以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る光ファイバ母材製造方法を説明するフローチャートである。また、図2は、本実施形態に係る光ファイバ母材製造方法を説明する工程図である。この図2には、略円柱形状を有する中間母材1A〜1Cの中心軸を含む断面が示されている。
先ず、中間母材準備工程(ステップS1)において、中間母材1Aが準備される(図2(a))。ここで用意される中間母材1Aは、コア部11とクラッド部12とを有し、例えば、GeO2が添加された石英ガラスからなるガラスロッドを、フッ素が添加された石英ガラスからなるガラスパイプに挿入し、コラプス法により製造したものである。この他、中間母材1Aは、OVD法またはMCVD法により作製されたものであってもよい。この中間母材1Aの外周部は後述するように研削されるため、クラッド部12には研削のための十分なマージンがある。
次に、屈折率分布測定工程(ステップS2)において、中間母材1Aの長手方向に沿った複数の位置それぞれにおいて中間母材1Aの径方向の屈折率分布が測定される(図2(b))。ここで、測定が行われる位置とは、最終製造物である光ファイバの長さに換算して、隣合う2つの位置の間隔が1km以上となる複数の位置である。また、この測定には、プリフォームアナライザ等の非破壊屈折率分布測定装置が使用される。これにより、中間母材1Aの長手方向に沿った複数の位置それぞれにおける中間母材1Aの径方向の屈折率分布が測定され、各位置での中間母材1A断面内の屈折率分布形状が取得される。
続けて、屈折率分布測定工程の後の外径形状画定工程(ステップS3)において、目標とすべき特性を有する光ファイバを実現可能な光ファイバ母材が製造されるよう、上記屈折率分布測定工程の結果に基づいて中間母材1Aの外径形状が画定される(図2(c))。この図2(c)には、画定された外径形状が破線で示されている。このとき、中間母材1Aの長手方向に沿った複数の位置それぞれにおける屈折率分布測定結果に基づいて、例えば有限要素法が用いられて、線引後の光ファイバの特性(例えば波長分散や分散スロープなど)が予想される。この得られた予想特性が目標特性と異なる場合には、このずれを補償するように中間母材1Aが各位置で有すべきコア部11及びクラッド部12の外径が画定される。この画定には、このような処理に適したソフトウェア等を搭載したコンピュータ等が好適に使用され得る。これにより、中間母材1Aのクラッド部12の形状が有すべき外径形状へと画定されるとともに、研削される部分及びその研削量が決定される。
この外径形状画定工程(ステップS3)について更に具体的に説明すると以下のとおりである。例えば、非ゼロ分散シフト光ファイバの場合には波長分散が所望値となるように、分散シフト光ファイバや高非線形性分散シフト光ファイバの場合にはゼロ分散波長が所望値となるように、分散補償光ファイバの場合には分散スロープと波長分散との比が所望値となるように、中間母材1Aの長手方向の各位置に対応する線引後の光ファイバの長手方向の各位置でのコア部の径2aが算出される。カットオフ波長、モードフィールド径および実効断面積などの他の特性が所望値となるように線引後の光ファイバのコア部の径2aが算出されてもよい。
そして、この算出された光ファイバのコア部の径2aと、中間母材1Aの長手方向の各位置で測定されたコア部11の径2Aとから、「2B=C×2A/2a」なる式に基づいて、中間母材1Aの長手方向の各位置での外径2Bが画定される。ここで、Cは、係数であって、ある中間母材1Aの長手方向において一定の値である。これにより、中間母材1Aの外径部の形状は、光ファイバ母材または中間母材として有すべき外径形状へと画定されるとともに、研削される部分及び研削量が決定される。なお、屈折率分布測定工程で測定されたコア部の径と外径との比が長手方向で一定となるように、中間母材1Aの外径を画定しても良い。
以上の手順の後、研削工程(ステップS4)において、上記の外径形状画定工程において画定された外径形状となるよう中間母材1Aの外周が研削され、研削後の中間母材1Bが作成される(図2(d))。より具体的には以下のとおりである。中間母材1Aが数値制御型旋盤の所定の位置に取り付けられる。そして、上記の外径形状画定工程における計算の結果は、当該旋盤の入力装置のデータ形式に合せて加工された後、入力装置を通して当該旋盤の制御部に入力される。
このとき、入力されるデータの数は、上述の通り、光ファイバの長さに換算して1km以上あたりに1点といった位置の数に等しい。また、このとき、当該旋盤には、複数の位置で画定されたクラッド部形状に基づいて、複数の位置の間の領域におけるクラッド部形状を直線補間又は所定の関数でフィッティングして求める機能を有していると更に好ましい。このような機能を用いれば、各測定位置の間において、クラッド部が有すべき形状が算出され、これに基づいて研削量がより好適に調整され得る。また、測定位置の数を減少させることが可能となり、その結果、製造に要する時間を短縮できるという効果もある。ただし、このような補間又はフィッティングによる複数の位置間でのクラッド部形状の画定は、上述のコンピュータにより行われてもよい。
