JP3705368B2 - Ti系傾斜機能材料とその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、耐衝撃性に優れたTiの特性及び耐熱耐酸化性に優れたTi3 Snの特性を兼ね備えたTi系傾斜機能材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
傾斜機能材料の製造技術として、気相成長法,溶射法,粉末冶金法等が知られている。これらの方法では、原材料の配合割合を段階的に或いは連続的に変えながら、適宜の基材の上に所定組成の物質を積み重ねていく。これにより、配合割合の変化に応じて堆積方向の組成が変わり、目標とする傾斜機能材料が作製される。
従来の製造法によるとき、何れも材料の堆積速度が遅く、生産性が悪い。しかも、工程が複雑になるため、得られた傾斜材料が高価なものとなる。その結果、コスト面から傾斜材料の用途が制約され、優れた特性を備えているにも拘らず使用されていない現状である。
【0003】
また、従来の傾斜機能材料では、耐衝撃用部材に金属又は合金を使用し、耐熱耐酸化用部材にセラミックスを使用している。しかし、セラミックスと金属又は合金とを接合したものでは、両者の熱膨張係数が大きく異なることから、接合界面にある組成傾斜部に大きな熱応力が発生する。熱応力は、脆いセラミックス層に亀裂を発生させ、接合界面における層間剥離の原因となる。
本発明者等は、このような問題を解消する方法として、特定の金属間化合物と特定の金属材料を共晶接合することを特願平4−272549号公報で提案した。提案した方法では、金属間化合物Ti5 Si3 と金属Ti又はTi合金とを接触させて共晶温度以上に加熱するとき、接合界面にSi濃度が連続的に変化する傾斜組成部が形成され、Ti及びTi5 Si3 両者の性質を兼ね備えた傾斜機能材料が得られる。この特許は、傾斜機能材料を簡便に作成する方法が存在することを始めて世に示した画期的なものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
Ti/Ti5 Si3 傾斜機能材料を作成するに当り、先ず問題となった点は、Ti5 Si3 の脆さである。Ti5 Si3 は、水冷銅ルツボを用いたArアーク溶解で直径20mm,厚み8mm程度のボタンインゴットとして実験的に作成することが通常である。しかし、この程度の規模の溶解であっても、冷却時にひび割れがTi5 Si3 製のボタンインゴットに入る。このことは、共晶接合によってTi/Ti5 Si3 傾斜機能材料が作成できても、過酷な環境に曝される金属間化合物側の特性が脆さの面から万全でないことを意味する。たとえば、外部応力や熱衝撃によって金属間化合物に剥離や破壊が生じる可能性がある。
これに対し、Ti3 Snは、Ti5 Si3 に比較して金属間化合物相としてはるかに金属的な性質をもっており、延性及び靭性に富んでいる。
本発明は、このTi3 Snの特性を活用し、金属Ti又はTi合金と金属間化合物Ti3 Snとの間に安定なTi/Ti3 Snの共晶相が形成されることに着目し、この共晶相を中間層として金属間化合物Ti3 Snを金属Ti又はTi合金に接合することにより、優れた特性をもつTi系傾斜材料を容易に製造することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のTi系傾斜機能材料は、その目的を達成するため、Ti/Ti3 Snの共晶相を中間層として金属Ti又はTi合金に金属間化合物Ti3 Snが接合されている。
このTi系傾斜機能材料は、金属Ti又はTi合金と金属間化合物Ti3 Snとを接触させ、両者を共晶温度以上に加熱することにより、Ti/Ti3 Snの共晶相からなる中間層を界面に生成させることにより製造される。加熱に際し、接触させた金属Ti又はTi合金及び金属間化合物Ti3 Snを酸化防止用のTa箔で包むことが好ましい。
【0006】
本発明では、耐衝撃性を確保する部材として金属Ti又はTi合金を使用し、耐熱耐酸化性を確保する部材として金属間化合物Ti3 Snを使用する。Ti合金には、従来から高温材料として知られているα+β型のTi−6Al−4V,ニアα型のTi−6Al−2Sn−4Zr−2Mo−0.1Si,冷間加工可能なβ型Ti合金等がある。
金属間化合物Ti3 Snは、その工業的な製造法が確立されていないが、金属性の強い化合物であるため、たとえば化学量論組成に相当する割合でTi及びSnを配合したものを真空雰囲気又は不活性雰囲気中でアーク溶解することにより容易に試作できる。
【0007】
【作用】
