JP3710054B2 - 溶接治具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、機器用ワイヤーハーネス、屋内配線等に使用する電線、金属線条材等の被溶接材を溶接するとき使用する溶接治具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
複数の被溶接材を接合(接続)する場合、接続の手間を省き、接続の信頼性を高めるために、これら被溶接材を重ね合わせ、重ね合わせ部を超音波溶接、抵抗溶接、レーザビーム溶接等により溶接することが行われている。
従来、被溶接材が、例えば、ワイヤーハーネス用の電線の場合には、一方の1又は複数本の電線の端部における絶縁被覆を剥ぎ取って芯線を露出させ、他方の1又は複数本の電線の端部における絶縁被覆を剥ぎ取って芯線を露出させ、両電線の端部が対向するように配置して、作業者の目視により、露出させた芯線の適正な重ね合わせ位置を設定し、更に一方若しくは他方の電線、又は双方の電線が複数本ある場合には、複数本の電線の先端位置も揃え、その重ね合わせ部を超音波溶接等により溶接して接合している。例えば、図13に示すものは、各1本の電線1、2の芯線1a、2aを重ね合わせて、その重ね合わせ部を溶接するものであり、図14に示すものは、各2本の電線3〜6の芯線3a〜6aを重ね合わせて、その重ね合わせ部を溶接するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の方法によると、図13に示すものでは、例えば、電線2の芯線2aのように、適正な重ね合わせ位置に設定されなかったり、図14に示すものでは、例えば、電線4の芯線4a及び電線6の芯線6aのように、これらの先端位置が不揃いになったりして、重ね合わせ長が短くなり、芯線の重ね合わせ状態が安定しない。そこで、このような状態で、芯線の重ね合わせ部を溶接すると、溶接不良を起こし、その部分の溶接強度が低下して、引張り、曲げ、ねじれ等の外力が繰り返し作用すると、その接合部が破損する等、接合部の品質及び信頼性が低下する問題があった。
【0004】
一方、重ね合わせ長が必要以上に長くなり過ぎると、芯線の先端が、外に突き出て、他の部材に引っ掛かり、その部材を損傷したり、作業者が怪我をする恐れがあって危険であり、これを防止するため、接合部の外周面を整形する必要があり、このための工数が増加する問題もあった。
【0005】
更に前記接合部の品質及び信頼性が低下すると、電線の製造歩留まりが低下し、また接合部の品質チェックのための厳密な検査が必要となり、また接合部の形成に時間を要するため、作業能率が低下し、このため、良品質の電線を量産化することが容易でなく、電線コストが上昇するという問題もあった。
【0006】
このような問題は、被溶接材がワイヤーハーネス用の電線に限らず、他の電線や導電性金属線条材又は導電を目的としない他の金属線条材の場合にも同様に当て嵌まる問題であった。
【0007】
本発明は上記に鑑みて提案されたもので、被溶接材を重ね合わせて、その重ね合わせ部を溶接する場合、被溶接材の重ね合わせ位置決め及び先端位置揃え作業を正確、且つ、迅速に行うことを可能とし、被溶接材の溶接不良をなくし、接合部の品質及び信頼性を高め、被溶接材を歩留まりよく製造して製品コストを低減させるようにした溶接治具を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段として、本発明の請求項1に記載された溶接治具は、一方の被溶接材の先端が当接してその溶接の位置決めを行う第1ストッパと、第1ストッパを一方の被溶接材の先端が当接するストッパ位置とストッパ位置から後退した非ストッパ位置との間を進退させる第1ストッパ駆動機構と、第1ストッパに対し、一方の被溶接材の進入方向と逆方向に被溶接材の重ね合わせ長に相当する間隔をおいて第1ストッパと対向するように設けられ、一方の被溶接材に重ね合わされる他方の被溶接材の先端が当接してその溶接の位置決めを行う第2ストッパと、第2ストッパを他方の被溶接材の先端が当接するストッパ位置とストッパ位置から後退した非ストッパ位置との間を進退させる第2ストッパ駆動機構と、第1及び第2ストッパに対し、更に一方の被溶接材の進入方向と逆方向側に設けられ、一方の被溶接材を把持するクランプ部とを備える。
