JP3699257B2 - リグノセルロース物質の液化物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば生分解性または生物崩壊性を有する種々の樹脂原料等として有用なリグノセルロース物質の液化物を効率良く、かつ再現性良く連続的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
木材工業分野における製材工程等において多量に発生する木粉、木材チップ、単板くずなどのリグノセルロース物質は、熱加工が困難な材料であることなどから有効利用できる用途は極めて少なく、そのほとんどは産業廃棄物として焼却処理されているが、近年の地球環境保全の要請から資源の有効活用を図るべく、このようなリグノセルロース物質についても有効利用する方法の開発が望まれている。
【0003】
このようなリグノセルロース物質の有効利用のためのアプローチの1つとして、生分解性または生物崩壊性を有する種々の樹脂原料として、あるいは燃料源などとして使用できるようにするために、リグノセルロース物質を液化させることが種々検討されるとともに、この液化物を用いた樹脂の製造もいくつか検討されている。
【0004】
例えば、特開昭61−261358号公報には、リグノセルロース物質をフェノール類の存在下で200〜300℃に加熱することにより液化できることが記載され、特開昭62−79230号公報には、リグノセルロース物質をアルコール類、多価アルコール類、オキシエーテル類、環状エーテル類、及びケトン類から選択される1または2以上の物質に加えて、150〜350℃に加熱することにより液化できることが記載され、また特開平8−225653号公報には、リグノセルロース物質を酸触媒、環状エステルおよび多価アルコールの存在下で100〜200℃に加熱することにより液化できることが記載されている。
【0005】
このような方法によりリグノセルロース物質の液化が可能となったが、いずれの方法も実験レベルの少量のリグノセルロースを液化させるのに長時間を要するものであり、到底工業生産に対応し得るものではなかった。
【0006】
そこで、リグノセルロース物質を工業生産スケールで多量に効率良く液化させる方法や装置も検討され、例えば、特開平5−140322号公報には、耐圧設計された反応容器、撹拌機、容器内の圧力を制御する加圧排気装置、薬液供給装置、熱媒加熱循環装置を備えたバッチ式の装置構成が開示され、このような装置を用いて所定温度、所定圧力に調整しつつ撹拌を行うことで、生産スケールで多量に液化させることが可能となることが記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術はバッチ式の装置を用いて製造するものであり、反応後の液化物を反応容器内から取出す工程および新たに液化する材料を投入する工程中、即ち入替え作業中は液化反応を行うことはできず、この分効率が低下するため、製造効率は未だ十分満足できるものではない上に、得られる液化物の品質にばらつきが生じやすい、即ち製造安定性に劣るという問題があった。更に、上記従来の製造装置は、リグノセルロース物質の液化物の製造のみを目的として特別に設計、製作されたものであり、汎用性に乏しい装置であることから、装置コストが多大であり、このために製造コストが増大するという難点もあった。
【0008】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、リグノセルロース物質の液化物を多量に効率良く、連続的に、かつ低コストに製造できるとともに、得られる液化物の品質にばらつきが生じることがなく製造安定性に優れた、リグノセルロース物質の液化物の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究の結果、リグノセルロース物質、酸触媒および特定の物質を混合した混合物を、高分子加工の分野において樹脂の押出成形等に汎用的に使用されている押出機により、加熱条件下で混練押出することにより所望の液化を成し得ることを見出した。
【0010】
即ち、この発明にかかるリグノセルロース物質の液化物の製造方法は、リグノセルロース物質と、酸触媒と、フェノール類、多価アルコール類および環状エステル類から選択される1種または2種以上の物質と、を混合して得られる混合物を押出機により加熱混練押出することを特徴とするものである。
【0011】
加熱下、押出機のスクリューの強いトルクにより混合物が混練されるから、短時間で十分に液化が進行するとともに、混練中の混合物の温度が精度高く所定温度に保持されるから、再現性に優れ、得られる液化物の品質のばらつきがほとんどない。また、汎用の押出機を用いて製造できるから、製造コストが低減されるとともに、連続的な液化をなし得る。
