JP3710868B2 - フラットケーブル用積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
電子部品、液晶表示装置、携帯電話、家電製品、コンピュータなどの電子機器に用いるケーブルにおいて、難燃性、耐熱性に優れたフラットケーブル用積層体に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電子機器に用いるケーブルは、通常の金属銅の単線または複数線を架橋ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどを主とする絶縁材料で被覆したものが用いられてきた。しかしながら、近年電子機器の小型化、高機能化に伴い、電子部品を搭載する基板内のスペースが小さくなり、また、蛇行し難い一定の方向性をもつケーブルの需要が増加してきた。そのために金属ケーブルを絶縁性に優れ、難燃性をもつプラスチック積層体で被覆し、省スペースで耐屈曲性と一定の方向性をもつフラットケーブルが開発された。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のフラットケーブルに用いられる接着性樹脂層は、耐熱温度が低く、高温度の環境下におかれた場合や、高温〜低温の繰り返しをうけた場合に、耐熱性基材又は金属ケーブル(断面偏平な金属線、以下、本明細書では単に金属ケーブルと記載する。)と接着性樹脂層、接着性樹脂層同士又は接着性樹脂層の内部で、剥離又は破壊現象(以下、本明細書ではデラミネーションと記載する。)や、接着性樹脂層に残存する揮発性成分による発泡などの問題解決を課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明は、耐熱性基材の一方の面に、少なくとも2液硬化型接着促進層と、中間層と、接着性樹脂層とを此の順に積層してなる2組の積層体を、該接着性樹脂層が金属ケーブルを挟み込むように対峙してヒートシールしたフラットケーブルにおいて、該中間層は融点が70〜300℃の熱可塑性樹脂100重量部に対して難燃性付与剤を1〜200重量部を含ませてメルトフローインデックス(本明細書においては、190℃、荷重2.16kgfにおける10minのg数を単にMFR・・gと記載する。)を0.3〜40g/10minに調整した組成物より形成されて成り、該接着性樹脂層は融点が80〜200℃、メルトフローインデックスが0.3〜40g/10minで、金属及び上記中間層とヒートシールできるとともに接着性樹脂層同士がヒートシール性をもつ熱可塑性ポリエステル樹脂より形成されて成る、フラットケーブル用積層体である。
また、上記の接着性樹脂層を構成する熱可塑性ポリエステル樹脂が、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸エステルに基づくカルボニル基を主鎖又は側鎖に1〜700ミリイクイバレント/100g(以下本明細書においては、meq/100gと記載する。)樹脂の濃度で含むフラットケーブル用積層体である。
また、前記中間層及び接着性樹脂層を単層又は多層の溶融押出しコーティングにより設けられたフラットケーブル用積層体である。
【0005】
フラットケーブル用プラスチック積層体は、2軸延伸ポリエステルフィルムなどの耐熱性基材に、接着性樹脂層として、ポリ塩化ビニルのシートをドライラミネーションで積層したものや、必要に応じてプライマー層を設けてポリエステル系樹脂と難燃化剤とからなる組成物(接着性樹脂層)を適当な溶剤に溶解したワニスを塗布したものがフラットケーブル用成形シートとして用いられてきた。そして両者は、金属ケーブルを接着性樹脂層を対峙した間に挟みこんで、ヒートシールして金属ケーブルを被覆するものである。
【0006】
しかしながら、ポリ塩化ビニルを積層したものは、接着性樹脂層であるポリ塩化ビニルと金属ケーブルとは接着していないため、高温の環境を経ると、ポリ塩化ビニルと金属ケーブルとの間で空隔を発生したり、空隔の圧力で接着性樹脂層がデラミネーションを起こすという問題があった。また、ヒートシール性をもつポリ塩化ビニルは一般に耐熱性に劣り、60℃以上の温度では、溶融してフラットケーブルの屈曲部でデラミネーションを起こすという問題もあった。
【0007】
ポリエステル系樹脂と難燃化剤とからなる組成物を適当な溶剤に溶解したワニスを塗布形成したフラットケーブル用積層体と金属ケーブルとの接着強度は、ポリ塩化ビニルと比較して強いが、溶剤可溶性のポリエステルは耐熱性が劣り、60℃以上の温度では、溶融してフラットケーブルの屈曲部でデラミネーションを起こすという問題があった。