【0009】
上記構成によると、一方の被溶接材は第1ストッパによって、その重ね合わせ位置が正しく設定され、また、他方の被溶接材は第2ストッパによって、その重ね合わせ位置が正しく設定される。また、一方の被溶接材若しくは他方の被溶接材、又は双方の被溶接材が複数ある場合には、これら複数の被溶接材は第1ストッパ又は第2ストッパによって、その先端位置が正しく揃えられる。
【0010】
このため、溶接される一方及び他方の被溶接材の重ね合わせ長が短過ぎたり、長くなり過ぎたりすることがなくなり、溶接に必要な範囲に正しく設定することが可能になる。従って、被溶接材の重ね合わせ部が溶接不良を起こすことがなくなり、その部分の溶接強度が向上するから、引張り等の外力が加わっても、その接合部が破損する恐れがなくなり、接合部の品質及び信頼性が向上する。
【0011】
また、重ね合わせ長が必要以上に長くならないので、被溶接材の先端が外に突き出ることがなくなり、接合部がコンパクトになるほか、他の部材に引っ掛かってその部材を損傷する恐れもなくなるので、被溶接材の収納、取扱いが簡単になる。また、接合部の外周面を整形する必要がなくなるので、接合部の形成が容易になり、作業の手数を省くことができる。
【0012】
更に前記接合部の品質及び信頼性が向上するため、被溶接材の製造歩留まりが向上し、また接合部の品質チェックを簡素化でき、また接合部の形成に要する時間も短縮されるので、作業能率が向上し、良品質の溶接製品を低価格で量産化することが容易となる。
【0013】
また、本発明の溶接治具を使用すると、その接合部の接合状態が安定し、且つ、しっかりするので、被溶接材が電線、又は導電性金属線条材の場合には、接触抵抗が増加せず、振動等で導通不良を起こすこともなくなり、これらを利用したシステム、設備、装置等の電気系統の故障を防止し、信頼性及び耐久性を向上させることができる。
【0014】
本発明の請求項2に記載された溶接治具は、請求項1記載のものにおいて、中間皮剥ぎ部を有する被溶接材の中間皮剥ぎ部の溶接位置を揃えるくし歯状揃え部材と、該部材で中間皮剥ぎ部の溶接位置が揃えられた被溶接材を把持し、請求項1記載の被溶接材の端末の重ね合わせ溶接位置に対向する位置まで移動させて溶接の位置決めを行う中間皮剥ぎ部位置決め手段とを更に備える。
【0015】
上記構成によると、被溶接材の端末の重ね合わせ部と中間皮剥ぎ部とを溶接して接合する場合に、中間皮剥ぎ部を被溶接材の端末の重ね合わせ溶接位置に正しく対向させることが可能になり、重ね合わせ部と中間皮剥ぎ部の接合部が溶接不良を起こさず、接合部の溶接強度が向上するから、接合部の品質及び信頼性を高めることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1(イ)(ロ)は本発明の溶接治具10を、例えば、自動車、機器用ワイヤーハーネスの電線(被溶接材)の接合に適用した場合の基本的構成の概要を示す。
この溶接治具10は、フレーム(溶接モジュールの基体)12に設けられ、一方の、例えば、2本の電線14、15の進入方向Xへの進入により、これら電線14、15の端部における絶縁被覆を剥ぎ取って露出させた芯線14a、15aの先端が当接してその溶接の位置決め、即ち、重ね合わせ位置決め及び先端位置揃えを行う第1ストッパ16と、第1ストッパ16を一方の電線14、15の芯線14a、15aの先端が当接するストッパ位置A(図1(ロ)参照)とストッパ位置Aから後退した非ストッパ位置B(図1(イ)参照)との間を進退させる第1ストッパ駆動機構18とを備える。
【0017】
また、第1ストッパ16に対し、一方の電線14、15の進入方向Xと逆方向に該電線14、15の芯線14a、15aの重ね合わせ長に相当する間隔をおいて第1ストッパ16と対向するように設けられ、他方の、例えば、1本の電線20の進入方向Yへの進入により、一方の電線14、15の芯線14a、15aに重ね合わされると共に、該電線20の端部における絶縁被覆を剥ぎ取って露出させた芯線20aの先端が当接してその溶接の位置決め、即ち、重ね合わせ位置決めを行う第2ストッパ22と、第2ストッパ22を他方の電線20の芯線20aの先端が当接するストッパ位置C(図1(イ)参照)とストッパ位置Cから後退した非ストッパ位置D(図1(ロ)参照)との間を進退させる第2ストッパ駆動機構24とを備える。
