JP3711799B2 - インクカートリッジにおけるフォーム挿入方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録装置に使用されるインクカートリッジにおいてフォームを挿入する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置は、図1に示すように、インクカートリッジ30に収容したインクを、ケース31底部のインク供給孔34からインク流路36を経てインクジェットヘッド50に供給し、該ヘッド50によりインク液滴を噴射する。
【0003】
インクカートリッジ30は、ケース31と、該ケース31に収容した多孔質材すなわちフォーム32と、該ケース31の上部開口部を覆う蓋33とからなる。フォーム32にインクを含浸させることにより、ケース31底部のインク供給孔34からインクジェットヘッド50へ供給するインク圧を負圧に保持している。インクジェットヘッド50によって噴射したインクの消費分は、蓋33の大気連通孔35から大気を吸入することによって補償する。
【0004】
フォーム32を圧縮してケース31に収容することにより、インクジェットヘッド50へ供給するインク圧を制御することができる。
【0005】
従来、フォーム32をケース31に挿入する方法として、例えば特開平5−463号公報、特開平7−32226号公報に記載された方法がある。前者は、フォームを直角な2方向から圧縮しておいて、該2方向と直角な方向にフォームを押し出してケースに挿入する。後者は、フォームを直角な2方向から圧縮しておいて、一旦筒状の挿入治具に挿入し、その後、挿入治具をケースに挿入し、フォームを押さえておいて挿入治具を抜くことでケースにフォームを装填する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の挿入方法では、フォームをケース内に置くだけであり、フォームがインクジェットヘッドに対して有効に機能するように挿入することを考慮していない。 すなわち、インクジェット記録装置では、フォームがケースのインク供給孔と密着していないと、インクジェットヘッドの動作によってインクカートリッジから吸引するインクは、流動抵抗が大きいフォーム内から吸引することなく、フォームとケース内面との隙間から吸引するようになる。この隙間がケースの側壁に沿って延びるエッジを介して大気連通孔に接続してしまうと、フォーム内に含浸したインクを使用することなく、インクジェットヘッドには空気が供給されるようになる。つまり、インクを大量に残存したまま早期に不噴射状態に陥ることになる。
【0007】
特に、特開平7−32226号公報に記載された方法では、フォームを押さえておいて挿入治具をケースから抜くとき、挿入治具とフォーム間の摩擦により、フォームがケースの底から離される方向に引かれる。また、図8に示すように、フォーム32の特に角の部分32bが挿入治具71との摩擦により、円弧状に引かれ、これが復元してもほぼそのままケース31の側壁内面に当たり、隙間を形成してしまう可能性がある。このようにケースの底や角に隙間ができやすいから、上記状態になりやすい。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、フォームがケースの角に隙間をつくることなく装填されるようにしてフォームに含浸したインクの使用効率を向上することができる、フォーム挿入方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明のフォーム挿入方法は、ケース内面に沿って挿入可能でかつ該ケース内に向かって開口した案内部材に、フォームを挿入する工程と、前記案内部材を、その先端が前記ケース内の、一側の開口と対向する壁面と間隔をおいて位置するように挿入する工程と、前記案内部材内の前記フォームを、前記ケース内の前記壁面に向け移動するとともに該壁面に向け圧縮する工程と、前記ケースの一側開口を蓋部材で覆って、前記フォームを前記ケース内に保持する工程からなる。
【0010】
つまり、案内部材の先端をケースの壁面と間隔をあけ、フォームをケース内の前記壁面に向け圧縮することで、フォームの角をケース内面の角にほぼ隙間なく当て、案内部材をケースから抜いてもその状態を維持し、フォーム内に含浸したインクを効率よくインクジェットヘッドに供給することを可能にする。