更に、金属ケーブルを挿入してヒートシールするフラットケーブル用積層シートの接着性樹脂層は、厚さが0.05〜0.2mmの金属ケーブルの1/10以上の厚さで設ける必要がある。接着性樹脂層の厚さが金属ケーブルの1/10未満では、後述するように金属ケーブルを被覆して嵌合する際に端部で接着性樹脂層が破れることがある。したがって、接着性樹脂層の組成物を溶解したワニスより形成する場合、ワニスの塗布量が多くなり、溶剤を完全に気化して除去することが難しく、残留した溶剤は、金属ケーブルと接着性樹脂層との接着を阻害するばかりでなく、時間が経過するとともに可塑剤的に作用して軟化したり、高温環境下では気化して気泡を発生し、耐熱性基材から剥離するなどのデラミネーションを起こすという問題があった。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のフラットケーブル用積層体5は、図1に示すように、少なくとも耐熱性基材1と接着性樹脂層4とからなる2組の積層体5を、接着性樹脂層4が金属ケーブルを挟み込むように対峙してヒートシールしたフラットケーブル10において、耐熱性基材1の少なくとも一方の面に2液硬化型接着促進層2と、融点が70〜300℃の熱可塑性樹脂100重量部に対して難燃性付与剤を1〜200重量部を含ませてMFRが、0.3〜40g/10minに調整した組成物より形成される中間層3と、接着性樹脂層4とを少なくとも順に積層したものである。そして、該接着性樹脂層4が融点が80°〜200℃、MFRが0.3〜40g/10minで、金属7及び上記中間層3とヒートシールできるとともに接着性樹脂層4同士がヒートシール性をもつフラットケーブル用積層体である。
また、上記の接着性樹脂層4を構成する熱可塑性樹脂が、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸エステルに基づくカルボニル基を主鎖又は側鎖に1〜700meq/100g樹脂の濃度で含むフラットケーブル用積層体5である。
そして、接着性樹脂層4を構成する熱可塑性樹脂が、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー、ポリアミド、ポリエステル又はアクリル樹脂からなるフラットケーブル用積層体5である。
また、前記中間層3及び接着性樹脂層4を溶融押出しコーティングで単層又は共押出しコーティングにより設けられたフラットケーブル用積層体5である。
【0009】
本発明の耐熱性基材は、所望の添加物を加えた組成物の融点が接着性樹脂層の融点より30℃以上高いもので、製膜ができるものであるならば特に材料を問わない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラメチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、全芳香族ポリアミドなどのポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのポリイミド、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどのフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエステルエーテル又はポリカーボネートなどの未延伸又は延伸シートが適用できる。特に好ましいものは、製膜の容易さ、耐熱性、剛性の点から2軸延伸ポリエチレンテレフタレートである。
【0010】
耐熱性基材の厚さは、金属ケーブルを挿入してヒートシールを行うときに耐える作業性、施工する場所に必要な剛性、価格などの見地を総合して決定されるものではあるが、通常は6〜100μmのものが使用される。
耐熱性基材と接着促進層及び中間層との接着を強固にするため、その一方の側に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理などの物理的及び/又は化学的の接着強化処理を行うことが好ましい。
また、耐熱性基材の中間層とは反対の側には、金属ケーブルを挿入ヒートシールするときに加熱部と粘着をしたり、静電気の発生やそれに伴う異物が付着したりするのを防ぐために通常の滑剤、潤滑剤及び/又は帯電防止剤などを設けることもできる。
【0011】
接着促進層は、ポリエチレンイミン、有機チタン化合物、ポリオレフィン、ポリブタジエン、イソシアネート、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタンなどのなかから耐熱性基材、中間層との接着適合性や作業性を勘案して選定できる。
特に、接着部の耐熱性、積層した後30〜40℃の室温に近い温度で反応が進行する主剤がポリオール、硬化剤がイソシアネートよりなる2液反応型よりなる接着促進層を構成することがフラットケーブルの耐熱安定性を与える点より好ましい。
【0012】
接着促進層の主剤には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4ーブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのジオール成分と、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの2塩基成分とから合成されるポリエステルポリオール及びそれらの変性物や、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレネーテルグリコールなどのポリエーテルポリオール及び変性物や、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4ーブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンなどの低分子ポリオールなどが挙げられる。
