JP3699597B2 - アルミノ珪酸塩スラリー、硬化性無機質組成物及び無機質硬化体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、土木、建築材料等に使用される無機質硬化体の原料として好適に用いることができるアルミノ珪酸塩スラリー、硬化性無機質組成物及び無機質硬化体に関する。
【0002】
【従来の技術】
無機成形体は、不燃性、無発煙性の建築材料等として有用である。このようなものとしては、例えば、アルカリの存在下で熱により硬化する無機成形体が提案されている。特開平4−59648号公報には、アルカリ金属珪酸塩水溶液と、メタカオリン、コランダム、ムライト製造時に発生する集塵装置の灰、フライアッシュ等のアルカリ反応性無機固体成分とを配合し、更に、充填材、有機ベントナイト等の混和材を混入することにより、建築材料として有用な無機成形体を製造する技術が開示されている。また、特開平4−6138号公報には、アルカリ金属珪酸塩水溶液と上述のアルカリ反応性無機固体成分及び充填材とを混練後、型内に注入し、加熱硬化させた無機成形体が開示されている。
【0003】
しかし、このようなアルカリ反応性無機固体成分のうち、安定的かつ安価に供給可能なカオリンやフライアッシュについて検討したところ、カオリンは、結晶性が高いためアルカリとの反応性が不充分であり、良好な無機質成形体を得ることができない。フライアッシュは、産生する発電所により反応性にバラツキがあり、また、反応速度が非常に遅い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、加熱反応性が高く、成形に必要な常温可使時間が得られ、かつ、強度及び耐水性に優れた無機成形体を得ることができるアルミノ珪酸塩スラリー、該アルミノ珪酸塩スラリーを含む硬化性無機質組成物及び該硬化性無機質組成物を用いた無機質硬化体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のアルミノ珪酸塩スラリーの製造方法は、水酸化アルミニウム又はAl2O3−SiO2系粉体から選ばれる一種以上の粉体に機械的エネルギーを作用させて得られる活性無機質粉体(a)、及び、アルカリ金属水溶液(b)を混合して無機質粉体のアルカリ懸濁液(c)を得、次いで、上記無機質粉体のアルカリ懸濁液(c)とアルカリ金属珪酸塩(d)を混合することを特徴とする。
【0006】
本発明の硬化性無機質組成物は、上記の製造方法より得られたアルミノ珪酸塩スラリー、及び、Al2O3−SiO2系粉体からなることを特徴とする。
【0007】
以下、本発明のアルミノ珪酸塩スラリーの製造方法について詳述する。
本発明のアルミノ珪酸塩スラリーを製造する方法は、水酸化アルミニウム又はAl2O3−SiO2系粉体から選ばれる一種以上の粉体に機械的エネルギーを作用させて得られる活性無機質粉体(a)、及び、アルカリ金属水溶液(b)を混合して無機質粉体のアルカリ懸濁液(c)を、まず得る。
【0008】
上記活性無機質粉体(a)を製造するために用いられる水酸化アルミニウムは、組成式Al2 O3 ・3H2 Oで表されるギブサイト、バイヤライト、ノルドストランダイト、組成式Al2 O3 ・H2 Oで表されるベーマイト、ダイアスポア、又は、組成式Al2 O3 ・1/5H2 Oで表されるトーダイトを指す。
【0009】
上記Al2 O3 −SiO2 系粉体としては、例えば、カオリン、ムライト、ばん土、けつ岩、フライアッシュ、白土、焼成汚泥、スラグ、その他カオリン以外の粘土鉱物などが挙げられる。これらのうち、カオリンが特に好ましい。カオリンは、カオリン鉱物を50重量%以上含有する無機質粉体である。上記カオリン鉱物は、2−八面体型の1:1層状の珪酸塩からなる粘土鉱物であって、Al2 Si2 O5 (OH)4 の化学式で示される。このようなものとしては特に限定されず、例えば、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト等の鉱物が挙げられる。また、カオリン鉱物の層間に水分子を含んだハロイサイトであってもよい。