金属間化合物Ti3 Snを金属Ti又はTi合金と接触させた状態でTi/Ti3 Snの共晶点以上に加熱すると、接触界面にTi/Ti3 Sn共晶相が形成される。加熱温度は、Ti3 Snの融点が1670℃と高いことから、具体的には1630〜1640℃の範囲に設定される。
Ti/Ti3 Sn共晶相は、図1に示すように、金属Ti又はTi合金側でTi初晶が晶出した組織,Ti3 Sn側で初晶Ti3 Snが晶出した組織になっている。晶出したTi3 Snは、金属Ti又はTi合金側で微細な晶出物であり、Ti3 Sn側で樹枝状の晶出物となっている。すなわち、生成したTi/Ti3 Sn共晶相は、TiからTi3 Snまで連続的に変化した傾斜組成部をもっている。
【0008】
共晶接合の組織及び特性は、状態図にみられる共晶反応の温度,組成,反応層の物性等に左右される。Ti5 Si3 は、結晶構造が複雑なD88 型であり、その異方性のために共晶接合に際して針状や板状に晶出する。他方、金属的性質に富むTi3 Snは、比較的等方的なDO19型構造をもち、粒状又は立方状に晶出する。通常、針状や板状の結晶を含む組織は延性に難点をもつことが多いため、Ti/Ti5 Si3 共晶組織ではTi5 Si3 を球状化するための焼鈍が必要となる。これに対し、Ti3 Snが粒状又は立方状に晶出したTi/Ti3 Snでは焼鈍が不要になる。
また、Ti/Ti3 Sn系では、Ti/Ti5 Si3 系に比較し、共晶温度以上で液相と平行する固相の組成が大きく変化する。そのため、Ti/Ti3 Sn系では、共晶凝固に際して温度を制御することにより晶出相の組成が大きく変化する。この現象を利用するとき、Ti/Ti3 Sn系では、Ti/Ti5 Si3 系に比較し、より広い幅で組成を傾斜させた材料を得ることが可能になる。また、Ti3 Snは、Ti5 Si3 に比較して金属的であるものの、化合物特有の規則的原子配列をもつ結晶構造をとる。そのため、金属相に比較してはるかに大きな高温強度を示す。
【0009】
Ti3 Snは、線熱膨張係数が8×10-6/K程度であり、Tiの線熱膨張係数6×10-6/Kに近似している。そのため、Ti及びTi3 Snを一体的に接合した材料を高温に加熱しても、熱膨張差に起因して組成傾斜部に大きな熱応力が発生することはない。したがって、従来の金属/セラミックス系の傾斜材料に見られた亀裂や層間剥離が発生することはなく、長期間に渡ってTi及びTi3 Sn双方の特性が発揮される傾斜機能材料となる。
【0010】
【実施例】
化学量論組成の金属間化合物Ti3SnをAr雰囲気中でアーク溶解し、直径12mmのボタンインゴットに溶製した。得られたボタンインゴットに、1200℃で48時間加熱する均質化処理を施した。また、純Tiで同じ形状のボタンインゴットを作製した。
Ti3Sn製ボタンインゴット及びTi製ボタンインゴットの一面を平滑に研磨し、相互の平滑面を接触させた。そして、Ta箔で全体を包み、電気炉で1640℃に60分間加熱した。
冷却後、電気炉からインゴットを取り出したところ、Ti3Sn製ボタンインゴット及びTi製ボタンインゴットが一体化されていた。接合界面を調査したところ、図1に示すTi/Ti3Sn共晶相の中間層が形成されていた。この中間層のSn濃度は、図2に示すように、Ti側からTi3Sn側に向けて連続的に上昇していた。Sn濃度の変化に応じ、中間層の硬さも図2に示すように変化していた。なお、Ti/Ti3Sn部で起こる硬度上昇は、二相が微細分散しているためである。
【0011】
ここで取り扱っている傾斜機能材料の作成原理は、Ti/Ti5 Si3 及びTi/Ti3 Sn共に同一である。すなわち、Tiと金属化合物との間にある共晶反応を利用して金属と化合物とを接合すると同時に、接合条件を工夫して接合部の傾斜組成化を図るものであり、基本的に異質な特性を持つ材料を対象とした共晶接合の試みは世界で初めてである。しかしながら、このような技術が適用可能で、しかも作成物が高い価値を持ち得る材料系は限られており、前述したTi/Ti5 Si3 系及びTi/Ti3 Sn系はこれらの条件を満足し得る数少ない系である。
【0012】
製造したTi/金属間化合物の傾斜機能材料の特性は、使用する金属間化合物の種類により大きく影響される。前述したように、Ti5 Si3 は、融点が2130℃と高く、軽量で且つ強い耐酸化性をもっている。しかし、複雑な結晶構造をもっていることから延性・靭性の乏しい。そのため、裏打ち材料であるTiが存在しても、外部応力や熱衝撃によってTi5 Si3 自体に剥離,亀裂等の発生が避けられない。これに対し、金属的な性質をもつTi3 Snは、1%程度の延性を保有するため、外部応力や熱衝撃で破損する可能性が非常に低くなる。したがって、Ti/Ti3 Sn系傾斜機能材料は、非常に過酷な環境に曝されない限り、使い易い傾斜機能材料といえる。
