジ制御について、図6のサブルーチンを参照しながら説明する。
【0046】
まず、ステップ40では、検出したセレクト位置RNGがNレンジであるかを判断する、Nレンジでないときは、ステップ41へ分岐して、DレンジまたはLレンジが選択された前進レンジ(DまたはLレンジ)であるかを判断する。
【0047】
前進レンジであればステップ42へ分岐してSFTMODE=1(N→Dセレクト制御)とし、そうでなければステップ43へ分岐してSFTMODE=−1(N→Rセレクト制御)として本ルーチンを終了する。
【0048】
一方、上記ステップ40の判定がNレンジのときにはステップ44へ進んで、目標IVT比の逆数INVIVTRATIO0=0、無段変速機構2の目標変速比RATIO0=GNPRATIO(ギアードニュートラルポイントGNPに対する固定値)として、IVT比をギアードニュートラルポイントGNP位置に設定する。
【0049】
また、Nレンジでは、動力循環モード及び直結モードクラッチ9、10を共に解放するため、それぞれの目標油圧DSRPRSLC=0、DSRPRSHC=0とする。
【0050】
ステップ45では、Nレンジにおいてはトルクシフト補償の必要がないので、トルクシフト補償量TSRTOM=0、およびトルクシフト補償量フィルタ値(一次フィルタ値)TSRTOMFL=0とする。
【0051】
ステップ46では、クリープ制御時の車速F/B制御に備え、目標車速TGTVSP=0、車速F/Bによる無段変速機構2の変速比補償量VSPFBRTO=0および車速F/Bによる積分補償量VSPIntgR=0に設定する。
【0052】
次に、図7に基づいてN→Dセレクト制御について説明する。
【0053】
まず、ステップ50において、検出したセレクト位置RNGがNレンジであるかを判断する。
【0054】
Nレンジであればステップ51へ分岐して、変数INTGND=0、タイマーNDTIMER=0としてN→Dセレクト制御を終了し、また運転モードSFTMODE=2としてD→N制御を次回より開始する。
【0055】
Nレンジでなければステップ52へ進み、目標IVT比の逆数INVIVTRATIO0=0、無段変速機構2の目標変速比RATIO0=GNPRATIOとして、IVT比がギアードニュートラルポイントGNP位置となるように設定する。
【0056】
また、直結モードクラッチ10は解放中のため、この目標油圧DSRPRSHC=0とする。
【0057】
ステップ53では、Nレンジでは、トルクシフト補償の必要がないので、トルクシフト補償量TSRTOM=0、およびフィルタ値TSRTOMFL=0とする。
【0058】
ステップ54から64では、動力循環モードクラッチ9を解放状態から締結するため、タイマーによるシーケンス制御を行う。
【0059】
すなわち、ステップ63において、セレクト時タイマーNDTIMERが逐次インクリメントされるようになっており、その進行によってステップ54から57で分岐先のステップS58から64が選択される。
【0060】
ステップ54の判定で、タイマーNDTIMERが所定値1未満のステップ58では、動力循環モードクラッチ9の目標油圧DSRPRSLC=ND所定値1(プリチャージ圧)とする。
【0061】
次に、ステップ55の判定で、タイマーNDTIMERが所定値1以上、所定値2未満のステップ59においては、目標油圧DSRPRSLC=ND所定値2(プリチャージ圧その2)として動力循環モードクラッチ9の中込を行う。
【0062】
次に、ステップ56の判定で、タイマーNDTIMERが所定値2以上、所定値3未満のステップ60では、目標油圧を増大するために、
INTGND=INTGND+DELTAND
とし、ステップ61においては、
目標油圧DSRPRSLC=ND所定値2+INTGND
としてランプ制御を行って目標油圧を上昇させ、動力循環モードクラッチ9を徐々に締結する。
【0063】
次に、ステップ57の判定でタイマーNDTIMERが所定値3以上、所定値4未満のステップ62では目標油圧DSRPRSLC=油圧最大値として、動力循環モードクラッチ9を完全に締結させる。
【0064】
そして、ステップ57の判定でタイマーNDTIMERが所定時間4を経過すると、動力循環モードクラッチ9が締結されてDレンジへ移行したステップ64へ進み、変数INTGND=0、タイマーNDTIMER=0としてN−Dセレクト制御を終了し、運転モードSFTMODE=3としてDレンジ動循制御を次回より開始する。
【0065】
次に、図8に基づいてD→Nセレクト制御について説明する。
【0066】
まず、ステップ70にて、検出したセレクト位置RNGがDレンジであるかを判断する。