【0010】
上記カオリンは、上記カオリン鉱物以外に、例えば、雲母、タルク、スメクタイト、アロフェン、イモゴライト等の粘土鉱物;α―クオーツ等のシリカ鉱物;長石;沸石等の一般に粘土中に含まれる鉱物を含んでいてもよいが、上記カオリン鉱物の含有量が50重量%以上のものであることが好ましい。50重量%未満であると、アルカリとの反応性が劣る。より好ましくは、60〜100重量%である。
【0011】
上記水酸化アルミニウム及びAl2 O3 −SiO2 系粉体の平均粒径は特に限定されないが、機械的エネルギーの有効利用の観点から、0.1〜1000μmが好ましい。より好ましくは、0.1〜100μmである。
【0012】
上記活性無機質粉体(a)を得るための機械的エネルギーとしては特に限定されず、例えば、圧縮力、せん断力、衝撃力等によるエネルギーが挙げられる。
上記機械的エネルギーを作用させる方法としては特に限定されず、粉砕を目的として一般的に使用される粉砕機を用いて行うことができる。このような粉砕機としては、例えば、衝撃、摩擦、圧縮、せん断等が複合したボールミル、振動ミル、遊星ミル、媒体攪拌型ミル等のボール媒体ミル;ローラーミル;乳鉢等が挙げられる。また、衝撃、摩砕が主であるジェット粉砕機を使用することも可能である。これらのうち、機構的に上記粉体に有効に機械的エネルギーを付与することが可能であるので、ボール媒体型のミルが好ましい。
【0013】
上記粉砕に際しては、セメントクリンカー、珪砂、石灰石等の粉砕時に通常使用される粉砕助材を使用することもできる。上記粉砕助材としては、例えば、メチルアルコール等のアルコール類、トリエタノールアミン等のエタノールアミン類等の液体系のもの;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム等の固体系のもの;アセトン蒸気等の気体系のもの等が挙げられる。
【0014】
上記機械的エネルギーは、粉砕装置に投入した電力を処理原料の単位重量当たりで表して、0.1〜30kwh/kgが好ましい。0.1kwh/kg未満であると、結晶構造の変性が不充分であるのでアルカリとの反応性がほとんどなくなり、30kwh/kgを超えると、粉砕装置への過大負荷、媒体としてのボールや容器の過度の磨耗、処理粉体中への不純物の混入、コスト等の生産性等の各種問題が生じ易くなる。より好ましくは、0.5〜20kwh/kgであり、更に好ましくは、0.5〜10kwh/kgである。
【0015】
本発明において、アルカリ金属水溶液(b)とは、リチウム、ナトリウム又はカリウム水溶液を指す。
【0016】
上記活性無機質粉体(a)及びアルカリ金属水溶液(b)を混合して無機質粉体のアルカリ懸濁液(c)を得るに際して、上記アルカリ金属水溶液(b)の濃度としては、該水溶液を保管する際の温度における飽和溶解度以下の濃度が好ましい。飽和溶解度を超えると沈殿を生じ、品質にバラツキを生じる原因となる。
好ましいアルカリ金属水溶液(b)の濃度は、1重量%〜飽和溶解度である。
【0017】
無機質粉体のアルカリ懸濁液(c)を得る際のアルカリ金属水溶液(b)と活性無機質粉体(a)の混合割合は、アルカリ金属水溶液(b)100重量部に対して活性無機質粉体(a)0.5〜300重量部が好ましく、1〜100重量部がより好ましい。
【0018】
上記の混合には、一般に、固液の混合、攪拌に使用される装置が適用できる。
例えば、撹拝機、ミキサー、スターラー、ボールミル、ブレンダー等が使用できる。混合時間は、混合・攪拌装置の能力にもよるが、1分〜2時間が好ましい。混合時に100℃以下に加熱してもよい。
【0019】
得られた、無機質粉体のアルカリ懸濁液(c)は、乾燥しないような環境下であれば、貯蔵してもよい。
【0020】
本発明に係るアルミノ珪酸塩スラリーを製造するには、上記無機質粉体のアルカリ懸濁液(c)を得た後、次いで、上記無機質粉体のアルカリ懸濁液(c)とアルカリ金属珪酸塩(d)を混合する。
【0021】