データの入力等の準備を終えた後、数値制御型旋盤により中間母材1Aの外周部が研削されて、この研削後の中間部材1Bが得られる。この研削においては、数値制御型旋盤の制御部により、研削刃の動き及び中間母材の回転数等が入力されたデータに基づいて制御され、研削されるべき部分のみが研削される。
この研削工程においては、中間母材1Aは、例えば円筒研削により長手方向に沿って外周径が均一に削られのではなく、測定された屈折率分布に基づいて、または、屈折率分布から予測される光ファイバの光学特性もしくは伝送特性に基づいて、長手方向に沿って外周径が変化するよう研削される。
また、屈折率分布測定工程において測定されて外径形状画定工程において外径が画定された位置が研削工程における位置と正確に一致しないと、予測特性のばらつきの小さな光ファイバ母材を得ることはできない。そこで、屈折率分布測定工程での基準位置に油性ペンで印をつけたり傷をつけたりして、研削工程での基準位置とするとよい。
プリフォームアナライザによるコア部の径の読み取り値は、繰返し測定を4回程度実施して平均化処理を実施すれば、真値からの誤差は小さくなる。しかし、繰返し測定を数10回実施した際の分布から、一般的には±0.01mm程度の誤差を含んでいると考えられる。よって、中間母材1Aのコア部の径(2r)が大きい方がコア部の径の読み取り誤差が相対的に小さくなる。±0.01mmの読み取り誤差が存在した際には、「±0.01/2r×100[%]」の誤差が、測定の結果として存在してしまう。
また、一般的な研削工程における加工精度は、数値制御型ガラス研削旋盤において、±0.02mm程度である。よって、研削工程における中間母材1Aの外径(2B2)は大きい方が、研削加工による誤差が相対的に小さくなる。±0.02mmの加工誤差が存在する際には、「±0.02/2B2×100[%]」の誤差が、加工の結果として存在してしまう。
測定と加工の誤差はそれぞれ独立したものであるため、コア部の径(2r)と外研後の外径(2B2)との比2B2/2rを一定にすると仮定すると、2乗和の平方根が期待される誤差となる。すなわち、「±{0.0001/(2r)2+0.0004/(2B2)2}1/2=±0.01×{1/(2r)2+4/(2B2)2}1/2×100[%]」だけの相対誤差が存在することになる。この相対誤差は、±0.5%以下であることが望ましく、更に好ましくは±0.3%以下、最も好ましくは±0.1%以下であると良い。
例えば、中間母材の外径が10mmである場合には、コア部の径を2.2mm以上とすれば相対誤差が0.5%以下となり好ましく、コア部の径を4.5mm以上とすれば相対誤差が0.3%以下となりさらに好ましく、この場合には相対誤差は0.22%以下にはならない。中間母材の外径が20mmである場合には、コア部の径を2.1mm以上とすれば相対誤差が0.5%以下となり好ましく、コア部の径を3.6mm以上とすれば相対誤差が0.3%以下となりさらに好ましく、この場合には相対誤差は0.11%以下にはならない。
中間母材の外径が30mmである場合には、コア部の径を2.1mm以上とすれば相対誤差が0.5%以下となり好ましく、コア部の径を3.5mm以上とすれば相対誤差が0.3%以下となりより好ましく、コア部の径を13.5mm以上とすれば相対誤差が0.1%以下となりさらに好ましい。中間母材の外径が40mmである場合には、コア部の径を2.1mm以上とすれば相対誤差が0.5%以下となり好ましく、コア部の径を3.4mm以上とすれば相対誤差が0.3%以下となりより好ましく、コア部の径を11.6mm以上とすれば相対誤差が0.1%以下となりさらに好ましい。
中間母材の外径が60mmである場合には、コア部の径を2.1mm以上とすれば相対誤差が0.5%以下となり好ましく、コア部の径を3.4mm以上とすれば相対誤差が0.3%以下となりより好ましく、コア部の径を10.7mm以上とすれば相対誤差が0.1%以下となりさらに好ましい。一般的な中間母材の直径は、10〜60mm程度であるので、コア部の径は2.1mm以上であると望ましい。また、コア部の径を3.4mm以上であるとさらに良い。中間母材の外径は、太いほうが望ましい。勿論、測定、研削の精度が向上し誤差が低減すれば、相対誤差はその分低減するので、極めて好ましい。
続いて、研削工程の後の延伸工程(ステップS5)において、上記の研削工程において研削されて得られた中間母材1Bが実質的に一定外径になるように延伸され、延伸後の中間母材1Cが得られる(図2(e))。上記の研削工程において長手方向で径を変動させながら中間母材の外周を研削する場合には、この研削工程の後に延伸工程が行われて中間母材が均一径とされる。研削工程で「2B/2A×2a」または「2B/2A」が一定となるように外周が研削されているため、実質的に均一外径(最終的に光ファイバ化される範囲(有効部)の外径の変動誤差が±0.5%以内程度)となるように延伸されて中間母材1Cが作成されると、中間母材1Cの周囲に長手方向で屈折率分布が変動していないガラス材料を均一の厚みで設けるだけで、特性変動が小さいと予測される光ファイバ母材を容易に得ることができるためである。
