JP3704317B2 - 建築部材の継手具、建築物の軸組構造及び建築物の軸組工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、2本の柱を上下に連結したり、2本の梁を左右に連結したり、あるいは柱を基礎に連結したりする場合に特に好適に用いられる建築部材の継手具、これを用いた建築物の軸組構造及び建築物の軸組工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば木造建築物の組立てに用いられている伝統的な在来軸組工法は、我が国の気候に適した工法として古来より受け継がれてきた。この在来軸組工法は、通風性の良さから来る住宅としての優れた住居性をもち、結果として空調廃熱の低減を図ることができる等の優れた長所を有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、在来軸組工法では、通し柱を用いて建築物が組み立てられるため、通し柱となる長尺材を入手し難く、材料コストが高く付くという難点があった。そこで、建築部材として、長尺材を用いないで、予め所定長さに規格化された複数個の建築部材を用いることにし、これら建築部材同士を継ぎ合わせて長尺化することにより、通し柱等の長尺材を形成する方法が提案される。しかしながら、この場合には、建築部材同士が強固に連結されるよう、建築部材の端部にほぞ加工等の複雑な仕口加工を行う必要があり、このため、手間の掛かる作業が強いられることになるし、また高度な技能を有する技術者(職人)を必要とするという難点があった。
【0004】
この発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、予め所定長さや所定断面寸法に規格化された複数個の建築部材を連結する際に好適に用いることができ、しかも建築部材の端部に複雑な仕口加工を施す必要のない建築部材の継手具、これを用いた建築物の軸組構造及び建築物の軸組工法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る建築部材の継手具は、中空部が軸線方向中間部にて軸線に対して略垂直に配置された底板部によって第1室と第2室とに仕切られた筒状の本体を備えるとともに、前記本体の第1室は、軸線方向に延びた第1隔壁によって複数個の第1小室に区画されており、前記本体の第1室内に、端部に第1隔壁差込み用第1溝が設けられた棒状の第1部材の前記端部が、第1溝内に第1隔壁が差し込まれる態様で嵌め込まれるものとなされていることを特徴としている。
【0006】
この継手具では、第1部材の端部が本体の第1室内に嵌め込まれることにより、本体が第1部材に接続される。この接続状態において、第1部材の第1溝内には本体の第1隔壁が差し込まれているので、本体が第1部材に強固に接続されることとなる。一方、第1部材の端部に対して施す仕口加工として、第1隔壁が差し込まれる溝(即ち第1溝)を形成するだけで良く、第1部材の端部に複雑な仕口加工を行う必要がなくなる。
【0007】
請求項2の発明に係る建築部材の継手具は、上記請求項1記載の建築部材の継手具において、前記第1隔壁は格子状のものである。
【0008】
この継手具では、第1隔壁が格子状のものであることにより、第1部材との接続強度が向上する。
【0009】
請求項3の発明に係る建築部材の継手具は、上記請求項1又は2記載の建築部材の継手具において、前記本体の第2室は、軸線方向に延びた第2隔壁によって複数個の第2小室に区画されており、前記本体の第2室内に、端部に第2隔壁差込み用第2溝が設けられた棒状の第2部材の前記端部が、第2溝内に第2隔壁が差し込まれる態様で嵌め込まれるものとなされているものである。
【0010】
この継手具では、第2部材の端部が本体の第2室内に嵌め込まれることにより、本体が第2部材に接続される。この接続状態において、第2部材の第2溝内には本体の第2隔壁が差し込まれているので、本体が第2部材に強固に接続されることとなる。一方、第2部材の端部に対して施す仕口加工として、第2隔壁が差し込まれる溝(第2溝)を形成するだけで良く、複雑な仕口加工を行う必要がなくなる。また、この継手具を用いることにより、第1部材と第2部材とを連結することができる。
【0011】
請求項4の発明に係る建築部材の継手具は、上記請求項3記載の建築部材の継手具において、前記第2隔壁は格子状のものである。
【0012】
この継手具では、第2隔壁が格子状のものであることにより、第2部材との接続強度が向上する。
【0013】
請求項5の発明に係る建築部材の継手具は、上記請求項1又は2記載の建築部材の継手具において、前記本体を基礎に接続する接続具と、前記本体を前記接続具に連結するための連結用棒状材とを備えるとともに、前記本体の第2室は、軸線方向に延びた第2隔壁によって複数個の第2小室に区画されており、前記接続具は、中空部が軸線方向に延びた第3隔壁によって複数個の第3小室に区画された筒状部を有するとともに、基礎に固定されるものであり、前記連結用棒状材は、その一端部が前記接続具の第3小室内に挿入されるとともに、他端部が前記本体の第2小室内に挿入されるものとなされているものである。
【0014】
この継手具では、本体を、基礎に固定された接続具に連結用棒状材を介して連結することができる。したがって、この継手具を用いることにより、第1部材を基礎に連結することができる。
【0015】
請求項6の発明に係る建築部材の継手具は、上記請求項5記載の建築部材の継手具において、前記第2隔壁と第3隔壁は互いに同形同寸の格子状のものである。
【0016】
この継手具では、第2隔壁と第3隔壁が互いに同形同寸の格子状のものであることにより、本体を接続具に確実に連結することができる。さらに、第3隔壁が格子状のものであることにより、接続具の強度が向上する。
【0017】
請求項7の発明に係る建築部材の継手具は、上記請求項1〜6のいずれか1項記載の建築部材の継手具において、前記本体の外周面に、前記第1部材に対して略垂直に配置される棒状の第3部材の端部に接続される接続片が外方突出状に設けられているものである。
【0018】
この継手具では、該継手具を用いることによって、第1部材とこれに対して略垂直に配置される第3部材とを連結することができる。
【0022】
請求項8の発明に係る建築物の軸組構造は、上記請求項7記載の建築部材の継手具を用いて組み立てられた建築物の軸組構造であって、端部に第1隔壁差込み用第1溝が設けられた棒状の第1部材の前記端部が、継手具の本体の第1室内に、第1溝内に第1隔壁が差し込まれた態様で嵌め込まれるとともに、前記第1部材に対して略垂直に配置される棒状の第3部材の端部が、継手具の本体の接続片に締結部材により接続されており、前記第1部材の外周面における第3部材側に向いた面に、該第1部材を補強する第1部材用補強部材が装着されるとともに、前記第3部材の外周面における第1部材側に向いた面に、該第3部材を補強する第3部材用補強部材が装着されており、且つ、前記第1部材と前記第3部材との間の隅部内に、両部材間の角度を保持する角度保持部材が装着されていることを特徴としている。
【0023】
