JP3710062B2 - 電圧非直線性抵抗体磁器組成物、電子部品および積層チップバリスタ - Google Patents
電圧非直線性抵抗体磁器組成物、電子部品および積層チップバリスタ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば積層チップバリスタの電圧非直線性抵抗体層などとして用いられる電圧非直線性抵抗体磁器組成物と、該電圧非直線性磁器組成物を電圧非直線性抵抗体層として用いる電子部品とに、関する。
【0002】
【従来の技術】
電圧非直線性抵抗体層を有する電子部品の一例としてのバリスタは、たとえば静電気などの外来サージ(異常電圧)やノイズなどを、吸収または除去するために使用されている。
【0003】
近年のディジタル信号の高速化および通信速度の高速化に伴い、信号に対する影響の少ない低静電容量のバリスタが望まれている。
【0004】
静電容量は、C=ε0εr(S/d)…式1、で表される。Cは静電容量、ε0は真空の誘電率、εrは比誘電率、Sは静電容量が発現する対向電極の面積、dは対向電極間の厚みを表している。酸化亜鉛系バリスタの場合、厚みdの取り扱いに注意を要する。酸化亜鉛系バリスタは、結晶粒界により特性が発現する。すなわち、粒界の抵抗と粒内の抵抗には、定常状態に於いて大きな差があり、粒界の抵抗は粒内のそれに比較してはるかに大きい。従って、ブレークダウン電圧(立ち上がり電圧)を超えない定常状態では、印加された電界はほぼ全てが粒界にかかっている。したがって、上述した厚みdは、この点を考慮しなければならない。
【0005】
また、厚みdは、d=n・2W…式2、で表される。nは対向電極と平行な粒界数、2Wは1粒界の空乏層幅を表している。
【0006】
また、バリスタ電圧V1mAと粒界数nとの間には、n=V1mA/φ…式3、の関係が成立する。φは粒界のバリア高さで、1粒界あたりのバリスタ電圧を代表する値である。
【0007】
ここで、式1に、式2と式3を代入して、変形すると、C・V1mA= ε0εr・(φ・S/2W)…式4、となる。φと2Wは、適正なバリスタ特性のとき、ある一定の値(例えば、φ=0.8eV 2W=30nmくらい)となるので、電極面積Sが一定の場合、式4は一定である。逆に言えば、適正なバリスタ特性を維持したまま静電容量を低下させるには、電極面積Sを小さくするのが効果的である。
【0008】
従来、Sを小さくする手法として、直接的に、バリスタの対向電極の面積を小さくする方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、対向電極の面積を単純に小さくすると、結果的にエネルギー耐量やサージ耐量の低下を招き、素子の信頼性を低下させる。バリスタは、外界からのサージなどの電気エネルギーを熱エネルギーに変えて吸収する。エネルギー耐量やサージ耐量の低下を最小限に抑え、しかも静電容量を小さくするには、セラミックの微細構造を制御することが良いと考えられる。
【0009】
すなわち、対向電極の面積を従来と同様にして、電極間におけるバリスタ静電容量を発現させるバリスタ結晶粒界の面積を小さくし、酸化亜鉛以外の第2相を導入し、その体積率を制御するのである。この際に、第2相の分布を均一にし、サージを吸収する際に結晶粒界で発生する熱を第2相に分散させ、結晶粒界の温度が上がりすぎないようにすることが好ましい。
【0010】
また、昨今の回路電圧の低電圧化に伴い、バリスタ電圧(V)をより低下させることが望まれている。バリスタの電気特性は、結晶粒界で発現するので、バリスタ電圧を低下させるためには、対向電極間に存在する結晶粒界数を少なくする必要がある。バリスタ電圧を低下させる技術として、酸化亜鉛を主成分とし、希土類元素としてのPrの酸化物を添加した半導体セラミックスからなる焼結体の内部に、内部電極を埋設した積層型バリスタが提案されている(特許文献2参照)。このバリスタでは、バリスタ電圧を比較的低くでき、しかも高価なPtを用いずに、比較的安価なAg−Pd合金を内部電極に用いることができるものである。
【0011】
しかしながら、バリスタ電圧を低下させるために、単純に、対向電極間に存在する結晶粒界数を少なくした場合、これに伴って結晶粒界の直列分が少なくなるため、静電容量の増大を招くという不都合がある。
【0012】
なお、バリスタ特性を維持しながら、静電容量の低下を図るために、酸化亜鉛に、Prの酸化物と、Coの酸化物と、Alの酸化物と、Kの酸化物と、リチウムの酸化物とを所定量で添加した焼結体を有する積層バリスタが提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、この公報記載の技術によっても、バリスタ電圧の低下と、静電容量の低下とをバランスさせることに関し、課題を有していた。
【0013】
また、積層チップバリスタの微細構造を規定した先行例としては、酸化亜鉛の他にスピネル相(Zn2.33Sb0.67O4)とケイ酸亜鉛相(Zn2SiO4)を同時に含む構造がある(特許文献4参照)。しかしながら、この公報の発明は、高いバリスタ電圧を得ることを目的としており、ケイ酸亜鉛相(Zn2SiO4)のみでなく、スピネル相(Zn2.33Sb0.67O4)を必須としており、低いバリスタ電圧で静電容量を低下させることを目的とする本発明とは関係がない。
【0014】
【特許文献1】
特開平6−13260号公報
【特許文献2】
特開平5−283209号公報
