JP3705116B2 - 電源供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電源供給装置、及び該電源供給装置を含む液晶表示装置に関する。
【0002】
【背景技術】
図33には、液晶表示装置等に用いられる従来の電源供給装置の一例が示される。なお、以下では、液晶表示装置に用いられる電源供給装置を例にとり説明を行う。この電源供給装置320は、電圧調整部322と多値電圧生成部324とを含む。
【0003】
ここで、電圧調整部322は電源電圧VS、VDD間の電圧を調整することにより調整電圧Vregを生成する機能を有し、制御部314と分圧抵抗313とを含む。そして、制御部314はスイッチS1〜S4を含み、入力された調整電圧設定信号に基づいて分圧抵抗313の抵抗値を制御する。また、分圧抵抗313は抵抗R1〜R4を含み、制御部314の制御により抵抗R1〜R4が選択的にバイパスされ、これにより分圧抵抗313の抵抗値が変化し、調整電圧Vregが決定される。そして、このように電圧調整可能とすることにより、ユーザ等が液晶表示のコントラストを調整できるようになる。
【0004】
また、多値電圧生成部324は抵抗Ra〜Reからなる分圧抵抗312を含み、電圧調整部322からの調整電圧Vregを分割して多値の電源電圧V0〜V5を生成する機能を有する。そして、この多値の電源電圧V0〜V5を生成することにより、液晶表示における例えば6レベル駆動法が可能となる。
【0005】
図34には、従来の電源供給装置の他の一例が示される。図34では図33と異なり、多値電圧生成部326はボルテージフォロワ接続されたオペアンプ(演算増幅器)301〜305を含む。そして、分圧抵抗312の各分割端子(タップ)330〜338にこれらのオペアンプ301〜305が接続されている。そして、これらのオペアンプ301〜305により、分割端子330〜338に生成される分割電圧のインピーダンス変換を行っている。この場合、従来の電源供給装置においては、全てのオペアンプ301〜305が後に図10で説明する構成のオペアンプ(N型オペアンプ)となっている。
【0006】
図33、図34に示す電圧調整部322では、調整電圧設定信号に基づいて制御部314のスイッチS1〜S4をオン・オフする。そして、これにより電源VS−VDD間に接続される分圧抵抗の段数を変化させ、調整電圧Vregの生成を行っている。その後、この調整電圧Vregを分圧抵抗312より分割する。そして、図33の場合には、この分割された電圧をインピーダンス変換せずにそのまま多値の駆動用電源電圧V0〜V5として出力する。一方、図34の場合には、この分割された電圧をボルテージフォロワ接続されたオペアンプ301〜305によりインピーダンス変換して多値の駆動用電源電圧V0〜V5を生成し、出力する。
【0007】
そして、これらの駆動用電源電圧V0〜V5は、図示しない液晶駆動信号生成部(LCDドライバ)に供給される。そして、この駆動信号生成部が、これらの駆動用電源電圧V0〜V5に基づいて液晶パネルを駆動するための駆動信号を生成することになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
液晶表示装置は携帯機器等に多く用いられている。そのため液晶表示装置には、消費電流を非常に少なくし低消費電力にしなければならないという課題がある。更に、液晶表示装置には、このように低消費電力であると共に、表示品質も高めなければならないという課題がある。そして、液晶表示装置の低消費電力化を図るためには、液晶表示装置に対して電源供給を行う電源供給装置についても低消費電力化する必要がある。また、液晶表示装置の表示の高品質化を図るためには、電源供給装置から供給される電源電圧も、液晶表示装置の表示品質を悪化させないような電源電圧とする必要がある。
【0009】
上記の課題を鑑みた場合には、図33、図34に示す従来の電源供給装置320、321には以下のような問題があった。
【0010】
液晶表示装置に使用される電源供給装置では、前述のように液晶表示のコントラスト調整等を行うために電圧調整が可能となっている。そして、図33、図34に示す従来例では、電圧調整部322により電源間に接続される抵抗の段数を変化させることにより、この電圧調整を行っている。今、分圧抵抗312、313の抵抗値を各々R12、R13とする。すると抵抗値R12は、R12=Ra+Rb+Rc+Rd+Reとなり、固定値となる。また、抵抗値R13は、制御部314において、どのスイッチがオンされるかで決定される。例えば、R4〜R1の抵抗比を8:4:2:1としたとすると、S4〜S2がオフ、S1がオンの場合はR13=R4+R3+R2=14Rとなる(R1の抵抗値をRとする)。このように、抵抗値R13は、調整電圧設定信号によりS4〜S1をオン・オフすることにより、例えば0〜15R(=R13tot)の間で可変させることが可能となる。
【0011】
従来の電源供給装置では、調整電圧Vregは、これらの抵抗値R12、R13の比により決定され、次式のように表される。なお、以下の説明ではVDD=0Vとし、また、VSは負電圧であり例えば−9Vである。
【0012】
Vreg=VS・R12/(R12+R13) …式(1)
ここで、抵抗値R13は、上述のように0〜15R(R13tot)の間で可変させることができ、これにより図35(A)に示すようにVregの値を可変することができる。例えば、Vregは、R13=0(S4〜S1が全てオン)の場合に、次式で表されるように負の値の最大値Vrmaxとなる。
【0013】
Vrmax=VS …式(2)
また、Vregは、R13=R13tot=15R(S4〜S1が全てオフ)の場合に、次式で表されるように負の値の最小値Vrminとなる。
【0014】
Vrmin=VS・R12/(R12+R13tot) …式(3)
従って、電圧調整範囲Vrangeは次式のようになる。
【0015】
液晶表示装置に使用される電源供給装置では、コントラスト調整の幅を大きくできることが望ましいため、電圧調整範囲Vrangeもなるべく広く設定できることが望まれる。そして、上式(4)から理解されるように、従来例において電圧調整範囲Vrangeを広くしたい場合には、段数の固定されている分圧抵抗312の抵抗値R12を小さくするか、あるいは段数の切り変えが可能な分圧抵抗313の総抵抗値R13totを大きくしなければならない。しかし、前者では、分圧抵抗の抵抗値が小さくなるので電源電圧VDDと電源電圧VS間に流れる消費電流が大きくなり、低消費電力化を図るという上記課題を解決できない。また後者では、本回路を半導体集積回路に搭載する場合において、ポリシリコン等で形成される抵抗の形状比が大きくなってしまい、チップ面積が大きくなってしまうという問題がある。
【0016】
また、このように電源供給装置により電圧調整を行う場合には、電圧調整を行うためのセンター値Vcを設定する必要がある。このセンター値Vcは、液晶表示のコントラストを調整する場合に、コントラストの明暗の中心の値となるものである。この場合、図35(A)に示すように、例えば、S4〜S1=(0111)(0はオフを表し、1はオンを表す)にセンター値Vcを設定することが望ましい。このようにすれば、例えば上側に7レベル、下側に8レベルの範囲で電圧調整が可能となり、コントラスト調整を明るい側にも暗い側にも同等の範囲で行うことが可能となるからである。しかし、電源供給装置等を構成する半導体デバイス、あるいは、液晶表示素子にはプロセス変動等を原因とする製造上のバラツキが生じる。そして、このようなバラツキが生じた場合には、コントラスト調整の明暗の中心となるセンター値Vcもばらついてしまう。この場合、上式(1)〜(4)から明らかなように、従来の電源供給装置では分圧抵抗の抵抗値R12とR13によって調整電圧の最大値、最小値、電圧調整範囲が固定されてしまう。従って、このような製造上のバラツキが生じてセンター値Vcが変動した場合にも、これらの最大値、最小値、電圧調整範囲を上側あるいは下側にずらすことはできない。このため、例えばセンター値Vcが図35(B)に示すようにS4〜S1=(0100)の値となった場合には、上側に4レベルの範囲でしか電圧調整を行うことができず、コントラスト調整を明るい側にも暗い側にも同等の範囲で行うことができなくなる。これにより、上記の表示品質の向上という課題を解決できなくなる。この場合、製造上のバラツキを考慮し分圧抵抗313の段数を多くし電圧調整の範囲を余分に広げておくという解決法も考えられるが、この手法では半導体のチップ面積が増大してしまうという問題がある。また、従来の電源供給装置では分圧抵抗の段数を切り替えて電圧調整を行うため、このセンター値Vcを決めるための値、例えば図35(A)における(0111)、図35(B)における(0100)の値を、不揮発性メモリなどに保存しておく必要があり、システムを構成する際の回路構成が複雑になるという問題があった。
【0017】
更に、図33、図34に示す従来例においては、上式(1)から明らかなように、電源電圧VS等と分圧抵抗312、313の抵抗比とで調整電圧Vregが決定される。従って、電源電圧が変動すると調整電圧Vregも変動してしまうという問題があり、電池(バッテリー等)を電源とした液晶表示装置の場合には電池の電圧の変化によって表示品質が変化してしまうという問題もあった。
【0018】
次に、図33、図34に示す多値電圧生成部324、326について考える。
【0019】
一般的に、時分割に液晶を駆動するシステムにおいては、公知の6レベル駆動法(電圧平均化法)の計算式より求められる6値の電源電圧が用いられる。電圧の高いほうからV0、V1、V2、V3、V4、V5と呼ぶことにする。液晶表示装置にはコモン電極とセグメント電極があり、コモン電極にはラインの選択・非選択を決めるためのコモン信号(走査信号)が与えられる。また、セグメント電極には表示ドットの点灯・非点灯を決めるためのセグメント信号(データ信号)が与えられる。コモン電極の電圧は選択された期間にはV5(V0)となり、非選択の場合はV1(V4)となる。そして、コモン電極の電圧がV5(V0)の場合、セグメント電極の電圧がV0(V5)であれば点灯となり、V2(V3)であれば非点灯となる。なお、ここでカッコ内は交流化信号(以後FR信号と呼ぶ)の極性が反転した場合の電源電圧を表す。
【0020】
多値電圧生成部324、326では、これらの多値の電源電圧V0〜V5が生成される。この場合、図33に示す多値電圧生成部324では、分圧抵抗312により電源電圧を分割し、これらをそのままV0〜V5として用いている。しかし、このように抵抗分割された電圧をそのまま液晶駆動用の電源電圧として用いるのは、表示品質の面、低消費電力の面で好ましいものではない。即ち、装置の低消費電力化を図るためには、分圧抵抗312を構成する抵抗Ra〜Reの抵抗値をなるべく高くし、分圧抵抗312を流れる電流値をなるべく小さくする必要がある。しかし、Ra〜Reの抵抗値を高くすると、今度は、分圧抵抗312の分割端子330〜338における出力インピーダンスが高くなってしまう。そして、このように出力インピーダンスが高くなると、液晶を駆動する際の電源電圧の変動が大きくなり、液晶の表示品質を低下させてしまう。従って、この方式による多値電源電圧の生成は、大型の液晶パネルを駆動するものとしては不適当のものとなる。
【0021】
一方、図34に示す方式では、分割端子330〜338に生成される分割電圧を、ボルテージフォロワ接続されたオペアンプ301〜305を用いてインピーダンス変換することにより上記問題点を解決している。即ち、多値電圧生成部326からの出力インピーダンスが低くなるようにオペアンプ301〜305によりインピーダンス変換されるので、液晶の表示品質の低下を避けることができる。そして、このようにインピーダンス変換を行う場合には、分割端子330〜338における出力インピーダンスが高くなっても問題ないため、Ra〜Reの抵抗値を高くすることができる。そして、Ra〜Reの抵抗値を高くできれば、分圧抵抗312を流れる電流を小さくすることができ、装置の低消費電力化を図ることが可能となる。
【0022】
さて、装置全体の更なる低消費電力化を図るためには、オペアンプ301〜305において消費される電力についても低く抑える必要がある。これらのオペアンプ301〜305は、後述の図10に示すように、一方が高電源側に接続された抵抗又は定電流源と一方が低電源側に接続されたNチャネル型駆動トランジスタとを有する駆動部を備えている。そして、オペアンプ301〜305の消費電力を抑えるためには、この駆動部において上記抵抗又は定電流源から流れる電流を少なくする必要がある。
【0023】
しかし、低消費電力化を図るべく、このように駆動部において流れる電流を小さくすると、今度は、液晶表示にシャドウあるいはクロストークと呼ばれる現象が生じ、液晶表示の品質が非常に低くなるという問題が生じた。6レベル駆動法(電圧平均化法)と呼ばれる駆動方法では、駆動期間において画素に印加される実効電圧がオン画素同士、オフ画素同士で平均化されるようにして、表示状態の均一化を図っている。従って、この6レベル駆動法の前提である平均化状態が維持できない場合には、上記のようなシャドウ、クロストークと呼ばれる現象が生じることになる。従って、低消費電力化を図りながらも、如何にして、このようなシャドウ、クロストークと呼ばれる現象が生じないようにするかが大きな技術的課題となる。
