JP3699148B2 - プリプレグの常温硬化方法並びに構造物の補修補強方法 - Google Patents
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Description
【産業用の利用分野】
本発明は、従来のハンドレイアップでおこなわれていた作業の煩わしさを著しく改良できるとともに、スポーツ・レジャーや土木建築等の幅広い分野に利用可能なプリプレグの常温硬化方法並びに構造物の補修補強方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から土木建築構造物、特にコンクリート構造物の補修または補強においては、鋼板接着工法やコンクリート増し打ち工法が広く採用されていた。しかしながら、最近では、施工性、安全性、工期の点で、織物や一軸方向に配列した繊維シート、または、あらかじめエポキシ樹脂が含浸されたプリプレグを構造物の表面に貼付け、補修・補強を行う工法が注目されるようになってきた。特開平1−197532号公報では、樹脂含浸された長繊維プリプレグを用いて、補修または補強を行う方法が提案されているが、貼り付けた後に赤外線ランプや電気ヒーター等により高温で硬化させる必要がある。これに対して、特開平3−224901号公報では、長繊維の炭素繊維シートを用い、ハンドレイアップ方式で常温硬化タイプのエポキシ樹脂を塗布して補修または補強する方法が提案されている。しかし、この方法は、ボイドがないように、繊維シート全体に均一に樹脂を含浸させることがかなり困難であり、非常に煩わしい作業を含んでいる。また、ハンドレイアップ方式をとることから、臭気が激しく、安全衛生上にも良いとは言えないものである。
【0003】
これに対して、特開平3−224966号公報では、あらかじめ繊維に70℃以上で硬化するエポキシ樹脂を含浸した長繊維プリプレグを用いるもの、さらには、特開平5−39673号公報では、実質的に硬化剤を含まないエポキシ樹脂を含浸した長繊維を用いるもの等が提案されているが、常温で硬化させるために、プリプレグの表面にシンナーやMEKに溶かした常温硬化型エポキシ樹脂溶液、または、常温硬化タイプの硬化剤溶液を塗布するものであり、やはりハンドレイアップ方式の煩わしさや安全衛生上の問題を解決できるものではなく、また硬化不良になりやすい欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、こうした現状に鑑み、繊維シートまたはプリプレグを用いた構造物の補修や補強において、従来のハンドレイアップ方式に比べ安全衛生上や煩わしさ、さらには硬化特性等の問題点を解消させることができるプリプレグの常温硬化方法並びに構造物の補修補強方法を提供することを目的としたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するため先ず、アミン等の常温硬化型硬化剤をカプセル化して加圧硬化型とすることを試みた。しかしそれは非常に困難であることが判明し、鋭意検討を重ねた結果、アミン等の常温硬化型硬化剤を直接カプセル化せずに包接化合物に吸着させ、該包接化合物に対して吸着能が高いアルコール等を組み合わせることで本発明を完成した。
即ち本発明の第一は、下記A及びB成分を必須成分としてなるエポキシ樹脂組成物を有する繊維強化プリプレグの成形時に、下記C成分を含浸させることによって、常温で硬化させることを特徴とするプリプレグの常温硬化方法である。
A;一分子中に少なくとも二個以上のグリシジル基を持つエポキシ化合物
B;活性水素を有するアミン類化合物を吸着している包接化合物
C;B成分の包接化合物に対して、アミン類化合物の追い出し剤となりうる化合物を含有する溶液
【0006】
また本発明の第二は、構造物の表面にC成分、すなわち下記B成分の包接化合物に対して、アミン類化合物の追い出し剤となりうる化合物を含有する溶液を塗付し、その上に下記A及びB成分を必須成分としてなるエポキシ樹脂組成物および強化繊維を有する繊維強化プリプレグを貼り付けて硬化する構造物の補修補強方法。
A;一分子中に少なくとも二個以上のグリシジル基を持つエポキシ化合物
B;活性水素を有するアミン類化合物を吸着している包接化合物
