JP3701302B2 - 熱スイッチ素子およびその製造方法 - Google Patents

熱スイッチ素子およびその製造方法 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、熱の輸送を制御できる熱スイッチ素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱の輸送を制御できる熱スイッチ素子が存在すれば、様々な分野に上記素子を応用することが可能である。例えば、特定の方向へ熱を輸送する技術である冷却技術の分野に熱スイッチ素子を応用することも可能であり、この場合、上記素子は冷却素子と呼ぶこともできる。
【0003】
従来の冷却技術は、冷媒の圧縮・膨張サイクルを利用した技術と、熱電現象を利用した技術とに大別される。冷媒の圧縮・膨張サイクルを利用する場合、冷媒の圧縮には主にコンプレッサーが用いられている。この技術は、長年に渡るコンプレッサーの技術改良などによって効率に優れているため、冷凍機、冷蔵庫、エアコンディショナーなどの民生機器に対しても広く応用されている。しかしながら、冷媒の多くにフロンが用いられており、その対環境特性に問題が指摘されている。現在、冷媒としてフロン以外の代替品が検討されているが、圧縮・膨張サイクルによってフロンと同等もしくはそれ以上の熱輸送特性を示す冷媒材料は未だ開発されていない。
【0004】
一方、熱電現象を利用した素子(熱電素子)は、冷媒を用いることなく冷却を実現する素子であり、対環境特性に優れるばかりではなく、メカニカルな構造を必要としないためメンテナンスフリー化を図ることができるなど優れた特性を有している。このような熱電素子としてペルチェ素子が代表的である。しかしながら、現在の技術では効率が低く、一部の例外を除き、冷蔵庫やエアコンディショナーなどには応用されていない。例えば、冷媒を用いた場合、冷蔵庫などの使用温度(例えば、−25℃〜25℃の範囲)におけるカルノー効率は約30%〜50%程度の範囲であるとされるが、ペルチェ素子の効率は10%にも満たない。また、ペルチェ素子以外の有望な熱電素子は未だ開発されていない。
【0005】
このため、フロンなどの冷媒を用いることなく熱の輸送が可能であり、かつ、従来の熱電素子とは異なる熱スイッチ素子が求められている。
【0006】
また、熱スイッチ素子を熱伝導体、断熱体、発熱体などと組み合わせることにより、電気回路素子と類似した構造、機能などを有する熱固体回路素子を実現することもできる。熱の輸送を制御するためには、熱を輸送する電子の能動的な制御が必要となる。しかしながら、従来の熱電素子では、能動的な電子の制御は困難である。例えば、熱電現象は、材料中をドリフト伝導する電子による熱移動に伴う現象であると考えられている。熱電素子の特性(熱電特性)は、一般に、熱電指数ZTによって表され、ZTが大きいほど素子の効率が高くなる。熱電指数ZTは、式S2T/κρ(S:熱電能、T:絶対温度、κ:熱伝導度、ρ:電気比抵抗)によって示される値であり、素子における電子の輸送特性が熱電特性に対して大きく寄与していることを示している。このことから、素子中の電子密度などが素子の熱電特性に影響を与えていると考えられるが、ペルチェ素子など従来の熱電素子において電子の輸送特性を能動的に制御することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況を鑑み、本発明は、従来とは全く異なる構成を有することにより、熱の輸送を制御できる熱スイッチ素子と、その製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱スイッチ素子は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された転移体とを含み、前記転移体は、エネルギーを印加することによって電子相転移する材料を含み、前記転移体への前記エネルギーの印加によって、前記第1の電極と前記第2の電極との間の熱伝導度が変化する素子である。
【0009】
次に、本発明の熱スイッチ素子の製造方法は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された転移体と、前記転移体と前記第2の電極との間に配置された絶縁体とを含み、前記転移体はエネルギーを印加することによって電子相転移する材料を含み、前記絶縁体が真空であり、前記転移体への前記エネルギーの印加によって前記第1の電極と前記第2の電極との間の熱伝導度が変化する熱スイッチ素子の製造方法であって、
(I)転移体および第1の電極を含む積層体と、第2の電極とを、前記第2の電極と前記転移体とが面するように所定の間隔で配置することによって、前記第2の電極と前記転移体との間に空間を形成する工程と、
(II)前記空間を真空に保持することによって、前記第2の電極と前記転移体との間に絶縁体を形成する工程とを含んでいる。
【0010】
本発明の熱スイッチ素子の製造方法は、上述した本発明の熱スイッチ素子のなかでも、絶縁体をさらに含み、前記転移体と前記第2の電極との間に前記絶縁体が配置されており、前記絶縁体が真空である熱スイッチ素子の製造方法であるともいえる。
【0011】
また、本発明の熱スイッチ素子の製造方法は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された転移体と、前記転移体と前記第2の電極との間に配置された絶縁体とを含み、前記転移体はエネルギーを印加することによって電子相転移する材料を含み、前記絶縁体が真空であり、前記転移体への前記エネルギーの印加によって前記第1の電極と前記第2の電極との間の熱伝導度が変化する熱スイッチ素子の製造方法であって、
(i)転移体と第2の電極とを、前記第2の電極と前記転移体とが面するように所定の間隔で配置することによって、前記第2の電極と前記転移体との間に空間を形成する工程と、
(ii)前記空間を真空に保持することによって、前記第2の電極と前記転移体との間に絶縁体を形成する工程と、
(iii)前記転移体が前記第2の電極と第1の電極との間に配置されるように、前記第1の電極を配置する工程とを含んでいてもよい。
【0012】
また、本発明の熱スイッチ素子の製造方法は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された転移体と、前記転移体と前記第2の電極との間に配置された絶縁体とを含み、前記転移体はエネルギーを印加することによって電子相転移する材料を含み、前記絶縁体が真空であり、前記転移体への前記エネルギーの印加によって前記第1の電極と前記第2の電極との間の熱伝導度が変化する熱スイッチ素子の製造方法であって、
(A)第1の電極と、転移体と、前記転移体よりも力学的に破壊しやすい材料を含む中間体と、第2の電極とをこの順序で含む積層体を形成する工程と、
(B)前記積層体の積層方向に前記積層体を伸長することによって前記中間体を破壊し、前記破壊した中間体を除去することによって前記転移体と前記第2の電極との間に空間を形成する工程と、
(C)前記空間を真空に保持することによって、前記第2の電極と前記転移体との間に絶縁体を形成する工程とを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来とは全く異なる構成を有し、エネルギーを印加することによって熱の輸送を制御できる熱スイッチ素子と、その製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態において、同一の部分に同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
【0015】
図1Aおよび図1Bに、本発明の熱スイッチ素子の一例を示す。図1Aおよび図1Bに示す熱スイッチ素子1は、電極2aと、電極2bと、電極2aと電極2bとの間に配置された転移体3とを含んでいる。転移体3は、エネルギーを印加することによって電子相転移する材料(以下、単に「相転移材料」ともいう)を含んでおり、転移体3へのエネルギーの印加によって電極2aおよび電極2bの間の熱伝導度が変化する。転移体3は、熱を伝導する媒体であるとともに、熱の輸送を制御する制御体としての役割を担っている。このような構成によって、エネルギーの印加によって熱の輸送を制御できる熱スイッチ素子1とすることができる。また、本発明の熱スイッチ素子1では、フロンなどの冷媒を用いずに熱の輸送を制御することができる。さらに、従来の熱電素子であるペルチェ素子を用いた場合に比べて効率を向上させることが可能であり、本発明の熱スイッチ素子を組み込んだ熱デバイス全体としてのエネルギー消費量を低減することも可能である。なお、図1Aは、図1Bに示す熱スイッチ1を図1Bに示す平面Aで切断した模式断面図である。
【0016】
本発明の熱スイッチ素子1では、転移体3へのエネルギーの印加に伴う熱伝導度の変化の形態は特に限定されない。例えば、転移体3にエネルギーを印加することによって、エネルギーを印加する前よりも一対の電極2aと電極2bとの間を熱が移動しやすい状態になってもよいし、熱が移動しにくい状態になってもよい。換言すれば、熱スイッチ素子1における電極2aと電極2bとの間を相対的に熱が移動しやすい状態(即ち、転移体3内部の熱の移動が相対的に容易な状態)をON状態、電極2aと電極2bとの間を相対的に熱が移動しにくい状態(即ち、転移体3内部の熱の移動が相対的に困難な状態)をOFF状態とした場合に、転移体3にエネルギーを印加することによって熱スイッチ素子1がON状態となっても、OFF状態となってもよい。なお、上述のOFF状態においては、上記熱伝導度ができるだけ小さいことが好ましい。また、転移体3へのエネルギーの印加に伴う電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の変化は、線形的であっても非線形的であってもよい。例えば、熱伝導度が変化する印加エネルギーの閾値が存在してもよいし、転移体3に印加するエネルギーに対して熱伝導度の変化がヒステリシスを有していてもよい。これら熱伝導度の変化の形態は、例えば、転移体3が含む相転移材料を選択することによって調節することができる。なお、本明細書において、上記相対的に熱が移動しやすい状態を熱スイッチ素子におけるON状態、上記相対的に熱が移動しにくい状態を熱スイッチ素子におけるOFF状態とする。
【0017】
ここで、電子相転移とは、構造相転移(例えば、固体から液体への変化など物質の構造そのものが変化する相転移)の有無に関わらず物質中の電子の状態が変化するような相転移をいう。このため、転移体3は、エネルギーの印加によって電子の状態が変化する材料を含んでいるともいえる。本発明の熱スイッチ素子1では、転移体3内の電子の状態の変化によって、熱の輸送が制御できる。
【0018】
一般に、固体物質の熱伝導は、フォノンが寄与する成分と、電子伝導が寄与する成分との和によって示される。フォノンが寄与する成分とは、物質の格子振動によって伝導される熱成分ということができ、その伝導しやすさを格子熱伝導度ともいう。電子伝導が寄与する成分とは、物質に含まれる電子の移動によって伝導される熱成分ということができ、その伝導しやすさを電子熱伝導度ともいう。電子相転移は物質中の電子の状態の変化を伴う相転移であるため、本発明の熱スイッチ素子1は、エネルギーの印加によって少なくとも転移体3の電子熱伝導度が変化する素子であるということもできる。これら、エネルギーの印加に伴う転移体3の電子熱伝導度の変化によって、電極2aと電極2bとの間の熱の輸送が制御されることになる。
【0019】
このような電子相転移の一例として、絶縁体−金属転移が挙げられる。即ち、本発明の熱スイッチ素子1では、転移体3がエネルギーの印加によって絶縁体−金属転移してもよい。金属状態へ転移した転移体3は、その全体が金属相である必要は必ずしもなく、転移体3が部分的に金属相を含んでいればよい。熱スイッチ素子としての特性の観点から、このような転移を行う場合、転移体3が絶縁体の状態にある際の熱伝導度はできるだけ小さいことが好ましい。換言すれば、転移体3の格子熱伝導度ができるだけ小さいことが好ましい。なお、転移体3の格子熱伝導度ができるだけ小さいことが好ましいのは、転移体3が絶縁体−金属転移を行わない場合においても同様である。
【0020】
このように、本発明の熱スイッチ素子1では、転移体3にエネルギーを印加することによって、電子を介した熱の輸送を制御することができる。このとき、熱電子を介した熱の輸送が制御されていると考えられる。換言すれば、電極2aと電極2bとの間を相対的に熱が移動しやすい状態(転移体3を相対的に熱が移動しやすい状態:ON状態)において、転移体3は熱電子の移動が相対的に容易な状態にあるといえる。電極2aと電極2bとの間を相対的に熱が移動しにくい状態(転移体3を相対的に熱が移動しにくい状態:OFF状態)においては、転移体3は熱電子の移動が相対的に困難な状態にあるといえる。本発明の熱スイッチ素子1では、このような熱電子の移動状態の変化が、転移体3へのエネルギーの印加に伴う電子相転移によって引き起こされると考えられる。
【0021】
ここで、熱電子とは「熱移動を伴う電子」を意味している。一般に、熱電子は、金属や半導体を加熱した際にその表面から飛び出す電子をいう場合が多い。本発明の熱スイッチ素子1における転移体3を伝達する電子は、上記一般的にいう熱電子に限定されず、熱の移動を伴う電子であればよい。本発明の熱スイッチ素子は、エネルギーの印加によって熱の輸送を制御する転移体を電極間に配置したことや、転移体などの各層に用いる材料の組み合わせ、各層の構成、配置などによって初めて実現が可能となった素子である。
【0022】
従って、例えば、JP-01(1989)-216582Aに示されているような超伝導スイッチと、本発明の熱スイッチ素子とは構成が全く異なっていると考えられる。JP-01(1989)-216582Aに開示されている超伝導の状態とは、超流動状態と物理的に類似しており、理想的な熱絶縁の性質を有している。このため、上記引例に開示されている超伝導スイッチでは、本発明の熱スイッチ素子で可能である熱輸送の制御は困難であると考えられる。これに対して、本発明の熱スイッチ素子1における転移体3は、電子の移動が相対的に容易な状態において、常伝導、即ち、超伝導でない状態であればよい。