この軸組構造では、第1部材の外周面の所定面と第3部材の外周面の所定面とにそれぞれ補強枠材が装着されることにより、第1部材と第3部材が補強され、更に、第1部材と第3部材との間の隅部内に所定の角度保持部材が装着されることにより、第1部材と第3部材との間の角度がこの角度保持部材によって保持されるようになる。この結果、頑丈な軸組が形成されるようになる。
【0024】
請求項9の発明に係る建築物の軸組工法は、上記請求項1又は2記載の建築部材の継手具を用いた建築物の軸組工法であって、端部に第1隔壁差込み用第1溝が設けられた棒状の第1縦部材の前記端部を、継手具の本体の第1室内に、第1溝内に第1隔壁を差し込む態様で嵌め込む第1縦部材の嵌込み工程を含んでいることを特徴としている。
【0025】
この軸組工法では、第1縦部材の嵌込み工程を遂行することにより、継手具の本体が第1縦部材に接続される。また、上記請求項1又は2記載の建築部材の継手具が用いられているから、第1縦部材の端部に対して施す仕口加工として、第1隔壁が差し込まれる溝(即ち第1溝)を形成するだけで良く、第1縦部材の端部に複雑な仕口加工を行う必要がなくなる。
【0026】
請求項10の発明に係る建築物の軸組工法は、上記請求項3又は4記載の建築部材の継手具を用いた建築物の軸組工法であって、端部に第1隔壁差込み用第1溝が設けられた棒状の第1縦部材の前記端部を、継手具の本体の第1室内に、第1溝内に第1隔壁を差し込む態様で嵌め込む第1縦部材の嵌込み工程と、端部に第2隔壁差込み用第2溝が設けられた棒状の第2縦部材の前記端部を、継手具の本体の第2室内に、第2溝内に第2隔壁を差し込む態様で嵌め込む第2縦部材の嵌込み工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0027】
この軸組工法では、第1縦部材の嵌込み工程と第2縦部材の嵌込み工程を遂行することにより、第1縦部材と第2縦部材が上下に連結される。また、上記請求項3又は4記載の建築部材の継手具が用いられていることから、第1縦部材と第2縦部材の双方の端部に対して施す仕口加工として、隔壁が差し込まれる溝(第1溝及び第2溝)を形成するだけで良く、第1縦部材と第2縦部材の双方の端部に複雑な仕口加工を行う必要がなくなる。
【0028】
請求項11の発明に係る建築物の軸組工法は、上記請求項5又は6記載の建築部材の継手具を用いた建築物の軸組工法であって、接続具を基礎に固定する接続具の固定工程と、接続具の第3小室内に連結用棒状材の一端部を挿入するとともに、継手具の本体の第2小室内に該連結用棒状材の他端部を挿入する連結用棒状材の挿入工程と、下端部に第1隔壁差込み用第1溝が設けられた棒状の第1縦部材の前記下端部を、継手具の本体の第1室内に、第1溝内に第1隔壁を差し込む態様で嵌め込む第1縦部材の嵌込み工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0029】
この軸組工法では、これらの工程を遂行することにより、第1縦部材を基礎に連結することができる。
【0030】
請求項12の発明に係る建築物の軸組工法は、上記請求項7記載の建築部材の継手具を用いた建築物の軸組工法であって、端部に第1隔壁差込み用第1溝が設けられた棒状の第1縦部材の前記端部を、継手具の本体の第1室内に、第1溝内に第1隔壁を差し込む態様で嵌め込む第1縦部材の嵌込み工程と、棒状の第3横部材の端部を接続片に締結部材により接続する第3横部材の接続工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0031】
この軸組工法では、これらの工程を遂行することにより、第1縦部材と第3横部材とを連結することができる。
【0036】
なお、この発明において、棒状の縦部材とは、軸線が鉛直方向と略平行になる態様で配置される棒状の部材を意味し、例えば種々の柱、束が挙示される。一方、棒状の横部材とは、軸線が水平方向と略平行になる態様で配置される棒状の部材を意味し、例えば種々の梁、桁、根太、大引、土台が挙示される。
【0037】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、この実施形態において、軸組工法で組み立てられる建築物は、木造家屋等の木造建築物である。
【0038】
図1〜図5において、(1)は第1実施形態の継手具である。また、図1において、(10)は棒状の木質角材からなる第1縦部材、(20)は棒状の木質角材からなる第2縦部材、(30)は第1縦部材(10)及び第2縦部材(20)に対して略垂直に配置される棒状の木質角材からなる第3横部材である。
【0039】
第1縦部材(10)及び第2縦部材(20)はともに、予め所定長さ及び所定断面寸法に規格化されているものであり、例えば15cm×15cmの横断面をもつ横断面正方形状のもので長さが3mのものである。この第1縦部材(10)及び第2縦部材(20)は、例えば柱となる建築部材である。
【0040】
第3横部材(30)は、この実施形態では該第3横部材(30)の軸線と平行に複数個(同図では3個)に分割されて構成されているものである。この第3横部材(30)を構成する各構成部材(30A)は、予め所定長さ及び所定断面寸法に規格化されているものであり、例えば5cm×15cmの横断面をもつ横断面長方形状のもので、長さが1.650m又は3.450mのものである。この第3横部材(30)は、例えば梁となる建築部材である。
【0041】
継手具(1)は、金属製(詳述すると鋼製)のものであり、図2に示すように、第1縦部材(10)と第2縦部材(20)とを上下に連結し、更に、互いに略垂直に配置される4個の第3横部材(30)(30)(30)(30)の端部を両縦部材(10)(20)の端部同士の連結部に連結するために用いられるものである。
【0042】
この継手具(1)は、図3〜図5に示すように、軸線方向に延びた中空部(42)を有する横断面ロ字形の角筒状本体(41)を備えている。この本体(41)の中空部(42)は横断面正方形状に形成されている。また、この本体(41)は所定長さを有するものであって、その寸法は例えばタテ150mm×ヨコ150mm×長さ300mmに設定されている。
【0043】
さらに、図3に示すように、この本体(41)の中空部(42)が、軸線方向中間部にて軸線に対して垂直に配置された底板部(47)によって第1室(43)と第2室(44)とに仕切られている。この底板部(47)は本体(41)に溶接等により接合一体化されている。
【0044】
さらに、本体(41)の第1室(43)は、軸線方向に延びた格子状第1隔壁(45)によって複数個の第1小室(43a)…に区画されている。この第1実施形態では、第1室(43)は9個の第1小室(43a)に区画されている。各第1小室(43a)は横断面四角形状(詳述すると横断面正方形状)に形成されている。また、第1隔壁(45)は本体(41)と底板部(47)とに溶接等により接合一体化されている。この第1隔壁(45)は、網形のものであり、すなわち図5(イ)に示すように該第1隔壁(45)を構成する格子子としての互いに交差(詳述すると互いに直交)する縦格子板部(45a)及び横格子板部(45b)をそれぞれ1個以上(詳述するとそれぞれ2個)有しているものである。
