JP3707209B2 - 光ファイバ母材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、均質な光ファイバ母材を精度よく製造することができる光ファイバ母材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光ファイバ母材の製造方法としてコアとクラッドの一部からなるコア母材を延伸してガラスロッドを作製し、該ガラスロッドを回転させながら軸方向にガラス微粒子合成用バーナに対し相対的に往復移動させ、ガラス微粒子合成用バーナで合成されたガラス微粒子をガラスロッドの外周に吹き付けて堆積させてガラス微粒子堆積体を形成し、該ガラス微粒子堆積体を加熱透明化して光ファイバ母材を製造する方法が行われている。
安定した品質の光ファイバを得るためには光ファイバ母材のクラッド/コア倍率(クラッド径とコア径の比率)を一定に制御する必要があるが、上記の方法の場合、一度で所望のクラッド/コア倍率の光ファイバ母材を作製するのは難しく、余分のクラッドを取り除いたり、再度ガラス微粒子の堆積と加熱透明化を行うなどの方法によりクラッド径を再調整する方法が行われている。このような方法では歩留りが低下したり、製造に時間がかかるため、光ファイバ母材のコストが高くなるという問題があった。
【0003】
このような問題点を解決し、一度で所望のクラッド/コア倍率の光ファイバ母材を製造する方法もいくつか提案されている。例えば、特開平2−137743号公報には、ガラス微粒子堆積層の外径及び重量を測定しながらガラス微粒子の堆積を行い、これらの測定値からガラス微粒子堆積層の単位長さ当たりの重量を求め、この値が所望の値となるまでガラス微粒子の堆積を行う方法が開示されている。また、特公平3−80740号公報には、コアと第1クラッドよりなるガラスロッドを作製し、第1クラッド層の厚みが第1クラッド層と第2クラッド層の合計厚みに対して特定の割合となるように第2クラッド層の厚みの所定量を求め、重量を検知しながらガラス微粒子の堆積を行い、その所定量に達するまでガラス微粒子を堆積させる方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法においては、所望のクラッド/コア倍率が得られるガラス微粒子の重量を、ガラスロッドの径とその外周にガラス微粒子を堆積させたガラス微粒子堆積体の径とに基づいて算出し、その重量に達するまでガラス微粒子の堆積を行うようにしているので、比較的精度よく所望するクラッド/コア倍率を有する光ファイバ母材を得ることができる。しかしながら、前記のガラスロッドの外周にガラス微粒子を堆積させる方法の場合、ガラス微粒子堆積体の両端部には製品とならない非有効部が存在する。そのため、ガラス微粒子堆積体の有効部(製品となる部分)におけるクラッド/コア倍率から算出した重量では精密な制御は難しい。
また、ガラスロッドのクラッド/コア倍率は、通常かなりばらついているので、所定の設計倍率になるようガラス微粒子を堆積させて得られる光ファイバ母材の外径も大きく異なってくる。そのため、この母材から光ファイバを線引きする場合、線引き炉の構成を大きく変更したり、母材を延伸して径を揃えた後、ファイバ化する必要があった。
さらに、コア母材を延伸してガラスロッドを作製する際に、延伸ロッド径を精密に合わせるためには、一旦、電気抵抗炉で所望の延伸径やや太い径に仮延伸し、その後酸水素旋盤で所定の径に合わせて延伸するなどの2段延伸法が必要であり、コストアップの要因となっていた。
【0005】
本発明はこのような従来技術の実状に鑑み、コアガラスロッドに堆積させるガラス微粒子の必要量を精密に見積もることができ、所望のクラッド/コア倍率に制御された光ファイバ母材を安定して製造することができ、さらに必要により光ファイバ母材の外径のばらつきを小さく抑えることができる光ファイバ母材の製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決する手段として次の(1)〜(3)の態様を採る。