【0023】
本発明の熱スイッチ素子1において、転移体3に印加するエネルギーは特に限定されない。例えば、電気エネルギー、光エネルギー、力学エネルギー、磁気エネルギーおよび熱エネルギーから選ばれる少なくとも1種のエネルギーを印加すればよい。どのエネルギーを用いるかは、転移体3に含まれている相転移材料の種類に応じて適宜選択すればよい。なお、複数の種類のエネルギーを転移体3に印加してもよく、この場合、上記複数の種類のエネルギーを同時に印加してもよいし、必要に応じてエネルギーの種類ごとに順序を設けて印加してもよい。例えば、転移体3へ電気エネルギーを印加した後に、光エネルギー、力学エネルギーなどのエネルギーを印加してもよい。それぞれのエネルギーの印加方法は特に限定されない。
【0024】
転移体3への電気エネルギーの印加は、例えば、転移体3へ電子またはホール(正孔)を注入することによって行ってもよい。また、転移体3に電子またはホールを誘起することによって行ってもよい。転移体3への電子やホールの注入または誘起は、例えば、電極2aおよび電極2b間に電位差を生じさせることによって行えばよく、より具体的には、例えば、電極2aおよび電極2b間に電圧を印加することによって行うことができる。その他、電気エネルギーを印加する場合のより具体的な構成例、他のエネルギーを印加する場合の構成例などについては後述する。
【0025】
熱スイッチ素子1の形状、サイズなどは特に限定されず、熱スイッチ素子1として必要な特性に応じて任意に設定すればよい。例えば、図1Aおよび図1Bに示すように、層状の電極2a、転移体3および電極2bを積層した構造であってもよい。このような積層構造である場合、熱スイッチ素子1の素子面積は、例えば、1×102nm2〜1×102cm2の範囲である。なお、素子面積とは、各層の積層方向(例えば、図1Bに示す矢印Bの方向)から素子を眺めたときの面積である。
【0026】
本発明の熱スイッチ素子1における転移体3について説明する。転移体3は、例えば、相転移材料として以下に示す材料を含めばよい。
【0027】
転移体3は、例えば、式Axyzで示される組成を有する酸化物を含んでいてもよい。ここで、Aは、アルカリ金属(Ia族)、アルカリ土類金属(IIa族)、Sc、Yおよび希土類元素(La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er)から選ばれる少なくとも1種の元素である。Dは、IIIa族、IVa族、Va族、VIa族、VIIa族、VIII族およびIb族から選ばれる少なくとも1種の遷移元素である(本明細書における元素の族表示は、IUPAC(1970)に基づいている。IUPAC(1989)に基づく族表示によれば、上記遷移元素は、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族および11族から選ばれる少なくとも1種の遷移元素となる)。Oは酸素である。上記酸化物は一般に結晶構造を有しており、対応する結晶格子の単位胞における中心位置には基本的に元素Dが入り、中心位置にある原子の周囲を複数の酸素原子が囲んだ構造を有している。
【0028】
x、yおよびzは、正の数であれば特に限定されない。なかでも、以下に示す組み合わせを満たす数値であることが好ましく、この組み合わせによって上記酸化物は複数のカテゴリーに分類できる。転移体3は、以下に示す各カテゴリーに属する酸化物を含んでいてもよい。各カテゴリーに属する酸化物におけるx、yおよびzの値は、以下に示す値(例示を含む)を完全に満たしている必要は必ずしもなく、例えば、酸素が一部欠損した酸化物であってもよいし、元素Aおよび元素D以外の元素(例えば、IIa〜Vb族元素など)が少量ドープされていてもよい。なお、以下に示すカテゴリーは本発明の技術分野において技術常識として固定化されているものではなく、酸化物の説明を分かりやすくするために便宜上設定したカテゴリーである。
【0029】
−カテゴリー1−
x、yおよびzは、x=n+2、y=n+1およびz=3n+4を満たす数値である。ここで、nは、0、1、2または3である。
【0030】
このカテゴリーに属する酸化物には、例えば、Sr2RuO4や(La,Sr)2CoO4などのxyz指数が(214)の酸化物、Sr3Ru27や(La,Sr)3Mn27などのxyz指数が(327)の酸化物が挙げられる。これらの酸化物は、いわゆるRuddlesden-Popper構造を示す酸化物である。
【0031】
なお、n=0のとき、本カテゴリーの酸化物には、元素Aの位置に元素Dが配置された、および/または、元素Dの位置に元素Aが配置された酸化物が含まれていてもよい。例えば、式Dxyzで示される組成を有する酸化物や、式Dxyzで示される組成を有する酸化物などが含まれていてもよい。より具体的には、例えば、Mg2TiO4、Cr2MgO4、Al2MgO4(xyz指数(214))などのスピネル型構造を有する酸化物、Fe2CoO4、Fe2FeO4(即ち、Fe34)などの元素Aを含まない酸化物(xyz指数(214))などが含まれていてもよい。
【0032】
−カテゴリー2−
x、yおよびzは、x=n+1、y=n+1およびz=3n+5を満たす数値である。ここで、nは、1、2、3または4である。このカテゴリーに属する酸化物には、例えば、部分的に酸素のインターカレーションを有する酸化物が挙げられる。
【0033】
−カテゴリー3−
x、yおよびzは、x=n、y=nおよびz=3nを満たす数値である。ここで、nは、1、2または3である。このカテゴリーに属する酸化物には、n=1のとき、例えば、SrTiO3、BaTiO3、KNbO3、LiNbO3、SrMnO3、SrRuO3などのペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物が挙げられる。また、n=2のとき、例えば、Sr2FeMoO6、SmBaMn26などのxyz指数が(226)である酸化物が挙げられる。
【0034】
−カテゴリー4−
x、yおよびzは、x=n+1、y=nおよびz=4n+1を満たす数値である。ここで、nは、1または2である。このカテゴリーに属する酸化物には、n=1のとき、例えば、Al2TiO5、Y2MoO5などのxyz指数が(215)の酸化物が挙げられる。また、n=2のとき、例えば、SrBi2Ta29などの酸化物が挙げられる。
【0035】
−カテゴリー5−
x、yおよびzは、x=0または1、y=0または1、z=1を満たす数値である。ここで、xおよびyから選ばれるいずれか一方が0である。このカテゴリーに属する酸化物には、例えば、BeO、MgO、BaO、CaO、NiO、MnO、CoO、CuO、ZnOなどが挙げられる。
【0036】
−カテゴリー6−
xおよびyは、x=0、1または2、y=0、1または2を満たす数値である。ここで、xおよびyから選ばれるいずれか一方が0であり、zは、xが0のとき、yの値に1を加えた値であり、yが0のとき、xの値に1を加えた値である。このカテゴリーに属する酸化物には、例えば、TiO2、VO2、MnO2、GeO2、CeO2、PrO2、SnO2、Al23、V23、Ce23、Nd23、Ti23、Sc23、La23などが挙げられる。
【0037】
−その他のカテゴリー−
例えば、x=0または2、y=0または2、および、z=5のとき、Nb25、V25、Ta25などの酸化物が挙げられる。ただし、xおよびyから選ばれるいずれか一方が0である。
【0038】
転移体3は、上述した酸化物を複数の種類含んでいてもよい。例えば、同一のカテゴリーの中でnの値が異なる酸化物の構造単位胞や小単位胞が組み合わさった超格子を有する酸化物を含んでいてもよい。具体的なカテゴリーとしては、例えば、上述のカテゴリー1(Ruddlesden-Popper型構造を示す酸化物)やカテゴリー2(酸素のインターカレーションを有する酸化物)などが挙げられる。このような超格子を有する酸化物は、例えば、単独または複数の元素Dの酸素八面体層が、元素Aと酸素とを含む1つ以上のブロック層により分離した結晶格子構造を有している。
【0039】
また、転移体3は、強相関電子系材料を含んでいてもよい。例えば、モット絶縁体を含んでいてもよい。
【0040】
また、転移体3は、磁性半導体を含んでいてもよい。磁性半導体の母材となる半導体には、例えば、化合物半導体を用いればよい。具体的には、例えば、GaAs、GaSe、AlAs、InAs、AlP、AlSb、GaP、GaSb、InP、InSb、In2Te3、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdSe、CdTe、CdSb、HgS、HgSe、HgTe、SiC、GeSe、PbS、Bi2Te3、Sb2Se3、Mg2Si、Mg2Sn、Mg3Sb2、TiO2、CuInSe2、CuHgIn4、ZnIn2Se4、CdSnAs2、AgInTe2、AgSbSe2、GaN、AlN、GaAlN、BN、AlBN、GaInNAsなどのI−V族、I−VI族、II−IV族、II−V族、II−VI族、III−V族、III−VI族、IV−IV族、I−III−VI族、I−V−VI族、II−III−VI族、II−IV−V族化合物半導体を母材として用い、これらの化合物半導体にIVa族〜VIII族およびIVb族から選ばれる少なくとも1種の元素を加えた磁性半導体を用いればよい。
【0041】
あるいは、式Q123で示される組成を有する磁性半導体を用いてもよい。ここで、Q1は、Sc、Y、希土類元素(La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er)、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、NiおよびZnから選ばれる少なくとも1種の元素であり、Q2は、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素であり、Q3は、C、N、O、FおよびSから選ばれる少なくとも1種の元素である。元素Q1と元素Q2と元素Q3との組成比は特に限定されない。
【0042】
あるいは、式R123で示される組成を有する磁性半導体を用いてもよい。ここで、R1は、B、Al、GaおよびInから選ばれる少なくとも1種の元素であり、R2は、NおよびPから選ばれる少なくとも1種の元素であり、R3は、IVa族〜VIII族およびIVb族から選ばれる少なくとも1種の元素である。元素R1と元素R2と元素R3との組成比は特に限定されない。
【0043】
あるいは、式ZnOR3で示される組成を有する磁性半導体を用いてもよい。ここで、R3は上述の元素R3であり、Znは亜鉛、Oは酸素である。ZnとOと元素R3との組成比は特に限定されない。
【0044】
あるいは、式TOR3で示される組成を有する磁性半導体を用いてもよい。ここで、Tは、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Ni、Al,InおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素であり、R3は上述の元素R3であり、Oは酸素である。元素TとOと元素R3との組成比は特に限定されない。
【0045】
また、転移体3が、外部から与えられた電界によってメタ磁性−強磁性転移する材料を含んでいてもよい。例えば、La(Fe,Si)やFeRhなどを用いればよい。この場合、転移体3に電気エネルギーを印加することによって電子相転移させることができる。
【0046】
また、転移体3に熱エネルギーを印加することによって電子相転移させる場合、例えば、GaSb、InSb、InSe、Sb2Te3、GeTe、Ge2Sb2Te5、InSbTe、GeSeTe、SnSb2Te4、InSbGe、AgInSbTe、(Ge,Sn)SbTe、GeSb(Se,Te)、Te81Ge15Sb22などを含んでもよい。
【0047】
転移体3の形状、サイズなどは特に限定されず、熱スイッチ素子1として必要な特性に応じて任意に設定すればよい。図1Aおよび図1Bに示すように層状の転移体3である場合、転移体3の厚さは、例えば、0.3nm〜100μmの範囲であり、0.3nm〜1μmの範囲が好ましい。転移体3の面積(例えば、図1Bに示す矢印Bの方向から見た面積)は、熱スイッチ素子1として必要な素子面積に応じて任意に設定すればよい。また、転移体3は、複数の層が積層していてもよく、各層の厚さ、含まれる材料などは、転移体3として必要な特性に応じて任意に設定すればよい。
【0048】
電極2aおよび電極2bに用いる材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。例えば、線抵抗率が100μΩcm以下の材料を用いればよく、具体的には例えば、Cu、Al、Ag、Au、Pt、TiNなどを用いればよい。また、必要に応じて半導体材料を用いてもよい。半導体材料を用いる場合は、仕事関数が小さい材料が好ましい。なお、電極2aおよび電極2bの形状、サイズなども特に限定されず、熱スイッチ素子1として必要な特性に応じて任意に設定すればよい。
【0049】
次に、本発明の熱スイッチ素子の構成例について説明する。
【0050】
図2は、本発明の熱スイッチ素子の別の一例を示す模式断面図である。図2に示す熱スイッチ素子1は、図1Aおよび図1Bに示す熱スイッチ素子1に対して絶縁体4をさらに含み、転移体3と電極2bとの間に絶縁体4が配置されている。このような熱スイッチ素子1では、絶縁体4の熱伝導性が小さいために、転移体3がOFF状態の時に熱スイッチ素子1全体としての熱伝導性をさらに小さくすることができる。このため、より効率が高い熱スイッチ素子1とすることができる。また、後述するが、絶縁体4を配置することによって、一方の電極から他方の電極へと熱を伝導する冷却素子とすることもできる。
