JP3704261B2 - 複動用ダイホルダ機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複動用ダイホルダ機構に関し、コンパクトで、簡単な構造とすることにより、耐久性を有するとともに、小形の単動式プレス機によっても、複動鍛造成形を簡易かつ低廉に行うことができるようにした複動用ダイホルダ機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プレス機によって1工程で素材を複雑な形状に成形する場合、複動鍛造成形が行われている。
【0003】
この複動鍛造成形は、(1)複動式プレス機を用いたり、(2)単動式プレス機に油圧複動内蔵ダイホルダ機構、リンク内蔵ダイホルダ機構等の補助機構を取り付けることにより、第1動作と、これに続く第2動作とを、1工程で行うことができるようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)の複動鍛造成形に用いる複動式プレス機は、油圧装置及びその制御機構の構造が複雑となり、設備コストが上昇するという問題があった。
【0005】
一方、上記(2)の単動式プレス機に油圧複動内蔵ダイホルダ機構、リンク内蔵ダイホルダ機構等の補助機構を取り付ける方法は、補助機構を装着する大きなスペースが必要となることから、ダイハイトの小さい小形のプレス機には適用できず、特に、ダイハイトの大きい大形のプレス機を新たに導入する必要がある等により、設備コストが上昇するとともに、補助機構の耐久性の点でも問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の複動鍛造成形に用いる各種装置の有する問題点に鑑み、コンパクトで、簡単な構造とすることにより、耐久性を有するとともに、小形の単動式プレス機によっても、複動鍛造成形を簡易かつ低廉に行うことができるようにした複動用ダイホルダ機構を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の複動用ダイホルダ機構は、プレス機にそれぞれ対向して配設される上ダイホルダと、下ダイホルダとからなり、上下のダイホルダの少なくとも一方のダイホルダを、金型を保持するホルダ本体と、プレス機に取り付けるホルダベースで構成するとともに、前記ホルダ本体を、複数組のばね機構を介して、該ばね機構の撓み代となる隙間を設けてホルダベースに取り付け、上下のダイホルダにそれぞれ保持した上下の金型の接触後に、マンドレルが金型内に進入するように構成した複動用ダイホルダ機構において、一方のダイホルダのホルダ本体を貫通して、ホルダベースにテーパ面を有するテーパピンを垂設するとともに、該テーパピンのテーパ面と対向するテーパ面を有し、テーパピンのテーパ面によって押圧されて水平方向に移動することによって、上金型と下金型間に挟持されて素材の外周面を成形する整形ピンをホルダ本体に固定したピンホルダに保持したことを特徴とする。
【0008】
この複動用ダイホルダ機構は、ホルダ本体を、複数組のばね機構を介して、このばね機構の撓み代となる隙間を設けてホルダベースに取り付け、上下のダイホルダにそれぞれ保持した上下の金型の接触後に、マンドレルが金型内に進入するように構成しているので、コンパクトで、簡単な構造の機構で以て、複動鍛造成形を行うことができる。
また、ばねの弾性係数、枚数を変更することにより、必要な複動圧力、複動距離を簡易に設定することができる。
そして、ダイホルダのホルダ本体を貫通して、ホルダベースにテーパ面を有するテーパピンを垂設するとともに、該テーパピンのテーパ面と対向するテーパ面を有し、テーパピンのテーパ面によって押圧されて水平方向に移動することによって、上金型と下金型間に挟持されて素材の外周面を成形する整形ピンをホルダ本体に固定したピンホルダに保持するように構成することにより、先端部分に大径部を有するような複雑な形状をした成形品を、高精度に成形することができる。
【0009】
この場合において、ばね機構を、複数枚の皿ばねを皿ばね保持体に嵌挿することにより同心状に積層して構成することができる。
【0010】
これにより、ダイホルダ機構の複動動作を円滑に行うことができ、高精度の複動鍛造成形を行うことができる。
【0011】
また、ばね機構を、複数のコイルばねにより構成し、上下のホルダ本体とホルダベースとの間に、それぞれ保持するようにして構成することができる。
【0012】
これにより、低廉なコイルばねを使用して、必要とされる複動圧力、複動距離を簡易に設定でき、耐久性のある機構を提供することができる。
【0013】
また、ばね機構を、金型の周囲に対称に配設することができる。