延伸工程後の中間母材1Cの外径は、8mm以上であり、好ましくは12mm以上であり、更に好ましくは15mm以上である。一般的な技術を用いれば延伸後の中間母材1Cの外径の変動は±0.04mm程度であるため、延伸後の中間母材1Cの外径が太いほど相対的な誤差が小さくなるからであり、外径が8mmのときは相対的誤差が±0.50%となり、外径が12mmのときは相対的誤差が±0.33%となり、外径が16mmのときは相対的誤差が±0.25%となる。その結果、中間母材または光ファイバ母材内の長手方向のコア部の径の変動が小さくなり、線引して光ファイバとした際の特性変動が小さい。延伸に用いる熱源には、たとえば、酸水素火炎が用いられる。電気炉(誘導炉や抵抗炉)、酸素を含む熱プラズマバーナ、CO2レーザであるとより好ましい。これは、酸水素火炎を用いた場合には大量に発生する水素や水分によってガラス表面が削られ、研削工程で得た中間母材の所望の形状を変化させてしまう恐れがあるためである。
なお、この延伸工程は、所望とする径よりも大きな径に延伸する仮延伸工程を少なくとも1回含むのが好適である。このような仮延伸工程を少なくとも1回含むことによって、中間母材の外径の変動を小さくすることができる。仮延伸工程は、一度だけでなく、複数回実施してもよい。仮延伸後の中間母材の外径2Fは、延伸工程前の中間母材の外径を2Dとし、延伸工程において目標とする中間母材の外径を2Eとすると、「0.9×2D<2F<2E/0.9」なる関係式を満たす径であるとよい。
ここで、中間母材の研削工程後の外径が約40mmであって長手方向に外径が±1mm変動しているようなものを延伸工程で外径15mmに延伸する場合に、仮延伸工程を実施しなかった場合には、延伸工程後の中間母材の外径は、15.1±0.2mmであって、変動率が1.3%であった。これに対して、外径25mmまで仮延伸工程を実施した後に外径15mmを目標にして延伸した場合には、延伸工程後の中間母材の外径は、15.05±0.02mmであって、変動率が0.13%であった。このように、仮延伸工程を加えることにより、延伸後の中間母材の長手方向の形状が安定なものとなる。
次に、延伸工程の後のロッドインコラプス工程(ステップS6)において、上記の延伸工程において延伸されて得られた中間母材1Cがガラスパイプ13中に挿入されてコラプスされ、中間母材1Cとガラスパイプ13とが一体化されて、これにより光ファイバ母材2またはさらなる中間母材が作成される(図2(f))。光ファイバ母材2の場合、このガラスパイプ13は、線引後の光ファイバにおいてクラッド領域の一部となるべきものである。
このクラッド領域の一部となるべき部分は、一般にVAD法やOVD法といったスートプロセスで中間母材1Cの周囲にガラス材が堆積・透明化されることでも製造され得るが、この場合には、焼結時のスートの収縮によって製造される光ファイバ母材2の外径およびコア部を含む中間母材1Cの径が長手方向に変動してしまうので、均一径に延伸した効果が小さくなってしまう。また、長手方向でのスート堆積量の変動を要因として、製造される光ファイバ母材2の外径が変動してしまう。そこで、ロッドインコラプス工程で、中間母材1Cの周囲にガラス材を設けると、コア部を含む中間母材1Cの形状はほとんど変化しないため、コア部の径もガラス材の付与の前後での変化が極めて小さく、得られた光ファイバ母材2の外径とコア部の径2Aとの比も一定に保たれる。
次に、本実施形態に係る光ファイバ母材製造方法の実施例1を実施例2とともに説明する。実施例1では、研削工程および延伸工程により外径を24mmとしたガラスロッドを円筒研削盤により外径20mmφの均一径に外周研削を実施して光ファイバ中間母材を得た。外径120mmφ、内径20mmφ、長さ650mmの石英ガラスパイプを準備し、先に得た光ファイバ中間母材をロッドとしてロッドインコラプスを実施して、光ファイバ母材を得た。この光ファイバ母材を検査した結果、図3に示される表のようになった。この光ファイバ母材は、中間母材であった領域の径2Bの変動が±0.04mmと極めて小さく、また、2D1/2B1の変動も±0.3%と小さい。
これに対して実施例2では、研削工程および延伸工程により外径を43mmφとした光ファイバ中間母材を得た。この光ファイバ中間母材の外部に公知のVAD法を用いてスス体を堆積し、公知の方法により透明ガラス化し、光ファイバ母材を得た。この光ファイバ母材を検査した結果、図4に示される表のようになった。この光ファイバ母材は、中間母材であった領域の径2B2の変動が±1.2mmと大きく、また、2D1/2B1の変動も±3%程度と大きい。
図5は、実施例1および実施例2それぞれの2D/2Bの変動を示すグラフである。このグラフに示されるように、得られた光ファイバ母材を一定外径のガラス径で線引する場合、実施例1の方がコア径の変動が小さく、所望とする特性の変動が小さい。
以上のようにして得られた光ファイバ母材2が線引きされることにより、所望の特性を有する光ファイバが容易に製造され得る。なお、ロッドインコラプス工程でさらなる中間母材を得て、これに対して第2研削工程(ステップS7)が行われもよい。この第2研削工程において研削された後の光ファイバ母材が線引されることで、長手方向に沿ってより均一な所望特性を有する光ファイバを得ることができる。