【0067】
Dレンジであればステップ71へ分岐して、変数INTGDN=0、タイマーDNTIMER=0としてD→Nセレクト制御を終了し、また、運転モードSFTMODE=1としてN→D制御を次回より開始する。
【0068】
一方、ステップS70の判定で、Dレンジでなければステップ72に進んで目標IVT比の逆数INVIVTRATIO0=0、無段変速機構2の目標変速比RATIO0=GNPRATIOとして、IVT比をGNP位置に設定する。
【0069】
また、Nレンジでは直結モードクラッチ10を解放するため、この目標油圧DSRPRSHC=0とする。
【0070】
ステップ73において、Nレンジでは、トルクシフト補償の必要がないので、トルクシフト補償量TSRTOM=0、およびフィルタ値TSRTOMFL=0とする。
【0071】
ステップ74から80では、動力循環モードクラッチ9を締結状態から解放するため、タイマーによるシーケンス制御を行う。
【0072】
すなわちステップ79において、セレクト時タイマーDNTIMERが逐次インクリメントされるようになっており、その進行によってステップ74と75で分岐先76から80が選択される。
【0073】
ステップ74の判定で、タイマーDNTIMERが所定値1未満の間は、ステップ76において、動力循環モードクラッチ9の目標油圧を設定するため、
INTGDN=INTGDN+DELTADN
とし、ステップ77では、動力循環モードクラッチ9の目標油圧DSRPRSLCを、
DSRPRSLC=DN所定値1+INTGDN
として、ランプ制御により徐々に減圧して動力循環モードクラッチ9を徐々に解放する。ただし、目標油圧DSRPRSLCは、最小値が0に規制される。
【0074】
次に、ステップ75の判定で、タイマーDNTIMERが所定値1以上、所定値2未満の間は、ステップ78において目標油圧DSRPRSLC=0として、動力循環モードクラッチ9を完全に解放させる。
【0075】
そして、ステップ75の判定で所定値2が経過すると、ステップ80へ進んでINTGDN=0、DNTIMER=0としてD−Nセレクト制御を終了し、運転モードSFTMODE=0としてNレンジ制御を次回より開始する。
【0076】
次に、図9に基づいてDレンジ動循(動力循環モード)制御での処理について説明する。
【0077】
ここでは本発明の主要部分を示しており、クリープ制御で車速F/Bを行っている。
【0078】
まず、ステップ90で、検出したセレクト位置RNGがNレンジであるかを判断する。
【0079】
Nレンジであればステップ91へ分岐して運転モードSFTMODE=2とし、次回からD→N制御を開始する。
【0080】
一方、Nレンジでなければステップ92以降へ分岐する。
【0081】
ステップ92および93では、クリープ制御領域から動力循環モードの通常走行(クリープなし)に遷移したか判断する。
【0082】
すなわちステップ92において、スロットル開度TVO≧所定値TVO1またはアイドルスイッチ87がOFFであるかを判定し、続いてステップS93で車速VSP≧所定車速値1であるかを判定して、これらの条件のうちいずれかを満たせば、ステップ94へ分岐し、ステップ94では運転モードSFTMODE=4として次回からDレンジ動循モードでの通常走行を開始する。
【0083】
一方、ステップS92、93の条件を共に満たさない場合では、ステップ95以降に進んでクリープ制御を行う。
【0084】
ステップ95では、図10のサブルーチンに従って、目標入力回転数DSRREVを算出する。
【0085】
すなわち図10において、ステップ110で、検出したセレクト位置RNGに応じた変速マップを選択する。この場合では、Dレンジであるため、図11に示すようなDレンジの変速マップを選択する。
【0086】
次に、ステップ111では、選択された変速マップから、スロットル開度TVOと出力軸回転数OUTREVに基づいて到達目標回転数DSRREVをテーブル検索して算出する(一般のCVTなどに用いられている手法と同様)。
【0087】
次に、図9のステップ96では、図12のサブルーチンに従って、到達IVT比DIVTRATIOおよびその逆数INVDIVTRATIOを算出する。
【0088】
すなわち、図12のサブルーチンでは、ステップ115において到達目標回転数DSRREVを出力軸回転数OUTREVで除して、到達IVT変速比DIVTRATIOを算出し、ステップ116において、到達IVT変速比DIVTRATIOの逆数としてINVDIVTRATIOを算出する。
【0089】