接着促進層の硬化剤は、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)、メタンートリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェートなどのイソシアネートモノマーや、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンに付加したウレタンプレポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネートビューレット、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートトリマーなどのイソシアネート変性体が挙げられる。
【0013】
接着促進剤の接着強度、耐熱接着性、反応速度を強化促進するための助剤としてチタンカップリング剤、シランカップリング剤又は無機フィラーなどを添加することもできる。
【0014】
接着促進層は、耐熱性基材に中間層を形成するのと同一工程あるいは別工程のいずれでも塗布形成することができる。その塗布は、均一にムラなく行うためにゴムあるいはスチールロールによるコート、場合によってはグラビアコートで行う。グラビア版による塗布は、塗布量の規制は正確に行えるが、接着促進剤の種類によっては、硬化した不溶解物がグラビアセルに堆積し、塗布ムラの原因となるから注意を要する。
塗布液は、脂肪族、芳香族炭化水素、アルコール、エステル、ケトンなどの有機溶剤の溶液の他、水分散体を使用して、塗布乾燥する。その塗布量は0.05〜2g/m2 (固形分)である。
【0015】
中間層は、耐熱性基材に接着促進層を介して溶融押出しコーティングにより構成するもので、熱可塑性樹脂と難燃性付与剤とを主成分として配合し、溶融押し出しコーティング適性と難燃性をもつ材料で構成される。そして、フラットケーブルを作成するとき、金属ケーブルとフラットケーブル用積層体を圧着するときのクッション効果を奏するともに、図1に示す金属ケーブル7により耐熱性基材1が破断したり破壊したりすることを防止する圧力を吸収する効果を奏するものである。また、接着性樹脂層は比較的高価なため、中間層との組合せによっては材料費を逓減するために有効である。
また、図示はしないが、中間層の溶融押出しコーティング適性が悪いときは、上記中間層との接着性がよく、溶融押出しコーティング適性がよい材料例えば押出しコーティンググレードの低密度ポリエチレンとを共押出しコーティングして、中間層を形成することもできる。
【0016】
中間層に用いる熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、塩素化樹脂、フッ素化樹脂、ポリアミド、ポリイミドなどの表1、表2及び/又は表3に示す熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの1種あるいは2種以上の組合せにより形成される。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
中間層を形成する難燃性付与剤は、フラットケーブル用積層体に難燃効果を与えるとともに、中間層としての熱可塑性樹脂の溶融押出しコーティング適性を配慮して選定する。
例えば、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリフェニル、パークロルペンタシクロデカン、無水ヘット酸、クロルエンド酸などの塩素系化合物及び、テトラブロモエタン、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモ無水フタール酸、ポリジブロモフェニレンオキサイド、ヘキサブロモシクロデカン、臭化アンモニウムなどのハロゲン元素を含む、有機又は無機化合物がある。
トリアリルホスフェート、アルキルアリルホスフェート、アルキルホスフェート、ジメチルホスフオネート、ホスフオリネート、ハロゲン化ホスフオリネートエステル、トリメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2ークロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3ージクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3ージブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3ジブロモプロピル)2,3ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、ポリホスホネート、ポリホスフェート、芳香族ポリホスフェート、ジブロモネオペンチルグリコールなどのリン酸エステル及びリン化合物や、ホスホネート型ポリオール、ホスフェート型ポリオール、ハロゲン元素を含むポリオールなどがある。
