図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向、第1方向)である。紙面上方が、上側(厚み方向一方向、第1方向一方向)であり、紙面下方が、下側(厚み方向他方向、第1方向他方向)である。紙面左右方向および紙厚方向は、面方向(厚み方向に直交する第2方向)である。具体的には、方向は、各図の方向矢印に準拠する。なお、これらの方向の定義により、次から説明する粘接着シート1および接着構造体20の製造時および使用時の向きは限定されない。
(一実施形態)
本発明の粘接着シートの一実施形態を図1を参照して説明する。
この粘接着シート1は、面方向に沿って延びる略平板(シート)形状を有する。粘接着シート1は、平坦な上面および下面を有する。
なお、粘接着シート1は、後述する接着キット29(図4A〜図4B参照)の一部品であり、また、後述する第1被着体11および第2被着体12が接着された接着構造体20(図4F参照)を製造するためのシートである。粘接着シート1は、後述する硬化剤25を塗布したなる硬化剤層(具体的には、第1硬化剤層26および第2硬化剤層27の少なくともいずれか一方)を塗布した被着体(具体的には、第1被着体11および第2被着体12の少なくともいずれか一方)に貼着して接着する。
つまり、粘接着シート1は、具体的には、単独で流通し、産業上利用可能な部材である。詳しくは、粘接着シート1は、後述する硬化剤25(図4Aおよび図4C参照)とは別に、単独で流通することができる。
そして、粘接着シート1は、第1粘接着剤層2と、基材シート3と、第2粘接着剤層4とを上側(厚み方向一方向)に向かって順に備える。換言すれば、粘接着シート1は、基材シート3と、その上下両側に配置される第2粘接着剤層4および第1粘接着剤層2を備える。好ましくは、粘接着シート1は、第1粘接着剤層2と、基材シート3と、第2粘接着剤層4とのみからなる。
基材シート3は、粘接着シート1の中間層を形成する。基材シート3は、粘接着シート1に靱性を付与する支持層である。基材シート3は、粘接着シート1の面方向に沿って延びる略平板(シート)形状を有する。
基材シート3は、軟質および硬質のいずれを有してもよい。
基材シート3は、気泡を含んでもよく、中実(気泡を含まない状態)でもよい。さらに、基材シート3は、多孔処理によって厚み方向を貫通する多孔体であってもよい。
具体的には、基材シート3としては、例えば、発泡体シートなどの多孔質シート、例えば、金属シート(金属箔)が挙げられ、好ましくは、発泡体シート、金属シートが挙げられる。
発泡体シートの材料としては、例えば、非晶質系の架橋タイプであって、例えば、ポリウレタン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、および、それらのコポリマーなど)、シリコーン、アクリルなどの樹脂、例えば、ゴムなどが挙げられる。好ましくは、樹脂、より好ましくは、ポリウレタン、ポリオレフィン、さらに好ましくは、ポリウレタンが挙げられる。ポリウレタンは、圧縮硬さ(後述)が低く、段差21(後述、図4D参照)に対して容易に変形することができ、段差21を有する第1被着面17(後述)に追従することができる(段差追従性に優れる)。発泡体シートの発泡形態としては、例えば、連続発泡型、独立発泡型などが挙げられ、好ましくは、段差21に対して容易に変形する観点(段差追従性)から、連続発泡型が挙げられる。
金属シートの材料としては、上記した金属が挙げられ、好ましくは、アルミニウムが挙げられる。
なお、多孔体シートとしては、複数の孔を有すれば(が形成されていれば)特に限定されず、例えば、上記した発泡体シート以外にも、例えば、不織布などが挙げられる。そのような不織布として、例えば、ポリエステル不織布などが挙げられる。なお、孔は、上面から下面へ貫通する貫通孔を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
基材シート3が多孔体シートであれば、接着構造体20の形状保持性を向上させ、加工性を向上させるとともに、硬化剤25が良好に拡散でき、第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4が均一に硬化することができる。
基材シート3の厚みは、第1被着体11および第2被着体12に応じて適宜設定され、特に限定されない。基材シート3の厚みは、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、8mm以下、好ましくは、5mm以下である。
基材シート3が発泡体シートであれば、その厚みは、例えば、0.5mm以上、好ましくは、1mm以上であり、また、例えば、8mm以下、好ましくは、5mm以下である。基材シート3の厚みが上記下限以上であれば、段差追従性に優れる。
基材シート3が金属シートであれば、その厚みは、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、800μm以下である。基材シート3の厚みが上記下限以上であれば、第1被着体11および第2被着体12を十分に支持することができる。基材シート3の厚みが上記上限以下であれば、粘接着シート1の軽量化、ひいては、接着構造体20(後述)の軽量化を図ることができる。
また、基材シート3の物性は、第1被着体11および第2被着体12に応じて適宜設定され、特に限定されない。
基材シート3が発泡体シートであれば、JIS K 6767(1999)に準じて測定した圧縮率25%時における圧縮硬さが、例えば、10N/cm2以下、好ましくは、5N/cm2以下、好ましくは、3N/cm2以下であり、また、例えば、0.05N/cm2以上である。圧縮硬さが上記した上限以下であれば、段差追従性に優れる。
基材シート3が金属シートであれば、25℃における曲げ弾性率が、例えば、1000GPa以下、好ましくは、500GPa以下であり、また、例えば、0.5GPa以上、好ましくは、1GPa以上である。曲げ弾性率が上記した下限以上であれば、補強性に優れる。なお、曲げ弾性率は、2点支持の中央1点荷重方式(サンプル幅60mm、スパン200mm)において、荷重速度50mm/分の条件下での測定によって求められる。
第1粘接着剤層2は、粘接着シート1の最下層を形成する。第1粘接着剤層2は、好ましくは、粘接着シート1の下面全面に接触している。第1粘接着剤層2は、平坦な上面および下面を有する。第1粘接着剤層2の上面は、粘接着シート1の下面に接触している。一方、第1粘接着剤層2の下面は、図4Eに示すように、粘接着シート1および第1被着体11を対向配置するときに、第1被着体11に対向する対向面の一例としての第1粘接着面15である。