【0045】
同じく、本体(41)の第2室(44)は、軸線方向に延びた格子状第2隔壁(46)によって複数個の第2小室(44a)…に区画されている。この第1実施形態では、第2室(44)は9個の第2小室(44a)に区画されている。各第2小室(44a)は横断面四角形状(詳述すると横断面正方形状)に形成されている。この第2隔壁(46)は、網形のものであって、第1隔壁(45)と同形同寸に形成されている。そして、この第2隔壁(46)は、底板部(47)の第1隔壁(45)との接合部と、本体(41)とに溶接等により接合一体化されている。
【0046】
一方、図1及び図3に示すように、第1縦部材(10)の下端部には、第1隔壁差込み用の格子状第1溝(11)が切削加工により設けられている。同じく、第2縦部材(20)の上端部には、第2隔壁差込み用の格子状第2溝(21)が切削加工により設けられている。
【0047】
而して、この継手具(1)は、図1〜図3に示すように、その本体(41)の軸線が鉛直方向と略平行に配置された状態で、本体(41)の第1室(43)内に、第1縦部材(10)の下端部が、第1溝(11)内に第1隔壁(45)が差し込まれる態様で略ぴったりと嵌め込まれることにより、第1縦部材(10)に接続されるものである。さらに、本体(41)の第2室(44)内に、第2縦部材(20)の上端部が、第2溝(21)内に第2隔壁(46)が差し込まれる態様で略ぴったりと嵌め込まれることにより、第2縦部材(20)に接続されるものである。一方、こうして本体(41)が第1縦部材(10)と第2縦部材(20)とに接続されることにより、該両縦部材(10)(20)は互いに同一軸線上に並んだ状態で上下に連結されるものとなる。さらに、本体(41)の第1室(43)内に嵌め込まれた第1縦部材(10)の下端面は、底板部(47)によって安定良く受けられるものとなる。
【0048】
また、この継手具(1)の本体(41)は、上述したように角筒状に形成されることから、その外周面は4個の平坦状の側面から構成されている。そして、この各側面には、図4及び図5に示すように、本体(41)の軸線方向と略平行に延び且つ所定間隔をおいて互いに平行に並んだ複数個(詳述すると4個)の接続片(50)…が外方突出状に溶接等により接合されている。
【0049】
これら複数個の接続片(50)…において、隣り合う2個の接続片(50)(50)間に形成された空間(52)内には、第3横部材(30)の一個の構成部材(30A)の端部が略ぴったりと嵌め込まれる。各接続片(50)には、これを第3横部材(30)の構成部材(30A)の端部に接続するための締結部材(55)が挿通される挿通孔(51)が複数個(詳述すると3個)設けられている。一方、第3横部材(30)の各構成部材(30A)の端部には、締結部材(55)が挿通される挿通孔(31)が切削加工により複数個(詳述すると3個)設けられている。この締結部材(55)としては、ボルト−ナットやドリフトピン等が用いられ、この第1実施形態ではドリフトピン(56)が用いられている。そして、各空間(52)内に第3横部材(30)の対応する構成部材(30A)の端部が略ぴったりと嵌め込まれた状態で、ドリフトピン(56)が両挿通孔(51)(31)内に接続片(50)と構成部材(30A)とに跨って挿通されることにより、接続片(50)が第3横部材(30)の端部に接続されるものとなされている。また、隣り合う2個の接続片(50)(50)の端部(詳述すると下端部)間には、空間(52)内に嵌め込まれた第3横部材(30)の構成部材(30A)の端部の側面(詳述すると下側面)を受ける受け板部(53)が略水平状に架設されている。
【0050】
なお、この継手具(1)において、本体(41)、第1隔壁(45)、第2隔壁(46)、底板部(47)、接続片(50)及び受け板部(53)の肉厚は、いずれも、対応する部材(10)(20)(30)の支持荷重で不本意に屈曲しない位の肉厚に設定されており、例えば3mmに設定されている。
【0051】
次に、上記第1実施形態の継手具(1)を用いた軸組工法を説明する。
【0052】
まず、図1に示すように、第1縦部材(10)の下端部に第1隔壁差込み用の格子状第1溝(11)を丸ノコ等を用いた切削加工により形成する。同じく、第2縦部材(20)の上端部に第2隔壁差込み用の格子状第2溝(21)を丸ノコ等を用いた切削加工により形成する。一方、第3横部材(30)の各構成部材(30A)の端部に、締結部材(55)としてのドリフトピン(56)が挿通される挿入孔(31)をドリル等を用いた切削加工により形成する。
【0053】
次いで、第2縦部材(20)の上端部を、本体(41)の第2室(44)内に、第2溝(21)内に第2隔壁(46)を差し込む態様で嵌め込むことにより、第2縦部材(20)を本体(41)に接続する。次いで、第1縦部材(10)の下端部を、継手具(1)の本体(41)の第1室(43)内に、第1溝(11)内に第1隔壁(45)を差し込む態様で嵌め込むことにより、第1縦部材(10)を本体(41)に接続する。こうして、第1縦部材(10)と第2縦部材(20)とを継手部(40)の本体(41)に接続することにより、図2及び図3に示すように、第1縦部材(10)と第2縦部材(20)が互いに同一軸線上に並んだ状態で上下に連結される。
【0054】
次いで、図1に示すように、この継手具(1)の本体(41)の外周面を構成する各側面において、隣り合う2個の接続片(50)(50)間に形成された空間(52)内に、第3横部材(30)の対応する構成部材(30A)の端部を嵌め込む。次いで、この嵌込み状態で、ドリフトピン(56)を両挿通孔(51)(31)内に接続片(50)と構成部材(30A)とに跨って挿通することにより、第3横部材(30)の端部を接続片(50)に接続する。こうして第3横部材(30)を接続することにより、図2及び図3に示すように、両縦部材(10)(20)の端部同士を連結した連結部に第3横部材(30)が第1縦部材(10)及び第2縦部材(20)に対して略垂直に(換言すると略水平に)連結されることとなる。
【0055】
図6は、上記継手具(1)を複数個(詳述すると四個以上)用いて組み立てられた建築物の軸組構造を示している。
【0056】
この軸組構造において、第1縦部材(10)(又は第2縦部材(20))の外周面における第3横部材(30)側に向いた側面には、該第1縦部材(10)を補強する板棒状の第1縦部材用補強部材(60)が該第1縦部材(10)の長さ方向に沿う態様で装着されている。同じく、第3横部材(30)の外周面における第1縦部材(10)側に向いた側面には、該第3横部材(30)を補強する板棒状の第3横部材用補強部材(70)が該第3横部材(30)の長さ方向に沿う態様で装着されている。
【0057】
さらに、第1縦部材(10)と第3横部材(30)との間の隅部内には、該両部材(10)(30)間の角度を保持する角度保持部材(80)が装着されており、この角度保持部材(80)によって両部材(10)(30)の角度が所定角度(即ち略直角)に保持されている。
【0058】
