JP3707515B2 - アクリル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法 - Google Patents

アクリル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なアクリル基含有オルガノポリシロキサンを製造するための新規な方法に関する。
【0002】
更に詳細には、離型性コーティング剤、保護コーティング剤、撥水性コーティング剤、印刷用インキ、塗料等のコーティング分野で有用な放射線硬化型のアクリル基含有化合物の製造方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
紫外線や電子線で硬化するシリコーン組成物としては、分子中に(メタ)アクリロキシ基を含有するオルガノポリシロキサン(特公昭52−3190号公報)が公知であり、これについては更に増感剤を配合した組成物(特公昭53−36515号公報)も知られている。しかし、この種の組成物はオルガノポリシロキサン中における(メタ)アクリロキシ基の含有量が多いため、硬化被膜が硬くなり、基材への追随性が悪くなり、被膜が割れやすいといった不利があった。
【0004】
また、特開昭61−232号公報や特開昭56−86922号公報では、エポキシ基含有オルガノポリシロキサンとアクリル酸の付加によるアクリル官能性紫外線硬化型ポリシロキサンの製造方法が開示されているが、アクリル酸が未反応で残存するため、硬化被膜中に残ったカルボキシル基の影響で耐湿性や電気特性に劣り、またアクリル酸の配合量を少なくすると、エポキシ基が残存するため、結果的には硬化後の表層のエポキシ基による耐候性、耐酸性等の低下が指摘されている。
【0005】
また、アクリル酸を放射線硬化性コーティング剤中に残存させない方法として、特開平5−309664号公報ではアルコキシシリル基と(メタ)アクリル基含有シラノール化合物をスズ触媒存在下で脱アルコール反応させて、(メタ)アクリル基をオルガノポリシロキサンに導入する方法が提案されている。しかしながら、この(メタ)アクリル基含有シラノール化合物は合成が困難で、かつ工業的には高価な化合物である。更に残存のスズ触媒は安全上好ましいものとは言えない。
【0006】
また、この種の(メタ)アクリル官能性オルガノポリシロキサンの製造方法については、≡Si−Cl基とヒドロキシ基含有アクリレート化合物の脱塩酸反応、カルビノール基含有シロキサンとアクリル酸クロリドの脱塩酸反応、更には≡Si−H基とアリル(メタ)アクリレートとのヒドロシリル化反応等が知られているが、副生成物が塩酸塩の除去やヒドロシリル化時の副反応による脱水素縮合等、反応が繁雑となり易い。更に、反応が多段階になるため、工業的に安価かつ簡便な製造方法とは言えない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、安価かつ容易な方法でアクリル基をシロキサンに導入することができ、従来の(メタ)アクリル官能性オルガノポリシロキサンの製造方法を解決した、可撓性に優れた硬化物を形成し得、他の(メタ)アクリル系化合物との相溶性が良好な、紫外線硬化性のアクリル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下記一般式(3)で示されるアクリル化合物と下記一般式(4)で示される両末端がアミノ基であるオルガノポリシロキサン化合物とを付加反応させることにより、下記一般式(1)で示される新規なアクリル基含有化合物が得られることを知見した。
【0009】
【化5】
Figure 0003707515
(但し、式中R1は炭素数2〜10の二価又は三価の炭化水素基、R2は炭素数3〜10の二価の炭化水素基、R3は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を示し、mは1又は2、nは100〜1000の整数を表わす。)
【0010】
またこの場合、上記式(4)の化合物として下記一般式(5)で示されるフェニル基を含有するオルガノポリシロキサン化合物を使用することにより、下記一般式(2)で示されるアクリル基含有オルガノポリシロキサンが得られることを知見した。
【0011】
【化6】
Figure 0003707515
(但し、式中R1、R2、mは上記と同様の意味を示す。Meはメチル基、Phはフェニル基を示し、R4はメチル基又はフェニル基を示し、pは1以上、qは10以上の整数を示し、かつp+qは100〜1000である。)
【0012】
即ち、本発明者らは従来の不利を解決した新規オルガノポリシロキサンを開発すべく種々検討した結果、上記一般式(1)で示されるアクリル基含有オルガノポリシロキサンを完成させたものである。また、安価で容易にアクリル基含有オルガノポリシロキサンを製造する方法として、2モル以上のジアクリレート化合物もしくはトリアクリレート化合物と両末端アミノ基含有オルガノポリシロキサンの付加反応が簡便であることを見出し、両末端アミノ基含有オルガノポリシロキサンは工業的に汎用されている材料であるため、上記方法が有用な製造方法であることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0013】