【0013】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のTi系傾斜機能材料は、Sn濃度が連続的に変化するTi/Ti3 Sn共晶相を介して金属Ti又はTi合金と金属間化合物Ti3 Sn又はTi5 Si3 が接合されている。金属間化合物Ti3 Snは、Tiに近似した熱膨張係数をもっていることから、加熱・冷却を繰り返す熱履歴後も熱応力に起因した亀裂や層間剥離が生じることはない。そのため、金属Ti又はTi合金で衝撃に耐え、金属間化合物Ti3 Snの優れた耐熱耐酸化性が活用され、スペースプレーンの外壁,発電用タービンのブレード等に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Ti/Ti3 Sn共晶相を介して接合された金属Tiと金属間化合物Ti3 Sn
【図2】 接合層の傾斜組成部及び硬度分布
【産業上の利用分野】
本発明は、耐衝撃性に優れたTiの特性及び耐熱耐酸化性に優れたTi3 Snの特性を兼ね備えたTi系傾斜機能材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
傾斜機能材料の製造技術として、気相成長法,溶射法,粉末冶金法等が知られている。これらの方法では、原材料の配合割合を段階的に或いは連続的に変えながら、適宜の基材の上に所定組成の物質を積み重ねていく。これにより、配合割合の変化に応じて堆積方向の組成が変わり、目標とする傾斜機能材料が作製される。
従来の製造法によるとき、何れも材料の堆積速度が遅く、生産性が悪い。しかも、工程が複雑になるため、得られた傾斜材料が高価なものとなる。その結果、コスト面から傾斜材料の用途が制約され、優れた特性を備えているにも拘らず使用されていない現状である。
【0003】
また、従来の傾斜機能材料では、耐衝撃用部材に金属又は合金を使用し、耐熱耐酸化用部材にセラミックスを使用している。しかし、セラミックスと金属又は合金とを接合したものでは、両者の熱膨張係数が大きく異なることから、接合界面にある組成傾斜部に大きな熱応力が発生する。熱応力は、脆いセラミックス層に亀裂を発生させ、接合界面における層間剥離の原因となる。
本発明者等は、このような問題を解消する方法として、特定の金属間化合物と特定の金属材料を共晶接合することを特願平4−272549号公報で提案した。提案した方法では、金属間化合物Ti5 Si3 と金属Ti又はTi合金とを接触させて共晶温度以上に加熱するとき、接合界面にSi濃度が連続的に変化する傾斜組成部が形成され、Ti及びTi5 Si3 両者の性質を兼ね備えた傾斜機能材料が得られる。この特許は、傾斜機能材料を簡便に作成する方法が存在することを始めて世に示した画期的なものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
Ti/Ti5 Si3 傾斜機能材料を作成するに当り、先ず問題となった点は、Ti5 Si3 の脆さである。Ti5 Si3 は、水冷銅ルツボを用いたArアーク溶解で直径20mm,厚み8mm程度のボタンインゴットとして実験的に作成することが通常である。しかし、この程度の規模の溶解であっても、冷却時にひび割れがTi5 Si3 製のボタンインゴットに入る。このことは、共晶接合によってTi/Ti5 Si3 傾斜機能材料が作成できても、過酷な環境に曝される金属間化合物側の特性が脆さの面から万全でないことを意味する。たとえば、外部応力や熱衝撃によって金属間化合物に剥離や破壊が生じる可能性がある。
これに対し、Ti3 Snは、Ti5 Si3 に比較して金属間化合物相としてはるかに金属的な性質をもっており、延性及び靭性に富んでいる。
本発明は、このTi3 Snの特性を活用し、金属Ti又はTi合金と金属間化合物Ti3 Snとの間に安定なTi/Ti3 Snの共晶相が形成されることに着目し、この共晶相を中間層として金属間化合物Ti3 Snを金属Ti又はTi合金に接合することにより、優れた特性をもつTi系傾斜材料を容易に製造することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のTi系傾斜機能材料は、その目的を達成するため、Ti/Ti3 Snの共晶相を中間層として金属Ti又はTi合金に金属間化合物Ti3 Snが接合されている。
このTi系傾斜機能材料は、金属Ti又はTi合金と金属間化合物Ti3 Snとを接触させ、両者を共晶温度以上に加熱することにより、Ti/Ti3 Snの共晶相からなる中間層を界面に生成させることにより製造される。加熱に際し、接触させた金属Ti又はTi合金及び金属間化合物Ti3 Snを酸化防止用のTa箔で包むことが好ましい。