【特許文献3】
特開2000−68112号公報
【特許文献4】
特開平5−55008号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、焼結を十分に行うことが可能であり、かつ回路電圧を低下させても、静電容量を低下させることができる電圧非直線性抵抗体磁器組成物、および該組成物を用いた積層チップバリスタなどの電子部品を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る電圧非直線性抵抗体磁器組成物は、
酸化亜鉛を含む主成分と、
希土類元素の酸化物を含む第1副成分と、
Siの酸化物を含む第2副成分とを、有する電圧非直線性抵抗体磁器組成物であって、
前記主成分100モルに対する前記第2副成分の比率が、Si換算で、5原子%<第2副成分≦20原子%であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る電子部品は、
電圧非直線性抵抗体層を有する電子部品であって、
前記電圧非直線性抵抗体層が、電圧非直線性抵抗体磁器組成物で構成してあり、
前記電圧非直線性抵抗体磁器組成物が、酸化亜鉛を含む主成分と、
希土類元素の酸化物を含む第1副成分と、
Siの酸化物を含む第2副成分とを、有し、
前記主成分100モルに対する前記第2副成分の比率が、Si換算で、5原子%<第2副成分≦20原子%である。
【0017】
本発明に係る電子部品としては、特に限定されないが、積層チップバリスタ、ディスクバリスタ、バリスタ複合素子などが例示される。
【0018】
本発明に係るバリスタは、
電圧非直線性抵抗体層を有する積層チップバリスタであって、
前記電圧非直線性抵抗体層が、電圧非直線性抵抗体磁器組成物で構成してあり、
前記電圧非直線性抵抗体磁器組成物が、酸化亜鉛を含む主成分と、
希土類元素の酸化物を含む第1副成分と、
Siの酸化物を含む第2副成分とを、有し、
前記主成分100モルに対する前記第2副成分の比率が、Si換算で、1原子%<第2副成分<30原子%、好ましくは2原子%≦第2副成分≦20原子%、さらに好ましくは5原子%≦第2副成分≦20原子%である。
【0019】
第2副成分の比率が低すぎると、本発明の効果が小さく、比率が大きすぎると、電圧非直線性が失われる傾向にある。
【0020】
好ましくは、前記第1副成分に含まれる希土類元素の酸化物が、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選ばれる少なくとも1種の酸化物であり、
前記主成分100モルに対する前記第1副成分の比率が、希土類元素換算で、0.01原子%<第1副成分<10原子%、さらに好ましくは0.05原子%≦第1副成分≦5原子%である。
第1副成分の比率が低すぎると、電圧非直線性を得にくくなる傾向にあり、比率が高すぎると、バリスタ電圧が急激に高くなる傾向にある。
【0021】
好ましくは、Coの酸化物を含む第3副成分をさらに有し、
前記主成分100モルに対する該第3副成分の比率が、Co換算で、0.05原子%<第3副成分<50原子%、さらに好ましくは0.1原子%≦第3副成分≦30原子%、特に好ましくは1原子%≦第3副成分≦20原子%である。
第3副成分の比率が低すぎると、バリスタ電圧を得ることが困難になる傾向にあり、高すぎると、バリスタ電圧が増大すると共に電圧非直線性が低下する傾向にある。
【0022】
好ましくは、B、Al、GaおよびInから選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む第4副成分をさらに有し、
前記主成分100モルに対する該第4副成分の比率が、各B、Al、GaおよびIn換算で、0.0001原子%<第4副成分<1原子%、さらに好ましくは0.0005原子%≦第4副成分≦0.5原子%である。
第4副成分の比率が低すぎると、バリスタ電圧が増大する傾向にあり、比率が高すぎると、抵抗が低く、バリスタ電圧が得られない傾向にある。
【0023】
好ましくは、Na、K、RbおよびCsから選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む第5副成分をさらに有し、
前記主成分100モルに対する該第5副成分の比率が、各Na、K、RbおよびCs換算で、0.005原子%<第5副成分<5原子%、さらに好ましくは0.05原子%≦第5副成分≦2原子%である。
【0024】
第5副成分の比率が低すぎると、抵抗が低く、バリスタ電圧が得られない傾向にあり、比率が高すぎると、セラミックの融点が下がり、焼成時に溶融してしまう傾向にある。
【0025】
好ましくは、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む第6副成分をさらに有し、
前記主成分100モルに対する該第6副成分の比率が、各Mg、Ca、SrおよびBa換算で、0.05原子%<第6副成分<5原子%、さらに好ましくは0.1原子%≦第6副成分≦3原子%である。
第6副成分の比率が低すぎると、電圧非直線性が低下する傾向にあり、比率が高すぎると、バリスタ電圧が増大する傾向にある。
【0026】
なお、本発明において、バリスタ電圧とは、1mAの電流が流れる時の電圧を言う。また、バリスタ特性(電圧非直線性)とは、電子部品に徐々に増大する電圧を印加する際に、素子に流れる電流が非直線的に増大する現象を言う。