第1粘接着剤層2は、後述する硬化剤25(好ましくは、第1硬化剤層26)と接触して硬化することができる層(シート)である。また、第1粘接着剤層2は、例えば、次に説明する主剤を第1剥離シート5(図2A参照)に塗布してなる塗布層(コーティング層)を粘接着シート1に転写されてなる転写層である。
第1粘接着剤層2は、2液型接着剤の主剤を含有する。好ましくは、第1粘接着剤層2は、主剤からなる。一方、第1粘接着剤層2は、例えば、主剤を主成分として含有しており、硬化剤25(後述)の微量な含有(第1粘接着剤層2において主剤を完全には硬化させない程度の微量割合)が許容される。より好ましくは、第1粘接着剤層2は、主剤を含有し、硬化剤25を含有しない。第1粘接着剤層2は、主剤のみを含有してもよい。具体的には、第1粘接着剤層2は、主剤から層状に形成されている。
主剤としては、例えば、エポキシ樹脂、例えば、ウレタン樹脂、例えば、シリコーン化合物、例えば、ポリプロピレングリコ−ルなどのポリオール化合物などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。主剤としては、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール系エポキシ樹脂、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、例えば、ジシクロ型エポキシ樹脂、例えば、脂環族系エポキシ樹脂、例えば、トリグリシジルイソシアヌレートエポキシ樹脂、例えば、ヒダントインエポキシ樹脂、例えば、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、例えば、グリシジルアミノ系エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
また、エポキシ樹脂の官能数は、特に限定されず、例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体的には、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの3官能以上の多官能エポキシ樹脂(架橋性エポキシ樹脂)なども挙げられる。
エポキシ樹脂としては、好ましくは、ビスフェノール系エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。また、エポキシ樹脂として、好ましくは、異なる種類の2官能エポキシ樹脂、さらには、2官能エポキシ樹脂および架橋性エポキシ樹脂の併用も挙げられる。
エポキシ樹脂は、常温で、液状、半固形状および固形状のいずれの形態であってもよい。好ましくは、液状のエポキシ樹脂および固形状のエポキシ樹脂の併用、または、半固形状のエポキシ樹脂の単独使用が挙げられる。主剤が、液状のエポキシ樹脂および固形状のエポキシ樹脂、および/または、半固形状のエポキシ樹脂であれば、第1粘接着剤層2にタック(感圧接着性)を確実に付与できる。そのため、第1被着体11および第2被着体12(後述)を仮固定して、それらを確実に位置合わせして、第1粘接着剤層2を硬化させて、第1被着体を確実に接着することができる。
常温で液状のエポキシ樹脂は、具体的には、25℃で液状である。液状のエポキシ樹脂の粘度は、25℃において、例えば、10dPa・s以上、好ましくは、30dPa・s以上、より好ましくは、80dPa・s以上であり、例えば、500dPa・s以下、好ましくは、300dPa・s以下である。
常温で固形状のエポキシ樹脂は、具体的には、25℃で固形状である。固形状のエポキシ樹脂の軟化点は、例えば、70℃以上、好ましくは、75℃以上である。常温で固形状のエポキシ樹脂の、ガードナー形泡粘度計法(JIS K5600−1999、または、ISO2431−1993)によって求められる粘度が、例えば、D以後、好ましくは、N以後、より好ましくは、Z以後であり、また、例えば、Z10以前、好ましくは、Z7以前である。さらには、常温で固形状のエポキシ樹脂の、25℃における50質量%ジオキサン溶液における粘度が、例えば、0.01dPa・s以上、好ましくは、0.1dPa・s以上であり、また、例えば、1000dPa・s以下、好ましくは、100dPa・s以下である。
液状のエポキシ樹脂の固形状のエポキシ樹脂に対する配合割合(液状のエポキシ樹脂/固形状のエポキシ樹脂)は、質量比で、例えば、1.0以上、好ましくは、1.5以上、より好ましくは、2.0以上であり、また、例えば、4.0以下、好ましくは、3.0以下である。
液状のエポキシ樹脂の固形状のエポキシ樹脂に対する配合割合が、上記の下限以上であれば、主剤の粘度を低減させて、塗布のムラの発生を防止して、均一な第1粘接着剤層2を形成することができる。液状のエポキシ樹脂の固形状のエポキシ樹脂に対する配合割合が、上記の上限以下であれば、タックのある層状の第1粘接着剤層2を確実に得ることができる。
そして、この第1粘接着剤層2は、感圧接着性(タック性、粘着性または初期接着力)を有する。具体的には、後述の参考例1に記載の方法により測定されるアルミニウム板に対する第1粘接着剤層2の剥離接着力が、例えば、1.0N/20mm以上、好ましくは、2.4N/20mm以上、より好ましくは、3.0N/20mm以上であり、また、例えば、10N/20mm以下である。
剥離接着力が上記の下限以上であれば、第1粘接着剤層2は、感圧接着性に優れる。そのため、基材シート3を第1被着体11に容易に仮固定することができる。
第1粘接着剤層2の剥離接着力は、第1粘接着剤層2をアルミニウム板に貼着した後、90度で速度300mm/分で、第1粘接着剤層2をアルミニウム板から剥離したときの、粘接着剤層の剥離接着力として求められる。
第1粘接着剤層2の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、より好ましくは、100μm以下である。
第2粘接着剤層4は、粘接着シート1の最上層を形成する。第2粘接着剤層4は、好ましくは、粘接着シート1の上面全面に接触している。第2粘接着剤層4は、平坦な上面および下面を有する。第2粘接着剤層4の下面は、粘接着シート1の上面に接触している。一方、第2粘接着剤層4の上面は、図2Aに示すように、粘接着シート1および第2被着体12を対向配置するときに、第2被着体12に対向する対向面の一例としての第2対向面16である。第2粘接着剤層4は、後述する硬化剤25(好ましくは、第2硬化剤層27)と接触して硬化することができる層(シート)である。