第1縦部材用補強部材(60)は、金属製のものであり、図7及び図8(イ)に示すように、第1縦部材(10)と略同じ長さを有する板棒状の基板部(61)と、該基板部(61)の内面の幅方向両側縁部に突設され第1縦部材(10)の両側面に当接される一対の位置ずれ防止用突片部(62)(62)と、基板部(61)の外面に突設され基板部(61)の軸線方向に延びた複数個の補強リブ部(63)と、を有している。そして、この補強部材(60)が第1縦部材(10)にボルト−ナット等の締結部材(図示せず)によって固定されることにより、該補強部材(60)が第1縦部材(10)の上述した所定側面に装着されている。この補強部材(60)の各補強リブ部(63)の端部には、これに角度保持部材(80)を接続固定するための締結部材(85)としてのボルト(86)が挿通される挿通孔(64)が設けられている。
【0059】
同じく、第3横部材用補強部材(70)は、金属製のものであり、図7及び図8(ロ)に示すように、第3横部材(30)と略同じ長さを有する板棒状の基板部(71)と、該基板部(71)の内面の幅方向両側縁部に突設され第3横部材(30)の両側面に当接される一対の位置ずれ防止用突片部(72)(72)と、基板部(71)の内外両面に突設され基板部(71)の軸線方向に延びた複数個の補強リブ部(73)と、を有している。そして、この補強部材(70)が第3横部材(30)に装着された状態において、基板部(71)の内面に突設された各補強リブ部(73)は、隣り合う2個の構成部材(30A)(30A)間に形成された隙間(S)内に差し込まれている。そして、この補強部材(70)が第3横部材(30)にボルト−ナット等の締結部材(図示せず)によって固定されることにより、該補強部材(70)が第3横部材(70)の上述した所定側面に装着されている。この補強部材(70)の各補強リブ部(73)の端部には、これに角度保持部材(80)を接続固定するための締結部材(85)としてのボルト(86)が挿通される挿通孔(74)が設けられている。
【0060】
角度保持部材(80)は金属製のものであって、この角度保持部材(80)には、第1縦部材用補強部材(60)の各補強リブ部(63)が嵌合される嵌合溝(81)と、第3横部材用補強部材(70)の各補強リブ部(73)が嵌合される嵌合溝(82)と、ボルト(86)(86)が挿通される2個の挿通孔(83)(84)とが設けられている。そして、この角度保持部材(80)の嵌合溝(81)内に第1縦部材用補強部材(60)の補強リブ部(63)が嵌合されるとともに、嵌合溝(82)内に第3横部材用補強部材(70)の補強リブ部(73)が嵌合され、この嵌合状態で、ボルト(86)(86)が挿通孔(64、83)(74、84)内に挿通されて該ボルト(86)(86)にナット(87)(87)が取り付けられることにより、角度保持部材(80)が第1縦部材用補強部材(60)と第3横部材用補強部材(70)とに固定され、これにより、角度保持部材(80)が第1縦部材(10)と第3横部材(30)との間の隅部内に装着されている。
【0061】
なお、この第1実施形態では、第1縦部材用補強部材(60)、第3横部材用補強部材(70)及び角度保持部材(80)は、いずれもアルミニウム又はその合金製のものであって、軽量化が図られており、人力による運搬を容易に行えるものとなっている。
【0062】
而して、上記軸組構造において、第1縦部材(10)の下端部は、図3に示すように、継手具(1)の本体(41)の第1室(43)内に、第1溝(11)内に第1隔壁(45)が差し込まれた態様で嵌め込まれているから、第1縦部材(10)は本体(41)に強固に接続されている。これと同じく、第2縦部材(20)の上端部は、継手具(1)の本体(41)の第2室(44)内に、第2溝(21)内に第2隔壁(46)が差し込まれた態様で嵌め込まれているから、第2縦部材(20)も本体(41)に強固に接続されている。したがって、第1縦部材(10)と第2縦部材(20)とは互いに強固に上下に連結されている。
【0063】
さらに、継手具(1)の本体(41)の中空部(42)内における軸線方向中間部には、底板部(47)が設けられているから、第1縦部材(10)の下端面がこの底板部(47)によって安定良く受けられている。
【0064】
しかも、第1縦部材(10)の下端部や第2縦部材(20)の上端部に対して施す仕口加工としては、所定の溝(11)(21)を格子状に形成するだけで良いから、簡単に仕口加工を行うことができる。これと同じく、第3横部材(30)の構成部材(30A)の端部に対して施す仕口加工としては、ドリフトピン(56)が挿通される挿通孔(31)を形成するだけで良いから、簡単に仕口加工を行うことができる。
【0065】
さらに、この第1実施形態では、第3横部材(30)の各構成部材(30A)の端部は、継手具(1)の本体(41)の各側面における隣り合う2個の接続片(50)(50)間に形成された空間(52)内に嵌め込まれた状態で、接続片(50)に接続されているから、この第3横部材(30)の端部は接続片(50)に強固に接続されている。しかも、この接続状態において、第3横部材(30)の各構成部材(30A)の端部の下側面は、受け板部(53)によって安定良く受けられている。
【0066】
さらに、この軸組構造において、第1縦部材(10)(又は第2縦部材(20))及び第3横部材(30)は、それぞれ補強部材(60)(70)によって補強されており、且つ、角度保持部材(80)によって両部材(10)(30)間の角度が保持されているので、頑丈な軸組が組み立てられている。
【0067】
また、この軸組工法によれば、第1縦部材(10)の下端部と第2縦部材(20)の上端部を、それぞれ継手具(1)の本体(41)の第1室(43)及び第2室(44)内に嵌め込むだけで、第1縦部材(10)と第2縦部材(20)を上下に連結できるから、連結作業が簡単である。しかも、連結の際に必ずしも接着剤や釘を用いる必要がなく、したがって部材(10)(20)(30)や継手具(1)の転用を容易に図ることができる。
【0068】
図9〜図11において、(2)は第2実施形態の継手具である。(10)は棒状の木質角材からなる第1縦部材であって、上記第1実施形態のそれと同様のものである。(30)は棒状の木質角材からなる第3横部材であって、上記第1実施形態のそれと同様のものである。
【0069】
継手具(2)は、第1縦部材(10)の下端部を基礎(K)に連結固定し、更に、互いに略垂直に配置される4個の第3横部材(30)の端部を第1縦部材(10)の下端部に連結するために用いられるものである。第1縦部材(10)は、例えば床束となる建築部材である。一方、第3横部材(30)は、例えば一階の床梁となる建築部材である。なお、これら図9〜図11には、上記第1実施形態の継手具(1)に対応する要素に同一の符号が付されており、以下、この第2実施形態の継手具(2)を、上記第1実施形態の継手具(1)との相異点を中心に説明する。
【0070】
この継手具(2)は、図9に示すように、上記第1実施形態の継手具(1)の本体(41)と同一構成の本体(41)と、該本体(41)を基礎(K)に接続する接続具(90)と、本体(41)を接続具(90)に連結するための複数個(詳述すると9個)の連結用棒状材(98)と、を備えている。
【0071】
この継手具(2)の本体(41)は、上述したように上記第1実施形態の継手具(1)の本体(41)と同一構成であるため、その構成の説明を省略する。