【0027】
【作用】
本発明者らは、鋭意検討して次に示す知見を得た。すなわち、所望の対向電極間厚みでバリスタ電圧を低下させるには、結晶粒を成長させ、対向電極間の結晶粒界の数を減少させる必要がある。しかし、この場合、発現する静電容量は増加する。
【0028】
対向電極の面積を変えずに静電容量を低下させるには、セラミックの微細構造を制御することがよいと考えられる。すなわち、バリスタ特性が発現しないような結晶粒界の面積を増加させることである。
【0029】
本発明では、結晶粒界の面積を小さくするように酸化亜鉛以外の第二相を導入し、その体積分率を制御する。しかも、本発明では、主成分結晶以外の前記第二相は、たとえば、酸化亜鉛を含む主成分と、主としてSiの酸化物を含む第2副成分とが反応して合成される複合酸化物(たとえば、Zn2SiO4)で構成される。この第二相と主成分との界面では、バリスタ特性はもとより、静電容量は、ほぼ発現しないものと考えられる。
【0030】
このため、本発明では、回路電圧の低電圧化に伴ってバリスタ電圧を低下させることできる(たとえば、流れる電流が1mAの時のバリスタ電圧が2000V/mm未満、好ましくは1000V/mm以下、さらに好ましくは500V/mm以下)。しかも、発現する静電容量を低下させることができる。たとえば、CV積(対向電極面積1cm2における1kHzの静電容量Cとバリスタ電圧Vとの積)を25万以下、好ましくは23万以下、さらに好ましくは20万以下にできる。
【0031】
また、本発明に係る電圧非直線性抵抗体磁器組成物は、Pdと反応しやすいBiを含まないので、内部電極としてPdを使用することができ、セラミックの焼結を十分に行える。
【0032】
なお、本発明では、前記第二相が均一に分布されていることが好ましい。バリスタは、外界からのサージなどの電気エネルギーを、熱エネルギーに変えて吸収するが、前記第二相が均一に分布されていることにより、サージを吸収した際に、結晶粒界で発生した熱を、第二相に分散させ、結晶粒界の温度が上がり過ぎないようにすることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層チップバリスタの断面図。
【0034】
積層チップバリスタ
図1に示すように、電子部品の一例としての積層チップバリスタ2は、内部電極層4,6と層間電圧非直線性抵抗体層8とが積層された構成の素子本体10を有する。この素子本体10の両端部には、素子本体10の内部に配置された内部電極層4,6と各々導通する一対の外部端子電極12,14が形成してある。素子本体10の形状は、特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、縦(0.6〜5.6mm)×横(0.3〜5.0mm)×厚み(0.3〜1.9mm)程度である。
【0035】
内部電極層4,6は、各端面が素子本体10の対向する2端部の表面に露出するように積層してある。一対の外部端子電極12,14は、素子本体10の両端部に形成され、内部電極層4,6の露出端面にそれぞれ接続されて、回路を構成する。
【0036】
素子本体10において、内部電極層4,6および層間電圧非直線性抵抗体層8の積層方向の両外側端部には、外側保護層8aが配置してあり、素子本体10の内部を保護している。外側保護層8aの材質は、層間電圧非直線性抵抗体層8の材質と同じであっても異なっていても良い。
【0037】
内部電極層
内部電極層4,6に含有される導電材は、特に限定されないが、PdまたはAg−Pd合金で構成してあることが好ましい。合金中のPd含有量は95重量%以上であることが好ましい。内部電極層4,6の厚さは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常0.5〜5μm程度である。
【0038】
外部端子電極
外部端子電極12,14に含有される導電材は、特に限定されないが、通常、AgやAg−Pd合金などを用いる。外部端子電極12,14の厚さは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常10〜50μm程度である。
【0039】
層間電圧非直線性抵抗体層
層間電圧非直線性抵抗体層8は、本発明の電圧非直線性抵抗体磁器組成物で構成される。
【0040】
本発明の電圧非直線性抵抗体磁器組成物は、酸化亜鉛を含む主成分を有する。この酸化亜鉛を含む主成分は、電圧−電流特性における優れた電圧非直線性と、大きなサージ耐量とを発現する物質として作用する。
【0041】
本発明の電圧非直線性抵抗体磁器組成物は、希土類元素の酸化物を含む第1副成分を、さらに有する。この第1副成分は、内部電極層4,6を構成する導電材と反応しにくい性質を有するとともに、結晶粒界への酸素の拡散速度を早める物質として作用する。これを添加すると、内部電極層4,6を構成する導電材と反応しにくいので、結果として焼結体の焼結を十分に行うことができる。
【0042】
第1副成分に含まれる希土類元素の酸化物は、ScおよびPmを除く、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選ばれる少なくとも1種の酸化物であることが好ましく、少なくともPrの酸化物を含むことがより好ましい。主成分100モルに対する第1副成分の比率は、特に限定されないが、希土類元素換算で、好ましくは0.01原子%<第1副成分<10原子%、さらに好ましくは0.05原子%≦第1副成分≦5原子%である。
