JP3708774B2 - 型締装置の制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
射出成形機等の型締装置の成形品離型時における可動盤の移動速度制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
型締装置の従来の離型速度は、型開き速度制御用プログラム設定における最初の速度設定に基づいて制御されていた。すなわち型開き速度は、低速I→高速→低速IIのように設定・制御され、成形品は低速Iによって固定金型から離型されるとともに可動金型と一体となって固定金型から離隔されていたのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来方法によれば、離型速度である低速Iは、その速度が速いときに離型に伴って成形品に発生し易い割れ、擦り傷、白化、変形を防止するため、可及的に低速に設定することが望ましい。しかしながら低速Iを低速にすればするほど型移動に時間を要し、成形サイクルを遅延させ、成形生産性の低下を招くのである。この対策として低速Iの移動距離を少なくして高速に切換えることが行われるが、この場合には速度の切換が急激に行われるため、やはり、割れ、擦り傷等が起こることがあり、しかも速度切換時の衝撃によって成形品が可動金型から落下することもある。
【0004】
また一方、成形品がCD、DVD等のディスク基板であるときは、その板厚は1.2mmまたは0.6mmと薄いので、型締力を解除するだけで離型作用が行われる。このとき型締力の解除速度が適切でないとディスク基板の表面にしみ、もや等の外観不良が発生するのである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、可動盤すなわち金型が、成形品の冷却後の型締力保持状態かもしくは型締力解除状態の型閉位置から所定の離型位置までの複数の分割位置における所定の係数値に基づく離型速度パターン設定に従って移動するように制御して、離型速度に伴う成形品の不良を回避しつつ成形サイクル時間の短縮を実現したのである。
【0006】
【発明の実施の形態】
図面に基づき本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明を実施する射出成形機の型締装置および射出装置と制御装置の一部を示すブロック図である。図2は、本発明における離型速度パターンを種々な例をもって表したグラフ図である。
【0007】
型締装置1は、サーボモータを用いて構成した一例である。4は固定盤であり、その四隅に型締力を受けるボールネジ9をナット10により立設する。ボールネジ9は、可動盤6に遊挿し、さらに可動盤6に固着したサーボモータ8に内装し該サーボモータで駆動されるボールナットと螺合する。全てのサーボモータ8は制御装置3の出力部14からの速度信号に基づく電流によって同期して回動し、可動盤6は固定盤4に対し近接・離隔し、固定金型5と可動金型7からなる金型を型合わせ・圧締する。固定金型5と可動金型7が型合わせされたときキャビティが形成され、固定金型5に押圧する射出装置2から溶融樹脂が射出充填されて成形品11が成形される。型締装置1は、一例を示したまでであり、本実施例では固定盤4と可動盤6に架設するボールネジ9をタイバーと兼用し、個々のボールネジをサーボモータで同期駆動するが、ボールナットを歯車やベルトで連動させて一のサーボモータにより駆動する構成としてもよい。また、ボールネジを可動盤6の中心部に設けて、一のサーボモータで型締力を発生するように構成してもよい。さらに、サーボモータによらず油圧シリンダにより型締装置を構成することもできるが、油圧シリンダによる構成では低速における流量制御の精度・安定性はサーボモータによる制御に比較してかなり劣り、しかも低速から高速までの広い範囲の速度制御を一の油圧シリンダで実現することは困難であり、二以上の油圧シリンダを切換えるか組合わせるようにしなければならず、その油圧回路の変換時には型移動速度の平滑性が損なわれるので、スムーズな移動速度が得られないのである。
【0008】
制御装置3は、射出成形機の型締装置1や射出装置2等におけるアクチュエータを電気的あるいは油圧的に制御するための電気信号を、出力部14から出力させるシーケンサやアナログ・デジタルのプロセッサを含むマイクロプロセッサに基づく制御装置である。入力部13には、可動盤6の位置すなわち固定金型5と可動金型7との当接状態である型閉位置を基にした金型位置を検出する位置検出器12の信号が入力される他、各アクチュエータの位置や力の信号が入力される。位置検出器12は、磁気または光学パルス式が一般的であり、可動盤6に取付けるように示したが、金型に直接取付けることもある。MMI部15は、マンマシンインターフェイスであり、作業者が射出成形機に設定値等を入力する操作部と、作業者が射出成形機から設定値、実測値、メッセージ等の情報を得る表示部を含む。記憶部16は、MMI部15で入力した設定値やシーケンスプログラム、演算値等を記憶・格納する。入力部13、出力部14、MMI部15および記憶部16はバスラインを通じてCPU17と接続されている。