本発明のオルガノポリシロキサンは、シロキサン鎖が100〜1000という直鎖状でありその両末端にアクリル基を有していることから放射線での硬化性に優れ、他の(メタ)アクリル系化合物に相溶し、硬化後の可撓性付与に優れる。更に式(2)のフェニル基を含有するアクリル基含有オルガノポリシロキサンを用いることにより、放射線硬化後の被膜透明性にも優れる。
【0014】
従って、本発明は、上記一般式(3)と(5)の化合物を付加反応させることを特徴とする式(2)のアクリル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法を提供する。
【0015】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明の新規アクリル基含有オルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で示されるものである。
【0016】
【化7】
Figure 0003707515
(但し、式中R1は炭素数2〜10、特に2〜6の二価又は三価の炭化水素基、R2は炭素数3〜10、特に3〜6の二価の炭化水素基、R3は炭素数1〜10、特に1〜6の一価の炭化水素基を示し、mは1又は2、nは100〜1000の整数を表わす。)
【0017】
【化8】
Figure 0003707515
【0018】
具体的には、R1として、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基、シクロへキシレン基、フェニレン基や以下に示す二価もしくは三価のアルキレン基が例示される。
【0019】
【化9】
Figure 0003707515
【0020】
2としては、炭素数3〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基などが挙げられ、具体的にはプロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基、シクロへキシレン基、フェニレン基や以下に示す炭素数3〜10のアルキレン基が挙げられる。
【0021】
【化10】
Figure 0003707515
【0022】
またRとしては、炭素数1〜10、特に1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基などが挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、β−フェニルエチル基、α−メチル−β−フェニルエチル基等が例示され、特にメチル基及びフェニル基が工業的に好ましい。また、この場合、更に他のアクリル系化合物との溶解性を高める上でフェニル基やβ−フェニルエチル基、α−メチル−β−フェニルエチル基等の芳香族系炭化水素基を含有させることが好ましい。
【0023】
シロキサン数nとしては、100〜1000が好ましく、100未満では硬化被膜の可撓性が不足し、1000を超えると他のアクリル系化合物との溶解性に乏しくなるので好ましくない。特に好ましくは150〜500の範囲である。
【0024】
更に、他のアクリル系化合物との溶解性を高める目的で、あるいは硬化被膜の透明性を高める目的で下記一般式(2)で示されるオルガノポリシロキサンが好適である。
【0025】
【化11】
Figure 0003707515
(但し、式中R1、R2、mは上記と同様の意味を示す。Meはメチル基、Phはフェニル基を示し、R4はメチル基又はフェニル基を示し、pは1以上、qは10以上の整数を示し、かつp+qは100〜1000、特に好ましくは150〜500である。)
【0026】
本発明の式(1)のアクリル基含有オルガノポリシロキサンは、下記一般式(3)で示されるジアクリレートあるいはトリアクリレート化合物の1個のビニル基と下記一般式(4)で示される両末端アミノ基含有オルガノポリシロキサンの両末端アミノ基の1個とを付加反応させることによって得られる。この場合、式(4)のオルガノポリシロキサン1モルに対し、特に2モル以上のジアクリレートあるいはトリアクリレート化合物を反応させることが好ましく、反応条件としては室温〜80℃で1〜20時間撹拌混合することにより容易に対応する付加物が得られる。
【0027】
【化12】
Figure 0003707515
(但し、式中R1、R2、R3、m、nは上記と同様の意味を示す。)
【0028】
式(4)で示される両末端アミノ基含有オルガノポリシロキサンは、工業的に量産されていて、従来のアクリル基含有オルガノポリシロキサンよりも安価に生産できるものである。式(3)のアクリル系化合物は式(4)のオルガノポリシロキサン1モルに対し2モル以上必要で、好ましくは2.5モル以上が好適である。なお、その上限は4モルとすることが好ましい。2モル未満では放射線で硬化し得るアクリル基が少なくなり、仕上り品の粘度も著しく高くなるので好ましくない。
【0029】
更に、フェニル基を含有させた両末端アミノ基含有オルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(5)で示されるものが好ましく、上記一般式(3)のアクリル系化合物2モル以上と反応させることにより対応する付加体(式(2)のオルガノポリシロキサン)が得られる。
【0030】
【化13】
Figure 0003707515
(但し、式中R2、Me、Ph、R4、m、p、qは上記と同様の意味を示す。)