【0014】
これにより、複動圧力、複動距離を均一にして複動動作を行うことができ、高精度の複動鍛造成形を行うことができる。
【0015】
また、上ダイホルダの降下に伴い、下ダイホルダをこれに同期して降下させる同期機構を備えることができる。
【0016】
これにより、鍛造成形時の上下の金型の成形抵抗に差が生じるような場合でも、強制的に上下のダイホルダを同期させて動作させて、均一に成形を行うことができ、成形品の精度を高精度に保持することができる。
【0017】
また、上金型内の成形品を強制的に離型させる成形品脱型機構を上ホルダベース内に備えることができる。
【0018】
これにより、上金型内の成形品を確実に、かつ強制的に離型することができ、鍛造成形の自動化を円滑に行うことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の複動用ダイホルダ機構の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1〜図3に、本発明の複動用ダイホルダ機構の第1実施例を示す。
この複動用ダイホルダ機構は、プレス機の上取付台又はラムに直接取り付ける上ダイホルダ1と、下取付台に取り付ける下ダイホルダ2とからなり、この上ダイホルダ1と、下ダイホルダ2とを、プレス機に、それぞれ上下に対向して配設して使用するものである。
なお、下ダイホルダ2に、ガイドロッド29を上向きに突設し、このガイドロッド29を、プレス機の作動時、上ダイホルダ1に形成したガイドロッド挿入孔19に嵌挿することにより、上ダイホルダ1と下ダイホルダ2との位置合わせを行うようにする。
【0021】
上ダイホルダ1は、プレス機の上取付台又はラムにボルト11Bを介して固定する上ホルダベース11と、上ホルダ本体12と、上ホルダベース11と上ホルダ本体12との間に介在する皿ばね機構18とからその主要部を構成するようにする。
【0022】
この場合において、上ホルダ本体12は、上ホルダベース11に対して、所定の距離だけ上下方向に移動可能に隙間Cを設けて、ボルト13を介して取り付けるとともに、この上ホルダ本体12の中央部に形成した金型嵌挿部14H内にスペーサ15を介して上金型14を配設し、さらに、その中心に押上用ばね16を介して上マンドレル17を配設するようにする。
そして、金型嵌挿部14H内にスペーサ15を介して配設した上金型14は、金型取付具14Bを介して上ホルダ本体12に固定するようにする。
また、上マンドレル17の基端側に形成したフランジ17Fの外周部には、円周上にばね嵌挿穴17Hを形成し、このばね嵌挿穴17Hから上金型14のスペーサ15に形成したばね嵌挿孔15Hを通って上金型14の上面に当接するように押上用ばね16を配設することにより、上マンドレル17を上方に向けて付勢するようにする。
【0023】
また、上ホルダベース11と上ホルダ本体12との間に介在する皿ばね機構18は、特に限定されるものではないが、上ホルダ本体12に固定した上金型14の周囲に対称に、本実施例においては、4箇所に配設するようにする。
そして、この皿ばね機構18は、複数枚の皿ばね18Pを、ボルト18Bを介して上ホルダベース11に固定した皿ばね保持体18Gに嵌挿することにより同心状に積層して構成するとともに、上ホルダ本体12内に形成した皿ばね機構嵌挿穴18H内に配設することにより、上ホルダ本体12を下方に向けて付勢するようにする。
【0024】
一方、下ダイホルダ2は、上ダイホルダ1と、基本的には同様にして構成する。
すなわち、下ダイホルダ2は、プレス機の下取付台(ボルスタ)にボルト21Bを介して固定する下ホルダベース21と、下ホルダ本体22と、下ホルダベース21と下ホルダ本体22との間に介在する皿ばね機構28とからその主要部を構成するようにする。
【0025】
この場合において、下ホルダ本体22は、下ホルダベース21に対して、所定の距離だけ上下方向に移動可能に隙間Cを設けて、ボルト23を介して取り付けるとともに、この下ホルダ本体22の中央部に形成した金型嵌挿部24H内にスペーサ25を介して下金型24を配設し、さらに、その中心に押下用ばね26を介して下マンドレル27を配設するようにする。
そして、金型嵌挿部24H内にスペーサ25を介して配設した下金型24は、金型取付具24Bを介して下ホルダ本体22に固定するようにする。
また、下マンドレル27の基端側に形成したフランジ27Fの外周部には、円周上にばね嵌挿穴27Hを形成し、このばね嵌挿穴27Hから下金型24のスペーサ25に形成したばね嵌挿孔25Hを通って下金型24の上面に当接するように押下用ばね26を配設することにより、下マンドレル27を下方に向けて付勢するようにする。
【0026】