【0051】
絶縁体4の熱伝導度は、OFF状態における転移体3(例えば、絶縁体−金属転移を行う転移体3であれば、絶縁体の状態における転移体3)の熱伝導度よりも小さいことが好ましい。より効率が高い熱スイッチ素子1とすることができる。
【0052】
図2に示すように絶縁体4が配置されている熱スイッチ素子1では、電極2aと電極2bとの間を伝導する電子(熱電子)が感じるギャップポテンシャルは、転移体3の電子相転移に伴って大きく変化すると考えられる。例えば、熱の移動が相対的に容易であるON状態(例えば、絶縁体−金属転移を行う転移体3であれば、金属相を含む状態である)において、熱電子は転移体3における絶縁体4に面する端部から絶縁体4を介して電極2bに伝導することになる。この際の熱電子の伝導を確保する観点からは、絶縁体4の厚さは、例えば、50nm以下の範囲であればよく、さらに熱の輸送効率の観点からは、15nm以下の範囲が好ましい。なお、絶縁体4の厚さの下限は特に限定されないが、例えば、0.3nm以上であればよい。なお、絶縁体4の形状は特に限定されず、転移体3および電極2bなどの形状に応じて任意に設定すればよい。
【0053】
絶縁体4が配置されている熱スイッチ素子1では、熱電子は絶縁体4を超えて電極2aから(あるいは転移体3から)電極2bへと伝達される。このとき、熱電子は、トンネル伝達やバリスティック伝達、いわゆるサーミオニック(thermionic)伝達などによって絶縁体4を介して電極2bへと伝達されると考えられる。伝達の方法は、絶縁体4に用いる材料、絶縁体4の厚さ(即ち、上述のギャップポテンシャル)などによって異なる。言い換えれば、例えば、絶縁体4に用いる材料や絶縁体4の厚さを制御することによって、伝達の方法をコントロールすることも可能である。
【0054】
絶縁体4として、例えば、真空を用いてもよい。絶縁体4として真空を用いた場合、素子の構成を簡素化することができる。絶縁体4として真空を用いた熱スイッチ素子の作成方法については後述する。なお、真空とは、例えば、1Pa程度以下の圧力雰囲気であればよい。また、絶縁体4として真空を用いた場合、熱電子は、基本的にはサーミオニック伝達されると考えられる。絶縁体4の厚さによってはトンネル伝達する熱電子も存在すると考えられる。
【0055】
また、絶縁体4として、例えば、酸化物などのセラミクスや、樹脂などの一般的な固体状の絶縁材料を用いてもよい。このとき、絶縁体4として、アモルファスあるいは微結晶の状態にある絶縁体を用いることが好ましい。なお、本明細書における微結晶の状態とは、平均結晶径が10nm以下の結晶粒がアモルファスの基体中に分散した状態をいう。固体状の絶縁体を用いる場合、絶縁体4はトンネル絶縁体として形成するのが好ましい。絶縁体4がトンネル絶縁体である場合、熱を輸送する熱電子は絶縁体4をトンネル伝達されることになる。トンネル絶縁体を形成するためには、例えば、一般的にトンネル絶縁性とされる材料を用いればよい。より具体的には、例えば、Al、Mgなどの酸化物、窒化物、酸窒化物などを用いればよい。トンネル絶縁体である場合の絶縁体4の厚さは、例えば、0.5nm〜50nmの範囲であり、1nm〜20nmの範囲が好ましい。
【0056】
また、絶縁体4として、例えば、無機高分子材料を用いてもよい。無機高分子材料としては、例えば、シリケート材料やアルミシリケート材料などを用いればよい。図3に、無機高分子材料の構造の一例を示す。図3に示すように、シリケート材料やアルミシリケート材料などの無機高分子は多孔質構造を有しており、固体でありながら、その内部に中空領域5を無数に有している。中空領域5の平均径は空気の平均自由工程距離に比べて小さく、中空領域5の内部における気体の移動度が実質的に小さいため、無機高分子材料は熱を伝えにくい。このため、そのまま絶縁体4として用いてもよいが、例えば、中空領域5に熱伝導度が小さい気体を充填したり、中空領域5を真空にしたりすることによって、より熱伝導度が小さい絶縁体4とすることができる。
【0057】
図3に示す無機高分子材料についてより詳しく説明する。図3に示す無機高分子材料は、全体の骨格を形成する母材6を含んでいる。母材6は平均粒径が数nm程度の粒子であり、三次元的なネットワークを形成することによって多孔質構造の骨格を形成している。無機高分子材料は、母材6によって形成された骨格によって固体としての形状を保ちながら、平均径が数nm〜数十nm程度の連続した中空領域5を無数に含んでいる。このような多孔質構造からなる絶縁体4を図2に示すように配置し、転移体3がON状態のときに電極2aおよび電極2b間に電圧を印加すると(電極2aおよび電極2b間に電圧を印加することによって転移体3をON状態としてもよい)、母材6からなる骨格部分に電界が集中する。この電界の集中により、電極あるいは転移体から絶縁体4の内部に効率的に熱電子が供給され、供給された熱電子は絶縁体4の内部を放射伝導される。この際の熱電子の伝達は、主としてバリスティック的な伝達によって行われると考えられる。このような電界が集中する効果は、絶縁体4を図3に示すような多孔質構造とすることによって顕著になる効果であり、絶縁体4が図3に示すような多孔質構造を有しない場合に比べて、熱電子を伝達するために電極2aおよび電極2b間に印加する電圧を低減することができる。
【0058】
なお、図3に示す無機高分子材料において、供給した熱電子の一部は、多孔質構造を形成する母材6などの固相領域によって散乱され、エネルギーを失うと考えられる。しかし、固相領域の大きさは平均数nm程度であるため、供給した熱電子の多くを熱の伝達に利用することができると考えられる。
【0059】
また、図3に示す無機高分子材料は、中空領域5の平均径と同程度、あるいはそれ以下の平均粒径を有する電子放出材7をさらに含んでおり、電子放出材7は母材6と接するようにして無機高分子中に分散して配置されている。このように電子放出材7を含む無機高分子材料では、熱電子の一部が上記固相領域によって散乱された場合においても、散乱された熱電子が電子放出材7に伝達されることによって再放出され、再び熱の輸送を担うことができる。再放出された熱電子が固相領域によってさらに散乱された場合についても同様である。このため、より効率が高い熱スイッチ素子とすることができる。電子放出材7は、仕事関数が小さい材料が好ましく、具体的には、例えば、炭素材料、Cs化合物、アルカリ土類金属化合物などを用いればよく、その平均粒径は、数nm〜数十nm程度の範囲である。なお、図3中に示す「eー」は。電子が再放出されている状態を示している。
【0060】
絶縁体4として、上述した無機高分子材料に限定されず、同様の中空領域、例えば、連続的な空孔、あるいは、独立した空孔を有する絶縁材料を用いてもよい。上述の無機高分子材料を用いた場合と同様の効果を得ることができる。このような絶縁材料は、母材となる粉体を形成した後に粉体焼成を行う方法や、化学発泡、物理発泡、ゾル−ゲル法などの方法によって形成することができる。ただし、平均径が数nm〜数十nm程度の空孔を無数に有していることが好ましい。また、無機高分子材料と同様に、電子放出材を含んでいてもよい。無機高分子材料の場合と同様の効果を得ることができる。
【0061】
具体的には、例えば、ゾル−ゲル法によって作成された乾燥ゲルを用いてもよい。上記乾燥ゲルは、平均粒径が数nm〜数十nm程度の範囲の粒子で構成される骨格部と、平均径が100nm程度以下の連続的な中空領域とを有しているナノ多孔質体である。ゲルの材料としては、例えば、上述した電界の集中を効率的に行う観点から、半導体材料あるいは絶縁材料が好ましく、なかでも、シリカ(酸化ケイ素)を用いることが好ましい。シリカを用いた乾燥ゲルである多孔質シリカゲルの作製方法については後述する。
【0062】
図4に本発明の熱スイッチ素子のまた別の一例を示す。図4に示す熱スイッチ素子1は、図2に示す熱スイッチ素子に対して電極8をさらに含み、転移体3と絶縁体4との間に電極8が配置されている。このような構成とすることによって、より効率が高い熱スイッチ素子1とすることができる。
【0063】
電極8に用いる材料は、上述した電極2aおよび電極2bに用いる材料と同様であればよい。なかでも、真空準位に対する仕事関数が小さい(例えば、2eV以下)材料が好ましい。具体的には、例えば、Cs化合物やアルカリ土類金属化合物などを用いればよい。このような材料を用いた場合、絶縁体4への熱電子の供給をより効率よく行うことができる。
【0064】
電極8の形状、サイズなどは特に限定されず、熱スイッチ素子1として必要な特性に応じて任意に設定すればよい。図4に示すような層状の電極8である場合、その厚さは、例えば、サブナノメートルのオーダーから数μmの範囲である。
【0065】
なお、図1、図2および図4に示す熱スイッチ素子1における各層の間に、必要に応じて別の材料をさらに配置してもよい。
【0066】
次に、本発明の熱スイッチ素子における転移体へのエネルギーの印加方法について説明する。
【0067】
図5は、転移体3へ電気エネルギーを印加する方法の一例を説明するための模式図である。図5に示すように、転移体3へのエネルギーの印加を行う電極10と絶縁体9とをさらに含み、転移体3と電極10との間に絶縁体9を配置することによって転移体3へ電気エネルギーを印加することができる。具体的には、例えば、電極10と転移体3との間に電圧Vgを印加すればよい。電圧Vgを印加することによって、例えば、転移体3に電子またはホールを注入または誘起することができ、転移体3にエネルギーを印加することができる。注入または誘起された電子は、そのまま熱電子として熱の輸送を担うことができる。
【0068】
図6に、図5に示す構造を含んだ熱スイッチ素子の一例を示す。図6に示す熱スイッチ素子1は、図4に示す熱スイッチ素子1に対して、絶縁体9と電極10とをさらに含んでいる。絶縁体9および電極10は、転移体3と電極10とによって絶縁体9を狭持するように配置されている。また、絶縁体9および電極10は、電極2aおよび電極2bの電位に影響を与えないように、具体的には、印加する電圧Vgの方向が転移体3の内部において熱電子が伝導される方向とほぼ垂直になるように配置されている。図6に示す熱スイッチ1では、転移体3と電極10との間に電圧Vgを印加することによって、転移体3を電子相転移させることができる。また、図6に示す例において、電圧Vgの印加を、電極10と電極2aとの間で行ってもよい。なお、本発明の熱スイッチ素子において、電圧Vgを印加する方法は特に限定されない。例えば、別に配置した電圧印加部と、本発明の熱スイッチ素子とを電気的に接続すればよい。本発明の熱スイッチ素子が電気回路に組み込まれている場合、電圧印加部は、例えば、上記電気回路が含んでいてもよい。その他、本発明の熱スイッチ素子における電圧を印加したい領域の間に(例えば、図6に示す例であれば、転移体3と電極10との間に)電位差を与えることができる限り、電圧Vgを印加する方法、構成などは任意に設定すればよい。
【0069】
電極10に用いる材料は、上述した電極2aおよび電極2bに用いる材料と同様であればよい。また、絶縁体9に用いる材料は、絶縁材料、半導体材料であれば特に限定されない。例えば、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、TaおよびCrを含むIIa族〜VIa族元素、およびランタノイド(La、Ceを含む)、Zn、B、Al、GaおよびSiを含むIIb族〜IVb族から選ばれる少なくとも1種の元素と、F、O、C、NおよびBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物を用いればよい。具体的には、例えば、SiO2、Al23、MgOなどを、半導体として、ZnO、SrTiO3、LaAlO3、AlN、SiCなどを用いればよい。
【0070】
絶縁体9の形状、サイズなどは特に限定されず、例えば、図6に示すように層状である場合、その厚さは、例えば、サブナノメートルのオーダーから数μmの範囲である。
【0071】
図7Aおよび図7Bは、転移体3へ磁気エネルギーを印加する方法の一例を説明するための模式図である。図7Aおよび図7Bに示す構造は図5に示す構造と同様であるが、電圧Vgを印加する代わりに電極10に電流11を流して磁界12を発生させ、発生した磁界12を転移体3へ導入することによって転移体3にエネルギーを印加することができる。なお、図7Aは図7Bに示す構造を図1Aと同様に切断した模式断面図である。
【0072】
図7Aおよび図7Bに示す構造を含んだ熱スイッチ素子は、例えば、図6に示す構造を有する熱スイッチ素子1であればよく、電圧Vgを印加する代わりに電極10に電流を流し、発生した磁界を転移体3に導入すればよい。電極10に電流を流すことによって、転移体3を電子相転移させることができる。なお、電圧Vgの印加と、電極10に電流を流して磁界を発生させ転移体3に導入することとを同時、あるいは、順序を決めて行ってもよい。転移体3へ、電気エネルギーと磁気エネルギーとの双方を印加することができる。なお、転移体3へ磁気エネルギーを印加する場合、絶縁体9の厚さ(電極10と転移体3との距離ともいえる)は、例えば、数nm〜数μmの範囲である。また、電極10と転移体3とが電気的に短絡しない限り、絶縁体9は必ずしも配置しなくてもよい。例えば、電極10と転移体3とを、数nm〜数μm程度離して配置してもよい。
【0073】
転移体3へ磁気エネルギーを印加する場合、電極10で発生した磁界を集束する磁束ガイドを電極10に接して、あるいは、電極10の近傍に配置してもよい。磁束ガイドを配置することによって、転移体3に磁界12が効率よく導入され、より効率が高い熱スイッチ素子とすることができる。
【0074】