次に、図9のステップ97では、図13のサブルーチンに従って、過渡時の目標IVT比IVTRATIO0およびその逆数INVIVTRATIO0を算出する。
【0090】
すなわち図13では、ステップ120でスロットル開度TVO、車速VSPなどのパラメータからIVTの過渡時の変速比を算出するための変速時定数TgTMを算出する。
【0091】
次に、ステップ121において、次式に基づいて過渡IVT変速比IVTRATIO0を算出する。
【0092】
IVTRATIO0=IVTRATIO0+TgTM×(DIVTRATIO−IVTRATIO0)
次に、ステップ122では、次式に基づいて過渡IVT変速比の逆数INVIVTRATIO0を算出する。
【0093】
INVIVTRATIO0=INVIVTRATIO0+TgTM×(INVDIVTRATIO−INVIVTRATIO0)
上記ステップ121、122で用いられる式は、一般のローパスフィルタを示している。これは過渡時の目標値を作り出すためのものであり、2次遅れフィルタなどの構成をとってもよく、IVTの目的に応じて適宜変更されるものである。
【0094】
次に、図9のステップ98では、図14のマップに従って、過渡時の目標IVT比の逆数INVIVTRATIO0からマップ検索を行って、無段変速機構2の過渡時の目標CVT比RATIO0を算出する。
【0095】
ステップ99では、図15のサブルーチンに従って、クリープ制御時の目標出力トルクの算出を行う。
【0096】
すなわち、図15のステップ125では、図16のマップにおいて、ブレーキスイッチ86のON/OFFに応じた特性マップを選択し、出力軸回転数OUTREVに基づいてマップ検索を行って、マップ出力トルクTGTTOMを算出する。
【0097】
この特性マップは、出力軸回転数が低くなるほどマップ出力トルクが大きくなるように設定されており、さらに、ブレーキOFF時には車両の走行抵抗(平坦路相当)よりも十分大きなトルクが得られるように設定されており、車両を確実に前進させる。
【0098】
また、ブレーキON時には、マップ出力トルクが走行抵抗よりも小さくなるように設定され、適度な減速を与える。
【0099】
次にステップ126では、目標出力トルクTGTTO(目標駆動力)を次式により算出する。
【0100】
TGTTO=TGTTO+KTO×(TGTTOM−TGTTO)
この式は、いわゆるローパスフィルタで、KTOがその時定数を示す。このローパスフィルタを加えることにより、ブレーキのON/OFFが繰り返し行われても目標トルクが滑らかに変化することになり、F/B制御時の運転性の劣化を防止している。
【0101】
次に、図9のステップ100では、図20のサブルーチンに従って目標出力トルクTGTTOに対応した目標車速TGTGDATAの算出を行う。
【0102】
すなわち、図20のステップ130で、目標加速度TGTGDATAを次式により算出する。
【0103】
TGTGDATA=(TGTTO−TORL)×KCONV
ここで、TORLは車両の走行抵抗を示す値で、車速VSPに応じた風損分、勾配分などを含んでいる。また、定数KCONVは、車両重量、タイヤ径などの情報を含んだ換算係数である。
【0104】
次に、ステップ131では、加速度を次式により積分して目標車速TGTVSPを算出する。
【0105】
TGTVSP=TGTVSP+KGTOVSP×TGTGDATA
この加速度の時間積分によりクリープ制御時の目標車速が算出される。なお、上記KGTOVSPは、加速度から車速への換算係数である。
【0106】
ステップ132では、ブレーキスイッチ86がONであるかを判断して、ステップ133a(ブレーキOFF)または133b(ブレーキON)へ分岐を行う。
【0107】
ステップ133a、133bでは、ブレーキのON/OFFに応じて図21に示すマップのうち、特性(1)もしくは(2)を選択し、出力軸回転数OUTREVに基づいてマップ検索を行い、車速リミット値TGTVSPLIMを算出する。
【0108】
ここで、図21の各特性マップは、図にも示されるように出力軸回転数(実車速)に対して相対回転(相対車速)差が生じるように、ブレーキON/OFFに応じて設定されている。
【0109】
ブレーキOFFならば、実車速からさらに車両が加速するように相対車速が設定され、ブレーキONならば減速するように設定されている。ただし、加速する場合であっても、クリープ制御を行う領域を超えた所定車速以上では減速するように設定される。
【0110】