また、下ホルダベース21と下ホルダ本体22との間に介在する皿ばね機構28は、特に限定されるものではないが、下ホルダ本体22に固定した下金型24の周囲に対称に、本実施例においては、4箇所に配設するようにする。
そして、この皿ばね機構28は、複数枚の皿ばね28Pを、ボルト28Bを介して下ホルダベース21に固定した皿ばね保持体28Gに嵌挿することにより同心状に積層して構成するとともに、下ホルダ本体22内に形成した皿ばね機構嵌挿穴28H内に配設することにより、下ホルダ本体22を下方に向けて付勢するようにする。
【0027】
次に、本発明の複動用ダイホルダ機構の作用について説明する。
プレス機に、上ダイホルダ1及び下ダイホルダ2を、ボルト11B,21Bを介して、それぞれ上下に対向して取り付けるようにする。
この場合、上ダイホルダ1及び下ダイホルダ2には、所要の形状の上金型14及び下金型24並びに上マンドレル17及び下マンドレル27を取り付けておくようにする。
そして、下金型24上に成形する素材をセットする。
【0028】
次に、プレス機を作動させることにより、例えば、上ダイホルダ1を上金型14と共に下降させると、まず、上ダイホルダ1及び下ダイホルダ2に取り付けられている上金型14及び下金型24が接触し、下金型24上にセットされた素材が上金型14及び下金型24間に挟持され、必要に応じて、所要の鍛造成形を行われる(図1の左半図(第1動作))。
【0029】
次に、この第12作に連続して、上金型14及び下金型24が接触し、素材を上金型14及び下金型24間に挟持した状態で、さらに、上ダイホルダ1を上金型14と共に下降させると、接触した上金型14及び下金型24を介して、上ホルダ本体12と下ホルダ本体22とが押圧され、皿ばね機構18,28の皿ばね18P,28Pの付勢力に抗しながら、上ダイホルダ1の上ホルダベース11と上ホルダ本体12間の隙間C及び下ダイホルダ2の下ホルダベース21と下ホルダ本体22間の隙間Cが狭まるように、上ホルダ本体12が上ホルダベース11に対して上方に、下ホルダ本体22が下ホルダベース21に対して下方に、相対的に移動する。
これにより、上ダイホルダ1及び下ダイホルダ2に配設された上マンドレル17及び下マンドレル27が、それぞれ上金型14及び下金型24内に進入し、上金型14及び下金型24間に挟持された素材に、所要の鍛造成形を行うようにする(図1の右半図(第2動作))。
なお、上ダイホルダ1の下降距離は、最大で、素材を上金型14及び下金型24が接触してから、上ダイホルダ1の上ホルダベース11と上ホルダ本体12間の隙間C及び下ダイホルダ2の下ホルダベース21と下ホルダ本体22間の隙間Cがなくなる距離2Cとすることができる。
【0030】
成形後、上ダイホルダ1を上金型14と共に上昇させると、上金型14及び下金型24が接触し、成形品を上金型14及び下金型24間に挟持した状態で、皿ばね機構18,28の皿ばね18P,28Pの付勢力により、上ダイホルダ1の上ホルダベース11と上ホルダ本体12間の隙間C及び下ダイホルダ2の下ホルダベース21と下ホルダ本体22間の隙間Cが拡大し、上ホルダ本体12が上ホルダベース11に対して下方に、下ホルダ本体22が下ホルダベース21に対して上方に、相対的に移動する。
【0031】
そして、さらに、上ダイホルダ1を上金型14と共に上昇させると、上金型14及び下金型24の接触が解除され、上金型14と下金型24間が開口して、成形品を取り出すことができる。
【0032】
このとき、上マンドレル17及び下マンドレル27は、それぞれ押上用ばね16及び押下用ばね26の付勢力によって、成形品から分離し、初期位置に復帰する。
【0033】
なお、本実施例においては、上ダイホルダ1及び下ダイホルダ2の両方に、皿ばね機構18,28並びに上マンドレル17及び下マンドレル27を配設したが、成形品の形状によっては、いずれか一方のダイホルダのみにこれらの機構を配設し、他方のダイホルダには、金型のみを配設するように構成することもできる。
【0034】
次に、この複動用ダイホルダ機構を利用した複動用ダイホルダ機構の例を、図4〜図10に示す。
【0035】
この複動用ダイホルダ機構は、例えば、図10に示すような自動車部品(トリポート・インボードジョイント)のように先端部分に大径部Waを有する複雑な形状をした成形品Wを、高精度に成形することができるようにしたものである。
【0036】
ところで、トリポート・インボードジョイント(以下、「成形品W」という。)の小形化、軽量化を図るためには、その先端部分の大径部Waの突出長さL1を短く形成する必要がある。