【0072】
接続具(90)は、金属製(詳述すると鋼製)のものであり、図10に示すように、横断面ロ字形の底付き角筒状部(91)を備えている。この筒状部(91)の下周縁にはフランジ部(96)が外方突出状に設けられている。この接続具(90)は、図11に示すようにコンクリートの基礎(K)中に埋設固定されるものである。
【0073】
この接続具(90)において、筒状部(91)の中空部(93)は、図10に示すように軸線方向に延びた格子状第3隔壁(95)によって複数個の第3小室(93a)…に区画されている。この第2実施形態では、筒状部(91)の中空部(93)は9個の第3小室(93a)に区画されている。この第3隔壁(95)は、筒状部(91)とその底壁部(91a)とに溶接等により接合一体化されている。また、この第3隔壁(95)は、第1隔壁(45)及び第2隔壁(46)と同じく、網形のものである。この第2実施形態では、筒状部(91)及び第3隔壁(95)は、それぞれ本体(41)及び第2隔壁(46)と同形同寸に形成されている。
【0074】
各連結用棒状材(98)は、所定長さを有する金属製(詳述すると鋼製)の角パイプ材からなる。図10において、(98a)は連結用棒状材(98)の中空部を示している。各連結用棒状材(98)は、その軸線が鉛直方向と略平行になる態様で本体(41)を接続具(90)に連結するものであって、該連結用棒状材(98)の下半部は接続具(90)の筒状部(91)の第3小室(93a)内に略ぴったりと挿入されるとともに、該連結用棒状材(98)の上半部は本体(41)の第2小室(44a)内に略ぴったりと挿入され、これにより、本体(41)を接続具(90)に連結するものである。
【0075】
次に、上記第2実施形態の継手具(2)を用いた軸組工法を説明する。
【0076】
まず、第1縦部材(10)の下端部に、第1隔壁差込み用の格子状第1溝(11)を丸ノコ等を用いた切削加工により形成する。
【0077】
一方、図11に示すように、コンクリートの基礎(K)中に接続具(90)の下部を、筒状部(91)の中空部(93)の開口を上方に向ける態様で埋設して固定する。
【0078】
次いで、図9及び図10に示すように、この接続具(90)の筒状部(91)の各第3小室(93a)内に連結用棒状材(98)の下半部を挿入するとともに、本体(41)の各第2小室(44a)内に該連結用棒状材(98)の上半部を挿入する。これにより、本体(41)が接続具(90)に連結される。
【0079】
次いで、第1縦部材(10)の下端部を、本体(41)の第1室(42)内に、第1溝(11)内に第1隔壁(45)を差し込む態様で嵌め込むことにより、図11に示すように第1縦部材(10)の下端部を本体(41)に接続する。この接続状態において、第1縦部材(10)の下端面は、本体(41)の底板部(47)によって安定良く受けられている。こうして第1縦部材(10)を本体(41)に接続することにより、該第1縦部材(10)が継手具(2)を介して基礎(K)に連結固定されることとなる。
【0080】
さらに、この本体(41)の接続片(50)に、第3横部材(30)の対応する構成部材(30A)の端部を、締結部材(55)としてのドリフトピン(56)によって上記第1実施形態と同様の手順で接続する。こうして第3横部材(30)を接続片(50)に接続することにより、第1縦部材(10)の下端部に第3横部材(30)が第1縦部材(10)に対して略垂直に(換言すると略水平に)連結されることとなる。
【0081】
なお、図11において、(99)は、基礎(K)上に敷設された敷き板であって、この敷き板(99)上に第3横部材(30)が載置されている。この敷き板(99)の下面には、基礎(K)との間に通気用空間を形成するための複数個の溝(99a)が設けられている。
【0082】
而して、上記軸組構造において、第1縦部材(10)の下端部は、継手具(2)の本体(41)の第1室(43)内に、第1溝(11)内に第1隔壁(45)が差し込まれた態様で嵌め込まれているから、この第1縦部材(10)は本体(41)に強固に接続されており、且つ、本体(41)は基礎(K)中に埋設固定されているから、第1縦部材(10)は基礎(K)に強固に連結固定されている。
【0083】
図12〜図14において、(3)は第3実施形態の継手具である。(110)は棒状の木質角材からなる第1横部材、(120)は棒状の木質角材からなる第2横部材、(130)は棒状の木質角材からなる第3横部材である。第1横部材(110)と第2横部材(120)は、第3横部材(130)の軸線方向中間部における幅方向両側(又は厚さ方向両側)にて該第3横部材(130)を挟む態様で該第3横部材(130)に対して略垂直に配置されるものである。第1横部材(110)、第2横部材(120)及び第3横部材(130)は、例えば根太等の床梁となる建築部材である。
【0084】
第3横部材(130)は、上記第1及び第2実施形態の第3横部材(30)と同じく、該第3横部材(130)の軸線と平行に複数個(同図では3個)に分割されて構成されているものである。また、この第3横部材(130)を構成する各構成部材(130A)は、上記第1及び第2実施形態の第3横部材(30)と同じく、予め所定長さ及び所定断面寸法に規格化されているものであり、例えば5cm×15cmの横断面をもつ横断面長方形状のもので、長さが1.650m又は3.450mのものである。一方、第1横部材(110)及び第2横部材(120)は、第3横部材(130)を構成する3個の構成部材(130A)(130A)(130A)のうち1個の構成部材(130A)と同じ断面寸法を持つものである。
【0085】
継手具(3)は、金属製(詳述すると鋼製)のものであって、第1横部材(110)と第2横部材(120)とを互いに連結するために用いられるものである。この継手具(3)は、図12に示すように、断面略コ字状に形成された本体(141)を備えている。この本体(141)の開口部(142)内には、第3横部材(130)の軸線方向中間部が略ぴったりと嵌め込まれる。
【0086】
本体(141)の一対の対向側板部(143)(144)において、一方の側板部(143、これを「第1側板部」という。)の外面には、所定間隔をおいて互いに平行に並んだ複数個(詳述すると2個)の第1接続片(146)…が外方突出状に設けられている。同じく、他方の側板部(144、これを「第2側板部」という。)の外面には、所定間隔をおいて互いに平行に並んだ複数個(詳述すると2個)の第2接続片(150)…が外方突出状に設けられている。
【0087】