延伸工程後の中間母材1Cにおいて、ガラス表面からのガラス体の吹き飛び量や形状が長手方向で極めて均一である場合や、ガラスパイプの屈折率分布が長手方向で極めて均一である場合には、第2研削工程において例えば円筒研削によって均一径に研削しても良い。
一方、延伸時のガラス表面からのガラス体の吹き飛び量は長手方向でほぼ一定であるが、延伸工程後の中間母材1Cにおいて、径が長手方向で均一ではなく、ガラスパイプの屈折率分布が長手方向でほぼ均一である場合には、ロッドインコラプス工程で得られた中間母材の外周部を例えば数値制御型旋盤や火炎研磨(酸水素火炎、酸素/アセチレン火炎、熱プラズマ火炎など)によって、研削後の外径がそれぞれの長手位置において「延伸工程後の中間母材の外径×任意の定数」となるように、第2研削工程において研削するのがよい。
また、延伸工程後の中間母材1Cにおいて、ガラス表面からのガラス体の吹き飛び量が長手方向で均一ではなかったり、ガラスパイプの屈折率分布が長手方向で一定でなかったりするときは、ロッドインコラプス工程で得られた中間母材に対して、屈折率分布測定工程,外径形状画定工程および研削工程(第2研削工程)を再度実施しても良い。当然、第2研削工程で得られた中間母材を延伸し、ガラスパイプを準備してロッドインコラプス工程を実施し、外周を研削し、と複数回繰り返してもよい。
次に、屈折率分布測定工程(ステップS2)および外径形状画定工程(ステップS3)について更に詳細に説明する。
通常、一般的な光ファイバを得るための光ファイバ母材を製造する場合には、屈折率分布測定工程において同一点の屈折率分布を繰り返して測定する必要はない。しかし、構造が複雑であるか又はコア部の比屈折率差が1〜5%程度と高い中間母材または母材(例えば分散補償光ファイバや高非線形性分散シフト光ファイバなどの為の中間母材または母材)については、構造が複雑であることによる界面での反射の影響や、コア部の比屈折率差が高いことによる比較的大きな屈折率分布の周期的な変調(脈理)の影響で、屈折率分布測定を正確には実施できない場合がある。加えて、光ファイバとしたときのコア部の外径が1〜8μmと細いため、母材や中間母材でもコア部が細くなってしまうことから、径方向の測定位置の誤差(例えばコア部の径の読み取り誤差)が相対的に大きくなってしまう。図6は、このような測定を正確に実施できない場合がある光ファイバの屈折率分布の例を示す図である。他にも測定のショットノイズ(Shot Noise、電子などの不規則な揺らぎによる雑音)、測定環境温度、振動、ダストの付着などの原因によって、屈折率分布測定結果に誤差が発生する。通常のシングルモード光ファイバ用の光ファイバ母材の屈折率分布を測定する際には、このような測定誤差はあまり影響を与えない。しかし、分散シフト光ファイバ,分散補償光ファイバや高非線形性光ファイバなどの場合には、これらの光ファイバ用の光ファイバ母材を正確に製造する必要があり、屈折率分布の測定誤差の管理は非常に重要である。
図7は、コア径の変化率と零分散波長の変化量との関係を示すグラフである。この図には、分散シフト光ファイバDSF1(中心コアの比屈折率差が3.0%、ゼロ分散波長が1.5μm、非線形定数γが20/W/km)、分散シフト光ファイバDSF2(中心コアの比屈折率差が1.0%、ゼロ分散波長が1.5μm、非線形定数γが4.8/W/km)、および、シングルモード光ファイバSMF(中心コアの比屈折率差が0.4%、ゼロ分散波長が1.3μm、非線形定数γが1.5/W/km)、それぞれについて、コア径の変化率と零分散波長の変化量との関係が示されている。なお、各光ファイバの非線形定数γの値は、XPM法で測定した値であり、CW-SPM法で測定する場合にはXPM法の7割程度に小さくなる。
図7に示されるように、通常のシングルモード光ファイバ(例えばITU−T勧告G-652,G-654など)では、コア径が1%変動したときのゼロ分散波長の変化は0.002μmと、殆ど変化しない。これに対して、分散シフト光ファイバの場合、中心コアの比屈折率差が1%のときにはコア径1%の変化でゼロ分散波長が0.01μm変化し、中心コアの比屈折率差が3%のときにはコア径1%の変化でゼロ分散波長が0.02μm変化しており、通常のシングルモード光ファイバと比較すると、コア径の変動に対するゼロ分散波長の変動が1桁程度大きくなってしまう。
このような分散シフト光ファイバを製造する場合においても、従来は通常のシングルモード光ファイバと同様の方法を用いて中間母材の屈折率分布を測定していたため、測定精度が悪かった。この結果を用いて有限要素法などによりファイバ化した際の目標伝送特性を計算していたので、光ファイバになった際の伝送特性も誤差が大きかった。これは、分散補償光ファイバや分散フラット光ファイバなど、その他の高機能光ファイバでも同様である。
