JP3704176B2 - フタロシアニン化合物及びそれを含有してなる光記録媒体 - Google Patents
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- Nitrogen Condensed Heterocyclic Rings (AREA)
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な光ディスク用記録材料、情報記録、表示センサー、保護眼鏡等のオプトエレクトロニクス関連に重要な役割を果たす近赤外線吸収剤として有用な化合物と、それを記録層に含有して形成される光ディスク及び光カード等の光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスク、光カ−ド装置等における書き込み及び読み取りのためにレーザー光が利用されている。特にこれらの装置で用いられる光記録媒体の記録方式は、実用レベルとしては通常、光・熱変換を経たヒートモード記録(熱記録)が採用されており、そのために記録層としては低融点金属、有機高分子、さらには融解、蒸発、分解、あるいは昇華等の物理変化または化学変化を起こす有機色素が種々提案されている。なかでも融解、分解等の温度が低い有機色素系は記録感度上好ましいことから、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アゾ系色素などを中心に記録層として開発されてきている。
【0003】
例えば、特開平2-147286号公報において、記録層にシアニン系色素を含む光記録媒体が提案されている。しかしながら、この媒体系は長期保存性および耐光性に劣り、さらには記録特性も不十分であった。
【0004】
アントラキノン色素(例えば、特開昭58-224448号公報)、ナフトキノン色素(例えば、特開昭58-224793号公報)を記録層に含む光記録媒体も提案されているが、いずれもシアニン系色素と同様に長期保存性および耐光性に劣り、さらには記録特性も不十分であった。
【0005】
特開昭61-25886号公報、特開平2-43269号公報(USP4960538)、特開平2-296885号公報等においては、記録層にナフタロシアニン色素を含む光記録媒体が提案されている。この媒体系では、耐光性は優れるが、記録層の反射率が低く、記録特性も不十分であった。
【0006】
また、光記録媒体の記録層に、フタロシアニン色素、特にアルコキシ置換フタロシアニンを利用する技術は、特開昭61-154888号公報(EP186404)、同61-197280号公報、同61-246091号公報、同62-39286号公報(USP4769307)、同63-37991号公報、同63-39388号公報、特表平2-502099号公報等により広く知られている。これらの特許に開示されているフタロシアニン色素を用いた光記録媒体においては、感度、記録特性において十分な性能を有しているとは言い難かった。それを改良したのが特開平3-62878号公報(USP5124067)であるが、その改良化合物においても、レーザー光による高速記録及び高密度記録時の誤差が大きく未だ実用上十分ではなかった。
【0007】
特開平2-43269号公報(USP4960538)及び特開平2-296885号公報においてアルコキシ置換ナフタロシアニン、特開昭63-37991号公報において脂肪族炭化水素オキシ置換フタロシアニン、特開昭63-39388号公報においてはアルケニルチオ置換フタロシアニンの、光記録媒体への利用を提案しているが、感度、記録特性に効果があるということは記載されていない。
【0008】
尚、その他の公知の色素を用いた光記録媒体の記録特性においても十分な性能を有しているものは見出されていない。
【0009】
光記録媒体への書き込み及び読み出しは400〜900nmのレーザー光を利用するので、記録材料の使用レーザー発振波長近傍における吸収係数、屈折率等の制御及び書き込み時における精度の良いピット形成が重要である。そのため、構造安定性が高く、レーザー発振波長近傍の光に対して屈折率が高く、分解特性が良好で、かつ感度の高い光記録媒体用色素の開発が必要となる。しかし、従来開発された光記録媒体用色素は、感度(C/N比、最適記録パワー)、記録特性(ジッター、デビエイション)について欠点を有するという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記欠点を改善し、感度が高く、記録特性並びに耐久性の良好な光記録媒体を提供しうる新規フタロシアニン色素を供給することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前項の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
▲1▼ 下記一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物、
【0012】
【化3】
〔式(1)中、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価1置換金属原子、4価2置換金属原子、オキシ金属原子を表し、Lは式(a)
【0013】
【化4】
(式(a)中、R1及びR2は、各々独立に水素原子及び炭素数1〜15のアルキル基を表し、R1とR2が結合して環を形成しても良い。R3及びR4は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基及び炭素数2〜5のアルケニル基を表す。)を表す。〕で示されるフタロシアニン化合物。
【0014】
▲2▼ 一般式(1)において、Mで表される中心金属が、Pd,Cu,Ru,Pt,Ni,Co,Rh,Zn,VO,TiO,Si(Y)2,Sn(Y)2,Ge(Y)2(Yはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、トリアルキルシリルオキシ基、トリアルキルスズオキシ基、またはトリアルキルゲルマニウムオキシ基を表す。)であるフタロシアニン化合物。
▲3▼ 一般式(1)のフタロシアニン化合物を含有してなる光記録媒体。
▲4▼ 基板上に、一般式(1)のフタロシアニン化合物を含有する記録層、その上に金またはアルミニウムからなる反射層、さらにその上に保護層を積層した構成である光記録媒体に関するものである。尚、一般式(1)は、以降、下記構造式の様に略記する。
【0015】
【化5】
【0016】
本発明のフタロシアニン化合物は、650〜900nmにシャープな吸収を有し、分子吸光係数も高く、長期安定性および耐久性にも優れるため、半導体レザー光を用いる光記録媒体(光ディスク、光カード等)の記録材料に適している。これはフタロシアニン環に縮合したヘテロ環が記録時に感度の向上に寄与し、形成された信号の誤差の減少に効果を上げている。すなわち、光記録時に色素の溶融、分解を制御し、記録媒体の基板へのダメージの減少や、反射層を有する媒体の場合は反射層と記録層との密着性の改良である。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
一般式(1)中、R1及びR2で示される炭素数1〜15のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、cyclo-ヘキシル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,5,5-トリメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、n-ノニル基、n-デシル基、4-エチルオクチル基、4-エチル-4,5-メチルヘキシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、1,3,5,7-テトラメチルオクチル基、4-ブチルオクチル基、6,6-ジエチルオクチル基、n-トリデシル基、6-メチル-4-ブチルオクチル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、3,5-ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチルヘプチル基、2,4-ジメチルヘプチル基、2,2,5,5-テトラメチルヘキシル基、1-cyclo-ペンチル-2,2-ジメチルプロピル基、1-cyclo-ヘキシル-2,2-ジメチルプロピル基等が挙げられる。