配置する磁束ガイドの形状は、電極10において発生した磁界を集束することができる限り、特に限定されない。熱スイッチ素子として必要な特性、製造プロセス上の要求などに応じて、任意に設定すればよい。例えば、図8Aに示すように、磁束ガイド13と電極10とを組み合わせた場合の断面が矩形状であってもよいし、図8Bに示すように台形状であってもよい。図8Bに示す例のように台形状である場合、磁界を導入する対象である転移体3により近い位置でより多くの電流を流すことができるため、より効率よく転移体3に磁界を導入することができる。なお、図8Aおよび図8Bに示す例では、電極10と磁束ガイド13とが密着した形状となっているが、必ずしも両者は密着している必要はない。ただし、両者が密着している場合、より効率よく転移体3に磁界を導入することができる。また、図8Aおよび図8Bでは、説明を分かりやすくするために、電極2a、電極2bなどの図示を省略している。以降の図においても、同様に、電極2a、電極2bなどの図示を省略する場合がある。実際に熱スイッチ素子として使用する際には、電極2aおよび電極2b、また、必要に応じて電極8、絶縁体4などを任意の位置に配置すればよい。
【0075】
磁束ガイド13に用いる材料は、電極10において発生した磁界を集束することができる限り、特に限定されず、例えば、強磁性材料を用いればよい。より具体的には、例えば、Ni、CoおよびFeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む軟磁性合金膜を用いればよい。
【0076】
また、磁束ガイド13に用いる強磁性材料は、過度に大きな保磁力を有していないことが好ましい。過度に大きい保磁力を有する強磁性材料を磁束ガイドとして用いた場合、磁束ガイド13自身の磁化保持によって転移体3に加える磁界の制御性が低下したり、磁束ガイド13自身の磁化方向を変化させるためにエネルギーが余分に必要となり熱スイッチ素子としての効率が低下したりする可能性がある。
【0077】
図9に、転移体3へ磁気エネルギーを印加する方法の別の一例を示す。転移体3へ磁気エネルギーを印加するために、図9に示すような構造としてもよい。図9に示す例では、転移体3を囲むように電極10が配置されており、転移体3の両側面(図9に示す側面Cおよび側面D)に面する電極10に逆位相の電流を流すことができる。このため、転移体3に導入する磁界を強めることができ、より効率が高い熱スイッチ素子とすることができる。
【0078】
図10Aおよび図10Bに、転移体3へ磁気エネルギーを印加する方法のまた別の一例を示す。図10Aおよび図10Bに示す例では、図9に示す例に対して、磁束ガイド13がさらに配置されている。また、磁束ガイド13は、磁界を導入する対象である転移体3の近傍にのみ配置されている。この場合、磁束ガイド13が有する保磁力を不必要に増大させることなく、より効率よく転移体3に磁界を導入することができるなお、図10Bは、図10Aを図10Aに示すC−D方向に切断した断面図である。
【0079】
また、転移体3の近傍に磁束ガイド13を配置するにあたっては、図11に示すように、磁束ガイド13を分割して配置してもよい。この場合、磁束ガイド13が有する保磁力の増大をより抑制し、かつ、より効率よく転移体3に磁界を導入することができる。なお、図11に示す例は、磁束ガイド13以外は図10Aおよび図10Bに示す例と同様である。
【0080】
図12Aおよび図12Bに、転移体3へ磁気エネルギーを印加する方法のまた別の一例を示す。図12Aおよび図12Bに示す例では、より効率よく転移体3に磁界を導入することができる。なかでも、転移体3が垂直方向の磁界により反応する場合に好ましい。
【0081】
図13は、転移体3へ光エネルギーを印加する方法の一例を示す模式図である。図13に示すように、転移体3へ光エネルギーを印加するためには、転移体3へ光14を入射すればよい。転移体3へ光14を入射する際には、図14Aに示すように光14を転移体3に直接入射してもよいし、図14Bに示すように電極2aおよび/または電極2bを介して光14を入射してもよい。
【0082】
電極2aおよび/または電極2bを介して光14を入射する場合には、光14が入射する電極(図14Bに示す例では、電極2b)が光14に対する透過性を有している必要がある。このため、上記電極に用いる材料は、入射する光の帯域に応じて選択すればよい。入射する光が可視光および/または赤外光の場合、電極の材料には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やZnOなどを用いればよい。入射する光がテラヘルツ光の場合、電極の材料には、例えば、MgOなどを用いればよい。なお、電極が光を透過する度合、例えば、電極の光透過度は特に限定されず、熱スイッチ素子として必要な特性に応じて任意に設定すればよい。また、転移体3へ光を入射する方法は、転移体3へ光を入射することができる限り特に限定されない。例えば、図4に示す熱スイッチ素子1において、転移体3に入射する光に対して透過性を有する材料を電極8および絶縁体4にも用い、電極2b側から光を入射してもよい。
【0083】
図15は、転移体3へ熱エネルギーを印加する方法の一例を示す模式図である。図15に示す例では、転移体3と電極10との間に発熱体15が配置されており、電極10に電流を流すことによって発熱体15に電流が流れ発熱体15が発熱する。このようにして、転移体3に熱エネルギーを印加することができる。発熱体15には、電流が流れることによって発熱する材料、例えば、抵抗体などを用いればよい。また、発熱体15と転移体3との間に、必要に応じて他の層、例えば、絶縁体を配置してもよい。
【0084】
なお、図15に示す例に限らず、転移体3へ熱エネルギーを印加する方法は特に限定されない。例えば、図10に示す発熱体に光や電波を照射することによって発熱させ、転移体3へ熱エネルギーを印加してもよい。また、電極10に流す電流により電極10自体を発熱させることによって、転移体3へ熱エネルギーを印加してもよい。
【0085】
図16は、転移体3へ力学エネルギーを印加する方法の一例を示す模式図である。図16に示す例では、転移体3と電極10との間に変位体16が配置されており、電極10に電流を流すことによって変位体16が変形する。即ち、変位体16を配置することによって、転移体3へ力学エネルギーの1種である圧力を印加することができる。
【0086】
変位体16には、例えば、圧電材料や磁歪材料を用いればよい。変位体16が圧電材料を含む場合、例えば、電極10を流れる電流を変位体16に導入すればよい。変位体16が磁歪材料を含む場合、例えば、電極10を流れる電流により発生した磁界を変位体16に導入すればよい。
【0087】
以上、転移体3へのエネルギーの印加方法を説明したが、上述の説明から明らかであるように、本発明の熱スイッチ素子では複数の異なる種類のエネルギーを同時に、あるいは順序を決めて転移体3に印加することができる。例えば、電極10を異なる種類のエネルギーの印加に用いることができる。なお、図5〜図17に示す各層の間に、必要に応じて別の材料をさらに配置してもよい。
【0088】
本発明の熱スイッチ素子1は、電極2aおよび電極2bから選ばれる一方の電極から他方の電極へと熱を伝導する冷却素子としても用いることができる。例えば、図1に示す熱スイッチ素子1において、転移体3に絶縁体としての機能を併せ持つ材料を用いることなどによって、一定の方向に熱を伝導する素子とすることができる。このような材料としては、(Pr,Ca)MnO3やVO2など、また、Bi2Sr2Ca2Cu310などの層状物質などが挙げられる。層状物質の場合、例えば、その層間方向を利用すればよい。なお、「一方の電極から他方の電極へと熱を伝導する」、および、「一定の方向に熱を伝導する」とは、その反対の方向へ全く熱を伝導しない場合のみを意味するわけではない。例えば、電極2aから電極2bへの熱の伝導と、電極2bから電極2aへの熱の伝導とが非対称であってもよい。見かけ上、一定の方向に熱が伝導される現象が生じることになる。
【0089】
また、図2に示すように、絶縁体4を配置した熱スイッチ素子1では、絶縁体4の材料、厚さなどを制御することなどによって、電極2aから電極2bへ向かう方向と、電極2bから電極2aへ向かう方向とにおける熱電子の伝導度を非対称にすることができる。このため、一定の方向に熱を伝導する素子、即ち、冷却素子とすることができる。なお、一方向の熱の伝導を実現するためには、転移体3がON状態にあることが必要である。
【0090】
次に、本発明の熱スイッチ素子の製造方法について説明する。
【0091】
熱スイッチ素子を構成する各層の形成には、一般的な薄膜形成プロセスを用いればよく、例えば、パルスレーザデポジション(PLD)、イオンビームデポジション(IBD)、クラスターイオンビーム、および、RF、DC、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、ヘリコン、誘導結合プラズマ(ICP)、対向ターゲットなどの各種スパッタリング法、分子線エピタキシー法(MBE)、イオンプレーティング法などを用いればよい。また、これらPVD法の他に、CVD法、メッキ法あるいはゾルゲル法などを用いてもよい。微細加工を行う必要がある場合、半導体プロセスや磁気ヘッド作製プロセスなどに一般的に用いられている手法を組み合わせればよい。具体的には、例えば、イオンミリング、反応性イオンエッチング(RIE)、FIB(Focused Ion Beam)などの物理的または化学的エッチング法、微細パターン形成のためのステッパー、電子ビーム(EB)法などを用いたフォトリソグラフィー技術などを組み合わせればよい。電極などの各層の表面を平坦化するためには、例えば、CMP(Chemo-Mechanical Polishing)やクラスターイオンビームエッチングなどを用いればよい。また、各層を形成する際には、基体上に形成してもよい。基体に用いる材料は特に限定されず、例えば、SiやSiO2、あるいは、GaAsやSrTiO3などの酸化物単結晶などを用いればよい。
【0092】
図2に示すように転移体3と電極2bとの間に絶縁体4をさらに含み、かつ、絶縁体4が真空である熱スイッチ素子1の製造方法を示す。このような熱スイッチ素子1の製造方法において、真空である絶縁体4(以下、真空絶縁部、ともいう)を転移体3と電極2bとの間に形成する方法は特に限定されない。例えば、転移体3と電極2bとを所定の間隔で配置することによって電極2bと転移体3との間に空間を形成し、形成した空間を真空に保持することによって電極2bと転移体3との間に絶縁体4を形成してもよい。このような製造方法の一例を図17に示す。
【0093】
図17に示す例では、電極2aおよび転移体3を含む積層体と電極2bとを、電極2bと転移体3とが面するように所定の間隔で配置することによって、電極2bと転移体3との間に空間を形成している(工程(I))。ここで、形成した空間を真空に保持することによって、電極2aと転移体3との間に真空絶縁部を形成することができる(工程(II))。
【0094】
工程(I)における所定の間隔は、例えば、形成する真空絶縁部として必要な厚さであればよく、具体的には上述したように、例えば、50nm以下の範囲であればよく、なかでも15nm以下の範囲が好ましい。上記間隔の下限は特に限定されないが、例えば、0.3nm以上であればよい。
【0095】
工程(I)において、積層体と電極2bとを所定の間隔で配置し、電極2bと転移体3との間に空間を形成する方法は特に限定されない。例えば、積層体および/または電極2bを、両者の間隔を制御しながら移動させればよく、その方法は特に限定されない。より具体的には、例えば、図17に示すように、電極2bおよび/または上記積層体を移動するように圧電体17を配置し(工程(I−a))、配置した圧電体17を変形させればよい(工程(I−b))。圧電体17が変形(膨張および/または収縮)するに伴って電極2bおよび/または積層体が移動するため、積層体と電極2bとを所定の間隔で配置することができる。なお、積層体と電極2bとを所定の間隔で配置するために、圧電体17を膨張させても収縮させてもよく、膨張と収縮とを組み合わせてもよい。
【0096】
工程(I−a)において、圧電体17の配置方法は、電極2bおよび/または上記積層体が移動できる限り特に限定されない。例えば、図17に示すように、電極2bおよび/または上記積層体に接するように圧電体17を配置すればよい。図17では、電極2bと上記積層体との双方に接するように圧電体17が配置されているため、電極2bと上記積層体との双方を移動できる。いずれか一方のみに接するように圧電体17が配置されていてもよい。圧電体17には、一般的な圧電材料を用いればよい。なお、圧電体17と電極2aおよび/または電極2bとの間に、必要に応じて別の層を配置してもよい。
【0097】
工程(II)において、工程(I)で形成した空間を真空に保持する方法は特に限定されない。例えば、工程(I)の後に、積層体および電極2b間の間隔を維持したまま、上記空間を真空とし密閉してもよい。上記空間を真空とするためには、例えば、積層体および電極2bを含む全体を真空の雰囲気下におけばよい。また、工程(I)と工程(II)とを同時に行ってもよい。例えば、真空の雰囲気下において工程(I)を行い、積層体と電極2bとの間に形成した空間をそのまま密閉すればよい。その他、工程(I)が複数の工程を含む場合、工程(I)の途中で、積層体および電極2bの全体を真空の雰囲気下においてもよい。なお、真空とは、上述したように、例えば、1Pa程度以下の状態であればよい。
【0098】
図17に示す例では、電極2bと、電極2aおよび転移体3を含む積層体とを用いて熱スイッチ素子を形成したが、電極2aは真空絶縁部の形成とは別に配置してもよい。具体的には、例えば、以下のようにすればよい。最初に、転移体3と電極2bとを、電極2bと転移体3とが面するように所定の間隔で配置することによって、電極2bと転移体3との間に空間を形成する(工程(i))。図17において、電極2aが省かれている状態である。次に、上記形成した空間を真空に保持することによって、電極2bと転移体3との間に真空絶縁部を形成する(工程(ii))。次に、転移体3が電極2bと電極2aとの間に配置されるように、電極2aを配置すればよい(工程(iii))。