そこで、これを解決するために、屈折率分布測定工程(ステップS2)において、中間母材の長手方向に沿った複数の位置それぞれにおいて屈折率分布測定を複数回実施し、続く外径形状画定工程(ステップS3)において、これら複数回の屈折率分布測定結果について統計的処理をし各位置での屈折率分布を求め、それに基づいて中間母材の外径形状を画定するのが好適である。あるいは、複数回の屈折率分布測定結果から所望とする特性を得るための複数個の中間母材の外径形状を算出し、これらの外径形状を統計処理して中間母材の外径形状を画定するのも好適である。このように統計的な処理を施すことによって、屈折率分布測定時のランダムな誤差が減少し、より真の測定結果に近づくことができる。なお、統計的な処理とは、長手方向に沿った複数の測定位置それぞれにおける複数回の測定結果や画定した外径の平均値や中心値の算出、長手方向での区間での画定外径の平均化や多項式やスプライン近似曲線等の所定の関数へのフィッティング、長手方向における測定結果に基づく画定外径の測定位置以外への補間、などを含む。屈折率分布の測定は、中間母材の中心軸に直交する径方向の軸線に沿って行われる。この軸線は複数回の測定で、一定でもよいが、図8に示されるように回転させてもよい。複数回の測定は、好ましくは2回以上、更に好ましくは4回以上であるとよい。4回以上測定すれば、異常値が含まれていても、それ以外の測定結果を利用して統計的な処理が可能であるためより好ましい。
図9は、屈折率分布測定工程および外径形状画定工程により得られた画定外径の長手方向分布を示すグラフである。図10は、光ファイバ母材を線引して得られた光ファイバのゼロ分散波長λ0の長手方向分布を示すグラフである。また、図11は、光ファイバ母材を線引して得られた光ファイバの各位置での波長分散Dと全長での波長分散平均値Dmeanとの比(D/Dmean)の長手方向分布を示すグラフである。
ここでは、中心コア部(クラッド部に対する比屈折率差が2.9%),ディプレスト部(クラッド部に対する比屈折率差が−0.3%)およびクラッド部を有する高非線形性光ファイバ用の中間母材を用いた。そして、この中間母材の長手方向に沿った複数の位置それぞれにおいて屈折率分布測定を4回実施し、有限要素法を用いてゼロ分散波長が1550nmになるように中間母材の外径を画定し研削して、これを線引して光ファイバを製造した。
図9には、4回の屈折率分布測定結果の平均値に基づいて得られた画定外径の長手方向分布(太い実線)に加えて、各回の屈折率分布測定結果に基づいて得られた画定外径の長手方向分布(その他の4本の線)も示されている。また、図10および図11それぞれには、4回の屈折率分布測定結果の平均値に基づいて得られた画定外径の長手方向分布に従って研削した場合に加えて、1回の屈折率分布測定結果に基づいて得られた画定外径の長手方向分布に従って研削した場合、および、外周研削をしなかった場合も、示されている。
このように、各回の屈折率分布測定結果から得られる画定外径は最大約0.3mm(外径に対して1.3%)も変動しているが、これと比較して、4回の屈折率分布測定結果の統計的処理結果から得られる画定外径の変動は小さい。実際に、4回の屈折率分布測定結果を統計処理した結果を用いて中間母材の外径を画定し、その中間母材を外周研削し均一径に延伸して、ロッドインコラプス法でクラッド部を設けて母材化した。そして、この光ファイバ母材を線引して得られた光ファイバのゼロ分散波長の長手方向の変動は、ファイバ長10kmあたり±2nmであり、波長1.55μmにおける分散値の変動が±0.06ps/nm/kmと小さいものであった。特に良好な範囲においては、ファイバ長1kmの範囲でゼロ分散波長の変動が±0.25nm以下であった。
一方、1回の屈折率分布測定結果を用いて外径を画定し外周研削を実施した中間母材を母材化した場合には、線引後の光ファイバのゼロ分散波長の長手方向の変動は、ファイバ長10kmあたり±10nmであり、波長1.55μmにおける分散値の変動が±0.3ps/nm/kmであった。これは、従来の方法よりは安定であり改善はされているが、きわめて高い精度が求められる場合には歩留まりが下がってしまう。さらに、外周研削を実施しない中間母材を母材化した場合には、線引後の光ファイバのゼロ分散波長の長手方向の変動は、ファイバ長10kmあたり±40nmであり、波長1.55μmにおける分散値の変動が±1.2ps/nm/kmと極めて大きかった。なお、波長分散の長手方向の測定は、例えば文献「L. F. Mollenauer, et. al., Optics Letters, Vol.21, pp.1724-1726(1996)」に記載されている。
また、その他の特性については、波長1.55μmにおいて、分散スロープは+0.015〜+0.035ps/nm2/km程度であり、実効断面積は9.0〜12μm2程度であり、モードフィールド径は3.4〜3.9μm程度であり、偏波モード分散は0.01〜1.0ps/m1/2程度であり、伝送損失は0.45〜1.5dB/km程度であり、カットオフ波長は1.3〜1.6μm程度であった。
次に、本実施形態に係る光ファイバ製造方法および光ファイバについて説明する。本実施形態に係る光ファイバ製造方法は、上記の本実施形態に係る光ファイバ母材製造方法により製造された光ファイバ母材を線引して光ファイバを製造するものである。これにより、長手方向における特性変動の小さな光ファイバを得ることができる。特に、ファイバ外径のファイバ長さ10m毎における移動平均の変動は、ファイバ長手方向において±0.5%以下、好ましくは±0.1%以下であるとよい。