第2粘接着剤層4は、第1粘接着剤層2で例示した主剤を含有する。好ましくは、第2粘接着剤層4は、主剤からなる。一方、第2粘接着剤層4は、例えば、主剤を主成分として含有しており、硬化剤25の微量な含有(第2粘接着剤層4において主剤を完全には硬化させない程度の微量割合)が許容される。より好ましくは、第2粘接着剤層4は、主剤を含有し、硬化剤25を含有しない。また、第2粘接着剤層4は、主剤のみを含有してもよい。第2粘接着剤層4の主剤は、第1粘接着剤層2の主剤と同一または相異なっていてもよい。第2粘接着剤層4の厚みおよび剥離接着力は、第1粘接着剤層2のそれらと同様である。
次に、粘接着シート1の製造方法を図2Aおよび図2Bを参照して説明する。
この粘接着シート1を製造するには、図2Aに示すように、まず、第1粘接着剤層2と、基材シート3と、第2粘接着剤層4とのそれぞれを準備する。
第1粘接着剤層2を準備するには、まず、主剤を調製する。また、必要により、主剤を溶媒で希釈して、主剤を含むワニスを調製する。
溶媒としては、主剤を溶解できるものであればよく、例えば、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族系溶媒、例えば、酢酸エチルなどのエーテル系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどケトン系溶媒、例えば、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン系極性溶媒が挙げられる。好ましくは、ケトン系溶媒が挙げられる。ワニスにおける主剤の濃度は、例えば、20質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
次いで、ワニス(主剤)を第1剥離シート5の表面(上面)に塗布し、続いて、乾燥させる。
第1剥離シート5は、面方向に延びる平板形状を有する。第1剥離シート5の材料としては、樹脂、金属が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などのビニル重合体、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどのポリエステル、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂などが挙げられる。金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなどが挙げられる。第1剥離シート5の表面は、剥離処理が施されていてもよい。第1剥離シート5の厚みは、例えば、1μm以上、例えば、1,000μm以下である。
塗布方法としては、例えば、ドクターブレード法、ロール法、スクリーン法、グラビア法などが挙げられる。
加熱条件としては、加熱温度が、例えば、70℃以上、例えば、130℃以下であり、加熱時間が、例えば、1分以上、例えば、5分以下である。
これにより、第1粘接着剤層2を、第1剥離シート5に支持された状態で、コーティング層として形成する。
第2粘接着剤層4の準備は、ワニス(主剤)を第2剥離シート6の表面(図2Aにおける下面)に塗布する以外は、第1粘接着剤層2の準備と同様である。第2剥離シート6は、第1剥離シート5と同様の構成を有する。
図2Bに示すように、その後、第1粘接着剤層2を基材シート3の下面に貼着するとともに、第2粘接着剤層4を基材シート3の上面に貼着する。
これにより、第1剥離シート5、第1粘接着剤層2、基材シート3、第2粘接着剤層4および第2剥離シート6を上方に向かって順に備える粘接着シート1を得る。
なお、図2Bに示す粘接着シート1では、第1粘接着剤層2の第1対向面15、および、第2粘接着剤層4の第2対向面16のそれぞれが、使用時(接着構造体20の製造時)まで、第1剥離シート5および第2剥離シート6に保護されている。
その後、次に説明する接着構造体20の製造において、第1剥離シート5および第2剥離シート6のそれぞれは、第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4のそれぞれから剥離される。
なお、上記した一実施形態以外にも、基材シート3は、複数の孔中に、第1粘接着剤層2および/または第2粘接着剤層4の材料を構成する主剤を含有する、主剤含有多孔質シート3であってもよい。このような主剤含有基材シート3では、上記した複数の孔中と、基材シート3の上下両面とにおいて、主剤が存在する。このような主剤含有基材シート3を作製するには、例えば、上記した主剤をワニスに多孔質シートを含侵させた後、溶剤を揮発させる。なお、ワニスにおける主剤の濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
このような主剤含有多孔質シート3であれば、第1被着体11の第1被着面17、および/または、第2被着体12の第2被着面18の凹凸、反り、うねりを吸収でき、加えて、硬化後に主剤含有多孔質シート3全体が硬化することができる。そのため、接着信頼性により一層優れる接着構造体20を製造することができる。
次に、図3A〜図3Fを参照して、図1および図2Bに示す粘接着シート1を用いて接着構造体20を製造する方法を説明する。
この方法では、まず、図3A〜図3Bに示すように、接着キット29を準備する。
接着キット29は、上記した粘接着シート1と、硬化剤25とを備える。なお、接着キット29における粘接着シート1および硬化剤25は、別部材(2部材)で流通する(例えば、セット販売される)。
硬化剤25としては、2液型接着剤の硬化剤であれば特に制限されず、主剤に対応して適宜選択される。具体的には、主剤がエポキシ樹脂であれば、硬化剤25として、イミダゾール化合物、アミン化合物などのエポキシ樹脂硬化剤が挙げられ、主剤がウレタン樹脂であれば、硬化剤25として、ウレタン樹脂硬化剤が挙げられ、主剤がシリコーン化合物であれば、硬化剤25として、シリコーン化合物などが挙げられ、主剤がポリオール化合物であれば、硬化剤25として、イソシアネートなどが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、例えば、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。好ましくは、1−イソブチル−2−メチルイミダゾールが挙げられる。
アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、それらのアミンアダクト、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンが挙げられる。
アミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、ポリアミドなどが挙げられ、好ましくは、ジシアンジアミドが挙げられる。