このブレーキの操作状態に応じて実車速VSPから予め設定した相対車速以内となるように車速リミット値TGTVSPLIMで目標車速TGTVSPを規制(補正)するため、ブレーキの操作状態、換言すれば、ブレーキのONまたはOFFに応じて目標とする相対車速(実車速VSPからの相対速度)を決定するので、ブレーキのONまたはOFFによって、クリープトルクが不適切になって加速しすぎたり、駆動力が不足するのを防いで、アイドル中のエンジン回転変動を抑制することができ、変速比無限大無段変速機の運転性を向上させることができるのである。
【0111】
次に、ステップ134a、134bでは、目標車速TGTVSPが上記目標車速リミット値TGTVSPLIMを越えているかを判断する。
【0112】
すなわち、ブレーキOFFならばステップ134aにて、
TGTVSP≧TGTVSPLIM
かを判定し、ブレーキONならばステップ134bにて、
TGTVSP≦TGTVSPLIM
かを判定し、各目標車速リミット値を越えているのならば、ステップ135a、135bで、それぞれ上記ステップ133a、133bで求めた目標車速リミット値を、
TGTVSP=TGTVSPLIM
として目標車速に設定する。
【0113】
次に、図9のステップ101では、車速VSP≦所定車速値2かどうかを判断する。
【0114】
所定車速値2以下の場合には、ステップ102へ分岐してブレーキスイッチ86がONであるかを判定し、ONの場合ではほぼ車両が停止と判断してステップ104へ進む。
【0115】
ステップ104では、ギアードニュートラルポイントGNP位置で車両が停止し続けることを狙いとして、目標IVT比の逆数INVIVTRATIO0=0、無段変速機構2の目標変速比RATIO0=GNPRATIOとする。
【0116】
また、目標車速TGTVSP=0、車速フィードバック補償量VSPFBRTO=0、積分補償量VSPIntgR=0として、クリープ制御の再開に備える。
【0117】
一方、ステップ101で所定車速値2以上もしくはステップ102でブレーキスイッチ86がOFFの場合では、クリープ走行を継続と判断してステップ103へ分岐し、図22のサブルーチンに従って目標車速TGTVSPに基づくフィードバック量の計算を行う。
【0118】
すなわち、図22のステップ138で、上記図20のステップ131で算出した目標車速TGTVSPから、車速相当値である出力軸回転数OUTREV(または車速VSPでもよい)を引いた車速度偏差vsperrを算出する。
【0119】
vsperr=TGTVSP−OUTREV
次に、ステップ139では次式に基づいて、車速フィードバック(変速比)補償量VSPFBRTOを算出する。
【0120】
VSPIntgR=VSPIntgR+vsperr×Kiv
VSPFBRTO=vsperr×Kpv+VSPIntgR
これはいわゆるPI制御によるフィードバックを示しており、VSPIntgRは車速F/Bによる積分補償量で、Kiv、Kpvはフィードバックゲインである。なお、車速フィードバック補償量の演算は、特にPI制御である必要はなく、他の方式でのF/B制御でも良い。
【0121】
これにより車速フィードバック補償量VSPFBRTOが算出される。
【0122】
次に、図9のステップ105では、図17に基づいて、クリープ制御時のトルクシフト補償量CRPRTOMを算出する。
【0123】
すなわち、図17のステップ140では、図18(A)、(B)に示すトルクシフト補償マップから、無段変速機構2の目標変速比RATIO0(図中CVT変速比)と目標出力トルクTGTTOによりマップ検索を行って、クリープ制御時トルクシフト補償量CRPRTOMを求める。
【0124】
図18(A)、(B)のトルクシフト補償マップは、目標出力トルクTGTTOとCVT比から構成されているのが従来との違いであり、無段変速機構2の入力トルクと出力トルクは、CVT比が分かれば1対1の関係となるため、図18(A)、(B)のようなマップを用いる。
【0125】
ところで、クリープ制御としてみれば、IVT比がギアードニュートラルポイントGNPの近傍のときに行われることになるので、上記図18のような3次元マップでなく、図18(B)に示すように、変速比を省略したマップを用いたとしても、IVT比の変動範囲が狭いためクリープ制御に与える影響を小さくすることができ、上記図17のサブルーチンに代わって、図19の処理を行ってもよく、図18(B)のマップから目標出力トルクTGTTOに応じたクリープ制御時トルクシフト補償量CRTRTOMを求めてもよい。
【0126】
次に、図9のステップ106では、クリープ制御時トルクシフト補償量CRPRTOMに基づいて、トルクシフト補償量TSRTOMFLを次のように算出する。
【0127】