【0006】
本発明では、耐衝撃性を確保する部材として金属Ti又はTi合金を使用し、耐熱耐酸化性を確保する部材として金属間化合物Ti3 Snを使用する。Ti合金には、従来から高温材料として知られているα+β型のTi−6Al−4V,ニアα型のTi−6Al−2Sn−4Zr−2Mo−0.1Si,冷間加工可能なβ型Ti合金等がある。
金属間化合物Ti3 Snは、その工業的な製造法が確立されていないが、金属性の強い化合物であるため、たとえば化学量論組成に相当する割合でTi及びSnを配合したものを真空雰囲気又は不活性雰囲気中でアーク溶解することにより容易に試作できる。
【0007】
【作用】
金属間化合物Ti3 Snを金属Ti又はTi合金と接触させた状態でTi/Ti3 Snの共晶点以上に加熱すると、接触界面にTi/Ti3 Sn共晶相が形成される。加熱温度は、Ti3 Snの融点が1670℃と高いことから、具体的には1630〜1640℃の範囲に設定される。
Ti/Ti3 Sn共晶相は、図1に示すように、金属Ti又はTi合金側でTi初晶が晶出した組織,Ti3 Sn側で初晶Ti3 Snが晶出した組織になっている。晶出したTi3 Snは、金属Ti又はTi合金側で微細な晶出物であり、Ti3 Sn側で樹枝状の晶出物となっている。すなわち、生成したTi/Ti3 Sn共晶相は、TiからTi3 Snまで連続的に変化した傾斜組成部をもっている。
【0008】
共晶接合の組織及び特性は、状態図にみられる共晶反応の温度,組成,反応層の物性等に左右される。Ti5 Si3 は、結晶構造が複雑なD88 型であり、その異方性のために共晶接合に際して針状や板状に晶出する。他方、金属的性質に富むTi3 Snは、比較的等方的なDO19型構造をもち、粒状又は立方状に晶出する。通常、針状や板状の結晶を含む組織は延性に難点をもつことが多いため、Ti/Ti5 Si3 共晶組織ではTi5 Si3 を球状化するための焼鈍が必要となる。これに対し、Ti3 Snが粒状又は立方状に晶出したTi/Ti3 Snでは焼鈍が不要になる。
また、Ti/Ti3 Sn系では、Ti/Ti5 Si3 系に比較し、共晶温度以上で液相と平行する固相の組成が大きく変化する。そのため、Ti/Ti3 Sn系では、共晶凝固に際して温度を制御することにより晶出相の組成が大きく変化する。この現象を利用するとき、Ti/Ti3 Sn系では、Ti/Ti5 Si3 系に比較し、より広い幅で組成を傾斜させた材料を得ることが可能になる。また、Ti3 Snは、Ti5 Si3 に比較して金属的であるものの、化合物特有の規則的原子配列をもつ結晶構造をとる。そのため、金属相に比較してはるかに大きな高温強度を示す。
【0009】
Ti3 Snは、線熱膨張係数が8×10-6/K程度であり、Tiの線熱膨張係数6×10-6/Kに近似している。そのため、Ti及びTi3 Snを一体的に接合した材料を高温に加熱しても、熱膨張差に起因して組成傾斜部に大きな熱応力が発生することはない。したがって、従来の金属/セラミックス系の傾斜材料に見られた亀裂や層間剥離が発生することはなく、長期間に渡ってTi及びTi3 Sn双方の特性が発揮される傾斜機能材料となる。
【0010】
【実施例】
化学量論組成の金属間化合物Ti3SnをAr雰囲気中でアーク溶解し、直径12mmのボタンインゴットに溶製した。得られたボタンインゴットに、1200℃で48時間加熱する均質化処理を施した。また、純Tiで同じ形状のボタンインゴットを作製した。
Ti3Sn製ボタンインゴット及びTi製ボタンインゴットの一面を平滑に研磨し、相互の平滑面を接触させた。そして、Ta箔で全体を包み、電気炉で1640℃に60分間加熱した。
冷却後、電気炉からインゴットを取り出したところ、Ti3Sn製ボタンインゴット及びTi製ボタンインゴットが一体化されていた。接合界面を調査したところ、図1に示すTi/Ti3Sn共晶相の中間層が形成されていた。この中間層のSn濃度は、図2に示すように、Ti側からTi3Sn側に向けて連続的に上昇していた。Sn濃度の変化に応じ、中間層の硬さも図2に示すように変化していた。なお、Ti/Ti3Sn部で起こる硬度上昇は、二相が微細分散しているためである。
【0011】
ここで取り扱っている傾斜機能材料の作成原理は、Ti/Ti5 Si3 及びTi/Ti3 Sn共に同一である。すなわち、Tiと金属化合物との間にある共晶反応を利用して金属と化合物とを接合すると同時に、接合条件を工夫して接合部の傾斜組成化を図るものであり、基本的に異質な特性を持つ材料を対象とした共晶接合の試みは世界で初めてである。しかしながら、このような技術が適用可能で、しかも作成物が高い価値を持ち得る材料系は限られており、前述したTi/Ti5 Si3 系及びTi/Ti3 Sn系はこれらの条件を満足し得る数少ない系である。