硬化剤25は、単独で用いることができ、2種以上を併用することもできる。
硬化剤25としては、好ましくは、イミダゾール化合物が挙げられる。
硬化剤25の性状は、特に限定されず、具体的には、常温で、液状、半固形状および固形状のいずれの形態であってもよい。なお、硬化剤25が固形状(さらには半固形状)であれば、必要により、上記と同様の溶媒で硬化剤25を適宜の割合で溶解して、硬化剤25を含有するワニスを調製する。
硬化剤25は、好ましくは、液状である。液状であれば、半固形状および固形状のように、溶媒を必要とせず、そのまま、硬化剤25を塗布することができる。
なお、硬化剤25(またはワニス)は、例えば、缶などの容器28などに収容されている。
別途、この方法では、図3Aおよび図3Cに示すように、第1被着体11および第2被着体12を準備する。
図3Aに示すように、第1被着体11は、面方向に延びる上面を有する部材であって、第1粘接着剤層2に接着される上面を有する被着体である。なお、第1被着体11の上面は、後の工程において、図2Bが参照されるように、第1粘接着剤層2の下面(第1対向面15)に対向する対向面の一例としての第3対向面17である。
図3Cに示すように、第2被着体12は、第1被着体11に対して接着すべき被着体である。第2被着体12は、面方向に延びる下面および上面を有する平板状部材であって、第2粘接着剤層4に接着される下面を有する被着体である。なお、第2被着体12の下面は、後の工程において、図2Dが参照されるように、第2粘接着剤層4の上面(第1粘接着面15)に対向する対向面の一例としての第2被着面18である。
図3Aに示すように、次いで、接着キット29における硬化剤25を、第1被着体11の第1被着面17に塗布する(第1硬化剤層26の形成)。
塗布方法は、主剤の塗布方法と同様の方法が挙げられる。さらに、硬化剤25の塗布方法として、スプレー法、刷毛塗りを挙げることもできる。
図3Bに示すように、硬化剤25の第1被着面17への塗布によって、第1硬化剤層26が第1被着面17にコーティング層として形成される。なお、第1硬化剤層26は、第1被着面17に対するプライマー層として役する。
第1硬化剤層26の厚みは、特に限定されず、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、800μm以下、より好ましくは、500μm以下である。
図3Cに示すように、別途、硬化剤25を、第2被着体12の第2被着面18に塗布する(第2硬化剤層27の形成)。
硬化剤25および塗布方法は、第1被着面17への塗布で説明したものと同様である。これにより、第2硬化剤層27が、第2被着面18にコーティング層として形成される。第2硬化剤層27の厚みは、硬化剤層26の厚みと同様である。第2硬化剤層27は、第2被着面18に対するプライマー層として役する。
次いで、図3Bの矢印および仮想線で示すように、第1粘接着剤層2の第1粘接着面15を第1被着体11の第1被着面17に対向配置させる(第2工程の一部)。
例えば、まず、図3Bの仮想線で示すように、第1剥離シート5を第1粘接着剤層2の第1粘接着面15から剥離し、続いて、粘接着シート1の第2剥離シート6を、比較的小さな力で下側に向けて押圧する。
図3Dに示すように、これによって、第1硬化剤層26が、第1粘接着剤層2と第1被着体11とで挟み込まれる。また、第1粘接着剤層2のタックによって、基材シート3が第1被着体11に対して位置決めされる。
その後、図3Dの太い矢印で示すように、第2粘接着剤層4の第2粘接着面16を第2被着体12の第2被着面18に対向配置させる。
例えば、まず、図3Dの仮想線で示すように、第2剥離シート6を第2粘接着剤層4の第2粘接着面16から剥離し、続いて、第2被着面18を、第2硬化剤層27を介して第2粘接着面16に対向配置させる。具体的には、第2被着体12を下側に向けて押圧する。
図3Eに示すように、これによって、第2硬化剤層27が、第2粘接着剤層4と第2被着体12とで挟み込まれる。第2粘接着剤層4のタックによって、基材シート3が第2被着体12に対して位置決めされる。
これによって、第2粘接着剤層4および第2硬化剤層27が接触する。すると、図3Fに示すように、第2粘接着剤層4と第2硬化剤層27とが硬化する(第2工程の残部)。
同時に、第1粘接着面15と、第1被着面17との接触によって、第1粘接着剤層2と第1硬化剤層26とが硬化する(第1工程の残部)。
第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4の硬化温度は、例えば、常温である。あるいは、硬化温度を、常温を超える温度に設定することもできる。硬化温度は、好ましくは、常温である。常温は、第1粘接着剤層2と第1硬化剤層26とを、および/または、第2粘接着剤層4と第2硬化剤層27とを硬化させるための加熱(例えば、50℃以上の加熱)をしない温度であり、例えば、50℃未満、好ましくは、40℃以下であり、また、例えば、10℃以上、好ましくは、20℃以上である。
硬化温度が常温であれば、第1粘接着剤層2と第1硬化剤層26とを硬化させるための加熱、および/または、第2粘接着剤層4と第2硬化剤層27とを硬化させるための加熱を必要とせず、第1粘接着剤層2と第1硬化剤層26とを、および/または、第2粘接着剤層4と第2硬化剤層27とを、より一層簡便に接着することができる。
硬化時間は、例えば、1時間以上、好ましくは、12時間以上であり、また、例えば、96時間以下、好ましくは、48時間以下である。
これにより、第1粘接着剤層2および第1硬化剤層26が、第1接着層31になる。第1接着層31は、第1粘接着剤層2が硬化剤25により硬化してなる第1硬化層である。
同時に、第2粘接着剤層4および第2硬化剤層27が、第2接着層32になる。第2接着層32は、第2粘接着剤層4が硬化剤25により硬化してなる第2硬化層である。
これら第1接着層31および第2接着層32により、第1被着体2および第2被着体4が基材シート3を介して接着される。
これにより、接着構造体20が得られる。
接着構造体20は、第1被着体11と、第1接着層31と、基材シート3と、第2接着層32と、第2被着体12とを上側に向かって順に備える。接着構造体20において、第1接着層31が、第1被着体11および基材シート3を接着し、第2接着層32が、第2被着体12および基材シート3を接着している。
そして、この粘接着シート1によれば、第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4によって、第1被着体11および第2被着体12を基材シート3を挟んで仮固定しつつ、第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4が硬化剤25により硬化するので、第1被着体11および第2被着体12を基材シート3を挟んで精度よく位置合わせできながら接着することができる。