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、三酸化アンチモン、三塩化アンチモン、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンチモン、ホウ酸、モリブデン酸アンチモン、酸化モリブデン、リン・窒素化合物、カルシウム・アルミニウムシリケート,ジルコニウム化合物、錫化合物、ドーソナイト、アルミン酸カルシウム水和物、酸化銅、金属銅粉、炭酸カルシウム、メタホウ酸バリウムなどの金属粉や無機化合物がある。
その他、シリコーン系ポリマー、フェロセン、フマール酸、マレイン酸やトリアジン、イソシヌレート、尿素、グアニジンなどの窒素を含む有機化合物などがある。
本発明における難燃性付与剤は、リン酸エステルと無機化合物とを併用する方法が好ましい。
【0021】
熱可塑性樹脂に対する難燃性付与剤は、公知のドライブレンド法、メルトブレンド法などで熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜200重量部を配合されることが好ましい。そして、難燃性付与剤は、上記のものから1種又は複数種のものを組合わせて使用し、中間層となる組成物のMFRが溶融押出しコーティングに適した0.3〜40gになるように調整する。
難燃性付与剤の配合が熱可塑性樹脂100重量部に対して1重量部未満であると難燃性を付与する効果がなく、また200重量部を超えると溶融押し出しコーティングを行うとき製膜性がなく、均一な中間層を形成することができないばかりでなく、仮に製膜ができたとしても膜の剛性が強すぎたり、逆に弱すぎたりして、金属ケーブルの屈曲に追随しなくなる。また、過剰の難燃性付与剤を含む接着性樹脂層は耐熱性基材との接着を阻害するようになり、フラットケーブルが高温下でデラミネーションするという問題を起こすことがある。
【0022】
中間層の厚さは、接着性樹脂層及び金属ケーブルの厚さによって選択されるが、金属ケーブルの屈曲に追随でき、また、接着性樹脂層と共押出しコーティングできるように10〜100μmで形成される。
【0023】
接着性樹脂層に用いる材料は、銅、ステンレス、金、銀、ニッケル、錫、真鍮及びアルミニウムなどの金属ケーブル及び中間層とヒートシール性(加熱接着性)をもつばかりでなく、接着性樹脂層同士がヒートシール性をもつ熱可塑性樹脂から選定できる。
【0024】
接着性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂は、金属とのヒートシール性があるカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸エステルなどに基づくカルボニル基「ー(C=O)ー」を主鎖又は側鎖に1〜700meq/100gを含むものである。
カルボニル基が1meq/100g未満では、金属との接着が弱く、高温下で屈曲したときデラミネーションを発生することがある。また、700meq/100gを超える場合は、製膜時のネックイン(Tダイスから溶融押出しされる樹脂の流れが不安定で波を打つような現象をいう)が大きく、均一な製膜が困難となる。
したがって、接着性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂は、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタアクリル酸エチル共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物とアセトキシ基、水酸基あるいはカルボニル基をもつ化合物とを共重合した樹脂組成物、イオン架橋オレフィン共重合体(以下アイオノマーと記載する)、共重合ポリエステル、共重合ポリアミドなどの1種又は2種以上を組合わせたものである。
【0025】
接着性樹脂層は、融点が80〜200℃、MFRが0.3〜40gであることが好ましい。融点が80℃未満である場合は、比較的低温で金属ケーブルとヒートシールできるが、積層体として巻取られて保管された時に、巻取り状でブロッキングしやすくなり、フラットケーブルとして加工する工程に供給不能となったり、また、加工したフラットケーブルは高温下で可塑化し、中間層又は金属ケーブルとの間で剥離したり、接着性樹脂層の内部で破壊したりするデラミネーションを起こしたりすることがある。
接着性樹脂層の融点が200℃を超えるときは、フラットケーブルを加工するときのヒートシール温度が高くなり耐熱性基材の耐熱温度をより高く設定する必要があるばかりでなく、作業能率の低下をもたらし、また金属ケーブルとのヒートシールムラを生じ製品の品質上の問題を起こすことになる。
【0026】