【0099】
工程(i)における空間の形成方法および工程(ii)における真空絶縁部の形成方法は、上述した工程(I)における方法、工程(II)における方法と同様であればよい。例えば、工程(i)が、(i−a)電極2bおよび転移体3から選ばれる少なくとも1つを移動するように圧電体17を配置する工程と、(i−b)配置した圧電体17を変形させることによって、電極2bと転移体3とを所定の間隔で配置し、電極2bと転移体3との間に空間を形成する工程とを含んでいてもよい。
【0100】
工程(iii)における電極2aを配置する方法は特に限定されず、例えば、上述した薄膜形成方法を用いればよい。なお、工程(iii)は、必ずしも工程(ii)の後に行う必要はなく、例えば、工程(i)から工程(ii)における任意の時点で行ってもよい。
【0101】
転移体3と電極2bとの間に絶縁体4をさらに含み、かつ、絶縁体4が真空絶縁部である熱スイッチ素子1の製造方法の別の一例を図18A〜図18Dに示す。
【0102】
最初に、図18Aに示すように、電極2aと、転移体3と、電極2bとを含み、真空絶縁部の代わりに中間体18を配置した多層膜を形成する(工程(A))。真空絶縁部の代わりに中間体18を配置しているため、上記多層膜における積層の順序は、電極2a、転移体3、中間体18、電極2bとなる。ここで、中間体18には転移体3よりも力学的に破壊しやすい材料を用いればよい。力学的に破壊しやすい材料とは、例えば、圧縮力や引張力を加えた場合に転移体よりも破壊しやすい材料であればよい。即ち、例えば、転移体3よりも強度が小さい材料を用いればよい。より具体的には、例えば、Bi、Pb、Agなどを用いればよい。中間体18の厚さは、例えば、真空絶縁部として必要な厚さであればよく、具体的には上述の通りである。
【0103】
次に、図18Bに示すように、上記多層膜の積層方向に多層膜を伸張することによって中間体18を破壊する。その後、図18Cに示すように、残存する中間体18に気体19を吹き付けることによって中間体18を除去し、転移体3と電極2bとの間に空間を形成する(工程(B))。
【0104】
次に、図18Dに示すように、形成した空間を真空に保持することによって、電極2bと転移体3との間に真空である絶縁体4が形成された熱スイッチ素子を得ることができる(工程(D))。この方法では、真空絶縁部の厚さを中間体18の厚さとすることができるため、図17に示す方法に比べて、真空絶縁部の厚さ(電極2bと転移体3との距離)の制御をより容易に行うことができる。
【0105】
工程(A)において、多層膜を形成する方法は特に限定されず、例えば、上述した成膜方法を用いればよい。
【0106】
工程(B)において、多層膜をその積層方向に伸張する方法は特に限定されない。例えば、図18Bに示すように、圧電体17を用いればよい。具体的には、工程(B)が、(B−a)多層膜の少なくとも一方の主面に接すように圧電体17を配置する工程と、(B−b)配置した圧電体17を変形(膨張および/または収縮)させることによって、多層膜の積層方向に多層膜を伸張させ、中間体18を破壊する工程とを含んでいてもよい。
【0107】
工程(B−a)において、圧電体17の配置方法は、多層膜を伸張できる限り特に限定されない。例えば、図18Bに示すように、多層膜に含まれる電極2bに接するように圧電体17を配置すればよい。電極2a側に圧電体17が配置されていてもよく、電極2a側および電極2b側の双方に圧電体17が配置されていてもよい。圧電体17には、一般的な圧電材料を用いればよい。なお、圧電体17と電極2aおよび/電極2bとの間に、必要に応じて別の層を配置してもよい。
【0108】
工程(B−b)において、多層膜を伸張するために、圧電体17を膨張させても収縮させてもよく、膨張と収縮とを組み合わせてもよい。例えば、圧電体17の収縮量と膨張量とが同じになるように、膨張と収縮とを組み合わせれば、中間体18の厚さと同じ間隔(転移体3と電極2bとの間隔)を有する空間を形成することができる。
【0109】
工程(B)において、破壊後に残存する中間体18を除去する方法は特に限定されない。例えば、図18Cに示すように、気体19を吹き付けることによって除去すればよい。気体だけでなく、液体を吹き付けることによって除去してもよい。気体を用いる場合、用いる気体の種類は特に限定されず、例えば、中間体18と反応性を有する気体を用いればよい。
【0110】
工程(C)において、工程(B)で形成した空間を真空に保持する方法は特に限定されない。例えば、工程(B)の後に、転移体3と電極2bとの間隔を維持したまま、上記空間を真空とし密閉してもよい。上記空間を真空とするためには、例えば、転移体3、電極2b、電極2aを含む全体を真空の雰囲気下におけばよい。また、工程(A)および/または工程(B)と、工程(C)とを同時に行ってもよい。例えば、真空の雰囲気下において工程(A)および工程(B)を行い、転移体3と電極2bとの間に形成した空間をそのまま密閉してもよい。その他、工程(A)から工程(B)中の任意の時点で、転移体3、電極2aおよび電極2bの全体を真空の雰囲気下においてもよい。なお、真空とは、上述したように、例えば、1Pa程度以下の状態であればよい。
【0111】
次に、絶縁体4に用いるナノ多孔質体の製造方法の一例を示す。ナノ多孔質体の一例として多孔質シリカの作製方法を示す。
【0112】
多孔質シリカを得る方法は、湿潤ゲルを作製する工程と、作製した湿潤ゲルを乾燥する工程(乾燥工程)とに大きく分類される。
【0113】
最初に、湿潤ゲルを作製する工程について説明する。シリカの湿潤ゲルは、例えば、溶媒中で混合したシリカの原料をゾル−ゲル反応させることによって合成できる。このとき、必要に応じて触媒を用いてもよい。湿潤ゲルの形成過程では、溶媒中において、上記原料が反応しながら微粒子を形成し、形成した微粒子が三次元的にネットワーク化して網目状骨格を形成する。原料および溶媒の組成を選択する、あるいは、必要に応じて触媒、粘度調整剤などを加えることによって、上記骨格の形状(例えば、形成した多孔質シリカにおける空孔の平均径など)を制御することができる。実際の作製工程においては、溶媒中で混合したシリカの原料を基板上に塗布し、塗布した状態で一定時間経過させることによってゲル化させ、シリカの湿潤ゲルを作製してもよい。
【0114】
基板上への塗布方法は特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スクリーン印刷法などを、必要な膜厚、形状などに応じて選択すればよい。
【0115】
湿潤ゲルを作製する際の温度は特に限定されず、例えば、室温近傍であればよい。必要に応じて、用いた溶媒の沸点以下の温度まで加熱してもよい。
【0116】
シリカの原料には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシランなどのアルコキシシラン化合物、および、これらのオリゴマー化合物、あるいは、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどの水ガラス化合物、あるいは、コロイダルシリカなどを単独あるいは混合して用いればよい。
【0117】
溶媒は、原料が溶解してシリカを形成することができれば特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなどの一般的な無機・有機溶媒を単独あるいは混合して用いればよい。
【0118】
触媒には、例えば、水、あるいは、塩酸、硫酸、酢酸などの酸、あるいは、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基を用いればよい。
【0119】
粘度調整剤は、原料を混合した溶媒の粘度を調整できる材料であれば特に限定されず、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、シリコーン油などを用いればよい。
【0120】
なお、多孔質シリカ中に上述した電子放出材を分散させたい場合は、例えば、上記原料と共に電子放出材を溶媒中に混合、分散させた後にゲル化させればよい。
【0121】
次に、湿潤ゲルを乾燥する乾燥工程について説明する。湿潤ゲルを乾燥する方法は特に限定されず、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥などの通常乾燥法、あるいは、超臨界乾燥法、凍結乾燥法などを用いればよい。このとき、乾燥に伴うゲルの収縮を抑制する観点からは、超臨界乾燥法を用いることが好ましい。また、通常乾燥法を用いる場合においても、作製した湿潤ゲルの固相成分表面を撥水処理することによって、乾燥に伴うゲルの収縮を抑制することが可能である。
【0122】
超臨界乾燥法を用いる場合、超臨界乾燥に用いる溶媒には、湿潤ゲルの作製に用いた溶媒をそのまま用いてもよい。あるいは、湿潤ゲルに含まれる溶媒を、超臨界乾燥において取り扱いがより容易な溶媒に予め置換してもよい。置換する溶媒には、超臨界流体として一般的に用いられる溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、二酸化炭素、水などを用いればよい。またこれらの超臨界流体に溶出しやすいアセトン、酢酸イソアミル、ヘキサンなどに湿潤ゲルに含まれる溶媒を予め置換してもよい。
【0123】
超臨界乾燥は、例えば、オートクレーブなどの圧力容器中で行えばよく、超臨界流体としてメタノールを用いる場合、オートクレーブの内部をメタノールの臨界条件である圧力8.09MPa、温度239.4℃以上に保ち、温度一定の状態で圧力を徐々に開放することによって湿潤ゲルの乾燥を行えばよい。二酸化炭素を用いる場合、同様に、圧力7.38MPa、温度31.1℃以上に保ち、温度一定の状態で圧力を徐々に開放することによって乾燥を行えばよい。水を用いる場合は、同様に、圧力22.04MPa、温度374.2℃以上に保ち、温度一定の状態で圧力を徐々に開放することによって乾燥を行えばよい。乾燥に必要な時間は、例えば、超臨界流体によって湿潤ゲル中の溶媒が1回以上入れ替わる時間以上とすればよい。
【0124】
湿潤ゲルを撥水処理した後に乾燥する方法では、撥水処理のための表面処理剤を湿潤ゲルの固相成分の表面に化学反応させた後に乾燥すればよい。湿潤ゲルの空孔内に発生する表面張力を撥水処理によって低減することができるため、乾燥時のゲルの収縮を抑制することができる。
【0125】
表面処理剤には、例えば、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシランなどのハロゲン系シラン処理剤、トリメチルメトシシラン、トリメチルエトキシシランなどのアルコキシ系シラン処理剤、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマーなどのシリコーン系シラン処理剤、ヘキサメチルジシラザンなどのアミン系シラン処理剤、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系処理剤などを用いればよい。その他、上述した表面処理剤と同様の効果が得られる材料であれば、特に限定することなく用いることができる。
【0126】
なお、シリカ以外の無機材料や有機高分子材料などを用いても同様のナノ多孔質体を得ることができる。例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)などのセラミクス形成に一般的に用いられる材料などを用いてもよい。また、上述した方法によってナノ多孔質体を形成した後に、気相合成法などの方法を用いることによって、電子放出材を多孔質体の内部に分散、形成することもできる。
【0127】
(実施例)
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に限定されない。
【0128】
(実施例1)
実施例1では、転移体3としてSrTiO3を用い、図19に示すような熱スイッチ素子1を作製した。電極2aおよび電極2bにはAlを、絶縁体9にはAl23を、電極10にはAuを用いた。実施例1で用いた熱スイッチ素子1の作製方法を図20A〜図20Eに示す。
【0129】
最初に、転移体3であるSrTiO3の結晶上にレジスト20を堆積させた(図20A)。レジストにはポジ型のレジスト材料を用い、一般的なレジスト塗布方法を用いた。次に、スパッタリング法を用いてAl層21を全体に堆積させた(図20B)。次に、リフトオフによって、レジスト20と、Al層21におけるレジスト20上に位置する部分とを除去し、電極2aおよび電極2bを形成した(図20C)。次に、スパッタリング法を用いてAl23からなる絶縁体9を形成した(図20D)。最後に、スパッタリング法を用いてAuからなる電極10を形成し(図20E)、図19に示す熱スイッチ素子1を作製した。電極2aと電極2bとの間の距離d(転移体3の一辺の長さに相当)は約5μm、絶縁体9の厚さは約100nm、電極10の厚さは約2μmとした。また、図19に示す矢印Eから見た転移体3のサイズは、10μm×0.5μmとした。
【0130】
このようにして作製した熱スイッチ素子1に対し、電極10と転移体3との間に電圧を印加することによって転移体3に電気エネルギーを印加し、エネルギーの印加前後における電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の変化を調べた。電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の測定は、ハーマン法を用いて行った。ハーマン法とは、サンプルに電流を印加することによって生じたサンプルの両端の温度差から熱伝導の状態を評価する方法である。より具体的には、熱伝導度は、式STI/ΔTによって求めることができる。Sは熱電能(V/K)、Tはサンプルの平均温度(K)、Iは電流値(A)、ΔT(K)はサンプルの温度差である。なお、特に記載がないかぎり、熱伝導度の測定は室温で行った。以降の実施例においても同様である。