上記アルカリ金属珪酸塩(d)は、M2 O・nSiO2 で表される。Mはリチウム、ナトリウム、カリウムを指し、nは0又は正の整数を指す。上記M2 O・nSiO2 において、nは大きくなると、水と混合してアルカリ金属珪酸塩水溶液とした場合、ゲル化を起こし易く、粘度が急激に上昇するため、アルカリ懸濁液(c)との混合が困難になるので、nは8以下が好ましい。なお、アルカリ金属珪酸塩は単独で用いられても、2種以上が混合して用いられてもよい。
【0022】
上記アルカリ金属珪酸塩(d)は、予め水と混合して水溶液にして使用するのが、分散性が向上するので好ましい。この場合、アルカリ金属珪酸塩の濃度は特に限定されないが、低くなると、得られるアルミノ珪酸塩スラリーを用いて無機質硬化体を製造する際に硬化しないことがあり、高くなると、得られるアルミノ珪酸塩スラリーの粘度が高くなり、アルミノ珪酸塩スラリーを用いて無機質硬化体を製造する際に成形が難しくなることがあるので、1〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。
【0023】
上記無機質粉体のアルカリ懸濁液(c)に対するアルカリ金属珪酸塩(d)の添加量は、多くなっても、少なくなっても、得られるアルミノ珪酸塩スラリーの硬化性が不十分となるので、無機質粉体のアルカリ懸濁液(c)100重量部に対して20〜2000重量部が好ましい。
【0024】
上記アルカリ懸濁液(c)とアルカリ金属珪酸塩(d)の混合には、一般に固液の混合、攪拌に使用される装置が適用できる。例えば、攪拌機、ミキサー、スターラー、ボールミル、ブレンダー等が使用できる。混合時間は、混合・攪拌装置の能力にもよるが、1分〜2時間が好ましい。
【0025】
得られたアルミノ珪酸塩スラリーは、乾燥しないような環境下であれば、貯蔵してもよいが、各種の充填材と混合し、成形原料として使用するのが好ましい。
【0026】
本発明のアルミノ珪酸塩スラリーの状態は、例えば、溶解イオン、ゾル状、ゲル状、懸濁液等、いずれの状態でも構わない。
【0027】
本発明のアルミノ珪酸塩スラリーにおいて、Si/Alのモル比は、小さくなると、Alが過剰となるため、得られる無機質硬化体の強度が低くなり、大きくなると、Alが過少となるため、該スラリーの反応速度が著しく遅くなるので、0.5〜100が好ましく、0.6〜20がより好ましく、0.8〜10が更に好ましい。
【0028】
上記アルミノ珪酸塩スラリーにおいて、スラリー中のAl濃度は、0.01〜4.0mol/スラリーkgが好ましい。Al濃度が0.01mol/スラリーkgより低くなるとAlが過少となるため、該スラリーの反応速度が著しく遅くなり、4.0mol/スラリーkgより高いとAlが過剰となるため、著しく早くゲル化し、成形が非常に困難になる。Al濃度は、0.05〜3.0mol/スラリーkgが好ましく、0.1〜2.0mol/スラリーkgがより好ましい。
【0029】
上記アルミノ珪酸塩スラリーは、加熱反応性及び高品質な無機質形成体を作製できる点から、−Si−O−Al−の結合を有するイオンが存在するのが好ましい。このため、上記アルミノ珪酸塩スラリーは、27AlNMRにより、[Al(H2 O)6 ]3+を基準として化学シフトを測定した際に、50〜75ppmにピークが観測されることが好ましい。
【0030】
本発明のアルミノ珪酸塩スラリーにおいて、固形分濃度が、低くなると、水が過剰となるため、得られる無機質硬化体の強度が低くなり、高くなると、水が過少となるため、該スラリーの成形性が悪化するので、20〜80重量%が好ましく、30〜75重量%がより好ましく、40〜70重量%が更に好ましい。
【0031】
また、本発明に係るアルミノ珪酸塩スラリーは、上記した方法以外に例えば、アルミン酸塩とアルカリ珪酸塩水溶液を混合し作製する方法を用いてもよい。ここでいうアルミン酸塩とは、水酸化アルミニウムを水酸化アルカリ等で溶かした溶液中の化学種、及び、それから得られる固体の総称であり、一般式xM2O・yAl2O3・zH2Oで表される。ここで、Mは、Na、K又はLiを示す。