【0043】
第1副成分の比率を、所定範囲にすることにより、組成物を半導体化状態に維持できるとともに、結晶粒界への酸素拡散速度を早めることができる。
【0044】
本発明の電圧非直線性抵抗体磁器組成物は、Siの酸化物を含む第2副成分を、さらに有する。この第2副成分は、組成物のCV積(静電容量Cとバリスタ電圧Vとの積)を減少させる物質として作用する。
【0045】
本発明の電圧非直線性抵抗体磁器組成物が、従来の電圧非直線性抵抗体磁器組成物と異なる点は、酸化亜鉛を含む主成分100モルに対して、Siの酸化物を含む第2副成分を所定量添加する点にある。このような第2副成分を所定量添加することにより、回路電圧を低下させても、静電容量を低下させることができる。
【0046】
具体的には、主成分100モルに対する第2副成分の比率は、Si換算で、1原子%<第2副成分<30原子%、好ましくは2原子%≦第2副成分≦20原子%、さらに好ましくは5原子%≦第2副成分≦20原子%である。
【0047】
第2副成分の比率が高すぎると、バリスタ電圧が増大しすぎるとともに、焼結できない傾向にあり、第2副成分の比率が低すぎると、CV積の低下、すなわち静電容量の低下が望めない。
【0048】
本発明に係る電圧非直線性抵抗体磁器組成物では、Coの酸化物を含む第3副成分をさらに有することが好ましい。この第3副成分はアクセプター(電子捕捉剤)として働き、電圧非直線性を維持する物質として作用する。前記主成分100モルに対する第3副成分の比率は、Co換算で、好ましくは0.05原子%<第3副成分<50原子%、さらに好ましくは0.1原子%≦第3副成分≦30原子%、特に好ましくは1原子%≦第3副成分≦20原子%である。
【0049】
第3副成分の比率が低すぎると、バリスタ特性を得ることが困難になる傾向にあり、高すぎると、バリスタ電圧が増大すると共に電圧非直線性が低下する傾向にある。
【0050】
本発明に係る電圧非直線性抵抗体磁器組成物では、B、Al、GaおよびInから選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む第4副成分をさらに有することが好ましい。この第4副成分は酸化亜鉛を含む主成分への電子量を制御するためのドナーとして働き、主成分への電子量を上げ、組成物を半導体化させる物質として作用する。前記主成分100モルに対する第4副成分の比率は、各B、Al、GaおよびIn換算で、0.0001原子%<第4副成分<1原子%、さらに好ましくは0.0005原子%≦第4副成分≦0.5原子%である。
【0051】
第4副成分の比率が低すぎると、バリスタ電圧が増大する傾向にあり、比率が高すぎると、バリスタ特性を得ることが困難になる傾向にある。
【0052】
本発明に係る電圧非直線性抵抗体磁器組成物では、Na、K、RbおよびCsから選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む第5副成分をさらに有することが好ましい。この第5副成分は組成物の電圧非直線性を改善する物質として作用する。前記主成分100モルに対する第5副成分の比率は、各Na、K、RbおよびCs換算で、好ましくは0.005原子%<第5副成分<5原子%、さらに好ましくは0.05原子%≦第5副成分≦2原子%である。
【0053】
第5副成分の比率が低すぎると、抵抗が低く、バリスタ電圧が得られない傾向にあり、比率が高すぎると、セラミックの融点が下がり、焼成時に溶融してしまう傾向にある。
【0054】
本発明に係る電圧非直線性抵抗体磁器組成物では、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む第6副成分をさらに有することが好ましい。この第6副成分は電圧非直線性を改善する物質として作用する。前記主成分100モルに対する第6副成分の比率は、酸化物中の各Mg、Ca、SrおよびBa換算で、好ましくは0.05原子%<第6副成分<5原子%、さらに好ましくは0.1原子%≦第6副成分≦3原子%である。
【0055】
第6副成分の比率が低すぎると、電圧非直線性が低下する傾向にあり、比率が高すぎると、バリスタ電圧が増大する傾向にある。
【0056】
なお、層間電圧非直線性抵抗体層8の積層数や厚み等の諸条件は、目的や用途に応じ適宜決定すればよい。本実施形態では、層間電圧非直線性抵抗体層8の厚みは、たとえば5〜100μm程度である。また、外側保護層8aの厚みは、たとえば100〜500μm程度である。
【0057】
本実施形態に係る層間電圧非直線性抵抗体層8では、流れる電流が1mAの時のバリスタ電圧が、通常2000V/mm未満、好ましくは1000V/mm以下、さらに好ましくは500V/mm以下である。また、層間電圧非直線性抵抗体層8では、非直線係数(α)が、8以上であることが好ましく、より好ましくは10以上、特に好ましくは15以上である。さらに層間電圧非直線性抵抗体層8では、静電容量を、基準温度25℃、測定周波数1kHzおよび入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsで測定した場合に、CV積(静電容量Cとバリスタ電圧Vとの積)が、対向電極面積が1cm2のとき、通常25万以下、好ましくは23万以下、さらに好ましくは20万以下である。
【0058】
積層チップバリスタの製造方法