【0024】
本発明は、以上の問題点を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、低消費電力化を図ることができるとともに表品質を高めることができる電源供給装置及び液晶表示装置を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、電圧調整手段を含み、該電圧調整手段により調整された電源電圧を駆動対象に対して供給するための電源供給装置において、
前記電圧調整手段が、電源電圧から定電圧の第1の電圧を生成する手段と、該第1の電圧の電圧値に依存しない電圧値を持つように生成された第2の電圧を前記第1の電圧に加算する手段と、前記第2の電圧の電圧値を前記第1の電圧を基準として設定された電圧調整範囲内において可変に制御する手段とを含むことを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、電源電圧から定電圧の第1の電圧が生成される。そして、この第1の電圧の電圧値に依存しない電圧値を持つ第2の電圧が生成され、この第2の電圧が第1の電圧に加算される。この場合、第2の電圧の電圧値は、第1の電圧を基準として設定された電圧調整範囲内において可変に制御され、これにより所望の調整電圧を駆動対象に対して供給することが可能となる。特に、本発明によれば、第2の電圧の電圧値は第1の電圧の電圧値に依存しない。従って、第1の電圧を調整する手段により第1の電圧の電圧値を調整したとしても、これに影響されずに前記制御手段により所定の電圧調整範囲において第2の電圧の電圧値を調整することが可能となる。
【0027】
また、本発明は、前記第1電圧生成手段により生成される前記第1の電圧及び前記加算手段により加算される前記第2の電圧に対して、駆動対象の温度特性を補償する温度特性を持たせたことを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、第1の電圧、第2の電圧に対して駆動対象の温度特性を補償する温度特性が持たされる。これにより、温度変化により駆動対象の素子特性が変化した場合にも、第1の電圧、第2の電圧及び第1の電圧と第2の電圧を加算して得られる調整電圧が、この素子特性を補償するように変化することになる。これにより、温度変化に依存しない安定した電源供給が可能となる。
【0029】
また、本発明は、前記加算手段により加算される前記第2の電圧が、装置の初期動作時において所定値に固定されていることを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、第1の電圧に加算される第2の電圧が、装置を初期動作させる際に、所定の値に固定される。これにより、初期動作時に電源供給装置から出力される調整電圧を所望の値に固定しておくことが可能となる。即ち、調整電圧を、電圧調整範囲内のセンター値、最小値、あるいは最大値等に固定しておくことが可能となる。
【0031】
また、本発明は、前記第1電圧生成手段が、演算増幅器と、前記演算増幅器の第1の入力端子に接続された基準電圧源と、一方が前記演算増幅器の第2の入力端子に接続され他方が固定電位に接続された第1の抵抗と、一方が前記演算増幅器の第2の入力端子に接続され他方が前記演算増幅器の出力端子に接続された第2の抵抗とを含み、前記加算手段が、前記制御手段により可変に制御される定電流源からの電流を前記第2の抵抗に対して流す手段を含むことを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、基準電圧源からの基準電圧と、第1、第2の抵抗の抵抗値とにより、第1の電圧の電圧値が決定される。また、制御手段により可変に制御される定電流源からの電流を第2の抵抗に対して流すことにより第2の電圧が生成され、この第2の電圧が前記第1の電圧に加算される。これにより所望の調整電圧を得ることが可能となる。このように本発明によれば、第1の電圧と第2の電圧を別個独立に生成できる。即ち、例えば第1の抵抗の抵抗値を調整することで第1の電圧の電圧値を調整できる。また、第2の抵抗に定電流源から流れる電流を調整することで、第1の電圧とは別個独立に第2の電圧の電圧値を調整できる。更に、第2の電圧の電圧調整範囲についても、第1の電圧の電圧値に依存しないものとすることもできる。また、第1の電圧は基準電圧源からの基準電圧、第2の電圧は定電流源からの電流値に基づいて決定されるため、電源電圧の変動に依存しない調整電圧を生成することができる。
【0033】
また、本発明は、前記基準電圧源及び定電流源がMOS型トランジスタを含み、前記基準電圧源からの基準電圧及び前記定電流源からの定電流が前記MOS型トランジスタのしきい値電圧を利用して生成されることを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、基準電圧源からの基準電圧及び定電流源からの定電流がMOS型トランジスタのしきい値電圧を利用して生成される。そして、MOS型トランジスタのしきい値電圧は負の温度特性をもつ。従って、第1の電圧、第2の電圧、調整電圧、電圧調整範囲等にも負の温度特性を持たせることが可能となる。これにより、コントラスト等の特性が負の温度特性をもつ液晶表示装置等に最適の電源供給装置を提供することが可能となる。
【0035】
また、本発明は、多値電圧生成手段を含み、該多値電圧生成手段により多値の駆動用電源電圧を生成して供給する電源供給装置において、
前記多値電圧生成手段が、分割端子に分割電圧を生成する電圧分割手段と、前記分割端子の各々と前記駆動対象の各々の間に接続され分割端子に生成された分割電圧をインピーダンス変換することにより容量性の駆動対象に対する多値の駆動用電源電圧を生成する複数のインピーダンス変換手段とを含み、
駆動期間内において駆動対象からインピーダンス変換手段へと移動させる必要がある電荷量の極性が正である駆動対象に対しては正の電荷を多く引ける駆動部を有する第1のインピーダンス変換手段が接続され、駆動期間内において駆動対象からインピーダンス変換手段へと移動させる必要がある電荷量の極性が負である駆動対象に対しては負の電荷を多く引ける駆動部を有する第2のインピーダンス変換手段が接続されることを特徴とする。
【0036】
本発明によれば、電圧分割手段により分割電圧が生成され、この分割された電圧が、インピーダンス変換手段によりインピーダンス変換されて駆動対象に対して供給される。そして、駆動期間内において駆動対象からインピーダンス変換手段へと移動させる必要がある電荷量の極性が正である駆動対象に対しては正の電荷を多く引ける駆動部を有する第1のインピーダンス変換手段によりインピーダンス変換が行われる。一方、この電荷量の極性が負である駆動対象に対しては負の電荷を多く引ける駆動部を有する第2のインピーダンス変換手段によりインピーダンス変換が行われることになる。これにより、駆動用電源電圧にかかる負荷に応じた適正な多値の電源電圧を、容量性の駆動対象に対して供給することが可能となる。
【0037】
また、本発明は、前記第1、第2のインピーダンス変換手段が差動部と駆動部とを含む演算増幅器をボルテージフォロワ接続することにより形成され、前記第1のインピーダンス変換手段の駆動部が、一方が高電位の電源側に接続され他方が出力端子側に接続された定電流源又は抵抗と、一方が低電位の電源側に接続され他方が出力端子側に接続されたNチャネル型駆動トランジスタとを含み、前記第2のインピーダンス変換手段の駆動部が、一方が高電位の電源側に接続され他方が出力端子側に接続されたPチャネル型駆動トランジスタと、一方が低電位の電源側に接続され他方が出力端子側に接続された定電流源又は抵抗とを含むことを特徴とする。
【0038】
本発明によれば、ボルテージフォロワ接続された演算増幅器により分割電圧がインピーダンス変換され、分割電圧と同一電圧の電源電圧が駆動対象に対して供給されることになる。また、第1のインピーダンス変換手段の駆動部は、高電位側に接続された定電流源又は抵抗と、低電位側に接続されたNチャネル型駆動トランジスタを含み、第2のインピーダンス変換手段の駆動部は、低電位側に接続された定電流源又は抵抗と、高電位側に接続されたPチャネル型駆動トランジスタを含む。そして、この場合、第1のインピーダンス変換手段には、インピーダンス変換手段へと移動させる必要がある電荷量の極性が正である駆動対象が接続されている。従って、駆動部内のNチャネル型駆動トランジスタによりこの正の電荷を十分に吸収できるとともに、定電流源又は抵抗に流れる電流を十分小さくすることも可能となる。また、第2のインピーダンス変換手段には、インピーダンス変換手段へと移動させる必要がある電荷量の極性が負である駆動対象が接続されている。従って、駆動部内のPチャネル型駆動トランジスタによりこの負の電荷を十分に吸収できるとともに、定電流源又は抵抗に流れる電流を十分に小さくすることも可能となる。
【0039】
また、本発明は、前記多値電圧生成手段により生成される前記多値の駆動用電源電圧の1又は複数が電源投入直後の所定期間内に所定レベルに到達するように制御する手段を含むことを特徴とする。
【0040】
本発明によれば、多値の駆動用電源電圧の1又は複数が電源投入直後の所定期間内に所定レベルに到達するように制御される。従って、電源投入直後の所定期間内に、これらの駆動用電源電圧が所定レベルに到達することが保証されることになる。これにより、これらの駆動用電源電圧が過渡状態になることによる生じる悪影響を防止でき、駆動対象の表示品質等の特性を向上させることが可能となる。
【0041】
また、本発明は、前記多値電圧生成手段により生成される前記多値の駆動用電源電圧の1又は複数が電源投入直後の所定期間内に所定レベルに到達するように制御する手段を含み、該制御手段が、前記高電位の電源を固定電位の電源として前記低電位の電源が投入される場合には前記第2のインピーダンス変換手段の駆動部において前記低電位の電源側に流れる電流を前記所定期間の間増加させる手段を含むことを特徴とする。
【0042】
本発明によれば、電源投入直後の所定期間内の間、第2のインピーダンス変換手段の駆動部において低電位の電源側に流れる電流が増加される。これにより、多値の駆動用電源電圧の1又は複数、例えば6レベル駆動法におけるV1、V3が所定期間内に所定レベルに到達するように制御されることになり、例えばV1、V3の電圧が過渡状態になることによる生じる悪影響を防止できる。
【0043】
また、本発明は、前記多値電圧生成手段により生成される前記多値の駆動用電源電圧の1又は複数が電源投入直後の所定期間内に所定レベルに到達するように制御する手段を含み、該制御手段が、前記低電位の電源を固定電位の電源として前記高電位の電源が投入される場合には前記第1のインピーダンス変換手段の駆動部において前記高電位の電源側から流れる電流を前記所定期間の間増加させる手段を含むことを特徴とする。
【0044】
本発明によれば、電源投入直後の所定期間内の間、第1のインピーダンス変換手段の駆動部において高電位の電源側から流れる電流が増加される。これにより例えば6レベル駆動法におけるV2、V4が所定期間内に所定レベルに到達するように制御されることになり、例えばV2、V4の電圧が過渡状態になることによる生じる悪影響を防止できる。
【0045】
また、本発明は、前記所定期間の間は、多値の駆動用電源の過渡状態の電圧が前記駆動対象に対して伝わらないように制御されることを特徴とする。
【0046】
本発明によれば、駆動用電源電圧が所定レベルに到達するまでの所定期間の間は、駆動用電源の過渡状態の電圧が駆動対象に対して伝わらない。そして、所定期間が経過し、駆動用電源電圧が所定レベルに到達した後に、駆動用電源電圧が駆動対象に対して供給されることになる。これにより、駆動用電源電圧が過渡状態になることにより生ずる悪影響を、より完全に防止できる。
【0047】
また、本発明は、多値電圧生成手段を含み、該多値電圧生成手段により多値の駆動用電源電圧を生成して供給する電源供給装置において、
前記多値電圧生成手段が、分割端子に分割電圧を生成する電圧分割手段と、前記分割端子の各々と前記駆動対象の各々の間に接続され分割端子に生成された分割電圧をインピーダンス変換することにより容量性の駆動対象に対する多値の駆動用電源電圧を生成する複数のインピーダンス変換手段と、該インピーダンス変換手段を制御する手段とを含み、
前記インピーダンス変換手段が差動部と駆動部とを含む演算増幅器をボルテージフォロワ接続することにより形成され、前記駆動部が、一方が第1の電源側に接続され他方が出力端子側に接続された定電流源又は抵抗と、一方が第2の電源側に接続され他方が出力端子側に接続された駆動トランジスタとを含み、
前記インピーダンス変換手段を制御する手段が、駆動対象を駆動するための基準クロックの立ち上がり又は立ち下がりの直後の一定期間だけ前記インピーダンス変換手段の前記定電流源又は前記抵抗に対して電流が流れるように制御する手段であることを特徴とする。
【0048】
本発明によれば、インピーダンス変換手段を制御する手段により、基準クロックの立ち上がり又は立ち下がりの直後の一定期間だけインピーダンス変換手段内の定電流源又は抵抗に対して電流が流れるように制御される。即ち、容量性の駆動対象を駆動する場合には、基準クロックの立ち上がり又は立ち下がりの直後の一定期間だけ駆動用電源電圧に対して負荷がかかる。従って、この期間だけ定電流源又は抵抗に電流を流すようにすれば、この定電流源又は抵抗により駆動対象を十分に駆動することが可能となる。