(1)コアとクラッドの一部からなるコア母材を延伸してガラスロッドを作製し、該ガラスロッドの外周にガラス微粒子を吹き付けて堆積させてガラス微粒子堆積体を形成し、該ガラス微粒子堆積体を加熱透明化して光ファイバ母材を製造する方法において、前記コア母材又はガラスロッドの屈折率分布から、光ファイバ特性に合わせて最終的なクラッド/コア倍率を設計し、この設計されたクラッド/コア倍率とガラスロッドの外径及び、下記式[1]と[3]と経験的に求めた下記式[4]とから、ガラス微粒子堆積体の有効部に堆積させるガラス微粒子の重量とガラス微粒子堆積体の非有効部に堆積させるガラス微粒子の重量とを見積もり、ガラスロッドへのガラス微粒子の堆積量が有効部と非有効部のガラス微粒子の見積り量の合計量になるまでガラスロッド外周へのガラス微粒子の堆積を継続することを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
【数1】
(ジャケット倍率)=(光ファイバ母材のクラッド/コア倍率)÷(ガラスロッドのクラッド/コア倍率)・・・・[1]
【数2】
(有効部重量)=ρ×π×{(ガラスロッド径)÷2×(ジャケット倍率)} 2 ×(ガラスロッド長)・・・・[3]
【数3】
(非有効部重量)=17×(ガラスロッド径)×(ジャケット倍率)−700・・・・[4]
【0007】
(2)設計したクラッド/コア倍率と、前記見積もり量に基づいて製造された光ファイバ母材のクラッド/コア倍率の実測値との差に基づいてガラス微粒子の堆積量の見積もり量を修正することを特徴とする前記(1)の光ファイバ母材の製造方法。
【0008】
(3)ガラスロッドの外径を、該ガラスロッドに設計されたクラッド/コア倍率となるようにガラス微粒子を堆積させたのち加熱透明化した際に、所望の外径の光ファイバ母材が得られる大きさとするようにコア母材の延伸を行うことを特徴とする前記(1)又は(2)の光ファイバ母材の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明においては、先ずコアとクラッドの一部からなるコア母材を延伸してガラスロッドを作製する。このガラスロッドについてプリフォームアナライザなどを用いてガラスの屈折率差、ガラスロッドのクラッド/コア倍率(ガラスロッド倍率)などを測定し、カットオフ波長、モードフィールド径などが所望の値になるよう光ファイバ母材のクラッド/コア倍率(なお、本明細書においては特に断らない限りクラッド/コア倍率は光ファイバ母材のクラッド/コア倍率を示す)の設計を行う。次いでガラスロッド倍率と設計したクラッド/コア倍率とから[1]式によりジャケット部(ガラスロッド上に堆積させたガラス微粒子層に相当する)の径のガラスロッドの径に対する倍率(ジャケット倍率)を求める。
【数1】
(ジャケット倍率)=(クラッド/コア倍率)÷(ガラスロッド倍率)・・・[1]
【0010】
次に、ガラスロッド径とジャケット倍率からガラス微粒子堆積体の有効部重量と非有効部重量とを算出し、それに基づいて[2]式により堆積させるガラス微粒子の重量(設計スス重量)を求める。ここで、有効部重量とは[3]式で表される量である。また、非有効部重量とはガラスロッド径とジャケット倍率とに依存し、経験的に決定される量であって、一例を示せば[4]式により算出することができる。さらに、スス総重量を[5]式のように定義する。なお、ρは光ファイバ母材の密度を表し、通常は石英ガラスの密度(2.2g/cm3 )である。
【数2】
(設計スス重量)=(有効部重量)+(非有効部重量)
−(ガラスロッド総重量)・・・・[2]
(有効部重量)=ρ×π×{(ガラスロッド径)÷2×(ジャケット倍率)}2
×(ガラスロッド 長)・・・・[3]
(非有効部重量)=17×(ガラスロッド径)×(ジャケット倍率)−700 ・・・・[4](スス総重量)=(有効部重量)+(非有効部重量)・・・・[5]
【0011】
さらに、このとき得られた光ファイバ母材の実測ジャケット倍率と設計ジャケット倍率との差に基づいて、次回以降の非有効部重量の見積もり量を修正することにより、より精度の高い光ファイバ母材の作製が可能となる。