【0032】
以下、本発明の硬化性無機質組成物について詳述する。
本発明の硬化性無機質組成物は、上記のアルミノ珪酸塩スラリー、及び、Al2 O3 −SiO2 系粉体からなることを特徴とする。
【0033】
上記Al2 O3 −SiO2 系粉体としては、前述のアルミノ珪酸塩スラリーの製造に使用されるもののいずれも使用可能であるが、これらのうち特に非晶質Al2 O3 −SiO2 系粉体が好ましい。
【0034】
上記非晶質Al2 O3 −SiO2 粉体とは、X線回折法において非晶質相を観測することができ、かつ、27Al MAS NMRにて酸素配位数5又は6のAlが観測されるAl2 O3 −SiO2 系粉体をさす。組成としてはAl2 O3 が20重量%以上であるものが好ましい。このような粉体としては、例えば、メタカオリン、フライアッシュ、ガラス粉砕品、溶射等により加熱溶融後急冷された粉体などが挙げられる。
【0035】
本発明の硬化性無機質組成物において、アルミノ珪酸塩スラリー100重量部に対するAl2 O3 −SiO2 系粉体の配合割合は、200重量部を超えると固形分が多くなり過ぎて成形しにくくなるので、200重量部以下が好ましく、3〜70重量部がより好ましい。
【0036】
上記硬化性無機質組成物中には、必要に応じて、補強繊維を添加することができる。上記補強繊維としては、形成される無機質硬化体に付与すべき性能に応じて適宜のものを使用することができる。このような補強繊維としては特に限定されず、例えば、ビニロン、ポリプロピレン、アクリル、レーヨン、アラミド等の合成繊維;ガラス繊維;チタン酸カリウム、ロックウール等の無機繊維;カーボン繊維;鋼繊維等の一般にセメント等の無機硬化材料に使用されているもの等が挙げられる。
【0037】
上記補強繊維は、長繊維又は短繊維のいずれであってもよく、また、メッシュ状で使用することもできる。短繊維を使用する場合は、その繊維径は1〜500μm,その繊維長は1〜15mmであることが好ましい。細すぎると混合時に再凝集しやすく、交絡によりファイバーボールが形成されるので、得られる無機質硬化体の強度が不充分となり、また、表面の凸凹が激しくなり良好な外観のもの得られない。また、太すぎたり短すぎたりすると補強効果が不充分になる。
【0038】
上記補強繊維の添加量は、上記アルミノ珪酸塩スラリー100重量部に対して10重量部以下が好ましい。10重量部を超えると、上記補強繊維の分散性、得られる無機質硬化体の耐熱性等に問題が生じる。
【0039】
上記硬化性無機質組成物中には、また、硬化及び乾燥時における収縮の低減、流動性向上のために、無機質充填材を添加することができる。上記無機質充填材としては特に限定されず、例えば、珪砂、珪石粉、フライアッシュ、スラグ、シリカヒューム、マイカ、タルク、ワラストナイト、炭酸カルシウム、粘土等が挙げられる。
【0040】
上記無機質充填材の平均粒径は、0.01μm〜1mmが好ましい。
0. 01μm未満であると、硬化及び乾燥時における収縮の低減効果が不充分であり、1mmを超えると、流動性が悪化し、得られる無機質硬化体の表面の凸凹が大きくなる。
上記無機質充填材の添加量は、上記アルミノ珪酸塩スラリー100重量部に対して800重量部以下が好ましい。800重量部を超えると、上記無機質粉体の割合が小さくなるために硬化性が不充分となる。より好ましくは、100〜500重量部である。
【0041】
上記硬化性無機質組成物中には、更にまた、得られる無機質硬化体の軽量化のために、有機質、無機質等の軽量骨材を添加することができる。上記軽量骨材としては特に限定されず、例えば、スチレン系、塩化ビニリデン系、フェノール系、ウレタン系、エチレン系等の各種合成樹脂発泡体;ガラスバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、シリカバルーン、パーライト等の無機質発泡体等が挙げらる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記無機質発泡体の比重は、0.01〜1が好ましい。0.01未満であると、得られる無機質硬化体の強度が低下し、1を超えると、軽量化の効果が得られない。