【0049】
また、本発明は、多値電圧生成手段を含み、該多値電圧生成手段により多値の駆動用電源電圧を生成して供給する電源供給装置において、
前記多値電圧生成手段が、分割端子に分割電圧を生成する電圧分割手段と、前記分割端子の各々と前記駆動対象の各々の間に接続され分割端子に生成された分割電圧をインピーダンス変換することにより容量性の駆動対象に対する多値の駆動用電源電圧を生成する複数のインピーダンス変換手段と、該インピーダンス変換手段を制御する手段とを含み、
前記インピーダンス変換手段が差動部と駆動部とを含む演算増幅器をボルテージフォロワ接続することにより形成され、前記駆動部が、一方が第1の電源側に接続され他方が出力端子側に接続された定電流源又は抵抗と、一方が第2の電源側に接続され他方が出力端子側に接続された駆動トランジスタとを含み、
前記インピーダンス変換手段を制御する手段が、駆動対象を駆動するための交流化信号が所定レベルの場合には、前記インピーダンス変換手段の前記定電流源又は前記抵抗に流れる電流を制限する制御を行う手段であることを特徴とする。
【0050】
本発明によれば、インピーダンス変換手段を制御する手段により、交流化信号が所定レベルの場合には、インピーダンス変換手段内の定電流源又は抵抗に流れる電流が制限される。即ち、駆動用電源電圧によっては、交流化信号が所定のレベルの場合には、負荷がかからないような場合がある。従って、このような場合に、定電流源又は抵抗に流れる電流を制限すれば、定電流源又は抵抗に無駄な消費電流が流れるのを有効に防止することが可能となる。
【0051】
また、本発明は、前記駆動部が、前記インピーダンス変換手段を制御する手段により制御される定電流源又は抵抗と、該制御手段により制御されない定電流源又は抵抗とを含むことを特徴とする。
【0052】
本発明によれば、駆動部が、インピーダンス変換手段を制御する手段により制御される定電流源又は抵抗と、該制御手段により制御されない定電流源又は抵抗とを含む。このように構成すれば、制御手段により制御されない定電流源又は抵抗により駆動部の出力電圧を一定値に保持できる。そして、これと共に、駆動用電源電圧にかかる負荷に応じて、定電流源又は抵抗に流れる電流を制御手段より制御すれば、低消費電力で、十分な駆動能力を持つ駆動部を実現することが可能となる。
【0053】
また、本発明は、上記のいずれかの電圧調整手段と上記のいずれかの多値電圧生成手段とを含む電源供給装置であって、
前記電圧調整手段により電圧調整された電源電圧を前記多値電圧生成手段における前記電圧分割手段により分割し、生成された分割電圧を前記複数のインピーダンス変換手段によりインピーダンス変換することにより駆動対象に対して多値の駆動用電源電圧を供給することを特徴とする。
【0054】
本発明によれば、電圧調整手段により調整された電源電圧に基づいて、多値電圧生成手段によりインピーダンス変換された多値の駆動用電源電圧を生成することが可能となる。これにより、多値電圧生成手段により生成される多値の駆動用電源電圧の電圧調整を行うことができる。また、駆動用電源電圧にかかる負荷に応じた適正な多値の電源電圧を、容量性の駆動対象に対して供給することが可能となる。更に、電圧調整手段における電圧調整を演算増幅器等を利用して行った場合には、この演算増幅器等を多値電圧生成手段におけるインピーダンス変換手段として用いることも可能となる。
【0055】
また、本発明は、上記のいずれかの電源供給装置を含む液晶表示装置であって、
前記電圧調整手段により液晶素子駆動用の電源電圧の調整を行い、該電圧調整により液晶表示におけるコントラスト調整が行われることを特徴とする。
【0056】
本発明によれば、電圧調整手段により液晶素子駆動用の電源電圧の調整を行うことにより液晶表示におけるコントラスト調整が行われる。即ち、第1の電圧を調整することでコントラスト調整の基準となる電圧、例えばセンター値等を調整することができる。そして、第2の電圧を調整することにより、液晶表示装置を使用するユーザは所望のコントラストを得ることができる。そして、この場合、第1の電圧を調整して、センター値等を変化させても、第2の電圧の電圧値は影響を受けない。従って、センター値等と、第2の電圧及び電圧調整範囲を別個独立に設定でき、従来よりも優れたコントラスト調整が可能となる。
【0057】
また、本発明は、上記のいずれかの電源供給装置を含み、6レベル駆動法により液晶素子が駆動される液晶表示装置であって、
前記6レベル駆動法に用いられる液晶素子駆動用の電源電圧を高電位側より第0レベル、第1レベル、第2レベル、第3レベル、第4レベル、第5レベルの駆動用電源電圧とした場合において、前記第2レベル及び第4レベルの駆動用電源電圧を前記第1のインピーダンス変換手段により供給し、前記第1レベル及び第3レベルの駆動用電源電圧を前記第2のインピーダンス変換手段により供給することを特徴とする。
【0058】
本発明によれば、駆動期間においてインピーダンス変換手段へと移動させる必要がある電荷の量が正である第2レベル、第4レベルの駆動用電源電圧は、正の電荷を多く引ける駆動部を有する第1のインピーダンス変換手段により供給される。また、該電荷の量が負である第1レベル、第3レベルの駆動用電源電圧は、負の電荷を多く引ける駆動部を有する第2のインピーダンス変換手段により供給される。これにより、駆動用電源電圧にかかる負荷に応じた適正な6値の電源電圧を、液晶素子に対して供給することが可能となる。
【0059】
また、本発明は、電圧分割を行い、該分割電圧をインピーダンス変換して多値の駆動用電源電圧として駆動対象に対して供給するための電源供給方法であって、
駆動期間内において駆動対象から移動させる必要がある電荷量の極性が正である駆動対象に対しては該駆動対象から正の電荷を多く引くように前記インピーダンス変換を行い、駆動期間内において駆動対象から移動させる必要がある電荷量の極性が負である駆動対象に対しては該駆動対象から負の電荷を多く引くように前記インピーダンス変換を行うことを特徴とする。
【0060】
本発明によれば、駆動用電源電圧にかかる負荷に応じた適正な多値の電源電圧を、駆動対象に対して供給することが可能となる。
【0061】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施例について説明する。
【0062】
1.第1の実施例
図1には、本発明の第1の実施例が示される。図1に示すように本第1の実施例の電源供給装置100は、電圧調整部102と多値電圧生成部110を含み、電源電圧から多値の液晶駆動用の電源電圧V0〜V5を生成している。
【0063】
ここで、電圧調整部102は、第1電圧生成部104、加算部106、第2電圧生成部107、制御部108を含み、調整電圧Vregを生成している。
【0064】
第1電圧生成部104は、電源電圧VS、VDDから、第1の電圧Vxを生成する機能を有する。例えば、液晶表示のコントラスト調整を行うためのセンター値Vcが、図2(A)に示す位置にあったとする。この場合には、第1電圧生成部104は、例えばVx=Vcとなるように第1の電圧Vxを生成することになる。また、第2の電圧生成部107は上記第1の電圧の生成とは独立に第2の電圧Vyを生成する。そして、この場合、第2の電圧Vyは、第1の電圧Vxを基準として設定された電圧調整範囲内において、制御部108により可変に制御される。そして、この可変に制御された第2の電圧Vyが、加算部106において上記第1の電圧Vxに加算されて、調整電圧Vregが生成されることになる。
【0065】
例えば、図2(A)の場合には、第1の電圧Vxに対して正又は負の値の第2電圧Vyを加算することで調整電圧Vregが生成される。そして、どのような値の第2の電圧Vyを加算するかは、制御部108に入力される調整電圧設定信号により決められることになる。
【0066】
このように、本第1の実施例では、第1の電圧Vxに対して、Vxの値に依存しない可変の第2の電圧Vyを加算することで、調整電圧Vregが生成される。従って、例えば図2(B)に示すように、コントラスト調整のためのセンター値Vcが、半導体デバイス、液晶素子の製造上のバラツキにより変動した場合にも、前述した従来技術のような不具合は生じない。即ち、この場合には、センター値Vcの変動に合わせてVx=Vcになるように第1の電圧Vxをまず調整する。そして、その後、この第1の電圧Vxを基準として、可変に制御される第2の電圧Vyを加算すれば、所望の調整電圧Vregを得ることができる。これにより、ユーザは、所望の明度に液晶表示のコントラストを調整できることになる。そして、この場合には、図35(A)、(B)に示す従来例の場合とは異なり、常に、上側にも下側にも同等の範囲でコントラスト調整を行うことが可能となる。
【0067】
なお、第1の電圧Vxは必ずしもセンタ−値Vcに一致するように調整する必要はなく、例えば図2(A)、(B)におけるVrmaxあるいはVrminに一致するように調整してもよい。そして、VxをVrmaxに一致させた場合には、電圧調整のために加算される第2の電圧Vyは正の値となり、VxをVrminに一致させた場合にはVyは負の値となる。
【0068】
次に多値電圧生成部110について説明する。本第1の実施例における多値電圧生成部110は、電圧分割部112と、第1、第2のインピーダンス変換部114〜120とを含む。電圧分割部112では、調整電圧Vreg、電源電圧VDD間が分割されて、分割端子122〜132に分割電圧が生成される。この場合には、分割端子126、130には第1のインピーダンス変換部116、120が接続され、容量性の液晶素子に対してインピーダンス変換された電源電圧V2、V4が供給される。また、分割端子124、128には第2のインピーダンス変換部114、118が接続され、容量性の液晶素子に対してインピーダンス変換された電源電圧V1、V3が供給される。
【0069】
さて、6レベル駆動法と呼ばれる液晶駆動においては、後述するように、電源電圧の種類により駆動期間内において液晶素子から電源供給装置へと移動しなければならない電荷量の極性が異なっていることが判明した。例えばV2、V4ではこの電荷量の極性は正となることが判明した。また、V1、V3ではこの電荷量の極性は負となることが判明した。そこで、本実施例では、V2、V4に対しては正の電荷を多く引ける駆動部を有する第1のインピーダンス変換部116、120が接続される。また、V1、V3に対しては、負の電荷を多く引ける駆動部を有する第2のインピーダンス変換部114、118が接続される。これにより、6レベル駆動法における電圧の平均化状態が維持でき、シャドウ、クロストークと呼ばれる現象が発生するのが防止される。この結果、液晶表示の品質を非常に向上させることが可能となった。
【0070】
2.第2の実施例
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本第2の実施例は、電圧調整部102の具体的な構成を示す実施例である。
【0071】
図3に示す第2の実施例の電圧調整部は、オペアンプ6と、基準電圧源7と、複数の電流源を有する定電流源8と、複数のスイッチを有する制御部9とを含む。
【0072】
オペアンプ6の+入力端子(第1の入力端子)には、基準電圧源7が接続され、−入力端子(第2の入力端子)には、抵抗10、11の一方の端子と制御部9の出力が接続されている。また、抵抗10の他方の端子はオペアンプ6の出力に接続され、抵抗11の他方の端子は固定電位VDDに接続されている。また、制御部9は、定電流源8とオペアンプ6の−入力端子との間に介在している。そして、調整電圧設定信号に基づいて、定電流源8から抵抗10へと流れる電流量が制御され、この電流量の変化によって電圧調整が行われる。
【0073】
この電圧調整部の出力である調整電圧Vreg(V5に接続される)は、第1の電圧Vxと第2の電圧Vyの和であり、次式のように表される。
【0074】
Vreg=Vx+Vy …式(5)
ここで、第1の電圧Vxは、抵抗10の抵抗値をR10、抵抗11の抵抗値をR11、基準電圧源7の電圧をVrefとすれば、オペアンプにおける出力電圧の一般式として次式で表わすことができる。
【0075】
Vx=(1+R10/R11)・Vref …式(6)
また、第2の電圧Vyは、定電流源8から制御部9を介して抵抗10に流れる電流I10により決められる。この場合の電流I10は、調整電圧設定信号により制御部9内のスイッチを選択的にオンすることにより可変されるものである。従って、第2の電圧Vyは次式のように表される。
【0076】
Vy=I10・R10 …式(7)
以上より、調整電圧Vregは次式のように表される。
【0077】
Vreg=(1+R10/R11)・Vref+I10・R10…式(8)
また、例えば、定電流源8から抵抗10に流れる電流I10の最大値をImaxとし、最小値をIminとした場合には、電圧調整範囲Vrangeは次式のように表される。
【0078】
Vrange=(Imax−Imin)・R10 …式(9)