【0131】
その結果、電極10と転移体3との間に電圧を印加しない状態では、電極2aと電極2bとの間の熱伝導度が非常に小さく、測定できない程度であった。その後、電極10と転移体3との間に電圧を印加していくと、数十V程度の電圧を印加した段階で熱伝導性が出現し、電圧の印加によって熱の輸送が制御できる熱スイッチ素子として機能することが確認された。
【0132】
次に、図21に示すような熱スイッチ素子1を作製し、同様に、エネルギーの印加前後における電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の変化を調べた。図21に示す熱スイッチ素子1の作製は、以下のように行った。電極2aとしてNbを0.1原子%〜10原子%の範囲でドープしたSrTiO3結晶(Nb:SrTiO3)を用い、その上にスパッタリング法を用いてSrTiO3からなる転移体3を形成した。転移体3は、450℃〜700℃程度の加熱雰囲気下で形成した。Alからなる電極2b、Al23からなる絶縁体9、Auからなる電極10は、図19に示す熱スイッチ素子1と同様にして形成した。転移体3の厚さ(電極2aおよび電極2b間の距離に相当)は約1μmとし、絶縁体9を介する電極10と転移体3との間の距離は約100nmとした。
【0133】
このようにして作製した熱スイッチ素子1に対し、電極10と転移体3との間に電圧を印加することによって転移体3に電気エネルギーを印加し、エネルギーの印加前後における電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の変化を調べた。
【0134】
その結果、電極10と転移体3との間に電圧を印加しない状態では、電極2aと電極2bとの間の熱伝導度が非常に小さく、測定できない程度であった。その後、電極10と転移体3との間に印加する電圧を増加させていくと、2.5Vの電圧を印加した段階で熱伝導性が出現し、電圧の印加によって熱の輸送が制御できる熱スイッチ素子として機能することが確認された。
【0135】
なお、実施例1では転移体としてSrTiO3を用いたが、その他、LaTiO3、(La,Sr)TiO3、YTiO3、(Sm、Ca)TiO3、(Nd,Ca)TiO3、(Pr,Ca)TiO3、SrTiO3-d(0<d≦0.1)、(Pr1-xCax)MnO3(0<x≦0.5)などを転移体3に用いた場合にも同様の結果を得ることができた。また、GdBaMn26などの式X1BaX2 26(X1は、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の元素であり、X2は、Mnおよび/またはCoである)で示される酸化物や、式(V1-y3 y)Ox(0≦y≦0.5、1.5≦x≦2.5、X3は、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素である)で示される酸化物を用いた場合にも同様の結果を得ることができた。
【0136】
(実施例2)
実施例2では、転移体3としてCrを0.1原子%〜10原子%の範囲でドーピングしたSrTiO3(Cr:SiTiO3)を用い、図22に示すような熱スイッチ素子1を作製した。
【0137】
最初に、基体22としてSrTiO3を用い、スパッタリング法を用いて基体22上にSrRuO3からなる電極2aを形成した。次に、電極2a上にCr:SiTiO3からなる転移体3を形成し、さらにその上にPtからなる電極2bを形成した。転移体3および電極2bの形成にもスパッタリング法を用いた。転移体3および電極2aは、450℃〜700℃程度の加熱雰囲気下で形成した。なお、電極2a、転移体3および電極2bの厚さは、それぞれ、約200nm、約300nmおよび約2μmとした。
【0138】
このようにして作製した熱スイッチ素子1に対し、電極2aと電極2bとの間に電圧を印加することによって転移体3に電気エネルギーを印加し、エネルギーの印加前後における電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の変化を調べた。熱伝導度の測定は実施例1と同様に行った。
【0139】
その結果、電極2aと電極2bとの間に電圧を印加しない状態では、電極2aと電極2bとの間の熱伝導度が非常に小さく、測定できない程度であった。その後、電極2aと電極2bとの間に印加する電圧を増加させていくと、0.5V程度の電圧を印加した段階で熱伝導性が出現し、電圧の印加によって熱の輸送が制御できる熱スイッチ素子として機能することが確認された。また、熱スイッチ素子1の熱伝導性にヒステリシス性が見られ、熱伝導性が出現した後に電極2aと電極2bとの間に印加する電圧を0にした場合でも、電極2aと電極2bとの間の熱伝導性はそのまま維持された。その後、最初に印加した電圧と逆方向の電圧を電極間に印加することにより、電極2aと電極2bとの間の熱伝導性は消失した。このことから、転移体3に用いる材料を選択することによって、不揮発性を有する熱スイッチ素子が実現可能であることがわかった。不揮発性の熱スイッチ素子を用いれば、より消費電力が削減された熱デバイスを構築することができる。
【0140】
なお、実施例2では転移体としてCr:SrTiO3を用いたが、その他、SrZrO3、(La,Sr)TiO3、Y(Ti、V)O3、SrTiO3-d(0<d≦0.1)、(Pr1-xCax)MnO3(0<x≦0.5)などを転移体3に用いた場合にも同様の結果を得ることができた。また、NdBaMn26などの式X1BaX2 26(X1は、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の元素であり、X2は、Mnおよび/またはCoである)で示される酸化物や、式(V1-y3 y)Ox(0≦y≦0.5、1.5≦x≦2.5、X3は、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素である)で示される酸化物を用いた場合にも同様の結果を得ることができた。
【0141】
(実施例3)
実施例3では、転移体3としてSrTiO3とLaSrMnO3との積層体を用い、図23に示すような熱スイッチ素子1を作製した。
【0142】
基体22には上述のNb:SrTiO3を用い、基体22上にレーザーアブレーション法を用いて以下に示す薄膜を堆積した。堆積は、450℃〜700℃の加熱中において、10mmTorr〜500mmTorrの酸素雰囲気下にて行った。最初に、基体22上にSrTiO3(厚さ50nm)を配置し、さらにその上にLaSrMnO3(厚さ100nm)を配置して転移体3とした。次に、転移体3上にSrRuO3(厚さ10nm)を配置した。次に、SrRuO3上にスパッタリング法を用いてPt(厚さ240nm)を配置した。スパッタリング時の温度は400℃とした。次に、SrRuO3とPtとの積層体を図23に示すように微細加工し、電極2aおよび電極2bを形成した。その後、絶縁体9としてAl23を電極2aおよび電極2bの表面からの厚さが80nmとなるように配置し、最後に、電極10としてAu(厚さ900nm)を配置した。なお、電極10は、転移体3に印加する磁界の効率を向上させるために、複数の電極(計15本、図23ではその一部のみを記載)に分割して配置した。
【0143】
このようにして作製した熱スイッチ素子1に対し、電極10に電流11を流すことによって転移体3に磁界12を印加し、磁気エネルギーの印加前後における電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の変化を調べた。熱伝導度の測定は実施例1と同様に行った。また、複数の電極10にはすべて同方向に電流を流した。
【0144】
その結果、電極10に電流を流さない状態では、電極2aと電極2bとの間の熱伝導度が非常に小さく、測定できない程度であった。その後、電極10に流す電流を増加させていくと、電極10一本あたりの電流が2.5mA程度の電流を流した段階で熱伝導性が出現し、磁界の印加によって熱の輸送が制御できる熱スイッチ素子として機能することが確認された。
【0145】
なお、実施例3では転移体として(La,Sr)MnO3を用いたが、その他、(La,Sr)3Mn27、X4 2FeReO6、X4 2FeMoO6、(La,X42CuO4、(Nd,Ce)2CuO4、(La,X42NiO4、LaMnO3、YMnO3、(Sm、Ca)MnO3、(Nd,Ca)MnO3、(Pr,Ca)MnO3、(La,X4)FeO3、YFeO3、(Sm、X4)FeO3、(Nd,X4)FeO3、(Pr,X4)FeO3、(La,X4)CoO3、(Y,X4)VO3、(Bi,X4)MnO3、SrTiO3-d(0<d≦0.1)などを転移体3に用いた場合にも同様の効果を得ることができた。ただし、X4は、Sr、CaおよびBaから選ばれる少なくとも1種の元素である。また、SmBaMn26などの式X1BaX2 26(X1は、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の元素であり、X2は、Mnおよび/またはCoである)で示される酸化物や、式(V1-y3 y)Ox(0≦y≦0.5、1.5≦x≦2.5、X3は、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素である)で示される酸化物を用いた場合にも同様の結果を得ることができた。
【0146】
(実施例4)
実施例4では、図14Bに示した構成を含む熱スイッチ素子を作製した。
【0147】
基体としてMgOを用い、基体上にレーザーアブレーション法を用いて以下に示す薄膜を積層した。積層は、450℃〜700℃の加熱中において、10mmTorr〜500mmTorrの酸素雰囲気下にて行った。最初に、基体上にITO(Sn−doped In23:厚さ50nm)を積層し、さらにその上に(Pr,Ca)MnO3(厚さ100nm)を積層して転移体3とした。次に、SrRuO3上にスパッタリング法を用いてPt(厚さ240nm)を積層した。スパッタリング時の温度は400℃とした。次に、SrRuO3とPtとの積層体を微細加工し、電極2aおよび電極2bを形成して熱スイッチ素子を作製した。
【0148】
このようにして作製した熱スイッチ素子に対し、基体側からパルスレーザー光(波長532nm)を入射することによって転移体3に光エネルギーを印加し、光エネルギーの印加前後における電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の変化を調べた。熱伝導度の測定は実施例1と同様に行った。
【0149】
その結果、転移体3に光を入射しない状態では、電極2aと電極2bとの間の熱伝導度が非常に小さく、測定できない程度であった。その後、転移体にパルスレーザー光を入射したところ、100フェムト秒の極短パルスを約0.5W照射した段階で熱伝導性が出現し、光の入射によって熱の輸送が制御できる熱スイッチ素子として機能することが確認された。なお、パルスレーザー光の波長を、近赤外領域から可視光領域にかけて変化させた場合においても同様の結果を得ることができた。
【0150】
(実施例5)
実施例5では、図15に示した構成を含む熱スイッチ素子を作製した。
【0151】
基体としてLiTaO3を用い、基体上にマグネトロンスパッタ法を用いて以下に示す薄膜を成膜した。成膜は、450℃〜700℃の加熱中において、10mmTorr〜500mmTorrの酸素−アルゴン混合雰囲気下(分圧比、Ar:O2=1:1)にて行った。最初に、基体上にV23(厚さ50nm)を成膜して転移体3とした。次に、転移体3上にPt(厚さ50nm)を400℃で成膜し、微細加工することによって電極2aおよび電極2bを形成した。次に、電子ビーム蒸着法を用いてNi−Cr合金(厚さ100nm)を成膜して抵抗体15とし、さらにAu(300nm)を成膜して電極10を形成した。
【0152】
このようにして作製した熱スイッチ素子に対し、電極10に電流を流すことによって抵抗体15を発熱させ、発生した熱を転移体3に印加した。このようにして熱エネルギーの印加前後における電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の変化を調べた。熱伝導度の測定は実施例1と同様に行った。
【0153】
その結果、電極10に電流を流さない状態、即ち、抵抗体15が発熱していない状態では、電極2aと電極2bとの間の熱伝導度が非常に小さく、測定できない程度であった。その後、電極10に流す電流を増加させていくと、約4mA程度の電流を流した段階で熱伝導性が出現し、熱の印加によって熱の輸送が制御できる熱スイッチ素子として機能することが確認された。
【0154】
なお、実施例5では転移体としてV23を用いたが、その他、VOx(1.5≦x≦2.5)、Ni(S,Se)2、EuNiO3、SmNiO3、(Y,X4)VO3、SrTiO3-d(0<d≦0.1)、(Pr1-xCax)MnO3(0<x≦0.5)などを転移体3に用いた場合にも同様の結果を得ることができた。ただし、X4は、Sr、CaおよびBaから選ばれる少なくとも1種の元素である。また、また、式X1BaX2 26(X1は、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の元素であり、X2は、Mnおよび/またはCoである)で示される酸化物や、式(V1-y3 y)Ox(0≦y≦0.5、1.5≦x≦2.5、X3は、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素である)で示される酸化物を用いた場合にも同様の結果を得ることができた。
【0155】
(実施例6)
実施例6では、図24に示すような熱スイッチ素子1を作製した。
【0156】