上記軽量骨材の添加量は、上記アルミノ珪酸塩スラリー100重量部に対して0.1〜100重量部が好ましい。0.1重量部未満であると、軽量化の効果が得られず、100重量部を超えると、得られる無機質硬化体の強度が低下する。
【0043】
本発明の硬化性無機質組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、セメント組成物を製造する際に通常使用されるオムニミキサー、アイリッヒミキサー、万能ミキサー、ライカイ機等を使用して、予め調製したアルミノ珪酸塩スラリー、Al2 O3 −SiO2 系粉体、及び、必要に応じて補強繊維、無機質充填材等を配合し、混合する方法等が挙げられる。
【0044】
本発明の硬化性無機質組成物を使用して無機質硬化体を得る方法としては特に限定されず、一般的な方法が用いられ、例えば、注入法、プレス法、押し出し法等が挙げられる。
【0045】
本発明の硬化性無機質組成物から無機質硬化体を得る際の硬化温度は、1〜300℃が好ましい。1℃未満であると、硬化反応速度が著しく低下することがあり、300℃を超えると、硬化時の収縮が大きくなり、得られる無機質硬化体にクラック等が発生することがある。より好ましくは、10〜150℃である。
【0046】
従来技術にみられるような、フライアッシュ等の非晶質Al2 O3 −SiO2 粉体とアルカリ金属珪酸塩水溶液を単純に混合した場合に反応性が低い理由は、非晶質Al2 O3 −SiO2 粉体からの反応性Alイオン溶出速度が非常に遅いため生成アルミノシリケート成分量が硬化に必要な量までに達しないことにある。本発明においては、硬化源であるアルミノシリケート成分が、硬化しないレベルの量の範囲で、事前に生成されているので、容易に硬化することが可能になる。
【0047】
本発明の硬化性無機質組成物においては、硬化に必要な残り少しのアルミノシリケートの生成の調整を、Al2 O3 −SiO2 系粉体を添加することにより行う。特に、Al2 O3 −SiO2 系粉体として、非晶質Al2 O3 −SiO2 系粉体を用いると、反応性Alイオン溶出速度の遅さが、反応速度の微調整に有効に働く。
上記硬化性無機質組成物より得られた無機質硬化体は、強度及び耐久性に優れる。
上記無機質硬化体もまた本発明の一つである。
【0048】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
実施例1〜3
(1)活性無機質粉体の調製
無機質粉体として、表1に示した水酸化アルミニウム(組成「Al2 O3 :65重量%、H2 O:35重量%」、CL−310、平均粒径10μm、住友化学工業社製)の2kg又はカオリン(組成「Al2 O3 :39重量%、SiO2 :45重量%、H2 O:14重量%、その他:2重量%」、ジョージア産、平均粒径5μm、山陽クレー社製)の2kgを、ウルトラファインミルAT−20(三菱重工業社製、10mmφジルコニアボール44kgを使用)に投入し、表1に示した機械的エネルギーを印加することにより活性化処理して、それぞれ、活性無機質粉体を調製した。
【0050】
(2)アルミノ珪酸塩スラリーの調製
(2−1)アルカリ懸濁液の調製
上記で得られた活性無機質粉体と表1に示した濃度のKOH水溶液を、表1に示した重量比でスターラーを用いて混合し、アルカリ懸濁液を調製した。
【0051】
(2−2)アルミノ珪酸塩スラリーの調製
上記で得られたアルカリ懸濁液と1K水ガラス(日本化学社製)を、表1に示した重量比でハンドミキサーを用いて3分間混合し、アルミノ珪酸塩スラリーを調製した。
【0052】
(3)アルミノ珪酸塩スラリーの性状
得られたアルミノ珪酸塩スラリーのSi/Alモル比、及び固形分濃度は、表1に示す通りである。また、60℃雰囲気下に放置し、その固化時間を測定し、結果を表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例4〜8