【0018】
更に、第1及び第2ストッパ16、22に対し、更に一方の電線14、15の進入方向Xと逆方向側に設けられ、本実施形態では、一方の電線14、15の芯線14a、15aの先端が第1ストッパ16に当接してその溶接の位置決めを行った後、これら電線14、15が位置ずれを起こさないように、これら電線を把持して固定するクランプ部26とを備えて構成される。
【0019】
なお、28は本実施形態の溶接治具10の第1ストッパ16と第2ストッパ22との間に設けられ、前記一方の電線14、15の芯線14a、15aと他方の電線20の芯線20aとの重ね合わせ部を超音波溶接、抵抗溶接、レーザビーム溶接等により溶接して接合する溶接装置を示す。
【0020】
第1ストッパ16は、図2及び図5に示すように、細長板状片からなり、先端側に下方に突出する電線当接部16aを有し、後端側に長手方向に沿って取付け位置調整用の長孔16bを有し、後記する第1ストッパ駆動機構18に斜め下向きに傾斜して配設される。
【0021】
第1ストッパ駆動機構18は、図2及び図5に示すように、フレーム12に設置されたエアー又は油圧の流体圧で作動する直線駆動型アクチュエータ30のピストンロッド32にL型のスライダ34を取付け、このスライダ34を前記アクチュエータ30の側部に形成された略コ字型の案内溝36にスライド自在に係合させ、前記アクチュエータ30のピストンロッド32を伸長又は縮小させることにより、スライダ34を前記一方の電線14、15の進入方向X(又は他方の電線20の進入方向Y)(図1(イ)参照)に垂直な方向の面内で斜め上下方向に進退することができるように構成されている。
【0022】
前記第1ストッパ16は、このスライダ34の側部に、第1ストッパ16の長孔16bを通して2本の位置調整ボルト38で締め付けることにより取付けられる。従って、この第1ストッパ16もスライダ34と同じ面内で斜め上下方向に進退する。第1ストッパ16には長孔16bが形成されているので、位置調整ボルト38を緩めて、このストッパ16を長手方向に移動させ、これがストッパ位置Aに前進したとき、その電線当接部16aに電線14、15の芯線14a、15aの先端が丁度当接する位置で位置調整ボルト38を締め付けることにより、第1ストッパ16を最適位置に調整することができる。
【0023】
第1ストッパ駆動機構18における直線駆動型アクチュエータ30を駆動してピストンロッド32を伸長させることにより、L型のスライダ34がスライドして、第1ストッパ16が一方の電線14、15の芯線14a、15aの先端が当接するストッパ位置Aまで前進し、一方、ピストンロッド32を縮小させることにより、L型のスライダ34が逆方向にスライドして、第1ストッパ16がストッパ位置Aから非ストッパ位置Bまで後退する。このようにして、第1ストッパ駆動機構18により、第1ストッパ16を一方の電線14、15の芯線14a、15aの先端が当接するストッパ位置Aとこの位置から後退した非ストッパ位置Bとの間を進退させることができる。
【0024】
第2ストッパ22は、図2及び図6に示すように、例えば、縦方向に少し長めの矩形状板片からなり、一方の長片(図6で右側)側の上縁と下縁が面取りされている。この第2ストッパ22は後記する第2ストッパ駆動機構24に配設される。
【0025】
第2ストッパ駆動機構24は、図2、図4及び図6に示すように、フレーム12の上面に前記電線14、15の進入方向X(又は他方の電線20の進入方向Y)に対し垂直な方向の面に沿って所定間隔をおいて、2個の同じ形状、寸法を有する連結小リンク片40、42を対向させると共に、その一端側(下側)を、フレーム12に、その上面に取付けた軸受ブラケット44に軸支された連結軸46、48によって、それぞれ回転自在に支持させる。
【0026】
一方、長手方向に沿って上下方向に貫通する細長スロット50が形成された進退可動アーム52を、フレーム12の上面に対向させて水平横向きに配置し、その細長スロット50内に、連結小リンク片40、42の他端側(上側)を差し込み、進退可動アーム52に連結小リンク片40、42の他端側を、その連結小リンク片40、42の一端側の連結軸間隔と同じ連結軸間隔となるように、連結軸54、56によって、それぞれ回転自在に支持させ、前記フレーム12(固定型)、進退可動アーム52(可動型)及び連結小リンク片40、42(可動型)とで平行四辺形リンクを形成する。