【0012】
加熱温度が100〜200℃である場合には、液化物が一層効率良く製造されるとともに、液化物の品質のばらつきが一層抑制されて製造安定性がより向上される。
【0013】
押出機が2軸押出機である場合には、製造安定性が一層向上するとともに、従来では困難であったリグノセルロース物質を高率に含有する混合物の液化をも、短時間で十分に成し得るから、一段と製造効率を向上させ得る。
【0014】
押出機のスクリュー回転数が5〜150rpmである場合には、より短時間で十分に液化された液化物が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
この発明において、液化の対象となるリグノセルロース物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、木粉、木材繊維、木材チップ、単板くずなどの木材を粉砕したもの、藁、もみ殻などの植物繊維素、グランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、古紙等の紙、パルプ類などが挙げられる。
【0016】
上記木材の種類としては、特に限定されず、例えばマカンバ、シトカスプルース、スギ、アカマツ、ポプラ、ラワン、ヒノキ等が挙げられる。
【0017】
また、使用するリグノセルロース物質の粒度も特に限定されないが、生産性を考慮すると粒度の小さいものを用いるのが好ましい。
【0018】
この発明の製造方法において、リグノセルロース物質は、酸触媒の存在下に、フェノール類、多価アルコール類および環状エステル類から選択される1種または2種以上の物質と反応することにより、液化される。
【0019】
上記フェノール類としては、特に限定されるものではないが、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、アクリルレゾルシノール、ビスフェノールA等が挙げられる。中でも、リグノセルロース物質との反応性が高いフェノール、ビスフェノールAが好適に用いられる。
【0020】
また、多価アルコール類としては、特に限定されるものではないが、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレングリコール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、スークロースなど、あるいはこれらを出発物質とするポリカプロラクトンを一部に含むポリエーテルポリオールなどの3官能以上の多価アルコールなどが挙げられる。これらの中でも、安価で工業的にも入手しやすいグリセリンとポリエチレングリコールの混液などが好適に用いられる。
【0021】
また、環状エステル類としては、特に限定されるものではないが、開環反応して重合し得るものが好適であり、例えばプロピオラクトン、β−ブチロラクトン、α,α´−ビスクロロメチルプロピオラクトン、α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、グリコリド、トリメチルカーボネート、ネオペンチルカーボネート、エチレンオキサレート、プロピオンオキサレート、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、γ−メチル−ε−カプロラクトン、4−メチル−7−イソプロピル−ε−カプロラクトン、3,3,5−トリメチル−ε−カプロラクトン、シス−ジサリシリド、トリサリシリド等が挙げられる。これらの中でも、安価で工業的にも入手しやすくリグノセルロース物質を液化させやすいε−カプロラクトンが好適に用いられる。
【0022】
また、前記酸触媒としては、特に限定されず、例えば無機酸、有機酸、ルイス酸等が挙げられ、具体的には例えば硫酸、塩酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素などが好適に用いられる。
【0023】
この発明において、液化をするに際しては、フェノール類、多価アルコール類および環状エステル類から選択される1種または2種以上の物質(以下、「液化媒体」という)と、リグノセルロース物質と、酸触媒と、を混合して原料混合物を得るが、これらの混合割合は以下の割合にするのが好ましい。
【0024】
即ち、液化媒体100重量部に対して、リグノセルロース物質を5〜500重量部の割合で配合するのが好ましい。5重量部未満では、単位時間当たりに液化処理できるリグノセルロース物質の量が低下する、即ちリグノセルロース物質の液化処理の効率が低下するので好ましくない。また500重量部を超えると液化が十分に進行し難くなるので好ましくない。中でも20〜300重量部とするのが好ましく、さらには30〜200重量部とするのがより一層好ましい。