上式(6)〜(9)から明らかなように、本実施例によれば、R10により、Vyが決定され、これにより電圧の調整範囲Vrangeも決められる。そして、R11によりVxが決定され、これにより電圧調整の基準となる電圧が決められる。この電圧調整の基準となる電圧は、上述のように電圧調整範囲におけるセンター値としてもよいし、最大値、最小値としてもよい。このように本実施例の電圧調整部によれば、Vx、Vy、Vrangeを個別に、独立に設定できることになる。
【0079】
図4には、図3に示す基準電圧源7、定電流源8、制御部9をMOSトランジスタで構成した場合の回路例が示される。
【0080】
基準電圧源7は、Pchトランジスタ15とNchトランジスタ20を含む。基準電圧源7により発生されるVrefは、Nchトランジスタ20の電流能力を小さくし、電源間に流れる電流を小さくすることにより、Pchトランジスタ15のしきい値電圧とほぼ同じ電圧とすることができる。また、定電流源8はPchトランジスタ16〜19を含む。そして、定電流源8では、ゲート電極が上記基準電圧Vrefに接続されたPchトランジスタ16〜19の飽和時の定電流特性を利用して定電流を得ている。また、制御部9は、上記Pchトランジスタ16〜19のドレイン領域に接続されたPchトランジスタ21〜24を含み、Pchトランジスタ21〜24のゲート電極に接続された調整電圧設定信号によって電流の導通と遮断を切り換えている。ここで定電流源8内の複数の電流源から流れる電流値の重みづけを2nとしたとする。即ち、それぞれの電流源の電流値の比率を8:4:2:1とすれば、調整電圧設定信号が4本の場合には、24=16段階の電圧調整が可能となる。なお、図3、図4では調整電圧設定信号が4本の場合の例が示されるが、図3、図4とは異なった本数にすることも当然可能である。更に、調整電圧設定信号は、マイクロコンピュータ等により書き込まれるレジスタから2値信号で得ることができるので、マイクロコンピュータ等による制御も容易となる。
【0081】
本実施例によれば、抵抗10の抵抗値を固定し抵抗11の抵抗値を可変する手段を持つようにすれば、電圧調整範囲を維持したまま電圧調整の基準となる電圧、例えばセンター値を変化させることが可能となる。従って、半導体デバイスや液晶素子に製造上のバラツキが生じた場合には、上記抵抗値可変手段により抵抗11の抵抗値を調整することで上記バラツキを補正できる。即ち、例えば図2に示すようにしてVxがコントラスト調整のセンター値Vcに一致するように調整する。そして、このように抵抗11の抵抗値を変えても、抵抗10の抵抗値は固定されているため、上式(9)から明らかなように、電圧調整範囲は変化しない。そして、このように変化しない電圧調整範囲内で、調整電圧設定信号を用いて所望の調整電圧Vregを得ることができることになる。この点、図33、図34に示す従来の電源供給装置では、図35(A)、(B)に示すように電圧調整の基準となる電圧であるセンター値Vcを変化させると上側及び下側に同等の範囲で電圧調整(コントラスト調整)を行うことができなかった。このため従来の電源供給装置では、電圧調整の基準となる電圧を変化させた場合にも十分広い範囲で電圧調整できるように、電圧調整範囲を余分に持たせる構成としていた。即ち、分圧抵抗313の段数を余分に持たせる構成としていた。
【0082】
これに対して、本実施例によれば、電圧調整の基準となる電圧を変化させても、電圧調整範囲は変化しないため、電圧調整範囲は要求される必要最低限で済むことになる。このことは電圧調整の定電流源8内の電流源の個数、制御部9内のスイッチの個数を必要最低限にできることを意味する。なおかつ電圧調整の制御信号をマイクロコンピュータ等から書き込まれるレジスタから2値信号で得ている場合にはレジスタのビット数を必要最低限にでき、それぞれを結ぶ配線数も少なくできることを意味する。
【0083】
更に、従来の電源供給装置では、製造上のバラツキの調整を行なった場合、調整後の分圧抵抗の段数の情報、即ち図35(A)、(B)における(0111)、(0100)の情報を不揮発性メモリなどに記憶しておく必要があった。しかし、本実施例によれば、製造上のバラツキの調整は抵抗11の抵抗値を可変することで行なうことができるため、このような情報を記憶しておく必要がなくなる。
【0084】
また、マイクロコンピュータで制御する場合には、システムリセット信号により定電流源8からの電流を遮断するようにしておけば、抵抗10、11の抵抗値のみで電圧調整部の出力電圧が決定されることになる。従って、ファームウェアの中にバラツキ調整用のプログラムを内蔵する必要もなくなり、電圧調整部の出力電圧を検出する回路も必要なくなる。例えば、このようにシステムリセット時に、定電流源8からの電流を遮断するように設定しておけば、図2(A)において、Vxを最小値Vrminに一致させておくことが可能となる。また、システムリセット時において、制御部9内のスイッチの一部をオンさせるように設定しておけば、例えば図2(A)においてVxをセンター値Vcに一致させておくことも可能となる。
【0085】
図5には、本実施例の電源供給装置を用いた液晶表示装置の一例が示される。
この液晶表示装置は、電源供給装置100と、コントラスト調整部140と、駆動信号生成部(LCDドライバー)142と、液晶パネル144とを含む。
【0086】
電圧調整部の出力である調整電圧Vregは、液晶駆動用電源電圧V5として駆動信号生成部142に供給されると共に、一方が固定電位に接続された分圧抵抗(電圧分割部)12の他方に接続される。そして、分圧抵抗12により分割された電圧がボルテージフォロワ接続されたオペアンプ1〜4の+入力端子に接続され、オペアンプ1〜4の出力は駆動用電源電圧V1、V2、V3、V4として駆動信号生成部142に入力される。なお、この場合、分割端子126、130には後述するようにN型と呼ぶオペアンプ2、4が接続され、分割端子124、128にはP型と呼ぶオペアンプ1、3が接続される。また、V5については、電圧調整部内のオペアンプ6を代用してインピーダンス変換を行うことができ、これにより回路素子数を削減できることになる。
【0087】
駆動信号生成部142は、例えば6レベル駆動法に基づいて、これらの駆動用電源電圧V0〜V5のいずれかを選択することで駆動信号を生成する。そして、この駆動信号により液晶素子が駆動されることになる。そして、ユーザがコントラスト調整部140によりコントラスト調整を行う操作をすると、コントラスト調整部140により出力される調整電圧設定信号によりVregの値が調整される。これにより液晶パネル144に供給されるV1〜V5の電圧が調整されることになり、液晶表示のコントラスト調整が行われることになる。
【0088】
この場合、電圧調整部の出力である調整電圧Vregは、上式(8)に示されるように、分圧抵抗12の抵抗値とは無関係である。従って、分圧抵抗12の抵抗値を大きくすることにより電源間に流れる電流を非常に小さくすることができる。この結果、電源供給装置及び液晶表示装置の大幅な低消費電力化を図ることが可能となる。
【0089】
以上のように本実施例の電源供給装置は液晶表示装置に適用できるが、この液晶表示装置はその軽量と消費電力の少なさから小型・軽量の必要な携帯機器に多く用いられている。従って、液晶表示装置を備えた機器では、液晶表示装置の本来の特長(小型・軽量)を生かすべく、回路の低消費電力と小型化が要求されている。このため、その要求に沿うためにも、これまでに挙げた効果の得られる本実施例の電源供給装置を液晶表示装置に使用することは有効な手段となる。
【0090】
次に回路の安定性という観点から本実施例の効果を説明する。
【0091】
本実施例においては、電圧調整の基準となる電圧であるVxの値は、上式(6)から明らかなように、基準電圧Vrefの値及び抵抗10と抵抗11との抵抗比により決定される。これに対して、図33、図34に示す従来例では、電圧調整の基準となる電圧は、電源電圧VDDと電源電圧VSとの間の電圧差を抵抗分割することにより決定される。このため従来例では電源電圧が変動すると電圧調整の基準となる電圧が変動してしまうという問題があったが、本実施例では電源電圧が変動してもVxは一定に保たれる。
【0092】
また、本実施例においては、電圧調整範囲を決める電圧であるVyは、上式(7)に示すように、定電流源8から制御部9を介して抵抗10に流れる電流I10の値と、抵抗10の抵抗値とによって決定される。そして、この定電流源8からの電流I10は、電源電圧が変動しても一定に保たれる。従って、Vyについても電源電圧の変動に対して一定に保つことができ、電圧調整範囲Vrangeも一定に保てることになる。例えば、図4は図2、図3の定電流源8をMOSトランジスタによって構成した例であるが、定電流領域で動作するトランジスタのゲート電圧を基準電圧Vrefから得ており、ゲート電圧が一定に保たれるのでドレイン電流は一定となる。これにより、電源電圧が変化しても定電流源から流れる電流が一定に保たれ、Vy及びVrangeは一定に保たれる。
【0093】
以上のように本実施例によれば電源電圧の変動に依存しない安定した調整電圧Vreg(=Vx+Vy)と電圧調整範囲Vrangeとを容易に得ることができる。このことは、電池(バッテリー)を電源とした場合など動作電圧範囲の広い機器に利用する場合に、電源電圧にかかわらず安定した動作ができるということを意味する。特に、液晶表示装置におけるコントラスト調整はこの調整電圧に大きく依存する。従って、動作電圧範囲の広い機器に使用される液晶表示装置において、本実施例を適用すれば、電源電圧にかかわらず駆動用電源の電圧を一定に保ち一定のコントラストを得ることができる。また、電圧調整範囲も同様に電源電圧が変動しても一定に保つことができる。従って、本実施例によれば、表示品質を非常に向上でき、製品価値を非常に高めることができる。
【0094】
更に、調整電圧の供給先である駆動対象の素子特性が温度特性を持つ場合があり、このような場合には、調整電圧に対してこの温度特性を補償するような温度特性を持たせることが望ましい。例えば、液晶表示素子ではその表示品質が周囲の温度に大きく依存し、一定の表示品質を保つためには周囲温度に対して負の温度特性を持つような電圧で駆動することが望ましい。これを実現するために従来では、温度特性をもつ素子、例えばサーミスタ等を分圧抵抗に接続し、温度特性の補償を行うのが一般的であった。
【0095】
本実施例では、このような場合に、第1、第2の電圧Vx、Vyに対して駆動対象の温度特性を補償するような温度特性を持たせている。例えば、図4を例にとり説明すれば以下のようになる。即ち、基準電圧源7により生じる基準電圧Vrefの値は、前述のようにPchトランジスタ15のしきい値電圧とほぼ同一値となる。そして、一般にMOSトランジスタのしきい値電圧は負の温度特性を持つため、この基準電圧Vrefの値と、抵抗10及び抵抗11の抵抗比とで決まる第1の電圧Vxも、負の温度特性を持つことになる。更に、定電流源8から流れる電流の量もMOSトランジスタのしきい値電圧に依存し、負の温度特性を持つため、第2の電圧Vy及び電圧調整範囲Vrangeも負の温度特性を持つことになる。即ち、本実施例によれば、調整電圧Vreg及び電圧調整範囲Vrangeの両方に対して負の温度特性を持たせることが可能となる。このように本実施例によれば、サーミスタ等の温度特性を持つ素子を追加することなく、調整電圧Vreg、電圧調整範囲Vrangeに温度特性を持たせることが可能となる。これにより、部品点数の削減が可能となり、また、半導体装置に電源供給装置を内蔵した場合には外付け部品の削減が可能となり、装置の小型化やコストの低減化を図ることが可能となる。
【0096】
なお、図6には、本実施例を用いた場合に駆動用電源電圧V5に現れる温度特性の一例が示される。図6から明らかなように、V5は負の温度特性を持っている。従って、このV5を負の温度特性をもつ液晶素子の駆動用電源電圧として使用すれば、液晶表示装置の表示品質を高めることができる。
【0097】
また、例えば基準電圧源7内のPチャネルトランジスタ15あるいは定電流源8内のPチャネルトランジスタ16〜19に対して直列に、トランジスタと異なる温度特性を持つ素子、例えば抵抗等を接続すれば、図6に示す温度特性曲線の勾配を変化させることもできる。これにより、液晶素子の温度特性との適合性を更に高めることが可能となる。
【0098】
3.第3の実施例
A.構成について
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本第3の実施例は、多値電圧生成部110の具体的な構成を示す実施例である。
【0099】
図7に示す本第3の実施例にかかる多値電圧生成部は、電圧分割部203と、オペアンプ1〜4を含む。そして、オペアンプ1〜4は、電圧分割部203の分割端子224〜230に接続され、各々V1〜V4を供給している。ここで、本実施例では、V1、V3を供給するオペアンプとして、図8に示す構成のオペアンプ(以下、P型オペアンプと呼ぶ)を使用し、V2、V4を供給するオペアンプとして、図10に示す構成のオペアンプ(以下、N型オペアンプと呼ぶ)を使用している。
【0100】