(1)活性無機質粉体の調製
無機質粉体として、表2に示した水酸化アルミニウム(組成「Al2 O3 :65重量%、H2 O:35重量%」、CL−310、平均粒径10μm、住友化学工業社製)の2kg又はカオリン(組成「Al2 O3 :39重量%、SiO2 :45重量%、H2 O:14重量%、その他:2重量%」、ジョージア産、平均粒径5μm、山陽クレー社製)の2kgを、ウルトラファインミルAT−20(三菱重工業社製、10mmφジルコニアボール44kgを使用)に投入し、表2に示した機械的エネルギーを印加することにより活性化処理して、それぞれ、活性無機質粉体を調製した。
【0055】
(2)アルミノ珪酸塩スラリーの調製
(2−1)アルカリ懸濁液の調製
上記で得られた活性無機質粉体と表2に示した濃度のKOH水溶液を、表2に示した重量比でスターラーを用いて混合し、アルカリ懸濁液を調製した。
【0056】
(2−2)アルミノ珪酸塩スラリーの調製
上記で得られたアルカリ懸濁液と1K水ガラス(日本化学社製)を、表2に示した重量比でハンドミキサーを用いて3分間混合し、アルミノ珪酸塩スラリーを調製した。得られたアルミノ珪酸塩スラリーの名称を、表2に示すようにそれぞれA、B、Cとした。
【0057】
(3)アルミノ珪酸塩スラリーの性状
アルミノ珪酸塩スラリーA、B、CのSi/Alモル比、及び固形分濃度は、表2に示した通りである。
【0058】
【表2】
【0059】
(4)硬化性無機質組成物の調製
表3に示した、反応性アルミノ珪酸塩スラリー;Al2 O3 −SiO2 系粉体として、非晶質Al2 O3 −SiO2 系粉体である、メタカオリン(組成「Al2 O3 :44重量%、SiO2 :52重量%、その他:4重量%」、「比表面積13m2 /g」、「結晶構造は非晶質」、「酸素配位数6のAl有り」、SP−33、平均粒径5μm、エンゲルハート社製)又はフライアッシュ(組成「Al2 O3 :25重量%、SiO2 :55重量%、その他:20重量%」、「比表面積6m2 /g」、「結晶構造は非晶質」、「酸素配位数6のAl有り」)、充填剤として、珪石粉(住友セメント社製のプレーン比表面積が9000cm2 /gのもの)及びワラストナイト(ケモリットA−60、Wolkem社製)、並びに、補強材として、ビニロン繊維(RM182、繊維長6mm、繊維径14μm、クラレ社製)の、表3に示した配合の組成物を遊星攪拌型ミキサーにて10分間混合して、硬化性無機質組成物を得た。得られた硬化性無機質組成物を常温に放置し、超音波粘度計で粘度を測定し、粘度が10000cpに到達するまでの時間を測定して、常温可使時間として表3に示した。
【0060】
(5)無機質硬化体の調製
得られた硬化性無機質組成物を幅50mm、長さ150mm、厚さ10mmの型枠内に注入し、ホットプレートを用いて60℃で30分間、硬化させて、無機質硬化体を得た。得られた無機質硬化体の曲げ強度、沸騰水試験後の強度維持率を下記の方法で評価した。結果を表3に示した。
【0061】
評価方法
(1)曲げ強度の測定
得られた無機質硬化体を脱型し、50℃で24時間乾燥し、JIS A 1408の方法に準じて曲げ強度を測定した。
(2)沸騰水試験後の強度維持率
得られた無機質硬化体を脱型し、沸騰水中に8時間浸漬した後、50℃で24時間乾燥し、上記方法にて曲げ強度を測定し、強度維持率を算出した。
【0062】
【表3】
【0063】
実施例9〜13
(1)活性無機質粉体の調製
無機質粉体として、表4に示した水酸化アルミニウム(組成「Al2 O3 :65重量%、H2 O:35重量%」、CL−310、平均粒径10μm、住友化学工業社製)の2kg又はカオリン(組成「Al2 O3 :39重量%、SiO2 :45重量%、H2 O:14重量%、その他:2重量%」、ジョージア産、平均粒径5μm、山陽クレー社製)の2kgを、ウルトラファインミルAT−20(三菱重工業社製、10mmφジルコニアボール44kgを使用)に投入し、表4に示した機械的エネルギーを印加することにより活性化処理して、それぞれ、活性無機質粉体を調製した。