【0011】
上記案内部材にフォームを挿入する工程と案内部材をケースに挿入する工程とは、どちらを先に行っても、また同時に行ってもよい。
【0012】
上記方法において好ましくは、フォームを圧縮する際、案内部材の先端と前記壁面との間で、フォームをケースの側壁内面に向けて膨張させることで、フォームの角をケース内面の角に一層効果的に当てることを可能にする。さらに、案内部材にフォームを挿入する際に、フォームをケースの一側開口と平行な面方向に圧縮しておくことで、上記膨張を確実に実現する。
【0013】
さらに、押圧部材でフォームを圧縮した後、その押圧を解除し、圧縮されたフォームをケース内で膨張させることで、フォームを大きな力で前記壁面に向け確実に圧縮し、その後、インクに対して所定の負圧を作用させる状態にもどすようにする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
【0015】
本実施の形態のインクジェット記録装置に使用するインクカートリッジは、従来の技術の項で図1にしたがって説明したものと同様であるが、さらに詳細に説明すると、インクカートリッジのケース31は、一側たとえば上面に開口37を有し、他の5面を壁によって囲んだ中空の箱状に、合成樹脂材料たとえばポリプロピレンにより成形される。インク供給孔33は、ケース31内の空間を挟んで開口37から遠い端、例えば開口37と対向する底壁31bまたは該底壁に隣接する側壁31sの下部に形成することが望ましい。蓋33は、開口37を覆って、ケース31の開口周縁に熱溶着等により固定される。蓋33には、ケース31内の空間を大気に連通する大気連通孔35が形成される。
【0016】
インク供給孔34は、従来の技術で説明したように、インク流路36を介してインクジェットヘッド50に接続しているが、インク供給孔34とヘッド50との間に、フォームに含浸することなくインクのみを収容するインク室を設けることもできる。また、インクカートリッジ30をヘッド50に着脱可能にした構造、また両者を一体にした構造のいずれの構造も採ることができる。
【0017】
フォーム32は、毛細管現象を生じる弾性のある多孔質材、たとえばポリウレタンフォ−ムを用いる。このポリウレタンフォームは、発泡後の各セルの膜を爆発法等によって除去したいわゆる三次元網状化フォ−ム(オ−プンセルフォ−ム)構造である。ケース31の開口37と平行な面方向の断面におけるフォーム32の寸法は、ケース31の同方向の内寸法よりも十分大きく設定されており、フォーム32をケース31内に装填したとき、所定量圧縮してインクジェットヘッドに供給するインクに所定の負圧を付与する毛細管現象を発生させる。また上記と直交する方向のフォーム32の長さは、蓋33と底壁31bとの間の寸法よりもわずか大きく設定され、蓋33をケース31に熱溶着する際にフォームの弾性が障害にならない程度で、かつフォームを装填後ケース内で移動しない程度に、わずかフォームを圧縮するようにしている。
【0018】
フォーム32をケース31に挿入する装置は、図2に示ように、フォーム32をケース31に案内する案内部材71、該案内部材に沿ってフォーム32を押圧する押圧部材81からなる。
【0019】
案内部材71は、ケース31の開口37の内面にほぼ沿う断面形状を有しかつケース31の内外両方向に開口した筒状をなす。案内部材71は、一端が開口37の内面に挿入可能とされ、他端にテーパ状部72が連設されている。テーパ部72は、開口37とは反対方向に拡大する形状をなす。案内部材71およびテーパ状部72の内面には、フォーム32との摩擦を少なくするために、フッ素樹脂等の低摩擦材がコーティングされている。
【0020】
押圧部材81は、案内部材71内面に沿って摺動可能に挿入されている。
【0021】
ケース31、案内部材71および押圧部材81は、図示しないが公知のエアシリンダ、電磁石、カム等により相対移動され、以下のフォーム挿入が実行される。
【0022】
まず、図2に示すように、案内部材71をケース31内にその一側開口37からケース31内の底壁31bと所定の間隔Lをあけた位置まで挿入し、テーパ状部72にフォーム32を挿入する(その位置を破線で示す)。そして、押圧部材81でフォーム32をケース31に向け押し、ケース31内に挿入する。フォーム32は、テーパ状部72から案内部材71に移動するとき、テーパ状部の内面に案内されてケースの開口37と平行な面方向に圧縮される。