【0025】
一方、酸触媒の使用量は、液化媒体100重量部に対して0.1〜20重量部とするのが好ましく、中でも0.5〜5重量部とするのがより好ましい。
【0026】
この発明にかかる製造方法は、上記原料混合物を押出機により加熱混練押出することにより、リグノセルロース物質の液化を行うものであるが、加熱下に、押出機のスクリューの強いトルクにより原料混合物を混練するものであるから、液化を短時間で十分に進行させることができる。加えて、混練中の混合物の温度が精度高く所定温度に保持されるから、再現性が良好で、得られる液化物の品質のばらつきがほとんどなく、製造安定性に優れている。
【0027】
上記加熱混練押出の際の加熱温度は、100〜200℃とするのが好ましい。100℃未満では液化反応速度が遅く、液化反応が十分に進行し難くなるので好ましくないし、一方200℃を超えると、得られる液化物の品質にばらつきを生じやすくなり製造安定性が低下するので好ましくない。中でも加熱温度は130〜180℃とするのがより好ましく、さらには150〜160℃とするのがより一層好ましい。
【0028】
上記押出機としては、高分子加工の分野において樹脂の押出成形等に汎用的に使用されている公知の押出機を用いることができる。通常、一軸押出機または二軸押出機が用いられるが、中でも二軸押出機を用いるのが望ましく、この場合には得られる液化物の品質にばらつきが生じることがなくて製造安定性を一層向上できるとともに、混合物にリグノセルロース物質を高率に含有させても十分に液化させることが可能となるから一段と液化処理の効率を向上させることができる。なお、三軸以上の押出機も使用することはできるが、汎用性の低い特殊タイプとなるため高価であり、従って製造コストを増大させることになるので、好ましくない。
【0029】
押出機のスクリューの形状としては、特に限定されないが、例えばフルフライト形、ダルメージ形、ミキシングピン形、ユニメルト形、バリア形等が挙げられ、中でもフルフライト形のものが好適に使用される。
【0030】
また、液化時の押出機のスクリューの回転数は5〜150rpmに設定するのが好ましい。5rpm未満では混合物が押出機内に滞留する時間、即ち液化時間が増大するので好ましくないし、一方150rpmを超えると滞留時間は短縮されるものの、液化が十分に進行していない液化物が得られるので好ましくない。中でもスクリューの回転数は10〜120rpmに設定するのが好ましい。
【0031】
なお、この発明の製造方法で製造されたリグノセルロース物質の液化物は、例えば接着剤、成形体、発泡体、塗料、充填材等を構成する樹脂の合成原料として好適に使用できる。
【0032】
【実施例】
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【0033】
<実施例1>
グリセリン100g、ポリエチレングリコール(PEG;分子量約400)300g、硫酸3g(濃度97%の硫酸)を均一に混合した後、これに製材所の製材工程で発生したヒノキ木粉200g(含水率4.6%)を混合し、振盪によりこれらを均一に混合した。
【0034】
得られた混合物を、160℃に調温された口径20mmの2軸押出機(株式会社東洋精機製作所製)のフィーダー(投入口)部から投入した。そして、この2軸押出機により混練押出を行った。押出機の条件は、次の通りである。ダイス:φ5mmストランド、スクリュー:フルフライト、L/D:25、圧縮比:2、スクリュー回転数:20rpm、異方向回転。
【0035】
投入から15分経過後、ダイスから液化された均一な液状物が連続的に流出し始めた。ダイスからの蒸気の排出は僅かで臭気もほとんどなかったことから、水蒸気を伴った溶媒の蒸散がほとんどなく、分解物の生成もほとんどないことがわかる。得られた液化物の未液化残渣率は22.7%であり、十分に液化が進んでいることが確認された。
【0036】
なお、この実施例1においては、ダイスから流出されてくる液化物を、その流出の開始から終了までに均等時間間隔で5回サンプリングして、未液化残渣率、水酸基価の算出値は、これら5ロットの液化物の測定値の平均値を記載した。各ロットの個別の測定値は表3に記載した。
【0037】
<実施例2>
2軸押出機のスクリュー回転数を50rpmとした以外は、実施例1と同様にして液化を行った。投入から10分経過後に、ダイスから実施例1と同様の均一な液状物が得られた。
【0038】
<実施例3>
2軸押出機のスクリュー回転数を100rpmとした以外は、実施例1と同様にして液化を行った。投入から6分経過後に、ダイスからペースト様の均一な液状物が得られた。
【0039】
<実施例4>