【0009】
図2に示す離型速度パターン1〜10は、成形品の冷却後の型締力保持状態かもしくは型締力解除状態の金型位置である型閉位置(0mm)から離型位置(αmm)までの型移動速度の制御結果例として表したものである。離型速度パターンのデータである離型速度パターン設定の設定値は、各パターン毎に型閉位置から離型位置αまでの距離を所定値nで分割した各分割位置における係数値をテーブルにして予め記憶部16に格納しておく。係数値は0から100までの三桁の数値である。したがって、図2の例では離型位置αはn=10で等分割されているので、各離型速度パターン毎に9個の係数が記憶部16に格納されている。すなわち、型閉位置での係数値は0、離型位置での係数値は100として固定し、その間の分割位置9点の係数値とともに結んだパターンが連続した曲線となるように係数値を適宜設定するのである。離型位置は10mm以内に設定するのが一般的であり、n=10、離型位置を10mmとすると金型位置1mm毎に速度データが変化するので、十分滑らかな離型速度が実行可能である。離型位置の大きさに応じて分割値nを、MMI部15における操作により増減することも出来る。可動盤6が離型位置からさらに固定盤4から離隔するときの速度は型開速度として設定されており、これは本発明を実施しない場合の低速Iの速度に相当する。
【0010】
離型速度パターン毎の各分割位置での速度信号は、型開速度の設定信号に前記係数値を乗じ、100で除す演算を記憶部16に格納したプログラムに従ってCPU17で演算して求められる。各離型速度パターン設定の係数値は、図2に示す代表的な離型速度パターン1〜10が形成されるように、予め記憶部16のテーブルに格納しておき、MMI部15において、成形品に応じて最適な作動が得られる離型速度パターンを選択する。なお、この代表的な離型速度パターン1〜10以外の特殊なパターンを必要とする場合は、そのパターンの係数値をMMI部15から直接入力・設定することも出来る。
【0011】
次に、離型速度制御の作動について説明する。図1に示すのは、金型が圧締され、射出充填が終了した後の状態であり、成形品11が冷却されたとき型締装置1の型締力は解除されるが、型締力解除前後の金型位置を型閉位置とする。型閉位置から離型のため可動盤6を移動させるに際し、成形品11が深い箱型形状である場合、急激な離型速度の変化は成形品の側面に擦り傷を発生させたり、樹脂の種類によっては割れ、白化、変形を生じさせる。そのような場合には離型速度パターン1〜5のように離型の程度に応じて型移動速度が加速度的に増加するパターンが好ましい。また他の別形状の成形品では6〜10のような離型速度パターンが好ましいときもある。いずれにしても、離型速度パターンによる速度制御は、離型位置からの型開速度にそのままスムーズに繋がるのである。
【0012】
成形品がCD、DVD等のディスク基板であるときは、その板厚が1.2mmまたは0.6mmと薄いので離型位置を1mm以下とし、成形品冷却後の型締力保持状態の金型位置を型閉位置としてその位置から本発明の制御を開始することにより、極めて安定した型締力解除と離型が実現出来るのである。
【0013】
【発明の効果】
本発明は離型速度を、成形品の離型状態に応じた最適な速度パターンに設定可能とするので、成形品の割れ、擦り傷、白化、変形を回避するとともに、成形サイクルを短縮させ、成形生産性の向上に寄与するのである。またディスク基板の成形では、型締力解除工程も金型位置に基づく速度制御により実行するので、ディスク基板におけるしみ、もや等の外観不良を根絶できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する射出成形機の型締装置と射出装置および制御装置の一部を示すブロック図である。
【図2】本発明における離型速度パターンを種々な例をもって表したグラフ図である。
【符号の説明】
1 ……… 型締装置
2 ……… 射出装置
3 ……… 制御装置
4 ……… 固定盤
5 ……… 固定金型
6 ……… 可動盤
7 ……… 可動金型
8 ……… サーボモータ
9 ……… ボールネジ
10 …… ナット
11 …… 成形品
12 …… 位置検出器
13 …… 入力部
14 …… 出力部
15 …… MMI部
16 …… 記憶部
17 …… CPU
Claims (1)
- 可動盤を固定盤に近接・離隔させて、成形品を成形する金型を開閉・圧締する型締装置における可動盤の移動速度制御において、
前記金型を、前記成形品の冷却後の型締力保持状態かもしくは型締力解除状態の型閉位置から所定の離型位置まで型移動させるため、制御装置は、型閉位置から離型位置までの距離を複数の分割位置に分割し、該分割位置における予め設定された係数値をテーブルにして記憶部に格納してなる複数の離型速度パターン設定のうちから成形品に応じて選択された最適な離型速度パターン設定に基づき、前記分割位置で前記係数値から速度信号を演算して求めアクチュエータを制御することを特徴とする可動盤の移動速度制御方法。
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