また、主剤と硬化剤とをそれぞれ計量し、混合することなく、第1被着体11と第2被着体12とを簡便に接着することができる。
さらに、上記した第1の方法では、容器28を粘接着シート1とともに施工現場に運搬して、接着キット29を構成するので、施工現場で、容器28から硬化剤25を取り出し、これを第1被着体11および第2被着体12のそれぞれに塗布して、第1硬化剤層26および第2硬化剤層27を第1被着体11および第2被着体12のそれぞれに簡単に配置することができる。つまり、予め、第1硬化剤層26および第2硬化剤層27を形成する手間を省くことができ、接着構造体20を簡便に製造することができる。
(変形例)
変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
また、変形例は、上記した以外は、上記した一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
一実施形態では、図3Aに示すように、硬化剤25を第1被着体11の第1被着面17のみに塗布しているが、図示しないが、例えば、硬化剤25を第1粘接着剤層2の第1粘接着面15のみ、あるいは、第1被着面17および第1粘接着面15の両面に塗布することもできる。
また、一実施形態では、図3Cに示すように、硬化剤25を第2被着体12の第2被着面18のみに塗布しているが、図示しないが、例えば、硬化剤25を第2粘接着剤層4の第2粘接着面16のみ、あるいは、第2粘接着面16および第2被着面18の両面に塗布することもできる。
さらに、一実施形態では、第1硬化剤層26および第2硬化剤層27を、硬化剤25を第1被着体11および第2被着体12に対して塗布してなるコーティング層としているが、図示しないが、例えば、別の剥離シートに硬化剤25を塗布して第1硬化剤層26および第2硬化剤層27を形成した後、それらを第1被着体11および第2被着体12に転写してなる転写層として形成することもできる。
さらにまた、一実施形態では、第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4の両方を硬化剤25と接触して硬化することができる層として説明している。しかし、第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4のうち、いずれか一方が硬化剤25と接触して硬化することができる層であり、他方が硬化剤25との接触によって硬化しない感圧接着剤層であってもよい。
感圧接着剤層は、例えば、アクリル系感圧接着剤などの感圧接着成分を含有する。
例えば、第1粘接着剤層2が硬化剤25と接触して硬化することができる層であり、第2粘接着剤層4が硬化剤25との接触によって硬化しない感圧接着剤層である場合には、第1粘接着剤層2を、硬化剤25との接触により硬化させて、第1接着層31を形成して、基材シート3と第1被着体11とを接着する一方、第2粘接着剤層4は、硬化剤25と接触させることなく、第2粘接着剤層4が有する感圧接着性(粘接着性)に基づいて、基材シート3と第2被着体12とを感圧接着する。
(第1の方法)
次に、図4A〜図4Fを参照して、基材シート3が発泡体シートである粘接着シート1を用いて接着構造体20を製造する第1の方法を説明する。
まず、第1の方法では、図4A〜図4Bに示すように、接着キット29を準備する。
別途、図4Aおよび図4Cに示すように、第1被着体11および第2被着体12を準備する。
第1被着体11および第2被着体12としては、例えば、段差21などを有してもよい、壁,床、天井などの比較的表面が荒い下地材(コンクリート、石膏ボード、軽カル板、ベニア合板、フレキシブルボード(石綿およびセメントを混ぜてそれらを高圧で固めた成形板。フレキシ・ボードとも称される。)と、タイル、サイディングボード、クロスなどとの組合せ、例えば、テレビや電子デバイスなどの筐体と、ガラスパネルとの組合せ、例えば、冷蔵庫の金属筐体と、フロントパネルとの組合せ、自動車の筐体と、内装材との組合せなどが挙げられる。
段差21は、例えば、図4Aの仮想線で示すように、左右方向に隣接する2つの下地材によって、第1被着体11を構成するときに、それらの上面(第1被着面17)の位置の相違(高さの違い)に基づいて、2つの下地材の継ぎ目22において生じる。継ぎ目22は、図8が参照されるように、例えば、厚み方向および左右方向に直交する前後方向に沿う。段差21の高さは、特に限定されず、例えば、0.01mm以上、さらには、0.1mm以上であり、また、例えば、5mm以下、さらには、1mm以下である。
次いで、図4Aおよび図4Cに示すように、この方法では、硬化剤25を、第1被着面17および第2被着面18に塗布する。これによって、図4Bに示すように、第1被着面17に第1硬化剤層26を形成するとともに、図4Dに示すように、第2被着面18に第2硬化剤層27を形成する。
次に、図4Dに示すように、第1粘接着剤層2の第1粘接着面15を第1被着体11の第1被着面17に対向配置させる。粘接着シート1の第2剥離シート6を、比較的小さな力で下側に向けて押圧する。この際、第1粘接着面15の一部と、第1被着面17の一部とは、段差21によって、隙間23が形成されていてもよい。つまり、この工程において、第1粘接着面15の全部および第1被着面17の全部が接触されていないことが許容される。
これによって、第1粘接着剤層2および第1硬化剤層26の少なくとも一部が接触する。
次いで、図4Eに示すように、第2粘接着剤層4の第2粘接着面16を第2被着体12の第2被着面18に対向配置させる。具体的には、第2被着面18を、第2硬化剤層27を介して第2粘接着面16に対向配置させる。このとき、第2被着体12を下側に向けて押圧する。圧力は、特に限定されず、段差21に対応して基材シート3が変形できるように調整される。圧力をかける時間は、特に限定されず、例えば、1秒以上、好ましくは、5秒以上であり、また、例えば、60秒以下、好ましくは、30秒以下である。
すると、隙間23に、基材シート3および第1粘接着剤層2が充填される。これによって、第2粘接着剤層4の全部および第2硬化剤層27の全部が確実に接触する。
その後、図4Fに示すように、一実施形態と同様にして、第1粘接着剤層2が第1硬化剤層26との接触により硬化して、第1接着層31を形成する。第2粘接着剤層4が第2硬化剤層27との接触により硬化して、第2接着層32を形成する。