【0019】
一般式(1)中、R3及びR4で示されるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられ、炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基、2-メチルブチル基等が挙げられ、炭素数1〜5のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、iso-ペントキシ基、neo-ペントキシ基、2-メチルブトキシ基等が挙げられ、炭素数1〜5のアルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、iso-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、iso-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、iso-ペンチルチオ基、neo-ペンチルチオ基、2-メチルブチルチオ基等が挙げられ、炭素数1〜8のアルキルアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、iso-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、iso-ブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、t-ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、ジ(iso-プロピル)アミノ基、ジ(n-ブチル)アミノ基、ジ(iso-ブチル)アミノ基、ジ(sec-ブチル)アミノ基、ジ(t-ブチル)アミノ基等が挙げられ、炭素数2〜5のアルケニル基の具体例としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-エチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-プロペニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基等が挙げられる。
【0020】
また、式(1)中、Mで示される2価金属の例としては、Cu,Zn,Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Pt,Mn,Sn,Mg,Pb,Hg,Cd,Ba,Ti,Be,Ca等が挙げられ、1置換の3価金属の例としては、Al−F,Al−Cl,Al−Br,Al−I,Ga−F,Ga−Cl,Ga−Br,Ga−I,In−F,In−Cl,In−Br,In−I,Tl−F,Tl−Cl,Tl−Br,Tl−I,Al−C6H5,Al−C6H4(CH3),In−C6H5,In−C6H4(CH3),Mn(OH),Mn(OC6H5),Mn〔OSi(CH3)3〕,Fe−Cl,Ru−Cl等が挙げられ、2置換の4価金属の例としては、CrCl2,SiF2,SiCl2,SiBr2,SiI2,SnF2,SnCl2,SnBr2,ZrCl2,GeF2,GeCl2,GeBr2,GeI2,TiF2,TiCl2,TiBr2,Si(OH)2,Sn(OH)2,Ge(OH)2,Zr(OH)2,Mn(OH)2,TiA2,CrA2,SiA2,SnA2,GeA2〔Aはアルキル基、フェニル基、ナフチル基およびその誘導体を表す〕,Si(OA’)2,Sn(OA’)2,Ge(OA’)2,Ti(OA’)2,Cr(OA’)2〔A’はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基およびその誘導体を表す〕,Si(SA”)2,Sn(SA”)2,Ge(SA”)2〔A”はアルキル基、フェニル基、ナフチル基およびその誘導体を表す〕等が挙げられ、オキシ金属の例としては、VO,MnO,TiO等が挙げられる。好ましくは、Pd、Cu,Ru,Pt,Ni,Co,Rh,Zn,VO,TiO,Si(Y)2,Sn(Y)2,Ge(Y)2(Yはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、アリキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、トリアルキルシリルオキシ基、トリアルキルスズオキシ基またはトリアルキルゲルマニウムオキシ基を表す。)であり、特に好ましい例としては、Cu,Ni,Co,Mg,Zn,Pd,Pt,VO等である。
【0021】
一般式(1)で示されるフタロシアニン化合物の合成法としては、下式(2)
【0022】
【化6】
〔式(2)中、R1、R2、R3及びR4は一般式(1)と同じ意味を表す。〕で示される化合物を、例えば1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)存在下に、金属誘導体とアルコール中で加熱反応させる、あるいは、金属化合物とクロルナフタレン、ブロムナフタレン、トリクロルベンゼン等の高沸点溶媒中で加熱反応させる方法等が挙げられる。また、一般式(2)で示される化合物を、アルコール中、ナトリウムメチラートを触媒にアンモニアと反応させて得られる一般式(3)で示されるジイミノイソインドリンを中間体として同様に反応させる方法等が挙げられる。
【0023】
【化7】
〔式(3)中、R1、R2、R3及びR4は一般式(1)と同じ意味を表す。〕
【0024】
また、一般式(2)で示される化合物は、以下に示した経路で製造することができる。
【0025】
【化8】
【0026】
市販されている3−ニトロフタロニトリル(A)を、塩基の存在下、R5OH〔R5はアルキニル基を表す。〕で示されるアルコール誘導体と反応させてアルコキシフタロニトリル(B)を得る。次に(B)をジアルキルアニリン類やDMI等の高沸点溶剤中で反応することで(C)を得る。更に(C)を接触水素添加還元、ハロゲン化、アルキル化、アルコキシ化、アルキルチオ化、アルキルアミノ化またはクロスカップリングによるアルケニル化反応することで、目的とする一般式(2)で示される化合物を得ることができる。
【0027】
R5OHで示されるアルコール誘導体の例としては、1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、1-ペンチン-3-オール、1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,4-ジメチル-1-ペンチン-3-オール、1-ヘプチン-3-オール、3-エチル-1-ペンチン-3-オール、5-メチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-4-ヘキシン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3,4,4-トリメチル-1-ペンテン-3-オール、4-エチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1-オクチン-3-オール、3,6-ジメチル-1-ヘプチン-3-オール、3-エチル-1-ヘプチン-3-オール、3-エチル-5-メチル-1-ヘプチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3-イソブチル-5-メチル-1-ヘキシン-3-オール、3-イソプロピル-4-メチル-1-ペンチン-3-オール等が挙げられる。