【0007】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明においてA成分として用いられるエポキシ化合物は、一分子中に少なくとも二個以上のグリシジル基を持つものであれば特に制限はなくどのようなものでも使用可能である。特に例示するならば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、その他脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などを適宜選択して1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0008】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、エスポキシSA−115、エスポキシSA−134、エスポキシSA−011、エスポキシSA−019、エスポキシSA−7020(以上、新日鐵化学(株)製)、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004(以上、油化シェルエポキシ(株)製)、アラルダイトGY−250、アラルダイトGY−260、アラルダイト6071(以上、日本チバガイギー(株)製)などの市販されているものが利用できる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、エスポキシSCN−701P、エスポキシSCN−702P、エスポキシSCN−703P、エスポキシSCN−704P(以上、新日鐵化学(株)製)、アラルダイトECN−1273、アラルダイトECN−1280(以上、日本チバガイギー(株)製)、あるいは住友化学工業(株)製のESCN−220シリーズなどの市販されているものが利用できる。
【0009】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、エスポキシSPN−638(新日鐵化学(株)製)、エピコート152、エピコート154(以上、油化シェルエポキシ(株)製)などの市販されているものが利用できる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、エピクロン830(大日本インキ化学工業(株)製)などの市販されているものが利用できる。
【0010】
次に、B成分について説明する。まず、活性水素を有するアミン類化合物を吸着している包接化合物において、用いられるアミン類化合物としては、エポキシ化合物と常温で反応できる活性水素を有するアミン類化合物であり、さらに包接化合物に吸着できるものであればよい。例示すれば、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン等の1級アミンやジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の2級アミン、そしてエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、テトラメチレンブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、メタキシレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン等のポリアミン、さらにはポリアミドポリアミンやアミンアダクト等の変成アミン等が挙げられる。
【0011】
包接化合物としては、前記アミン類化合物を吸着できる多孔性粉体であれば特に制限はなく、例示すればゼオライト、モンモリロナイト、珪藻土、カオリン、雲母、活性炭等の無機物や多孔性ポリスチレン等の有機物があげられる。これらの中でも孔径の均一なゼオライト、すなわちモレキュラシーブスは特に好ましい。包接化合物の平均粒子径は、0.1〜20μmが好ましい。0.1μm未満の場合には、包接化合物が凝集し分散しにくく、逆に硬化不良を起こしやすく、一方、20μmを超える場合には、やはり繊維間に均一に分散されない可能性があり、硬化不良を生じてしまうからである。
そして、包接化合物に前記アミン類化合物を吸着させる方法も特に制限しないが、例えば、包接化合物に熱処理等を行い活性化状態にして、直接アミン類化合物を吸着させる方法やアミン類化合物よりも吸着しにくい溶媒下でアミン類化合物を徐々に加える方法などが一般的である。後者の場合には、還流を併用すれば、より定量的に吸着させることができる。
【0012】