【0064】
(2)アルミノ珪酸塩スラリーの調製
(2−1)アルカリ懸濁液の調製
上記で得られた活性無機質粉体と表4に示した濃度のKOH水溶液を、表4に示した重量比でスターラーを用いて混合し、アルカリ懸濁液を調製した。
また、アルミン酸カリウム溶液(K2 O:27.8重量%、Al2 O3 :17.7重量%)と表5に示した濃度のKOH水溶液を、表5に示した重量比でスターラーを用いて混合し、アルカリ懸濁液を調製した。
【0065】
(2−2)アルミノ珪酸塩スラリーの調製
上記で得られたアルカリ懸濁液と1K水ガラス(日本化学社製)を、表4及び表5に示した重量比でハンドミキサーを用いて3分間混合し、アルミノ珪酸塩スラリーを調製した。得られたアルミノ珪酸塩スラリーの名称を、表4及び表5に示すようにそれぞれD、E、F及びGとした。
【0066】
(3)アルミノ珪酸塩スラリーの性状
得られたアルミノ珪酸塩スラリーD、E、F及びGのAl濃度、及び、固形分濃度は、表4及び表5に示した通りである。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
(4)硬化性無機質組成物の調製
表6に示した、反応性アルミノ珪酸塩スラリー;Al2 O3 −SiO2 系粉体として、非晶質Al2 O3 −SiO2 系粉体である、メタカオリン(組成「Al2 O3 :44重量%、SiO2 :52重量%、その他:4重量%」、「比表面積13m2 /g」、「結晶構造は非晶質」、「酸素配位数6のAl有り」、SP−33、平均粒径5μm、エンゲルハート社製)又はフライアッシュ(組成「Al2 O3 :25重量%、SiO2 :55重量%、その他:20重量%」、「比表面積6m2 /g」、「結晶構造は非晶質」、「酸素配位数6のAl有り」)、充填剤として、珪石粉(住友セメント社製のプレーン比表面積が9000cm2 /gのもの)及びワラストナイト(ケモリットA−60、Wolkem社製)、並びに、補強材として、ビニロン繊維(RM182、繊維長6mm、繊維径14μm、クラレ社製)の、表6に示した配合の組成物を遊星攪拌型ミキサーにて10分間混合して、硬化性無機質組成物を得た。得られた硬化性無機質組成物を常温に放置し、超音波粘度計で粘度を測定し、粘度が10000cpに到達するまでの時間を測定して、常温可使時間として表6に示した。
(5)無機質硬化体の調製
得られた硬化性無機質組成物を幅50mm、長さ150mm、厚さ10mmの型枠内に注入し、ホットプレートを用いて60℃で30分間、硬化させて、無機質硬化体を得た。得られた無機質硬化体の曲げ強度、沸騰水試験後の強度維持率を評価した。結果を表6に示した。
【0070】
【表6】
【0071】
実施例14〜16
(1)活性無機質粉体の調製
無機質粉体として、表7に示した水酸化アルミニウム(組成「Al2 O3 :65重量%、H2 O:35重量%」、CL−310、平均粒径10μm、住友化学工業社製)の2kg又はカオリン(組成「Al2 O3 :39重量%、SiO2 :45重量%、H2 O:14重量%、その他:2重量%」、ジョージア産、平均粒径5μm、山陽クレー社製)の2kgを、ウルトラファインミルAT−20(三菱重工業社製、10mmφジルコニアボール44kgを使用)に投入し、表7に示した機械的エネルギーを印加することにより活性化処理して、それぞれ、活性無機質粉体を調製した。
【0072】
(2)アルミノ珪酸塩スラリーの調製
(2−1)アルカリ懸濁液の調製
上記で得られた活性無機質粉体と表7に示した濃度のKOH水溶液を、表7に示した重量比でスターラーを用いて混合し、アルカリ懸濁液を調製した。
【0073】
(2−2)アルミノ珪酸塩スラリーの調製
上記で得られたアルカリ懸濁液と1K水ガラス(日本化学社製)を、表7に示した重量比でハンドミキサーを用いて3分間混合し、アルミノ珪酸塩スラリーを調製した。得られたアルミノ珪酸塩スラリーの名称を、表7に示すようにそれぞれH、Iとした。
【0074】
(3)アルミノ珪酸塩スラリーの性状