【0028】
本発明のフタロシアニン化合物を用いて光記録媒体を製造する方法には、透明基板上に本発明のフタロシアニン化合物を含む1〜3種の化合物を1層または2層に塗布、あるいは蒸着する方法があり、塗布法としては、バインダー樹脂20重量%以下、好ましくは0%と、本発明のフタロシアニン化合物0.05〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%となるように溶媒に溶解し、スピンコーターで塗布する方法等がある。また蒸着方法としては10-5〜10-7torr、100〜300℃にて基板上にフタロシアニン化合物を堆積させる方法等がある。
【0029】
基板としては、光学的に透明な樹脂であればよい。例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン共重合樹脂、塩化ビニル共重合樹脂、塩化ビニリデン共重合樹脂、スチレン共重合樹脂等が挙げられる。また基板は熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂により表面処理がなされていてもよい。
【0030】
光記録媒体(光ディスク、光カード等)を作製する場合、コストの面、ユーザーの取り扱いの面より、基板はポリアクリレート基板またはポリカーボネート基板を用い、かつスピンコート法により塗布されるのが好ましい。
【0031】
基板の耐溶剤性より、スピンコートに用いる溶剤は、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、ジクロロジフルオロエタン等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、あるいはこれらの混合溶媒が好適に用いられる。
【0032】
記録媒体として加工するには、上記の様に基板で覆う、あるいは2枚の記録層を設けた基板に、エアーギャップを設けて対向させて貼り合わせる、または、記録層上に反射層(アルミニウムまたは金)を設け、熱硬化性または光硬化性樹脂の保護層を積層する方法などがある。保護層として、Al2O3,SiO2,SiO,SnO2等の無機化合物を利用してもよい。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の実施の態様はこれにより限定されるものではない。
【0034】
実施例1
下記構造式(2−1)
【0035】
【化9】
で示されるフタロニトリル誘導体29.6g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、100℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化パラジウム5.3g(0.03モル)を添加し、95〜100℃で30時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−1)で示されるフタロシアニン化合物14.5g(収率45%)を得た。
【0036】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=696.5nm
εg=1.69×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0037】
【化10】
【0038】
上記フタロシアニン化合物のn−オクタン溶液(10g/l)をスパイラルグルーブ(ピッチ1.6μm、溝幅0.6μm、溝深0.18μm)付きの外形120mm、厚さ1.2mmのCD−R用ポリカーボネート基板上に500〜1000rpmでスピンコート成膜した。その上に30nmの金をスパッタ蒸着して反射層を形成し、続いて光硬化型ポリアクリル樹脂によりオーバーコート後光硬化させ保護層を形成してCD−R媒体を作製した。この媒体の反射率は71%(775〜790nm)であり、780nmの半導体レーザーを用いて線速1.3m/secでEFM信号を5.5mWのパワーで書き込むことができ、その時のエラーレートは10未満であった。
【0039】
実施例2
下記構造式(2−2)
【0040】
【化11】
で示されるフタロニトリル誘導体26.8g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、100℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化パラジウム5.3g(0.03モル)を添加し、95〜100℃で30時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−2)で示されるフタロシアニン化合物14.2g(収率48%)を得た。
【0041】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=696nm
εg=1.8×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0042】
【化12】
【0043】
上記フタロシアニン化合物のn−オクタン溶液(10g/l)をスパイラルグルーブ(ピッチ1.6μm、溝幅0.6μm、溝深0.18μm)付きの外形120mm、厚さ1.2mmのCD−R用ポリカーボネート基板上に500〜1000rpmでスピンコート成膜した。その上に30nmの金をスパッタ蒸着して反射層を形成し、続いて光硬化型ポリアクリル樹脂によりオーバーコート後光硬化させ保護層を形成してCD−R媒体を作製した。780nmの半導体レーザーで記録したとき、7mWのパワーで60dBのCN比を得た。0.5mWの再生光で105回再生しても変化は見られなかった。また、80℃/80%RHの条件で1000時間経過後も記録に変化はなかった。
【0044】
実施例3
構造式(2−1)で示されるフタロニトリル誘導体29.6g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、125℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化第一銅3.0g(0.03モル)を添加し、125〜130℃で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−3)で示されるフタロシアニン化合物20.3g(収率65%)を得た。
【0045】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=712nm
εg=1.7×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0046】
【化13】
【0047】
上記フタロシアニン化合物のn−オクタン溶液(10g/l)をスパイラルグルーブ(ピッチ1.6μm、溝幅0.6μm、溝深0.18μm)付きの外形120mm、厚さ1.2mmのCD−R用ポリカーボネート基板上に500〜1000rpmでスピンコート成膜した。その上に30nmの金をスパッタ蒸着して反射層を形成し、続いて光硬化型ポリアクリル樹脂によりオーバーコート後光硬化させ保護層を形成してCD−R媒体を作製した。この媒体の反射率は73%(775〜790nm)であり、780nmの半導体レーザーを用いて線速1.3m/secでEFM信号を6.0mWのパワーで書き込むことができ、その時のエラーレートは10未満であった。
【0048】
実施例4
下記構造式(2−3)
【0049】
【化14】
で示されるフタロニトリル誘導体28.0g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、100℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化パラジウム5.3g(0.03モル)を添加し、95〜100℃で35時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−4)で示されるフタロシアニン化合物14.4g(収率47%)を得た。