次にB成分の包接化合物中のアミン類化合物の量は、5〜40重量%が好ましい。5%未満では硬化剤としての効果が小さく、未硬化状態になったり、または硬化が非常に遅くなりやすい。アミン類化合物はエポキシ化合物とほぼ定量的に反応することから、エポキシ化合物に対して一定量が必要である。そのため、5%未満では、反応に不必要で、さらには硬化物の物性に悪影響を及ぼす包接化合物の量が相対的に増加することから望ましくない。一方上限については、包接化合物の孔中に定量的に吸着される量が好ましい。しかし、場合によっては、孔中だけではなく包接化合物の表面に吸着される場合もある。その場合にはエポキシ化合物と即座に反応が進行し、保存安定性に問題が生じる。それゆえ、アミン類化合物の吸着量は40重量%を超えない方がよい。
【0013】
次に、AおよびB成分の量であるが、A成分の総量100重量部に対して、B成分を10〜100重量部と配合するのが好ましい。B成分が10重量部未満の場合には、硬化剤としてのアミン類化合物量が不足することになり硬化不良になりやすいので好ましくない。100重量部を超える場合には、粉末状態の包接化合物が非常に多くなり、その分散が困難となるばかりか、複合材料の重量が増えることになるので好ましくない。
【0014】
本発明によれば、A成分とB成分とを必須成分とするエポキシ樹脂組成物を有する繊維強化プリプレグの成形時において、該プリプレグにC成分、すなわちB成分の包接化合物に対して、アミン類化合物の追い出し剤となりうる化合物を含有する溶液を含浸させることによって、常温で硬化させるものである。
ここでC成分を別途に含浸する理由としては、A、BおよびCの3成分を同時に含有したプリプレグでは、硬化剤として働くB成分中のアミン類化合物が、C成分中の追い出し剤により、包接化合物から急速に追い出され、A成分のエポキシ化合物と反応して硬化が進行し、保存安定性が悪くなるからである。すなわち、B成分とC成分を同時に含有させたプリプレグが製造できないからである。また、プリプレグに含浸させる化合物がB成分でない理由は、B成分が固体であるので、AおよびC成分を含有する繊維強化プリプレグ中に均一に含浸することが困難だからである。
【0015】
次に、上記プリプレグに含浸するC成分について説明する。アミン類化合物の追い出し剤となりうるC成分中の化合物としては、包接化合物の種類によっても異なるが、一般的にはOH基またはSH基を有する化合物であり、具体的には、アルコール類、水、チオール類が挙げられる。本発明では、これらの化合物が包接化合物中に吸着されたアミン類化合物の追い出し剤として働き、追い出されたアミン類化合物がA成分のエポキシ化合物と反応して常温で硬化するメカニズムである。それゆえ追い出し剤となりうるためには、包接化合物に対してアミン類化合物よりも吸着能力が高く、しかも包接化合物の孔径よりも小さいことが必要である。ここで、C成分中のアミン類化合物の追い出し剤となりうる化合物は、取扱いの面からアルコール類化合物が好ましく、その具体例としては、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、グリセリン、マルチトール、ソルビトール等があるが、これに限定されるものではない。
【0016】
さらに含浸するC成分は、硬化特性をよくするために、繊維強化プリプレグ中に均一に含浸させることが重要であり、溶液状であることが必要である。そこで、追い出し剤が液体であれば、それの単体でもよいが、プリプレグと被接着表面との接着強度や均一硬化の点から液状で粘度の低い常温硬化型タイプの硬化剤、例えば、アミン系やポリメルカプタン系の硬化剤を含むエポキシ樹脂で希釈された溶液がさらに好ましい。ここで、プリプレグに含浸させるC成分量は、用いられるエポキシ化合物やアミン類化合物の当量、さらには、塗布するC成分中の追い出し剤の濃度を考慮することにより適宜選択される。例えばC成分中のアミン類化合物の追い出し剤となりうる化合物は、A成分のエポキシ化合物に対して、B成分中のアミン類化合物が0.6〜1.2当量放出できるような量であればよい。その化合物が、0.6当量未満の場合には硬化不足となり、逆に1.2当量を超える場合には、不必要なアミン類化合物が存在することとなり、複合材料の物性が低下する事があるからである。
【0017】
上記プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化プリプレグの製造方法は、一般的な方法でよく、具体的には、ホットメルト法やソルベント法があるが、特に制限はされない。しかし特に、注意しなければならないことは、製造時にB成分のアミン類化合物を包接化合物から脱着させないことである。脱着した場合には、即座にアミン類化合物がエポキシ樹脂化合物と反応して、保存安定性が悪くなるからである。これらは、樹脂含浸時の温度および圧力、または溶剤を用いる場合にはその種類を適宜考慮することにより可能である。なお、本発明に用いる繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維等の強化繊維を一軸方向又は二軸方向に配列したもの、編んだもの、織ったもの又はランダムに配列したもの等で厚さ0.1〜2mm程度の織布や不織布等があげられるが、特に制限されるものではない。又強化繊維に含浸させるエポキシ樹脂組成物の配合量としては、得られるプリプレグ中の20〜70重量%程度の範囲内であることが好ましい。