【0027】
更に、連結小リンク片40の一端側(下側)と連結軸46(回転駆動型アクチュエータ58の出力軸)とをキー60によって一体に固定し、回転駆動型アクチュエータ58により、連結軸46を回転させるようになっている。回転駆動型アクチュエータ58はギヤドモータ等の減速機付電動機、エア又は油圧モータ等が用いられる。前記第2ストッパ駆動機構24は上記のような構成になっている。
【0028】
前記第2ストッパ22は、第2ストッパ駆動機構24の進退可動アーム52の先端側(図2、6の右側)にロックボルト62により締付け固定され、また、前記したように、第1ストッパ16に対し、一方の電線14、15の進入方向Xと逆方向に該電線14、15の芯線14a、15aの重ね合わせ長に相当する間隔をおいて第1ストッパ16と対向するように設けられる。
【0029】
そこで、第2ストッパ駆動機構24の回転駆動型アクチュエータ58を駆動して連結軸46を図6において時計方向へ90度だけ回転させると、これと一体の連結小リンク片40が実線位置まで右側に傾動し、これと平行四辺形リンクを形成している連結小リンク片42も同様に実線位置まで同一角度で右側に傾動する。これと同時に、進退可動アーム52がフレーム12の上面と平行状態を維持しながら、図6の左側の2点鎖線位置P(低位置)から2点鎖線位置Q(高位置)まで右側に向かって斜め上向きに上昇して前進させ、該位置Qから実線位置R(2点鎖線位置Pと同じ高さ位置)まで右側に斜め下向きに下降して前進させる軌跡を描いて移動する。従って、前記第2ストッパ22も同様な軌跡を描いて移動し前進する(前記ストッパ位置C)。第2ストッパ駆動機構24の回転駆動型アクチュエータ58を逆転させて、連結軸46が反時計方向に90度回転させれば、進退可動アーム52が前記軌跡と逆方向の軌跡を描いて前記2点鎖線位置Pに戻って後退し、第2ストッパ22も同様な軌跡を描いて移動し後退する(前記非ストッパ位置D)。
【0030】
第2ストッパ駆動機構24は、前記一方の電線14、15の芯線14a、15aをストッパ位置Aに位置する第1ストッパ16に当接し、電線14、15をクランプ部26で固定した後に駆動させ、進退可動アーム52を介して第2ストッパ22を前記ストッパ位置Cまで前進させる。このとき、第2ストッパ22は電線14、15の上部を跨ぐように覆い被さり、電線上部に接触してこれを押さえる。
【0031】
この際、第2ストッパ駆動機構24が平行四辺形リンクメカニズムを採用しているので、第2ストッパ22が斜め上方から斜め下方に前進下降する。そうすると、第2ストッパ22には該電線を縦方向及び横方向から押さえる分力が作用することになり、前記一方の電線14、15の形状、大きさが種々異なっても、これとの間に隙間が形成されず、この電線に都合よく接触する。従って、第2ストッパ22が電線14、15を変形させたり、傷付けたりすることなく、この電線の上部に該ストッパ22を正しく、また容易に配置することができ、他方の電線20の芯線20aを電線14、15の芯線14a、15aに正しく重ね合わせて溶接位置決めすることが容易になる。
【0032】
クランプ部26は、図2及び図3に示すように、横方向に対向して配置される2個のクランプ爪64、64からなっている。このクランプ爪64、64の対向する内面にはそれぞれV溝64aが、また、幅方向(電線の進入方向)には多数のくし歯64bが形成されている。このクランプ爪64、64は電線を開放する開位置と電線を把持する閉位置との間を離間接近移動させるエアチャック、ねじ、カム又はリンク機構等の電動又は流体圧により作動する駆動源が内蔵されている。
【0033】
次に本発明の溶接治具10を用いて前記電線14、15、20を重ね合わせて溶接する場合に、該電線の重ね合わせ位置決め及び先端位置揃えを行う方法について、図7を参照しながら説明する。先ず、一方の、例えば、2本の電線14、15の絶縁被覆を剥ぎ取って、芯線14a、15aを露出させておく。また、この電線に接合される、他方の、例えば、1本の電線20の絶縁被覆を剥ぎ取って芯線20aを露出させておく(図7(ハ)参照)。
【0034】