【0050】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=706nm
εg=1.56×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0051】
【化15】
【0052】
上記フタロシアニン化合物を用いて実施例1と同様にしてCD−R型媒体を作製した。この媒体に、波長780nmのレーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を6.0mWのパワーで書き込んだときのエラーレートは、10未満であった。
【0053】
実施例5
下記構造式(2−4)
【0054】
【化16】
で示されるフタロニトリル誘導体33.1g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、125℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化第一銅3.0g(0.03モル)を添加し、125〜130℃で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−5)で示されるフタロシアニン化合物22.9g(収率66%)を得た。
【0055】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=721nm
εg=1.4×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0056】
【化17】
【0057】
上記フタロシアニン化合物を用いて実施例1と同様にしてCD−R型媒体を作製した。この媒体に、波長780nmのレーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を6.0mWのパワーで書き込んだときのエラーレートは、10未満であった。
【0058】
実施例6
下記構造式(2−5)
【0059】
【化18】
で示されるフタロニトリル誘導体31.6g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、100℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化パラジウム5.3g(0.03モル)を添加し、95〜100℃で35時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−6)で示されるフタロシアニン化合物16.6g(収率44%)を得た。
【0060】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=702nm
εg=1.6×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0061】
【化19】
【0062】
上記フタロシアニン化合物を用いて実施例1と同様にしてCD−R型媒体を作製した。この媒体に、波長780nmのレーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を6.0mWのパワーで書き込んだときのエラーレートは、10未満であった。
【0063】
実施例7
下記構造式(2−6)
【0064】
【化20】
で示されるフタロニトリル誘導体28.4g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、125℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化第一銅3.0g(0.03モル)を添加し、125〜130℃で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−7)で示されるフタロシアニン化合物21.0g(収率70%)を得た。
【0065】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=728nm
εg=1.9×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0066】
【化21】
【0067】
上記フタロシアニン化合物を用いて実施例1と同様にしてCD−R型媒体を作製した。この媒体に、波長780nmのレーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を6.0mWのパワーで書き込んだときのエラーレートは、10未満であった。
【0068】
実施例8
下記構造式(2−7)
【0069】
【化22】
で示されるフタロニトリル誘導体26.8g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、125℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化第一銅3.0g(0.03モル)を添加し、125〜130℃で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−8)で示されるフタロシアニン化合物19.6g(収率69%)を得た。
【0070】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=713nm
εg=1.9×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0071】
【化23】
【0072】
上記フタロシアニン化合物を用いて実施例1と同様にしてCD−R型媒体を作製した。この媒体に、波長780nmのレーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を6.0mWのパワーで書き込んだときのエラーレートは、10未満であった。
【0073】
比較例1
下記構造式(D)で示される特開平3−62878号公報(USP5124067)の例示化合物を用いて実施例1と同様にして作製した媒体を評価した。
【0074】
【化24】
【0075】
この媒体に780nmの半導体レーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を書き込むために10mWのパワーが必要であった。また、その時のエラーレートは12であった。
【0076】
実施例9〜20
実施例1と同様にして下記第1表に示すフタロシアニン化合物を合成し、実施例1と同様にしてCD−R媒体を作製し、780nmの半導体レーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を書き込むために必要なレーザーパワー(mw)を測定し、またその時のエラーレートを評価した。エラーレートの評価としては、○はエラーレートが10未満、×はエラーレートが10以上であることを示す。結果を第1表に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【発明の効果】
本発明のフタロシアニン化合物は、ヘテロ環がフタロシアニン環に縮合した新規なフタロシアニン化合物であり、このヘテロ環の置換により、記録時に色素の分解・溶融が制御され精度の高いピット形成が行われたこと、分解発熱量の減少により記録媒体の樹脂基板へのダメージが減少したこと、反射層を有する記録媒体の場合は記録層と反射層である金属層との密着性が向上に寄与し、この化合物を用いた光記録媒体においては、光記録時の信号が正しく書き込めるようになり、感度、記録特性の向上に効果を上げた。