【0018】
次に、AおよびB成分からなるエポキシ樹脂組成物を有する繊維強化プリプレグの常温硬化方法について説明する。本発明の繊維強化プリプレグの成形では、まずプリプレグを接着すべき表面に貼付、加圧して空気溜まりがないようにする必要がある。次に本発明では、常温で硬化させるために、該プリプレグに、C成分を均一に含浸させることが必要である。その方法は限定されないが、たとえば、スプレーや刷毛で該プリプレグ表面にC成分を直接塗布して、それを被接着体表面に貼付、加圧して含浸させるか、または、被接着体の表面にC成分を塗布して該プリプレグを貼付けることにより、間接的に塗布した後、ローラーやバイブレーター等で加圧して含浸させることができる。これによって常温で容易に硬化させることができる。
【0019】
【実施例】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお本発明の実施例と比較例における評価方法は下記の通りである
・保存安定性;15℃、1ヵ月放置後のプリプレグの触感評価
○・・・良好
△・・・やや良好(やや硬化気味であるが、使用に支障なし)
×・・・不良(硬化して使用不可能)
・貼付作業性;エポキシ系のプライマー処理を施したセメント表面に、プリプレグまたはシートを貼付けるときの作業性
・安全衛生性;貼付作業を行う時の臭気
・硬化特性;プリプレグまたはシートを貼りつけ、常温(25℃)で1週間放置したのち、アセトンに浸漬して硬化状態を評価
良好・・・変化がなく十分に硬化している。
不良・・・表面が膨潤または(一部)溶解して硬化不良である。
・硬化後の表面状態;硬化後に目視で観察したときの表面状態
○・・・良好、 △・・・やや良好、 ×・・・不良
【0020】
実施例1
以下のAおよびB成分で調整されたエポキシ樹脂組成物を、一方向に引きそろえられたPAN系炭素繊維(強度350kg/mm2、引張弾性率24t/mm2)に含浸し、炭素繊維目付150g/m2、樹脂含有率43wt%、両側をポリエチレンフィルムと離型紙でサンドイッチされたプリプレグを製造した。表1に示すように、このプリプレグは、保存安定性が良好であった。次にエポキシ系プライマー処理を行ったセメント表面に、刷毛を用いて約0.5mm厚で、均一にC成分を塗布した。そして、その上に、ポリエチレンフィルムを取り除いた前記プリプレグを、離型紙が上にして、コテとバイブレーターを用い、空気抜きをしながら貼り付けた。この貼付作業は、短時間で特に煩わしいこともなく簡単であった。また、安全衛生性については、溶剤は用いず、プリプレグを用いたことからエポキシ樹脂溶液の使用量も少なく、ほとんど問題ではないと思われた。さらにこのプリプレグは、1週間後には、特に加熱することもなく常温で硬化し、硬化特性、硬化後の表面状態は良好であった。各物性評価結果を表1に示す。
・A成分;エポキシ化合物(エピコート828とエピコート1001の7対3の混合物:油化シェルエポキシ(株)製)100重量部
・B成分;エチレンジアミンを15重量%吸着させたパウダー状のモレキュラシーブス5A(平均粒子径4μm、孔径5Å:ユニオン昭和(株)製)36重量部
・C成分;エチレングリコールを3重量%を含有したエポキシ樹脂溶液(エピコート828とエチレンジアミンの100対7の混合物)
【0021】
実施例2
実施例1で用いたA成分および以下のB成分で調整されたエポキシ樹脂組成物を、一方向に引きそろえられたピッチ系炭素繊維(強度370kg/mm2、引張弾性率40t/mm2)に含浸し、炭素繊維目付100g/m2、樹脂含有率45wt%、両側をポリエチレンフィルムと離型紙でサンドイッチされたプリプレグを製造した。このプリプレグを実施例1と同様に以下に示すC成分を用いて硬化させ評価したところ、表1に示すように、保存安定性、貼付作業性、安全衛生性、硬化特性、硬化後の表面状態は良好であった。
・A成分;エポキシ化合物−100重量部
・B成分;トリエチレンテトラミンを20重量%吸着させたパウダー状の珪藻土(クリスバールPW−20:平均粒子径6μm、孔径30〜200Å:日鉄鉱業(株)製)50重量部