第1側板部(143)における複数個の第1接続片(146)…において、隣り合う2個の第1接続片(146)(146)間に形成された空間(148)内には、第1横部材(110)の端部が略ぴったりと嵌め込まれる。各第1接続片(146)には、これを第1横部材(110)の端部に接続するための締結部材(55)が挿通される挿通孔(147)が複数個(詳述すると3個)設けられている。一方、第1横部材(110)の端部には、締結部材(55)が挿通される挿通孔(111)が切削加工により複数個(詳述すると3個)設けられている。締結部材(55)としては、ボルト−ナットやドリフトピン等が用いられ、この第3実施形態ではドリフトピン(56)が用いられている。そして、空間(148)内に第1横部材(110)の端部が略ぴったりと嵌め込まれた状態で、ドリフトピン(56)が両挿通孔(147)(111)内に第1接続片(146)と第1横部材(110)とに跨って挿通されることにより、第1接続片(146)が第1横部材(110)の端部に接続されるものとなされている。また、隣り合う2個の第1接続片(146)(146)の端部(詳述すると下端部)間には、空間(148)内に嵌め込まれた第1横部材(110)の端部の側面(詳述すると下側面)を受ける受け板部(149)が略水平状に架設されている。
【0088】
第2側板部(144)における複数個の第2接続片(150)…において、隣り合う2個の第2接続片(150)(150)間に形成された空間(152)内には、第2横部材(120)の端部が略ぴったりと嵌め込まれる。また、各第2接続片(150)には、これを第2横部材(120)の端部に接続するための締結部材(55)としてのドリフトピン(56)が挿通される挿通孔(151)が複数個(詳述すると3個)設けられている。これら複数個の第2接続片(150)…の構成は、上述した第1接続片(96)…の構成と同一であり、重複する説明を省略する。一方、第2横部材(120)の端部には、締結部材(55)としてのドリフトピン(56)が挿通される挿通孔(121)が切削加工により複数個(詳述すると3個)設けられている。また、隣り合う2個の第2接続片(150)(150)の端部(下端部)間には、空間(102)内に嵌め込まれた第2横部材(120)の端部の側面(詳述すると下側面)を受ける受け板部(153)が略水平状に架設されている(図14参照)。
【0089】
図12において、(160)及び(160)は、第3横部材(130)を補強する上下一対の板棒状の第3横部材用補強部材である。この各補強部材(160)は、金属製のものであり、図13及び図14に示すように、第3横部材(130)と略同じ長さを有する板棒状の基板部(161)と、該基板部(161)の内面の幅方向両側縁部に突設され第3横部材(130)の両側面に当接される一対の位置ずれ防止用突片部(162)(162)と、基板部(161)の内外両面に突設され基板部(161)の軸線方向に延びた複数個の補強リブ部(163)と、を有している。
【0090】
この一対の補強部材(160)(160)のうち一方の補強部材(160、これを「上補強部材」という。)は、第3横部材(130)の上側面に該第3横部材(130)の軸線に沿う態様で装着され、他方の補強部材(160、これを「下補強部材」という。)は、第3横部材(130)の下側面に該第3横部材(130)の軸線に沿う態様で装着されるものである。この装着状態において、各補強リブ部(163)は、第3横部材(130)の隣り合う2個の構成部材(130A)(130A)間に形成された隙間(S)内に差し込まれるものとなされている(図14参照)。
【0091】
この第3実施形態では、各補強部材(160)は、アルミニウム又はその合金製であって、軽量化が図られており、人力による運搬を容易に行えるものとなされている。
【0092】
一方、継手具(3)において、本体(91)の両側板部(93)(94)同士を連結した板状の連結部(145)には、上補強部材(160)の補強リブ部(163)が嵌合される嵌合部としての複数個の嵌合溝(145a)が設けられている。この連結部(145)の上面には例えば床板(図示せず)が水平状に載置される。この第3実施形態では、連結部(145)の上面は平坦状に形成されており、床板を安定良く載置し得るものとなされている。
【0093】
次に、上記第3実施形態の継手具(3)を用いた軸組工法を説明する。
【0094】
まず、図12に示すように、第1横部材(110)の端部に、ドリフトピン(56)が挿通される挿通孔(111)をドリル等を用いた切削加工により形成する。同じく、第2横部材(120)の端部に、ドリフトピン(56)が挿通される挿通孔(121)をドリル等を用いた切削加工により形成する。
【0095】
一方、第3横部材(130)の上側面及び下側面に、上下一対の補強部材(160)(160)をそれぞれ第3横部材(130)の軸線に沿う態様で装着する。次いで、必要に応じて該各補強部材(160)(160)を第3横部材(130)にボルト−ナット等の締結部材(図示せず)によって固定する。
【0096】
次いで、継手具(3)の本体(141)の開口部(142)内に第3横部材(130)の軸線方向中間部を上側面から嵌め込むとともに、該本体(141)の連結部(145)の嵌合溝(145a)内に、第3横部材(130)の上側面に装着された上補強部材(160)の補強リブ部(163)を嵌合する。これにより、本体(141)と上補強部材(160)とが互いに組み付けられた状態になる。
【0097】
次いで、この本体(141)の第1側板部(143)において、隣り合う2個の第1接続片(146)(146)間に形成された空間(148)内に、第1横部材(110)の端部を嵌め込む。次いで、この嵌込み状態で、ドリフトピン(56)を両挿通孔(147)(111)内に第1接続片(146)と第1横部材(110)とに跨って挿通することにより、第1横部材(110)の端部を第1接続片(146)に接続する。同じく、本体(141)の第2側板部(144)において、隣り合う2個の第2接続片(150)(150)間に形成された空間(152)内に、第2横部材(120)の端部を嵌め込む。次いで、この嵌込み状態で、ドリフトピン(56)を両挿通孔(151)(121)内に第2接続片(150)と第2横部材(120)とに跨って挿通することにより、第2横部材(120)の端部を第2接続片(150)に接続する。こうして、第1横部材(110)と第2横部材(120)とを継手具(3)の本体(141)の所定部位に接続することにより、図13及び図14に示すように第1横部材(110)と第2横部材(120)とが互いに同一軸線上に並んだ状態で略水平に連結されることとなる。
【0098】
而して、上記軸組構造において、第3横部材(130)は、補強部材(160)(160)によって補強されているため、頑丈な軸組が組み立てられている。
【0099】
さらに、継手具(3)の本体(141)の連結部(145)の嵌合溝(145a)内には、上補強部材(160)の補強リブ部(163)が嵌合されているから、本体(141)と上補強部材(160)とが互いに組み付けられている。
【0100】
その上、この第3実施形態では、第1横部材(110)の端部は、継手具(3)の本体(141)の第1側板部(143)における隣り合う2個の第1接続片(146)(146)間に形成された空間(148)内に嵌め込まれた状態で、第1接続片(146)に接続されているので、この第1横部材(110)の端部は第1接続片(146)に強固に接続されている。同じく、第2横部材(120)の端部は、本体(141)の第2側板部(144)における隣り合う2個の第2接続片(150)(150)間に形成された空間(152)内に嵌め込まれた状態で、第2接続片(150)に接続されているので、この第2横部材(120)の端部も第2接続片(150)に強固に接続されている。したがって、第1横部材(110)と第2横部材(120)とは互いに強固に連結されている。しかも、この連結状態において、第1横部材(110)の端部の下側面は、受け板部(149)によって安定良く受けられており、同じく、第2横部材(120)の端部の下側面も受け板部(153)によって安定良く受けられている。