接着性樹脂層のMFRが0.3g以下では、フラットケーブル用積層体を作成する溶融押出しコーティングにおいて、溶融状態の樹脂圧力が高くなり、押出しコーティングができなかったり、厚さのムラを発生したりするという加工上の問題を生ずる。また、フラットケーブルを作成するときにヒートシールされる樹脂の流れが悪く、金属ケーブルを挿入し、密着して被覆するためには、高温度、高圧力を必要とし、生産性の低下、加工機械が大型化し設備コスト、製品コストが上昇する原因となる。
【0027】
接着性樹脂層のMFRが40gを超える場合は、金属ケーブルを挿入するフラットケーブルと密着しやすくヒートシールする加工性は良好ではあるが、フラットケーブル用積層体を作成する溶融押出しコーティングにおいて、ネックインが大きく溶融状態の樹脂が均一な膜状にならず、加工温度の僅かの変化においても膜の状態が変動し、押出しコーティングしたものに、厚さのムラや筋状の凸部を発生したりするという問題を生ずる。
【0028】
接着性樹脂層の溶融押出しコーティング適性や、フラットケーブル作成工程の作業性、積層体の耐ブロッキング性を改善するために、必要に応じて、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドやアクリル樹脂などを混合したり、シリカ、タルクなどの無機化合物系添加剤、球状、板状の有機化合物、界面活性剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤などの助剤を添加したりすることができる。
【0029】
接着性樹脂層の厚さは、金属ケーブルの厚さ、用途、使用環境により適宜に選定できるが、金属ケーブルとのヒートシール強度を保ち、屈曲に追随できるように選択されるが、通常は、金属ケーブルの厚さの0.1〜2倍である。また、中間層中に金属ケーブルを埋没できるときは更に薄くすることができ2〜100μmで形成される。
そして、接着性樹脂層は、中間層に直接溶融押出しコーティングしたり、中間層又は耐熱性基材に中間層と多層の共押出しコーティングにより形成することができる。そして、共押出しコーティングで形成される接着性樹脂層は2μm程度の厚さに制御して形成することができる。
また、共押出しコーティングは、極めて薄膜の接着促進層の溶液を塗布乾燥し、更に高温に加熱溶融した熱可塑性樹脂をコーティングするものである。したがって、フラットケーブル用積層体は、殆ど揮発性の残留溶剤を含まず、また耐熱性基材と中間層との間に空気泡を残存しないで構成できる。
【0030】
本発明のフラットケーブル用積層体6は、図2、図3、図4及び図1に示すように、耐熱性基材1、接着促進層2、中間層3及び接着性樹脂層4とから構成される。2組のフラットケーブル用積層体5は、接着性樹脂層4を対峙して金属ケーブル7を挿入するように載置する。そして、耐熱性基材1の側から公知の方法で加熱、加圧して軟化した接着性樹脂層4と金属ケーブル7とを仮着部分8で仮止めし、金属ケーブル7を所定の箇所に位置決めする。更に対峙した接着性樹脂層4同士をヒートシールするために強く加熱、加圧をすることにより接着性樹脂層4を可塑化するとともに金属ケーブル7に食い込ませてその周囲を被覆するように接着部分9を形成して接着性樹脂層4をヒートシールしてヒートシール部6を形成する。そして冷却して、金属ケーブル7は2組のフラットケーブル用積層体5の間に固定されるものである。
このとき、熱可塑性樹脂と難燃性付与剤とから構成される中間層3は、加圧時のクッション作用を呈するばかりでなく、図1に示すように金属ケーブルを嵌合するように被覆して挿入した状態で固定したフラットケーブル10を形成するものである。
【0031】
本発明における金属ケーブルの固定は、接着性樹脂層4がもつカルボニル基との化学的接着及び中間層3をも含む接着性樹脂層4と金属ケーブル7との物理的な嵌合状態(挿入状態)で確立されるものである。この化学的接着及び物理的嵌合により、高温下におけるフラットケーブルの屈曲に追随し、デラミネーションを防止でき、耐熱性に優れ、金属ケーブルを精度よく配列できるフラットケーブル用積層体5を構成できるものである。
【0032】
【実施例】
図2に示すように、耐熱性基材1として厚さ50μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに、接着促進層2としてポリエステルポリオール:ジフェニルメタンジイソシアネートの比率が4:1(固形分比)に配合した酢酸エチル溶液を、ゴムロールコーティングにより0.5g/m2 (固形分)設けた。
次いで中間層3を表4に示す中間層用熱可塑性樹脂と表5に示す難燃性付与剤とを表7に示す組成物のように組合せた実施例の試料1〜12及び比較例1〜6の組成物と表6に示す接着性樹脂層用熱可塑性樹脂とを、上記接着促進層側に中間層3が20μm、接着性樹脂層4が10μmとなるように溶融共押出しコーティングにより設けて本発明の図2に示すフラットケーブル用積層体5を形成した。
次いで、図3〜4に示すように金属ケーブル7として、厚さ0.1mm×巾2mmの断面をもつ表面スズメッキ銅ケーブルを、2組のフラットケーブル用積層体5のそれぞれの接着性樹脂層4を対峙し、図3〜4に示すように金属ケーブル7である表面スズメッキ銅ケーブルを1mm間隔で挿入し、3m/minの走行速度で2本の200℃に加熱したゴムロールの間で圧着したのち、冷却した金属ロールとゴムロールとで更に強い圧力で圧着、冷却して金属ケーブルの周囲を完全に被覆した状態で接着部分9を形成した図1に示すフラットケーブル10を作成した。