しかしながら、従来の鍛造成形装置によっては、このような成形が行えないため、図11に示すように、鍛造にて成形が可能な、先端部分にストレートの突出部Wa’(突出長さL2>突出長さL1)を有する中間成形品W’を成形し、次工程で所定寸法に仕上げるようにしていた。
【0037】
ここでは、図10に示すような先端部分に大径部Waを有する複雑な形状をした成形品Wを、1工程で、かつ、高精度に成形することができ、低コスト化と、自動車等の構成部品の小形化、軽量化を図ることができるようにした複動用ダイホルダ機構を提供する。
【0038】
この複動用ダイホルダ機構は、上ダイホルダ1の上ホルダ本体12に保持される上金型14及び下ダイホルダ2の下ホルダ本体22に保持される下金型24に加え、上ダイホルダ1(特に限定されるものではなく、下ダイホルダ2側に配設することも可能である。)の上ホルダ本体12を貫通して、上ホルダベース11に垂設されるテーパピン30と、このテーパピン30によって押圧されて水平方向に移動することによって素材W0の外周面を成形する整形ピン31と、この整形ピン31を保持する上ホルダ本体12に固定したピンホルダ33とを配設して構成するようにしている。
なお、テーパピン30及び整形ピン31は、成形品Wの形状に応じて、配設するようにするが、本変形例においては、成形品Wの先端部分の大径部Waに対応して、3組のテーパピン30及び整形ピン31を配設するようにしている。
【0039】
この場合において、上金型14は、上記実施例と同様、上ホルダ本体12に形成した金型嵌挿部14H内にスペーサ15を介して取り付けられ、また、下金型24は、下ホルダベース21に本体22に形成した金型嵌挿部24H内にスペーサ25を介して取り付けられる。
【0040】
テーパピン30は、図7に示すように、上部にねじ孔30hを形成して上ホルダベース11に取付ボルト32にて垂設するようにして固定し、上ホルダ本体12を貫通するようにするとともに、下部を中心を向くテーパ面30tに形成するようにする。
【0041】
整形ピン31は、図8に示すように、ピンホルダ33に水平方向に摺動可能に保持され、上金型14と下金型24間に挟持されるように配設されるとともに、基端部を、テーパピン30のテーパ面30tと対向するテーパ面31tに、先端面を、テーパピン30のテーパ面30tによって整形ピン31が押圧されて水平方向に移動することによって素材W0の外周面(大径部Waとなる先端面)を所定形状、例えば、曲面に成形することができるように湾曲した凹面31aに形成するようにする。
【0042】
整形ピン31の基端部を水平方向に摺動可能に保持して、上金型14と下金型24が離間したとき、整形ピン31が上ダイホルダ1側に保持されるようにするピンホルダ33は、上ホルダ本体12の下面にボルトにて固定される。
ピンホルダ33は、図9に示すように、円環状の本体33aと、蓋33bとに分離可能に形成するとともに、本体33aには、テーパ面30tを形成したテーパピン30の下部が嵌挿される孔部33h1及びテーパ面31tを形成した整形ピン31の基端部が嵌挿される切欠部33h2を形成し、蓋33bには、テーパ面31tを形成した整形ピン31の基端部が嵌挿される切欠部33h3を形成するようにする。
【0043】
これにより、ピンホルダ33にて保持された整形ピン31のテーパ面31tが、テーパピン30のテーパ面30tと間隙Gを有して対向するようにし、プレス機を作動させることにより、上ダイホルダ1と共にテーパピン30を下降させると、テーパピン30のテーパ面30tと整形ピン31のテーパ面31tが当接し、これによって、整形ピン31が押圧されて、整形ピン31を水平方向に素材W0の中心に向けて移動するように構成する。
【0044】
次に、本実施例の複動用ダイホルダ機構を利用した複動用ダイホルダ機構の変形例の動作について説明する。
【0045】
図1〜図3に示した実施例と同様、下金型24上に成形する素材をセットする。
次に、プレス機を作動させることにより、上ダイホルダ1を上金型14と共に下降させると、まず、上ダイホルダ1及び下ダイホルダ2に取り付けられている上金型14及び下金型24が接触し、下金型24上にセットされた素材が上金型14及び下金型24間に挟持され、必要に応じて、所要の鍛造成形が行われる(図4の左半図(第1動作))。
【0046】
次に、この第1動作に連続して、上金型14及び下金型24が接触し、素材を上金型14及び下金型24間に挟持した状態で、さらに、上ダイホルダ1を上金型14と共に下降させると、接触した上金型14及び下金型24を介して、上ホルダ本体12と下ホルダ本体22とが押圧され、皿ばね機構18,28の皿ばね18P,28Pの付勢力に抗しながら、上ダイホルダ1の上ホルダベース11と上ホルダ本体12間の隙間C及び下ダイホルダ2の下ホルダベース21と下ホルダ本体22間の隙間Cが狭まるように、上ホルダ本体12が上ホルダベース11に対して上方に、下ホルダ本体22が下ホルダベース21に対して下方に、相対的に移動する。