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な光ディスク用記録材料、情報記録、表示センサー、保護眼鏡等のオプトエレクトロニクス関連に重要な役割を果たす近赤外線吸収剤として有用な化合物と、それを記録層に含有して形成される光ディスク及び光カード等の光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスク、光カ−ド装置等における書き込み及び読み取りのためにレーザー光が利用されている。特にこれらの装置で用いられる光記録媒体の記録方式は、実用レベルとしては通常、光・熱変換を経たヒートモード記録(熱記録)が採用されており、そのために記録層としては低融点金属、有機高分子、さらには融解、蒸発、分解、あるいは昇華等の物理変化または化学変化を起こす有機色素が種々提案されている。なかでも融解、分解等の温度が低い有機色素系は記録感度上好ましいことから、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アゾ系色素などを中心に記録層として開発されてきている。
【0003】
例えば、特開平2-147286号公報において、記録層にシアニン系色素を含む光記録媒体が提案されている。しかしながら、この媒体系は長期保存性および耐光性に劣り、さらには記録特性も不十分であった。
【0004】
アントラキノン色素(例えば、特開昭58-224448号公報)、ナフトキノン色素(例えば、特開昭58-224793号公報)を記録層に含む光記録媒体も提案されているが、いずれもシアニン系色素と同様に長期保存性および耐光性に劣り、さらには記録特性も不十分であった。
【0005】
特開昭61-25886号公報、特開平2-43269号公報(USP4960538)、特開平2-296885号公報等においては、記録層にナフタロシアニン色素を含む光記録媒体が提案されている。この媒体系では、耐光性は優れるが、記録層の反射率が低く、記録特性も不十分であった。
【0006】
また、光記録媒体の記録層に、フタロシアニン色素、特にアルコキシ置換フタロシアニンを利用する技術は、特開昭61-154888号公報(EP186404)、同61-197280号公報、同61-246091号公報、同62-39286号公報(USP4769307)、同63-37991号公報、同63-39388号公報、特表平2-502099号公報等により広く知られている。これらの特許に開示されているフタロシアニン色素を用いた光記録媒体においては、感度、記録特性において十分な性能を有しているとは言い難かった。それを改良したのが特開平3-62878号公報(USP5124067)であるが、その改良化合物においても、レーザー光による高速記録及び高密度記録時の誤差が大きく未だ実用上十分ではなかった。
【0007】
特開平2-43269号公報(USP4960538)及び特開平2-296885号公報においてアルコキシ置換ナフタロシアニン、特開昭63-37991号公報において脂肪族炭化水素オキシ置換フタロシアニン、特開昭63-39388号公報においてはアルケニルチオ置換フタロシアニンの、光記録媒体への利用を提案しているが、感度、記録特性に効果があるということは記載されていない。
【0008】
尚、その他の公知の色素を用いた光記録媒体の記録特性においても十分な性能を有しているものは見出されていない。
【0009】
光記録媒体への書き込み及び読み出しは400〜900nmのレーザー光を利用するので、記録材料の使用レーザー発振波長近傍における吸収係数、屈折率等の制御及び書き込み時における精度の良いピット形成が重要である。そのため、構造安定性が高く、レーザー発振波長近傍の光に対して屈折率が高く、分解特性が良好で、かつ感度の高い光記録媒体用色素の開発が必要となる。しかし、従来開発された光記録媒体用色素は、感度(C/N比、最適記録パワー)、記録特性(ジッター、デビエイション)について欠点を有するという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記欠点を改善し、感度が高く、記録特性並びに耐久性の良好な光記録媒体を提供しうる新規フタロシアニン色素を供給することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前項の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
▲1▼ 下記一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物、
【0012】
【化3】
〔式(1)中、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価1置換金属原子、4価2置換金属原子、オキシ金属原子を表し、Lは式(a)
【0013】
【化4】
(式(a)中、R1及びR2は、各々独立に水素原子及び炭素数1〜15のアルキル基を表し、R1とR2が結合して環を形成しても良い。R3及びR4は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基及び炭素数2〜5のアルケニル基を表す。)を表す。〕で示されるフタロシアニン化合物。
【0014】
▲2▼ 一般式(1)において、Mで表される中心金属が、Pd,Cu,Ru,Pt,Ni,Co,Rh,Zn,VO,TiO,Si(Y)2,Sn(Y)2,Ge(Y)2(Yはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、トリアルキルシリルオキシ基、トリアルキルスズオキシ基、またはトリアルキルゲルマニウムオキシ基を表す。)であるフタロシアニン化合物。
▲3▼ 一般式(1)のフタロシアニン化合物を含有してなる光記録媒体。
▲4▼ 基板上に、一般式(1)のフタロシアニン化合物を含有する記録層、その上に金またはアルミニウムからなる反射層、さらにその上に保護層を積層した構成である光記録媒体に関するものである。尚、一般式(1)は、以降、下記構造式の様に略記する。
【0015】
【化5】
【0016】
本発明のフタロシアニン化合物は、650〜900nmにシャープな吸収を有し、分子吸光係数も高く、長期安定性および耐久性にも優れるため、半導体レザー光を用いる光記録媒体(光ディスク、光カード等)の記録材料に適している。これはフタロシアニン環に縮合したヘテロ環が記録時に感度の向上に寄与し、形成された信号の誤差の減少に効果を上げている。すなわち、光記録時に色素の溶融、分解を制御し、記録媒体の基板へのダメージの減少や、反射層を有する媒体の場合は反射層と記録層との密着性の改良である。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
一般式(1)中、R1及びR2で示される炭素数1〜15のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、cyclo-ヘキシル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,5,5-トリメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、n-ノニル基、n-デシル基、4-エチルオクチル基、4-エチル-4,5-メチルヘキシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、1,3,5,7-テトラメチルオクチル基、4-ブチルオクチル基、6,6-ジエチルオクチル基、n-トリデシル基、6-メチル-4-ブチルオクチル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、3,5-ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチルヘプチル基、2,4-ジメチルヘプチル基、2,2,5,5-テトラメチルヘキシル基、1-cyclo-ペンチル-2,2-ジメチルプロピル基、1-cyclo-ヘキシル-2,2-ジメチルプロピル基等が挙げられる。
【0019】