そして、この第1の方法によれば、基材シート3が発泡体シートであるので、十分な厚みを確保することができ、段差追従性に優れる。一方、基材シート3を有しない場合に、施工現場において、作業者が、第1粘接着剤層2を厚く形成することによって、段差追従性を確保することが試案される。しかし、その場合には、作業者の技能によって、段差追従性を十分に確保できず、そのため、接着構造体20において、厚みのばらつきを生じるという不具合がある。他方、この第1の方法では、粘接着シート1が予め基材シート3を有するので、上記した作業者の技能によらず、画一的に、簡便に段差追従性を確保することができ、均一な厚みを確保することができる。
従って、この第1の方法であれば、第1被着体11が段差21を有していても、接着信頼性に優れる接着構造体20を製造することができる。
(変形例)
変形例において、上記した一実施形態および第1の方法と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
また、変形例は、上記した以外は、一実施形態および第1の方法と同様の作用効果を奏することができる。
第1の方法では、図4Aに示すように、第1被着面17が段差21を有しているが、これに限定されない。図示しないが、例えば、第1被着面17が、微細な凹凸からなる粗面、あるいは、反り(またはうねり)を有する曲面であってもよい。
また、第1の方法では、図4Dに示すように、第1被着面17が段差21を有し、第2被着面18が段差21を有しないが、例えば、図示しないが、第1被着面17および第2被着面18の両方が段差21を有することもできる。
第1の方法では、図4Dおよび図4Eに示すように、まず、第1粘接着剤層2を第1硬化剤層26に接触させた後、第2粘接着剤層4を第2硬化剤層27に接触させている。
しかし、その順序は、上記に限定されない。例えば、図5Dに示すように、まず、第2粘接着剤層4を第2硬化剤層27に接触させ、その後、図5Eに示すように、第1粘接着剤層2を第1硬化剤層26に接触させることもできる。
(第2の方法)
次に、図6A〜図6Fを参照して、基材シート3が金属シートである粘接着シート1を用いて接着構造体20を製造する第1の方法を説明する。
まず、この方法では、図6A〜図6Bに示すように、接着キット29を準備する。
別途、図6Aおよび図6Cに示すように、第1被着体11および第2被着体12を準備する。
第1被着体11および第2被着体12のそれぞれは、平坦な上面および下面を有する略板形状を有する。
第1被着体11および第2被着体12として、接着時に反りやうねりなどの変形を抑制することが必要な分野に用いられる部材が挙げられ、例えば、ともに、薄肉で比較的硬質のプラスチック板(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)、軟質のプラスチック板(例えば、ポリエチレンフィルムなど)、薄肉で硬質の金属板などが挙げられる。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、低密度ポリエチレンなどが挙げられる。金属の種類は、特に限定されず、例えば、アルミニウム、鉄などが挙げられる。
第1被着体11および第2被着体12の厚みは、特に限定されず、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下、より好ましくは、100μm以下であり、また、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上である。
第2の方法は、図6Aおよび図6Cに示される第1被着体11および第2被着体12の種類、および、基材シート3の種類が異なる以外は、一実施形態および第1の方法と同様である。
ただし、第2の方法では、第1の方法のように、隙間23(図4D参照)の形成および充填がない。
第2の方法によれば、第1被着体11および第2被着体12を、金属シートである基材シート3によって、支持(補強)しながら、第1被着体11および第2被着体12を基材シート3を介して接着することができる。そのため、作業性の低下を抑制することができる。その結果、粘接着シート1は、第1被着体11および第2被着体12を確実に接着することができる。
とりわけ、第2の方法では、第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4が常温で硬化してなるので、加熱硬化と異なり、第1被着体11および第2被着体12の熱収縮を防止することができる。そのため、接着構造体20の反りやうねりを抑制することができる。
さらに、予め、第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4を基材シート3に設けた粘接着シート1を用いるので、接着構造体20では、厚みの精度が優れている。そのため、接着構造体20の表面、具体的には、第1被着体11の下面、および、第2被着体12の上面に反りやうねりが発生することをより一層抑制することができる。
(変形例)
変形例において、上記した一実施形態、第1および第2の方法と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
また、変形例は、上記した一実施形態、第1および第2の方法と同様の作用効果を奏することができる。
また、上記の接着構造体20では、第1接着層31および第2接着層32のそれぞれは、第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4のそれぞれを硬化剤25によって硬化してなる。
一方、図7A〜図7Eに示すように、例えば、接着構造体20(図7F参照)では、第1接着層31が、第1粘接着剤層2を硬化剤25によって硬化してなる一方、第2接着層32が、2液型接着剤(主剤および硬化剤の混合物)による硬化層でもよい。つまり、図7Bに示すように、第2粘接着剤層4(図1参照)を備えず、第1粘接着剤層2および基材シート3を備える粘接着シート1を準備する。基材シート3の上面は、上側に露出している。次いで、図7Bの矢印および図7Cに示すように、第1粘接着剤層2と第1硬化剤層26とを対向配置させる。次いで、図7Cの仮想線で示すように、続いて、2液型接着剤を、第2被着体12の第2被着面18に塗布して、未硬化層35を形成する。その後、図7Cの矢印および図7Dに示すように、第2被着体12を下側に向けて押圧して、未硬化層35を第2被着体12および基材シート3によって挟み込む。
その後、第1粘接着剤層2を第1硬化剤層26によって硬化させて第1接着層31を形成するとともに、未硬化層35を硬化させて硬化層からなる第2接着層32を形成する。
あるいは、接着構造体20では、第2接着層32が、第2粘接着剤層4を硬化剤25によって硬化してなる一方、第1接着層31が、2液型接着剤による硬化層でもよい。
上記した第1および第2の方法を組合せることもできる。