これにより、上ダイホルダ1及び下ダイホルダ2に配設された上マンドレル17及び下マンドレル27が、それぞれ上金型14及び下金型24内に進入し、上金型14及び下金型24間に挟持された素材に、所要の鍛造成形を行うようにする(図4の右半図(第2動作の1))。
【0047】
ところで、本変形例においては、この第2動作に合わせて、上ダイホルダ1と共にテーパピン30が下降し、テーパピン30のテーパ面30tと整形ピン31のテーパ面31tが当接し、これによって、整形ピン31が押圧されて、整形ピン31が水平方向に素材W0の中心に向けて移動する。
整形ピン31が水平方向に素材Wの中心に向けて移動することによって、例えば、湾曲した凹面31aに成形した整形ピン31の先端面を、素材W0の外周面(大径部Waとなる先端面)に押圧して、素材W0の外周面を所定形状、例えば、曲面に成形するようにする(図4の右半図(第2動作の2))。
なお、下降したテーパピン30の下端が下ホルダ本体22と接しないように、テーパピン30の長さにより、必要応じて、下ホルダ本体22に、テーパピン30の下端が挿入される窪み22hを形成することができる。
【0048】
成形後、上ダイホルダ1を上金型14と共に上昇させると、上金型14及び下金型24が接触し、成形品Wを上金型14及び下金型24間に挟持した状態で、皿ばね機構18,28の皿ばね18P,28Pの付勢力により、上ダイホルダ1の上ホルダベース11と上ホルダ本体12間の隙間C及び下ダイホルダ2の下ホルダベース21と下ホルダ本体22間の隙間Cが拡大し、上ホルダ本体12が上ホルダベース11に対して下方に、下ホルダ本体22が下ホルダベース21に対して上方に、相対的に移動する。
上ダイホルダ1の上昇と合わせて、上ダイホルダ1と共にテーパピン30が上昇し、テーパピン30のテーパ面30tと整形ピン31のテーパ面31tが離間し、これによって、整形ピン31の押圧が解除される。
【0049】
そして、さらに、上ダイホルダ1を上金型14と共に上昇させると、上金型14及び下金型24の接触が解除され、上金型14と下金型24間が開口して、成形品Wを取り出すことができる。
【0050】
このとき、上マンドレル17及び下マンドレル27は、それぞれ押上用ばね16及び押下用ばね26の付勢力によって、成形品Wから分離し、初期位置に復帰する。
【0051】
また、整形ピン31は、その基端部がピンホルダ33を介して上ホルダ本体12に保持されているため、上金型14と下金型24が離間しても、上ダイホルダ1側に保持された状態で上昇する。
【0052】
なお、整形ピン31に復帰用手段を設けて、テーパピン30による押圧力が解除されると同時に整形ピン31が水平放射方向に移動し、初期位置に復帰するように構成することもできる。
【0053】
次に、図12〜図17に、本発明の複動用ダイホルダ機構の第2実施例を示す。
本実施例は、プレス機に取り付ける上ダイホルダ4、下ダイホルダ5内に配設するばね機構に、コイルばねを採用したもので、その他の構成及び作用は、上記第1実施例の複動用ダイホルダ機構と同じである。
【0054】
この場合において、上ダイホルダ4の上ホルダ本体42には、図12及び図14〜図17に示すように、下面中央部に金型を嵌挿する金型嵌挿部44Hと、この金型嵌挿部44Hの周囲に対応する上面のほぼ全面に対称に多数のばね機構嵌挿穴48Hを形成するようにする。
このばね機構嵌挿穴48Hの数は、鍛造成形時に上ホルダ本体42にかかる荷重に対応して、かつコイルばね8のばね定数に応じて定められるもので、上ホルダ本体42にかかる荷重を均一に受けることができるようにする。
また、上ホルダ本体42の上方に配設する上ホルダベース41の下面の上ホルダ本体42に形成したばね機構嵌挿穴48Hと対応する位置にばね機構嵌挿穴41Hを形成するようにする。
そして、このばね機構嵌挿穴48H及びばね機構嵌挿穴41Hの深さは、コイルばね8が離脱しないように設定する。
【0055】
この上下に重ねる上ホルダベース41と上ホルダ本体42との位置合わせは、上ホルダ本体42の端面位置に上方に向かって突設するガイド板Gに上ホルダベース41の端面を摺動可能に当接して行うとともに、上ホルダ本体42側よりばね機構嵌挿穴48H、ばね機構嵌挿穴41H間に嵌挿するコイルばね8内を挿通し、かつ上ホルダベース41に螺合して係止する取付ボルト4Bにより行うようにする。
【0056】
なお、ばね機構嵌挿穴48Hとばね機構嵌挿穴41H間には、鍛造成形時に上ホルダ本体42にかかる荷重に対応して、そのすべて又は選択的にコイルばね8を嵌挿するようにすることができる。