次に、本実施形態に係る積層チップバリスタ2の製造方法の一例を説明する。
【0059】
本実施形態では、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部端子電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0060】
まず、電圧非直線性抵抗体層用ペースト、内部電極層用ペースト、外部端子電極用ペーストをそれぞれ準備する。なお、電圧非直線性抵抗体層用ペーストを用いて、図1に示す層間電圧非直線性抵抗体層8および外側保護層8aを成形することができる。
【0061】
電圧非直線性抵抗体層用ペーストは、電圧非直線性抵抗体磁器組成物原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
【0062】
電圧非直線性抵抗体磁器組成物原料には、上述した本発明の電圧非直線性抵抗体磁器組成物の組成に応じて、主成分を構成する原料と、各副成分を構成する原料とが用いられる。
【0063】
主成分を構成する原料としては、Znの酸化物および/または焼成により酸化物になる化合物が用いられる。
第1副成分を構成する原料としては、希土類元素の酸化物および/または焼成により酸化物になる化合物が用いられる。
第2副成分を構成する原料としては、Siの酸化物および/または焼成により酸化物になる化合物が用いられる。
第3副成分を構成する原料としては、Coの酸化物および/または焼成により酸化物になる化合物が用いられる。
第4副成分を構成する原料としては、B、Al、GaおよびInの酸化物および/または焼成後にこれらの酸化物になる化合物から選ばれる1種類以上の単一酸化物または複合酸化物が用いられる。
第5副成分を構成する原料としては、Na、K、RbおよびCsの酸化物および/または焼成後にこれらの酸化物になる化合物から選ばれる1種類以上の単一酸化物または複合酸化物が用いられる。
第6副成分を構成する原料としては、Mg、Ca、SrおよびBaの酸化物および/または焼成後にこれらの酸化物になる化合物から選ばれる1種類以上の単一酸化物または複合酸化物が用いられる。
なお、焼成により酸化物になる化合物としては、例えば水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、有機金属化合物等が例示される。もちろん、酸化物と、焼成により酸化物になる化合物とを併用してもよい。電圧非直線性抵抗体磁器組成物原料中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した電圧非直線性抵抗体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。これらの原料粉末は、通常、平均粒子径0.3〜2μm程度のものが用いられる。
【0064】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものであり、有機ビヒクルに用いられるバインダは、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、このとき用いられる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じてテルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0065】
また、水溶系塗料とは、水に水溶性バインダ、分散剤等を溶解させたものであり、水溶系バインダは、特に限定されず、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂、エマルジョン等から適宜選択すればよい。
【0066】
内部電極層用ペーストは、上述した各種導電材あるいは焼成後に上述した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上述した有機ビヒクルとを混練して調製される。また、外部端子電極用ペーストも、この内部電極層用ペーストと同様にして調製される。
【0067】
各ペーストの有機ビヒクルの含有量は、特に限定されず、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されても良い。
【0068】
印刷法を用いる場合は、電圧非直線性抵抗体層用ペーストを、ポリエチレンテレフタレート等の基板上に所定厚みで複数回印刷して、図1に示す外側保護層8aを形成する。
次に、この外側保護層8aの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層4を形成する。次に、この内部電極層4の上に、前記同様に電圧非直線性抵抗体層用ペーストを所定厚みで複数回印刷して、図1に示す層間電圧非直線性抵抗体層8を形成する。
【0069】
次に、層間電圧非直線性抵抗体層8の上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、内部電極層6を形成する。内部電極層4,6は、対向して相異なる端部表面に露出するように印刷する。
【0070】
最後に、内部電極層6の上に、前記と同様に電圧非直線性抵抗体層用ペーストを所定厚みで複数回印刷して、図1に示す外側保護層8aを形成する。その後、加熱しながら加圧、圧着し、所定形状に切断してグリーンチップとする。
【0071】