【0012】
また、所定のジャケット倍率となるように作製した光ファイバ母材の外径は、スス付けする前のガラスロッド径に大きく依存する。そのため、製造する光ファイバ母材の外径を予め定めておき、その外径(設計外径)とジャケット倍率からガラスロッド径を求め、その径になるようにコア母材を延伸してガラスロッドを作製するようにすれば、得られる光ファイバ母材の形状が安定し、後工程での延伸を行うことなくファイバ化を行うことができ効率的である。 さらに、このようにすることにより、スス付けの際の形状もほぼ一定となるので、前記のようなガラス微粒子堆積量の見積もりも容易となる。
【0013】
【実施例】
以下実施例により本発明の方法をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
多重管バーナ2本を用い、コア用バーナにはガラス原料としてSiCl4 、GeCl4 、また、クラッド用バーナにはガラス原料としてSiCl4 を供給し、酸水素火炎中で加水分解反応を生ぜしめることによりコア/クラッドからなる外径150mmの多孔質母材を製造した。この母材を公知の方法で脱水、透明化してガラス化し、外径72mmの焼結体(コア母材)を得た。
該焼結体をプリフォームアナライザで屈折率分布、クラッド/コア倍率(比率)を測定し、必要なジャケット倍率を計算したところ3.0倍となった。この計算結果とジャケット層合成後の設計焼結径90mmとすることからコア母材の設計延伸径を30mmとし、電気抵抗炉で延伸したが実際の仕上がりガラスロッド径は28〜32mmの間でばらつきを生じた。そこで、各々の仕上がりガラスロッド径に対して、予想される焼結体外径からその非有効部重量を、経験的に得られた関係式を用いて見積もり、計算で求めた有効部の重量と合わせて設計スス重量を算出し、その重量になるまでスス付けを継続した。ガラスロッドは600mmずつを用いた。
【0014】
ここで目標とするスス重量のうち、有効部(外径定常部)についてはガラスロッド径と設計ジャケット倍率とから算出できるが、非有効部(外径非定常部)は形状が複雑なため計算では算出できず、経験的に求めた式を使用する。この経験式は各スス付け条件、ガラスロッド径、ジャケット倍率により異なるが、本実施例1〜3においては前記[4]式のような関係にあり、これを用いて設計スス重量を決めた。得られた光ファイバ母材の特性を表1に示す。
【0015】
【表1】
Figure 0003707209
【0016】
得られたガラス微粒子堆積体は高温の炉で脱水、透明化を行ったところ、焼結径が85〜96mmとなった。これらの母材を実施例1の線引き炉で線引きしたところ、特性の安定した光ファイバが得られた。
従来法では電気抵抗炉で目標ガラスロッド径よりやや太めに延伸し、続いて酸水素旋盤にて設計ガラスロッド径に合わせる延伸を行う2段階延伸で製造していたが、本発明の方法によればガラスロッド径は若干ばらつくものの、仕上がった実測延伸径に対応して任意に所望のジャケット層を合成することが可能となり、工程省略によるコスト低減効果が大きい点で有効となる。
【0017】
(実施例2)
設計ジャケット倍率がそれぞれ3.5倍、4.0倍及び4.5倍の3本のコア母材を用意し、焼結後の径が90mmとなるようにコア母材を延伸してガラスロッド(長さ800mm)を作製した。設計したスス重量になるまでスス付けを継続し、得られたスス体を高温に保った炉内で保持し、脱気、透明化を行ったところ表2に示すとおり、良好な光ファイバ母材が得られた。ジャケット倍率もほぼ設計どおりになり、外径も安定していた。
また、この光ファイバ母材を90mmφ用の線引き炉で線引きしたところ、特性の安定した光ファイバが得られた。
【0018】
【表2】
Figure 0003707209
【0019】
(実施例3)