また、本実施形態に係る光ファイバは、上記の本実施形態に係る光ファイバ製造方法により製造されたものであって、波長1550nmにおいて、実効断面積が12μm2以下であり、ゼロ分散波長が1470nm以上1630nm以下であり、長さ1000mに亘っての分散変動量が±0.02ps/nm/km以内である。この光ファイバにおいて、波長1550nmにおいて分散スロープの絶対値が0.04ps/nm2/km以下であり、モードフィールド径が3.9μm以下であっても良い。
図12は、屈折率分布のある点に対する測定回数と製造される光ファイバのゼロ分散波長の変動量との関係を示す図である。ここで、複数回測定する場合は、測定毎にゼロ分散波長が1550nmになる所望の特性を実現するよう外径を計算し、その計算値の二乗平均を測定点で画定された値とした。また、測定点毎は近接する3箇所での区間平均でフィッティングして決定される外径となるように中間母材の全長に渡って外径を画定した。長手方向に均一でない画定外径となるよう、数値制御された3軸の外周研削機で研削した。その後、一定外径になるように延伸し、更に円筒研削盤で均一径に外周を研削し、表面をHF溶液で液相エッチングしてガラスロッドとし、クラッドとなるパイプ内に挿入してロッドインコラプスを実施し、得られたガラス体を更に円筒研削盤で均一径に外周を研削して母材として、この母材を線引して光ファイバを製造した。
図12中で、測定回数「0回」というのは、長手方向での外径を特には画定しなかった場合である。このように、複数回測定することにより、高非線形性分散シフト光ファイバであっても、ゼロ分散波長の変動を抑制することが可能である。また、3回以上測定すると更に好ましい。ただし、4回以上の測定は、現状の技術では、測定の精度より、外周研削や延伸などの加工の精度が不足であるので、測定回数を多くしても効果が小さい。したがって、2回〜4回の測定(特に4回の測定)が現状では好ましいが、今後、加工精度が向上すれば、5回以上の測定を行うことにより、ゼロ分散波長の変動を更に抑制することが可能であると考えられる。
光ファイバにおける非線形現象を利用する場合、実効断面積が小さいほど、非線形係数が大きくなるので望ましいが、同時にコア径が小さくなるので製造ばらつきが大きくなる恐れがある。特に、実効断面積が12μm2以下だとコア径は4μm程度以下になるため、本発明の製造方法によらない従来の製造方法では高精度に光ファイバ母材、あるいは光ファイバを製造することは困難であった。
光ファイバで発生する四光波混合を用いて波長変換を実施する際、変換光の出力強度PIは、一般的に下記の(1)式および(2)式のように表される(例えば文献「K. Inoue, J.LightwaveTechnol., Vol.10,pp.1553-1561 (1992)」を参照)。ここで、γは光ファイバの非線形係数である。Lは光ファイバの長さである。Ppはポンプ光の入射強度である。Psはプローブ光の入射強度である。αは光ファイバの伝送損失である。Leffは、光ファイバの実効長であり、下記(3)式で表される。Δβは、位相不整合パラメータであり、簡単には下記(4)式で表される。cは真空中の光速である。λpはポンプ光波長である。λsはプローブ光波長である。また、Dispはポンプ光波長における光ファイバの波長分散である。
これらの式から判るように、位相不整合パラメータΔβが小さいほど、変換光の出力強度PIは大きくなるので好ましい。理想的には、位相不整合パラメータΔβの値が0であれば、ηが最大値1となる。位相不整合パラメータΔβの値が0となるのは、ポンプ光波長における光ファイバの波長分散の値が0となるとき、すなわち、ポンプ光波長λpと光ファイバのゼロ分散波長とが完全に一致するときである。実際には、光ファイバ中の長さ方向におけるゼロ分散波長の変動によって、ポンプ光波長λpと光ファイバのゼロ分散波長とを完全に一致させるのは困難となる。
図18は、励起光波長における光ファイバの波長分散Dispと波長変換帯域との関係を示すグラフである。ここで、波長変換帯域とは、プローブ光入射強度Psおよびポンプ光入射強度Ppそれぞれが一定であるとして、プローブ光波長λsがポンプ光波長λpの非常に近傍にある場合における変換光のパワーの最大値に対して半分になるプローブ光波長の波長をλs1およびλs2(ただし、λs1<λp<λs2)としたときに、これら2波長の差「λs2−λs1」で示される値である。また、光ファイバの長さLを500mとし、光ファイバの伝送損失αを1.5dB/kmとした。波長変換帯域は、CバンドまたはLバンドをカバーすることができる40nm以上であると好ましい。このときには、図18に示されるように、励起光波長における分散値Dispの絶対値は0.02ps/nm/km以下であることが必要となる。
波長分散Dispの波長微分である分散スロープSlopeは、波長によって一定であると仮定すると、下記(5)式で表される。ここで、λzは光ファイバのゼロ分散波長である。差「λp−λz」が一定である場合には、分散スロープSlopeが小さい方が、波長分散Dispの絶対値(Δβの絶対値)が小さくなり、ηが大きくなるので、望ましい。また、分散スロープSlopeが一定である場合には、差「λp−λz」が小さい方が、波長分散Dispの絶対値(Δβの絶対値)が小さくなり、ηが大きくなるので、望ましい。