シート法を用いる場合は、電圧非直線性抵抗体層用ペーストを用いてグリーンシートを成形し、その後、このグリーンシートを所定の枚数積層して、図1に示す外側保護層8aを形成する。
次に、この外側保護層8aの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層4を形成する。同様にして、図1に示す別の外側保護層8aの上に、内部電極層6を形成する。
これらを、グリーンシートを所定の枚数積層して形成された図1に示す層間電圧非直線性抵抗体層8を間に挟み、かつ内部電極層4,6が対向して相異なる端部表面に露出するように重ね、加熱しながら加圧、圧着し、所定形状に切断してグリーンチップとする。
【0072】
次に、このグリーンチップを脱バインダ処理および焼成して、焼結体(素子本体10)を作製する。
【0073】
脱バインダ処理は、通常の条件で行えばよい。たとえば、空気雰囲気において、昇温速度を5〜300℃/時間程度、保持温度を180〜400℃程度、温度保持時間を0.5〜24時間程度とする。
【0074】
グリーンチップの焼成は、通常の条件で行えばよい。たとえば、空気雰囲気において、昇温速度を50〜500℃/時間程度、保持温度を1000〜1400℃程度、温度保持時間を0.5〜8時間程度、冷却速度を50〜500℃/時間程度とする。保持温度が低すぎると緻密化が不充分となり、保持温度が高すぎると内部電極の異常焼結による電極の途切れを生じる傾向がある。
【0075】
得られた焼結体(素子本体10)に、たとえば、バレル研磨やサンドブラストにより端面研磨を施し、外部端子電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部端子電極12,14を形成する。外部端子電極用ペーストの焼成条件は、たとえば、空気雰囲気中で600〜900℃にて10分〜1時間程度とすることが好ましい。
【0076】
このようにして製造された本実施形態の積層チップバリスタ2は、たとえば静電気などの外来サージ(異常電圧)やノイズなどを、吸収または除去するために使用される。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得る。
【0078】
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層チップバリスタを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層チップバリスタに限定されず、上記組成の電圧非直線性抵抗体磁器組成物で構成してある電圧非直線性抵抗体層を有するものであれば何でも良い。
【0079】
また、図1に示すように、内部電極層が1対のみの積層チップバリスタに限定されない。図1では、内部電極層が1対のみであるが、内部電極が複数対積層してあってもよく、あるいは内部電極が多数積層してある積層チップバリスタであってもよい。
【0080】
【実施例】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0081】
実施例1
本実施例では、本発明に係る電圧非直線性抵抗体磁器組成物そのものの特性を評価した。
【0082】
まず、電圧非直線性抵抗体磁器組成物材料を作製するために、主成分原料(ZnO)および第1〜第6副成分原料を用意した。各原料としては、酸化物、炭酸塩および炭酸塩の水和物などを用いた。
【0083】
次に、これらの原料を、水を溶媒としてZrO2 メディアを用いて、焼成後の組成が、主成分であるZnO:100モルに対して、下記表1〜7に示すものとなるように配合して、ボールミルにより約20時間湿式混合し、これを脱水および乾燥することによって電圧非直線性抵抗体磁器組成物材料を得た。
【0084】
次に、この電圧非直線性抵抗体磁器組成物材料に、バインダとしてのポリビニルアルコールを添加して、顆粒状になるようにバインダと電圧非直線性抵抗体磁器組成物材料とを混合した。次に、この顆粒状の電圧非直線性抵抗体磁器組成物材料をプレス成形し、外径φ16mm、厚み1.2mmの円板状予備成形体を得た。
【0085】
次に、この得られた予備成形体を、350℃で2時間、脱バインダーを行った後、1250℃で2時間、大気中で焼成し、外径φ14mm、厚みが1mmの円板状半導体焼結体を得た。
【0086】
次に、この円板状半導体焼結体の両面に、Agを焼き付けることでφ11.5mmの電極を形成して、本発明の電圧非直線性抵抗体磁器組成物の試料としての円板状試料を得た。
【0087】
得られた円板状試料を用いて、バリスタ電圧、非直線係数および静電容量を測定した。
バリスタ電圧(V1mA )は、円板状試料を直流定電圧電源に接続し、円板状試料の両電極間に作用する電圧を電圧計で測定すると共に、円板状試料に流れる電流を電流計にて読みとることにより求めた。具体的には、円板状試料に流れる電流が1mAの時に、円板状試料の電極間に作用する電圧を電圧計により読みとり、その値をバリスタ電圧とした。単位は、V/mmとした。
【0088】
非直線係数(α)は、円板状試料に流れる電流が1mAから10mAまで変化した場合の円板状試料の電極間にかかる電圧と電流の関係を示しており、次式から求めた。
【0089】
α=log(I10/I1 )/log(V10/V1)=1/log(V10/V1)