ヒノキ木粉の混合量を300g(含水率4.6%)とした以外は、実施例1と同様にして液化を行った。実施例1と同様の均一な液状物が得られた。
【0040】
<実施例5>
2軸押出機のスクリュー回転数を50rpmとした以外は、実施例4と同様にして液化を行った。ペースト様の均一な液状物が得られた。
【0041】
<実施例6>
ヒノキ木粉の混合量を800g(含水率4.6%)とした以外は、実施例3と同様にして液化を行った。ペースト様の均一な液状物が得られた。
【0042】
<実施例7>
フェノール400gと硫酸2g(濃度97%の硫酸)をフェノールを溶融させた状態で均一に混合した後、これに製材所の製材工程で発生したヒノキ木粉200g(含水率4.6%)を混合し、振盪によりこれらを均一に混合した。
【0043】
得られた混合物を、2軸押出機を用いて実施例1と同様の液化条件で液化を行った。実施例1と同様の均一な液状物が得られた。
【0044】
<実施例8>
2軸押出機のスクリュー回転数を50rpmとし、加熱温度を140℃とした以外は、実施例7と同様にして液化を行った。均一な液状物が得られた。
【0045】
<実施例9>
ヒノキ木粉の混合量を400g(含水率4.6%)とし、加熱温度を180℃とした以外は、実施例8と同様にして液化を行った。
【0046】
<実施例10>
ε−カプロラクトン400g、硫酸3g(濃度97%の硫酸)を均一に混合した後、これに製材所の製材工程で発生したヒノキ木粉200g(含水率4.6%)を混合し、振盪によりこれらを均一に混合した。
【0047】
得られた混合物を、2軸押出機を用いて実施例1と同様の液化条件で液化を行った。実施例1と同様の均一な液状物が得られた。
【0048】
<比較例1>
実施例1に記載の混合物を、還流コンデンサーと撹拌機を備えたガラス製反応フラスコに投入し、160℃で撹拌させながら15分間反応させた。反応液は不均一な液状を呈していた。
【0049】
<比較例2>
比較例1と同条件で2時間反応させた。実施例1と同様の均一な液状物が得られた。なお、この比較例2においては、同一条件にて5回製造を行い、未液化残渣率、水酸基価の算出値は、これら5ロットの液化物の測定値の平均値を記載した。各ロットの個別の測定値は表3に記載した。
【0050】
<比較例3>
実施例6に記載の混合物を、還流コンデンサーと撹拌機を備えたガラス製反応フラスコに投入し、180℃で撹拌させながら3時間反応させた。反応液は不均一な液状を呈しており、長時間反応させても液化が不十分であることが示唆された。
【0051】
<評価方法>
上記のようにして作製された液化物について下記の評価を行った。その結果を表1〜3に示す。
【0052】
(未液化残渣率および結合フェノール量)
液化物試料10gに1,4−ジオキサンを加えて希釈して、十分に撹拌して溶解させた後、予め絶乾にして重量を測定してあるガラス繊維フィルターを用いて濾過を行い、不溶解残渣(未液化残渣)を濾別した。不溶解残渣を更に1,4−ジオキサンを用いて数回洗浄して十分に洗浄した後、濾液に理論量の酸化マグネシウム(MgO)を加え、中和する。
【0053】
MgO理論量(g)=仕込み硫酸量(g)×40.3÷98.08
濾別された残渣を105℃で恒量となるまで乾燥した後、秤量して未液化残渣率(%)を算出した。
【0054】
未液化残渣率(%)=残渣重量(g)÷仕込み木粉重量(g)×100
【0055】
中和した溶液にさらに1,4−ジオキサンを加え、その体積を1Lとする。この1L溶液から1mLを採取し、さらに1,4−ジオキサンで50倍に希釈した後、該希釈液から18μLをサンプリングしてHPLCを用いて溶液中の遊離フェノール濃度(C)を測定する。既知濃度のフェノール溶液を用いて、HPLCにおけるピーク面積と濃度の関係を予め求めておけば、それに基づいて当該試料のピーク面積から計算により遊離フェノール濃度(C)が求まる。この濃度(C)から液化反応後に残った未反応のフェノール量(A)を算出し、仕込みフェノール量との差をとり、液化木材と化学結合したフェノール量を算出する。
【0056】
液化反応後の遊離フェノール量A(g)=1000(mL)×C(g/mL)×50
結合フェノール量(%)=(W−A)÷(U−r)×100
W:仕込みフェノール重量(g)
U:仕込み木粉重量(g)
r:未液化残渣重量(g)
【0057】
(水酸基価)
250〜300mLビーカーに液化物試料約1gを1mg単位まで正確に秤量した後、ホールピペットを用いてフタル化剤を25mL加える。沸石を1〜2個入れアルミホイルで蓋をした後、110〜130℃のホットプレート上に載置して20分間煮沸させる。室温まで放冷してからジオキサン50mL、水25mLを加えて良く撹拌して十分に混合させる。50mLビューレットを用いて1規定水酸化ナトリウムを滴下し、pHメーターによるpH8〜11の変曲点で終点判断する滴定を行う。これとは別に、フタル化剤のみによるブランクの滴定も行い、次の計算式により水酸基価を求めた。