TSRTOMFL=TSRTOMFL+KTS×(CRPRTOM−TSRTOMFL)
これもローパスフィルタであり、KTSが時定数となる。
【0128】
ステップ107では、直結モードクラッチ10を解放するため目標油圧DSRPRSHC=0、動循モードクラッチ9を締結するため目標油圧DSRPRSLC=油圧最大値とする。
【0129】
以上によりDレンジの動力循環モードにおいてクリープ制御が実行される。
【0130】
この制御によって無段変速機構2のCVT比は、変速マップ分(ステップ98)、車速補正分(ステップ103)、トルクシフト補償分(ステップ105)から決定され、クリープが実現される。なお、実際には後述するように、ステップモータ36の応答性に応じた補償がさらに加わる。
【0131】
次に、図23に基づいて、クリープ制御を行わないDレンジ動力循環モード走行制御での処理について説明する。
【0132】
ステップ150では、動力循環モード走行制御から上記クリープ制御に戻るかを判定する。
【0133】
すなわち、スロットル開度TVO≦(所定値TVO1−α)かつアイドルスイッチ87=ONかつ車速VSP≦(所定車速値1−β)となったとき、ステップ151へ分岐する。
【0134】
ステップ151では、運転モードSFTMODE=3として、次回よりDレンジ動循クリープ制御を再開する。
【0135】
ステップ152では、目標車速TGTVSP、車速フィードバック補償量VSPFBRTO=0、積分補償量VSPIntgR=0に設定してクリープ制御での車速F/B制御に備え、制御を終了する。
【0136】
一方、ステップ150でクリープ制御を行わない動力循環モード走行と判定されたときには、ステップ153で通常のDレンジ制御を行う。このDレンジ制御について詳述はしないが、例えば、図11の変速マップ、図14のマップに基づいて、上記と同様に到達IVT比DIVTRATIO、過渡時の目標IVT比IVTRATIO0、過渡時の目標CVT比RATIO0を決定するとともに、到達IVT比DIVTRATIOに応じて動力循環モードと直結モードを切り換えるため、直結ソレノイド91と動力循環ソレノイド92の制御を行うものである。
【0137】
次に、図24に基づいて無段変速機構2の目標CVT比からアクチュエータであるステップモータ36への指令値を算出するステップモータ指令値算出処理(図5のステップS12)について説明する。
【0138】
まず、ステップ180では、無段変速機構2の目標変速比RATIO0と車速F/B制御補償量VSPFBRTOの和から目標変速比RATIO0を算出する。
【0139】
これにより車速が目標値となるよう補正されたことになる。
【0140】
次に、ステップ181では、目標変速比RATIO0と実変速比RATIOの差から変速比偏差errを算出する。
【0141】
err=RATIO0−RATIO
ステップ182では、次式により変速比F/B補償量FBRTOを算出する。
【0142】
IntgR=IntgR+err×Ki
FBRTO=err×Kp+IntgR
これはいわゆるPIフィードバック制御である。Kp、Kiは各々比例、積分ゲインであり、運転条件に応じて適宜与えられるものである。
【0143】
ステップ183では、最終目標変速比DSRRTOを次式により算出する。
【0144】
DSRRTO=RATIO0+FBRTO+TSRTOMFL
これは過渡の目標変速比とF/B補償量とF/F補償量(トルクシフト補償量)が加わったものである。
【0145】
次に、ステップ184では、最終目標変速比DSRRTOから図25のCVT比−ステップモータステップ数のマップに従って、目標ステップ数DSRSTP0を検索によって算出する。
【0146】
ステップ185では、油温センサ88の検出値TEMPから図26の油温補正マップに従って、油温補償ステップ数CSTEPを検索により算出する。これは、油温TEMPによってCVT比とステップ数の関係がずれるので、これを補正するものである。
【0147】
ステップ186では、最終目標ステップ数DSRSTPを次式により算出する。
【0148】
DSRSTP=DSRSTP0+CSTEP
これにより油温TEMPによるCVT比のずれが補正される。以上によりステップモータの指令ステップ数DSRSTPが算出される。
【0149】
以上の制御によって、運転者のアクセル操作及びブレーキ操作を含む車両の運転状況から目標駆動力(目標出力トルク)を算出し、この目標駆動力から算出した目標加速度(仮想加速度)に基づいて目標車速TGTVSPを求め、ブレーキのON/OFFに応じて、図21に示すマップから求めた車速リミット値TGTVSPLIMで、目標車速TGTVSPを実車速VSPから予め設定した相対車速の範囲内となるように規制する。