例えば、図示しないが、基材シート3が、発泡体シートおよび金属シートの積層体であってもよい。その際には、段差21を有する第1被着面17に対向する第1粘接着面15を、発泡体シートから形成する一方、平坦な第2被着面18に対向する第2粘接着面16を、金属シートから形成する。
以下に、準備例、準備比較例、実施例、比較例および参考例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何らそれらに限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
準備例1
(接着キットの準備)
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「jER828」、25℃の粘度:120〜150dPa・s、三菱化学社製)70部と、固形状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「jER1256」、ガードナー形泡粘度計法:Z3、三菱化学社製)30部とを混合し、濃度(液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂および固形状のビスフェノールA型エポキシ樹脂の濃度)が60%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈し、ワニスを調製した。これを乾燥後の厚みが20μmになるように、第1剥離シート5としての剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ダイアホイルMRF#38」、三菱樹脂社製)の剥離処理面に塗布し、100℃で1分、加熱して乾燥させ、図2Aに示すように、第1粘接着剤層2を形成した。さらに、第1粘接着剤層2と同様にして、第2粘接着剤層4を第2剥離シート6の剥離処理面に形成した。
次いで、第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4のそれぞれを、基材シート3としてのポリウレタン発泡体シート(商品名「クララフォーム780EA」、厚さ3mm、連続発泡型、倉敷紡績株式会社製)の上面および下面のそれぞれに貼着した。これによって、図2Bに示すように、第1剥離シート5、第1粘接着剤層2、基材シート3、第2粘接着剤層4および第2剥離シート6を備える粘接着シート1を準備した。
硬化剤25としての25℃で液体の1−イソブチル−2−メチルイミダゾール(三菱化学社製)を、容器28としてのビーカー内に準備した。
これによって、粘接着シート1および硬化剤25を備える接着キット29を準備した。
準備例2〜4、6および比較準備例1、2
粘接着シートの準備において、粘接着シート1の基材シート3を、表1に従って変更した以外は、準備例1と同様に処理した。
準備例5
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「jER828」、25℃の粘度:120〜150dPa・s、三菱化学社製)70部と、固形状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「jER1256」、ガードナー形泡粘度計法:Z3、三菱化学社製)30部とを混合し、濃度(液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂および固形状のビスフェノールA型エポキシ樹脂の濃度)が20%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈し、ワニスを調製した。
上記ワニスの中に、基材シート3としてのポリウレタン発泡体シート(商品名:「クララフォーム780EA」、厚さ3mm、連続発泡型、倉敷紡績株式会社製)を浸漬し、ポリウレタン発泡体シートの多孔中にワニスを十分に含浸させた。その後、ポリウレタン発泡体シートをワニスから引き上げ、続いて、それを80℃で加熱して、メチルエチルケトンを揮発させて、複数の孔内と、上面および下面とのいずれにもエポキシ樹脂(主剤)が存在する、主剤含有基材シート3を作製(準備)した。
別途、硬化剤25としての25℃で液体の1−イソブチル−2−メチルイミダゾール(三菱化学社製)を、容器28としてのビーカー内に準備した。
これによって、粘接着シート1および硬化剤25を備える接着キット29を準備した。
準備例7
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂70部と、固形状のビスフェノールA型エポキシ樹脂30部とに代えて、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂68部と、固形状のビスフェノールA型エポキシ樹脂30部と、固形状のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(多官能エポキシ樹脂(架橋性エポキシ樹脂)、商品名「jER157S70」、25℃ジオキサン50%溶液の粘度:0.65〜0.85dPa・s、三菱化学社製))2部とを配合した以外は、準備例5と同様に処理した。
準備例8
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂70部と、固形状のビスフェノールA型エポキシ樹脂30部とに代えて、液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名「jER806」、25℃の粘度:15〜25dPa・s、三菱化学社製)54部と、固形状のビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名「jER4010P」、ブチルカルビトール40%溶液ガードナー形泡粘度計法:Z4〜Z6、三菱化学社製)45部と、固形状のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(多官能エポキシ樹脂、商品名「jER152」、52℃の粘度:14〜18dPa・s、三菱化学社製)1部とを
混合した以外は準備例5と同様に処理をした
表1に記載される準備例2〜8および比較準備例1、2の詳細を以下に示す。
ポリウレタン発泡体シート:商品名「クララフォーム780EA」、厚さ3mm、連続発泡型、倉敷紡績株式会社製
エチレンプロピレンコポリマー発泡体シート:商品名「エプトシーラーEE−1000」厚さ3mm、25%圧縮時の圧縮硬さ(JIS K 6767(1999)):0.33N/cm2、連続発泡型、日東電工株式会社製
ポリプロピレン発泡体シート:商品名「SCF200」、厚さ1.5mm、連続発泡型、日東電工株式会社製