アルミノ珪酸塩スラリーH、Iについて、27AlNMR測定データを図1に示した。ここで、27AlNMR測定データは、日本電子製 NMR装置を用い、共鳴周波数104.216MHz、繰り返し時間0.2s、プロトンデカップリングなし、積算回数600回にて測定した。
【0075】
【表7】
【0076】
(4)硬化性無機質組成物の調製
表8に示した、反応性アルミノ珪酸塩スラリー;Al2 O3 −SiO2 系粉体として、非晶質Al2 O3 −SiO2 系粉体である、メタカオリン(組成「Al2 O3 :44重量%、SiO2 :52重量%、その他:4重量%」、「比表面積13m2 /g」、「結晶構造は非晶質」、「酸素配位数6のAl有り」、SP−33、平均粒径5μm、エンゲルハート社製)又はフライアッシュ(組成「Al2 O3 :25重量%、SiO2 :55重量%、その他:20重量%」、「比表面積6m2 /g」、「結晶構造は非晶質」、「酸素配位数6のAl有り」)、充填材として、珪石粉(住友セメント社製のプレーン比表面積が9000cm2 /gのもの)及びワラストナイト(ケモリットA−60、Wolkem社製)、並びに、補強材として、ビニロン繊維(RM182、繊維長6mm、繊維径14μm、クラレ社製)の、表8に示した配合の組成物を遊星攪拌型ミキサーにて10分間混合して、硬化性無機質組成物を得た。得られた硬化性無機質組成物を常温に放置し、超音波粘度計で粘度を測定し、粘度が10000cpに到達するまでの時間を測定して、常温可使時間として表8に示した。
(5)無機質硬化体の調製
得られた硬化性無機質組成物を幅50mm、長さ150mm、厚さ10mmの型枠内に注入し、ホットプレートを用いて60℃で30分間、硬化させて、無機質硬化体を得た。得られた無機質硬化体の曲げ強度、沸騰水試験後の強度維持率を評価した。結果を表8に示した。
【0077】
【表8】
【0078】
【発明の効果】
本発明の製造方法により得られたアルミノ珪酸塩スラリーは、上述の構成からなるので、加熱反応性が高く、成形に必要な常温可使時間が得られ、かつ、強度及び耐水性に優れた無機質硬化体を得ることができる。
本発明の硬化性無機質組成物は、上述の構成からなるので、加熱反応性が高く、成形に必要な常温可使時間が充分にあり、かつ、強度及び耐水性に優れた無機質硬化体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において、得られたアルミノ珪酸塩スラリーH及びアルミノ珪酸塩スラリーIの27AlNMR測定データである。
Claims (6)
- 水酸化アルミニウム又はAl2O3−SiO2系粉体から選ばれる一種以上の粉体に機械的エネルギーを作用させて得られる活性無機粉体(a)、及び、アルカリ金属水溶液(b)を混合して無機質粉体のアルカリ懸濁液(c)を得、
次いで、上記無機質粉体のアルカリ懸濁液(c)とアルカリ金属珪酸塩(d)を混合することを特徴とするアルミノ珪酸塩スラリーの製造方法。 - Al2O3−SiO2系粉体がカオリンであることを特徴とする請求項1記載のアルミノ珪酸塩スラリーの製造方法。
- アルミノ珪酸塩スラリー中のアルミニウム濃度が0.01〜4.0mol/スラリーkgであり、かつ、固形分濃度が20〜80重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載のアルミノ珪酸塩スラリーの製造方法。
- 27AlNMRにより、[Al(H2O)6]3+を基準として化学シフトを測定した際に、50〜75ppmにピークが観測されることを特徴とする請求項1、2又は3記載のアルミノ珪酸塩スラリーの製造方法。
- 請求項1、2、3又は4記載の製造方法により得られたアルミノ珪酸塩スラリー、及び、Al2O3−SiO2系粉体の混合物からなることを特徴とする硬化性無機質組成物。
- 請求項5記載の硬化性無機質組成物を硬化させてなることを特徴とする無機質硬化体。
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