【0023】
フォーム32がケース31内に入った後も、押圧部材81でフォーム32をさらに押すことで、フォーム32を底壁31bに押しつけて圧縮する。この場合、フォーム32の先端が案内部材71から出るとき、図5に示すように、フォーム32と案内部材71との摩擦抵抗によりフォーム32先端の角32bが遅れて進む(いわゆる捲れが生じる)が、フォーム32の角32bが案内部材71から外れたとき、弾性により直線状態に戻るように膨張する。案内部材71と底壁31bとの間隔Lは、フォーム32先端の角が直線状態に戻る復元力、案内部材71の壁の厚さ、フォーム32の開口37と平行な面方向の圧縮率などにもとづいて、フォーム32先端の角が直線状態にほぼ戻るように設定することが望ましい。完全には戻らなくても、その後、押圧部材81でフォーム32をさらに圧縮することで、フォーム32の角をケース31内面の角に確実に当てることができる。
【0024】
その後、図6に示すように、押圧部材81でフォーム32を圧縮した状態を維持し、あるいはさらに圧縮する一方、案内部材71を少し引き抜く。このとき、フォーム32の角はケース31内面の角に当ってしかも押圧部材81による圧縮力を受けているから、案内部材71を引き抜いてもフォーム32の角が捲れることはない。図3に示すように、案内部材71の先端がケース31のほぼ中間に達したのち、案内部材71と押圧部材81を一緒にケース31から引き抜く。案内部材71の内面には低摩擦材がコーティングされ、案内部材71とフォーム32の間の摩擦よりもケース31とフォーム32の間の摩擦の方が大きいから、図4に示すように、フォーム32はケース32内に残される。上記の摩擦力の差にもとづいて、案内部材71と押圧部材81を一緒に抜く時点を決める。
【0025】
フォーム32は圧縮されていたから、押圧部材81による押圧を解除すると、フォーム32は、圧縮された方向と反対方向に膨張する。このとき、フォーム32の開口37側の角は、ケース31との摩擦で膨張が遅れる、いわゆる捲れが生じ、ケース31上部の内側角に隙間を形成する可能性があっても、これは、インク供給孔34から最も遠い端にあるので、後述するインクの供給性能には影響がない。また、ケース側壁31sの内面には、樹脂成形の際の金型の抜き勾配のため開口37に向け拡大するテーパが形成されているが、このテーパの角度を適宜設定することにより、上記の捲れを少なくしてフォーム32を膨張させることができる。
【0026】
そして、図1に示すように、蓋33を、フォーム32をわずか圧縮させながらケース31の開口37に被せ付け、熱溶着等により固定する。その後、蓋33の大気連通孔35に真空吸引装置を接続して、ケース31内を負圧状態にしてインク供給孔34からインクを注入することにより、フォーム32内にインクを含浸させる。これで、インクカートリッジは完成する。
【0027】
フォーム32をカートリッジに装填した状態では、開口37と平行な面方向には、案内部材71からケース31内に移動した後でも十分な圧縮状態にあるから、フォーム32はケースの側壁31sの内面に隙間なく密着している。また、フォーム32は底壁31bに押しつけて挿入されているから、底壁31bおよびインク供給孔34にも隙間なく密着している。したがって、インクジェットヘッド50の動作によって、インク供給孔34から吸引されるインクは、フォーム32の毛細管現象によって制御された圧力のもとに供給される。
【0028】
仮に、フォーム32がケース31のインク供給孔34と密着していなかったり、さらにフォーム32の角がケース31内面の角に密着していなかったりすると、インクジェットヘッドの動作によってインクカートリッジから吸引するインクは、流動抵抗が大きいフォーム32内から吸引することなく、フォーム32とケース内面との隙間から吸引するようになり、さらにこの隙間がース内面に沿って延びるエッジ部分を介して大気連通孔35に接続してしまうと、フォーム内に含浸したインクを使用することなく、空気がインクジェットヘッドに供給されるようになる。つまり、インクを大量に残存したまま早期に不噴射状態に陥ることになる。本実施の形態では、このような問題を解消し、インクの使用効率を著しく向上することができる。