変位体16として圧電材料の1種であるLiTaO3(厚さ0.8μm)を用い、変位体16上にスパッタリング法を用いて以下に示す薄膜を配置した。各層の配置は、200℃〜500℃の加熱中において、0.1mmTorr〜100mmTorrのアルゴン−窒素混合雰囲気下(分圧比、Ar:N2=3:2)にて行った。最初に、変位体16上にLaVO3(厚さ100nm)を配置して転移体3とした。次に、転移体3上にAl(厚さ1000nm)を配置して電極2aおよび電極2bとした。さらに、変位体16における転移体3に接している面とは反対側の面に、Al(厚さ1000nm)を配置して電極10とした。電極10は、フォトリソグラフィックの手法を用いて、図24に示すような櫛形とした。櫛形の電極10同士の間隔は2μmとした。
【0157】
このようにして作製した熱スイッチ素子1に対し、電極10を用いて変位体16に電圧を印加することによって変位体16に歪みを発生させ、発生した歪みに基づく圧力を転移体3に印加した。このようにして力学エネルギーの印加前後における電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の変化を調べた。熱伝導度の測定は実施例1と同様に行った。
【0158】
その結果、転移体16に電圧を印加しない状態では、電極2aと電極2bとの間の熱伝導度が非常に小さく、測定できない程度であった。その後、転移体16に印加する電圧を増加させていくと、0.5V程度の電圧を印加した段階で熱伝導性が出現し、力学エネルギーの1種である圧力の印加によって熱の輸送が制御できる熱スイッチ素子として機能することが確認された。
【0159】
なお、実施例6では転移体としてLaVO3を用いたが、その他、(Y,X4)MnO3、(La,X4)MnO3、(Bi,X4)MnO3、(Bi,X4)TiO3、(Bi,X43Ti27、(Pb,X4)TiO3、SrTiO3-d(0<d≦0.1)、(Pr1-xCax)MnO3(0<x≦0.5)などを転移体3に用いた場合にも同様の結果を得ることができた。ただし、X4は、Sr、CaおよびBaから選ばれる少なくとも1種の元素である。また、SmBaMn26などの式X1BaX2 26(X1は、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の元素であり、X2は、Mnおよび/またはCoである)で示される酸化物や、式(V1-y3 y)Ox(0≦y≦0.5、1.5≦x≦2.5、X3は、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素である)で示される酸化物を用いた場合にも同様の結果を得ることができた。また、実施例6では、変位体16としてLiTaO3を用いたが、その他、LiNbO3や(Ba,Sr)TiO3、Pb(Zr,Ti)O3などを用いた場合にも同様の結果を得ることができた。
【0160】
(実施例7)
実施例7では、図2に示すような絶縁体4を含む熱スイッチ素子1を作製した。
【0161】
最初にSrTiO3からなる基体上に、SrRuO3(厚さ200nm)を配置して電極2aを形成した。次に、電極2a上にCrを0.1原子%〜10原子%の範囲でドープしたSrTiO3(Cr:SrTiO3、厚さ300nm)を配置して転移体3を形成した。電極2aおよび転移体3の形成にはレーザーアブレーション法(基板温度450℃〜700℃の範囲)を用いた。
【0162】
次に、転移体3上に、上述したゾル−ゲル法を用いて多孔質シリカ層(厚さ約0.1μm)を配置し絶縁体4とした。以下に多孔質シリカ層の具体的な作製方法を示す。
【0163】
まず、シリカ原料を含んだ溶液として、テトラメトキシシランとエタノールとアンモニア水溶液(0.1規定)とをモル比1:3:4の割合で混合した溶液を調製した。溶液には電子放出材として平均粒径10nm程度のダイヤモンド粒子を分散させた。上記溶液を撹拌処理した後、塗布に適当な粘度となったところで、転移体3上に厚さが約0.1μmとなるようにスピンコート塗布した。その後、乾燥により上記塗布したシリカゾルを重合、ゲル化させた。形成したシリカゲルを高分解能走査型電子顕微鏡により評価したところ、図3に示すようなSi−O−Si結合の三次元的なネットワークからなる湿潤ゲル構造が形成されていることが確認できた。また、電子放出材であるダイヤモンド粒子が均一に分散していることも確認できた。
【0164】
次に、上記のようにして作製した膨潤ゲルをエタノールで洗浄、溶媒置換した後に、二酸化炭素を用いた超臨界乾燥を行うことによって多孔質シリカ層を作製した。超臨界乾燥は、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過した後に、圧力を徐々に開放して大気圧とし、後に室温まで降温させて行った。次に、乾燥した試料を窒素雰囲気下、400℃でアニール処理することによって、多孔質シリカ層への吸着物質を除去した。
【0165】
なお、作製した多孔質シリカ層の空孔率は、ブルナウアー・エメット・テラー法(BET法)を用いて評価したところ、約92%であった。また、同様の手法により多孔質シリカ層の平均空孔径を見積もったところ、約20nmであった。
【0166】
このようにして作製した電極2a、転移体3および絶縁体4の積層体を水素雰囲気下、400℃でアニール処理した。このようなアニール処理によって、多孔質シリカ層に含まれるダイヤモンド粒子の表面が水素化され、電子放出材としてダイヤモンド粒子をより活性化させることができる。
【0167】
最後に、スパッタリング法を用いて、絶縁体4上にPt(厚さ2000nm)を配置し、電極2bを形成した。
【0168】
このようにして作製した熱スイッチ素子1に対し、電極2aと電極2bとの間に電圧を印加することによって転移体3に電気エネルギーを印加し、エネルギーの印加前後における電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の変化を調べた。熱伝導度の測定は実施例1と同様に行った。
【0169】
その結果、電極2aと電極2bとの間に電圧を印加しない状態では、電極2aと電極2bとの間の熱伝導度が非常に小さく、測定できない程度であった。その後、電極2aと電極2bとの間に印加する電圧を増加させていくと、5V程度の電圧を印加した段階で熱伝導性が出現し、電圧の印加によって熱の輸送が制御できる熱スイッチ素子として機能することが確認された。
【0170】
また、熱伝導性が出現した際の両電極間の放射電流密度を測定したところ数10mA/cm2の値が得られた。さらに、熱スイッチ素子1の熱伝導性を維持したまま、電極2aを30℃に保ったAuと接触させた上で電極2aの温度変化を測定したところ、電極2aの温度が約30度低下する、即ち約0℃となる現象が観察され、絶縁体4を介する熱スイッチ素子および冷却素子としての機能が確認された。
【0171】
さらに実施例7では、図4に示すような絶縁体4と電極8とを含む熱スイッチ素子1を作製し、同様の評価を行った。
【0172】
最初にSrTiO3からなる基体上に、SrRuO3(厚さ200nm)を配置して電極2aを形成した。次に、電極2a上にCrを0.1原子%〜10原子%の範囲でドープしたSrTiO3(Cr:SrTiO3、厚さ300nm)を配置して転移体3を形成した。次に、転移体3上に(Sr,Ca,Ba)CO3(厚さ50nm)を配置して電極8を形成し、さらにその上に多孔質シリカ層(厚さ0.1μm)を上記と同様に配置して絶縁体4を形成した。電極2a、転移体3および電極8の形成にはレーザーアブレーション法(基板温度450℃〜700℃の範囲)を用いた。最後に、スパッタリング法を用いて、絶縁体4上にPt(厚さ2000nm)を配置して電極2bとし、図4に示すような熱スイッチ素子1を作製した。
【0173】
このようにして作製した熱スイッチ素子1に対し、電極2aと電極2bとの間に電圧を印加することによって転移体3に電気エネルギーを印加し、エネルギーの印加前後における電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の変化を調べた。熱伝導度の測定は実施例1と同様に行った。
【0174】
その結果、電極2aと電極2bとの間に電圧を印加しない状態では、電極2aと電極2bとの間の熱伝導度が非常に小さく、測定できない程度であった。その後、電極2aと電極2bとの間に印加する電圧を増加させていくと、1.8V程度の電圧を印加した段階で熱伝導性が出現し、電圧の印加によって熱の輸送が制御できる熱スイッチ素子として機能することが確認された。電極8を配置しない場合において5V程度の電圧を印加することが必要であったことから考えると、電極8を配置することによって2倍以上の効率向上がなされたことがわかった。
【0175】
また、熱スイッチ素子1の熱伝導性を維持したまま、電極2aを30℃に保ったAuと接触させた上で電極2aの温度変化を測定したところ、電極2aの温度が低下する現象が観察され、絶縁体4を介する熱スイッチ素子および冷却素子としての機能が確認された。
【0176】
なお、実施例7では厚さが約0.1μmの多孔質シリカ層を絶縁体4として形成したが、絶縁体4の厚さが0.05μm〜10μm程度の範囲においても同様の結果を得ることができた。ただし、絶縁体4としての最適な厚さは、素子の構造、用いる材料などによって変化すると考えられるため、絶縁体4の厚さは上記範囲に限定されない。
【0177】
また、実施例7では電極8として(Sr,Ca,Ba)CO3を用いたが、その他、(Sr,Ca,Ba)−O、Cs−O、Cs−Sb、Cs−Te、Cs−F、Rb−O、Rb−Cs−O、Ag,−Cs−Oなどを用いた場合にも同様の結果を得ることができた。
【0178】
(実施例8)
実施例8では、転移体3としてCa3Co49を用い、図22に示すような熱スイッチ素子1を作製した。
【0179】
最初に、基体22としてサファイア(Al23)を用い、スパッタリング法を用いて基体22上にNaCo26からなる電極2aを形成した。次に、電極2a上にCa3Co49からなる転移体3を形成し、さらにその上にNaCo26からなる電極2bを形成した。転移体3および電極2bの形成にもスパッタリング法を用いた。転移体3および電極2aは、450℃〜850℃程度の加熱雰囲気下で形成した。なお、電極2a、転移体3および電極2bの厚さは、それぞれ、約200nm、約300nmおよび約2μmとした。
【0180】
このようにして作製した熱スイッチ素子1に対し、電極2aと電極2bとの間に電圧を印加することによって転移体3に電気エネルギーを印加し、エネルギーの印加前後における電極2aと電極2bとの間の熱伝導度の変化を調べた。熱伝導度の測定は実施例1と同様に行った。
【0181】
その結果、電極2aと電極2bとの間に電圧を印加しない状態では、電極2aと電極2bとの間の熱伝導度が非常に小さく、測定できない程度であった。その後、電極2aと電極2bとの間に印加する電圧を増加させていくと、0.5V程度の電圧を印加した段階で熱伝導性が出現し、電圧の印加によって熱の輸送が制御できる熱スイッチ素子として機能することが確認された。また、熱スイッチ素子1の熱伝導性にヒステリシス性が見られ、熱伝導性が出現した後に電極2aと電極2bとの間に印加する電圧を0にした場合でも、電極2aと電極2bとの間の熱伝導性はそのまま維持された。その後、最初に印加した電圧と逆方向の電圧を電極間に印加することにより、電極2aと電極2bとの間の熱伝導性は消失した。このことから、転移体3に用いる材料を選択することによって、不揮発性を有する熱スイッチ素子が実現可能であることがわかった。不揮発性の熱スイッチ素子を用いれば、より消費電力が削減された熱デバイスを構築することができる。
【0182】
なお、実施例8では転移体3としてCa3Co49を用いたが、式CuX52(X5は、Al、In、GaおよびFeから選ばれる少なくとも1種の元素である)で示されるデラフォサイトなどを用いた場合にも同様の結果を得ることができた。
【0183】
本発明は、その意図および本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによって示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
以上説明したように、本発明によれば、従来とは全く異なる構成を有し、エネルギーを印加することによって熱の輸送を制御できる熱スイッチ素子と、その製造方法とを提供することができる。
【0185】
本発明の熱スイッチ素子は、情報端末などに使用されているCPUなどの半導体チップの放熱部や、熱機関として代表的な製品である冷蔵・冷凍庫、エアコンディショナーなどの熱伝達部、熱配線における熱流制御部など、熱の輸送を行う部分であれば特に限定されずに用いることができる。その際、熱の輸送を制御する必要がある部分だけではなく、制御する必要がなく単に熱を輸送する部分にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1A】本発明の熱スイッチ素子の一例を示す模式図である。
【図1B】本発明の熱スイッチ素子の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の熱スイッチ素子の別の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の熱スイッチ素子に用いることができる絶縁体の構造の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の熱スイッチ素子のまた別の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の熱スイッチ素子のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図7A】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法の別の一例を示す模式図である。
【図7B】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法の別の一例を示す模式図である。