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
【表6】
【0036】
【表7】
【0037】
実施例及び比較例についてその加工性及び作成したフラットケーブルの試料について次の評価を行った。
(評価項目及び方法)
▲1▼高温下保存テスト
(a) 接着強度:金属ケーブルを12本含む状態で、80℃で金属ケーブルの長手方向で剥離し、剥離角度180°、剥離速度300mm/minで、剥離に要したgを測定した。
(b) デラミネーションの評価:フラットケーブルを100mmφの状態になるように屈曲固定して、100℃で48時間保持後のデラミネーションの状態を目視で評価した。
▲2▼難燃性テスト:25mm巾×150mm長の試料の端部をガスバーナーの炎で着火し、炎を除去した後の燃焼状態を目視で評価した。
自己消火・・・直ちに消火
完全燃焼・・・燃焼を継続
▲3▼加工性:中間層と接着性樹脂層を共押出しコーティング加工するときの状況及び製膜された中間層を含む接着性樹脂層の均一性を目視で評価する。
評価結果を表8に示す。
【0038】
【表8】
【0039】
実施例の試料1〜12は、高温下においても、充分な接着強度を示し、気泡及びデラミネーションの発生を認められなかった。また、難燃性に優れ、加工性も支障のないものである。
比較例1は、接着性樹脂層の融点が80℃未満(70℃)であるため、高温下でデラミネーションを発生した。
比較例2は、接着性樹脂層のMFRが0.2gであるため、高温下で気泡及びデラミネーションを発生し、また加工性が悪く筋状の凸部を発生した。
比較例3及び比較例4は、フラットケーブルとの接着強度が小さく、高温下で気泡及びデラミネーションを発生した。
比較例5は、難燃性付与剤の量が充分でなく、可燃性をもつものであった。
比較例6は、難燃性付与剤の量が過剰であり、加工性が悪く筋状の凸部や膜を形成しない穴を発生した。
【0040】
【発明の効果】
本発明のフラットケーブル用積層体による金属ケーブルの固定は、金属と接着性樹脂層がもつカルボニル基との化学的接着ばかりでなく、中間層3をも含む接着性樹脂層4と金属ケーブル7との物理的な嵌合状態(挿入状態)とが相俟って確立されるものである。この化学的接着及び物理的嵌合により、高温下におけるフラットケーブルの屈曲に追随し、デラミネーションを防止でき、耐熱性に優れ、金属ケーブルを精度よく配列できるフラットケーブル用積層体を構成できるものである。
また、溶融押出しコーティングで形成する接着性樹脂層は、接着剤の残留溶剤や、耐熱性基材と中間との間に残存する空気に起因する気泡の発生、デラミネーションがないフラットケーブル用積層体を提供できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフラットケーブル用積層体で構成したフラットケーブルの断面の概念図である。
【図2】本発明のフラットケーブル用積層体の断面の概念図である。
【図3】金属ケーブルを載置する状態を示す断面の概念図である。
【図4】金属ケーブルを仮着した状態を示す断面の概念図である。
【符号の説明】
1 耐熱性基材
2 接着促進層
3 中間層
4 接着性樹脂層
5 フラットケーブル用積層体
6 ヒートシール部
7 金属ケーブル
8 金属ケーブルとの仮着部分
9 金属ケーブルとの接着部分
10 フラットケーブル
Claims (3)
- 耐熱性基材の一方の面に、少なくとも2液硬化型接着促進層と、中間層と、接着性樹脂層とを此の順に積層してなる2組の積層体を、該接着性樹脂層が金属ケーブルを挟み込むように対峙してヒートシールしたフラットケーブルにおいて、該中間層は融点が70〜300℃の熱可塑性樹脂100重量部に対して難燃性付与剤を1〜200重量部を含ませてメルトフローインデックスを0.3〜40g/10minに調整した組成物より形成されて成り、該接着性樹脂層は融点が80°〜200℃、メルトフローインデックスが0.3〜40g/10minで、金属及び上記中間層とヒートシールできるとともに接着性樹脂層同士がヒートシール性をもつ熱可塑性ポリエステル樹脂より形成されて成る、ことを特徴とするフラットケーブル用積層体。
- 上記接着性樹脂層を構成する熱可塑性ポリエステル樹脂が、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸エステルに基づくカルボニル基を主鎖又は側鎖に1〜700ミリイクイバレント/100g樹脂の濃度で含むことを特徴とする請求項1記載のフラットケーブル用積層体。
- 前記中間層及び接着性樹脂層を単層又は多層の溶融押出しコーティングにより設けられたことを特徴とする請求項1、又は2のいずれかに記載のフラットケーブル用積層体。
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