JP3710195B2 - 半導体レーザ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体レーザに関し、特に詳しくは埋め込み型半導体レーザを構成する半導体の層構成および組成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体レーザは、情報・画像処理、通信、計測および医療の分野における光源として用いられており、単一波長の高出力光ビームを得る試みが種々なされている。
【0003】
この種の半導体レーザにおいては、例えば情報・画像処理の高機能化等の要求に応えるため、出射ビーム品質を向上させることが望まれている。そこでその一方策として、単一横モード化が考えられている。
【0004】
現在、単一横モード化が図られた半導体レーザ(発振波長:0.9-1.1μm)として、例えばElectronics Letters Vol.30 No.14 pp1146-1147(1994)や、Electronics Letters Vol.30 No.17 pp1410-1411(1994)に示されているものが知られている。
【0005】
上記文献記載の半導体レーザは図5の断面概略図に示すように、発光領域Aがn-GaAs基板1上にn-InGaP クラッド層2、活性層3、p-InGaP クラッド層5、p-GaAsコンタクト層6がこの順に積層されてなり、埋め込み領域Bである電流阻止層部がn-GaA 基板1上にn-InGaP クラッド層2、活性層3、p-InGaP クラッド層5、n-AlGaInP 電流ブロック層7、p-GaAsコンタクト層6がこの順に積層されてなるものである。活性層3は詳しくは、InGaAsP 量子障壁層30、InGaAs量子井戸活性層31およびInGaAsP 量子障壁層な32からなる。なお導波方向は紙面に垂直な方向である。
【0006】
上記のような半導体レーザにおいて、単一横モード制御を行うためは、発光領域Aと埋め込み領域Bとの間にある程度の屈折率段差を必要とする。
【0007】
上記半導体レーザでは、埋め込み領域BにInGaP クラッド層よりも屈折率の小さいAlGaInP を電流ブロック層として埋め込むことにより横モード制御を行っており、この場合、発光領域Aと埋め込み領域Bとの間に必要とされる屈折率段差を得るためにはAl組成比率のかなり高いAlGaInP 電流ブロック層を用いる必要がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、AlGaInP 中のAl組成比率が高くなるにつれて結晶成長が悪くなり、高品質の結晶が得られ難くなる。そのために上記構造では信頼性の高い半導体レーザを高歩留まりで作製することが難しいという欠点がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、高性能な単一横モードの埋め込み型半導体レーザを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の埋め込み型半導体レーザは、第一導電型基板上に少なくとも第一導電型クラッド層、活性層、第二導電型第一クラッド層およびストライプ状の第二導電型第二クラッド層がこの順に積層され、前記第二導電型第二クラッド層の両側部であり第二導電型第一クラッド層上に第一導電型電流ブロック層を形成された埋め込み型半導体レーザにおいて、
前記第一導電型クラッド層、前記第二導電型第一クラッド層および前記第二導電型第二クラッド層の屈折率をそれぞれ、N1 、N2 およびN3 としたとき、これらの屈折率が、
N1 <N2 、N3 <N2 および N1≒N3
なる関係を有することを特徴とするものである。
【0011】
前記埋め込み型半導体レーザにおいて、前記第一導電型基板をGaAs、前記第一導電型クラッド層をInx1Ga1-x1P 、前記第二導電型第一クラッド層をInx2Ga1-x2AsyP1-y 、前記第二導電型第二クラッド層をInx3Ga1-x3P とし、前記各クラッド層を前記第一導電型基板に格子整合する組成比とし、前記第一導電型電流ブロック層を(AlzGa1-z)x4In1-x4P(0<z≦0.2)とすることができる。
【0012】
また、前記埋め込み型半導体レーザにおいて、前記第一導電型基板がGaAs、前記第一導電型クラッド層をInx1Ga1-x1P 、前記第二導電型第一クラッド層をInx2Ga1-x2AsyP1-y 、前記第二導電型第二クラッドをInx3Ga1-x3P とし、前記各クラッド層を前記第一導電型基板に格子整合する組成比とし、前記第一導電型電流ブロック層をInx5Ga1-x5P とし、前記第二導電型第一クラッド層と前記第二導電型第二クラッド層の間にストライプ状のGaAs光ガイド層を形成してもよい。
【0013】
III族の組成比を示す全てのx、およびV族の組成比を示すyは、0から1の任意の値を採りうるものである。
【0014】