【0150】
そして、実車速からの相対車速で規制された目標車速TGTVSPと、検出した車速VSPとの偏差vsperrに基づいてフィードバック補償量VSPFBRTOを求め、この補償量に基づいて目標とするCVT比を補正するようにしたので、フィードバック制御によって急激な変速補正が行われても、目標車速TGTVSPが実車速からの相対車速で規制されるために、車両の挙動が不安定になるのを防止でき、また、運転者の期待に沿うようなクリープトルクを実現できるのである。
【0151】
さらに、目標駆動力をトルクシフト量に応じて補正しているので、クリープトルク(及び車両加速度、車速)の制御精度を向上させることができるのである。
【0152】
ここで、上記制御の作用について、図27を参照しながら説明する。
【0153】
時間T0において、車両がNレンジかつブレーキをONかつアクセルペダル解放(アイドルスイッチON)にして停止しており、無段変速機構2のCVT比はギアードニュートラルポイントGNP位置に保持されている。
【0154】
時間T1において、NレンジからDレンジへのレンジ切換えが行われると、動力循環モードクラッチ9を締結するようにN→Dセレクト制御を行う(ステップ7)。
【0155】
次に、時間T2においては、ブレーキONで停止し、かつ、動力循環モードクラッチ9が締結されるため、ギアードニュートラルポイントGNP位置を保持する制御を行う(ステップ9)。
【0156】
そして、時間T3以降では、ブレーキONからOFFとなったため、クリープ制御を開始して、上述のように目標出力トルクTGTTO→目標加速度TGTGDATA→目標車速TGTVSP→目標車速リミット値TGTVSPLIM→車速F/B補償量VSPFBRTO及びトルクシフト補償量(F/F分)TSRTOML→最終目標変速比DSRRTO→ステップモータ指令値DSRSTPの順に計算が行われ、クリープ制御が実現される(ステップ9〜13)。
【0157】
このとき、目標車速TGTVSPは、目標車速リミット値TGTVSPLIMによって、実車速VSPからマップで設定された相対車速の範囲に規制されるため、車速F/B補償量VSPFBRTOが過大に変動することがなく、これにより、フィードバック補正による急激な変速補正を抑制することができるのである。
【0158】
時間T3でクリープトルクによって車両が発進した後、時間T4において、出力軸回転数OUTREVが所定車速値1以上となったので、通常の動力循環モード走行へ移行して通常の変速比制御を行う(ステップ10)。
【0159】
こうして、目標加速度(または仮想加速度)TGTGDATAから求めた目標車速TGTVSPと実際の車速VSPの偏差によってIVT比のフィードバック制御を行うことにより、図示のように出力軸トルクが滑らかに立ち上がり、かつ、目標車速TGTVSPはリミット値TGTVSPLIMで実車速から所定の範囲内の相対車速に規制されるため、フィードバック制御の急激な変化によって車両の挙動が不安定なるのを防止しながら、運転者の期待に応じたクリープトルクを実現できるのである。
【0160】
そして、ブレーキの操作状態に応じて実車速VSPから予め設定した相対車速以内となるように目標車速TGTVSPを補正するため、ブレーキの操作状態、換言すれば、ブレーキのONまたはOFFに応じて目標とする相対車速(実車速からの相対速度)を決定するので、ブレーキのONまたはOFFによって、クリープトルクが不適切になって加速しすぎたり、駆動力が不足するのを防いで、アイドル中のエンジン回転変動を抑制することができ、変速比無限大無段変速機の運転性を向上させることができる。
【0161】
なお、上記実施形態においては、ブレーキの操作をブレーキスイッチ86によって検出したが、これに限定されるものではなく、ブレーキ油圧、ブレーキペダル踏込み量等を検出することでブレーキON/OFFの検知を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す変速比無限大無段変速機の概略構成図。
【図2】同じく変速比無限大無段変速機の制御装置を示す概念図。
【図3】IVT比とCVT比の関係を示すマップである。
【図4】入力トルクに応じたステップモータのステップ数とCVT比の関係を示すマップである。
【図5】変速制御の一例を示すフローチャートで、メインルーチンを示す。
【図6】Nレンジ制御のサブルーチンである。
【図7】N−Dセレクト制御のサブルーチンである。
【図8】D−Nセレクト制御のサブルーチンである。
【図9】クリープ制御を伴うDレンジ制御のサブルーチンである。