また、取付ボルト4Bは、後述の上下のダイホルダ4,5のタイミングをとる同期機構6を配設する位置においては、省略することができる。
また、この取付ボルト4Bには、取付ボルト4Bの保護及び上ホルダベース41と上ホルダ本体42との位置合わせを容易に行うためにスリーブSを嵌挿することができる。
【0057】
この場合において、上ホルダ本体42は、上ホルダベース41に対して、所定の距離だけ上下方向に移動可能に隙間Cを設けて取り付けるようにする。
【0058】
一方、下ダイホルダ5の下ホルダ本体52には、図13及び図14〜図17に示すように、上面中央部に金型を嵌挿する金型嵌挿部54Hと、この金型嵌挿部54Hの周囲に対応する下面のほぼ全面に対称に多数のばね機構嵌挿穴58Hを形成するようにする。
このばね機構嵌挿穴58Hの数は、鍛造成形時に下ホルダ本体52にかかる荷重に対応して、かつコイルばね8のばね定数に応じて定められるもので、下ホルダ本体52にかかる荷重を均一に受けることができるようにする。
また、下ホルダ本体52の上方に配設する下ホルダベース51の上面の下ホルダ本体52に形成したばね機構嵌挿穴58Hと対応する位置にばね機構嵌挿穴51Hを形成するようにする。
そして、このばね機構嵌挿穴58H及びばね機構嵌挿穴51Hの深さは、コイルばね8が離脱しないように設定する。
【0059】
この上下に重ねる下ホルダベース51と下ホルダ本体52との位置合わせは、下ホルダ本体52の端面位置に下方に向かって突設するガイド板Gに下ホルダベース51の端面を摺動可能に当接して行うとともに、下ホルダ本体52側よりばね機構嵌挿穴58H、ばね機構嵌挿穴51H間に嵌挿するコイルばね8内を挿通し、かつ下ホルダベース51に螺合して係止する取付ボルト5Bにより行うようにする。
【0060】
なお、ばね機構嵌挿穴58Hとばね機構嵌挿穴51H間には、鍛造成形時に上ホルダ本体52にかかる荷重に対応して、そのすべて又は選択的にコイルばね8を嵌挿するようにすることができる。
また、取付ボルト5Bは、後述の上下のダイホルダ4,5のタイミングをとる同期機構6を配設する位置においては、省略することができる。
また、この取付ボルト5Bには、取付ボルト5Bの保護及び下ホルダベース51と下ホルダ本体52との位置合わせを容易に行うためにスリーブSを嵌挿することができる。
【0061】
この場合において、下ホルダ本体52は、下ホルダベース51に対して、所定の距離だけ上下方向に移動可能に隙間Cを設けて取り付けるようにする。
【0062】
次に、図14〜図17に示した、上ダイホルダ4の上ホルダ本体42の降下に伴い、下ダイホルダ5の下ホルダ本体52をこれに同期して降下させる同期機構6について説明する。
この同期機構6は、下ダイホルダ5の下ホルダ本体52内に軸61を介してシーソー状に揺動可能に支持したレバー62と、上ホルダベース41に固定し、上ホルダ本体42内を貫通するように配設した固定ロッド63と、この固定ロッド63の下端面と対向し、かつ下ホルダ本体52内に嵌挿されたレバー62の一端側と当接する摺動ロッド64と、下ホルダベース51に樹立し、上部を下ホルダ本体52内に形成した孔5H内に摺動可能に挿入して支持し、かつ側面に形成した窪み65a内に、レバー62の他端側端部を嵌合係止したレバー支持具65とより構成される。
【0063】
この同期機構6は、図17に示すように、プレス機の作動にて上ホルダベース41を介して上ホルダ本体42が、図17(A)に示す状態から図17(B)に示す状態まで降下すると、上ホルダベース41に固定された固定ロッド63の先端が摺動ロッド64と当接してこの摺動ロッド64を押し下げ、これにより、レバー62は、レバー62の他端側がレバー支持具65の窪み65aに嵌合、拘束されているので、軸61を支点としてシーソー状に揺動する。
このとき、レバー62の支点となる軸61より摺動ロッド64との当接位置までの距離と、軸61からレバー支持具65の窪み65aによる嵌合支持位置までの距離を等しく形成し、かつレバー62の他端側端部をレバー支持具65の窪み65aに嵌合、拘束するようにしているので、上ホルダベース11の押し下げ量の1/2の距離だけ下ホルダ本体52が押し上げられ、上ホルダベース41と上ホルダ本体42間の隙間Cと、下ホルダベース51と下ホルダ本体52間の隙間Cとを同時に同じだけ縮小するように作用するものとなる。
これにより、金型の摩耗、潤滑油のトラブル等により鍛造成形時の上下の金型による成形力に差が生じるような場合でも、強制的に上下のダイホルダ4,5を同期させて動作させて、均一に成形を行うことができ、成形品の精度を高精度に保持することができる。
【0064】