アクリル発泡体シート:商品名「フィットセルα C−150」、厚さ3mm、連続発泡型、株式会社テクノフローワン製
アルミニウムシート:厚み0.3mm、25℃の曲げ弾性率72GPa
実施例1
図5A、図5Cおよび図8に示すように、第1被着体11および第2被着体12としてフレキシブルボードを準備した。第1被着体11および第2被着体12の寸法は、図6に示す通りである。なお、前後方向長さ40mm、左右方向長さ40mmのフレキシブルボードに上面の左右両側に、同一厚みを有する2枚のフレキシブルボード(前後方向長さ40mm、左右方向長さ20mm、厚み)を左右方向に隣接するように積層して、第2被着体12を構成した。その際、左側には、別のフレキシブルボード(段差形成部材24)(厚み0.5mm)が上下2枚のフレシブルボードの間に挿入するようにした。つまり、第2被着体12の左側には、3枚のフレキシブルボードが積層され、第2被着体12の右側には、2枚のフレキシブルボードが積層された。これによって、第2被着体12には、継ぎ目22による段差21が形成された。
次に、図5Aおよび図5Cに示すように、準備例1の接着キットの硬化剤25を、第2被着体12の第2被着面18と、第1被着体11の第1被着面17とに塗布した。これによって、第1硬化剤層26および第2硬化剤層27を形成した。
その後、第2剥離シート6(図2B参照)を第2粘接着剤層4から剥離して、第2粘接着剤層4の第2粘接着面16を露出させ、続いて、図5Bの矢印で示すように、第2粘接着面16を第2被着体12の第2被着面18に対向配置させて、図5Dに示すように、第2被着面18を第2粘接着面16に接触させた。次いで、第1剥離シート5(図2B参照)を第1粘接着剤層2から剥離して第1粘接着面15を露出させ、続いて、図5Dの矢印で示すように、第1粘接着面15を第1被着体11の第1被着面17に対向配置させて、図5Eに示すように、第1粘接着面15を第1被着面17に接触させた。この際、第2被着体12を下側に向けて、10秒間強く押圧した。
そして、それらを室温で24時間放置することによって、図5Fに示すように、第2粘接着剤層4を硬化させるとともに、第1粘接着剤層2を硬化させた。
これによって、第1被着体11、第1接着層31、基材シート3、第2接着層32および第2被着体12を順に備える接着構造体20を製造した。
実施例2〜4
粘接着シート1を、表1に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
実施例5
図7A、図7Cおよび図8に示すように、実施例1と同一の第1被着体11および第2被着体12を準備した。
次いで、準備例5で作製した粘接着シート1を、第1被着体11の第1被着面17に押圧することで感圧接着した。その後、粘接着シート1の第2粘接着面16に硬化剤25を塗布し、硬化剤25の表面を第2被着体12の第2被着面18に押圧した。これによって、第1被着体11および第2被着体12を貼着した(貼り合わせた)。
その後、それらを室温で24時間放置することによって第2粘接着剤層4、基材の孔内、並びに第2粘接着剤層4に含まれる主剤を硬化させて接着構造体20を製造した。
比較例1
基材シート3を備えない粘接着シート1、すなわち、第1粘接着剤層2のみを、第1硬化剤層26および第2硬化剤層27に接触させた。
その際、段差21に基づく隙間23を残る状態で、第1被着体11および第2被着体12を接着した。
比較例2
2液混合型エポキシ系接着剤を、基材シート3の上面および下面に塗布して、その後、それらを第1被着体11および第2被着体12で挟み込んだ以外は、実施例1と同様にして、接着構造体20を製造した。つまり、第1接着層31および第2接着層32は、それぞれ、第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4ではなく、2液型接着剤を硬化してなる。
実施例6
第1被着体11および第2被着体12として、2つのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)を用いる点、および、準備例5の粘接着シート1を用いる点以外は、実施例1と同様にして、接着構造体20を製造した。
比較例3
基材シート3を備えない粘接着シート1、すなわち、第1粘接着剤層2のみを、第1硬化剤層26および第2硬化剤層27に接触させた。
比較例4
2液混合型エポキシ系接着剤を、基材シート3の上面および下面に塗布して、その後、それらを第1被着体11および第2被着体12で挟み込んだ以外は、実施例6と同様にして、接着構造体20を製造した。つまり、第1接着層31および第2接着層32は、それぞれ、第1粘接着剤層2および第2粘接着剤層4ではなく、2液型接着剤を硬化してなる。
実施例7
粘接着シート1を、表1に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
実施例8
粘接着シート1を、表1に従って変更した以外は、実施例5と同様に処理した。
(評価1)
(接着面積比)
実施例1〜5、7、8および比較例1のそれぞれの接着構造体20において、粘接着シート1の平面積に対する、基材シート3の第1被着面17に対する接着(接触)面積の比を接着面積率として求めた。その結果を表1に示す。
(評価2)
(接着構造体におけるうねり)
実施例6および比較例3、4のそれぞれの接着構造体20の表面におけるうねりの有無を目視で確認した。
(評価3)
(位置決め精度)
各実施例および各比較例の接着構造体20における第2被着体12の第1被着体11に対する位置決め精度を、第1粘接着面15および第1被着面17の接触と、第2粘接着面16および第2被着面18の接触との後に、第1粘接着剤層2における主剤(粘接着材料)が第1被着体11および基材シート3の間からはみ出していることの有無、および、第2粘接着剤層4における主剤(粘接着材料)が第2被着体12および基材シート3の間からはみ出していることの有無を観察した。そして、両方のはみ出しが確認されなかったものを○、両方のはみ出しが確認されたものを×として評価した。
参考例1
(第1粘接着剤層の感圧接着性の評価(剥離接着力の測定))
準備例1における基材シート3に支持された第1粘接着剤層2(第2粘接着剤層4を有しない粘接着シート1)を、幅20mmにカットし、これを、厚さ2mmのアルミ板に配置した。貼り合わせた後に、2kgのローラーを1往復して圧着(感圧接着)した。30分後に、引張圧縮試験機(装置名「TG−1kN」、ミネベア社製)にて、剥離角度90°、剥離速度300mm/分で剥離接着力を測定した。その結果、剥離接着力が、3.7N/20mmであった。つまり、第1粘接着剤層が、優れた感圧接着性(粘接着性、タック性)を有することが分かった。