図19は、光ファイバの分散スロープと零分散波長の長手方向の変動量との関係を示すグラフである。ここで、光ファイバは、実効断面積Aeffが8〜12μm2であり、非線形係数γがXPM法での測定で17〜35/W/kmであり、コア径が長手方向で±0.01%変動する場合を想定した。この図に示されるように、分散スロープが小さいほどゼロ分散波長の変動が大きくなるという、トレードオフの関係にある。
図20は、光ファイバの分散スロープと波長分散の長手方向の変動量との関係を示すグラフである。ここで、コア径が長手方向で±0.01%変動する場合を想定した。コア径変動を±0.01%とすることにより、分散スロープの絶対値が0.017ps/nm2/km以上であれば、分散の長手方向の変化量は±0.02ps/nm/km以下となるので、ファイバ長Lが500mである場合であっても、波長変換帯域は40nm以上となり得るので好ましい。
このように、分散スロープが大きいほど、長さ方向における分散変動が小さく、波長変換帯域が広くなる場合がある。続いて、波長スロープをどの程度まで大きくできるのか調査した。ここで想定した光ファイバの屈折率プロファイルは、図21に示されるようなW型のものであり、コア部は1.5乗分布または2乗分布で近似できる構造であり、ディプレスト部の比屈折率差は−0.3%であり、コア部の径(2a)とディプレスト部の径(2b)との比Ra(=2a/2b)は0.4である。
図22は、光ファイバの諸元を纏めた図表である。この図表には順に、コア部の最大比屈折率差Δp、コア部の構造パラメータα、コア径、実効断面積Aeff、非線形屈折率n2、非線形係数γ、分散スロープSlope、および、コア径が±0.5%変動したときのゼロ分散波長の変動量、が示されている。ゼロ分散波長は1550nmであり、非線形係数γおよび分散スロープは波長1550nmにおける値である。このように、比較的単純なW型構造であっても、分散スロープは0.062ps/nm2/km程度まで大きくすることが可能である。また、α乗が小さい方が、非線形係数γは小さいが、分散スロープSlopeは大きくなる。
或いは、本実施形態に係る光ファイバは、上記の本実施形態に係る光ファイバ製造方法により製造されたものであって、波長1550nmにおいて、波長分散が−150ps/nm/km以下であり、長さ10,000mに亘って長手方向の任意の位置の波長分散Dと全長での波長分散平均値Dmeanとの比(D/Dmean)が0.8以上1.2以下である。
分散補償光ファイバは、所望の分散補償量になるように、長尺のロットから光ファイバを分割して使用する。このとき、従来の製法では、波長分散の長手方向変動が大きく、光ファイバを余分に廃却したり作業が面倒だったりした。例えば、分割後の光ファイバの平均分散が分割前よりも大きければ、分散補償量が足りなくなってしまい、分割前よりも小さければ、分散補償量が多すぎて光ファイバを再度分割しなくてはならない。このような波長分散の変動が全長での分散平均値Dmeanの20%以下であれば無駄をかなり削減でき、また、波長分散の変動が全長での分散平均値Dmeanの5%以下であれば1度の分割で十分となる。
例えば、波長1.55ミクロンにおける分散が−150ps/nm/km程度、分散/分散スロープの比が0.003nm-1程度の分散補償ファイバを製造する際、4回の屈折率分布の繰り返し測定を統計処理した結果を用いて外径を画定し、外周研削を実施した中間母材を均一径に延伸し、ロッドインコラプス法でクラッド部を設けて母材化したものを、線引した後の(長手方向の各位置での分散値)/(全長での分散の平均値)の変動は1.0±0.08程度であり、良好な範囲10km以上に亘っては1.0±0.02程度であった。
一方、1回の屈折率分布の測定結果を用いて外径を画定し、外周研削を実施した中間母材を同様に母材化したものでは、線引後の(長手方向の各位置での分散値)/(全長での分散の平均値)の変動は1.0±0.15程度であり、4回測定したものと比較すると大きかったが、十分改善されていた。
さらに、外周研削を実施しない中間母材を母材化したものは、線引後の(長手方向の各位置での分散値)/(全長での分散の平均値)の変動は1.0±0.35程度と、極めて大きかった。
分散補償ファイバとしては、波長1.55ミクロンにおける分散が−350ps/nm/km程度で分散/分散スロープの比が0.003nm-1程度、分散が−300ps/nm/km程度で分散/分散スロープの比が0.01nm-1程度、分散が−250ps/nm/km程度で分散/分散スロープの比が0.02nm-1程度の特性のスロープの補償できる分散補償光ファイバ、分散が−350ps/nm/km以下でスロープが正であるような分散だけを補償する光ファイバでも同様の効果が得られる。
次に実施例について説明する。ケースAでは外周研削を行わなかった。ケースBでは1回の屈折率分布測定をした後に外周研削を行った。ケースCでは4回の屈折率分布測定をした後に外周研削を行った。また、ケースA〜Cそれぞれで、長さ数百kmの光ファイバを製造し、そのときの波長1.55μmにおける波長分散値の分布を調査した。図13は、ケースA〜Cそれぞれの光ファイバの波長分散の分布を示す図表である。その結果、ケースCでは波長分散の分布は大きいことがわかり、ケースBでは波長分散の分布が改善され、ケースCでは更に波長分散の分布が改善されていることがわかる。ケースC,Bでは波長分散分布が低減しているために、波長分散の絶対値の製造中心値を大きくすることが可能となる。