また、次に、図14〜図16に示した、上金型44内の成形品を強制的に離型させ、鍛造成形の自動化を円滑に行うことができるようにした成形品脱型機構7について説明する。
この成形品脱型機構7は、上金型44の直上位置の上ホルダベース41に脱型本体71を埋設してボルトにて取り付け、脱型本体71内に形成したシリンダ内に、上金型のロックアウトを押し下げるようにしてピストン72を嵌挿し、かつシリンダ内に加圧流体、例えば、作動油を供給するようにして構成する。
この場合、加圧流体は、上ダイホルダ4が下死点より上昇する際にタイミングを取るようにして供給するようにし、これにより、上金型44内の成形品を強制的に離型させるようにする。
なお、加圧流体を供給する代わりに、シリンダのヘッド側を密閉して気体を密閉封入し、上ホルダベースの押し下げ時、ピストンにてシリンダヘッド側の密封気体を圧縮し、上ダイホルダ4が下死点より上昇する際に圧縮された気体圧にてピストンを押し下げるように作用させて上金型のロックアウトを押し下げるように構成することもできる。
【0065】
なお、同期機構6及び成形品脱型機構7は、第1実施例及びその変形例、さらには、以下の第2実施例の変形例にも適用することができる。
【0066】
次に、この複動用ダイホルダ機構を利用した複動用ダイホルダ機構の変形例を、図18〜図19に示す。
【0067】
この複動用ダイホルダ機構は、上記第2実施例の複動用ダイホルダ機構において、すべて同じ径に形成するようにしたコイルばね8に代えて、内外2重式に径の異なる2本のコイルばねを同心的に嵌挿したコイルばね8を使用するようにしたもので、これにより、コイルばね嵌挿穴の数を少なくすることができるようにしたものである。
【0068】
なお、本変形例の複動用ダイホルダ機構のその他の構成及び作用は、上記第2実施例の複動用ダイホルダ機構と同様である。
【0069】
【発明の効果】
本発明の複動用ダイホルダ機構によれば、ホルダ本体を、複数組のばね機構を介して、このばね機構の撓み代となる隙間を設けてホルダベースに取り付け、上下のダイホルダにそれぞれ保持した上下の金型の接触後に、マンドレルが金型内に進入するように構成しているので、コンパクトで、簡単な構造の機構で以て、複動鍛造成形を行うことができる。
また、ばねの弾性係数、枚数を変更することにより、必要な複動圧力、複動距離を簡易に設定することができる。
これにより、耐久性を有するとともに、ダイハイトの小さい小形の単動式プレス機によっても、複雑な形状の複動鍛造成形を簡易かつ低廉に行うことができる。
そして、ダイホルダのホルダ本体を貫通して、ホルダベースにテーパ面を有するテーパピンを垂設するとともに、該テーパピンのテーパ面と対向するテーパ面を有し、テーパピンのテーパ面によって押圧されて水平方向に移動することによって、上金型と下金型間に挟持されて素材の外周面を成形する整形ピンをホルダ本体に固定したピンホルダに保持するように構成することにより、先端部分に大径部を有するような複雑な形状をした成形品を、高精度に成形することができる。
【0070】
また、ばね機構を、複数枚の皿ばねを皿ばね保持体に嵌挿することにより同心状に積層して構成することにより、ダイホルダ機構の複動動作を円滑に行うことができ、高精度の複動鍛造成形を行うことができる。
【0071】
また、ばね機構を、複数のコイルばねにより構成し、上下のホルダ本体とホルダベースとの間に、それぞれ保持するようにして構成することにより、低廉なコイルばねを使用して、必要とされる複動圧力、複動距離を簡易に設定でき、耐久性のある機構を提供することができる。
【0072】
また、ばね機構を、金型の周囲に対称に配設することにより、複動圧力、複動距離を均一にして複動動作を行うことができ、高精度の複動鍛造成形を行うことができる。
【0073】
また、上ダイホルダの降下に伴い、下ダイホルダをこれに同期して降下させる同期機構を備えることにより、鍛造成形時の上下の金型の成形抵抗に差が生じるような場合でも、強制的に上下のダイホルダを同期させて動作させて、均一に成形を行うことができ、成形品の精度を高精度に保持することができる。
【0074】
また、上金型内の成形品を強制的に離型させる成形品脱型機構を上ホルダベース内に備えることにより、上金型内の成形品を確実に、かつ強制的に離型することができ、鍛造成形の自動化を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の複動用ダイホルダ機構の第1実施例を示す正面断面図で、左半図は上下の金型が互いに接触した状態を、また、右半図は上下の金型を接触後、さらに押圧した状態を示している。
【図2】 同下ダイホルダ(上ダイホルダ)の平面図である。