一般式(1)中、R3及びR4で示されるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられ、炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基、2-メチルブチル基等が挙げられ、炭素数1〜5のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、iso-ペントキシ基、neo-ペントキシ基、2-メチルブトキシ基等が挙げられ、炭素数1〜5のアルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、iso-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、iso-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、iso-ペンチルチオ基、neo-ペンチルチオ基、2-メチルブチルチオ基等が挙げられ、炭素数1〜8のアルキルアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、iso-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、iso-ブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、t-ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、ジ(iso-プロピル)アミノ基、ジ(n-ブチル)アミノ基、ジ(iso-ブチル)アミノ基、ジ(sec-ブチル)アミノ基、ジ(t-ブチル)アミノ基等が挙げられ、炭素数2〜5のアルケニル基の具体例としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-エチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-プロペニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基等が挙げられる。
【0020】
また、式(1)中、Mで示される2価金属の例としては、Cu,Zn,Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Pt,Mn,Sn,Mg,Pb,Hg,Cd,Ba,Ti,Be,Ca等が挙げられ、1置換の3価金属の例としては、Al−F,Al−Cl,Al−Br,Al−I,Ga−F,Ga−Cl,Ga−Br,Ga−I,In−F,In−Cl,In−Br,In−I,Tl−F,Tl−Cl,Tl−Br,Tl−I,Al−C6H5,Al−C6H4(CH3),In−C6H5,In−C6H4(CH3),Mn(OH),Mn(OC6H5),Mn〔OSi(CH3)3〕,Fe−Cl,Ru−Cl等が挙げられ、2置換の4価金属の例としては、CrCl2,SiF2,SiCl2,SiBr2,SiI2,SnF2,SnCl2,SnBr2,ZrCl2,GeF2,GeCl2,GeBr2,GeI2,TiF2,TiCl2,TiBr2,Si(OH)2,Sn(OH)2,Ge(OH)2,Zr(OH)2,Mn(OH)2,TiA2,CrA2,SiA2,SnA2,GeA2〔Aはアルキル基、フェニル基、ナフチル基およびその誘導体を表す〕,Si(OA’)2,Sn(OA’)2,Ge(OA’)2,Ti(OA’)2,Cr(OA’)2〔A’はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基およびその誘導体を表す〕,Si(SA”)2,Sn(SA”)2,Ge(SA”)2〔A”はアルキル基、フェニル基、ナフチル基およびその誘導体を表す〕等が挙げられ、オキシ金属の例としては、VO,MnO,TiO等が挙げられる。好ましくは、Pd、Cu,Ru,Pt,Ni,Co,Rh,Zn,VO,TiO,Si(Y)2,Sn(Y)2,Ge(Y)2(Yはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、アリキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、トリアルキルシリルオキシ基、トリアルキルスズオキシ基またはトリアルキルゲルマニウムオキシ基を表す。)であり、特に好ましい例としては、Cu,Ni,Co,Mg,Zn,Pd,Pt,VO等である。
【0021】
一般式(1)で示されるフタロシアニン化合物の合成法としては、下式(2)
【0022】
【化6】
〔式(2)中、R1、R2、R3及びR4は一般式(1)と同じ意味を表す。〕で示される化合物を、例えば1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)存在下に、金属誘導体とアルコール中で加熱反応させる、あるいは、金属化合物とクロルナフタレン、ブロムナフタレン、トリクロルベンゼン等の高沸点溶媒中で加熱反応させる方法等が挙げられる。また、一般式(2)で示される化合物を、アルコール中、ナトリウムメチラートを触媒にアンモニアと反応させて得られる一般式(3)で示されるジイミノイソインドリンを中間体として同様に反応させる方法等が挙げられる。
【0023】
【化7】
〔式(3)中、R1、R2、R3及びR4は一般式(1)と同じ意味を表す。〕
【0024】
また、一般式(2)で示される化合物は、以下に示した経路で製造することができる。
【0025】
【化8】
【0026】
市販されている3−ニトロフタロニトリル(A)を、塩基の存在下、R5OH〔R5はアルキニル基を表す。〕で示されるアルコール誘導体と反応させてアルコキシフタロニトリル(B)を得る。次に(B)をジアルキルアニリン類やDMI等の高沸点溶剤中で反応することで(C)を得る。更に(C)を接触水素添加還元、ハロゲン化、アルキル化、アルコキシ化、アルキルチオ化、アルキルアミノ化またはクロスカップリングによるアルケニル化反応することで、目的とする一般式(2)で示される化合物を得ることができる。
【0027】
R5OHで示されるアルコール誘導体の例としては、1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、1-ペンチン-3-オール、1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,4-ジメチル-1-ペンチン-3-オール、1-ヘプチン-3-オール、3-エチル-1-ペンチン-3-オール、5-メチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-4-ヘキシン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3,4,4-トリメチル-1-ペンテン-3-オール、4-エチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1-オクチン-3-オール、3,6-ジメチル-1-ヘプチン-3-オール、3-エチル-1-ヘプチン-3-オール、3-エチル-5-メチル-1-ヘプチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3-イソブチル-5-メチル-1-ヘキシン-3-オール、3-イソプロピル-4-メチル-1-ペンチン-3-オール等が挙げられる。
【0028】
本発明のフタロシアニン化合物を用いて光記録媒体を製造する方法には、透明基板上に本発明のフタロシアニン化合物を含む1〜3種の化合物を1層または2層に塗布、あるいは蒸着する方法があり、塗布法としては、バインダー樹脂20重量%以下、好ましくは0%と、本発明のフタロシアニン化合物0.05〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%となるように溶媒に溶解し、スピンコーターで塗布する方法等がある。また蒸着方法としては10-5〜10-7torr、100〜300℃にて基板上にフタロシアニン化合物を堆積させる方法等がある。