電圧分割部203は、ドレイン領域とゲート電極がショートされ直列に接続された9個のトランジスタを含み、これらのトランジスタを抵抗の代わりに用いることにより電圧分割を行っている。この場合、これらのトランジスタは全て同じ電流供給能力を持つように設定されているため、V0とV5の間の電圧は正しく9分割されることになる(1/9バイアス)。そして、9分割された電圧のうちV0側から低い方へ一番目の電圧をV1、2番目の電圧をV2と呼び、V5側から高い方へ一番目の電圧をV4、2番目の電圧をV3と呼ぶことにする。電圧分割は図33、図34に示す従来例のように抵抗を用いても当然可能である。しかし、低消費電流化を図るためには、これらの抵抗を高抵抗にしなければならず、IC内では高抵抗を作ろうとすると、大きな面積を必要としたり、新たな製造工程を追加しなければならないなどの問題が生じる。そこで、本実施例では、ドレイン領域とゲート電極をショートしたトランジスタを高抵抗の代わりに用いている。これにより、電圧分割部203に流れる消費電流を0.2μA程度に抑えることが可能となった。
【0101】
図8には、図7に示すP型オペアンプのトランジスタレベルの回路図が示される。このP型オペアンプは、差動増幅部206と駆動部200とを含む。差動増幅部206は、+入力端子208、−入力端子209の2つの入力端子と、1つの出力端子210を有する回路であり、2つの入力端子の電圧差を出力端子210に増幅して出力する回路として公知であるので、説明は省略する。駆動部200は、Pチャネル駆動トランジスタ204、Nチャネル負荷トランジスタ205を有する。また、差動増幅部206と駆動部200との間には、発振防止用コンデンサ207が設けられている。そして、ボルテージフォロワ接続の構成、即ち差動増幅部206の−入力端子209とオペアンプの出力端子211を接続する構成となっている。
【0102】
駆動部200内のPチャネル駆動トランジスタ204は、Nチャネル負荷トランジスタ205と直列に接続され、その接続点がオペアンプの出力端子211となっている。Nチャネル負荷トランジスタ205は、そのドレイン領域とゲート電極とを接続することにより、抵抗の機能を持たせている。オペアンプの出力端子211は差動増幅部206の−入力端子209に接続され、差動増幅部206の出力端子210はPチャネル駆動トランジスタ204のゲート電極に接続されている。このように接続した回路により+入力端子208に与えられた電圧はオペアンプの出力端子211に同一レベルの電圧であらわれる。これは差動増幅部206により+入力端子208とオペアンプの出力端子211とが同一電圧となるように、Pチャネル駆動トランジスタ204のゲート電圧がコントロールされるためである。
【0103】
なお、Nチャネル負荷トランジスタ205については、そのゲート電極に定電圧を与えて定電流源として機能させてもよい。
【0104】
図9には、P型オペアンプ内のNチャネル負荷トランジスタ205、Pチャネル駆動トランジスタ204の電流特性の関係図が示される。図9において、214はNチャネル負荷トランジスタ205の電流特性であり、215はオペアンプの出力端子211に負荷のない場合のPチャネル駆動トランジスタ204の電流特性である。また、216はオペアンプの出力端子211に負の負荷がかかった場合のPチャネル駆動トランジスタ204の電流特性であり、217はオペアンプの出力端子211に正の負荷がかかった場合のPチャネル駆動トランジスタ204の電流特性である。
【0105】
なお、ここで負の負荷がかかった場合とは、低い電圧(電位)に接続され、電流が引き抜かれる場合(負の電荷が駆動部に引き込まれる場合)をいう。また、正の負荷がかかった場合とは、高い電圧(電位)に接続され、電流が引き込まれる場合(正の電荷が駆動部に引き込まれる場合)をいう。
【0106】
オペアンプの出力端子211に負荷がかかっていない場合のPチャネル駆動トランジスタ204の電流特性は図9の215に示す電流特性となり、この電流特性215と、Nチャネル負荷トランジスタ205の電流特性214との交点Aにおける電流が定常電流として流れることになる。
【0107】
例えばオペアンプの出力端子211に負の負荷がかかり、出力端子211の電圧が下降した場合(低い電圧に接続され、電流が引き抜かれる場合)を考える。
この場合には、オペアンプの出力端子211は−入力端子209に接続されているため、−入力端子209の電圧が下降する。一方、+入力端子208の電圧は変わらないため、+入力端子208と−入力端子209との間に電圧差が生じ、差動増幅部206の出力端子210の電圧は差動増幅部206により増幅されて下降する。すると、Pチャネル駆動トランジスタ204のゲート電極に供給されるゲート電圧が下降することになり、Pチャネル駆動トランジスタ204の電流供給能力が増大する。これにより、Pチャネル駆動トランジスタ204の電流特性は図9の216に示す電流特性となり、流し込み電流によりオペアンプの出力端子211の電圧が引き上げられることになる。
【0108】
次に、逆に、オペアンプの出力端子211に正の負荷がかかり、出力端子211の電圧が上昇した場合(高い電圧に接続され、電流が引き込まれる場合)を考える。この場合には、負の負荷がかかった場合と全く反対の動作になり、差動増幅部の出力端子210の電圧は差動増幅部206により増幅されて上昇する。すると、Pチャネル駆動トランジスタ204のゲート電極に供給されるゲート電圧が上昇することになり、Pチャネル駆動トランジスタ204の電流供給能力は減少する。これにより、Pチャネル駆動トランジスタ204の電流特性は、図9の217に示す電流特性となる。そして、Nチャネル負荷トランジスタ205の引き抜き電流によりオペアンプの出力端子211の電圧が引き下げられる。
【0109】
以上のように、オペアンプの出力端子211の電圧は、差動増幅部206の+入力端子208の電圧よりも高くなれば引き下げられ、低くなれば引き上げられて、常に+入力端子208の電圧と同一レベルに保たれることになる。
【0110】
さて、このP型オペアンプの消費電流は、差動増幅部206の消費電流I1と、Pチャネル駆動トランジスタ204とNチャネル負荷トランジスタ205の間に流れる消費電流I2との合計で決まる。本実施例においては消費電流I1は0.7μA程度に抑えている。しかし、定常的に流れる消費電流I2は、Pチャネル駆動トランジスタ204の電流供給能力には関係なく、Nチャネル負荷トランジスタ205の電流供給能力により決まる。Nチャネル負荷トランジスタ205の電流供給能力を小さくすれば小さくするほど定常的に流れる消費電流I2は小さくなるが、極端に小さくする事はできない。なぜならオペアンプの出力端子211の電圧が上昇した場合(正の負荷がかかった場合)に、その電圧を引き下げる能力はNチャネル負荷トランジスタ205の電流供給能力で決まるからである。即ち、消費電流を抑えれば抑えるほど電圧を引き下げる能力が落ちてしまい、電圧を引き下げる能力を上げれば上げるほど消費電流が増えてしまうことになる。
【0111】
ところが、後述するようにV1、V3においては、駆動期間においてオペアンプ側に移動させる必要がある電荷量の極性は負となっている。そこで、本実施例では、V1、V3には負の電荷を多く引ける駆動部200を有するオペアンプ、即ちP型オペアンプを接続している。これにより、駆動期間内にV1、V3から十分に負の電荷を引くことができ、シャドウ、クロストーク等の現象が生じるのを防止でき、液晶の表示特性が悪化するのを防止できることになる。一方、P型オペアンプにおいては、正の負荷がかかった場合には、Nチャネル負荷トランジスタ205により正の電荷を引き込まなければならない。しかしながら、V1、V3においては、駆動期間においてオペアンプ側に移動させる必要がある電荷量の極性は負となっている。従って、V1、V3にP型オペアンプを接続する構成とする本実施例の場合には、P型オペアンプの駆動部200には正の電荷を引く能力はあまり要求されないことになる。この結果、本実施例によれば、Nチャネル負荷トランジスタ205の電流供給能力を十分に低く抑えることができ、駆動部200に定常的に流れる消費電流I2を15μA程度に抑えることが可能となる。これにより、P型オペアンプの消費電流をI1+I2=15.7μA程度に抑えることが可能となった。
【0112】
図10は図7に示すN型オペアンプのトランジスタレベルの回路図が示される。このN型オペアンプと上記P型オペアンプとは駆動部201の構成が異なっており、駆動部201は、Nチャネル駆動トランジスタ212とPチャネル負荷トランジスタ213とを含んでいる。そして、差動増幅部206の−入力端子209とオペアンプの出力端子211とを接続することによりボルテージフォロワ接続の構成となっている。
【0113】
N型オペアンプでは、P型オペアンプと同様に、オペアンプの出力端子211の電圧は+入力端子208の電圧より高くなれば引き下げられ、低くなれば引き上げられて、常に+入力端子208の電圧と同一になるように保たれる。しかし、N型オペアンプでは、P型オペアンプと異なり、オペアンプの出力端子211の電圧が上昇した場合(正の負荷がかかった場合)に、その電圧を引き下げる能力はNチャネル駆動トランジスタ212の電流供給能力で決まる。また、P型オペアンプと異なり、オペアンプの出力端子211の電圧が下降した場合(負の負荷がかかった場合)に、その電圧を引き上げる能力は、Pチャネル負荷トランジスタ213の電流供給能力で決まる。ここで、Pチャネル負荷トランジスタ213は、そのゲート電極とドレイン領域を短絡することにより、抵抗の機能を持たせているものである。なお、Pチャネル負荷トランジスタ213については、そのゲート電極に定電圧を与えて定電流源として機能させてもよい。
【0114】
さて、N型オペアンプの駆動部201に定常的に流れる消費電流I2は、Nチャネル駆動トランジスタ212の電流供給能力には関係なく、Pチャネル負荷トランジスタ213の電流供給能力を小さくすればするほど小さくなる。即ち、消費電流を抑えれば抑えるほど電圧を引き上げる能力が落ちてしまい、電圧を引き上げる能力を上げれば上げるほど消費電流が増えてしまうことになる。
【0115】
ところが、後述するようにV2、V4においては、駆動期間においてオペアンプ側に移動させる必要がある電荷量の極性は正となっている。そこで、本実施例では、V2、V4には正の電荷を多く引ける駆動部201を有するオペアンプ、即ちN型オペアンプを接続している。これにより、駆動期間内にV2、V4から十分に正の電荷を引くことができ、シャドウ、クロストーク等の現象が生じるのを防止できることになる。一方、N型オペアンプにおいては、負の負荷がかかった場合には、Pチャネル負荷トランジスタ213により負の電荷を引き込まなければならない。しかしながら、V2、V4においては、駆動期間においてオペアンプ側に移動させる必要がある電荷量の極性は正となっている。従って、V2、V4にN型オペアンプを接続する構成とする本実施例の場合には、N型オペアンプの駆動部201には負の電荷を引く能力はあまり要求されないことになる。この結果、本実施例によれば、Pチャネル負荷トランジスタ213の電流供給能力を十分に低く抑えることができ、駆動部201に定常的に流れる消費電流I2を15μA程度に抑えることが可能となる。これにより、N型オペアンプの消費電流をI1+I2=15.7μA程度に抑えることが可能となった(I1=0.7μA)。
【0116】
以上のように本実施例によれば、電圧分割部203、P型及びN型オペアンプでの消費電流は各々0.2μA、15.7μAになる。従って、多値電圧生成部全体での消費電流を、0.2+15.7×4=63μAに抑えることが可能となった。このように、液晶の表示品質を低下させないで装置全体の消費電流を最大限に減らすためには、駆動期間内においてインピーダンス変換手段へと移動させる必要がある電荷量の極性が正である駆動用電源電圧(V2、V4)にはN型オペアンプ)を接続し、該電荷量の極性が負である駆動用電源電圧(V1、V3)には、P型オペアンプを接続すればよいことが理解される。
【0117】
B.駆動用電源電圧にかかる負荷の計算について
次に、単純マトリクスLCDを線順次に時分割駆動する場合に、駆動用電源電圧であるV1〜V4にどのような負荷がかかるのかを、ある大きさのLCDパネルを駆動する場合を例にとり、以下に説明する。
【0118】
図11(A)には、コモン電極の電圧、セグメント電極の電圧とV0〜V5との関係が示される。例えば、コモン電極の電圧は選択された期間にはV5(V0)となり、非選択の場合はV1(V4)となる。そして、コモン電極の電圧がV5(V0)の場合にセグメント電極の電圧がV0(V5)であれば点灯となり、V2(V3)であれば非点灯となる(カッコ内はFR信号=Lの場合)。また、図11(B)には、コモン電極とセグメント電極の配置例が示される。
【0119】
さて、以下に行う計算の目的は、V1〜V4にかかる最大負荷の相対的な大小関係を求めることにある。従って、計算を容易にするため以下に示す条件にて計算を行う。
【0120】
(1)LCDパネルの表示容量を64×100ドットとする。言い替えれば、64ラインのコモン電極と100ラインのセグメント電極を備えたLCDパネルである(図11(B)参照)。
【0121】
(2)64ラインのコモン電極なので1/64デューティにて時分割駆動する。
【0122】
(3)駆動用電源電圧V0〜V5の値は、電圧平均化法により算出される計算式により1/9バイアスとなるが、V0=0V、V1=−1V、V2=−2V、V3=−7V、V4=−8V、V5=−9Vとして計算を行いやすいようにする。
【0123】
(4)容量は、計算を容易にするために、コモン電極1ラインあたり1F(ファラド)であると仮定する。