【0101】
また、この軸組工法では、第1横部材(110)の端部及び第2横部材(120)の端部に対して施す仕口加工としては、ドリフトピン(56)が挿通される挿通孔(111)(121)を形成するだけで良いから、簡単に仕口加工を行うことができる。
【0102】
以上のように、上記第1〜第3実施形態の継手具(1)(2)(3)によれば、複数個の建築部材を強固に連結し得るようになるから、これら継手具(1)(2)(3)は、予め所定長さや所定断面寸法に規格化された複数個の建築部材を連結する際に用いる継手具として、特に好適に用いることができる。したがって、これら継手具(1)(2)(3)を用いることにより、木造建築物を建築する際に必要とされる建築部材の寸法の種類をできる限り少なくすることができるし、短尺材だけで木造建築物を建築することができるようになる。このため、通し柱が不要となるし、更には建築部材を一人若しくは二人で運搬できるようになり、もって人工数(くにんすう)を低減することができる。
【0103】
以上でこの発明の実施形態を説明したが、この発明は上記実施形態のものに限定されるものではなく、様々に設定変更可能であることは言うまでもない。
【0104】
例えば、継手具(1)(2)(3)は、上記実施形態では、所定の構成片を溶接等により所定箇所に接合することにより製作されたものであるが、この発明では、継手具(1)(2)(3)は鋳造等によって一体成型されたものであっても良いし、鋳造と溶接等による接合とを組み合わせて製作したものであっても良いし、所定の部位を折り曲げて製作したものであっても良い。
【0105】
【発明の効果】
上述の次第で、請求項1の発明に係る継手具は、本体の第1室内に、端部に第1隔壁差込み用第1溝が設けられた棒状の第1部材の端部が、第1溝内に第1隔壁が差し込まれる態様で嵌め込まれるものとなされているので、第1部材を強固に接続することができる。さらに、この継手具によれば、第1部材の端部に対して施す仕口加工として、溝を形成するだけで良く、複雑な仕口加工を行う必要がなくなり、高度な技能を有する技術者が不要となる。
【0106】
したがって、この継手具は、予め所定長さや所定断面寸法に規格化された複数個の建築部材を連結するための継手具として、特に好適に用いることができる。その上、第1部材の端部を本体の中空部内に嵌め込むだけで、第1部材を接続することができ、このため接続作業が簡単であり、したがって工期を短縮化することができる。
【0107】
請求項2の発明に係る継手具は、第1隔壁が格子状のものであるから、第1部材を極めて強固に接続することができる。
【0108】
請求項3の発明に係る継手具は、本体の第2室内に、端部に第2隔壁差込み用第2溝が設けられた棒状の第2部材の端部が、第2溝内に第2隔壁が差し込まれる態様で嵌め込まれるものとなされているので、上記請求項1の発明に係る継手具と同じく、第2部材を強固に接続することができるし、第2部材の端部に複雑な仕口加工を行う必要がなくなる。しかも、この継手具を用いることにより、第1部材と第2部材とを互いに強固に連結することができる。その上、第1部材の端部と第2部材の端部をそれぞれ本体の第1室及び第2室内に嵌め込むだけで、両部材を連結することができるので、両部材の連結作業を簡単に行うことができ、したがって工期を著しく短縮化することができる。また、第1部材の端面や第2部材の端面を底板部によって安定良く受けることができる。
【0109】
請求項4の発明に係る継手具は、第2隔壁が格子状のものであるから、第2部材を極めて強固に接続することができる。
【0110】
請求項5の発明に係る継手具は、所定の接続具と所定の連結用棒状材とを備えていることから、この継手具を用いることにより、第1部材を基礎に連結することができる。
【0111】
請求項6の発明に係る継手具は、第2隔壁と第3隔壁とが互いに同形同寸の格子状のものであるから、本体を接続具に確実に連結することができるし、継手具の強度を向上させることができる。
【0112】
請求項7の発明に係る継手具は、本体の外周面に、第1部材に対して略垂直に配置される棒状の第3部材の端部に接続される接続片が外方突出状に設けられているから、この継手具を用いることにより、第1部材とこれに対して略垂直に配置される第3部材とを連結することができる。
【0115】
請求項8の発明に係る建築物の軸組構造は、第1部材の外周面の所定の面に該第1部材を補強する第1部材用補強部材が装着されるとともに、第3部材の外周面の所定の面に該第3部材を補強する第3部材用補強部材が装着されているので、第1部材と第3部材がそれぞれ補強部材によって補強される。さらに、第1部材と第3部材との間の隅部内には所定の角度保持部材が装着されているので、第1部材と第3部材との間の角度が保持されている。したがって、この軸組構造によれば、頑丈な軸組構造を形成することができる。
【0116】
請求項9の発明に係る建築物の軸組工法は、請求項1又は2記載の継手具を用いた建築物の軸組工法であって、所定の第1縦部材の嵌込み工程を含んでいるから、接続作業を簡単に行うことができ、したがって工期を短縮化することができる。
【0117】
請求項10の発明に係る建築物の軸組工法は、請求項3又は4記載の継手具を用いた建築物の軸組構造であって、所定の第1縦部材の嵌込み工程と、所定の第2縦部材の嵌込み工程とを含んでいるから、両縦部材の連結作業を簡単に行うことができ、したがって工期を著しく短縮化することができる。
【0118】
請求項11の発明に係る建築物の軸組工法は、請求項5又は6記載の継手具を用いた建築物の軸組工法であって、所定の接続具の固定工程と、所定の連結用棒状材の挿入工程と、所定の第1縦部材の嵌込み工程とを含んでいるから、第1縦部材の基礎への連結作業を簡単に行うことができる。
【0119】
請求項12の発明に係る建築物の軸組工法は、請求項7記載の継手具を用いた建築物の軸組工法であって、所定の第1縦部材の嵌込み工程と、所定の第3横部材の接続工程とを含んでいるから、第1縦部材と第3横部材との連結作業を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態の継手具を用いて組み立てられる建築物の軸組構造を分解して示す斜視図である。
【図2】同継手具を用いて組み立てられた建築物の軸組構造を示す斜視図である。
【図3】図2中のIII−III線断面図である。
【図4】同継手具の斜視図である。
【図5】(イ)は同継手具の平面図、(ロ)は同継手具の正面図(又は側面図)である。
【図6】同継手具を複数個用いて組み立てられた建築物の軸組構造を示す斜視図である。
【図7】補強部材と角度保持部材を示す斜視図である。
【図8】(イ)は図6中のVIII(イ)−VIII(イ)線断面図、(ロ)は図6中のVIII(ロ)−VIII(ロ)線断面図である。