【0012】
製造したTi/金属間化合物の傾斜機能材料の特性は、使用する金属間化合物の種類により大きく影響される。前述したように、Ti5 Si3 は、融点が2130℃と高く、軽量で且つ強い耐酸化性をもっている。しかし、複雑な結晶構造をもっていることから延性・靭性の乏しい。そのため、裏打ち材料であるTiが存在しても、外部応力や熱衝撃によってTi5 Si3 自体に剥離,亀裂等の発生が避けられない。これに対し、金属的な性質をもつTi3 Snは、1%程度の延性を保有するため、外部応力や熱衝撃で破損する可能性が非常に低くなる。したがって、Ti/Ti3 Sn系傾斜機能材料は、非常に過酷な環境に曝されない限り、使い易い傾斜機能材料といえる。
【0013】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のTi系傾斜機能材料は、Sn濃度が連続的に変化するTi/Ti3 Sn共晶相を介して金属Ti又はTi合金と金属間化合物Ti3 Sn又はTi5 Si3 が接合されている。金属間化合物Ti3 Snは、Tiに近似した熱膨張係数をもっていることから、加熱・冷却を繰り返す熱履歴後も熱応力に起因した亀裂や層間剥離が生じることはない。そのため、金属Ti又はTi合金で衝撃に耐え、金属間化合物Ti3 Snの優れた耐熱耐酸化性が活用され、スペースプレーンの外壁,発電用タービンのブレード等に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Ti/Ti3 Sn共晶相を介して接合された金属Tiと金属間化合物Ti3 Sn
【図2】 接合層の傾斜組成部及び硬度分布
Claims (3)
- Ti/Ti3 Sn共晶相を中間層として金属Ti又はTi合金に金属間化合物Ti3 Snが接合されているTi系傾斜機能材料。
- 金属Ti又はTi合金と金属間化合物Ti3 Snとを接触させ、共晶温度以上に加熱することにより、Ti/Ti3 Sn共晶相からなる中間層を界面に生成させるTi系傾斜機能材料の製造方法。
- 金属Ti又はTi合金と金属間化合物Ti3 Snとを接触させ、両者をTa箔で包み、全体をTi/Ti3 Snの共晶温度以上に加熱する請求項2記載の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22583194A JP3705368B2 (ja) | 1994-08-26 | 1994-08-26 | Ti系傾斜機能材料とその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22583194A JP3705368B2 (ja) | 1994-08-26 | 1994-08-26 | Ti系傾斜機能材料とその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0867934A JPH0867934A (ja) | 1996-03-12 |
JP3705368B2 true JP3705368B2 (ja) | 2005-10-12 |
Family
ID=16835499
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP22583194A Expired - Fee Related JP3705368B2 (ja) | 1994-08-26 | 1994-08-26 | Ti系傾斜機能材料とその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3705368B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113183562A (zh) * | 2021-05-27 | 2021-07-30 | 合肥工业大学 | 一种梯度异构钛钽层状复合材料、制备方法及其应用 |
-
1994
- 1994-08-26 JP JP22583194A patent/JP3705368B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113183562A (zh) * | 2021-05-27 | 2021-07-30 | 合肥工业大学 | 一种梯度异构钛钽层状复合材料、制备方法及其应用 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0867934A (ja) | 1996-03-12 |
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