なお、V10は、円板状試料にI10=10mAの電流を流した場合のバリスタ電圧を意味し、V1は、円板状試料にI1 =1mAの電流を流した場合のバリスタ電圧を意味する。この非直線係数αが大きいほど、バリスタ特性に優れている。
【0090】
静電容量(C)は、円板状試料に対し、基準温度25℃でデジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件下で測定した(単位はpF)。
【0091】
結果を、併せて表1〜7に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
【表5】
【0097】
【表6】
【0098】
【表7】
【0099】
評価
表1に示すように、第2副成分の添加量と電気特性の関係については、Siの添加量が増えるに従って、バリスタ電圧は増加していくが、CV積が減少していくことが確認された。
【0100】
試料1に対して2原子%のSiを含有した試料3は、CV積が約22%減少し、Siの含有効果が分かる。さらに、CV積は、Si含有量の増加とともに減少し、Siを10原子%含有した試料5で、CV積が試料1の半分以下となった。Siを30原子%含有した試料7では、非直線性が失われ抵抗体となることが確認された。
【0101】
表1に示す結果から、主成分100モルに対する前記第2副成分の比率は、Si換算で、1原子%<第2副成分<30原子%、好ましくは2原子%≦第2副成分≦20原子%、さらに好ましくは5原子%≦第2副成分≦20原子%であることが確認できた。
【0102】
表2は、希土類元素であるPrの含有量と電気特性についてまとめたものである。CV積については、いずれについても問題なく小さい。しかし、Pr含有量が0.01原子%である試料8では、バリスタ電圧が得られなかった。また、Pr含有量が10原子%である試料13では、バリスタ電圧が急激に増大し2000Vを超えることが確認できた。
【0103】
表2に示す結果から、主成分100モルに対する前記第1副成分の比率が、希土類元素換算で、好ましくは0.01原子%<第1副成分<10原子%、さらに好ましくは0.05原子%≦第1副成分≦5原子%であることが確認できた。
【0104】
表3は、Prの代わりに種々の希土類元素を含有したときの結果である。この表から、いずれの希土類元素を用いる事ができることが確認できた。
【0105】
表4は、Co含有量と電気特性についてについてまとめたものであるが、CV積については、いずれについても問題なく小さい。しかし、Co含有量が0.05原子%である試料28では、バリスタ電圧が得られなかった。また、Co含有量が50原子%を超える試料34では、バリスタ電圧の増大と非直線性の低下が見られた。
【0106】
表4に示す結果から、主成分100モルに対する該第3副成分の比率が、Co換算で、好ましくは0.05原子%<第3副成分<50原子%、さらに好ましくは0.1原子%≦第3副成分≦30原子%、特に好ましくは1原子%≦第3副成分≦20原子%であることが確認できた。
【0107】
表5は、IIIb族元素であるB、Al、GaおよびIn含有した場合の結果を示した。Al含有量が0.0001原子%よりも少ない試料35では、バリスタ電圧が急激に増大し2000Vを超えた。また、Al含有量が1原子%の試料48ではバリスタ電圧が得られなかった。さらにAlの代わりにB、GaおよびInを用いることができ、B、Al、GaおよびInから選ばれた2種類以上の組み合わせを用いる事ができることが確認できた。
【0108】
また、表5に示す結果から、主成分100モルに対する該第4副成分の比率が、各B、Al、GaおよびIn換算で、好ましくは0.0001原子%<第4副成分<1原子%、さらに好ましくは0.0005原子%≦第4副成分≦0.5原子%であることが確認できた。
【0109】
表6は、アルカリ金属としてNa、K、Rb、Csを含有した場合の結果を示した。K含有量が0.005原子%である試料49では、抵抗が低くバリスタ電圧が得られなかった。また、K含有量が5原子%の試料63では、試料が溶融状態となり電気特性を測定できなかった。さらにKの代わりに他のアルカリ金属であるNa、Rb、Csを用いても構わないし、2種類以上のアルカリ金属を組み合わせて添加しても構わないことが確認できた。
【0110】
表6に示す結果から、主成分100モルに対する該第5副成分の比率が、各Na、K、RbおよびCs換算で、好ましくは0.005原子%<第5副成分<5原子%、さらに好ましくは0.05原子%≦第5副成分≦2原子%であることが確認できた。
【0111】
表7は、アルカリ土類金属としてMg、Ca、SrおよびBaを含有した場合の結果を示した。Ca含有量が0.05原子%の試料64では、非直線性が小さくなり、また、5原子%の試料70ではバリスタ電圧が急増した。また、Mg、SrおよびBaを用いた場合も同様の結果が得られ、さらにこれらを併用しても含有の効果が得られることが確認できた。
【0112】
表7に示す結果から、主成分100モルに対する該第6副成分の比率が、各Mg、Ca、SrおよびBa換算で、好ましくは0.05原子%<第6副成分<5原子%、さらに好ましくは0.1原子%≦第6副成分≦3原子%であることが確認できた。
【0113】
実施例2
次に、実施例1における試料5をバリスタ層(電圧非直線性抵抗体層8)として、図1に示す積層チップバリスタを作製した。
【0114】
まずバリスタ層を構成するために、表1の試料5に示す組成の粉体に、有機バインダ、有機溶剤、有機可塑剤を加え、ボールミルで20時間混合し粉砕を行って、スラリーを作製した。