【図9】この発明の第2実施形態の継手具を示す斜視図である。
【図10】同継手具の接続具と連結用棒状材とを示す斜視図である。
【図11】同継手具を用いて組み立てられた建築物の軸組構造を示す断面図である。
【図12】この発明の第3実施形態の継手具を用いて組み立てられる建築物の軸組構造を分解して示す斜視図である。
【図13】同継手具を用いて組み立てられた建築物の軸組構造を示す斜視図である。
【図14】図13中のXIV−XIV線断面図である。
【符号の説明】
10…第1縦部材(第1部材)
20…第2縦部材(第2部材)
30…第3横部材(第3部材)
1、2…継手具
41…本体
42…中空部
43…第1室
44…第2室
45…第1隔壁
46…第2隔壁
47…底板部
55…締結部材
56…ドリフトピン
110…第1横部材
120…第2横部材
130…第3横部材
3…継手具
141…本体
142…開口部
143…第1側板部
144…第2側板部
145…連結部
145a…嵌合溝(嵌合部)
146…第1接続片
150…第2接続片
Claims (12)
- 中空部(42)が軸線方向中間部にて軸線に対して略垂直に配置された底板部(47)によって第1室(43)と第2室(44)とに仕切られた筒状の本体(41)を備えるとともに、
前記本体(41)の第1室(43)は、軸線方向に延びた第1隔壁(45)によって複数個の第1小室(43a)に区画されており、
前記本体(41)の第1室(43)内に、端部に第1隔壁差込み用第1溝(11)が設けられた棒状の第1部材(10)の前記端部が、第1溝(11)内に第1隔壁(45)が差し込まれる態様で嵌め込まれるものとなされていることを特徴とする建築部材の継手具。 - 前記第1隔壁(45)は格子状のものである請求項1記載の建築部材の継手具。
- 前記本体(41)の第2室(44)は、軸線方向に延びた第2隔壁(46)によって複数個の第2小室(44a)に区画されており、
前記本体(41)の第2室(44)内に、端部に第2隔壁差込み用第2溝(21)が設けられた棒状の第2部材(20)の前記端部が、第2溝(21)内に第2隔壁(46)が差し込まれる態様で嵌め込まれるものとなされている請求項1又は2記載の建築部材の継手具。 - 前記第2隔壁(46)は格子状のものである請求項3記載の建築部材の継手具。
- 前記本体(41)を基礎(K)に接続する接続具(90)と、前記本体(41)を前記接続具(90)に連結するための連結用棒状材(98)とを備えるとともに、
前記本体(41)の第2室(44)は、軸線方向に延びた第2隔壁(46)によって複数個の第2小室(44a)に区画されており、
前記接続具(90)は、中空部(93)が軸線方向に延びた第3隔壁(95)によって複数個の第3小室(93a)に区画された筒状部(91)を有するとともに、基礎(K)に固定されるものであり、
前記連結用棒状材(98)は、その一端部が前記接続具(90)の第3小室(93a)内に挿入されるとともに、他端部が前記本体(41)の第2小室(44a)内に挿入されるものとなされている請求項1又は2記載の建築部材の継手具。 - 前記第2隔壁(46)と前記第3隔壁(95)は、互いに同形同寸の格子状のものである請求項5記載の建築部材の継手具。
- 前記本体(41)の外周面に、前記第1部材(10)に対して略垂直に配置される棒状の第3部材(30)の端部に接続される接続片(50)が外方突出状に設けられている請求項1〜6のいずれか1項記載の建築部材の継手具。
- 請求項7記載の建築部材の継手具(1)を用いて組み立てられた建築物の軸組構造であって、
端部に第1隔壁差込み用第1溝( 11 )が設けられた棒状の第1部材( 10 )の前記端部が、継手具(1)の本体( 41 )の第1室( 43 )内に、第1溝( 11 )内に第1隔壁( 45 )が差し込まれた態様で嵌め込まれるとともに、
前記第1部材( 10 )に対して略垂直に配置される棒状の第3部材( 30 )の端部が、継手具(1)の本体( 41 )の接続片( 50 )に締結部材( 55 )により接続されており、
前記第1部材( 10 )の外周面における第3部材( 30 )側に向いた面に、該第1部材( 10 )を補強する第1部材用補強部材( 60 )が装着されるとともに、前記第3部材( 30 )の外周面における第1部材( 10 )側に向いた面に、該第3部材( 30 )を補強する第3部材用補強部材( 70 )が装着されており、
且つ、前記第1部材( 10 )と前記第3部材( 30 )との間の隅部内に、該両部材( 10 、 30 )間の角度を保持する角度保持部材( 80 )が装着されていることを特徴とする建築物の軸組構造。 - 請求項1又は2記載の建築部材の継手具(1、2)を用いた建築物の軸組工法であって、
端部に第1隔壁差込み用第1溝( 11 )が設けられた棒状の第1縦部材( 10 )の前記端部 を、継手具(1、2)の本体( 41 )の第1室( 43 )内に、第1溝( 11 )内に第1隔壁( 45 )を差し込む態様で嵌め込む第1縦部材の嵌込み工程を含んでいることを特徴とする建築物の軸組工法。 - 請求項3又は4記載の建築部材の継手具(1、2)を用いた建築物の軸組工法であって、
端部に第1隔壁差込み用第1溝( 11 )が設けられた棒状の第1縦部材( 10 )の前記端部を、継手具(1、2)の本体( 41 )の第1室( 43 )内に、第1溝( 11 )内に第1隔壁( 45 )を差し込む態様で嵌め込む第1縦部材の嵌込み工程と、
端部に第2隔壁差込み用第2溝( 21 )が設けられた棒状の第2縦部材( 20 )の前記端部を、継手具(1、2)の本体( 41 )の第2室( 44 )内に、第2溝( 21 )内に第2隔壁( 46 )を差し込む態様で嵌め込む第2縦部材の嵌込み工程と、
を含んでいることを特徴とする建築物の軸組工法。 - 請求項5又は6記載の建築部材の継手具(2)を用いた建築物の軸組工法であって、
接続具( 90 )を基礎(K)に固定する接続具の固定工程と、
接続具( 90 )の第3小室( 93a )内に連結用棒状材( 98 )の一端部を挿入するとともに、継手具(2)の本体( 41 )の第2小室( 44a )内に該連結用棒状材( 98 )の他端部を挿入する連結用棒状材の挿入工程と、
下端部に第1隔壁差込み用第1溝( 11 )が設けられた棒状の第1縦部材( 10 )の前記下端部を、継手具(2)の本体( 41 )の第1室( 43 )内に、第1溝( 11 )内に第1隔壁( 45 )を差し込む態様で嵌め込む第1縦部材の嵌込み工程と、
を含んでいることを特徴とする建築物の軸組工法。 - 請求項7記載の建築部材の継手具(1、2)を用いた建築物の軸組工法であって、
端部に第1隔壁差込み用第1溝( 11 )が設けられた棒状の第1縦部材( 10 )の前記端部を、継手具(1、2)の本体( 41 )の第1室( 43 )内に、第1溝( 11 )内に第1隔壁( 45 )を差し込む態様で嵌め込む第1縦部材の嵌込み工程と、
棒状の第3横部材( 30 )の端部を接続片( 50 )に締結部材( 55 )により接続する第3横部材の接続工程と、
を含んでいることを特徴とする建築物の軸組工法。
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