【図3】 図2のA−A線断面図である。
【図4】 本発明の複動用ダイホルダ機構の変形例を示す正面断面図で、左半図は上下の金型が互いに接触した状態を、また、右半図は上下の金型を接触後、さらに押圧した状態を示している。
【図5】 上ダイホルダの説明図で、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は側面図である。
【図6】 下ダイホルダの説明図で、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は側面図である。
【図7】 テーパピンの説明図で、(A)は断面図、(B)は底面図、(C)は平面図である。
【図8】 整形ピンの説明図で、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図である。
【図9】 ピンホルダの説明図で、(A)は本体の平面図、(B)は本体の断面図、(C)は蓋の平面図、(D)は蓋の断面図である。
【図10】 成形品の説明図で、(A)は正面図、(B)は断面図である。
【図11】 従来の鍛造成形装置によって成形した中間成形品W’の説明図で、(A)は正面図、(B)は断面図である。
【図12】 本発明の複動用ダイホルダ機構の第2実施例を示す上ダイホルダの平面図である。
【図13】 同下ダイホルダの平面図である。
【図14】 鍛造成形時の上下ダイホルダの正面断面図である。
【図15】 鍛造成形前の上下ダイホルダの正面断面図である。
【図16】 鍛造成形前の上下ダイホルダの側面断面図である。
【図17】 同期機構を示し、(A)は鍛造成形前の正面断面図、(B)は鍛造成形時の正面断面図である。
【図18】 本発明の複動用ダイホルダ機構の第2実施例の変形例を示す上ダイホルダの平面図である。
【図19】 同正面断面図である。
【符号の説明】
1 上ダイホルダ
11 上ホルダベース
12 上ホルダ本体
13 ボルト
14 上金型
15 スペーサ
16 押上用ばね
17 マンドレル
18 皿ばね機構
19 ガイドロッド挿入孔
2 下ダイホルダ
21 下ホルダベース
22 下ホルダ本体
23 ボルト
24 下金型
25 スペーサ
26 押下用ばね
27 下マンドレル
28 皿ばね機構
29 ガイドロッド
30 テーパピン
30t テーパ面
31 整形ピン
31t テーパ面
33 ピンホルダ
4 上ダイホルダ
41 上ホルダベース
42 上ホルダ本体
44 上金型
4B 取付ボルト
5 下ダイホルダ
51 下ホルダベース
52 下ホルダ本体
54 下金型
5B 取付ボルト
6 同期機構
7 成形品脱型機構
8 コイルばね
Claims (6)
- プレス機にそれぞれ対向して配設される上ダイホルダと、下ダイホルダとからなり、上下のダイホルダを、金型を保持するホルダ本体と、プレス機に取り付けるホルダベースで構成するとともに、前記ホルダ本体を、複数組のばね機構を介して、該ばね機構の撓み代となる隙間を設けてホルダベースに取り付け、上下のダイホルダにそれぞれ保持した上下の金型の接触後に、マンドレルが金型内に進入するように構成した複動用ダイホルダ機構において、一方のダイホルダのホルダ本体を貫通して、ホルダベースにテーパ面を有するテーパピンを垂設するとともに、該テーパピンのテーパ面と対向するテーパ面を有し、テーパピンのテーパ面によって押圧されて水平方向に移動することによって、上金型と下金型間に挟持されて素材の外周面を成形する整形ピンをホルダ本体に固定したピンホルダに保持したことを特徴とする複動用ダイホルダ機構。
- ばね機構を、複数枚の皿ばねを皿ばね保持体に嵌挿することにより同心状に積層して構成したことを特徴とする請求項1記載の複動用ダイホルダ機構。
- ばね機構を、複数のコイルばねにより構成し、上下のホルダ本体とホルダベースとの間に、それぞれ保持したことを特徴とする請求項1記載の複動用ダイホルダ機構。
- ばね機構を、金型の周囲に対称に配設したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の複動用ダイホルダ機構。
- 上ダイホルダの降下に伴い、下ダイホルダをこれに同期して降下させる同期機構を備えたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の複動用ダイホルダ機構。
- 上金型内の成形品を強制的に離型させる成形品脱型機構を上ホルダベース内に備えたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の複動用ダイホルダ機構。
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