・C成分;グリセリンを5重量%を含有したエポキシ樹脂溶液(エピコート828とトリエチレンテトラミンの100対12の混合物)
【0022】
比較例1
実施例1で用いたA、Bで調整されたエポキシ樹脂組成物を、一方向に引きそろえられたPAN系炭素繊維(強度350kg/mm2、引張弾性率24t/mm2)に含浸し、炭素繊維目付150g/m2、樹脂含有率48wt%、両側をポリエチレンフィルムと離型紙でサンドイッチされたプリプレグを製造した。また、以下に示すC成分を調整した。このプリプレグを用い、実施例1と同様に評価を行ったところ、表1に示すように、保存安定性、貼付作業性、安全衛生性は良好であったが、硬化特性は不良であり、また繊維表面は未硬化であった。
・A成分;100重量部
・B成分;36重量部
・C成分;エポキシ樹脂溶液(エピコート828とエチレンジアミンの100対7の混合物)
【0023】
比較例2
実施例1で用いたA、B成分および以下のC成分で調整されたエポキシ樹脂組成物を一方向に引きそろえられたPAN系炭素繊維(強度350kg/mm2、引張弾性率24t/mm2)に含浸し、炭素繊維目付150g/m2、樹脂含有率48wt%、両側をポリエチレンフィルムと離型紙でサンドイッチされたプリプレグを製造した。このプリプレグは、表1に示すように、保存安定性が非常に悪く、1週間後には硬化していたことから、プリプレグをセメントに貼付けることはできず、実施例1と同様な評価はできなかった。
・A成分;100重量部
・B成分;36重量部
・C成分;エチレングリコール3重量部
【0024】
比較例3
120℃硬化タイプのピッチ系炭素繊維プリプレグ(繊維:強度370kg/mm2、引張弾性率40t/mm2、炭素繊維目付100g/m2、樹脂含有率33wt%)と以下のD成分を用いて、実施例1と同様な評価を行った。このプリプレグは、表1に示すように、保存安定性がよく、貼付作業性は特に問題は生じなかったが、トルエンを用いていたことから、臭気が激しく安全衛生性については問題があった。この複合材料は、1週間後では、未硬化のところがかなりあり、表面はボイドも見られた。
・D成分;エポキシ化合物(エピコート828)とエチレンジアミンの100対7の混合物を80重量%含有するトルエン溶液
【0025】
比較例4
一方向に引きそろえられたPAN系炭素繊維(強度350kg/mm2、引張弾性率24t/mm2)のシート(炭素繊維目付け150g/m2)と、以下のAおよびB成分を混合して調整したエポキシ樹脂溶液を、ハンドレアップ方式でエポキシ系プライマーで処理したセメント表面にしわにならないように慎重に接着した。この作業は、空気抜きする作業以外にエポキシ樹脂溶液を均一にシートに含浸する作業を含み、非常に煩わしいものであった。また、表1に示すように臭気が激しく、安全衛生上良くないものであった。このシートは、1週間後には硬化していたが、表面にはややボイドが見られた。
・A成分;エポキシ化合物(エピコート828)100重量部
・B成分;エチレンジアミン7重量部
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
以上の詳細な説明より明らかな通り、本発明は、従来の常温硬化型のエポキシ樹脂を用いるハンドレイアップ方式に比べ、貼付作業の煩わしさ、安全衛生性や硬化特性等の問題点を飛躍的に改善したプリプレグの常温硬化方法並びに構造物の補修補強方法であり、産業上非常に有益なものである。
Claims (2)
- 下記A及びB成分を必須成分としてなるエポキシ樹脂組成物を有する繊維強化プリプレグの成形時に、下記C成分を含浸させることによって、常温で硬化させることを特徴とするプリプレグの常温硬化方法。
A;一分子中に少なくとも二個以上のグリシジル基を持つエポキシ化合物
B;活性水素を有するアミン類化合物を吸着している包接化合物
C;B成分の包接化合物に対して、アミン類化合物の追い出し剤となりうる化合物を含有する溶液 - 構造物の表面にC成分、すなわち下記B成分の包接化合物に対して、アミン類化合物の追い出し剤となりうる化合物を含有する溶液を塗付し、その上に下記A及びB成分を必須成分としてなるエポキシ樹脂組成物および強化繊維を有する繊維強化プリプレグを貼り付けて硬化する構造物の補修補強方法。
A;一分子中に少なくとも二個以上のグリシジル基を持つエポキシ化合物
B;活性水素を有するアミン類化合物を吸着している包接化合物
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