実施例2において設計倍率4倍のガラスロッドを用いた場合、有効部重量は設計値に対して700g軽く、非有効部重量は設計値に対して630g重くなっていたことがわかった。そこで、非有効部重量を700g大きくなるように補正し、重量12710gを設計重量としてスス付けを行った。実施例1と同様に高温の炉で脱気、透明化を行い光ファイバ母材を得た。この母材は母材径が91mm、ジャケット倍率が3.99倍と特性は良好であった。また、実施例1と同じ線引き炉で線引きしたところ、特性の安定した光ファイバが得られた。
【0020】
(比較例1)
実施例2で用いた3種類のロッドを均一な径(25mm)に延伸し、それぞれ所定のジャケット倍率になるようにすす合成を行った。そのとき得られた光ファイバ母材の特性を表3に示す。
表2に示すように実際に得られた光ファイバ母材の焼結後の径は87mmから113mmまで変動し、その結果、目標倍率3.5倍に設計した光ファイバ母材は実施例1に記載した線引き炉で線引きできたが、4.0倍、4.5倍に設計した光ファイバ母材はそのままでは線引き炉に入らなかったので延伸機でいったん母材外径を90mmにし、その上で線引きを行った。特性を評価したところ問題はなかったが、ファイバ化を行う際に延伸の工程が必要になったためその分ファイバの生産性が悪くなり、コストが上がってしまった。
【0021】
【表3】
Figure 0003707209
【0022】
【発明の効果】
本発明の方法によれば次のような効果がある。
(1)予めガラス微粒子の必要堆積量を有効部と非有効部の堆積量に分けて見積もることによって見積もり量の精度を上げることができ、この見積もり量にあわせてガラス微粒子の堆積を行わせることで、設計値に近い特性の光ファイバ母材を安定して製造することができる。
(2)母材毎の非有効部の重量を順次次回以降の製造にフィードバックすることにより、製造する母材の径を安定させ、かつ、必要堆積量の見積もりに製造毎のゆるやかなばらつきに対する修正を加えることにより、より高精度にクラッド/コア倍率を設計値に合わせることができる。
(3)製造する光ファイバ母材の目標形状(外径)に合わせて、ガラスロッドの延伸径を決定することにより、得られる光ファイバ母材の外径をほぼ均一にすることができ、堆積量の見積もりや堆積の制御が容易となり、光ファイバへの線引きも容易となる。

Claims (3)

  1. コアとクラッドの一部からなるコア母材を延伸してガラスロッドを作製し、該ガラスロッドの外周にガラス微粒子を吹き付けて堆積させてガラス微粒子堆積体を形成し、該ガラス微粒子堆積体を加熱透明化して光ファイバ母材を製造する方法において、前記コア母材又はガラスロッドの屈折率分布から、光ファイバ特性に合わせて最終的なクラッド/コア倍率を設計し、この設計されたクラッド/コア倍率とガラスロッドの外径及び、下記式[1]と[3]と経験的に求めた下記式[4]とから、ガラス微粒子堆積体の有効部に堆積させるガラス微粒子の重量とガラス微粒子堆積体の非有効部に堆積させるガラス微粒子の重量とを見積もり、ガラスロッドへのガラス微粒子の堆積量が有効部と非有効部のガラス微粒子の見積り量の合計量になるまでガラスロッド外周へのガラス微粒子の堆積を継続することを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
    Figure 0003707209
    Figure 0003707209
    Figure 0003707209
  2. 設計したクラッド/コア倍率と、前記見積もり量に基づいて製造された光ファイバ母材のクラッド/コア倍率の実測値との差に基づいてガラス微粒子の堆積量の見積もり量を修正することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
  3. ガラスロッドの外径を、該ガラスロッドに設計されたクラッド/コア倍率となるようにガラス微粒子を堆積させたのち加熱透明化した際に、所望の外径の光ファイバ母材が得られる大きさとするようにコア母材の延伸を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ母材の製造方法。
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