【図10】目標入力軸回転数算出処理のサブルーチンである。
【図11】Dレンジにおける変速マップで、スロットル開度TVOをパラメータとして、出力軸回転数と目標入力軸回転数の関係を示す。
【図12】到達IVT比算出処理のサブルーチンである。
【図13】過渡IVT比算出処理のサブルーチンである。
【図14】過渡IVT比の逆数と過渡CVT比の関係を示すマップである。
【図15】目標出力トルク算出処理のサブルーチンである。
【図16】ブレーキの操作状態に応じた出力軸回転数と目標出力トルクの関係を示すマップである。
【図17】クリープ制御時のトルクシフト補償量計算処理のサブルーチンである。
【図18】トルクシフト補償量のマップで、(A)は目標出力トルクTGTTOとCVT比に応じた全変速範囲のマップを示し、(B)はギアードニュートラルポイント近傍で用いられる範囲の目標出力トルクTGTTOに応じたマップを示す。
【図19】クリープ制御時のトルクシフト補償量計算処理の他の形態を示すサブルーチンある。
【図20】目標車速TGTGVSPの算出処理のサブルーチンである。
【図21】ブレーキの操作状態に応じた出力軸回転数と目標車速リミット値の関係を示すマップである。
【図22】目標車速TGTVSPに基づくフィードバック量の計算処理を示すサブルーチンである。
【図23】クリープ制御を行わない通常のDレンジ動力循環モード走行制御のサブルーチンである。
【図24】ステップモータ指令値算出処理のサブルーチンである。
【図25】CVT比と目標ステップ数の関係を示すマップである。
【図26】油温に応じた補償ステップ数CSTEPのマップである。
【図27】作用を示す説明図で、各運転状態と時間の関係を示す。
【図28】目標油圧値とデューティ比の関係を示すマップである。
【符号の説明】
1 ユニット入力軸
2 無段変速機構
3 一定変速機構
5 遊星歯車機構
36 ステップモータ
80 変速制御コントロールユニット
81 入力軸回転数センサ
82 CVT出力軸回転数センサ
83 車速センサ
84 アクセル操作量センサ
85 インヒビタスイッチ
86 ブレーキスイッチ
88 油温センサ
Claims (3)
- 変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構と一定変速機構とをユニット入力軸にそれぞれ連結するとともに、前記無段変速機構と一定変速機構の出力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、
運転状態に応じて総変速比または無段変速機構の変速比を制御する変速比制御手段とを備えた変速比無限大無段変速機の制御装置において、
アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、
運転操作に基づいて運転レンジを検出するレンジ検出手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
少なくとも前記運転レンジと車速とアクセル操作量を含む運転状態に基づいてクリープ制御の実行を判定するクリープ制御判定手段と、
少なくともアクセル操作量を含む運転状態から前記クリープ制御中の目標出力トルクを設定し、この目標出力トルクに基づいて目標車速を算出する目標車速算出手段と、
この目標車速を、実車速から予め設定した相対車速以内となるように補正する目標車速補正手段と、
車両の運転状態に基づいて目標とする総変速比を算出する目標IVT比算出手段と、
この目標総変速比に基づいて無段変速機構の目標変速比を算出する目標CVT比算出手段とを備え、
前記変速比制御手段は、前記クリープ制御の実行が判定されたときには、前記補正された目標車速を実現するように目標変速比を補正してクリープを発生させることを特徴とする変速比無限大無段変速機の制御装置。 - 前記目標CVT比算出手段は、少なくともアクセル操作量を含む運転状態から目標駆動力を算出し、この目標駆動力に応じたトルクシフトの補償量に基づいて無段変速機構の目標変速比を補正することを特徴とする請求項1に記載の変速比無限大無段変速機の制御装置。
- 前記目標車速補正手段は、ブレーキの操作状態を検出するブレーキ状態検出手段を備え、このブレーキの操作状態に応じて実車速から予め設定した相対車速以内となるように目標車速を補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変速比無限大無段変速機の制御装置。
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