【0124】
(5)液晶は容量性の素子であり、LCDパネルは電気的にコンデンサと等価である。従って、そのコンデンサの両端の電極(つまり、コモン電極とセグメント電極)より充放電する際に移動する電荷の量をQ=CV(Qは電荷量、Cは容量、Vは電圧)により計算し、その大きさをV1〜V4にかかる負荷と考える。
例えば、図12(A)、(B)には、セグメント電極の電圧がV3でコモン電極の電圧がV4の状態から、セグメント電極の電圧がV2でコモン電極の電圧がV1の状態に変化した場合に、V2に対してどのような電荷が流れこむのかが模式的に示される。即ち、図12(A)の状態では、LCDパネルを等価的に表したコンデンサ(C=1F)のセグメント電極側には、(−7)−(−8)=+1C(クーロン)の電荷が蓄えられている。一方、図12(B)の状態に変化すると、コンデンサのセグメント電極側には(−2)−(−1)=−1Cの電荷が蓄えられることになる。従って、図12(B)に示すように、この状態の変化によりV2では+1−(−1)=2Cの正の電荷を引き込まなければならないことになる。即ち、この場合にはV2には+2の正の負荷がかかることになる。
【0125】
(6)本計算で求めようとしているのは、V1〜V4にかかる負荷の最大値である。従って、負荷の計算を行う場合には、全てのセグメント電極の電圧が同じ方向に変化した場合を考えればよい。例えば、図11(B)において、セグメント電極SEG1がV3からV2に変化し、セグメント電極SEG2がV5からV2に変化する場合等、セグメント電極の電圧の変化の方向が混在する場合は考えなくてもよい。このように変化の方向が混在する場合の負荷の大きさは、全てのセグメント電極SEG1〜SEG100の電圧が全て同じ方向に変化した場合(最大負荷の場合)よりも小さくなるからである。
【0126】
(7)本計算においては、V1〜V4に流れる電荷量の駆動期間内における合計を求める必要がある。そこで、図13に示すように、駆動期間を、FR信号の切り替わり時Aと、それ以外の期間Bの2つに分けて計算を行うこととする。なお、図13において、FR信号とは、液晶駆動のための交流化信号であり、DCK(ドットクロック)とは、駆動信号を生成するための基準となるクロックである。
【0127】
次に、具体的にV2を例にとり、V2にかかる負荷を計算する。
【0128】
図11(A)に示すように、セグメント電極のとりうる値は、V0、V2(FR信号=H)、V5、V3(FR信号=L)のいずれかである。従って、セグメント電極の電圧が、これらの電圧からV2に変化する場合としては、V0→V2、V2→V2、V5→V2、V3→V2の変化が考えられる。そして、FR信号の切り替え時Aでは、期間の変わり目であるためV0→V2の変化、V2→V2の変化はなく、V3→V2、V5→V2の変化だけを考えればよいことになる。
また、B期間では、同一期間内であるためV3→V2、V5→V2の変化はなく、V0→V2、V2→V2の変化のみを考えればよいことになる。
【0129】
図14には、FR切り替え時Aにおいてセグメント電極の電圧がV3からV2に変化する場合のコモン波形及びセグメント波形が示される。図14に示すように、コモン電極COM1からCOM64にゆくにしたがってV5(V0)となる期間が順次シフトすることで、セグメント電極が選択されることになる。なお、上述のように、本計算においては全てのセグメント電極の電圧が同一の方向に変化する場合のみを考えればよいので、図14においてはCOM1〜COM64と、SEG1との関係のみを示している。
【0130】
さて、負荷の計算を行う際には、非選択ライン、選択終了ライン、選択開始ラインに分けて考えればよい。ここで、非選択ラインとは、コモン信号により選択されていないラインであり、図14の#1に示すように64−2=62ラインある。また、選択終了ラインとは、該ラインの前のラインがコモン信号により選択されたラインであり、図14の#2に示すように1ラインある。また、選択ラインとは、コモン信号により選択されたラインであり、図14の#3に示すように1ラインある。負荷の計算はこれらの#1、#2、#3の各々について行うことになる。
【0131】
図15には、FR切り替わり時Aにおいて、全てのセグメント電極の電圧がV3からV2に変わる時にV2にかかる負荷を計算するプロセス及び計算結果が示されている。例えば、非選択ライン(#1)においては、セグメント電極がV3からV2に変化し、コモン電極がV4からV1に変化している。従って、前述の図12(A)、(B)に示すように、LCDパネルを等価的に表したコンデンサのセグメント電極側に蓄えられる電荷は、+1Cから−1Cへと変化する。従って、この場合にV2において引き込まなければならない電荷量は+2Cとなる。
そして、図14に示すように、非選択ライン(#1)は、62ラインあるため、合計で2×62=124Cの正の電荷をV2において引き込まなければならないことになる。
【0132】
選択終了ライン(#2)、選択開始ライン(#3)についても同様に、図15に示すように計算できる。但し、これらのラインは図14に示すように各々1ラインしかない。そのためV2において引き込まなければならない電荷量の合計は少なく、各々−6Cとなる。
【0133】
以上より、FR切り替え時Aにおいて、セグメント電極の電圧がV3からV2に変化する場合の電荷量の合計は124−6−6=+112Cとなる。即ち、この場合にはV2には正の負荷がかかることになる。
【0134】
図16には、FR切り替え時Aにおいてセグメント電極の電圧がV5からV2に変化する場合のコモン波形及びセグメント波形が示される。図16の場合も、図14の場合と同様に、非選択ライン(#1)、選択終了ライン(#2)、選択開始ライン(#3)に分けて負荷の計算を行う。図17には、その計算プロセス及び計算結果が示される。図17に示すように、この場合にV2において引き込まなければならない電荷量の合計は−16Cとなる。即ち、この場合にはV2には負の負荷がかかることになる。
【0135】
図18には、FR切り替え時A以外の期間Bにおいてセグメント電極の電圧がV0からV2に変化する場合のコモン波形及びセグメント波形が示される。例えば、B期間におけるB1においては、COM1が選択終了ライン(#2)、COM2が選択開始ライン(#3)、COM3〜COM64が非選択ライン(#1)となる。同様にB2においては、COM1、COM2、COM5〜COM64が非選択ライン(#1)、COM3が選択終了ライン(#2)、COM4が選択開始ライン(#3)となる。B3〜B31についても同様に考えることができる。
【0136】
図18の場合も、図14の場合と同様に、非選択ライン(#1)、選択終了ライン(#2)、選択開始ライン(#3)に分けて負荷の計算を行う。図19には、その計算プロセス及び計算結果が示される。図19に示すように、この場合にV2において引き込まなければならない電荷量の合計は+128Cとなる。即ち、この場合にはV2には正の負荷がかかることになる。なお、図18に示すB1〜B32のどの場合においても図19に示す計算結果は同一のものとなる。
【0137】
図20には、FR切り替え時A以外の期間Bにおいてセグメント電極の電圧がV2のまま変化しない場合のコモン波形及びセグメント波形が示される。図20の場合も、図14の場合と同様に、非選択ライン(#1)、選択終了ライン(#2)、選択開始ライン(#3)に分けて負荷の計算を行う。図21には、その計算プロセス及び計算結果が示される。図21に示すように、この場合にV2にかかる負荷は0となる。
【0138】
以上のようにして、全ての場合についてV2にかかる負荷を計算できたことになる。即ち、FR切り替わり時Aにおいては表示パターンによって、−16C〜+112Cの電荷を、B期間においては表示パターンによって、0C〜+128Cの電荷をV2において引き込まなければならないことになる。
【0139】
図22〜図25には、V1にかかる負荷についての計算プロセス及び計算結果が示される。図22には、FR切り替え時Aにおいて全てのセグメント電極の電圧がV5からV2、V5からV0に変化する場合が示され、図23には、FR切り替え時Aにおいて全てのセグメント電極の電圧がV3からV2、V3からV0に変化する場合が示される。また、図24には、B期間において全てのセグメント電極の電圧がV0からV2、V0からV0に変化した場合が示され、図25には、B期間において全てのセグメント電極の電圧がV2からV2、V2からV0に変化した場合が示される。
【0140】
更に、V3、V4についても同様に負荷を計算することができる。図26には、以上の計算結果をまとめたものが示される。図26に示すように、V3についてはV2と逆の方向に同じ量の負荷がかかっており、V4についてはV1と逆の方向に同じ量の負荷がかかっている。
【0141】
図26より、V2の最大負荷の極性(駆動期間内においてオペアンプ側に移動させる必要がある電荷量の極性)は正であり、V3の最大負荷の極性は負であることは明らかである。これに対して、V1とV4については正の負荷も負の負荷もほぼ同じ値となるため、最大の負荷の極性が正、負のいずれかであるを図26のみでは決めることができない。しかし、一般にFR信号はDCKよりかなり遅く、本実施例では70Hz程度を用いている。それに対し、B期間において負荷がかかるタイミングはDCKに同期しており、本実施例の場合4kHz程度である。従って、負荷のかかる回数は、FR切り替え時AよりもB期間の方が圧倒的に多い。例えば、図18において、負荷のかかる回数は、FR切り替え時Aでは1回のみであるのに対して、B期間においてはB1〜B31の32回となる。また、V1〜V4には図示しない平滑容量といわれるコンデンサが、VDD(0V)との間に接続されるため、V1〜V4の電圧は時間的に平滑される。つまり、時間的に平滑してしまえば、駆動期間内にかかるV1〜V4にかかる負荷の量は、B期間にかかる負荷の量によりほぼ決定されてしまうということができる。
【0142】
従って、V1についてはB期間において負の方向にかかる負荷の方が大きいため最大負荷の極性は負となる。また、V4については、B期間において正の方向にかかる負荷の方が大きいため最大負荷の極性は正となる。
【0143】
以上のように、V1、V3についての最大負荷の極性は負となる。従って、V1、V3についてはP型オペアンプを用いることが適当であるという結論になる。また、V2、V4のについては最大負荷の極性は正となる。従って、V2、V4についてはN型オペアンプを用いることが適当であるという結論になる。そして、このように接続することで、多値電圧生成部全体での消費電流を63μAとし、表示品質を向上させるとともに低消費電力化を図るという技術的課題を達成できることになる。
【0144】
これに対して、図34に示す従来例では、V1〜V4についてのインピーダンス変換は、全てN型オペアンプにより行われていた。しかし、このような構成とすると、V1、V3のインピーダンス変換を行うN型オペアンプについては、Pチャネル負荷トランジスタ213(図10参照)の電流供給能力を相当に大きくしなければならなくなる。なぜならば、上述のようにV1、V3については駆動期間において負の電荷を多く引かなければならず、この電荷を引けなかった場合には電圧平均化法における平均化状態が維持できなくなり、シャドウ、クロストーク等の現象が生じてしまうからである。逆に、従来例において、このような現象を生じないようにすべく、Pチャネル負荷トランジスタ213の電流供給能力を増加させると、消費電流が例えば350μA以上となってしまい、低消費電力化という課題を解決できないことになる。
【0145】
4.第4の実施例
第4の実施例は、消費電力を更に低く抑えるべく、インピーダンス変換を行うオペアンプに電流制御機能を持たせた実施例である。
【0146】
図27には、この電流制御機能を持たせたN型オペアンプの一例が示される。
図27に示すオペアンプは、図10に示すN型オペアンプと、駆動部202の構成が異なっている。即ち、駆動部202は、Nチャネル駆動トランジスタ212、Pチャネル負荷トランジスタ213の他に、第2のPチャネル負荷トランジスタ218と、電流制御用Pチャネルトランジスタ219とを新たに含んでいる。第2のPチャネル負荷トランジスタ218は、ドレイン領域とゲート電極を短絡されるとともに、該ドレイン領域がオペアンプの出力端子211に接続されている。また、電流制御用Pチャネルトランジスタ219は、この第2のPチャネル負荷トランジスタ218の直列に接続されると共に、ゲート電極にはコントロール端子222が接続されている。
【0147】
さて、LCDパネルを駆動する駆動信号は、DCKを基準クロックに生成される。また、LCDパネルは電気的にコンデンサと等価とみなすことができるので、LCDを駆動する時に駆動用電源電圧にかかる負荷は、駆動信号の切り替わり時、即ちDCKの切り替わり時のみに発生しているといえる。即ち、DCKの立ち下がりエッジで動作を行っているシステムにおいてはDCKの立ち下がり時のみに、DCKの立ち上がりエッジで動作を行っているシステムにおいてはDCKの立ち上がり時のみに負荷が発生する。なぜならば、LCDはコンデンサと等価とみなすことができるため、一度、該コンデンサーがある電圧にチャージされると、他に電流の流れる経路はなく、ただその電圧を維持しているだけでよいからである。なお、以下、DCKの立ち上がりで動作するシステムを例にとり説明を行う。