分散補償ファイバの重要な特性として性能指数(Figure Of Merit: FOM)がある。このFOMは「波長分散/伝送損失の絶対値」で定義される。このFOMが大きい方がモジュール全体の損失を小さくすることができるが、同じプロファイルの母材を線引する際には伝送損失は同じなので、分散の絶対値が大きい方がFOMは大きくなる。また、モジュール全体の補償分散量が同じなら、光ファイバの波長分散の絶対値が大きい方が光ファイバが短くてすむ。その結果、非線形性が低減したり、低コストになったりする。このように、ケースB,Cでは、分散補償ファイバとしての性能が高いファイバを多く得ることが可能である。
次に、光ファイバのコアの比屈折率差Δと該比屈折率差Δの測定精度との関係について調査した結果について説明する。光ファイバ母材はVAD法で合成された、コアの比屈折率差Δの最大値が0.4%,0.8%,1%および3%それぞれの場合について、30回の屈折率分布の繰り返し測定を行って、比屈折率差Δの分布を調べた。このとき、測定器はYork社のプリフォームアナライザP-104が用いられた。例えば、比屈折率差Δが3%である場合には、測定した断面内の各位置における30回の比屈折率差ΔNの平均値と各測定値との差分は図14のようになり、比屈折率差Δの変動は絶対値で±0.1%程度もあることが判った。各比屈折率差Δについて標準偏差σを纏めると図15,図16のとおりとなり、比屈折率差Δが1%程度以上から分布が大きくなることが判る。
これを解決するためには、屈折率分布測定工程において屈折率分布を複数回測定し複数の測定結果を得て、これら複数の測定結果を統計的に処理し、その処理結果を用いて中間母材の外径形状を画定するとよい。このとき、複数の屈折率分布測定結果について統計的処理をし各位置での屈折率分布を求め、それに基づいて中間母材の外径形状を画定してもよいし、或いは、複数の屈折率分布測定結果から複数個の中間母材の外径形状を算出し、これらの外径形状を統計処理して中間母材の外径形状を画定してもよい。このようにすることで、測定時のランダムな誤差が統計的な処理により減少し、より真の測定結果に近づくことが期待できる。
また、中間母材の外径形状を画定するのではなく、中間母材やロッドの屈折率分布を検査する場合においても、同様である。すなわち、屈折率分布測定工程において、ロッドの長手方向に沿った複数の位置それぞれにおいて、ロッドの径方向の屈折率分布を複数回測定して、複数の測定結果を得る。続く推定工程において、上記の複数の位置それぞれにおいて、複数の測定結果を統計処理して、それにより屈折率分布の推定値を得る。そして、比較工程において、推定値と屈折率分布の設計値とを比較する。このようにすることにより、中間母材やロッドの屈折率分布を高精度に検査することができる。
屈折率分布測定工程の後、目標とすべき特性を持った光ファイバを実現可能な光ファイバ母材が製造されるよう中間母材の外径形状を画定する。この外径形状画定工程の後、画定された外径形状となるよう中間母材の外周を研削してもよいし、画定された外径形状となるよう中間母材の外周にクラッドを付与してもよい。後者の付与工程を行う場合、長手方向における外径形状に従って、長手方向においてクラッド付与の厚みを変化させても良い。
例えば、図17(a)に示されるように、中間母材1Aの屈折率分布が測定された結果に基づいて、破線で示されるような外径形状が画定された中間母材1Bを作成する場合、同図(b)〜(e)それぞれに示されるようにして、中間母材1Aの外周にクラッドを付与して中間母材1Bを作成するようにしてもよい。
すなわち、図17(b)に示されるように、OVD法により中間母材1Aの外周にクラッドを付与する場合、薄くクラッドを付与したい箇所ではバーナと中間母材との相対移動速度を速くし、厚くクラッドを付与したい箇所ではバーナと中間母材との相対移動速度を遅くするか、或いは、薄くクラッドを付与したい箇所ではバーナに供給するガラス原料流量を少なくし、厚くクラッドを付与したい箇所ではバーナに供給するガラス原料流量を多くする。
図17(c)に示されるように、複数本のバーナを用いてOVD法により中間母材1Aの外周にクラッドを付与する場合、薄くクラッドを付与したい箇所ではバーナに供給するガラス原料流量を少なくし、厚くクラッドを付与したい箇所ではバーナに供給するガラス原料流量を多くする。
図17(d)に示されるように、VAD法により中間母材1Aの外周にクラッドを付与する場合、薄くクラッドを付与したい箇所ではバーナと中間母材との相対移動速度を速くし、厚くクラッドを付与したい箇所ではバーナと中間母材との相対移動速度を遅くするか、或いは、薄くクラッドを付与したい箇所ではバーナに供給するガラス原料流量を少なくし、厚くクラッドを付与したい箇所ではバーナに供給するガラス原料流量を多くする。
図17(e)に示されるように、ロッドインチューブ法により中間母材1Aの外周にクラッドを付与する場合、薄くクラッドを付与したい箇所ではガラスパイプの断面積を小さくし、厚くクラッドを付与したい箇所ではガラスパイプの断面積を大きくする。