【0029】
基板としては、光学的に透明な樹脂であればよい。例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン共重合樹脂、塩化ビニル共重合樹脂、塩化ビニリデン共重合樹脂、スチレン共重合樹脂等が挙げられる。また基板は熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂により表面処理がなされていてもよい。
【0030】
光記録媒体(光ディスク、光カード等)を作製する場合、コストの面、ユーザーの取り扱いの面より、基板はポリアクリレート基板またはポリカーボネート基板を用い、かつスピンコート法により塗布されるのが好ましい。
【0031】
基板の耐溶剤性より、スピンコートに用いる溶剤は、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、ジクロロジフルオロエタン等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、あるいはこれらの混合溶媒が好適に用いられる。
【0032】
記録媒体として加工するには、上記の様に基板で覆う、あるいは2枚の記録層を設けた基板に、エアーギャップを設けて対向させて貼り合わせる、または、記録層上に反射層(アルミニウムまたは金)を設け、熱硬化性または光硬化性樹脂の保護層を積層する方法などがある。保護層として、Al2O3,SiO2,SiO,SnO2等の無機化合物を利用してもよい。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の実施の態様はこれにより限定されるものではない。
【0034】
実施例1
下記構造式(2−1)
【0035】
【化9】
で示されるフタロニトリル誘導体29.6g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、100℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化パラジウム5.3g(0.03モル)を添加し、95〜100℃で30時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−1)で示されるフタロシアニン化合物14.5g(収率45%)を得た。
【0036】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=696.5nm
εg=1.69×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0037】
【化10】
【0038】
上記フタロシアニン化合物のn−オクタン溶液(10g/l)をスパイラルグルーブ(ピッチ1.6μm、溝幅0.6μm、溝深0.18μm)付きの外形120mm、厚さ1.2mmのCD−R用ポリカーボネート基板上に500〜1000rpmでスピンコート成膜した。その上に30nmの金をスパッタ蒸着して反射層を形成し、続いて光硬化型ポリアクリル樹脂によりオーバーコート後光硬化させ保護層を形成してCD−R媒体を作製した。この媒体の反射率は71%(775〜790nm)であり、780nmの半導体レーザーを用いて線速1.3m/secでEFM信号を5.5mWのパワーで書き込むことができ、その時のエラーレートは10未満であった。
【0039】
実施例2
下記構造式(2−2)
【0040】
【化11】
で示されるフタロニトリル誘導体26.8g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、100℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化パラジウム5.3g(0.03モル)を添加し、95〜100℃で30時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−2)で示されるフタロシアニン化合物14.2g(収率48%)を得た。
【0041】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=696nm
εg=1.8×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0042】
【化12】
【0043】
上記フタロシアニン化合物のn−オクタン溶液(10g/l)をスパイラルグルーブ(ピッチ1.6μm、溝幅0.6μm、溝深0.18μm)付きの外形120mm、厚さ1.2mmのCD−R用ポリカーボネート基板上に500〜1000rpmでスピンコート成膜した。その上に30nmの金をスパッタ蒸着して反射層を形成し、続いて光硬化型ポリアクリル樹脂によりオーバーコート後光硬化させ保護層を形成してCD−R媒体を作製した。780nmの半導体レーザーで記録したとき、7mWのパワーで60dBのCN比を得た。0.5mWの再生光で105回再生しても変化は見られなかった。また、80℃/80%RHの条件で1000時間経過後も記録に変化はなかった。
【0044】
実施例3
構造式(2−1)で示されるフタロニトリル誘導体29.6g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、125℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化第一銅3.0g(0.03モル)を添加し、125〜130℃で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−3)で示されるフタロシアニン化合物20.3g(収率65%)を得た。
【0045】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=712nm
εg=1.7×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0046】
【化13】
【0047】
上記フタロシアニン化合物のn−オクタン溶液(10g/l)をスパイラルグルーブ(ピッチ1.6μm、溝幅0.6μm、溝深0.18μm)付きの外形120mm、厚さ1.2mmのCD−R用ポリカーボネート基板上に500〜1000rpmでスピンコート成膜した。その上に30nmの金をスパッタ蒸着して反射層を形成し、続いて光硬化型ポリアクリル樹脂によりオーバーコート後光硬化させ保護層を形成してCD−R媒体を作製した。この媒体の反射率は73%(775〜790nm)であり、780nmの半導体レーザーを用いて線速1.3m/secでEFM信号を6.0mWのパワーで書き込むことができ、その時のエラーレートは10未満であった。
【0048】
実施例4
下記構造式(2−3)
【0049】
【化14】
で示されるフタロニトリル誘導体28.0g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、100℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化パラジウム5.3g(0.03モル)を添加し、95〜100℃で35時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−4)で示されるフタロシアニン化合物14.4g(収率47%)を得た。
【0050】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=706nm
εg=1.56×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0051】
【化15】
【0052】