【0148】
前述の図26に示すように、各駆動用電源電圧にかかる負荷は必ずしも正負のうち一方向ではない。例えば、V1、V3に接続されるP型オペアンプに対して正の負荷がかかる場合があり、この場合には、P型オペアンプ内のNチャネル負荷トランジスタ205により正の電荷を引き込んでやらなければならない。また、V2、V4に接続されるN型オペアンプに対して負の負荷がかかる場合があり、この場合には、N型オペアンプ内のPチャネル負荷トランジスタ213により負の電荷を引き込んでやらなければならない。このため、P型オペアンプのNチャネル負荷トランジスタ205、N型オペアンプのPチャネル負荷トランジスタ213にもある程度の電流供給能力が必要とされる。
【0149】
しかし、上述のように、V1〜V4にはDCK切り替わり時のみ負荷がかかる。従って、負荷トランジスタ205、214には、DCK切り替わり時及びその後の一定期間のみ電流を流してやればよく、それ以外の期間では電圧を保持できる程度の電流を流せば十分となる。
【0150】
そこで、本実施例では、図27に示すように、Pチャネル負荷トランジスタ213と並列に第2のPチャネル負荷トランジスタ218を設け、これに直列にと電流制御用Pチャネルトランジスタ219を接続する構成としている。そして、DCKの立ち上がり時及びその後の一定期間、Lレベルとなるようなコントロール信号をコントロール端子222に入力する。これにより、DCKの立ち上がり時及びその後の一定期間のみ第2のPチャネル負荷トランジスタ218がオンし、電流I3が流れることになる。そして、それ以外の期間においては、電圧を保持できる程度のわずかな電流I2がPチャネル負荷トランジスタ213により流れることになる。図28には、DCK、コントロール信号、FR信号のタイミングチャートが示される。DCKの立ち上がり時及びその後の一定期間のみ電流制御用Pチャネルトランジスタ219をオンし、電流I3を流すためのコントロール信号として図28に示すCONT1信号を用いる。このCONT1信号は、コントロール端子222を介して電流制御用Pチャネルトランジスタ219のゲート電極に入力される。
【0151】
本実施例においては電流I2を0.1μAに抑え、制御電流I3を30μAとした。そして、制御電流I3はDCKの1周期の1/4の期間のみ流すようにしたため、I3の平均電流は7.5μAとなる。従って、駆動部202で消費される電流は、I2+I3=7.6μAとなる。差動増幅部206において消費する電流I1は0.7μAであるため、オペアンプ全体の消費電流は8.3μAとなる。これにより、オペアンプの消費電流を、図10に示す電流制御機能のないN型オペアンプの消費電流(15.7μA)の約1/1.9倍にすることが可能となった。
【0152】
以上、N型オペアンプの場合について説明した。しかし、P型オペアンプにおいても、Nチャネル負荷トランジスタ205に並列に、第2のNチャネル負荷トランジスタ及びこれに直列に接続された電流制御用のNチャネルトランジスタを設けることで、同様の電流制御機能を持たせることが可能である。そして、この場合には、図28のCONT1を反転した信号をコントロール信号として用いることになる。
【0153】
さて、装置の更なる低消費電力化を図るためには、コントロール端子222に以下に述べるようなコントロール信号を入力すればよい。
【0154】
図11(A)に示すように、コモン信号、セグメント信号はFR信号=Lの期間ではV0、V3、V4、V5のいずれかの電圧となる。また、FR信号=Hの期間ではV0、V1、V2、V5のいずれかの電圧となる。このため、FR信号=Lの期間にはV1、V2に対して負荷はかからないことになり、またFR信号=Hの期間にはV3、V4に対して負荷はかからないことになる。そこで、FR信号=Lの期間にはV1、V2に接続されるオペアンプの第2の負荷トランジスタをオフさせ、FR信号=Hの期間にはV3、V4に接続されるオペアンプの第2の負荷トランジスタをオフさせるような制御を行えば、消費電力を更に低く抑えることが可能となる。
【0155】
例えばV4に図27に示すような電流制御機能付きオペアンプを接続してインピーダンス変換を行う場合には、図28に示すように、CONT1信号とFR信号とのORにより得られるCONT5信号をコントロール端子222に入力する。これにより、FR信号=Hの期間には、第2のPチャネル負荷トランジスタ218はオフし、電流I3が流れないため、更なる低消費電力化が可能となる。例えば、本実施例では、以上の電流制御により、I3の平均電流を3.75μAとすることが可能となり、消費電流はI1+I2+I3=4.55μAに抑えることが可能となった。これにより、消費電流を、電流制御機能のないN型オペアンプの消費電流(15.7μA)の約1/3.5倍にすることが可能となった。なお、V1、V2、V3に接続される電流制御機能付きのオペアンプを制御する場合も、図28に示すようなCONT2、CONT3、CONT4信号を、コントロール端子222に入力すれば、上記と同様に低消費電力化することが可能となる。
【0156】
5.第5の実施例
さて、上記第3、第4の実施例では、V1、V3にP型オペアンプ1、3を、V2、V4にN型オペアンプ2、4を接続する構成とすることで、オペアンプの駆動部に流れる電流を少なくし、低消費電力化を図っている。しかし、このような構成とした場合、装置への電源投入時に、以下のような問題が生じることが判明した。
【0157】
例えば、図29(A)に示すように、高電位側の電源であるV0=VDD(0V)を固定電源とする構成の場合(N基板の場合)は、電源投入時にV1、V3が所定電圧に到達するまでに非常に時間がかかるという問題が生じた(図31参照)。これは、V1、V3に接続されるP型オペアンプ1、3では、駆動部を構成するNチャネル負荷トランジスタ205の電流供給能力を、低消費電力化のために非常に小さくしていることに起因する。例えば、図30(A)において、VDDを固定電位の電源としてV5の電源が投入されると、V5の電圧が徐々に低下し、これにしたがってV1の電圧が徐々に低下することになる。そして、この場合のV1の電圧の低下は、図30(A)に示すように、Nチャネル駆動トランジスタ205により電流Ipを流し、電圧平滑用コンデンサ270(あるいはLCDパネル)から電荷を引き抜くことにより行われる。ところが、Nチャネル負荷トランジスタ205の電流供給能力は非常に小さくIpは非常に小さいため、図31に示すようにV1の電圧が所定電圧に到達するまで非常に時間がかかってしまうことになる。以上の現象はV3についても同様に起こり、この場合には図31に示すように、V3が所定電圧に到達するまでには更に時間がかかってしまう。
【0158】
図29(B)に示すように、低電位側の電源であるV5=GND(0V)を固定電源とする構成の場合(P基板の場合)は、今度は、V2、V4の所定電圧への到達時間が大きくなってしまう。これは、V2、V4に接続されるN型オペアンプ2、4では、駆動部を構成するPチャネル負荷トランジスタ204の電流供給能力を非常に小さくしていることに起因する。即ち、図30(B)において電源投入時にV0から流れる電流Ipが小さくなってしまい、V4の電圧の上昇が非常に遅くなってしまうからである。この点はV2についても同様である。
【0159】
以上のような現象が生じると、液晶表示の品質が非常に低下してしまう。例えば、図31のようにV1、V3の電圧が正確な値に到達するまでに時間がかかると、その間、電圧平均化法の平均化状態が維持できないという事態が生じてしまう。また、図31におけるAの点においては、V1<V2<V3とならなければならない関係が、V1<V3<V2の関係となる事態も生じ、これにより液晶表示が全面黒表示となったりする事態も生じてしまう。
【0160】
以上のような事態を防止するには、電源投入直後の所定期間の間、オペアンプの駆動部の電流供給能力を増加させてやればよい。この電流供給能力の増加は、例えば図29(A)に示す構成の場合は以下のようして実現できる。即ち、この場合には、P型オペアンプ1、3を、図27に示すような構成の電流制御機能付きのオペアンプにする(図27にはNチャネル型オペアンプに電流制御機能を持たせたものが示されている)。即ち、Nチャネル負荷トランジスタ205に並列に、第2のNチャネル負荷トランジスタ及びこれに直列に接続された電流制御用のNチャネルトランジスタを設ける構成とする。そして、電流制御用のNチャネルトランジスタのゲート電極に接続されるコントロール端子222に対して、電源投入直後の所定期間の間、電流制御用のNチャネルトランジスタをオン状態にするようなコントロール信号を入力する。これにより、電源投入直後の所定期間の間、駆動部の電流供給能力が増加することになり、V1、V3の立ち下がりを早くすることが可能となる。これにより上記事態を防止できる。そして、図29(B)に示す構成の場合には、N型オペアンプ2、4に電流制御機能を持たせて、同様の制御を行えばよい。
【0161】
なお、V1、V3(あるいはV2、V4)を、電源投入直後の所定期間内に所定レベルに到達させるためには、上記手法に限らず、例えばV1とV2、V3とV4をトランジスタ等で導通させる等、種々の手法を採用することができる。
【0162】
さて、液晶表示の品質が悪化しないようにするために更に好ましくは、上記の制御によりV1、V3(あるいはV2、V4)が所定電圧に到達するまでの所定期間の間、液晶素子に対して過渡状態の電圧が与えられないようにすることが望ましい。そして、V1、V3が所定電圧に到達した後に、駆動用電源電圧を供給するように構成する。これにより、液晶表示が全面黒表示となるような事態を完全に防止することができる。
【0163】
図32には、本実施例における電源投入シーケンスのイメージ図が示される。まず、リセット信号(#1)により、装置内にあるコントロール回路(ロジック回路)がリセットされる。そして、このコントロール回路によりアナログ電源オンの命令(#2)が発行される。すると、装置内のアナログ回路が動作を開始し、多値の駆動用電源電圧の生成が行われる。そして、この場合、上記のように例えばV1、V3に接続されるオペアンプの電流供給能力を増加させて、タイマにより設定された所定期間の間に、駆動用電源電圧が所定レベルに到達するように制御が行われる。そして、この所定期間の間は、LCDドライバの出力を全て固定電位であるV0に固定する。これにより、過渡的な電圧が液晶素子に印加されることが防止される。そして、所定時間経過後、電源供給装置とLCDドライバとの間が接続され、LCDドライバが出力可能状態に設定される。その後、上記コントロール回路により表示オン命令(#3)が出され、RAMに格納された画像情報がLCDドライバに入力され、液晶表示が行われることになる。なお、この場合、ウエイトタイムの間に表示オン命令が出されても、その命令は無効となる。
【0164】
その後、例えばコントロール回路によりパワーセーブ命令(#4)が出されると、パワーセーブモードに入る。そして、パワーセーブ解除命令(#5)が出されると、また、タイマにより設定された所定期間の間に、駆動用電源電圧が所定レベルに到達するように制御が行われることになる。
【0165】
以上のようなシーケンスで電源投入を行うことで、液晶表示が全面黒表示となるような事態が完全に防止される。
【0166】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0167】
例えば、上記実施例では、V0が固定電位であり0Vの場合について説明したが、V5が固定電位であり0Vである場合も同様に実現可能である。
【0168】
また、電圧調整部に用いられる基準電圧源、定電流源は図4に示すものに限らず種々の構成のものを用いることができる。また、制御部の構成も図3、図4、図5に示すものに限られるものではない。
【0169】
また、図7におけるP型オペアンプ、N型オペアンプの構成も、図8、図9に示すものに限らず、例えば、差動部、駆動部の回路構成が異なる種々のオペアンプを採用できる。
【0170】
また、本発明が適用される液晶駆動方法も上記実施例の駆動方法に限定されるものではない。
【0171】
更に、本発明は線順次に時分割駆動する表示装置ばかりでなく、複数のラインを同時に選択するような時分割駆動の表示装置にも適用できるものである。また、本発明が適用される表示装置も液晶表示装置に限定されるものではない。
【0172】
【発明の効果】
本発明によれば、定電圧の第1の電圧が生成され、この第1の電圧に制御手段により可変に制御される第2の電圧を加算されることで、所望の調整電圧を駆動対象に対して供給することが可能となる。特に、本発明によれば、第2の電圧の電圧値は第1の電圧の電圧値に依存しない。従って、第1の電圧を調整する手段により第1の電圧の電圧値を調整したとしても、これに影響されずに前記制御手段により所定の電圧調整範囲において第2の電圧の電圧値を調整することが可能となる。この結果、電圧調整の基準となる電圧と、電圧調整範囲等とを別個独立に調整できることになり、電圧調整の基準となる電圧を変化させたことで電圧調整範囲が狭まったりする等の事態が生じるのを有効に防止できる。これにより従来にない柔軟性に富んだ電圧調整が可能となり、該調整電圧に基づいて駆動される駆動対象の表示品質等の特性を高めることが可能となる。
【0173】