【0115】
このスラリーをドクターブレード法により、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のベースフィルム上に30μmの厚さのグリーンシートを作製し、塗布した前記グリーンシート上に、パラジウムペーストを用い、スクリーン印刷にて、所望の形状になるように印刷し、乾燥して、図1に示す内部電極4を形成する。次に、図1に示す内部電極6を、同様に形成する。
【0116】
さらに、最外層となる保護層8a、8bは、同じ組成のグリーンシートを複数枚重ねて形成した。
【0117】
その後、これらを加熱、圧着した後、所定のチップ形状となるように切断してグリーンチップとした。
【0118】
このグリーンチップを350℃で2時間脱バインダーを行った後、1250℃で2時間空気中において焼成し、積層チップバリスタ素体となる焼結体を得た。
【0119】
次いでこのバリスタ素体をバレル研磨した後、その両端にAgを主体とした電極ペーストを塗布し、800℃で焼き付けして端子電極3a、3bを形成した。このようにして、図1に示す断面図の構成をした積層チップバリスタを得ることができた。
【0120】
得られた積層チップバリスタに於けるCV積は、内部電極の重なり面積が0.05mm2 で、80であった。
【0121】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、焼結を十分に行うことが可能であり、かつ回路電圧を低下させても、静電容量を低下させることができる電圧非直線性抵抗体磁器組成物、および該組成物を用いた積層チップバリスタなどの電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施形態に係る積層チップバリスタの断面図である。
【符号の説明】
2… 積層チップバリスタ
4,6… 内部電極層
8… 層間電圧非直線性抵抗体層
8a… 外側保護層
10… 素子本体
12,14… 外部端子電極
Claims (9)
- 酸化亜鉛を含む主成分と、
希土類元素の酸化物を含む第1副成分と、
Siの酸化物を含む第2副成分とを、有する電圧非直線性抵抗体磁器組成物であって、
前記主成分100モルに対する前記第2副成分の比率が、Si換算で、5原子%<第2副成分≦20原子%である電圧非直線性抵抗体磁器組成物。 - 前記第1副成分に含まれる希土類元素の酸化物が、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選ばれる少なくとも1種の酸化物であり、
前記主成分100モルに対する前記第1副成分の比率が、希土類元素換算で、0.01原子%<第1副成分<10原子%である請求項1に記載の電圧非直線性抵抗体磁器組成物。 - 前記第1副成分に含まれる希土類元素の酸化物が、Prの酸化物である請求項1または2に記載の電圧非直線性抵抗体磁器組成物。
- Coの酸化物を含む第3副成分をさらに有し、
前記主成分100モルに対する該第3副成分の比率が、Co換算で、0.05原子%<第3副成分<50原子%である請求項1〜3のいずれかに記載の電圧非直線性抵抗体磁器組成物。 - B、Al、GaおよびInから選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む第4副成分をさらに有し、
前記主成分100モルに対する該第4副成分の比率が、各B、Al、GaおよびIn換算で、0.0001原子%<第4副成分<1原子%である請求項1〜4のいずれかに記載の電圧非直線性抵抗体磁器組成物。 - Na、K、RbおよびCsから選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む第5副成分をさらに有し、
前記主成分100モルに対する該第5副成分の比率が、各Na、K、RbおよびCs換算で、0.005原子%<第5副成分<5原子%である請求項1〜5のいずれかに記載の電圧非直線性抵抗体磁器組成物。 - Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む第6副成分をさらに有し、
前記主成分100モルに対する該第6副成分の比率が、各Mg、Ca、SrおよびBa換算で、0.05原子%<第6副成分<5原子%である請求項1〜6のいずれかに記載の電圧非直線性抵抗体磁器組成物。 - 電圧非直線性抵抗体層を有する電子部品であって、
前記電圧非直線性抵抗体層が、電圧非直線性抵抗体磁器組成物で構成してあり、
前記電圧非直線性抵抗体磁器組成物が、酸化亜鉛を含む主成分と、
希土類元素の酸化物を含む第1副成分と、
Siの酸化物を含む第2副成分とを、有し、
前記主成分100モルに対する前記第2副成分の比率が、Si換算で、5原子%<第2副成分≦20原子%である電子部品。 - 電圧非直線性抵抗体層を有する積層チップバリスタであって、
前記電圧非直線性抵抗体層が、電圧非直線性抵抗体磁器組成物で構成してあり、
前記電圧非直線性抵抗体磁器組成物が、酸化亜鉛を含む主成分と、
希土類元素の酸化物を含む第1副成分と、
Siの酸化物を含む第2副成分とを、有し、
前記主成分100モルに対する前記第2副成分の比率が、Si換算で、5原子%<第2副成分≦20原子%である積層チップバリスタ。
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