上記フタロシアニン化合物を用いて実施例1と同様にしてCD−R型媒体を作製した。この媒体に、波長780nmのレーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を6.0mWのパワーで書き込んだときのエラーレートは、10未満であった。
【0053】
実施例5
下記構造式(2−4)
【0054】
【化16】
で示されるフタロニトリル誘導体33.1g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、125℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化第一銅3.0g(0.03モル)を添加し、125〜130℃で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−5)で示されるフタロシアニン化合物22.9g(収率66%)を得た。
【0055】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=721nm
εg=1.4×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0056】
【化17】
【0057】
上記フタロシアニン化合物を用いて実施例1と同様にしてCD−R型媒体を作製した。この媒体に、波長780nmのレーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を6.0mWのパワーで書き込んだときのエラーレートは、10未満であった。
【0058】
実施例6
下記構造式(2−5)
【0059】
【化18】
で示されるフタロニトリル誘導体31.6g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、100℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化パラジウム5.3g(0.03モル)を添加し、95〜100℃で35時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−6)で示されるフタロシアニン化合物16.6g(収率44%)を得た。
【0060】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=702nm
εg=1.6×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0061】
【化19】
【0062】
上記フタロシアニン化合物を用いて実施例1と同様にしてCD−R型媒体を作製した。この媒体に、波長780nmのレーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を6.0mWのパワーで書き込んだときのエラーレートは、10未満であった。
【0063】
実施例7
下記構造式(2−6)
【0064】
【化20】
で示されるフタロニトリル誘導体28.4g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、125℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化第一銅3.0g(0.03モル)を添加し、125〜130℃で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−7)で示されるフタロシアニン化合物21.0g(収率70%)を得た。
【0065】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=728nm
εg=1.9×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0066】
【化21】
【0067】
上記フタロシアニン化合物を用いて実施例1と同様にしてCD−R型媒体を作製した。この媒体に、波長780nmのレーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を6.0mWのパワーで書き込んだときのエラーレートは、10未満であった。
【0068】
実施例8
下記構造式(2−7)
【0069】
【化22】
で示されるフタロニトリル誘導体26.8g(0.1モル)、DBU15.2g(0.1モル)及びn−アミルアルコール125gよりなる混合物を窒素雰囲気下で、125℃まで昇温させた。次に、同温度で塩化第一銅3.0g(0.03モル)を添加し、125〜130℃で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮して溶媒を回収した後、カラム精製(シリカゲル500g、溶媒トルエン)し、下記構造式(1−8)で示されるフタロシアニン化合物19.6g(収率69%)を得た。
【0070】
可視吸光スペクトル及び元素分析の結果は以下の通りであった。
可視吸収:
λmax=713nm
εg=1.9×105cm2g-1(溶媒:トルエン)
【0071】
【化23】
【0072】
上記フタロシアニン化合物を用いて実施例1と同様にしてCD−R型媒体を作製した。この媒体に、波長780nmのレーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を6.0mWのパワーで書き込んだときのエラーレートは、10未満であった。
【0073】
比較例1
下記構造式(D)で示される特開平3−62878号公報(USP5124067)の例示化合物を用いて実施例1と同様にして作製した媒体を評価した。
【0074】
【化24】
【0075】
この媒体に780nmの半導体レーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を書き込むために10mWのパワーが必要であった。また、その時のエラーレートは12であった。
【0076】
実施例9〜20
実施例1と同様にして下記第1表に示すフタロシアニン化合物を合成し、実施例1と同様にしてCD−R媒体を作製し、780nmの半導体レーザーを用いて、線速1.3m/sでEFM信号を書き込むために必要なレーザーパワー(mw)を測定し、またその時のエラーレートを評価した。エラーレートの評価としては、○はエラーレートが10未満、×はエラーレートが10以上であることを示す。結果を第1表に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【発明の効果】
本発明のフタロシアニン化合物は、ヘテロ環がフタロシアニン環に縮合した新規なフタロシアニン化合物であり、このヘテロ環の置換により、記録時に色素の分解・溶融が制御され精度の高いピット形成が行われたこと、分解発熱量の減少により記録媒体の樹脂基板へのダメージが減少したこと、反射層を有する記録媒体の場合は記録層と反射層である金属層との密着性が向上に寄与し、この化合物を用いた光記録媒体においては、光記録時の信号が正しく書き込めるようになり、感度、記録特性の向上に効果を上げた。
Claims (4)
- 一般式(1)において、Mで表される中心金属が、Pd,Cu,Ru,Pt,Ni,Co,Rh,Zn,VO,TiO,Si(Y)2,Sn(Y)2,Ge(Y)2(Yはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、トリアルキルシリルオキシ基、トリアルキルスズオキシ基、またはトリアルキルゲルマニウムオキシ基を表す。)である請求項1記載のフタロシアニン化合物。
- 請求項1または2に記載のフタロシアニン化合物を含有してなる光記録媒体。
- 基板上に、請求項1または2記載のフタロシアニン化合物を含有する記録層、その上に金またはアルミニウムからなる反射層、さらにその上に保護層を積層した構成である請求項3記載の光記録媒体。
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