【0058】
水酸基価(KOHmg/g)=(B−A+C)×f×56.1÷W
A:試料滴定値
B:ブランク滴定値
C:試料中の硫酸の中和に必要な水酸化ナトリウム(1規定)量
f:1規定水酸化ナトリウムのファクター
W:試料の重量
なお、上記フタル化剤とは、無水フタル酸150g、イミダゾール24.2gおよびジオキサン1000gを混合して十分に溶解させたものであり、溶解後、室温で1夜放置してから使用する。保存は褐色ビン内でジオキサンの凝固点を考慮した低温度で行い、調整後3日以内のものを使用する。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
<評価結果>
表から明らかなように、この発明の製造方法で製造された実施例1〜10のリグノセルロース物質の液化物は、未液化残渣率が小さく、短時間で十分に液化が進行していた。しかも実施例1〜6の液化物の水酸基価は100〜500mgKOH/gの範囲内にあり、例えばポリウレタン発泡体調製用ポリオールとして好適に用い得るものであった。また、実施例7〜9の液化物の結合フェノール量は30〜300%の範囲内にあり、例えばノボラック樹脂の原料として好適に用い得るものであった。
【0063】
これに対し、撹拌機による撹拌を行いながら液化させる比較例1、2の従来の製造方法では、十分に液化を進行させるには極めて長時間を要し、到底工業生産には適し得ないものであった。
【0064】
また、実施例6と比較例3との対比から、この発明の製造方法は、従来の製造方法では到底困難であったリグノセルロース物質を高率に含有する混合物の液化をも、短時間で十分に成し得るものであることを確認し得た。
【0065】
更に、表3から明らかなように、この発明の製造方法は、得られる液化物の未液化残渣率、水酸基価のばらつきが非常に小さく、安定した品質の液化物を製造できることを確認し得た。
【0066】
【発明の効果】
以上のように、この発明のリグノセルロース物質の液化物の製造方法は、加熱下に、押出機のスクリューの強いトルクにより混合物を混練するものであるから、短時間で液化を十分に進行させることができる。しかも混練中の混合物の温度が精度高く所定温度に保持できるから、再現性に優れて、得られる液化物の品質のばらつきを抑制することができる。また、高分子加工分野で汎用されている押出機を用いて製造できるので、特別な装置を製作する必要がなく、従って製造コストを低減できる。かつ押出機により連続的な液化を行い得るから、液化処理の効率を向上させることができる。そして、得られた液化物は、単位重量当たりのOH含有量が、例えばフェノール樹脂硬化物やポリウレタン発泡体などの原材料の反応成分として好適に使用できる範囲のものとなり得ることから、リグノセルロース物質の有効利用、特に工業生産レベルでの有効利用に極めて有用である。
【0067】
加熱温度が100〜200℃である場合には、品質のばらつきのより少ない液化物を一層効率良く製造することができる。
【0068】
押出機が2軸押出機である場合には、製造安定性を一層向上させることができる。しかも従来では困難であったリグノセルロース物質を高率に含有する混合物の液化をも、短時間で十分に行うことができるので、これにより一段と液化処理の効率をも向上させることができる。
【0069】
押出機のスクリュー回転数が5〜150rpmである場合には、より短時間で十分に液化された液化物を製造できる。
Claims (4)
- リグノセルロース物質と、
酸触媒と、
フェノール類、多価アルコール類および環状エステル類から選択される1種または2種以上の物質と、を混合して得られる混合物を押出機により加熱混練押出することを特徴とするリグノセルロース物質の液化物の製造方法。 - 加熱温度が100〜200℃である請求項1に記載のリグノセルロース物質の液化物の製造方法。
- 押出機が2軸押出機である請求項1または2に記載のリグノセルロース物質の液化物の製造方法。
- 押出機のスクリュー回転数が5〜150rpmである請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質の液化物の製造方法。
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1997
- 1997-10-30 JP JP29898397A patent/JP3699257B2/ja not_active Expired - Lifetime
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