【0029】
図7は、本発明のフォーム挿入方法の他の実施の形態を示す。この実施の形態では、前述のテーパ状部を使用することなく、フォーム32を直角な2方向から圧縮する。この圧縮方法は、前掲特開平5−463号公報、特開平7−32226号公報に記載されているように、公知の圧縮治具を直角な2方向(図7の上下方向と紙面に直角な方向)からフォーム32に押し当てて圧縮し、その後案内部材71にその一方の開口から挿入する。その後、案内部材71をケース31内に挿入し、押圧部材81によりフォーム32を底壁31bに向け圧縮する。この状態は、図2の右半分と同等の状態であり、もちろん案内部材71の先端と底壁31bとの間には隙間Lをあけている。その後は、前述の実施の形態と同様の方法をとる。
【0030】
この実施の形態によれば、フォーム32を案内部材71に挿入した側の開口から再びケース内へ押し出すので、図5において、フォーム32の角32bはほぼ直線状態になっているか、図5とは逆方向に湾曲した角32bをなしている。このため、押圧部材81でフォーム32を押し案内部材71からフォーム32の角が外れたとき、フォーム32の角32bは直ちに直線状態になって、あるいは逆方向に湾曲した角を押し戻して直線状態で底壁31bに当接させることができる。したがって、前述の実施の形態よりもケース内面の角に隙間ができにくい。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、フォームがケースの角に隙間をつくることなく装填され、フォームに含浸したインクの使用効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフォーム挿入方法を使用するインクカートリッジの一形態の断面図。
【図2】本発明の一実施の形態のフォーム挿入方法を説明する断面図。
【図3】図2のフォーム挿入方法の動作状態を説明する断面図。
【図4】図2のフォーム挿入方法の動作状態を説明する断面図。
【図5】図2のフォーム挿入方法の動作状態を一部を拡大して説明する断面図。
【図6】図2のフォーム挿入方法の動作状態を一部を拡大して説明する断面図。
【図7】本発明の他の実施の形態のフォーム挿入方法を説明する断面図。
【図8】従来のフォーム挿入方法を説明する、図5相当の断面図。
【符号の説明】
30 インクカートリッジ
31 ケース
32 フォーム
33 蓋
34 インク供給孔
35 大気連通孔
37 開口
71 案内部材
81 押圧部材
Claims (4)
- 一側を開口し、他側にインクジェットヘッドに供給するインク供給孔を有するケースと、該ケースに収容されインクを含浸したフォームと、前記ケースの一側開口を覆う蓋部材からなるインクカートリッジにおいて、以下の工程を含む前記ケースに前記フォームを挿入する方法。
前記ケース内面に沿って挿入可能でかつ該ケース内に向かって開口した案内部材に、前記フォームを挿入する工程と、
前記案内部材を、その先端が前記ケース内の、前記一側の開口と対向する壁面と間隔をおいて位置するように挿入する工程と、
前記案内部材内の前記フォームを、前記ケース内の前記壁面に向け移動するとともに該壁面に向け圧縮する工程と、
前記ケースの一側開口を前記蓋部材で覆って、前記フォームを前記ケース内に保持する工程。 - 請求項1の方法において、前記圧縮する工程は、前記案内部材の先端と前記壁面との間で、前記フォームを前記ケースの側壁内面に向けて膨張させる工程を含む前記ケースに前記フォームを挿入する方法。
- 請求項2の方法において、前記案内部材にフォームを挿入する工程は、前記フォームを前記ケースの一側開口と平行な面方向に圧縮する工程を含む前記ケースに前記フォームを挿入する方法。
- 請求項1〜3のいずれかの方法において、前記圧縮する工程を、前記ケース内に挿入した押圧部材によって行い、さらに以下の工程を含む前記ケースに前記フォームを挿入する方法。
前記押圧部材による前記フォームの押圧を解除し、前記圧縮されたフォームを前記ケース内で前記圧縮方向と反対方向に膨張させる工程。
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