次に、図7(イ)に示すように、溶接治具10の第1ストッパ駆動機構18により、第1ストッパ16をストッパ位置Aまで前進させる。そして、電線14、15を進入方向Xから進入させて、その芯線14a、15aの先端を第1ストッパ16に当接させ、芯線の溶接位置決めを行う。即ち、芯線14a、15aの重ね合わせ位置を設定し、且つ、芯線14a、15aの先端位置を揃える。なお、第2ストッパ22は第2ストッパ駆動機構24により非ストッパ位置Dまで後退させておく。
【0035】
次に、前記芯線14a、15aの溶接位置決め終了後、図7(ロ)に示すように、電線14、15をクランプ部26で把持してクランプし、該電線の位置ずれを防止する。その後、第1ストッパ駆動機構18により、第1ストッパ16を非ストッパ位置Bまで後退させ、第2ストッパ駆動機構24により、第2ストッパ22を、前記芯線14a、15aを跨いで覆い被さるように、ストッパ位置Cまで前進させる。
【0036】
次に、図7(ハ)に示すように、他方の電線20を進入方向Yから進入させて、その芯線20aの先端を第2ストッパ22に当接させ、芯線20aの溶接位置決めを行い、即ち、芯線20aの重ね合わせ位置を設定し、電線20を図示しないクランプ部で把持してクランプする。これにより、電線14、15の芯線14a、15a及び電線20の芯線20aを正しい位置に整列して重ね合わせることが可能になる。
【0037】
その後、第2ストッパ22を非ストッパ位置Dまで後退させ、これら芯線の重ね合わせ部を超音波溶接、抵抗溶接、レーザビーム溶接等を行う溶接装置28(図1等参照)により、溶接して接合(接続)する。接合終了後、これら電線を溶接治具10から取り除いて、次の電線の重ね合わせ溶接の作業に備える。
【0038】
なお、この溶接治具10では、対象とする被溶接材が自動車、機器用ワイヤーハーネスの電線であったが、それ以外の電線や導電性金属材、又は導電を目的としない他の金属線条材にも適用できるものである。また、前記使用方法の説明では、前記芯線14a、15aの溶接位置決め終了後、電線14、15をクランプ部26で把持してクランプしたが、予め電線14、15を別のクランプ部でクランプしておき、このクランプ部で電線14、15を進入方向Xへ移動させて芯線14aの先端を第1ストッパ16に当接するようにしてもよい。更に、他方の電線20の芯線20aの先端を第2ストッパ22に当接した後、電線20をクランプしたが、電線20を予め別のクランプ部でクランプし、このクランプ部を進入方向Yへ移動させて第2ストッパ22に当接するようにしてもよい。
【0039】
図8、9に示すものは、図1乃至7における一方の電線14と他方の電線20の各端末における重ね合わせ溶接部と、所定の中間位置で絶縁被覆を剥ぎ取って芯線66a、68aを露出させて形成した中間皮剥ぎ部67、69を有する電線66、68(被溶接材)の該中間皮剥ぎ部67、69とを溶接して接合する場合の溶接治具65を示す。
【0040】
この溶接治具65は、前記溶接治具10(図1乃至6参照)において、更に、前記中間皮剥ぎ部67、69を有する電線66、68の該中間皮剥ぎ部67、69の溶接位置を揃えるくし歯状揃え部材70と、該部材70で中間皮剥ぎ部67、69の溶接位置が揃えられた電線66、68を把持し、前記電線14、20の端末の重ね合わせ溶接位置(図1、7等における第1ストッパ16と第2ストッパ22間の領域)に対向する位置まで移動させて溶接の位置決めを行う中間皮剥ぎ部位置決め手段72とを備える。なお、前記溶接治具10と同一構成、機能を有する構成部品には同一符号を使用し、重複を避けるため詳細説明を省略する。
【0041】
この溶接治具65のくし歯状揃え部材70は、図10に示すように、矩形板状体70aの上部に複数のくし歯70bが所定ピッチ間隔で形成されたもので、フレーム12にL型ブラケット76で前記電線66、68等の長手方向へ位置調整可能に取り付けられる。そして、該ブラケット76が所定位置に固定されていると、中間皮剥ぎ部位置決め手段72で中間皮剥ぎ部67、69を有する電線66、68を前記電線14、20の端末の重ね合わせ溶接位置に対向する位置まで迅速、且つ、容易に移動できる。
【0042】
くし歯状揃え部材70で中間皮剥ぎ部67、69の溶接位置を揃えるには、図8乃至10のくし歯状揃え部材70のくし歯70bに中間皮剥ぎ部67、69の芯線66a、68aを挿入し、電線66、68を例えば図8、9で右側方向へ移動させて、中間皮剥ぎ部67、69の左側段剥ぎ端面を矩形板状体70aの左側側面に当接させることにより行う。