すなわち、本発明の埋め込み型半導体レーザは、第二導電型クラッド層を第一クラッド層と第二クラッド層との二層構造とし、第二導電型第二クラッド層に、第二導電型第一クラッド層および第一導電型クラッド層よりも屈折率の大きな材料を採用することにより、発光領域と埋め込み領域との間の屈折率段差を実効的に大きくするものである。
【0015】
ここで、第一導電型および第二導電型という言葉は伝導機構の異なることを明らかにするために用いており、例えば第一導電型がn型に対応する場合は第二導電型はp型に対応するものである。
【0016】
【発明の効果】
本発明の埋め込み型半導体レーザでは、従来一層であった第二導電型クラッド層を第二導電型第一クラッド層と第二導電型第二クラッド層の二層構造とし、その第二導電型第一クラッド層に、第二導電型第二クラッド層および第一導電型クラッド層よりも屈折率の大きな材料を採用することにより、発光領域と埋め込み領域との間の屈折率段差を実効的に大きくとることができるので、高性能な単一横モード制御をすることができる。
【0017】
また、第二導電型第一クラッド層を第二導電型第二クラッド層エッチング時のエッチングストップ層として活用することができ、液層による選択エッチングにより制御性よく素子を作製することが可能である。
【0018】
本発明の半導体レーザをInGaAsP 系の半導体で形成した場合、(AlzGa1-z)1-xInxPからなる第一導電型電流ブロック層のAl組成比率を従来構造(zは約0.4)に比較してz≦0.2 程度まで減じることができる。Al成分の減少により、電流ブロック層の再結晶性がよくなり、高性能な単一横モード制御可能な埋め込み型半導体レーザを高歩留まりで生産することができるようになる。
【0019】
また、本発明の半導体レーザをInGaAsP 系の半導体で形成し、第二導電型第一クラッド層と第二導電型第二クラッド層との間に第二導電型GaAs光ガイド層を形成することにより、さらに実効的な屈折率段差を大きく採ることができ、第一導電型電流ブロック層としてInGaP を用いる事ができる。Al成分を含まないため、再結晶性よく、信頼性の高い埋め込み型半導体レーザを高歩留まりで生産することができるようになる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1に本発明の第一の実施の形態に係る単一横モード半導体レーザ素子構造図を示す。
【0022】
n-GaAs基板1上にn-In0.51Ga0.49P(以下n-InGaPで表す)クラッド層2、活性層3、p-InGaAsP第一 クラッド層(波長組成800nm )4およびp-In0.51Ga0.49P (以下p-InGaP で表す)第二クラッド層5を連続成長させる。その後p-InGaP 第二クラッド層5をエッチングしてメサ形状のリッジストライプ構造を形成する。そのリッジ状のp-InGaP 第二クラッド層5の両脇部でp-InGaAsP 第一クラッド層4上にn-(Al0.2Ga0.8)0.5In0.5P (以下n-AlGaInPで表す)電流ブロック層7を形成する。その後、さらに、p-GaAsコンタクト層6を積層し、電極8、9を形成する。ここで、活性層3は、InGaAsP量子障壁層(波長組成800nm )30、In0.2Ga0.8As量子井戸活性層31およびInGaAsP量子障壁層(波長組成800nm )32からなる。
【0023】
このようにして、半導体レーザの発光領域Aが、n-GaAs基板1上にn-InGaP クラッド層2、活性層3、p-InGaAsP 第一クラッド層4、p-InGaP 第二クラッド層5、p-GaAsコンタクト層7により構成され、その発光領域Aを挟む埋め込み領域Bが、n-GaAs基板1上にn-InGaP クラッド層2、活性層3、p-InGaAsP 第一クラッド層4、n-AlGaInP ブロック層7およびp-GaAsコンタクト層6により構成された構造となっている。
【0024】
本構造において、上記電流ブロック層7の組成を(AlzGa1-z)0.5In0.5P とした場合のAl組成比zと、発光領域Aと埋め込み領域B間の屈折率段差との関係を図2に示す。また比較のため本構造におけるp-InGaAsP 第一クラッド層をp-InGaP に置き換えた従来構造の場合のAl組成比zと屈折率段差との関係を併せて示す。それぞれ実線および波線で示されている。
【0025】
これによれば通常必要とされる屈折率段差0.006 を得るためには、従来構造ではAl組成比としてz≒0.4 と比較的高い材料を埋め込み用として用いなければならないのに対し、本発明の構成ではz=0.2 という低いAl組成比で同等の性能が得られることがわかる。このように、本発明の構成においては、Al組成比z≦0.2 と抑制することができ、AlGaInP 電流ブロック層の結晶成長が容易となり、更に品質も向上させることができる。
【0026】
図3に本発明の第二の実施の形態に係る単一横モード半導体レーザ素子構造図を示す。