【図8A】本発明の熱スイッチ素子に用いることができる磁束ガイドの一例を示す模式図である。
【図8B】本発明の熱スイッチ素子に用いることができる磁束ガイドの一例を示す模式図である。
【図9】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法のまた別の一例を示す模式図である。
【図10A】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図10B】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図11】本発明の熱スイッチ素子に用いることができる磁束ガイドの別の一例を示す模式図である。
【図12A】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図12B】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図13】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図14A】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図14B】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図15】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図16】本発明の熱スイッチ素子にエネルギーを印加する方法のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図17】本発明の熱スイッチ素子の製造方法の一例を示す模式図である。
【図18A】本発明の熱スイッチ素子の製造方法の別の一例を示す模式工程図である。
【図18B】本発明の熱スイッチ素子の製造方法の別の一例を示す模式工程図である。
【図18C】本発明の熱スイッチ素子の製造方法の別の一例を示す模式工程図である。
【図18D】本発明の熱スイッチ素子の製造方法の別の一例を示す模式工程図である。
【図19】本発明の熱スイッチ素子のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図20A】図19に示す熱スイッチ素子の製造方法の一例を示す模式工程図である。
【図20B】図19に示す熱スイッチ素子の製造方法の一例を示す模式工程図である。
【図20C】図19に示す熱スイッチ素子の製造方法の一例を示す模式工程図である。
【図20D】図19に示す熱スイッチ素子の製造方法の一例を示す模式工程図である。
【図20E】図19に示す熱スイッチ素子の製造方法の一例を示す模式工程図である。
【図21】本発明の熱スイッチ素子のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図22】本発明の熱スイッチ素子のさらにまた別の一例を示す模式図である。
【図23】本発明の熱スイッチ素子のさらにまた別の一例と、上記一例におけるエネルギーの印加方法の一例を示す模式図である。
【図24】本発明の熱スイッチ素子のさらにまた別の一例を示す模式図である。

Claims (36)

  1. 第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された転移体とを含み、
    前記転移体は、エネルギーを印加することによって電子相転移する材料を含み、
    前記転移体への前記エネルギーの印加によって、前記第1の電極と前記第2の電極との間の熱伝導度が変化する熱スイッチ素子。
  2. 前記エネルギーの印加によって、前記印加の前よりも前記第1の電極と前記第2の電極との間を熱が移動しやすい状態になる請求項1に記載の熱スイッチ素子。
  3. 前記エネルギーの印加によって、前記転移体の電子熱伝導度が変化する請求項1に記載の熱スイッチ素子。
  4. 前記エネルギーの印加によって、前記転移体が絶縁体−金属転移する請求項1に記載の熱スイッチ素子。
  5. 前記エネルギーの印加によって、前記印加の前よりも前記転移体を熱電子が移動しやすい状態になる請求項1に記載の熱スイッチ素子。
  6. 前記印加するエネルギーが、電気エネルギー、光エネルギー、力学エネルギー、磁気エネルギーおよび熱エネルギーから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の熱スイッチ素子。
  7. 前記印加するエネルギーが電気エネルギーであって、
    前記エネルギーの印加が、前記転移体への電子またはホールの注入、あるいは、前記転移体への電子またはホールの誘起によって行われる請求項6に記載の熱スイッチ素子。
  8. 前記印加するエネルギーが電気エネルギーであって、
    前記エネルギーの印加が、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加することによって行われる請求項6に記載の熱スイッチ素子。
  9. 前記電子相転移する材料が、式AxDyOzで示される組成を有する酸化物を含む請求項1に記載の熱スイッチ素子。
    ただし、上記式において、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Sc、Yおよび希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Dは、IIIa族、IVa族、Va族、VIa族、VIIa族、VIII族およびIb族から選ばれる少なくとも1種の遷移元素であり、Oは酸素であり、x、yおよびzは正の数である。
  10. 前記式AxDyOzにおけるx、yおよびzが、以下の関係を満たす数値である請求項9に記載の熱スイッチ素子。
    x=n+2
    y=n+1
    z=3n+4
    ただし、nは、0、1、2または3である。
  11. 前記式AxDyOzにおけるx、yおよびzが、以下の関係を満たす数値である請求項9に記載の熱スイッチ素子。
    x=n+1
    y=n+1
    z=3n+5
    ただし、nは、1、2、3または4である。
  12. 前記式AxDyOzにおけるx、yおよびzが、以下の関係を満たす数値である請求項9に記載の熱スイッチ素子。
    x=n
    y=n
    z=3n
    ただし、nは、1、2または3である。
  13. 前記式AxDyOzにおけるx、yおよびzが、以下の関係を満たす数値である請求項9に記載の熱スイッチ素子。
    x=n+1
    y=n
    z=4n+1
    ただし、nは、1または2である。
  14. 前記式AxDyOzにおけるx、yおよびzが、以下の関係を満たす数値である請求項9に記載の熱スイッチ素子。
    x=0または1
    y=0または1
    z=1
    ただし、xおよびyから選ばれるいずれか一方が0である。
  15. 前記式AxDyOzにおけるx、yおよびzが、以下の関係を満たす数値である請求項9に記載の熱スイッチ素子。
    x=0、1または2
    y=0、1または2
    ただし、xおよびyから選ばれるいずれか一方が0であり、
    zは、
    xが0のとき、yの値に1を加えた値であり、
    yが0のとき、xの値に1を加えた値である。
  16. 前記式AxDyOzにおけるx、yおよびzが、以下の関係を満たす数値である請求項9に記載の熱スイッチ素子。
    x=0または2
    y=0または2
    z=5
    ただし、xおよびyから選ばれるいずれか一方が0である。
  17. 前記電子相転移する材料が、モット絶縁体および磁性半導体から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の熱スイッチ素子。
  18. 第1の絶縁体をさらに含み、
    前記転移体と前記第2の電極との間に前記第1の絶縁体が配置されている請求項1に記載のスイッチ素子。
  19. 第3の電極をさらに含み、
    前記転移体と前記第1の絶縁体との間に前記第3の電極が配置されている請求項18に記載のスイッチ素子。
  20. 前記転移体への前記エネルギーの印加を行う第4の電極をさらに含む請求項1に記載の熱スイッチ素子。
  21. 第2の絶縁体をさらに含み、
    前記転移体と前記第4の電極との間に前記第2の絶縁体が配置されている請求項20に記載の熱スイッチ素子。
  22. 前記エネルギーの印加が、前記第4の電極と前記転移体との間に電圧を印加することによって行われる請求項20に記載の熱スイッチ素子。
  23. 前記エネルギーの印加が、前記第4の電極に電流を流すことによって行われる請求項20に記載の熱スイッチ素子。
  24. 前記エネルギーの印加が、前記第4の電極に電流を流して発生させた磁界を転移体に導入することによって行われる請求項23に記載の熱スイッチ素子。
  25. 前記第1の絶縁体が真空である請求項18に記載の熱スイッチ素子。
  26. 前記第1の絶縁体がトンネル絶縁体である請求項18に記載の熱スイッチ素子。
  27. 前記第1の絶縁体が多孔質構造を有する絶縁材料からなる請求項18に記載の熱スイッチ素子。
  28. 前記絶縁材料が電子放出材を含む請求項27に記載の熱スイッチ素子。
  29. 前記第1の電極および前記第2の電極から選ばれる一方の電極から他方の電極へと熱を伝導する冷却素子として機能する請求項1に記載の熱スイッチ素子。
  30. 第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された転移体と、前記転移体と前記第2の電極との間に配置された絶縁体とを含み、
    前記転移体は、エネルギーを印加することによって電子相転移する材料を含み、
    前記絶縁体が真空であり、
    前記転移体への前記エネルギーの印加によって、前記第1の電極と前記第2の電極との間の熱伝導度が変化する熱スイッチ素子の製造方法であって、
    (I)転移体および第1の電極を含む積層体と、第2の電極とを、前記第2の電極と前記転移体とが面するように所定の間隔で配置することによって、前記第2の電極と前記転移体との間に空間を形成する工程と、
    (II)前記空間を真空に保持することによって、前記第2の電極と前記転移体との間に絶縁体を形成する工程とを含む熱スイッチ素子の製造方法。
  31. 前記工程(I)が、
    (I−a)前記第2の電極および前記積層体から選ばれる少なくとも1つを移動するように圧電体を配置する工程と、
    (I−b)前記配置した圧電体を変形させることによって、前記第2の電極と前記転移体とを所定の距離で配置し、前記第2の電極と前記転移体との間に空間を形成する工程とを含む請求項30に記載の熱スイッチ素子の製造方法。
  32. 第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された転移体と、前記転移体と前記第2の電極との間に配置された絶縁体とを含み、
    前記転移体は、エネルギーを印加することによって電子相転移する材料を含み、
    前記絶縁体が真空であり、
    前記転移体への前記エネルギーの印加によって、前記第1の電極と前記第2の電極との間の熱伝導度が変化する熱スイッチ素子の製造方法であって、
    (i)転移体と第2の電極とを所定の間隔で配置することによって、前記第2の電極と前記転移体との間に空間を形成する工程と、
    (ii)前記空間を真空に保持することによって、前記第2の電極と前記転移体との間に絶縁体を形成する工程と、
    (iii)前記転移体が前記第2の電極と第1の電極との間に配置されるように、前記第1の電極を配置する工程とを含む熱スイッチ素子の製造方法。
  33. 前記工程(i)が、
    (i−a)前記第2の電極および前記転移体から選ばれる少なくとも1つを移動するように圧電体を配置する工程と、
    (i−b)前記配置した圧電体を変形させることによって、前記第2の電極と前記転移体とを所定の間隔で配置し、前記第2の電極と前記転移体との間に空間を形成する工程とを含む請求項32に記載の熱スイッチ素子の製造方法。
  34. 第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された転移体と、前記転移体と前記第2の電極との間に配置された絶縁体とを含み、
    前記転移体は、エネルギーを印加することによって電子相転移する材料を含み、
    前記絶縁体が真空であり、
    前記転移体への前記エネルギーの印加によって、前記第1の電極と前記第2の電極との間の熱伝導度が変化する熱スイッチ素子の製造方法であって、
    (A)第1の電極と、転移体と、前記転移体よりも力学的に破壊しやすい材料を含む中間体と、第2の電極とをこの順序で含む積層体を形成する工程と、
    (B)前記積層体の積層方向に前記積層体を伸長することによって、前記中間体を破壊し、前記破壊した中間体を除去することによって、前記転移体と前記第2の電極との間に空間を形成する工程と、
    (C)前記空間を真空に保持することによって、前記第2の電極と前記転移体との間に絶縁体を形成する工程とを含む熱スイッチ素子の製造方法。
  35. 前記工程(B)が、
    (B−a)前記積層体の少なくとも一方の主面に接するように圧電体を配置する工程と、
    (B−b)前記配置した圧電体を変形させることによって、前記積層体の積層方向に前記積層体を伸長させ、前記中間体を破壊する工程とを含む請求項34に記載の熱スイッチ素子の製造方法。
  36. 前記工程(B)における前記中間体の除去が、前記破壊した中間体に気体を吹き付けることによって行われる請求項34に記載の熱スイッチ素子の製造方法。
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