【0043】
中間皮剥ぎ部位置決め手段72は、図8、9に示すように、くし歯状揃え部材70と図1乃至7に示す溶接治具の第1ストッパ16及び第2ストッパ22とを結ぶ線とほぼ平行な向きに、フレーム12に配設されたスライドレール78と、スライドレール78にスライド自在に装着されたスライドブロック体80と、スライドブロック体80の上部に該ブロック体80に内蔵された昇降機構(図示せず)を介して設けられ、中間皮剥ぎ部67、69を有する電線66、68を、ねじ、ばね、流体圧、マグネット等によりスライドブロック体80に固定する把持部材82と、くし歯状揃え部材70で中間皮剥ぎ部67、69の溶接位置が揃えられた電線66、68を把持部材82で把持したスライドブロック体80を、前記電線14、20の端末の重ね合わせ溶接位置に対向する位置まで移動させる流体圧シリンダ、ねじ移動機構、電動機駆動のチェーン、べルト移動機構等の移動機構84で構成される。なお、くし歯状揃え部材70及び中間皮剥ぎ部位置決め手段72の前後方外側位置におけるフレーム12には、前記電線66、68をほぼ水平状態に保持する支持部材74、74が設けられている。
【0044】
次に溶接治具65の使用方法を説明する。先ず、図8、9に示すように、中間皮剥ぎ部67、69を有する電線66、68を支持部材74、74でほぼ水平状態に保持すると共に、中間皮剥ぎ部67、69の芯線66a、68aをくし歯状揃え部材70のくし歯70b(図10参照)に挿入する。そして、前記電線66、68を例えば図8、9で右側方向へ移動させて、中間皮剥ぎ部67、69の左側段剥ぎ端面を矩形板状体70aの左側側面に当接させることにより、中間皮剥ぎ部67、69の溶接位置を揃える。
【0045】
次に、くし歯状揃え部材70で中間皮剥ぎ部67、69の溶接位置が揃えられた電線66、68を把持部材82でスライドブロック体80に把持し、把持部材82を図示しない昇降機構により所定量上昇させて、電線66、68及び中間皮剥ぎ部67、69を支持部材74、74及びくし歯状揃え部材70から外す。その後、図11に示すように、スライドブロック体80を移動機構84によりスライドレールに沿って矢印方向へ走行させ、中間皮剥ぎ部67、69を前記電線14、20の端末の重ね合わせ溶接位置(図1、7等における第1ストッパ16と第2ストッパ22間の領域)に対向する位置まで移動させる。
【0046】
次に、図12(イ)に示すように、電線66、68の中間皮剥ぎ部67、69を、第1ストッパ16及び第2ストッパ22間における前記電線14、20の端末の重ね合わせ溶接位置に位置決めする。なお、第1ストッパ16及び第2ストッパ22はそれぞれ非ストッパ位置B、Dまで後退させておく。
【0047】
次に、図12(ロ)に示すように、第1ストッパ16を第1ストッパ駆動機構18(図1等参照)により非ストッパ位置Bからストッパ位置Aまで前進させつつ下降させ、前記中間皮剥ぎ部67、69の芯線66a、68aの頭部を軽く押える。
【0048】
次に、図12(ハ)に示すように、一方の電線14を進入方向Xから進入させて、その芯線14aの先端を第1ストッパ16に当接させ、芯線の溶接位置決めを行う。即ち、芯線14aの重ね合わせ位置を設定する。なお、第2ストッパ22は第2ストッパ駆動機構24(図1等参照)により非ストッパ位置Dに後退させておく。
【0049】
次に、前記電線14の芯線14aの溶接位置決め終了後、図12(ニ)に示すように、電線66、68、14をクランプ部26で把持してクランプし、これら電線の位置ずれを防止する。その後、第1ストッパ駆動機構18により、第1ストッパ16を非ストッパ位置Bに後退させ、第2ストッパ駆動機構24により、第2ストッパ22を、前記芯線66a、68a、14aを跨いで覆い被さるように、非ストッパ位置Dからストッパ位置Cまで前進させる。
【0050】
次に、図12(ホ)に示すように、他方の電線20を進入方向Yから進入させて、その芯線20aの先端を第2ストッパ22に当接させ、芯線20aの溶接位置決めを行い、即ち、芯線20aの重ね合わせ位置を設定し、電線20を図示しないクランプ部で把持してクランプする。これにより、電線14、20の芯線14a、20aと電線66、68の芯線66a、68aとを正しい位置に整列して重ね合わせることが可能になる。