また、本発明によれば、温度変化により駆動対象の素子特性が変化した場合にも、第1の電圧、第2の電圧及び第1の電圧と第2の電圧を加算して得られる調整電圧が、この素子特性を補償するように変化するため、温度変化に依存しない安定した電源供給が可能となる。これにより、該調整電圧に基づいて駆動される駆動対象の表示品質等の特性を非常に高めることが可能となる。
【0174】
また、本発明によれば、初期動作時に電源供給装置から出力される調整電圧を電圧調整範囲内のセンター値、最小値、あるいは最大値等の所望の値に固定しておくことが可能となる。これにより、調整電圧を生成するためのファームウェアにバラツキ調整用のプログラムを内蔵したり、電圧調整部の出力電圧を検出する回路を設けたりする必要が無くなる。これにより、装置の小型化を図ることができ、半導体装置に装置を内蔵した場合にはチップサイズの削減が可能となる。
【0175】
また、本発明によれば、第1の抵抗の抵抗値を調整することで第1の電圧の電圧値を調整でき、第2の抵抗に対して定電流源から流れる電流を調整することで第1の電圧の調整とは別個独立に第2の電圧の電圧値を調整できる。更に、第2の電圧の電圧調整範囲についても、第1の電圧の電圧値に依存しないものとすることができる。これにより従来のように電圧調整範囲を広げるために、切り替え可能な抵抗の段数を多くするようなことが必要なくなり、装置の小型化、半導体チップサイズの削減を図ることができる。また、回路構成を従来のものに比べ簡易なものとすることができ、低消費電力化を図ることも可能となる。更に、電源電圧の変動に依存しない安定した調整電圧、電圧調整範囲を得ることが可能となる。
【0176】
また、本発明によれば、温度特性をもつ素子、例えばサーミスタ等を追加しなくても、第1の電圧、第2の電圧、調整電圧、電圧調整範囲等に負の温度特性を持たせることが可能となる。これにより、コントラスト等の特性が負の温度特性をもつ液晶表示装置等に最適の電源供給装置を提供することが可能となる。
【0177】
また、本発明によれば、駆動用電源電圧にかかる負荷に応じた適正な多値の電源電圧を、容量性の駆動対象に対して供給することが可能となる。これにより、インピーダンス変換手段の駆動部に無駄な電流を流すことなく、駆動対象の表示品質等の特性を向上させることが可能となる。
【0178】
また、本発明によれば、第1のインピーダンス変換手段の駆動部内のNチャネル型駆動トランジスタにより、駆動対象からの正の電荷を十分に吸収できるとともに、定電流源又は抵抗に流れる電流を十分小さくすることも可能となる。また、第2のインピーダンス変換手段の駆動部内のPチャネル型駆動トランジスタにより、駆動対象からの負の電荷を十分に吸収できるとともに、定電流源又は抵抗に流れる電流を十分に小さくすることも可能となる。これにより、駆動対象の表示品質等の特性を向上させることができると共に、駆動部内を流れる電流を節約でき、大幅な低消費電流化が可能となる。これにより、本発明が内蔵される機器のバッテリー寿命等を大幅に延ばすこと等が可能となる。
【0179】
また、本発明によれば、駆動用電源電圧が過渡状態になることによる生じる悪影響を防止でき、駆動対象の表示品質等の特性を向上させることが可能となる。
【0180】
また、本発明によれば、例えば6レベル駆動法におけるV1、V3が所定期間内に所定レベルに到達するように制御されることになり、例えばV1、V3の電圧が電源投入時に過渡状態になることによる生じる悪影響を防止できる。これにより、例えば液晶表示が全面黒表示となる等の事態を防止できる。
【0181】
また、本発明によれば、例えば6レベル駆動法におけるV2、V4が所定期間内に所定レベルに到達するように制御されることになり、例えばV2、V4の電圧が電源投入時に過渡状態になることによる生じる悪影響を防止できる。これにより、例えば液晶表示が全面黒表示となる等の事態を防止できる。
【0182】
また、本発明によれば、駆動用電源電圧が過渡状態になることにより生ずる悪影響を、より完全に防止でき、駆動対象の表示品質等の特性を更に向上させることが可能となる。
【0183】
また、本発明によれば、基準クロックの立ち上がり又は立ち下がりの直後の一定期間だけ定電流源又は抵抗に電流を流すように制御することにより、該定電流源又は抵抗により駆動対象を十分に駆動することが可能となる。これにより、上記期間以外の期間に定電流源又は抵抗に流れる電流を抑えることが可能となり、装置の更なる低消費電力化を図ることが可能となる。
【0184】
また、本発明によれば、駆動用電源電圧によっては、交流化信号が所定のレベルの場合には、負荷がかからないような場合があるため、このような場合に、定電流源又は抵抗に流れる電流を制限することにより、定電流源又は抵抗に無駄な消費電流が流れるのを有効に防止することが可能となる。これにより、駆動対象の表示品質等の特性を低下させることなく、装置の更なる低消費電力化を図ることが可能となる。
【0185】
また、本発明によれば、制御手段により制御されない定電流源又は抵抗により駆動部の出力電圧を一定値に保持できると共に、制御手段により制御される定電流源又は抵抗により駆動対象を十分な駆動能力で駆動することが可能となる。これにより、駆動対象の表示品質等の特性を低下させることなく、装置の更なる低消費電力化を図ることが可能となる。
【0186】
また、本発明によれば、多値電圧生成手段により生成される多値の駆動用電源電圧の電圧調整を行うことができると共に、駆動用電源電圧にかかる負荷に応じた適正な多値の電源電圧を、容量性の駆動対象に対して供給することが可能となる。これにより、駆動対象の表示品質等の特性を向上させながら、低消費電力化を図ることも可能となる。また、電圧調整手段における電圧調整を演算増幅器等を利用して行った場合には、この演算増幅器等を多値電圧生成手段におけるインピーダンス変換手段として用いることも可能となる。これにより、装置の更なる小型化を図ることが可能となる。
【0187】
また、本発明によれば、第1の電圧を調整して、センター値等を変化させても、第2の電圧の電圧値は影響を受けないため、センター値等と、第2の電圧及び電圧調整範囲を別個独立に設定でき、従来よりも優れたコントラスト調整が可能となる。これにより、小型・軽量の必要な携帯機器に多く用いられる液晶表示装置に最適なコントラスト調整手法を提供できることになる。
【0188】
また、本発明によれば、駆動用電源電圧にかかる負荷に応じた適正な6値の電源電圧を、液晶素子に対して供給することが可能となる。これにより、液晶表示を行う際にシャドウ、クロストーク等の現象が生じるのを有効に防止でき、液晶表示の品質を高めることができるとともに、装置の大幅な低消費電力化を図ることも可能となる。
【0189】
また、本発明によれば、駆動用電源電圧にかかる負荷に応じた適正な多値の電源電圧を、駆動対象に対して供給することが可能となり、駆動対象の表示特性等の特性を向上させることができると共に、装置の低消費電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る電源供給装置のブロック図である。
【図2】図2(A)、(B)は、本実施例による電圧調整の手法を説明するための図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る電圧調整部の回路図である。
【図4】基準電圧源、定電流源、制御部をMOSトランジスタで構成した場合の電圧調整部の回路図である。
【図5】本発明の電源供給装置を用いた液晶表示装置の一例を示す回路図である。
【図6】本実施例を用いた場合に駆動用電源電圧V5に現れる温度特性を表す図である。
【図7】本発明の第3の実施例に係る多値電圧生成部の回路図である。
【図8】P型オペアンプをトランジスタレベルで示した回路図である。
【図9】Nチャネル負荷トランジスタとPチャネル駆動トランジスタの電流特性の関係を示す図である。
【図10】N型オペアンプをトランジスタレベルで示した回路図である。
【図11】図11(A)は、コモン電極の電圧、セグメント電極の電圧とV0〜V5との関係を示す図であり、図11(B)は、コモン電極とセグメント電極の配置の一例を示す図である。
【図12】図12(A)、(B)は、セグメント電極、コモン電極の電圧が変化した場合に、駆動用電源電圧において、どのような電荷を引き込まなければならないかを模式的に示した図である。
【図13】FR信号(交流化信号)、DCK(基準クロック)のタイミングチャート図である。
【図14】FR切り替え時Aにおいてセグメント電極の電圧がV3からV2に変化する場合のコモン波形及びセグメント波形を示す図である。
【図15】図14の場合においてV2にかかる負荷を計算するプロセス及び計算結果を示す図である。
【図16】FR切り替え時Aにおいてセグメント電極の電圧がV5からV2に変化する場合のコモン波形及びセグメント波形を示す図である。
【図17】図16の場合においてV2にかかる負荷を計算するプロセス及び計算結果を示す図である。
【図18】期間Bにおいてセグメント電極の電圧がV0からV2に変化する場合のコモン波形及びセグメント波形を示す図である。
【図19】図18の場合においてV2にかかる負荷を計算するプロセス及び計算結果を示す図である。
【図20】期間Bにおいてセグメント電極の電圧がV2のまま変化しない場合のコモン波形及びセグメント波形を示す図である。
【図21】図20の場合においてV2にかかる負荷を計算するプロセス及び計算結果を示す図である。
【図22】FR切り替え時Aにおいてセグメント電極の電圧がV5からV2、V5からV0に変化する場合のV1にかかる負荷を計算するプロセス及び計算結果を示す図である。
【図23】FR切り替え時Aにおいてセグメント電極の電圧がV3からV2、V3からV0に変化する場合のV1にかかる負荷を計算するプロセス及び計算結果を示す図である。
【図24】期間Bにおいてセグメント電極の電圧がV0からV2、V0からV0に変化する場合のV1にかかる負荷を計算するプロセス及び計算結果を示す図である。
【図25】期間Bにおいてセグメント電極の電圧がV2からV2、V2からV0に変化する場合のV1にかかる負荷を計算するプロセス及び計算結果を示す図である。
【図26】V1〜V4にかかる負荷の計算結果をまとめた図である。
【図27】電流制御機能を持たせたN型オペアンプの回路図である。
【図28】DCK、コントロール信号、FR信号のタイミングチャート図である。
【図29】図29(A)は、高電位側の電源を固定電源とする場合の多値電圧生成部の構成であり、図29(B)は、低電位側の電源を固定電源とする場合の多値電圧生成部の構成である。
【図30】図30(A)、(B)は電源投入時におけるV1、V4の電圧変化を説明するための図である。
【図31】電源投入時におけるV1〜V5の電圧変化を表す特性図である。
【図32】第5の実施例における電源投入のシーケンスを表すイメージ図である。
【図33】液晶表示装置等に用いられる従来の電源供給装置の一例を示す図である。
【図34】液晶表示装置等に用いられる従来の電源供給装置の他の一例を示す図である。
【図35】図35(A)、(B)は、従来例における電圧調整の手法を説明するための図である。
【符号の説明】
1、2 N型オペアンプ
3、4 P型オペアンプ
6 オペアンプ
7 基準電圧源
8 定電流源
9 制御部
10、11 抵抗
12 分圧抵抗
100 電源供給装置
102 電圧調整部
104 第1電圧生成部
106 加算部
107 第2電圧生成部
108 制御部
110 多値電圧生成部
112 電圧分割部
116、120 第1のインピーダンス変換部
114、118 第2のインピーダンス変換部
122、124、126、128、130、132 分割端子
200、201 駆動部
203 電位分割部
204 Pチャネル駆動トランジスタ
205 Nチャネル負荷トランジスタ
206 差動増幅部
208 +入力端子
209 −入力端子
212 Nチャネル駆動トランジスタ
213 Pチャネル負荷トランジスタ
218 第2のPチャネル負荷トランジスタ
219 電流制御用トランジスタ
222 コントロール端子
Claims (3)
- 電圧調整手段を含み、該電圧調整手段により調整された電源電圧を駆動対象に対して供給するための電源供給装置において、
前記電圧調整手段が、
第1、第2の入力端子と出力端子とを有する演算増幅器と、
前記演算増幅器の前記第1の入力端子に接続された基準電圧源と、
一方が前記演算増幅器の前記第2の入力端子に接続され他方が固定電位に接続された第1の抵抗と、
一方が前記演算増幅器の前記第2の入力端子に接続され他方が前記演算増幅器の前記出力端子に接続された第2の抵抗と、
定電流源と、
前記定電流源と前記演算増幅器の前記第2の入力端子との間に設けられ、前記定電流源から前記第2の入力端子を介して前記第2の抵抗に流れる電流を可変に制御する手段とを含むことを特徴とする電源供給装置。 - 請求項1において、
前記基準電圧源からの基準電圧及び前記定電流源からの定電流に対して、駆動対象の温度特性を補償する温度特性を持たせたことを特徴とする電源供給装置。 - 請求項1又は2のいずれかにおいて、
定電流源から前記第2の抵抗に流れる電流が、装置の初期動作時において所定値に固定されていることを特徴とする電源供給装置。
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