【0031】
なお、一般式(3)で示されるジアクリレートあるいはトリアクリレート化合物としては、以下のものを具体例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
【化14】
Figure 0003707515
【0033】
【化15】
Figure 0003707515
【0034】
また、一般式(4)又は(5)で示される両末端アミノ基含有オルガノポリシロキサンの具体例として下記のものを挙げることができ、これらと上記式(3)のジアクリレート、トリアクリレート化合物とを反応させて、本発明のオルガノポリシロキサン得るものであるが、これらに限定されるものではない。なお、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0035】
【化16】
Figure 0003707515
【0036】
【化17】
Figure 0003707515
【0037】
本発明のオルガノポリシロキサンは、優れた紫外線硬化性又は電子線硬化性を有し、特に各種放射線硬化型コーティング剤に本発明のオルガノポリシロキサンを添加することにより硬化被膜に可撓性、滑り性、撥水性等を付与することが可能である。一般に硬くて脆いとされる放射線硬化型樹脂にフレキシビリティを与えることができ、工業的に有用な化合物である。
【0038】
従って、本発明のオルガノポリシロキサンは離型性コーティング剤、撥水性コーティング剤、保護コーティング剤、各種インキ、塗料等の分野に応用することができる。
【0039】
本発明のオルガノポリシロキサンを混合してなる紫外線硬化型樹脂は、光開始剤を添加して使用する。光開始剤として、例えば2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ベンゾイルメチルエーテル、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、キサントン、ベンゾイル、ベンジル、ナフトキノン、4−メチルアセトフェノン、アントラキノン、過安息香酸t−ブチル等を挙げることができる。
【0040】
本発明のオルガノポリシロキサンを可撓性付与剤として、一般の放射線硬化性アクリル系塗料に添加する際、添加量は1〜20重量%で機能発現がみられる。1重量%未満では殆んど可撓性が期待できず、20重量%を超えると一般アクリル塗料に相溶しにくくなるので好ましくない。
【0041】
使用される放射線としては、電子線、α線、β線、γ線、又は水銀アーク、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプから発生する紫外線などが例示される。硬化可能な線量は電子線で2〜5Mrad程度、紫外線では例えば2kWの高圧水銀灯(80W/cm)を使用し、8cmの距離から0.1〜20秒程度照射すればよい。
【0042】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0043】
〔実施例1〕
下記平均組成式(a)で示される両末端アミノシリコーン145gとネオペンチルグリコールジアクリレート8.5g(4倍モル)とを室温で8時間混合撹拌することにより、下記に示す対応する付加生成物(A)が定量的に得られた。この生成物は、粘度(25℃)1060cp、屈折率(25℃)1.4573であり、図1に示すような赤外吸収スペクトルを示した。
【0044】
【化18】
Figure 0003707515
【0045】
〔実施例2〕
下記平均組成式(b)で示される両末端アミノシリコーン249gとネオペンチルグリコールジアクリレート8.5g(4倍モル)とを室温で8時間混合撹拌することにより、下記に示す対応する付加生成物(B)が定量的に得られた。この生成物は、粘度(25℃)8750cp、屈折率(25℃)1.4856であり、図2に示すような赤外吸収スペクトルを示した。
【0046】
【化19】
Figure 0003707515
【0047】
【発明の効果】
本発明のアクリル基含有オルガノポリシロキサンは、可撓性に優れた硬化物を与え、また本発明の製造方法によれば、かかるアクリル基含有オルガノポリシロキサンを容易かつ安価に製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で得られた生成物の赤外吸収スペクトルのチャートである。
【図2】本発明の実施例2で得られた生成物の赤外吸収スペクトルのチャートである。

Claims (1)

  1. 下記一般式(3)で示される化合物と下記一般式(5)で示される化合物とを付加反応させることを特徴とする下記一般式(2)で示されるアクリル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
    Figure 0003707515
    Figure 0003707515
    (但し、式中R1は炭素数2〜10の二価又は三価の炭化水素基、R2は炭素数3〜10の二価の炭化水素基、mは1又は2を示す。Meはメチル基、Phはフェニル基を示し、R4はメチル基又はフェニル基を示し、pは1以上、qは10以上の整数を示し、かつp+qは100〜1000である。)
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