【0051】
その後、図12(へ)に示すように、第2ストッパ22を非ストッパ位置Dに後退させ、これら芯線の重ね合わせ部を超音波溶接、抵抗溶接、レーザビーム溶接等を行う溶接装置28(図1等参照)により、溶接して接合(接続)する。接合終了後、これら電線を溶接治具65から取り除いて、次の電線の重ね合わせ溶接の作業に備える。
【0052】
なお、この溶接治具65では、対象とする被溶接材が自動車、機器用ワイヤーハーネスの電線であったが、それ以外の電線や導電性金属材、又は導電を目的としない他の金属線条材にも適用できるものである。また、この溶接治具65の使用方法の説明では、前記電線14の芯線14aの溶接位置決め終了後、電線14をクランプ部26で把持してクランプしたが、予め電線14を別のクランプ部でクランプしておき、このクランプ部で電線14を進入方向Xへ移動させて芯線14aの先端を第1ストッパ16に当接するようにしてもよい。更に、他方の電線20の芯線20aの先端を第2ストッパ22に当接した後、電線20をクランプしたが、電線20を予め別のクランプ部でクランプし、このクランプ部を進入方向Yへ移動させて第2ストッパ22に当接するようにしてもよい。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載された溶接治具によると、一方の被溶接材の先端が当接してその溶接の位置決めを行う第1ストッパと、第1ストッパを一方の被溶接材の先端が当接するストッパ位置とストッパ位置から後退した非ストッパ位置との間を進退させる第1ストッパ駆動機構と、第1ストッパに対し、一方の被溶接材の進入方向と逆方向に被溶接材の重ね合わせ長に相当する間隔をおいて第1ストッパと対向するように設けられ、一方の被溶接材に重ね合わされる他方の被溶接材の先端が当接してその溶接の位置決めを行う第2ストッパと、第2ストッパを他方の被溶接材の先端が当接するストッパ位置とストッパ位置から後退した非ストッパ位置との間を進退させる第2ストッパ駆動機構と、第1及び第2ストッパに対し、更に一方の被溶接材の進入方向と逆方向側に設けられ、一方の被溶接材を把持するクランプ部とを備えているので、一方及び他方の被溶接材の重ね合わせ位置を正しく設定することができる。
【0054】
また、複数の被溶接材の先端位置を正しく揃えることができ、溶接される一方及び他方の被溶接材の重ね合わせ長が短過ぎたり、長くなり過ぎたりすることがなくなるから、被溶接材の重ね合わせ部を過不足なく溶接に必要な範囲に正しく設定することが可能になる。従って、被溶接材の重ね合わせ部が溶接不良を起こすことがなくなり、その部分の溶接強度が向上するから、引張り等の外力が加わっても、その接合部が破損する恐れがなくなり、接合部の品質及び信頼性が向上する。
【0055】
また、重ね合わせ長が必要以上に長くならないので、被溶接材の先端が外に突き出ることがなくなり、接合部がコンパクトになるほか、他の部材に引っ掛かってその部材を損傷する恐れもなくなるので、被溶接材の収納、取扱いが簡単になる。また、接合部の外周面を整形する必要がなくなるので、接合部の形成が容易になり、作業の手数を省くことができる。
【0056】
更に前記接合部の品質及び信頼性が向上するため、被溶接材の製造歩留まりが向上し、また接合部の品質チェックを簡素化でき、また接合部の形成に要する時間も短縮されるので、作業能率が向上し、良品質の溶接製品を低価格で量産化することが容易となる。
【0057】
また、本発明の溶接治具を使用すると、その接合部の接合状態が安定し、且つ、しっかりするので、被溶接材が電線、又は導電性金属線条材の場合には、接触抵抗が増加せず、振動等で導通不良を起こすこともなくなり、これらを利用したシステム、設備、装置等の電気系統の故障を防止し、信頼性及び耐久性を向上させることができる。
【0058】
次に、本発明の請求項2に記載された溶接治具は、請求項1記載のものにおいて、中間皮剥ぎ部を有する被溶接材の中間皮剥ぎ部の溶接位置を揃えるくし歯状揃え部材と、該部材で中間皮剥ぎ部の溶接位置が揃えられた被溶接材を把持し、請求項1記載の被溶接材の端末の重ね合わせ溶接位置に対向する位置まで移動させて溶接の位置決めを行う中間皮剥ぎ部位置決め手段とを更に備えている。このような構成によると、被溶接材の端末の重ね合わせ部と中間皮剥ぎ部とを溶接して接合する場合に、中間皮剥ぎ部を被溶接材の端末の重ね合わせ溶接位置に正しく対向させることが可能になり、重ね合わせ部と中間皮剥ぎ部の接合部が溶接不良を起こさず、接合部の溶接強度が向上するから、接合部の品質及び信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶接治具の基本的構成を示す図で、(イ)は平面概要図、(ロ)は斜視概要図である。