【0027】
n-GaAs基板1上にn-In0.51Ga0.49P (以下n-InGaP で表す)クラッド層2、活性層3、p-InGaAsP 第一クラッド層(波長組成760nm)4、p-GaAs光ガイド層10、p-In0.51Ga0.49P (以下p-InGaP で表す)第二クラッド層5を連続成長させる。その後、p-InGaP クラッド層5およびp-GaAs光ガイド層10をエッチングしてメサ形状のリッジストライプ構造を形成する。そのリッジ状のp-InGaP 第二クラッド層5の両脇部でp-InGaAsP 第一クラッド層4上にn-InGaP ブロック層11を形成する。その後、さらに、p-GaAsコンタクト層6を積層し、電極8、9を形成する。
【0028】
このようにして、半導体レーザの発光領域Aが、n-GaAs基板1上にn-InGaP クラッド層2、活性層3、p-InGaAsP 第一クラッド層4、p-GaAs光ガイド層10、p-InGaP 第二クラッド層5およびp-GaAsコンタクト層6により構成され、その発光領域Aを挟む埋め込み領域Bが、n-GaAs基板1上にn-InGaP クラッド層2、活性層3、p-InGaAsP 第一クラッド層4、n-InGaP ブロック層11、p-GaAsコンタクト層6により構成された構造となっている。
【0029】
本構造ではp型クラッド層間に設けたGaAs光ガイド層が周りのクラッド層と比較して屈折率が大きいことを利用して屈折率段差をつけている。
【0030】
しかしこのGaAs光ガイド層はこの部分でキャリヤが捕獲されたり、また光を吸収してしまう等の効率を損なう機能も具備している。そこでこの層は可能な限り薄い方が特性上は望ましい。
【0031】
本構造におけるGaAs光ガイド層厚と屈折率段差との関係を計算した結果を図4の示す。また、比較のためにp型第一クラッド層としてInGaP を用いた場合の構造における計算結果も併せて示す(それぞれ実線および波線で示す)。
【0032】
これによれば本発明の構成であれば従来構造の約半分の厚さのGaAs光ガイド層で同等の屈折率段差が得られることが判る。例えば、屈折率段差0.006 を得るために、従来構造では約530nm の光ガイド層が必要であったのが、本発明の構成では約270nm の厚さにすることができる。つまり本発明により、GaAs光ガイド層部におけるキャリヤの捕獲並びに光の吸収を低減する事ができ、効率の向上に効果があることが判る。
【0033】
本発明は、上記実施の形態に記載した組成の半導体に限るものでなく、いかなる埋め込み型半導体レーザにおいても、発光領域と埋め込み領域との間の屈折率段差を実質的に大きくし、高性能な単一横モードレーザを得るために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態にかかる半導体レーザ素子構造断面図
【図2】本発明の第一の実施の形態にかかる半導体レーザのブロック層に含有されるAl組成と屈折率段差との関係を示す図
【図3】本発明の第二の実施に形態にかかる半導体レーザ素子構造断面図
【図4】本発明の第二の実施の形態にかかる半導体レーザの光ガイド層厚と屈折率段差との関係を示す図
【図5】従来の単一横モード半導体レーザ素子構造断面図
【符号の説明】
1 n-GaAs基板
2 n-InGaPクラッド層
3 活性層
4 p-InGaAsP 第一クラッド層
5 p-InGaP 第二クラッド層
6 n-GaAsコンタクト層
7 n-AlGaInP電流ブロック層
8 p電極
9 n電極
10 GaAs光ガイド層
11 n-InGaP電流ブロック層
12 p-InGaPクラッド層
Claims (1)
- 第一導電型基板上に少なくとも第一導電型クラッド層、活性層、第二導電型第一クラッド層およびストライプ状の第二導電型第二クラッド層がこの順に積層され、前記第二導電型第二クラッド層の両側部であり第二導電型第一クラッド層上に第一導電型電流ブロック層を形成された埋め込み型半導体レーザにおいて、
前記第一導電型クラッド層、前記第二導電型第一クラッド層および前記第二導電型第二クラッド層の屈折率をそれぞれ、N1、N2およびN3としたとき、これらの屈折率が、
N1<N2、N3<N2およびN1≒N3
なる関係を有し、
前記第一導電型基板がGaAs、前記第一導電型クラッド層がInx1Ga1-x1P、前記第二導電型第一クラッド層がInx2Ga1-x2AsyP1-y、前記第二導電型第二クラッド層がInx3Ga1-x3Pであり、前記各クラッド層を前記第一導電型基板に格子整合する組成比とし、前記第一導電型電流ブロック層がInx5Ga1-x5Pであり、前記第二導電型第一クラッド層と前記第二導電型第二クラッド層の間にストライプ状のGaAs光ガイド層が形成されていることを特徴とする埋め込み型半導体レーザ。
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