【図2】本発明に係る溶接治具の具体的な構成を示す平面図である。
【図3】図2に示す溶接治具の正面図である。
【図4】図2に示す溶接治具の左側面図である。
【図5】図2に示す溶接治具において、第1ストッパ駆動機構の主要構成を示す正面図である。
【図6】図2に示す溶接治具において、第2ストッパ駆動機構の主要構成を示す正面図である。
【図7】(イ)乃至(ハ)は本発明に係る溶接治具の動作方法を工程順に示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態における溶接治具のくし歯状揃え部材及び中間皮剥ぎ部位置決め手段を示す正面図である。
【図9】図8の溶接治具の平面図である。
【図10】図8の溶接治具におけるくし歯状揃え部材の拡大正面図である。
【図11】図8の溶接治具において、中間皮剥ぎ部を有する電線の該皮剥ぎ部を電線の端末の重ね合わせ溶接位置に対向する位置まで移動させた状態の平面図である。
【図12】(イ)乃至(へ)は図8の溶接治具の動作方法を工程順に示す説明図である。
【図13】従来の方法で被溶接材を重ね合わせた状態を示す概要図である。
【図14】従来の方法で被溶接材を重ね合わせた状態の他の例を示す概要図である。
【符号の説明】
10、65 溶接治具
12 フレーム
14、15 一方の電線
14a、15a、20a、
66a、68a 芯線
16 第1ストッパ
16a 電線当接部
16b 長孔
18 第1ストッパ駆動機構
20 他方の電線
22 第2ストッパ
24 第2ストッパ駆動機構
26 クランプ部
28 溶接装置
30 直線駆動型アクチュエータ
32 ピストンロッド
34 L型のスライダ
36 案内溝
38 位置調整ボルト
40、42 連結小リンク片
44 軸受ブラケット
46、48 連結軸
50 細長スロット
52 進退可動アーム
54、56 連結軸
58 回転駆動型アクチュエータ
60 キー
62 ロックボルト
64 クランプ爪
64a V溝
64b くし歯
66、68 電線
67、69 中間皮剥ぎ部
70 くし歯状揃え部材
70a 矩形板状体
70b くし歯
72 中間皮剥ぎ部位置決め手段
74 支持部材
76 L型ブラケット
78 スライドレール
80 スライドブロック体
82 把持部材
84 移動機構
A、C ストッパ位置
B、D 非ストッパ位置
P 進退可動アームの位置(低位置)
Q 進退可動アームの位置(高位置)
X、Y 進入方向

Claims (2)

  1. 一方の被溶接材の先端が当接してその溶接の位置決めを行う第1ストッパと、第1ストッパを一方の被溶接材の先端が当接するストッパ位置とストッパ位置から後退した非ストッパ位置との間を進退させる第1ストッパ駆動機構と、第1ストッパに対し、一方の被溶接材の進入方向と逆方向に被溶接材の重ね合わせ長に相当する間隔をおいて第1ストッパと対向するように設けられ、一方の被溶接材に重ね合わされる他方の被溶接材の先端が当接してその溶接の位置決めを行う第2ストッパと、第2ストッパを他方の被溶接材の先端が当接するストッパ位置とストッパ位置から後退した非ストッパ位置との間を進退させる第2ストッパ駆動機構と、第1及び第2ストッパに対し、更に一方の被溶接材の進入方向と逆方向側に設けられ、一方の被溶接材を把持するクランプ部とを備えたことを特徴とする溶接治具。
  2. 中間皮剥ぎ部を有する被溶接材の中間皮剥ぎ部の溶接位置を揃えるくし歯状揃え部材と、該部材で中間皮剥ぎ部の溶接位置が揃えられた被溶接材を把持し、請求項1記載の被溶接材の端末の重ね合わせ溶接位置に対向する位置まで移動させて溶接の位置決めを行う中間皮剥ぎ部位置決め手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1記載の溶接治具。
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